特許第6259100号(P6259100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6259100半径方向に負荷をかけられた円形案内部のための封隙装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6259100
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】半径方向に負荷をかけられた円形案内部のための封隙装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/26 20060101AFI20171227BHJP
   F16J 15/3276 20160101ALI20171227BHJP
   B21B 5/00 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   F16J15/26
   F16J15/3276
   B21B5/00
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-538614(P2016-538614)
(86)(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公表番号】特表2017-500511(P2017-500511A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2014077553
(87)【国際公開番号】WO2015086816
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2016年7月12日
(31)【優先権主張番号】102013225870.4
(32)【優先日】2013年12月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ディッケ・ヨッヘン
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03889958(US,A)
【文献】 特開2011−161516(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0007385(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/26
F16J 15/3276
B21B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向に負荷をかけられた円形案内部のための封隙装置であって、
案内ロッドあるいはピストンロッド(10)が、少なくとも一つの案内ブッシュ(13)内で軸方向に可動に支承されており、案内ロッドあるいはピストンロッド(10)には、シール材として案内ブッシュ(13)の正面端部に対して軸方向に隣接して設けられたスクレーパ(18)が割当てられており、かつ機械要素を移動させるためのリング・ブランク・プレスあるいはラジアル・アキシャル圧延機のような成形機内に設けられている封隙装置において、スクレーパ(18)が非弾性の材料から成り、案内ロッドあるいはピストンロッド(10)を収容する部材(7)に接してあるいはこの部材の中で取巻くように構成された、半径方向の動きの遊びを備えた溝(15)に配置されており、
スクレーパ(18)を同心的に取囲む担持リング(16)を備えており、この担持リングが少なくとも一つのリング正面において、埋め込まれたシール材(24)で構成されており、取巻く溝(15)の壁部(22,23)の間の内側の幅が、担持リング(16)の幅に比べてほんの少しだけ大きく、シール材(24)が壁部(22,23)の一つに当接していることを特徴とする封隙装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半径方向に負荷をかけられた円形案内部のための封隙装置であって、案内ロッドあるいはピストンロッドが、少なくとも一つの案内ブッシュ内に軸方向に可動に支承されており、案内ロッドあるいはピストンロッドには、特に機械要素を移動させるためのリング・ブランク・プレスあるいはラジアル・アキシャル圧延機のような成形機内に設けられている、シール材として案内ブッシュの正面端部に対して軸方向に隣接して設けられたスクレーパが割当てられている封隙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リング圧延機あるいはラジアル・アキシャル圧延機またはリングブランクプレスとは、成形機であり、これらの成形機により、リングブランクは半径方向の拡張により所望の横断面を有する継目の無いリングに圧延されるか或いはプレスされる。
【0003】
例えば特許文献1により知られたようなリング圧延機は、一般的に、リングの外側に作用し、駆動される少なくとも一つの主ロールとリングの内側に作用するマンドレルロールを備えている。リングの正面には、二つのアキシャルロール、すなわち上側のアキシャルロールと下側のアキシャルロールが作用することができる。
【0004】
原則として、長く知られたリング圧延機は、駆動される主ロール、案内ロッドを介して移動可能なマンドレルロールキャリッジとリングブランクのためのセンタリングテーブルを収容するラジアルスタンドならびに下側のアキシャルロールとアキシャルキャリッジに圧下可能な上側のアキシャルロールを備えた移動可能なアキシャルスタンドから成る。
【0005】
大抵の場合、液圧を加えられて移動可能な案内ロッドであって、これらの案内ロッドにより、マンドレルロールキャリッジを移動させるために、一般的に、各々二つの互いに隔てられ、従って全部で八つの封隙箇所を備えた案内ロッドは、機械フレームの案内ブッシュ内で軸方向に可動に支承されており、この案内ブッシュは機械フレームの固定式の部品に配置されている。
【0006】
案内ブッシュと同時に案内ロッドの軸受け箇所は、外へ向かって汚染物に対する封隙手段としてのスクレーパにより保護される。その際に、封隙すべき面あるいは案内ロッドに当接するスクレーパは、一般的に、リング圧延機のフレームあるいは単独でフレームと接続可能な蓋に同心的に案内ブッシュに対して同心的に取付けられている。
【0007】
案内ロッドの支承部の機能を果たす案内ブッシュは、案内ロッドの移動の際に半径方向に負荷をかけられる。この際に、案内ブッシュの片面或いは案内ブッシュの円周の一部にわたり作用する磨耗になることがたびたびあり、この磨耗が、案内ブッシュの内周、従って案内ロッドを同心包囲するスクレーパの内周に関しても案内ロッドの偏芯状態に立ち至る。
【0008】
従って、例えば多角形の案内ロッドも一部と見なす円形案内部の中心の移動は、軸方向に移動する際に、横方向の力を同時に加えることにより生じる。この横方向の力は、自重、連結された付加的な質量および/または加工工程あるいは変形工程からの力により生じる。
このことはシリンダにおいて、可動な液圧システム、例えばホイールローダあるいはクレーン車において、おおよそ任意のシリンダの位置においてもあてはまり、これにより機能に基づいて横方向の力が存在する。さらに建設現場での組立に関して、最重量の部品を支持するか或いは接合するために使用されるコンパクトシリンダにおいてもこのことがあてはまる。これらのシリンダは、しばしば高さがある故に極めて悪い案内挙動を有する。付加的に部品は組立中にたびたび不精密に固定されかつ案内されており、このことによりピストンロッドの半径方向のかしぎが生じる。
【0009】
ラジアル・アキシャル圧延機においてすでに挙げたマンドレルキャリッジの他に、この機械において、同様に案内キャリッジの案内ロッドがスケール除去のために不十分に支持されているにすぎない。スケール除去のための垂直リフトにおいて、アキシャルスタンドには(4m)までの全リング高さが使用により消耗される。同時に、例えば250バールで400リットル/分の流出する水により、案内ブロックを介して案内ロッド上にモーメントあるいは横方向の力が生じる。
【0010】
軟質で弾性の材料から製造されているスクレーパは、案内ロッドあるいはピストンロッドのこのような中心の移動に特定の範囲では追従することができる。その上、急速に磨耗しかつそれによりわずかな耐用期間しか容認しないこのような材料は、確かに半径方向に非常に負荷がかけられる円形案内には向いていない。
【0011】
スクレーパの材料が硬質でそれにより摩耗しにくいほど、材料の傾向は案内ロッドあるいはピストンロッドの偏心的移動に従って封隙面の偏心的移動に追従することはいっそう限定される。スクレーパの弾性限界が達成され、その後、案内ブッシュの磨耗により生じる側方移動がさらに増大すると、スクレーパは、案内ロッドあるいはピストンロッドの負荷を軽減された側あるいは半径の一部からから浮上がり、汚れ粒子は案内ブッシュとロッドの間の間隙へ妨げられることなく侵入することができる。
【0012】
従って特にリング圧延機あるいはリングブランクプレスの場合のラフな運転条件の故に、スクレーパが使用されるにすぎず、このスクレーパは極めて硬質で曲がらない、従ってわずかな質量で弾性的な材料から成る。軟質で弾性的スクレーパは極端に急速に磨耗し、かつ取付け位置の故に、大きな手間をかけて交換せねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公開第2917369号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って本発明の根底を成す課題は、半径方向に大きく負荷をかけられた円形案内部のための封隙装置であって、この封隙装置により前述の短所が回避され、案内ブッシュの磨耗が増大する場合に、極めて硬質で剛体のスクレーパを使用する際にも改善された封隙が達成される封隙装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、本発明によれば、スクレーパが非弾性の材料から成り、案内ロッドあるいはピストンロッドを収容する部材に接してあるいはこの部材の中で巻くように構成された、半径方向の動きの遊びを備えた溝が配置されていることにより解決される。案内ブッシュの内周で片側だけがあるいは一部が磨耗し、それにより案内ブッシュの内周部に対する案内ロッドあるいはピストンロッドの案内または位置が同時にずれる際に、スクレーパは溝内部の半径方向の移動に基づいて自動的に中心移動に追従し、従ってスクレーパは自動的に案内ロッドあるいはピストンロッド上で芯出しをすることができ、この案内ロッドを絶えず封隙するように囲んでいる。それにより同時に平行して、案内ブッシュはすでに即座に初めから増大される磨耗から保護される。
【0016】
このようにリング圧延機におけるキャリッジの案内ロッドを軸方向に移動させる際にあるいはシリンダのピストンロッドを軸方向に移動させる際に、案内ブッシュとロッドとの間へ汚染物の侵入を効果的に阻止するスクレーパは、応用に特化してかつ様々に、例えば大規模に案内ロッドあるいはピストンロッドに当接して、このロッドに対して自由に切断されたシールリップあるいはシールエッジにより構成されていてもよい。半径方向の自由空間あるいは動きの遊びがあるために、スクレーパはどの場合にも、極端に硬質で剛体の従って非弾性の材料から成る。
【0017】
弾性的に変形可能なスクレーパ材料の硬度はできるだけ自由に選定されることができる。その理由は、スクレーパを案内ロッドに封隙するように当接させるために、もはや材料の傾向ではなく、案内ロッドあるいはピストンロッドの中心移動に追従できるように、スクレーパの半径方向の変位性が重要である。
【0018】
本発明の好ましい構成は、スクレーパを同心的に取巻く担持リングを意図しており、この担持リングが少なくとも一つのリング正面において、埋め込まれたシール材で構成されていることを意図している。半径方向の可動性と変位性にもかかわらず、案内ブッシュあるいは軸受位置の永久的な封隙は、リング正面に埋め込まれたシール材により達成され、このシールはすなわち密接してかつ永続的にその方を向いた溝の壁部に当接する。その際にスクレーパそれ自体は、その応用に特化した構造方式で変更されないままであり、従って市販の物が使える。その理由は正面シール材は補足部材、すなわち担持リング内に嵌め込まれることにある。次いで担持リングは取付け前に機械フレームあるいはシリンダケーシングの溝内にスクレーパの上にだけ押込まれる必要がある。スクレーパと担持リングは、一体の内臓部品としても、例えば接着結合などにより用意され或いは構成されることができるのが最適である。
【0019】
担持リングと任意に形成されたスクレーパを組合せる際に、中心移動を均一化するための溝内のスクレーパ・担持リングユニットの変位性のための動きの遊びを備えた十分な半径方向の自由空間だけが保証される必要がある。
【0020】
スクレーパ・担持リングユニットは、案内ロッドあるいはピストンロッドに対してどう同軸に溝内に配置されており、スクレーパはその封隙面でもって案内ロッドあるいはピストンロッドの外周部に当接しているが、担持リングのリングの外側は、半径方向の遊びにより取巻く溝の凹所の端部から間隔をおかれている。
【0021】
本発明の他の態様によれば、溝の壁部の間の内のりの大きさが、担持リングの幅に比べてほんの少しだけ大きく、シール材が壁部に当接していることが意図されている。その際に、長所として取巻く溝内での担持リングの容易な半径方向の変位性を可能にするために、溝の幅は、担持リングの幅に比べてわずかたった十分の数ミリだけ大きい必要がある。それにもかかわらず、リング正面の凹所内に埋め込まれたシール材、好ましくはOリングにより、ごみあるいは汚染物が侵入することができることが効果的に阻止される。それにより向かい合った溝と壁部のOリングの封隙が弱い予荷重でもって当接することが支援される。
【0022】
本発明の他の特徴と詳細は、特許請求の範囲、およびラジアル・アキシャル圧延機あるいはリング圧延機と協働する図面および図面において特に到来するマンドレルキャリッジを使用するために示された本発明の実施例の以下の明細書から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】移動可能な軸方向機構と案内ロッドを介して移動可能な半径方向機構を備えたリング圧延機の全体図を示す。
図2】マンドレルキャリッジを移動させるための案内ロッドのための封隙装置の、図1では一点鎖線で囲まれた領域を詳細図として部分断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1にはリング圧延機1が基本的構成で示されている。リング圧延機1はリングブランク2から圧延される継目の無いリングの製造に使用される。
【0025】
リング圧延機1は、主ロール3、マンドレルロール4、上側の円錐ロール5及び下側の円錐ロール6を備えている。主ロール3はリングの外側に作用するが、ロールマンドレルとも呼ばれるマンドレルロール4はリングの内側に作用する。円錐ロール5,6はリングの正面に作用する。これら円錐ロールの間には圧延ギャップが形成される。従って円錐ロール3,4はアキシャルロールとも呼ばれる。
【0026】
主ロール3とマンドレルロール4は、第一のロール対を形成するが、円錐ロール5円錐ロール6は第二のロール対を形成し、これらのロール対の少なくとも各々一つのロールは駆動される。
【0027】
主ロール3は、固定式にリング圧延機1のラジアルスタンド8のフレームあるいは機械フレーム7に配置されているが、マンドレルロール4とリングブランク2のためのセンタリングテーブル9は、案内ロッド10を介して移動可能なマンドレルロールキャリッジ11により収容される。
【0028】
ラジアルスタンド8に水平方向に対向して、リング圧延機1は、上側の円錐ロール5と下側の円錐ロール6を有する移動可能なアキシャルスタンド12を備えている。
【0029】
マンドレルロールキャリッジ11の安定していてかつ遅延の無い可動性を達成するために、全部で四つの案内ロッド10がラジアルスタンド8あるいは機械フレーム7の固定式の部材に設けられており、上側と下側の案内ロッド10は各々対になって向き合っている。
【0030】
図2には拡大された図で、案内ロッド10のための封隙装置が示されている。
【0031】
案内ロッド10は、リング圧延機1の機械フレーム7に互いに間隔をおいて配置された二つの案内ブッシュ13内に軸方向で可動に矢印方向に支承されており、図2では、図1において一点鎖線で囲まれた、下側の案内ロッド10の案内ブッシュ13が示されている。
【0032】
さらに各案内ブッシュ13のための機械フレーム7には、外側の正面端部に対して軸方向に隣接して案内ロッド10を同心的に取巻く周囲の溝15が形成されている。溝15はそのリング内側17により同心的に取囲まれたスクレーパ18を備えた担持リング16を収容する。案内ロッド10上に封隙するように当接するスクレーパ18を含めた担持リング16の高さは、周囲の溝15の高さよりも低く、従って担持リング16のリングの外側19と溝15の凹所端部20の間には、半径方向の自由空間21が形成されており、この自由空間により、スクレーパ18を備えた担持リング16には半径方向に移動するための動きの遊びが可能になる。
【0033】
機械の運転中に必要な、案内ロッド10の軸方向の移動により、案内ブッシュ13は片側があるいは一部が磨耗し、それにより案内ブッシュ13の内周部に対する案内ロッド10の偏心案内または位置を伴う。しかし、スクレーパ18を備えた担持リング16は、溝15の内の半径方向の変位性のために案内ロッド10の中心移動に追従するので、スクレーパ18は自動的に案内ロッド上で芯出しをすることができ、この案内棒を周囲で絶えず封隙するように囲んでいる。
【0034】
周囲の溝15の内側における担持リング16の楽な半径方向の変位性を容易にするために、溝15の壁部22,23の間の内のりの大きさは担持リング16の幅に比べて十分の数ミリ大きい。
【0035】
製造技術的理由から、特に機械フレーム7内にスクレーパ18と担持リング16を取付ける際の自由な作業性のために、溝15の外側の壁部23はネジ止め部分として構成されている。
【0036】
最後に、担持リング16は有利にはOリングとして構成され、内側のリング正面に埋め込まれたシール材24を備えており、このシール材により溝15の内側の壁部22に対する担持リング16の封隙が行われるので、半径方向の変位性にもかかわらず、汚れまたは不純物が案内ブッシュ13へ達することができない。
【符号の説明】
【0037】
1 リング圧延機
2 リングブランク
3 主ロール
4 マンドレルロール
5 上側の円錐ロール
6 下側の円錐ロール
7 案内ロッドあるいはピストンロッドを収容するための機械フレーム或いは部材
8 ラジアルスタンド
9 センタリングテーブル
10 案内ロッド
11 マンドレルキャリッジ
12 アキシャルスタンド
13 案内ブッシュ
14 矢印
15 溝
16 担持リング
17 リングの内側
18 スクレーパ
19 リングの外側
20 凹所の端部
21 半径方向の自由空間
22 壁部
23 壁部
24 シール材
図1
図2