特許第6259135号(P6259135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6259135
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】冷房装置の放熱部材の放熱促進装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 21/02 20060101AFI20171227BHJP
【FI】
   F25B21/02 T
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-8862(P2017-8862)
(22)【出願日】2017年1月20日
【審査請求日】2017年4月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398059426
【氏名又は名称】都留 俊洋
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【弁理士】
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 正寛
(72)【発明者】
【氏名】都留 俊洋
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3110879(JP,U)
【文献】 特開平07−284623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷房装置の放熱部材に当接されて、この放熱部材との間で熱交換を行う冷媒が注入される冷媒注入室を内部空間に有した冷却水パックを備え、
上記冷媒が減圧水である冷房装置の放熱部材の放熱促進装置であって、
上記冷却水パックの内部空間が、上記減圧水は透過せず、この減圧水が沸騰して発生した水蒸気を透過する水蒸気透過性隔膜により、上記冷媒注入室と、この水蒸気透過性隔膜を透過した水蒸気を回収する水蒸気回収室とに区分され、
上記冷却水パックには、上記水蒸気回収室に回収された上記水蒸気を外部へ排出する水蒸気排出手段が設けられた冷房装置の放熱部材の放熱促進装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は冷房装置の放熱部材の放熱促進装置、詳しくは減圧水の気化熱を利用して冷房装置の放熱部材を冷却する冷房装置の放熱部材の放熱促進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2種類の金属板の接合部に電流を流すことにより、一方の金属板から他方の金属板に熱が移動するペルチェ素子を利用し、身体を冷却する身体冷房装置(冷房装置)が開発されている。
しかしながら、ペルチェ素子は、移動させる熱以上に素子自体の放熱量が大きいため、冷却メカニズムとしては電力効率が低い。また、加熱側(放熱部材)を十分に冷却せずに負荷をかけ続ければ、加熱側の冷却効果が低下するばかりでなく、素子自体が破損、焼損するおそれもあった。
そこで、これを回避する従来技術として、例えば、特許文献1に開示された加熱側にヒートシンクを固定すること、または、その加熱側に電動ファンからの風を当てることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−31581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヒートシンクを利用した特許文献1の開示技術では、ペルチェ素子の加熱側の冷却効果が小さく、ペルチェ素子の破損や焼損のおそれが残った。
また、電動ファンによってこの加熱側を冷却する技術では、ペルチェ素子の電源の電力を消費する。その結果、ペルチェ素子の使用時間が短くなっていた。
【0005】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、ペルチェ素子の加熱側の金属板面に、この加熱側の金属板との間で熱交換を行う冷媒を収納した冷却水パックを着脱自在に取り付けることにより、上述した課題は全て解消されることを知見し、この発明を完成させた。
しかも、この冷媒として減圧水を採用すれば、減圧水の気化熱を利用してペルチェ素子の加熱側の冷却をさらに促進できることを知見し、この発明を完成させた。
【0006】
すなわち、この発明は、冷房装置の放熱部材の冷却を促進することができる冷房装置の放熱部材の放熱促進装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、冷房装置の放熱部材に当接されて、この放熱部材との間で熱交換を行う冷媒が注入される冷媒注入室を内部空間に有した冷却水パックを備え、上記冷媒が減圧水である冷房装置の放熱部材の放熱促進装置であって、上記冷却水パックの内部空間が、上記減圧水は透過せず、この減圧水が沸騰して発生した水蒸気を透過する水蒸気透過性隔膜により、上記冷媒注入室と、この水蒸気透過性隔膜を透過した水蒸気を回収する水蒸気回収室とに区分され、上記冷却水パックには、上記水蒸気回収室に回収された上記水蒸気を外部へ排出する水蒸気排出手段が設けられた冷房装置の放熱部材の放熱促進装置である。
【0008】
冷房装置の種類は任意である。例えば、各種の熱電変換素子(ペルチェ素子、ゼーベック素子など)を採用することができる。具体的には、身体の一部分に直接または衣服を介してペルチェ素子を押し当て、この状態で、ペルチェ素子を構成する2種類の金属板の接合部に、電源からの電流を流すことで身体を冷却する身体冷房装置を採用することができる。その他、電車の冷房装置、スーパーコンピュータの冷房装置(冷却装置)などでもよい。
ここでいうペルチェ素子は、ペルチェ効果により電気エネルギーを熱エネルギーに変換する。
冷房装置の放熱部材としては、例えば、ペルチェ素子の加熱側の金属板などである。
【0009】
冷媒である減圧水に用いられる水としては、例えば、水道水、純水などを採用することができる。その他、減圧水に所定量のシリコンオイルを添加したものなどでもよい。
減圧水は、水が注入された冷却水パックの内部空間を、各種の真空ポンプによって負圧化(真空化)することで得られる。
【0010】
減圧水は、大気圧(常圧)より飽和蒸気圧が低く、沸点が100℃の常圧水に比べてその沸点が低い。例えば、198.3hPaの水の沸点は60℃、123hPaの水の沸点は50℃、73.4hPaの水の沸点は40℃である。
冷却水パックとしては、例えば、各種のプラスチック、各種の金属板などからなる剛体の容器を採用することができる。
冷却水パックの形状は任意である。例えば、六面が矩形状の角箱型などを採用することができる。
冷却水パックの使用数は1つでも複数でもよい。また、冷却水パックを交換可能に構成することで、使用により冷却水パックの減圧水が減少した場合に対応することができる。
【0011】
水蒸気透過性隔膜の素材は任意である。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を延伸加工したePTFEフィルムとポリウレタンポリマーを複合化した膜状の防水透湿性素材を採用することができる。その他、水は通さないが水蒸気は通すことができる各種の微細な多孔質素材を採用することができる。
水蒸気透過性隔膜が設けられる箇所は、例えば、冷却水パックの外壁板の一部など任意である。
【0012】
水蒸気回収室は、冷却水パックと同一素材でこれと一体的に設けても、冷却水パックと同一素材または異なる素材でこれと別体で設けてもよい。
水蒸気回収室の形状は任意である。例えば、矩形容器状、円筒容器状などを採用することができる。また、水蒸気回収室は1層式でも2層以上の複層式でもよい。
水蒸気回収室の排気口には、排気弁を設けることができる。また、排気弁には、排出される水蒸気により発電用の回転羽根を回転させる発電機を設けてもよい。
【0013】
なお、水蒸気透過性隔膜から沸騰した水蒸気を大気開放すれば、冷房装置(特に、身体冷房装置)の使用者がこの水蒸気の熱で火傷するおそれがある。そこで、水蒸気回収室の水蒸気透過性隔膜側の端部に、排出された水蒸気を吸着して温度を下げる高分子吸収剤が充填された吸湿室を設けてもよい。
【0014】
水蒸気排出手段としては、例えば、各種のシリンダ、各種の真空ポンプなどを採用することができる。シリンダの場合、ピストンの駆動機構としては、例えば、ピストンの端面にロープの一端を固定し、滑車を介してロープの他端に錘を取り付けたピストン錘移動方式、各種のばねによりピストンを移動させるばね力ピストン移動方式などを採用することができる。
水蒸気排出手段の作動開始時期は、例えば、水蒸気回収室に圧力センサや温度センサを設置し、これらにより水蒸気回収室に水蒸気が充満したことを検知した時とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、冷房装置の放熱部材に冷却水パックを当接し、この状態で冷房装置を作動する。これにより、冷房装置の放熱部材が加熱され、この放熱部材と冷却水パックの冷媒注入室内の減圧水との間で熱交換が行われる。すなわち、放熱部材が冷却される一方、減圧水の温度が上昇する。この温度が減圧水の沸点に達した時、減圧水が沸騰して周囲(特に放熱部材)から熱を吸収する。減圧水は常圧の水より沸点が低く、100℃より低い温度で沸騰する。その結果、放熱部材の冷却(放熱)を促進することができる。
【0016】
特に、気化に伴って冷却水パック内で発生した水蒸気は、水蒸気透過性隔膜を通して水蒸気回収室に排気される。このとき、減圧水は水蒸気透過性隔膜を透過しない。この水蒸気の水蒸気回収室への放出により、密閉状態の冷却水パック内での水蒸気の発生を原因とした冷却水パックの破裂を防止することができる。
【0017】
水蒸気回収室に回収された水蒸気は、その後、水蒸気排出手段により外部へ排出される。このように構成したことで、冷却水パック内の減圧状態を維持しながら、冷却水パックの内部で発生した水蒸気の排出時期、排出量などの排出管理を行うことができる。
例えば、水蒸気回収室が0.0気圧(真空)で減圧水側が仮に50℃、0.2気圧のとき、回収室の弁を開放した場合、減圧沸騰し、体積が約1700倍になった水蒸気が上昇し、全体が0.123気圧(50℃での沸点)になったら沸騰がストップする。そこで弁を閉じる。
この故に、0.123気圧以下で治まるようにこの弁の開閉を頻繁に行うと同時に真空ポンプ等を使って、排気するスピードを水蒸気の発生量を超えるものにする必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施例1に係る冷房装置の放熱部材の放熱促進装置の縦断面である。
図2】(a)この発明の実施例1に係る冷房装置の放熱部材の放熱促進装置の一部を構成する水蒸気排出手段において、上下の水蒸気回収室の閉蓋状態を示す縦断面図である。(b)この水蒸気排出手段において、上下の水蒸気回収室の開蓋状態を示す縦断面図である。
図3】(a)この発明の実施例1に係る冷房装置の放熱部材の放熱促進装置の一部を構成する水蒸気排出手段において、上側の水蒸気回収室のみを開蓋して真空ポンプを作動した状態を示す縦断面図である。(b)この水蒸気排出手段において、上下の水蒸気回収室を開蓋して真空ポンプを作動した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施例を、図面を参照して具体的に説明する。ここでは、コンピュータの放熱板に取り付けられたペルチェ素子(冷房装置)の放熱側金属板(放熱部材)の放熱を促進する場合を例に説明する。なお、図1においては、冷房装置の放熱部材の上面に放熱促進装置の冷却水パックが配設された状態を示している。
【実施例】
【0020】
図1において、10はこの発明の実施例1に係る冷房装置の放熱部材の放熱促進装置(以下、放熱促進装置)を示す。この放熱促進装置10は、冷却水パック13と、水蒸気透過性隔膜14と、水蒸気排出手段16とを備えている。すなわち、剛体である箱形容器で形成された冷却水パック13は、ペルチェ素子(冷房装置)11の放熱側金属板(放熱部材)11aに当接されて配置され、その内部空間は、水平に配設された水蒸気透過性隔膜14により、下方の冷媒注入室30と上方の水蒸気回収室15とに区分されている。冷媒注入室30には、放熱側金属板11aとの間で熱交換を行う減圧水(冷媒)12が注入されている。すなわち、冷媒注入室30を構成する壁材の一壁面が前記放熱側金属板11aの一面に直接接触して設けられている。冷却水パック13の内部空間で冷媒注入室30より上側に画成された水蒸気回収室15は、この冷媒注入室30内で発生した水蒸気を回収・収納する。冷却水パック13に設けられた水蒸気排出手段16は、この水蒸気回収室15に回収された水蒸気12Aを冷却パック13の外部に排出する。
【0021】
以下、これらの構成体を詳しく説明する。
冷房装置であるペルチェ素子11は、2つの金属板の接合部に、図示しないバッテリ(電源)から直流電流を流すことで、吸熱側金属板11bの温度を下げる一方、放熱側金属板11aの温度が高まるよう構成された熱電素子である。このペルチェ素子11は、Te−Sb−Se系のn型熱電半導体である放熱側金属板11aと、Te−Sb−Bi系のp型熱電半導体である吸熱側金属板11bとを積層・接合した矩形板状のものである。また、ペルチェ素子11には、図示しない温度コントローラが電気的に接続されている。この温度コントローラにより、冷房の温度設定や運転時間などを変更することができる。
【0022】
以下、冷却水パック13について詳しく説明する。
冷却水パック13は、ポリプロピレン製の六面が矩形状の縦長な(上下方向に長い)角箱である(図1)。冷却水パック13の下板(底板)13aには、耐熱性の両面テープを介して、ペルチェ素子11の放熱側金属板11aが貼着されている。
密閉された冷却水パック13の内部空間は、水蒸気透過性隔膜14によってこれより下方に配置された冷媒注入室30と、上方に配置された水蒸気回収室15とに略二等分割されている。この水蒸気透過性隔膜14は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を延伸加工したePTFEフィルムとポリウレタンポリマーとを有する膜材で形成されている。ここでは、所定厚さの米国WLゴア&アソシエイツ社製のゴアテックス(Gore−Tex:登録商標)を採用している。
【0023】
冷媒注入室30には、減圧水12が略満杯に注入されている。ここでの減圧水12の減圧レベルは、水の沸点が40℃となる73.4hPaである。
水蒸気回収室15は、平行であって所定間隔だけ離間した上側仕切り板17Aと下側仕切り板17Bとを介して、上側水蒸気回収室15Aと下側水蒸気回収室15Bとに略二等分割されている。
各仕切り板17A,17Bの図1にて右側の領域には、多数の通気孔17a,17bがそれぞれ形成されている。また、上側水蒸気回収室15Aの右側板には排気口15aが形成されている。この排気口15aには、排気弁18を有する排気ホース19が接続され、この排気ホース19には真空ポンプ20が接続されている。なお、排気弁18の弁箱には、排気口15aの前方に配置される回転羽根を有した発電機21を取り付け、水蒸気12Aの排気時に発電を行うように構成してもよい(図1の破線参照)。
【0024】
次に、図2および図3を参照しながら、水蒸気排出手段16を詳しく説明する。
図2図3に示すように、水蒸気排出手段16は、上側の各通気孔17aを上方から開閉自在に塞ぐ上蓋板22Aと、下側の各通気孔17bを上方から開閉自在に塞ぐ下蓋板22Bと、上蓋板22Aを仕切り板17Aの上面に沿ってスライドさせる図示しない上側駆動部と、下蓋板22Bを仕切り板17Bの上面に沿ってスライドさせる図示しない下側駆動部とを有している。ここでは、上側駆動部および下側駆動部としてソレノイドを採用しているものの、例えばエアシリンダなどでもよい。
【0025】
次に、図1図3を参照して、この発明の実施例1に係る放熱促進装置10によるペルチェ素子(冷房装置)11の放熱側金属板11aの放熱促進(冷却)方法を説明する。
図1に示すように、ペルチェ素子11の吸熱側金属板11bを、例えば図示しないコンピュータの放熱板に押し当てる。ペルチェ素子11を作動しなくてもこの状態を維持することで、ペルチェ素子11を熱伝導部材として、コンピュータの作動により高温化した放熱板と、放熱促進装置10の冷却水パック13の内部の減圧水12との間で熱交換が行われる。これにより、放熱板が冷却される一方、減圧水12の温度が上昇する。
【0026】
その後、ペルチェ素子11のこれらの金属板接合部にバッテリから直流電流を流すことにより、吸熱側金属板11bから放熱側金属板11aに熱が移動することとなる。吸熱側金属板11bで吸熱し、放熱側金属板11aで発熱する。ここで、発熱した放熱側金属板11aとこれが接する冷却水パック内の減圧水12との間で熱交換が行われ、放熱側金属板11aの温度が低下する(放熱が促進される)。よって、ペルチェ素子11の吸熱側金属板11bが徐々に冷却され、これに伴いコンピュータの放熱板の温度はさらに低下する。
減圧水12の温度が上昇し、減圧水12の沸点(40℃)に達した時、この減圧水12が沸騰し、気化する際、その周囲(特にペルチェ素子11の放熱側金属板11a)から熱を吸収する。その結果、ペルチェ素子11の放熱側金属板11aの放熱がさらに促進され、このコンピュータの放熱板を所定温度まで下げるために要する時間を短縮することができる。
【0027】
ここで、上側駆動部および下側駆動部を同期駆動して上蓋板22Aと下蓋板22Bとを開くと、冷却水パック13の内部空間(冷媒注入室30)で発生した水蒸気12Aは、水蒸気透過性隔膜14を通って上昇し、下側仕切り板17Bの各通気孔17bから下側水蒸気回収室15Bに流れ込み、さらに、上側仕切り板17Aの各通気孔17aを通って上側の水蒸気回収室15Aに流入する(図2(b)参照)。なお、減圧水12は水蒸気透過性隔膜14によりブロックされて水蒸気回収室15Bに流入することはない。
このとき、真空ポンプ20をONにして上側の水蒸気回収室15Aから水蒸気の吸引を開始することもできる。図3(b)はこの場合の水蒸気の流れを示す。効率よく排気することができる。
または、蓋板22Bにより通気孔17bを閉止し、いったん水蒸気回収室15Bと冷媒注入室30との連通を遮断すると、真空ポンプ20により、水蒸気回収室15B,15A内の水蒸気12Aは開放された排気弁18を介してこれら室内から排出されることとなる。図3(a)はこの状態を示す。
また、真空ポンプ20をONとした状態で上蓋板22Aと下蓋板22Bとを開くと、内部空間の気圧が下がり、発生した水蒸気12Aのみが、水蒸気透過性隔膜14を通して、通気孔17bから下側水蒸気回収室15Bに流れ込み、その後、通気孔17aを通って上側の水蒸気回収室15Aに流入する(図2(b))。さらに、排気弁18が開であり、水蒸気は排気口15aを介して真空ポンプ20により外部に放出される。
次に、下側駆動部のみを駆動して下蓋板22Bを閉じることで、水蒸気透過性隔膜14を透過した水蒸気12Aの下側水蒸気回収室15Bへの流入が阻止される(図3(a))。これにより、冷却水パック13のうち、減圧水12が注入された空間の減圧状態の維持を図ることができる。このとき、真空ポンプ20を作動させることで、その負圧力により排気弁18が開き、各水蒸気回収室15A,15Bに充満した水蒸気12Aが、排気口15aおよび排気ホース19を通過して大気に開放される。
【0028】
このように、上下2層式の水蒸気回収室15A,15Bを採用したため、冷却水パック13内の減圧状態を維持しながら、冷却水パック13内で発生した水蒸気12Aの排出時期、排出量などの排出管理を行うことができる。しかも、2層式としたことで、単層式の場合に比べて、水蒸気12Aの回収量を大きくすることができる。さらには、大気開放された水蒸気12Aの温度を、水蒸気12Aに触れても火傷しない程度まで容易に下げることができる。
なお、水蒸気12Aの排出を連続的に行いたい場合には、各蓋板22A,22Bをそれぞれ開くとともに、真空ポンプ20の作動により排気弁18を開いて、水蒸気透過性隔膜14を透過した水蒸気12Aを、各水蒸気回収室15A,15Bを通して、直接、大気開放する(図3(b))。
【0029】
また、真空ポンプ20の作動は大気開放後も所定時間だけ継続し、各水蒸気回収室15A,15Bを所定レベルの真空状態として、上蓋板22Aを閉じる(図2(a))。これにより、冷却水パック13に注入された減圧水12の減圧レベルの維持が図れるとともに、各水蒸気回収室15A,15Bが負圧化しているため、上蓋板22Aや下蓋板22Bの開蓋時、水蒸気透過性隔膜14を介しての水蒸気12Aの各水蒸気回収室15A,15Bへの流入を円滑に行うことができる。
また、減圧水12の気化に伴って冷媒注入室30の内部で発生した水蒸気12Aは、水蒸気透過性隔膜14を通して水蒸気回収室15へ排気され、最終的に排気口15aを通過して大気開放される。そのため、密閉状態の冷却水パック13の内部での水蒸気12Aの発生を原因とした冷却水パック13の破裂を防止することができる。
【0030】
なお、沸騰によって冷却水パック13の減圧水12の量が少なくなった場合には、例えば、冷却水パック13のうち、冷媒注入室30の部分を下側水蒸気回収室15Bに着脱自在に交換可能な構造とすることで、減圧水12が少なくなった冷媒注入室30の部分を、新しいものに適時交換することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明は、減圧水の気化熱を利用して冷房装置の放熱部材を冷却する技術として有用である。
【符号の説明】
【0032】
10 冷房装置の放熱部材の放熱促進装置、
11 ペルチェ素子(冷房装置)、
11a 放熱側金属板(放熱部材)
12 減圧水(冷媒)、
12A 水蒸気、
13 冷却水パック、
14 水蒸気透過性隔膜、
15 水蒸気回収室、
16 水蒸気排出手段、
30 冷媒注入室。
【要約】
【課題】冷房装置の放熱部材の冷却を促進できる冷房装置の放熱部材の放熱促進装置を提供する。
【解決手段】冷房装置の放熱部材に冷却水パックを当接し、放熱部材と冷却水パックの減圧水との間で熱交換を行う。放熱部材は冷却され、減圧水の温度が上昇する。減圧水の沸点到達時、減圧水が沸騰して放熱部材からさらに熱を吸収する。このとき、減圧水は常圧の水より沸点が低く100℃より低い温度で沸騰するため、放熱部材の冷却を促進できる。
【選択図】図1
図1
図2
図3