特許第6259113号(P6259113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6259113点滴バッグに治療用流体を充填するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6259113
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】点滴バッグに治療用流体を充填するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20171227BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20171227BHJP
   A61M 39/10 20060101ALI20171227BHJP
   A61M 39/26 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   A61J1/20 314Z
   A61M5/14 500
   A61M5/14 510
   A61M39/10 120
   A61M39/26
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-554731(P2016-554731)
(86)(22)【出願日】2014年11月17日
(65)【公表番号】特表2017-502795(P2017-502795A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】US2014065972
(87)【国際公開番号】WO2015077184
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2016年8月29日
(31)【優先権主張番号】61/908,674
(32)【優先日】2013年11月25日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508004797
【氏名又は名称】アイシーユー・メディカル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェーソン・ウッドベリー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ・ハチェイ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マッコール
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/096911(WO,A1)
【文献】 特開2000−126307(JP,A)
【文献】 特表2010−527276(JP,A)
【文献】 特開2003−225305(JP,A)
【文献】 米国特許第5405333(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
A61M 5/14
A61M 39/10
A61M 39/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子システムとともに点滴アセンブリを使用して、点滴アセンブリを患者のための治療用医薬流体で満たす方法であって、
点滴アセンブリを得るステップであって、点滴アセンブリが、
下側に出口を備えた空の点滴バッグと、
上側端部および下側端部を有し、前記点滴バッグまたは点滴筒に流体連通した状態で恒久的に取り付けられ、前記点滴アセンブリがポールスタンドに取り付けられたときに、前記点滴バッグの前記下側の前記出口から、臥位にある患者の腕に取り付けられた点滴チューブのアクセスポイントまで延ばすことができるように十分に長くなっているチューブと、
第1の端部および第2端部を有し、前記第1の端部が、前記チューブに流体連通した状態で恒久的に取り付けられ、前記点滴アセンブリ内に流体を封止するための開位置および閉位置を含む、閉鎖可能な雄型ルアーコネクタと、
を備える、点滴アセンブリを得るステップと、
前記点滴アセンブリを、点滴バッグを充填するための電子システムに連結するステップであって、前記閉鎖可能な雄型ルアーコネクタを前記電子システムに取り付けるステップを含む、ステップと、
前記点滴バッグ、点滴筒、チューブ、もしくは閉鎖可能な雄型ルアーコネクタのいずれも互いに組み立てまたは取り付けを必要とすることなく、前記閉鎖可能な雄型ルアーコネクタを経由し、前記チューブを経由し、かつ前記点滴筒および前記点滴バッグのうちの少なくとも一方を経由してまたは前記点滴筒および前記点滴バッグのうちの少なくとも一方へと、流体を流れ込ませるによって、前記点滴バッグを充填するステップであって、それによって、患者に取り付けられた点滴チューブのアクセスポイントにすぐに連結できる状態の、プライミング済み閉鎖点滴アセンブリを供給する、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記点滴バッグが、追加の流体を前記点滴バッグに導入することを可能とする、または前記点滴バッグに導入された流体の少なくとも一部分を取り出すことを可能とする少なくとも1つのアクセスポートをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記点滴バッグが、少なくとも2つのアクセスポートを備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アクセスポートの1つが、閉鎖可能な雌型ルアーコネクタであり、前記アクセスポートの1つが、針によってアクセス可能な穿刺可能隔壁を備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記点滴筒、前記チューブ、または前記閉鎖可能な雄型ルアーコネクタのいずれも、前記点滴バッグの隔壁を穿刺して前記点滴バッグの内部にアクセスするためのバッグスパイクを備えないか、または前記バッグスパイクに取り付けられない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記閉鎖可能な雄型ルアーコネクタが雄型端部を備え、前記雄型端部が前記閉位置において前記雄型端部と同一平面となる内部閉鎖要素を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、2013年11月25日出願の米国仮特許出願第61/908,674号、名称「Method and Systems for Filling IV Bags with Therapeutic Fluid」の利益を主張するものであり、その全内容を参照により本明細書に組み込み、また本明細書の一部とする。
【0002】
本発明は、一般に医療用流体システムに関し、具体的には点滴流体を患者に供給するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
典型的な病院環境では、患者に静脈内点滴治療が必要な場合、医療従事者が、(i)可撓性隔壁を備えた大径ポートを有する充填済み点滴バッグ(IV bag)を取得し、(ii)隔壁を殺菌パッドで拭き取り、(iii)大型の中空スパイクを用いてバッグの隔壁を穿刺する。隔壁は、スパイク周辺で封止を成す。スパイクは空の医療用チューブに連結され、このチューブは、流体コネクタに連結することができる。
【0004】
医療用チューブは、医療用流体を点滴バッグから患者に搬送するように構成されているが、チューブを患者と流体連通にて連結させ得る前に、液体を用いて医療用チューブを「プライミング」して、液体から空気または蒸気が患者の脈管構造内に入り込むのを回避しなければならず、空気や蒸気が脈管構造内に入り込むと極めて有害となり得る。チューブをプライミングするには、医療従事者は、点滴バッグをチューブよりも高い位置に配置し、時折、点滴バッグを圧搾し、重力および液圧によって点滴バッグ内の液体がチューブを通って液柱状に下方に送られるようにしむけ、チューブ内の空気および蒸気をチューブの底端部から外に押し出す。液柱がチューブの底端部に到達すると、典型的には少量の液体をそのチューブの端部から、またはチューブの端部に取り付けられたコネクタの端部からトラッシュカンまたはシンクに滴下させ、残留空気または蒸気が流体ラインに確実に残らないようにする。
【0005】
点滴バッグにスパイクを刺し、流体ラインをプライミングする工程には、患者治療現場においてかなりの時間と医療従事者による注意が必要となり、また、患者治療現場に多数の構成部品を用意しておく必要がある。さらに、バッグにスパイクを刺す工程には固有の欠点が多くある。スパイクの先端部は鋭く、医療従事者または患者を不注意に刺してしまうことがある。スパイクまたはスパイクポートの隔壁には、適切に消毒されていないと微生物が付着することがあり、そのため取付け時に微生物が点滴流体内に入り込むおそれがある。スパイクとスパイクポートとは、適切に連結されていないと、それらの間で漏れが生じるおそれがある。また、プライミング工程によって、少量の蒸気および液体が漏れ出るおそれもあり、特に液体が化学療法剤または免疫抑制剤など、有害となる可能性がある場合、危険となり得る。
【0006】
さらに、多くの医療処置環境では、日々、様々な多くの患者のために、多数の点滴バッグに、各自に応じた量および種類の薬剤を充填する必要がある。こうした充填を手動で行う場合、医療技術者がこの作業を繰返し行うことにより、間違いが生じやすくなる。また、医療技術者が有害な医薬蒸気に曝され続けることにもなり得、また、特に、シリンジプランジャが特に幅広く、前後に押しにくい大径の充填シリンジを使用する場合には、医療技術者にとって物理的に困難な作業ともなり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの態様において、可搬式電子流体分注システムは、特定の患者用にカスタムメイドされた、特定の量および/または特定の濃度の治療用流体を含む充填済み、プライミング済み点滴バッグアセンブリを供給することができる。いくつかの態様における点滴バッグアセンブリは、実質的に完全に閉鎖した流体システムの一部を成すことができる。点滴バッグから流体を取り出し、そのような流体を患者に注入するために使用されるものと同じ点滴バッグアセンブリの流体ラインおよびコネクタを用いて、点滴バッグを充填することができる。点滴バッグと点滴筒との間、または点滴バッグとチューブとの間、または点滴筒とチューブとの間、またはチューブと閉鎖可能、再封止可能なコネクタとの間などの、点滴アセンブリに沿った連結ポイントはそれぞれ、ユーザによる分離に耐えることができる。いくつかの実施形態では、患者治療現場の医療従事者は、これらの構成要素のいずれも互いに取り付ける必要がなく、かつ/または患者治療現場の医療従事者は、点滴バッグのスパイクポートにスパイクを導入する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】一体型の液体送達経路を備える点滴アセンブリの一例と流体連通している可搬式電子医療用流体分注システムの斜視図である。
図1B】一体型の液体送達経路を備える点滴アセンブリの別の例と流体連通している、図1Aの電子医療用流体分注システムの斜視図である。
図2図1に示す一体型の液体送達経路を備える点滴アセンブリの上面図である。
図3】1つまたは複数の流体送達システムに使用することができる多数の種類のうちの2例を示す雄型コネクタおよび雌型コネクタの断面図である。
図4】患者と流体連通している、一体型の液体送達経路を備える充填済み、プライミング済み点滴アセンブリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で例示または説明する構成要素、システム、アセンブリ、および方法は、例である。一実施形態で例示または説明するいかなる構成要素、構造体、特徴、またはステップも、別の実施形態で例示または説明するいかなる構成要素、構造体、特徴、またはステップにも追加して、または置き換えて使用することができる。本明細書の構成要素、構造体、特徴、またはステップは、本発明に必須または不可欠なものではない。
【0010】
図1Aおよび図1Bに示すように、電子流体送達システム100は、電力調整器、マイクロプロセッサ、駆動モータ、駆動機構(例えば、ギヤ類)、メモリ、ならびに通信ハードウェアおよびソフトウェアなどの様々な内部構成要素を収容または支持する外側ハウジング145を備えることができ、通信ハードウェアおよびソフトウェアによって、ネットワーク、あるいは実施された特定の流体送達プロセスについての情報を備えたラベルまたはレポートを作成するプリンタなどの1つまたは複数の周辺装置との電子通信が可能となっている。電子流体送達システム100はまた、電子表示装置および/もしくはユーザ入力システム110、医療用液体が充填された1つまたは複数の取替え式液体源容器120(図示の液体医療用バイアルなど)、1つまたは複数の液体ポンプ、および/もしくは液体測定器140(図示のシリンジポンプなど)、ならびに/または液体ポンプおよび/もしくは液体測定器140に機能的に結合された1つまたは複数の駆動システム190を備えることができる。
【0011】
電子流体送達システム100は、ユーザ入力システム110を介して、または他の何らかの形で、ユーザから1つまたは複数のコマンドを受け取るように構成することができる。ユーザコマンドは、特定の種類の1種または複数種の薬剤を、特定の容量または濃度で送達することを開始することができる。液体送達コマンドを受け取ると、電子流体送達システム100は、駆動システム190により、液体ポンプおよび/または測定器140を作動させて液体源容器120からある量の液体を取り出し、電子流体送達システム100の流体経路またはチャネル中を移動させ、図示の点滴アセンブリ200などの流体保存先容器に流れ込ませることができる。流体経路またはチャネルは、電子流体送達システム100のいくつかの異なる構造体を備えることができ、液体はその中を経由して液体源容器120から流体保存先容器200へと進む。
【0012】
図示のバイアルアダプタ165などのアダプタを、液体源容器120と流体チャネルとの間のインターフェイスとすることができる。このアダプタは、液体バイアルの隔壁(septum)を貫通させるための中空スパイク(図示せず)を備えることができ、それによってバイアル内に収容された液体にアクセスすることができる。いくつかの実施形態では、複数の異なる液体源容器120、流体チャネル、ポンプ、および/または液体保存先容器130、210を設けてもよい。いくつかの実施形態では、異なる種類の薬剤など、異なる医療用流体を有する複数の異なる液体源容器120を利用して、同じ保存先容器130、210にそれらの流体を指定された組合せで注入することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、液体保存先容器を支持するための支持体180を設けてもよい。例示のように、支持体180は、実質的に水平位置に向けることができるが、吊下げ具などの実質的に垂直な支持体を含めて、他の多くの種類の支持体を使用することができる。支持体180は、点滴アセンブリ200をその上に保持または固定するプラットフォームおよび/または配置部とすることができ、点滴アセンブリ200は、図示のように、点滴バッグ(IV bag)210、点滴筒230、チューブ220、および閉鎖可能な雄型ルアーコネクタ150などの流体ラインコネクタを備える。
【0014】
点滴アセンブリ200は、電子流体送達システム100の流体経路またはチャネルに取外し可能に取り付け、かつ/または流体連通させることができ、この電子流体送達システム100は、1つまたは複数のアダプタ、ポンプ、コネクタ(再封止可能な針不使用雄型または雌型ルアーコネクタ150、160など)、チューブ、および取り外し可能な使い捨て流体移送カートリッジ170を含むことができる。前述の構成要素はいずれも、必須または不可欠なものではなく、ここに挙げたものの代わりに、またはそれらに加えて、他の様々な種類の構成要素を使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、特に流体ラインにクランプまたは停止コックを用いた無害の流体(benign fluids)が関与する実施形態では、再封止可能な針不使用コネクタの代わりに、開放端の雄型または雌型流体コネクタを用いてもよい。電子流体送達システム100の流体チャネルの様々な構成要素、すなわち液体源容器120、点滴アセンブリ200、シリンジポンプ140、およびカートリッジ170などは、取り外し、交換することができ、これらの構成要素はそれぞれ取り付けられると流体チャネルの一部分を成すことができる。これらの構成要素はそれぞれ、流体チャネルと繰返し再封止可能に連結することができ、流体チャネルから取り外されると、これらの構成要素はそれぞれ、分離後に搬送流体または残留流体が漏れ出るのを防止する封止端部を備えることができる。流体チャネルの取外し可能な各取付けポイントにおける再封止可能な連結は、一連の雄型および雌型の針不使用ルアーコネクタ150、160を用いて行うことができる。
【0015】
電子流体送達システム100は、換気フード内に配置し、この換気フード内で流体の移送を行うことができるが、いくつかの実施形態では、図示のように、いかなる揮発気体および流体も閉鎖されたシステムの内部で維持されるので、システム100を換気フード内で使用する必要はない。いくつかの実施形態では、流体は、流体ポンプ140の往復運動の作用を受け、実質的に閉鎖されたシステム中を液体源容器120から、電子流体移送カートリッジ170の流体チャネル中を経由して流体保存先容器200へと進み、ここでは液体および蒸気が流体移送中に実質的に漏れ出ることが完全に防止される。本明細書では、別段の指示がない限り、「実質的に完全に防止される」または「実質的に完全に閉鎖される」または「実質的に完全に閉鎖されたシステム」という用語、および関連する、または類似の用語は、通常の使用時、および通常の動作条件時に、蒸気および液体が、医療従事者または患者に臨床的に重大な悪影響を及ぼすのを回避するのに必要となる程度まで、境界が画された領域の内部に維持されるプロセスおよびシステムを指す。また、いくつかの実施形態では、電子流体送達システム100の流体チャネルの一部を一時的に成し、または流体チャネルに一時的に取り付けられる取外し可能な各構成要素(カートリッジ170、または源容器120およびバイアルアダプタ165、または点滴アセンブリ200など)は、それ自体が再封止可能な、実質的に完全に閉鎖された流体システムを個々に形成することができ、したがって流体移送中に液体および蒸気が漏れ出ることが実質的に完全に防止され、また、有害な流体の調合および移送中に、医療従事者が有害な液体および蒸気に曝される量および頻度を大幅に低減し、またはなくすことができる。
【0016】
流体移送カートリッジ170は、1つまたは複数の流体源容器120からの流体を選択的に1つまたは複数の流体保存先容器210に送り込む、電子流体送達システム100の流体チャネルの使い捨て部分を備えることができる。流体移送カートリッジ170は、液体が流体源容器120から流体保存先容器210の方へと一方向に移動することを可能とし、一方で意図せず逆方向に流れることは阻止する1つまたは複数の内部弁(図示せず)を含むことができる。図示のように、流体移送カートリッジ170は、閉鎖可能な雄型および雌型コネクタ150、160などの、1つまたは複数の閉鎖可能、再封止可能な針不使用コネクタを備えることができ、これらのコネクタは、電子流体送達システム内の流体チャネルの他の部分、例えば流体源容器120のアダプタ、および流体保存先容器210のコネクタなどに連結するように構成されている。流体移送カートリッジは、ホルダ195によって定位置に支持または保持することができる。本明細書では、別段の指定がない限り、「連結する」、「取り付ける」、「保持する」という用語、および関連する、または類似の用語は、直接、または間接的に互いに、または共通の構造体に一体につなぎ合わされる構造体を広義に指すことが企図され、これらの用語には、互いに分離可能な部品、または互いに一体型の部品も含めることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、例示のように、電子流体送達システム100は、異なる種類の医薬液を送達するための複数の流体経路またはチャネルを備えてもよい。例えば、第1の経路またはチャネルを、第1の種類の液体(例えば、水、食塩水、電解液、または他の希釈液などの不活性または無害の液体)を、第1の液体源容器120から、第1の流体ライン175中を経由し、第1のポンプまたは測定器140を経由して第1の流体保存先容器130へと供給するように構成することができ、第2の経路またはチャネルを、第2の種類の液体(例えば、化学療法剤、抗生物質、免疫抑制剤、および/または疼痛緩和剤などの1つまたは複数の薬剤、あるいは薬剤の組合せ)を、第2の液体源容器120から、第2の流体経路中を経由し、第2のポンプまたは測定器140を経由して第2の流体保存先容器、例えば点滴アセンブリ200などに供給するように構成することができる。いくつかの実施形態では、第1および第2の流体経路またはチャネルの両方を用いて、点滴アセンブリ200などの同じ流体保存先容器に順次、または並行して、かつ/または流体保存先容器にある同じ流体ポートから、または同じ流体保存先容器にある複数の異なる流体ポートから充填することができる。
【0018】
図2を参照すると、点滴アセンブリ200の形の流体保存先容器の一例が示されている。他の多くの種類または形状の点滴アセンブリ、および他の多くの種類または形状の流体保存先容器を、例示の実施形態に加えて、またはその代わりに用いてもよい。本明細書では、点滴バッグまたは点滴アセンブリに関するいかなる言及も、それだけに限られるものではないが、いかなるボトル、バイアル、カートリッジ、シリンジ、チャンバ、バッグ、タンク、または他の容器も含めて、他のいかなる種類の流体保存先容器をも指し、または適用可能であることを理解されたい。点滴アセンブリ200は、その初期状態において、いくつかの実施形態では、2層の可撓性プラスチックを実質的に全周囲に沿って接合することによって形成することができる、空の、実質的に平らな点滴バッグ210と、長チューブ220と、例示の閉鎖可能な雄型ルアーコネクタ150などの閉鎖可能な針不使用コネクタ(使用する場合)とを備える。いくつかの実施形態では、図示のように、点滴アセンブリ200は、閉鎖可能な針不使用雌型ルアーコネクタ160、および/または穿刺可能な隔壁コネクタ250などの1つまたは複数の入口または出口ポートを含む、1つまたは複数の追加の流体ラインポート(使用する場合)を備えることができ、これらの一方、または両方ともを、シリンジまたはコネクタなどの別の医療用器具を入口または出口ポートの一方、または両方に取り付けることによって、流体を点滴バッグ210に加える、またはそこから取り出すことが可能となるように構成することができる。1つまたは複数の追加の流体ポートは、点滴アセンブリ200の異なるポートから、点滴アセンブリ200に異なる種類の液体を充填できるように構成することができる。例えば、1種または複数種の活性または潜在的に有害な治療用流体(例えば、化学療法剤または免疫抑制剤)などの第1の種類の流体を第1のポート160から注入し、1種または複数種の不活性または無害の液体(例えば、水、食塩水、または他の希釈液)などの第2の種類の流体をコネクタ150、およびチューブ220などの第2の流体経路を経由して注入することができる。しかし、いくつかの実施形態では、全液体を、単一の流体ラインおよびコネクタから点滴アセンブリ200に移し入れ、そこから取り出すことができる。
【0019】
場合によっては、流体を単一の流体ラインおよびコネクタから移し入れる場合、異なる種類の流体を用いて点滴アセンブリ200を順次充填してもよい(例えば、最初に活性な薬剤および/または潜在的に有害な薬剤、次に水、食塩水、または他の希釈液などの無害の第2の液体を充填する)。場合によっては、流体を異なる流体ラインおよびコネクタから移し入れる場合、異なる種類の流体を用いて、点滴アセンブリ200を並行に、または概ね同時に充填することができ、このような構成では、いくつかの実施形態では、充填をより短時間で実現することができる。さらに、場合によっては、異なる薬剤を同じ点滴アセンブリ200の異なるポートから充填することによって、より完全な混合を実現する一助とすることができ、点滴バッグ中の液体が概ね一様な希釈および濃度となる。また、活性または潜在的に有害な薬剤を代替の、または非患者注入ライン160、250中を経由して移し入れる場合、並行注入によって、運搬中、および患者治療現場において、点滴アセンブリの流体ラインを最初に開口するときに、先端の流体コネクタ150または注入流体チューブ220に有害な薬剤が位置するのを回避する一助とすることができる。いくつかの実施形態では、図示のように、点滴アセンブリ200は、患者注入流体ライン内に点滴筒230を備えることができる。
【0020】
例示の実施形態では、点滴筒230は、点滴バッグ−点滴筒結合部260のところで、点滴バッグ210の底部開口に直接、恒久的、かつ不可逆的に連結または結合され、長チューブ220は、点滴筒−チューブ結合部290のところで、点滴筒230の底部開口に直接、恒久的、かつ不可逆的に連結または結合され、閉鎖可能な雄型ルアーコネクタ150または閉鎖可能な雌型ルアーコネクタ(図2には示さず)などの閉鎖可能な針不使用コネクタが、チューブ−コネクタ結合部300のところで、長チューブ220の底端部に直接、恒久的、かつ不可逆的に連結または結合されている。いくつかの実施形態では、長チューブ220は、点滴バッグ210の底部開口に、点滴筒230なしで直接、恒久的、かつ不可逆的に連結または結合されている。追加の流体ラインポートの一方、または両方を、点滴バッグ−穿刺可能な隔壁コネクタ結合部270のところで、かつ/または点滴バッグ−コネクタ結合部280のところで、点滴バッグ210の底部開口に直接、恒久的、かつ不可逆的に結合してもよい。結合領域260、270、280、290、300における結合はいずれも、接着剤、溶媒、超音波溶接、熱成形、熱かしめ、一方向ねじ取付け、スナップ嵌め、締り嵌めなどを用いるなど、適切な任意の形で実現することができる。いくつかの実施形態では、これらの結合部に恒久性があることによって、閉鎖されたシステムを実現し、微生物が静脈ラインに入る危険を軽減し、かつ医療従事者および患者が危険な流体または蒸気に曝される危険を軽減する一助となっている。これらの結合部に恒久性があることによって、(バッグポートに挿入されていたバッグスパイクを引っ張るなどによって)流体ラインが不意に外れる、または引き抜かれるのを回避する一助とすることができる。いくつかの実施形態では、これらの構成要素210、230、220、150のいずれかとの間の1つまたは複数の連結ポイントは、チューブ220のもつれまたはねじれを回避する一助となるように回転または旋回連結部を備えることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、チューブ220は、流体ラインに破壊的な度合いの張力が生じることなく、かつ患者の動きを過度に拘束することなく楽に延ばすことができるように十分長くすることができ、静脈ポール(図4参照)または他のホルダの吊下げ位置にある点滴バッグ210の典型的な位置、またはその付近から、別の流体コネクタ(例えば、閉鎖可能な針不使用雌型ルアーコネクタ160)との取付けポイントなど、流体ポンプ付近、または標準の病院ベッド上で臥位にある患者付近の領域まで十分長くすることができ、この別の流体コネクタは、患者まで延びる流体ラインに取り付けられている。いくつかの実施形態では、チューブは、長さが少なくとも約2.5フィート(30インチ)、または少なくとも約3フィート(36インチ)であり、または約2.5フィートから約3.5フィートの間、または約30インチから約100インチの間である。いくつかの実施形態では、チューブは、チューブの一端部からチューブの他方の端部まで、または点滴バッグ210もしくは点滴筒230の連結ポイントから再封止可能なコネクタ150まで、実質的に同じ厚さ、硬度、可撓性、直径、および/または張力強度の連続した同質の押出成形材料から形成することができる。
【0022】
例示のように、いくつかの実施形態では、点滴アセンブリ200内の流体経路は、点滴バッグ210内のある位置から、流体の流れに対していかなる閉塞、弁、障害、および/または抵抗もなく、点滴筒230および/またはチューブ220中を経由し、閉鎖可能なコネクタ150へと開放し連続して流体連通するように構成される。いくつかの実施形態では、点滴アセンブリ200の流体経路は、一体型であり、すなわち点滴バッグ210内のある位置から、点滴筒230および/またはチューブ220中を経由し、閉鎖可能なコネクタ150に達する流体経路を点滴アセンブリ200内で形成している構成要素間の連結部は、点滴バッグ210から患者に達する点滴アセンブリ200内の流体送達経路内のいかなる連結ポイントにおいても、恒久的かつ/またはユーザによる分離に耐えるように構成されている。
【0023】
図3は、本明細書に開示の本発明で使用することができる、閉鎖可能または再封止可能な針不使用雄型および雌型ルアーコネクタ150、160のある例を示している。適切な状況では、開放端コネクタおよび/または非標準コネクタを含めて、他の多くの種類のコネクタを使用することができる。いくつかの実施形態では、例示のように、コネクタは、例えば、ISO594標準に準拠した標準の点滴用医療ルアーコネクタである。本明細書では、雄型コネクタに関するいかなる言及も、雌型コネクタと互いに置換え可能であることを理解されたく、また、本明細書では、適切に調整すれば、雌型コネクタに関するいかなる言及も、雄型コネクタと互いに置換え可能であることを理解されたい。いくつかの実施形態では、流体コネクタアダプタを用いて、流体ライン間で適切な連結を行うことができる。例えば、2つの雄型流体コネクタを接合して流体経路を完成させなければならない状況では、流体経路に互いに逆向きに配置され、流体導管またはチューブと一体に接合された1対の雌型流体コネクタを備えるアダプタを雄型流体コネクタに取り付けることができる。いくつかの実施形態では、そのようなアダプタを用いて、例えば、雄型ルアーコネクタをカートリッジ170の出口ポートに配置し、雄型ルアーコネクタを、点滴アセンブリ200のチューブ220の端部に配置して、カートリッジ170と点滴アセンブリ200とを連結することができる。
【0024】
第1のコネクタ150は、対応する雌型コネクタ160と係合していないときには、流体がコネクタから漏れ出る、またはそこに入り込むのを防止するが、対応する雌型コネクタ160と係合しているときには、流体が流れるのを可能とするように構成された閉鎖可能な雄型ルアーコネクタでよい。図示の実施形態では、第1のコネクタ150は、カリフォルニア州サンクレメンテのICU Medical, Inc.よって製造された、閉鎖可能な雄型コネクタSpiros(登録商標)の一バージョンである。第1のコネクタ150は、第2のコネクタ160に取付け可能に構成することができ、第2のコネクタ160はやはりICU Medical, Inc.よって製造された、閉鎖可能な雌型コネクタClave(登録商標)の一バージョンとして例示されている。
【0025】
第1のコネクタ150は、ハウジング398、弁部材400、弾性部材402、封止リング404、エンドキャップ406、およびOリング407を含むことができる。ハウジング398は、概ねチューブ形状でよく、ハウジング中を軸方向に延びる通路408を含むことができる。ハウジング398は、基部412のところでハウジング398の残りの部分と連結する雄型ルアー先端部410を含むことができる。ルアー先端部410は、概ねチューブ形状でよく、また、ルアー先端部410はその端部に孔414を含むことができ、通路408へのアクセスが可能となっている。例示のように、いくつかの実施形態では、コネクタを用いて、コネクタが閉鎖している場合に、中の流体が流体経路の開口から漏れる、蒸発する、または他の形で漏れ出るのを実質的に完全に防止することができる。
【0026】
ルアー先端部410は、例示のように、一般にシュラウド418によって概ね取り囲むことができる。いくつかの実施形態では、ルアー先端部410は、シュラウドの縁部420をある距離越えて延在している。シュラウド418は、その内面に内ねじ山422を含むことができる。内ねじ山422を用いて、雌型コネクタ160を固定することができる。シュラウドは、ハウジングの他の部分よりも小さい外径を有する切欠き部分424を含むことができる。切欠き部分424は、弾性部材402の一部分と係合するように構成することができる。
【0027】
ハウジング398は、様々な材料から構築することができる。ハウジング398は、ポリカーボネート、または他のポリマー材料などの剛性材料から構築することができる。いくつかの実施形態では、ハウジング398は、バイエル社(Bayer)製マクロロン(Makrolon(登録商標))、または他の適切な任意の材料などの疎水性材料から構築してもよい。いくつかの実施形態では、ハウジング398は、実質的に透明の材料から形成してもよい。
【0028】
コネクタ150は、基部444に形成された開口からチューブ446へと軸方向に延びる流体通路440を含むことができる。いくつかの実施形態では、通路440はチューブ446よりも基部444の方で広くすることができる。いくつかの実施形態では、チューブ446は、狭小先端部448を含む。いくつかの実施形態では、先端部448は、テーパの付いた外面を有することができる。いくつかの実施形態では、先端部448は、シリコーンゴムなどの可撓性または圧縮可能な材料から作製することができ、それによって先端部448とシェルフ416との間での流体封止を成しやすくしている。いくつかの実施形態では、チューブは、流体通路440にアクセスするための1つまたは複数の孔450を含むことができる。孔450は、例えば、チューブ446の先端部448に形成することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、弁部材400は、基部444から延び、かつチューブ446の両側に配置された2本の支柱452a、452bを含むことができ、したがってチューブの両側で開放空間が画定されている。いくつかの実施形態では、チューブ446は、支柱452a、452bの端部を越えて軸方向に延ばすことができる。弁部材400は、ポリカーボネート、または他のポリマー材料などの様々な材料から構築することができる。いくつかの実施形態では、弁部材400は、ハウジング398と同じ材料から構築することができる。いくつかの実施形態では、弁部材400と、ハウジング398とは、異なる材料から構築することができる。いくつかの実施形態では、弁部材400は、複数の材料または複数の部片から構築することができる。例えば、先端部448は、弁部材400の残りの部分よりも可撓性のある材料から構築することができる。いくつかの実施形態では、弁部材400は、実質的に不透明な材料から形成することができる。
【0030】
弾性部材402は、長手方向に延びる伸縮性部材(図示せず)によって互いに連結された第1のリングと第2のリングとを含むことができる。この伸縮性部材は、シリコーンなどの、伸張させると復元力が生じる伸縮性材料から作成することができる。したがって、この弾性部材は、リングが互いから引き離されると、リングをその弛緩した形状に復元させるように機能する。いくつかの実施形態では、リングもやはり、伸縮性部材を形成するために使用されたものと同じ材料などの伸縮性材料から構築される。いくつかの実施形態では、第2のリングは、第1のリングよりも直径を大きくすることができる。いくつかの実施形態では、第2のリングは、外面にテーパを付けることができ、したがって第2のリングの、第1のリングに最も近い端部は、第2のリングの、第1のリングから最も遠い端部よりも広くなっている。
【0031】
封止リング404は、概ね円筒形状でよく、軸方向に中を貫通して延びる穴を有することができる。封止リング404は、円筒形の本体区画468を有することができ、この本体区画の一端部にOリングが配置されている。封止リング404は、様々な材料から構築することができる。いくつかの実施形態では、封止リング404は、シリコーンゴムなどの変形可能または伸縮性の材料から構築することができる。
【0032】
エンドキャップ406は、第1のエンドキャップ部材405と、第2のエンドキャップ部材409とを含むことができる。第2のエンドキャップ部材409は、取付け部分、プランジャ、および取付け部分とプランジャとの間に位置するディスク部分を含むことができる。第2のエンドキャップ部材409は、その中に軸方向に配置された流体通路を有することができる。いくつかの実施形態では、プランジャは概ねチューブ形状でよい。いくつかの実施形態では、プランジャの外面は、切欠き領域を含み、この領域は、Oリング407をその中に受けるように構成することができる。
【0033】
Oリング407は、シリコーンゴムなどの伸縮性材料から構築することができ、したがってプランジャの縁部を覆って伸張させ、切欠き領域内に着座させることができる。いくつかの実施形態では、Oリングは、弾性部材402および/または封止リングと同じ材料から構築することができる。いくつかの実施形態では、Oリングは、切欠き領域内に着座させると、Oリング407の最も厚い部分が、プランジャの外面をある距離越えて半径方向外方に延びるように寸法設定することができる。
【0034】
弁部材400は、チューブ446が通路408に入るように、ハウジング398に摺動可能に挿入することができる。チューブ446の狭小先端部448は、封止リング404の穴を貫通し、シェルフ416に当接するまで雄型ルアー先端部410に通すことができる。チューブ446は、その穴を実質的に満たす幅を有することができ、封止リング404のOリング407部分に押し付けられて、それらの間で液体封止を成す。支柱452a、452bは、ハウジング398内の孔を貫通することができ、したがって支柱452a、452bは、雄型ルアー先端部410とシュラウド418との間に位置する。
【0035】
弾性部材402は、弁部材400をハウジング398に対して付勢するように機能することができる。第1のリング460は、弁部材400の基部444の下側部分458に嵌合させることができ、したがってリング460の表面が突出部454に当接することになる。第2のリング462は、ハウジングの切欠き部分424に嵌合させることができる。伸縮性部材は、チャネル内に配置することができる。
【0036】
第1のコネクタ150は、第2のコネクタ160と係合するように構成することができる。いくつかの実施形態では、第2のコネクタ160は、図示のように、閉鎖可能かつ再封止可能な針不使用雌型コネクタでよい。様々な種類の雌型コネクタ332を使用することができる。図示の雌型コネクタ160は、ハウジング490、スパイク492、基部494、および、弾性封止要素496を含む。流体通路498が、基部494と、スパイク492とを貫通することができる。スパイク492は、通路498と、スパイク492の外側領域との間の流体連通を実現する1つまたは複数の孔500を含むことができる。封止要素496は、スパイク492を実質的に取り囲むように成形し、配置することができる。封止要素496は、その圧縮時に、スパイク492の先端部が封止要素496の端部を越えて出ることが可能となるように開口することができる、閉鎖可能な開口502またはスリットを含むことができる。ハウジングは、雄型コネクタ150のハウジング398にある内ねじ山422と係合するように構成された外ねじ山504を含むことができる。チューブ334の端部は、雌型コネクタ160の端部に接着剤、締め具、摩擦もしくは圧力嵌め、または他の適切な形で連結させて、液密連結を成すことができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、ハウジング398、封止リング404、弾性部材402、弁部材400、および第1のエンドキャップ部材405は、第2のエンドキャップ部材409に対して長手軸周りで回転させることができる。したがって、点滴バッグアセンブリの雌型コネクタ160を雄型コネクタ150に取り付ける際、雄型コネクタ150のハウジング398を回転させてねじ山504とねじ山422とを係合させる間も、雌型コネクタ160を静止したまま保持することができる。雌型コネクタ332は、雄型コネクタ150と係合させる間、また、係合解除する間も回転させる必要がないので、チューブ334がねじれる、またはもつれるのを回避することができ、雌型コネクタ332の回転に対処するために、ユーザが点滴バッグをねじる必要がない。
【0038】
雌型コネクタ160と係合していない場合、雄型コネクタ150は、封止することができる。いくつかの実施形態では、流体は、雄型コネクタ352のところで雄型コネクタ150に入り、エンドキャップ406の通路478を経由し、弁部材400の通路440を経由し、孔450を経由し、そして雄型ルアー先端部410の通路408の一部分へと達することができる。
【0039】
雄型コネクタ150が雌型コネクタ160と係合させられる場合、雌型ルアーコネクタ332の外ねじ山504を、シュラウド418にある内ねじ山422と係合させることができ、それによって雌型コネクタ160が雄型コネクタ150に固定される。雄型ルアー先端部410の縁部によって、弾性封止要素496を押圧し圧縮することができ、したがってスパイク492は、孔500が露出するまで開口502を貫通することになる。雌型ルアーコネクタ332のハウジング490の端部は、雄型ルアー先端部410とシュラウド418との間にある空間に、支柱452a、452bと接触するまで入れることができる。雌型ルアーコネクタ332が雄型コネクタ150とさらに係合するにつれて、雌型ルアーコネクタ332は支柱452a、452bを押し込むことができ、したがって弁部材400全体が収縮することになる。弁部材400が収縮するにつれて、弾性部材402の伸縮性部材464a、464bは伸張する。弁部材400が収縮すると、先端部448は、シェルフ416から係合解除され、流体封止が破られ、したがって流体が雄型コネクタ150のハウジング398内の通路408から孔500を介して雌型コネクタ160内の通路498へと流れることが可能となる。係合させると、弾性封止要素496によって雄型コネクタ150の方へと復元力がかかり、封止要素496の端部が雄型ルアー先端部410の端部に押圧され、それらの間で流体封止が成される。したがって、流体が雄型コネクタ150から雌型コネクタ160へと移送される間、流体を外部環境から隔離しておくことができる。
【0040】
雌型コネクタ160は、雄型コネクタ150から係合解除させることができる。雌型コネクタ160の弾性封止要素496によってかかる復元力によって、弾性封止要素496はその閉位置に戻ることができ、それによって通路498が封止される。弾性部材402の伸縮性部材によって、弁部材400に復元力をかけることができ、したがって雌型コネクタ160が係合解除されると、弁部材400が、その先端部448がシェルフ416に当接した状態の弁部材400の閉位置に戻ることになる。本明細書において例示し、かつ/または説明した流体ライン連結ポイントでは、それだけに限られるものではないが、図3を参照しながら例示し、かつ/または説明したものを含めて、適切ないかなる連結も行うことができる。図3を参照しながら例示し、かつ/または説明したものに加えて、またはその代わりに、他のコネクタおよび/またはコネクタの他の特徴を使用してもよい。
【0041】
図1Aおよび図1Bに戻ると、特定の患者に必要な特定の量または濃度の治療用流体をカスタム(custom)点滴アセンブリ200に充填するいくつかの方法は、以下のステップの1つまたは複数、あるいはいかなる組合せも含むことができる。
【0042】
(i)医療従事者から、またはコンピュータシステムから、それぞれが特定の薬剤および/または特定の薬剤服用量もしくは薬剤濃度を有する、特定の患者向けのカスタム充填済み点滴バッグの要請を得る、または得るようにユーザに指示するステップ。
【0043】
(ii)点滴バッグ210から、再封止可能な針不使用コネクタ150を経由する内部流体経路に沿って、1つまたは複数の恒久的な、事前に取り付けられた結合部を有する一体型点滴アセンブリ200であって、最初は液体が入っていない、または液体が完全には充填されていない一体型点滴アセンブリ200を得る、または得るようにユーザに指示するステップ。
【0044】
(iii)電子流体分注システム100の使い捨て流体カートリッジ170の相補的なコネクタ160(例えば、再封止可能な針不使用雌型コネクタ160)によって、またはコネクタが流体連結を成すことができない場合(雄型−雄型連結または雌型−雌型連結を行う必要がある場合など)には、適切な流体連結アダプタによってなど、点滴アセンブリ200のコネクタ(例えば、再封止可能な針不使用雄型コネクタ150)を、電子流体分注システム100の少なくとも第1の流体チャネルに取り付けるなどによって、点滴アセンブリ200の1つまたは複数の流体入口を、電子流体分注システム100にある1つまたは複数の流体分注出口に取り付ける、または取り付けるようにユーザに指示するステップ。
【0045】
(iv)まず、流体を、少なくとも1つの流体源容器120から、1つまたは複数のアダプタ165、1つまたは複数のコネクタ150、160、流体カートリッジ170、液体ポンプおよび/または測定器140の組合せを経由して、点滴アセンブリ200へと送り、次いで、流体が、(例えば、図1Aに例示するように)点滴アセンブリ200のコネクタ150内に進み、点滴アセンブリ200の点滴筒230(含まれる場合)を経由して点滴アセンブリ200の長チューブ220内へと進み、そして点滴バッグ210内へと、所望の量および/もしくは濃度の薬剤が点滴バッグ210に受けられるまで進み続けることを可能とすることによって、かつ/または(例えば、図1Bに例示するように)1つまたは複数の追加の流体充填ラインを、電子流体分注システム100から点滴バッグ210へと直列または並列に設けることなどによって、特定の量および/または濃度の液体を、1つまたは複数の流体源容器120から点滴バッグ210へと移送することが可能となるように、電子流体分注システムに1つまたは複数のユーザコマンドを供給する、または供給するようにユーザに指示するステップであって、いずれの場合も、いくつかの実施形態では、点滴筒230、長チューブ220、および流体コネクタ150の事前プライミングを、点滴バッグ210の充填と同じステップの一部として、かつ/または点滴バッグ210の充填とほぼ同時に行う、ステップ。
【0046】
(v)点滴アセンブリ200のコネクタ150を電子流体分注システムの流体チャネルの対応する部分から取り外し、かつ他のいかなる流体連結部も、他のいかなる流体チャネルからも取り外すことなどによって、電子流体分注システム100から点滴アセンブリ200を取り外す、または取り外すようにユーザに指示するステップ。
【0047】
(vi)カスタム充填済み点滴アセンブリ200を患者治療現場に運搬する、または運搬するようにユーザに指示するステップ。
【0048】
(vii)点滴バッグ210を、点滴バッグ210の吊下げ部240を用いることによって、または点滴バッグ210を別の種類のホルダに配置することによって、患者付近の点滴ポールに吊り下げる、もしくは他の形で配置する、または吊り下げる、もしくは他の形で配置するようにユーザに指示するステップ。
【0049】
および/または、
(iix)プライミング済みの長チューブ220を、吊り下げられた点滴バッグから、流体を患者にポンプ注入するように構成された注入ポンプ(図示せず)まで延ばす、もしくは延ばすようにユーザに指示するステップ、またはプライミング済み長チューブ220を点滴バッグから患者付近の注入箇所まで直接延ばし、点滴アセンブリ200のプライミング済みコネクタ150を、流体ポンプに達する、または患者の脈管構造に直接達する流体ラインの相補的なコネクタ160に取り付ける、もしくは取り付けるようにユーザに指示するステップ。
【0050】
図1Bに例示のように、点滴アセンブリが複数のポート(図2の例にも図示)を含むいくつかの実施形態では、点滴アセンブリ200を充填するステップは、電子流体分注システム100と点滴バッグ210との間に複数の流体連結部を含むことがある。異なる種類の流体を、異なるポートから注入することができる。いくつかの実施形態では、時間を節約するために、図1Bに例示のように、異なる種類の流体を、電子流体分注システム100から点滴バッグ210へと概ね同時に並行して注入することができるが、いくつかの実施形態では、異なる流体を異なるポートから異なる時間で注入してもよい。
【0051】
前述のステップは全て、またはこれらのステップのいかなる組合せも、いくつかの実施形態は、医療従事者が点滴バッグのスパイクポートを中空スパイクで貫通させて患者注入ラインを設ける必要なく、かつ/または医療従事者が点滴アセンブリの流体チューブ、点滴筒(使用する場合)、および/または流体コネクタ(使用する場合)をプライミングする必要なく、患者投与現場またはその付近で、かつ有害な換気フードの外で実施することができる。例示のように、いくつかの実施形態では、点滴バッグは、いかなるスパイクポートも全くなしで、または鋭利なスパイクによって穿刺されるように構成された隔壁を有するいかなるスパイクポートもなしで設けることができる。そうではなく、いくつかの実施形態では、点滴アセンブリ200の同じ流体ラインを用いて、コネクタ150から、長チューブ220、および点滴筒230(使用する場合)を経由して点滴バッグ210へと上流方向に点滴バッグ210に液体を充填し、その後、点滴バッグ210から同じ点滴筒230(使用する場合)、長チューブ220、およびコネクタ150を経由して患者注入部位へと下流方向にその液体を注入することができる。電子流体分注システム100内の液体の移動、および/または点滴アセンブリ200の充填は、シリンジポンプまたは蠕動ポンプなどのいかなるポンプによっても実施することができる。いくつかの実施形態では、シリンジポンプまたは蠕動ポンプは使用されない。
【0052】
いくつかの実施形態では、点滴アセンブリ充填段階中、所望量の治療剤が点滴アセンブリ200に送達された後、不活性または無害の液体などの追加の液体容量を、底部コネクタ150、チューブ520、点滴筒530(使用する場合)を経由させるなど、点滴アセンブリ200の下流流体経路を経由して、かつ/または点滴バッグ210内に流れ込ませる、または薬剤に「追随」させることができ、したがって潜在的ないかなる有害液体または蒸気も、点滴アセンブリ200へと有効な距離で一掃または移動させることができ、治療液を患者に輸送し、保存し、かつ/または投与する人物から遠ざけておくことができる。
【0053】
図4は、図1Aおよび図1Bの電子流体分注システムなどのある種の電子流体分注システムを用いて充填されたプライミング済み点滴アセンブリ500の患者治療現場における一例を示している。点滴アセンブリ500の点滴バッグ510は、吊下げ部540で点滴ポール550に吊り下げられている。抗生物質、疼痛緩和剤、化学療法剤、および/または免疫抑制剤などの1種または複数種の治療剤を含有している、点滴バッグ510中の液体505は、点滴バッグ510底部の出口位置から、点滴筒530(使用する場合)内へと重力の作用下で移動し、長チューブ520に入り、コネクタ150、160を経由し、患者用カテーテル560を経由して患者570に達する。いくつかの実施形態では、点滴バッグ510内の1種または複数種の治療剤は、点滴バッグ510から、使用する場合には点滴筒530へと移動し、長チューブ520に入り、使用する場合には点滴アセンブリ500の端部コネクタを経由し、点滴ポンプアセンブリ(図示せず)にある入力コネクタ160(図示せず)に達する。例示の実施形態では、点滴アセンブリ500のプライミング済み流体経路の距離または長さは、点滴バッグ510の出口位置から、患者用カテーテル560の再封止可能なコネクタ160まで、少なくとも約2.5フィートおよび/または約3.5フィート以下であり、この長さは、患者が病院ベッド上で概ね臥位にある場合、または患者が腕を概ね水平に延ばした状態で椅子に着席している場合に、点滴バッグ510と患者との間の取付け距離が快適となるのに十分な長さである。他の多くの種類、形状、および、長さのチューブを用いてもよい。
【符号の説明】
【0054】
100 電子流体送達システム、電子流体分注システム
110 ユーザ入力システム
120 液体源容器
130 液体保存先容器
140 液体測定器、シリンジポンプ
150 雄型ルアーコネクタ
160 雌型ルアーコネクタ
145 外側ハウジング
165 バイアルアダプタ
170 流体移送カートリッジ
175 第1の流体ライン
180 支持体
190 駆動システム
195 ホルダ
200 点滴アセンブリ
210 液体保存先容器、点滴バッグ
220 チューブ
230 点滴筒
240 吊下げ部
250 隔壁コネクタ
260 点滴バッグ−点滴筒結合部
270 点滴バッグ−穿刺可能な隔壁コネクタ結合部
280 点滴バッグ−コネクタ結合部
290 点滴筒−チューブ結合部
300 チューブ−コネクタ結合部
332 雌型コネクタ
334 チューブ
352 雄型コネクタ
398 ハウジング
400 弁部材
402 弾性部材
404 封止リング
405 第1のエンドキャップ部材
406 エンドキャップ
407 Oリング
408 通路
409 第2のエンドキャップ部材
410 雄型ルアー先端部
412 基部
414 孔
416 シェルフ
418 シュラウド
420 縁部
422 内ねじ山
424 切欠き部分
440 流体通路
444 基部
446 チューブ
448 先端部
450 孔
452a、452b 支柱
454 突出部
458 下側部分
460 第1のリング
464a、464b 伸縮性部材
468 本体区画
478 通路
490 ハウジング
492 スパイク
494 基部
496 弾性封止要素
498 流体通路
500 孔、点滴アセンブリ
504 外ねじ山
505 液体
510 点滴バッグ
520 チューブ
530 点滴筒
540 吊下げ部
550 点滴ポール
560 患者用カテーテル
570 患者
図1A
図1B
図2
図3
図4