(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の一実施の形態に係るフロントフォークについて、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態のフロントフォークFは、車体と車輪との間に並列に取り付けられる一対の緩衝器D1,D2を備えている。そして、上記各緩衝器D1,D2は、シリンダ1L,1Rと、このシリンダ1L,1Rに出没可能なピストンロッド2L,2Rと、シリンダ1L,1R内に形成されて作動液が充填される作動液室L1,L2と、上記ピストンロッド2L,2Rに保持されて上記作動液室L1,L2を伸側室Laと圧側室Lbとに区画するピストン3とを備えている。
【0019】
そして、上記一対の緩衝器D1,D2のうち一方の緩衝器D1が第一アクチュエータM1(
図2)の駆動により伸側減衰力を調整可能な第一減衰力調整手段A1を備えるとともに、上記一対の緩衝器D1,D2のうち他方の緩衝器D2が第二アクチュエータM2(
図3)の駆動により圧側減衰力を調整可能な第二減衰力調整手段A2を備えている。
【0020】
さらに、上記他方の緩衝器D2は、上記シリンダ1Rが車体側に連結されるとともに、上記ピストンロッド2Rが車輪側に連結されており、上記シリンダ1Rの反ピストンロッド側の内側に起立するベースロッド4Rと、このベースロッド4Rに保持されて上記作動液室L2を上記圧側室Lbと液溜室Ldとに区画するベース部材5と、上記圧側室Lbと液溜室Ldとを連通する第二流路B2とを備え、作動液が上記第二流路B2を通過する際の抵抗を上記第二アクチュエータM2で変更し上記圧側減衰力を調整する。
【0021】
以下、詳細に説明すると、本実施の形態に係るフロントフォークFは、二輪車や三輪車等の鞍乗型車両の前輪を懸架するものであり、前輪の両側に緩衝器D1,D2を起立させている。さらに、フロントフォークFは、これらの緩衝器D1,D2を連結するとともに車体の骨格となるフレーム(図示せず)に連結する車体側ブラケットJaと、各緩衝器D1,D2の下端部を前輪の車軸に連結する車輪側ブラケットJbとを備え、一対の緩衝器D1,D2で前輪を両側から支えている。
【0022】
また、上記フロントフォークFは、一対の懸架ばねS1,S2を備えており、
図2,3に示すように、各緩衝器D1,D2に懸架ばねS1,S2をそれぞれ収容している。そして、これら懸架ばねS1,S2は、各緩衝器D1,D2を伸長方向に附勢し、車体を弾性支持している。
【0023】
次に、伸側減調緩衝器である一方の緩衝器D1について説明する。一方の緩衝器D1は、
図2に示すように、車体側チューブTaと車輪側チューブTbとからなり内部に上記シリンダ1L及び上記ピストンロッド2Lを収容するテレスコピック型の緩衝器本体Tを備えている。そして、車体側チューブTaに車体側ブラケットJaが固定されるとともに、車輪側チューブTbに車輪側ブラケットJbが固定されており、路面凹凸による衝撃が前輪に入力されると、車体側チューブTaに車輪側チューブTbが出没する。
【0024】
また、上記緩衝器本体Tの車体側開口は、キャップ部材9Lで塞がれており、緩衝器本体Tの車輪側開口は、上記車輪側ブラケットJbで塞がれている。さらに、緩衝器本体Tの車体側チューブTaと車輪側チューブTbとの重複部の間に形成される筒状の隙間は、車体側チューブTaの車輪側開口端部内周に保持されて車輪側チューブTbの外周面に摺接する環状のシール部材(符示せず)で塞がれている。そして、上記構成により、緩衝器本体T内の気体や作動液が緩衝器本体T外に漏れ出ないようになっている。尚、本実施の形態において、上記作動液は、油、水、水溶液等の液体からなる。
【0025】
さらに、一方の緩衝器D1は、車輪側に連結されるシリンダ1Lと、車体側に連結されてシリンダ1Lに出没可能なピストンロッド2Lとを備えて正立型に設定されている。
【0026】
また、一方の緩衝器D1は、シリンダ1L内に形成されて作動液が充填される作動液室L1と、上記ピストンロッド2Lに保持されて上記作動液室L1を伸側室Laと圧側室Lbとに区画するピストン3と、シリンダ1Lの反ピストンロッド側の内側に起立するベースロッド4Lと、このベースロッド4Lに保持されて作動液室L1を圧側室Lbと液溜室Lcとに区画するベース部材5と、シリンダ1Lと緩衝器本体Tとの間に形成されるリザーバR1とを備えている。
【0027】
また、一方の緩衝器D1は、上記したように、伸側減衰力を調整可能な第一減衰力調整手段A1を備えるとともに、上記作動液室L1を加圧する加圧機構と、加圧された作動液室L1の作動液を逃がすリリーフ機構と、位置依存の減衰力を発生するための車体側ばね受け(隔壁部材)8Lと、緩衝器本体Tの外側に配置されて第一減衰力調整手段A1が取り付けられる第一ハウジングH1とを備えている。
【0028】
つづいて、一方の緩衝器D1のシリンダ1Lは、内周面に上記ピストン3が摺接するピストン側シリンダ10と、このピストン側シリンダ10の車輪側端部(
図2中下端部)に連結されて内側に上記ベース部材5が固定されるベース側シリンダ11とを備え、このベース側シリンダ11の車輪側端部(
図2中下端部)が車輪側ブラケットJbに連結されている。さらに、ピストン側シリンダ10の外周には、窪み10aが設けられおり、ベース側シリンダ11には、シリンダ1Lの内外を連通する孔11aが形成されている。
【0029】
また、シリンダ1Lに出没可能な上記ピストンロッド2Lは、上記ピストン側シリンダ10の車体側端部(
図2中上端部)に固定される環状のロッドガイドGを貫通し、このロッドガイドGで軸方向に移動自在に軸支されている。そして、上記ロッドガイドGの内周には、ピストンロッド2Lの外周面に摺接する環状のシール(符示せず)が取り付けられており、このシールで作動液のシリンダ1L外への流出を防いでいる。
【0030】
さらに、ピストンロッド2Lは、キャップ部材9Lに保持される筒状の軸部材20と、この軸部材20の先端部外周に螺合するセンターロッド21とを備え、このセンターロッド21の外周にピストン3を保持している。そして、上記軸部材20の内側には、軸部材内流路20aが形成されるとともに、センターロッド21には、軸部材内流路20aと伸側室Laとを連通するセンターロッド通孔21aが形成されている。
【0031】
また、上記ピストンロッド2Lに保持されるピストン3は、ピストン側シリンダ10の内周面に摺接している。そして、ピストン3には、伸側室Laと圧側室Lbとを連通する伸側と圧側のピストン流路30,31(
図1)が形成されており、圧側室側に伸側減衰弁V1が積層されるとともに、伸側室側に圧側逆止弁V2が積層されている。
【0032】
さらに、伸側減衰弁V1は、作動液が伸側のピストン流路30を通過して伸側室Laから圧側室Lbへ移動することのみを許容するとともに、伸側のピストン流路30を通過する作動液に所定の抵抗を与える。他方、圧側逆止弁V2は、作動液が圧側のピストン流路31を通過して圧側室Lbから伸側室Laへ移動することのみを許容するとともに、ピストン速度が低速領域にある場合、圧側のピストン流路31を通過する作動液に小さい抵抗しか与えないように設定されている。
【0033】
つづいて、シリンダ1Lの反ピストンロッド側の内側に起立するベースロッド4Lは、車輪側ブラケットJbに保持されて、ベース側シリンダ11の軸心部に起立している。さらに、図示しないが、ベースロッド4Lには、圧側室Lbと液溜室Lcとを連通する第一バイパス流路が形成されるとともに、この第一バイパス流路を絞り、周知のオリフィスを形成するニードル弁が取り付けられている。
【0034】
また、ベースロッド4Lに保持される上記ベース部材5は、ベース側シリンダ11の内側に固定されている。そして、ベース部材5には、圧側室Lbと液溜室Lcとを連通する伸側と圧側のベース部材流路50,51(
図1)が形成されており、圧側室側に伸側逆止弁V3が積層されるとともに、液溜室側に圧側減衰弁V4が積層されている。
【0035】
さらに、伸側逆止弁V3は、作動液が伸側のベース部材流路50を通過して液溜室Lcから圧側室Lbへ移動することのみを許容するとともに、伸側のベース部材流路50を通過する作動液に小さい抵抗しか与えないように設定されている。他方、圧側減衰弁V4は、作動液が圧側のベース部材流路51を通過して圧側室Lbから液溜室Lcへ移動することのみを許容するとともに、圧側のベース部材流路51を通過する作動液に所定の抵抗を与える。
【0036】
つづいて、シリンダ1Lと緩衝器本体Tとの間に形成されるリザーバR1は、作動液が貯留されるリザーバ内液室Raと、このリザーバ内液室Raの液面を介して上側に形成されて気体が封入されるリザーバ内気室Rbとからなり、このリザーバR1に懸架ばねS1が収容されている。また、上記リザーバ内液室Raは、可動隔壁7で車体側の上室Ra1と車輪側の下室Ra2とに区画されている。
【0037】
さらに、上記可動隔壁7は、環状に形成されて車
輪側チューブTbの内周面に摺接し、シリンダ1Lの軸方向に移動可能となっている。そして、
図4に示すように、可動隔壁7の内側には、上室Ra1と下室Ra2を連通する連通路70が形成されるとともに、作動液が上室Ra1から下室Ra2へ移動することのみを許容する逆止弁V7が取り付けられている。また、この逆止弁V7は、連通路70を通過する作動液に小さい抵抗しか与えないように設定されている。
【0038】
もどって、
図2に示すように、上記下室Ra2には、ブラダ12が設けられている。そして、このブラダ12は、筒状に形成されて、車体側端部(
図2中上端部)をピストン側シリンダ10の外周面に密着させるとともに、車輪側端部(
図2中下端部)をベース側シリンダ11の外周面に密着させており、シリンダ1Lとの間に気体が封入される気室E1を区画している。また、このブラダ12の車輪側端部(
図2中下端部)は、ベース側シリンダ11の孔11aを塞がないように配置されており、下室Ra2におけるブラダ12の外側と液溜室Lcが上記孔11aを介して連通している。
【0039】
つづいて、一方の緩衝器D1に収容される懸架ばねS1は、シリンダ1Lから突出したピストンロッド2Lの外周に固定される車体側ばね受け8Lと、可動隔壁7との間に介装されている。このため、懸架ばねS1は、可動隔壁7、下室Ra2及び孔11aを介して作動液室L1を加圧することができる。つまり、本実施の形態において、懸架ばねS1が可動隔壁7を下室側(
図2中下側に)に附勢する附勢手段であり、可動隔壁7とともに作動液室L1を加圧する加圧機構を構成する。
【0040】
また、可動隔壁7が附勢手段である懸架ばねS1の附勢力に抗して車体側(
図2中上側)に移動し、ピストン側シリンダ10の外周に形成される窪み10aに達すると、逆止弁V7の内側に隙間ができ、この隙間を介して上室Ra1と下室Ra2を連通させることができる。つまり、本実施の形態において、一方の緩衝器D1は、上記可動隔壁7が所定量車体側に移動したとき上室Ra1と下室Ra2とを連通し、加圧された作動液室L1の作動液を逃がすリリーフ機構を備えている。
【0041】
また、本実施の形態において、懸架ばねS1の車体側端を支持する車体側ばね受け8Lは、位置依存の減衰力を発生するための隔壁部材であり、ピストンロッド2Lの外周に固定される環状の連結部80と、この連結部80の外周縁から外側に張り出すとともに
図2中下側に延びる筒部81と、この筒部81を貫通する連通孔81aとを備えている。
【0042】
そして、車体側ばね受け(隔壁部材)8Lは、一方の緩衝器D1が所定量圧縮されたとき、リザーバ内液室Raの上室Ra1に進入し、作動液が連通孔81aを通過する。このため、一方の緩衝器D1は、圧縮量が所定量以上であるとき、作動液が連通孔81aを通過する際の抵抗に起因する位置依存の減衰力を発生することができる。
【0043】
つづいて、上記ピストンロッド2Lを保持するキャップ部材9Lは、筒状に形成されて緩衝器本体T内に突出するロッド保持部90と、キャップ部材9Lを軸方向に貫通しロッド保持部90の内側に開口する第一キャップ部材通孔91と、キャップ部材9Lを軸方向に貫通しロッド保持部90の外側に開口する第二キャップ部材通孔92とを備えている。そして、上記第一キャップ部材通孔91は、ピストンロッド2Lの軸部材内流路20aと、センターロッド通孔21aを介して伸側室Laに連通しており、上記第二キャップ部材通孔92は、リザーバR1と連通している。
【0044】
また、第一減衰力調整手段A1が取り付けられる第一ハウジングH1は、上記キャップ部材9Lと第一ホースh1及び第二ホースh2でつながれている。そして、第一ハウジングH1には、第一ハウジング流路h3が形成されており、第一ハウジング流路h3の一方側が上記第一ホースh1を介して第一キャップ部材通孔91に連通するとともに、第一ハウジング流路h3の他方側が第二キャップ部材通孔92に接続される第二ホースh2を介してリザーバR1に連通している。
【0045】
つまり、本実施の形態において、ピストンロッド2Lのセンターロッド通孔21a、軸部材内流路20a、第一キャップ部材通孔91、第一ホースh1、第一ハウジング流路h3及び第二ホースh2で、伸側室LaとリザーバR1とを連通する第一流路B1を構成している。
【0046】
さらに、上記第一減衰力調整手段A1は、本実施の形態において、第一ハウジング流路h3を開閉する弁体V5と、この弁体V5を閉じ方向に附勢する比例ソレノイドからなる第一アクチュエータM1と、第一ハウジング流路h3における弁体V5よりも上流側の圧力を検出する第一圧力センサK1とを備えて、周知の電磁ポペット弁を構成している。そして、第一圧力センサK1で検出された値を基に第一アクチュエータM1に供給する電流量を変更して、弁体V5の開弁圧を調節できるので、作動液が上記第一流路B1を通過する際の抵抗を変更することができる。
【0047】
次に、圧側減調緩衝器である他方の緩衝器D2について説明する。他方の緩衝器D2は、
図3に示すように、一方の緩衝器D1と同様に、車体側チューブTaと車輪側チューブTbとからなり内部に上記シリンダ1R及び上記ピストンロッド2Rを収容するテレスコピック型の緩衝器本体Tを備えている。そして、車体側チューブTaに車体側ブラケットJaが固定されるとともに、車輪側チューブTbに車輪側ブラケットJbが固定されており、路面凹凸による衝撃が前輪に入力されると、車体側チューブTaに車輪側チューブTbが出没する。
【0048】
また、上記緩衝器本体Tの車体側開口は、一方の緩衝器D1と同様に、キャップ部材9Rで塞がれており、緩衝器本体Tの車輪側開口は、上記車輪側ブラケットJbで塞がれている。さらに、緩衝器本体Tの車体側チューブTaと車輪側チューブTbとの重複部の間に形成される筒状の隙間は、車体側チューブTaの車輪側開口端部内周に保持されて車輪側チューブTbの外周面に摺接する環状のシール部材(符示せず)で塞がれている。そして、上記構成により、緩衝器本体T内の気体や作動液が緩衝器本体T外に漏れ出ないようになっている。尚、本実施の形態において、上記作動液は、油、水、水溶液等の液体からなる。
【0049】
さらに、他方の緩衝器D2は、上記したように、車体側に連結されるシリンダ1Rと、車輪側に連結されてシリンダ1Rに出没可能なピストンロッド2Rとを備えて倒立型に設定されている。
【0050】
また、他方の緩衝器D2は、シリンダ1R内に形成されて作動液が充填される作動液室L2と、上記ピストンロッド2Rに保持されて上記作動液室L2を伸側室Laと圧側室Lbとに区画するピストン3と、シリンダ1Rの反ピストンロッド側の内側に起立するベースロッド4Rと、このベースロッド4Rに保持されて作動液室L2を圧側室Lbと液溜室Ldとに区画するベース部材5と、ベースロッド4Rの外周に移動可能に取り付けられてシリンダ1R内を上記作動液室L2と気体が収容される気室E2とに区画するフリーピストン6と、シリンダ1Rと緩衝器本体Tとの間に形成されるリザーバR2とを備えている。
【0051】
また、他方の緩衝器D2は、上記したように、圧側減衰力を調整可能な第二減衰力調整手段A2を備えるとともに、上記作動液室L2を加圧する加圧機構と、加圧された作動液室L2の作動液を逃がすリリーフ機構と、位置依存の減衰力を発生するための車体側ばね受け(隔壁部材)8Rと、緩衝器本体Tの外側に配置されて第二減衰力調整手段A2が取り付けられる第二ハウジングH2とを備えている。
【0052】
つづいて、他方の緩衝器D2のシリンダ1Rは、内周面に上記ピストン3が摺接するピストン側シリンダ13と、このピストン側シリンダ13の車体側端部(
図3中上端部)に連結されて内側に上記ベース部材5が固定されるベース側シリンダ14とを備えており、このベース側シリンダ14の車体側端部(
図3中上端部)がキャップ部材9Rに連結されている。さらに、ベース側シリンダ14は、
図5に示すように、大内径部14aと、この大内径部14aの反キャップ部材側に連なり内径が徐々に縮径されるスロープ部14bと、このスロープ部14bの反キャップ部材側に連なる小内径部14cと、上記大内径部14aのスロープ部側端部(
図5中下端部)に形成されてシリンダ1Rの内外を連通する孔14dとを備えている。
【0053】
また、
図3に示すように、シリンダ1Rに出没可能な上記ピストンロッド2Rは、上記ピストン側シリンダ13の車輪側端部(
図3中下端部)に固定される環状のロッドガイドGを貫通し、このロッドガイドGで軸方向に移動自在に軸支されている。そして、上記ロッドガイドGの内周には、ピストンロッド2Rの外周面に摺接する環状のシール(図示せず)が取り付けられており、このシールで作動液のシリンダ1R外への流出を防いでいる。
【0054】
さらに、図示しないが、ピストンロッド2Rには、伸側室Laと圧側室Lbとを連通する第二バイパス流路が形成されるとともに、この第二バイパス流路を絞り、周知のオリフィスを形成するニードル弁が取り付けられている。
【0055】
また、上記ピストンロッド2Rに保持されるピストン3は、ピストン側シリンダ13の内周面に摺接している。そして、ピストン3には、伸側室Laと圧側室Lbとを連通する伸側と圧側のピストン流路30,31(
図1)が形成されており、圧側室側に伸側減衰弁V1が積層されるとともに、伸側室側に圧側逆止弁V2が積層されている。
【0056】
さらに、伸側減衰弁V1は、作動液が伸側のピストン流路30を通過して伸側室Laから圧側室Lbへ移動することのみを許容するとともに、伸側のピストン流路30を通過する作動液に所定の抵抗を与える。他方、圧側逆止弁V2は、作動液が圧側のピストン流路31を通過して圧側室Lbから伸側室Laへ移動することのみを許容するとともに、ピストン速度が低速領域にある場合、圧側のピストン流路31を通過する作動液に小さい抵抗しか与えないように設定されている。
【0057】
つづいて、シリンダ1Rの反ピストンロッド側の内側に起立するベースロッド4Rは、キャップ部材9Rに保持される内筒40と、同じくキャップ部材9Rに保持されて内筒40の外周に配置される外筒41と、外筒41から突出する内筒40の先端部外周に螺合するセンターロッド42とを備え、このセンターロッド42の外周にベース部材5を保持している。
【0058】
そして、
図5に示すように、内筒40の内側には、内筒内流路40aが形成され、内筒40と外筒41の間には、内筒外流路41aが形成され、上記センターロッド42には、内筒内流路40aと圧側室Lbとを連通するセンターロッド通孔42aが形成されている。また、内筒40の外周には、環状のシート部材43が外筒41とセンターロッド42との間に挟まれて保持されており、上記シート部材43の内周部分に、内筒外流路41aと液溜室Ldとを連通する切欠き43aが形成されている。
【0059】
また、ベースロッド4Rに保持される上記ベース部材5は、ベース側シリンダ14の内側に配置されている。そして、ベース部材5には、
図3に示すように、圧側室Lbと液溜室Ldとを連通する伸側と圧側のベース部材流路50,51が形成されており、圧側室側に伸側逆止弁V3が積層されるとともに、液溜室側に圧側減衰弁V4が積層されている。
【0060】
さらに、伸側逆止弁V3は、作動液が伸側のベース部材流路50を通過して液溜室Ldから圧側室Lbへ移動することのみを許容するとともに、伸側のベース部材流路50を通過する作動液に小さい抵抗しか与えないように設定されている。他方、圧側減衰弁V4は、作動液が圧側のベース部材流路51を通過して圧側室Lbから液溜室Ldへ移動することのみを許容するとともに、圧側のベース部材流路51を通過する作動液に所定の抵抗を与える。
【0061】
また、ベースロッド4Rの外周に移動可能に取り付けられるフリーピストン6は、シリンダ1R内を作動液室L2と気体が収容される気室E2とに区画する。そして、フリーピストン6は、附勢手段である附勢ばねS3で
図3中下側に附勢されており、この附勢ばねS3とともに、作動液室L2を加圧する加圧機構を構成する。
【0062】
さらに、上記フリーピストン6は、環状に形成されており、内周に取り付けられるシール(符示せず)を介してベースロッド4Rの外周面に摺接している。このため、フリーピストン6とベースロッド4Rとの間が上記シールで常に塞がれている。また、フリーピストン6の外周には、車体側シール60と車輪側シール61の二つのシールが取り付けられており、車体側シール60と車輪側シール61の間にベース側シリンダ14の孔14dが配置されている。
【0063】
そして、車体側シール60は、大内径部14aの内周面に摺接し、フリーピストン6とシリンダ1Rとの間を常に塞ぐ。他方、車輪側シール61は、小内径部14cの内周面に摺接しているとき、フリーピストン6とシリンダ1Rとの間を塞ぐが、フリーピストン6が附勢ばねS3の附勢力に抗して車体側に移動し、車輪側シール61がスロープ部14bに達すると、車輪側シール61の外周に隙間ができ、この隙間及び孔14dを介して作動液室L2とリザーバR2を連通することができる。つまり、本実施の形態において、他方の緩衝器D2は、フリーピストン6が所定量車体側に移動したとき作動液室L2とリザーバR2を連通し、加圧された作動液室L2の作動液を逃がすリリーフ機構を備えている。
【0064】
つづいて、シリンダ1Rと緩衝器本体Tとの間に形成されるリザーバR2は、作動液が貯留される図示しないリザーバ内液室と、このリザーバ内液室の液面を介して上側に形成されて気体が封入されるリザーバ内気室Rcとからなる。そして、このリザーバR2には、懸架ばねS2が収容されており、この懸架ばねS2は、ピストン側シリンダ13の外周に固定される車体側ばね受け8Rと、車輪側ブラケットJbとの間に介装されている。
【0065】
また、本実施の形態において、懸架ばねS2の車体側端を支持する車体側ばね受け8Rは、位置依存の減衰力を発生するための隔壁部材であり、ピストン側シリンダ13の外周に固定される環状の連結部82と、この連結部82の外周縁から外側に張り出すとともに
図3中下側に延びる筒部83と、この筒部83を貫通する連通孔83aとを備えている。
【0066】
そして、車体側ばね受け(隔壁部材)8Rは、他方の緩衝器D2が所定量圧縮されたとき、図示しないリザーバ内液室に進入し、作動液が連通孔83aを通過する。このため、他方の緩衝器D2は、圧縮量が所定以上であるとき、作動液が連通孔83aを通過する際の抵抗に起因する位置依存の減衰力を発生することができる。
【0067】
つづいて、上記ピストンロッド2Rを保持するキャップ部材9Rは、
図5に示すように、筒状に形成されて緩衝器本体T内に突出するロッド保持部93と、環状に形成されて緩衝器本体T内に突出するとともにロッド保持部93の外周に配置されるケース部94と、キャップ部材9Rを軸方向に貫通しロッド保持部93の内側に開口する第三キャップ部材通孔95と、キャップ部材9Rを軸方向に貫通しロッド保持部93とケース部94の間に開口する第四キャップ部材通孔96と、ロッド保持部93の外周に軸方向に沿って形成される軸溝97とを備えている。
【0068】
そして、上記ロッド保持部93とケース部94との間に、環状隙間98が形成されるとともに、この環状隙間98の
図5中下側開口が環状の蓋部材99で塞がれている。また、上記第三キャップ部材通孔95は、ベースロッド4Rの内筒内流路40aと、センターロッド通孔42aを介して圧側室Lbに連通しており、上記第四キャップ部材通孔96は、環状隙間98、軸溝97、内筒外流路41aおよび切欠き43aを介して液溜室Ldに連通している。
【0069】
また、第二減衰力調整手段A2が取り付けられる第二ハウジングH2は、
図3に示すように、上記キャップ部材9Rと第三ホースh4及び第四ホースh5でつながれている。そして、第二ハウジングH2には、第二ハウジング流路h6が形成されており、第二ハウジング流路h6の一方側が上記第三ホースh4を介して第三キャップ部材通孔95に連通するとともに、第二ハウジング流路h6の他方側が上記第四ホースh5を介して第四キャップ部材通孔96に連通している。
【0070】
つまり、本実施の形態において、ベースロッド4Rのセンターロッド通孔42a、内筒内流路40a、第三キャップ部材通孔95、第三ホースh4、第二ハウジング流路h6、第四ホースh5、第四キャップ部材通孔96、環状隙間98、軸溝97、内筒外流路41a及び切欠き43aで、圧側室Lbと液溜室Ldとを連通する第二流路Bを構成している。
【0071】
さらに、上記第二減衰力調整手段A2は、本実施の形態において、第二ハウジング流路h6を開閉する弁体V6と、この弁体V6閉じ方向に附勢する比例ソレノイドからなる第二アクチュエータM2と、第二ハウジング流路h6における弁体V6よりも上流側の圧力を検出する第二圧力センサK2とを備えて、周知の電磁ポペット弁を構成している。そして、第二圧力センサK2で検出された値を基に第二アクチュエータM2に供給する電流量を変更して、弁体の開弁圧を調節できるので、作動液が上記第二流路B2を通過する際の抵抗を変更することができる。
【0072】
次に、本発明の一実施の形態に係るフロントフォークFの作動について説明する。尚、以下の説明において、ピストン速度を低速領域と、中高速領域に分けているが、各領域の閾値は任意に設定することが可能である。
【0073】
各緩衝器D1,D2の車輪側チューブTbが車体側チューブTaから退出し、ピストンロッド2L,2Rがシリンダ1L,1Rから退出するフロントフォークFの伸長時において、ピストン速度が低速領域にある場合、各緩衝器D1,D2のピストン3に積層された伸側減衰弁V1が開弁しない。
【0074】
このため、一方の緩衝器(伸側減調緩衝器)D1では、伸側室Laの作動液が第一流路B1を、センターロッド通孔21a、軸部材内流路20a、第一キャップ部材通孔91、第一ホースh1、第一ハウジング流路h3、第二ホースh2の順に通過し、リザーバR1に移動する。さらに、一方の緩衝器D1では、ベース部材5に積層された伸側逆止弁V3が開弁し、ピストン3が移動した距離に圧側室Lbの横断面積を乗じた分の作動液が伸側のベース部材流路50を通過して液溜室Lcから圧側室Lbに移動する。
【0075】
また、他方の緩衝器(圧側減調緩衝器)D2では、伸側室Laの作動液がピストンロッド2Rに形成された第二バイパス流路(図示せず)を通過して圧側室Lbに移動する。さらに、他方の緩衝器D2でも、ベース部材5に積層された伸側逆止弁V3が開弁し、シリンダ1Rから退出したピストンロッド体積分の作動液が伸側のベース部材流路50を通過して液溜室Ldから圧側室Lbに移動する。
【0076】
したがって、フロントフォークFは、一方の緩衝器D1において、第一流路B1や伸側のベース部材流路50を作動液が通過する際の抵抗と、他方の緩衝器D2において、ピストンロッド2Rに形成される図示しない第二バイパス流路や伸側のベース部材流路50を作動液が通過する際の抵抗に起因する伸側低速減衰力を発生する。
【0077】
また、上記したように、各緩衝器D1,D2において、伸側のベース部材流路50を作動液が通過する際の伸側逆止弁V3による抵抗は、小さく設定されているため、上記伸側低速減衰力は、主に、第一流路B1を構成する第一ハウジング流路h3に挿入される弁体V5による抵抗と、図示しない第二バイパス流路に挿入されるニードル弁の抵抗によるものである。
【0078】
そして、第一アクチュエータM1で弁体V5の開弁圧を大きくすることで、作動液が第一流路B1を通過する際の抵抗を大きくし、伸側低速減衰力が大きくなるように調整できる。また、第一アクチュエータM1で弁体V5の開弁圧を小さくすることで、作動液が第一流路B1を通過する際の抵抗を大きくし、伸側低速減衰力が小さくなるように調整できる。
【0079】
また、フロントフォークFの伸長時において、ピストン速度が高くなり、低速領域を脱して中高速領域に達すると、各緩衝器D1,D2のピストン3に積層された伸側減衰弁V1が開弁し、伸側室Laの作動液が伸側のピストン流路30を通過して圧側室Lbに移動する。
【0080】
さらに、各緩衝器D1,D2のベース部材5に積層された伸側逆止弁V3が開弁し、シリンダ1L,1Rから退出したピストンロッド体積分の作動液が伸側のベース部材流路50を通過して液溜室Lc,Ldから圧側室Lbに移動する。
【0081】
したがって、フロントフォークFは、各緩衝器D1,D2において、伸側のピストン流路30及びベース部材流路50を作動液が通過する際の抵抗に起因する伸側中高速減衰力を発生する。
【0082】
また、上記したように、各緩衝器D1,D2において、伸側のベース部材流路50を作動液が通過する際の伸側逆止弁V3による抵抗は、小さく設定されているため、上記伸側中高速減衰力は、主に、各緩衝器D1,D2の伸側減衰弁V1の抵抗によるものである。
【0083】
また、フロントフォークFの伸長時において、各緩衝器D1,D2では、上記したように、液溜室Lc,Ldの作動液が圧側室Lbに移動する。このため、一方の緩衝器D1では、可動隔壁7が
図2中下側に前進し、下室Ra2の作動液がベース側シリンダ11の孔11aを通過して液溜室Lcに移動する。
【0084】
また、可動隔壁7に取り付けられた逆止弁V7が開弁するため、作動液が連通路70(
図4)を通過して上室Ra1から下室Ra2に移動するとともに、上記ブラダ12が拡大する。したがって、作動液が下室Ra2から液溜室Lcに速やかに移動する。
【0085】
また、他方の緩衝器D2では、フリーピストン6が
図3中下側に前進し、液溜室Ldの容積が小さくなる。
【0086】
つづいて、各緩衝器D1,D2の車輪側チューブTbが車体側チューブTaに進入し、ピストンロッド2L,2Rがシリンダ1L,1Rに進入するフロントフォークFの圧縮時において、ピストン速度が低速領域にある場合、各緩衝器D1,D2のピストン3に積層された圧側逆止弁V2が開弁し、ピストン3で加圧された圧側室Lbの作動液が圧側のピストン流路31を通過して伸側室Laに移動する。
【0087】
しかし、各緩衝器D1,D2のベース部材5に積層された圧側減衰弁V4は、開弁しない。
【0088】
このため、一方の緩衝器D1では、シリンダ1L内に進入したピストンロッド体積分の作動液が、ベースロッド4Lの図示しない第一バイパス流路を通過して圧側室Lbから液溜室Lcに移動する。
【0089】
また、他方の緩衝器D2では、シリンダ1R内に進入したピストンロッド体積分の作動液が第二流路B2を、センターロッド通孔42a、内筒内流路40a、第三キャップ部材通孔95、第三ホースh4、第二ハウジング流路h6、第四ホースh5、第四キャップ部材通孔96、環状隙間98、軸溝97、内筒外流路41a、切欠き43aの順に通過し、圧側室Lbから液溜室Ldに移動する。
【0090】
したがって、フロントフォークFは、一方の緩衝器D1において、圧側のピストン流路31やベースロッド4Lに形成される図示しない第一バイパス流路を作動液が通過する際の抵抗と、他方の緩衝器D2において、圧側のピストン流路31や第二流路B2を作動液が通過する際の抵抗に起因する圧側低速減衰力を発生する。
【0091】
また、上記したように、各緩衝器D1,D2において、圧側のピストン流路31を作動液が通過する際の圧側逆止弁V2による抵抗は、低速領域では小さくなるように設定されているため、上記圧側低速減衰力は、主に、第二流路B2を構成する第二ハウジング流路h6に挿入される弁体V6による抵抗と、図示しない第一バイパス流路に挿入されるニードル弁の抵抗によるものである。
【0092】
そして、第二アクチュエータM2で弁体V6の開弁圧を大きくすることで、作動液が第二流路B2を通過する際の抵抗を大きくし、圧側低速減衰力が大きくなるように調整できる。また、第二アクチュエータM2で弁体V6の開弁圧を小さくすることで、作動液が第二流路B2を通過する際の抵抗を小さくし、圧側低速減衰力が小さくなるように調整できる。
【0093】
また、フロントフォークFの圧縮時において、ピストン速度が高くなり、低速領域を脱して中高速領域に達すると、各緩衝器D1,D2のピストン3に積層された圧側逆止弁V2が開弁し、圧側室Lbの作動液が圧側のピストン流路31を通過して伸側室Laに移動する。
【0094】
さらに、各緩衝器D1,D2のベース部材5に積層された圧側減衰弁V4が開弁し、シリンダ1L,1R内に進入したピストンロッド体積分の作動液が圧側のベース部材流路51を通過して圧側室Lbから液溜室Lc,Ldに移動する。
【0095】
したがって、フロントフォークFは、各緩衝器D1,D2において、圧側のピストン流路31及びベース部材流路51を作動液が通過する際の抵抗に起因する圧側中高速減衰力を発生する。また、圧側逆止弁V2の開口がストッパ(符示せず)により制限されると、圧側中高速減衰力の減衰係数(ピストン速度変化量に対する減衰力変化量の割合)が大きくなる。
【0096】
また、フロントフォークFの圧縮時において、各緩衝器D1,D2では、上記したように、圧側室Lbの作動液が液溜室Lc,Ldに移動する。このため、一方の緩衝器D1では、液溜室Lcの作動液がベース側シリンダ11の孔11aを通過して下室Ra2に移動する。また、可動隔壁7に取り付けられた逆止弁V7が閉じるため、上記ブラダ12が収縮するとともに、可動隔壁7が懸架ばねS1の附勢力に抗して
図2中上側に後退する。
【0097】
そして、可動隔壁7がピストン側シリンダ10の窪み10aに達すると、逆止弁V7の内側に隙間ができて、上室Ra1と下室Ra2が連通するため、下室Ra2の作動液が上記隙間を通過して上室Ra1に移動する。したがって、可動隔壁7を介して懸架ばね(附勢手段)S1で加圧された作動液室L1の作動液を逃がすことができる。
【0098】
しかし、一方の緩衝器D1が伸長を始めると、懸架ばね(附勢手段)S1の附勢力により可動隔壁7が前進し、上室Ra1と下室Ra2との連通を速やかに遮断する。
【0099】
また、他方の緩衝器D2では、液溜室Ldに移動した作動液でフリーピストン6が押し上げられ、フリーピストン6が
図3中上側に後退し、液溜室Ldの容積が大きくなる。
【0100】
そして、フリーピストン6の車輪側シール61がベース側シリンダ14のスロープ部14bに達すると、車輪側シール61の外周に隙間ができ、この隙間と、ベース側シリンダ14の孔14dを介して液溜室LdとリザーバR2が連通するため、液溜室Ldの作動液が上記隙間及び上記孔14dを通過してリザーバR2に移動する。したがって、フリーピストン6を介して附勢ばね(附勢手段)S3で加圧された作動液室L2の作動液を逃がすことができる。
【0101】
しかし、他方の緩衝器D2が伸長を始めると、附勢ばね(附勢手段)S3の附勢力によりフリーピストン6が前進し、作動液室L2とリザーバR2との連通を速やかに遮断する。
【0102】
さらに、フロントフォークFの圧縮時において、各緩衝器D1,D2の圧縮量が所定量に達すると、各緩衝器D1,D2の車体側ばね受け(隔壁部材)8L,8Rにおける連通孔81a,83aがリザーバ内液室Ra(一方の緩衝器D1のリザーバ内液室Raのみを図示し、他方の緩衝器D2のリザーバ内液室を図示せず)に進入する。そして、各緩衝器D1,D2の圧縮量が所定量以上であるとき、各緩衝器D1,D2の伸縮に伴い作動液が上記連通孔81a,83aを通過する。このため、各緩衝器D1,2は、連通孔81a,83aを作動液が通過する際の抵抗に起因する位置依存の減衰力を発生する。
【0103】
次に、本実施の形態に係るフロントフォークFの作用効果について説明する。本実施の形態のフロントフォークFは、車体と車輪との間に並列に取り付けられる一対の緩衝器D1,D2を備えている。そして、上記各緩衝器D1,D2は、シリンダ1L,1Rと、このシリンダ1L,1Rに出没可能なピストンロッド2L,2Rと、シリンダ1L,1R内に形成されて作動液が充填される作動液室L1,L2と、上記ピストンロッド2L,2Rに保持されて上記作動液室L1,L2を伸側室Laと圧側室Lbとに区画するピストン3とを備えている。
【0104】
そして、上記一対の緩衝器D1,D2のうち一方の緩衝器D1が第一アクチュエータM1の駆動により伸側減衰力を調整可能な第一減衰力調整手段A1を備えるとともに、上記一対の緩衝器D1,D2のうち他方の緩衝器D2が第二アクチュエータM2の駆動により圧側減衰力を調整可能な第二減衰力調整手段A2を備えている。
【0105】
さらに、上記他方の緩衝器D2は、上記シリンダ1Rが車体側に連結されるとともに、上記ピストンロッド2Rが車輪側に連結されており、上記シリンダ1Rの反ピストンロッド側の内側に起立するベースロッド4Rと、このベースロッド4Rに保持されて上記作動液室L2を上記圧側室Lbと液溜室Ldとに区画するベース部材5と、上記圧側室Lbと液溜室Ldとを連通する第二流路B2とを備え、作動液が上記第二流路B2を通過する際の抵抗を上記
第二アクチュエータM2で変更し上記圧側減衰力を調整する。
【0106】
したがって、本実施の形態におけるフロントフォークFは、伸側減衰力を一方の緩衝器D1の第一アクチュエータM1で調整するとともに、圧側減衰力を他方の緩衝器D2の第二アクチュエータM2で調整することで、伸側減衰力及び圧側減衰力(本実施の形態においては、伸側低速減衰力及び圧側低速減衰力)を、手動によらず、アクチュエータで調整することができる。
【0107】
また、圧側減衰力を調整可能な他方の緩衝器D2を倒立型に設定したとしても、本実施の形態のフロントフォークFは、圧側室Lbと液溜室Ldとを連通する第二流路B2を作動液が通過する際の抵抗を変更して圧側減衰力(本実施の形態においては、圧側低速減衰力)を調整するため、ベースロッド4Rを利用して圧側減衰力を調整することができる。したがって、圧側減衰力を調整する第二アクチュエータM2を車体側に連結し、ばね上に配置することが容易に可能となる。
【0108】
さらに、本実施の形態において、フロントフォークFは、一方の緩衝器D1で伸側減衰力を調整しており、他方の緩衝器D2では、圧側減衰力のみを調整すればよい。したがって、一つの緩衝器で伸側減衰力及び圧側減衰力を調整する場合と比較して、伸側減衰力及び圧側減衰力を調整するための構成を簡易にすることが可能となる。
【0109】
また、本実施の形態において、上記一方の緩衝器D1は、車体側チューブTaと車輪側チューブTbとからなり内部に上記シリンダ1L及び上記ピストンロッド2Lを収容するテレスコピック型の緩衝器本体Tと、上記シリンダ1Lと上記緩衝器本体Tとの間に形成されるリザーバR1と、上記ピストンロッド2Rの内部を通り上記伸側室Laと上記リザーバR1とを連通する第一流路B1とを備えている。
【0110】
そして、上記一方の緩衝器D1の上記シリンダ1Lが車輪側に連結されるとともに、上記一方の緩衝器D1の上記ピストンロッド2Lが車体側に連結されており、上記一方の緩衝器D1は、上記作動液が上記第一流路B1を通過する際の抵抗を第一アクチュエータM1で変更し上記伸側減衰力を調整する。
【0111】
したがって、伸側減衰力を調整可能な一方の緩衝器D1を正立型に設定したとしても、本実施の形態のフロントフォークFは、伸側室LaとリザーバR1を連通する第一流路B1を作動液が通過する際の抵抗を変更して伸側減衰力(本実施の形態においては、伸側低速減衰力)を調整するため、ピストンロッド2Lを利用して伸側減衰力を容易に調整することができる。これにより、伸側減衰力を調整する第一アクチュエータM1を車体側に連結し、ばね上に配置することが容易に可能となる。
【0112】
また、本実施の形態において、上記各緩衝器D1,D2は、車体側チューブTaと車輪側チューブTbとからなり内部に上記シリンダ1L,1R及び上記ピストンロッド2L,2Rを収容するテレスコピック型の緩衝器本体Tと、上記シリンダ1L,1Rと上記緩衝器本体Tとの間に形成されるリザーバR1,R2と、このリザーバR1,R2に収容される車体側ばね受け(隔壁部材)8L,8Rとを備えている。
【0113】
そして、上記各緩衝器D1,D2の上記リザーバR1,R2は、作動液が貯留されるリザーバ内液室Ra(一方の緩衝器D1のリザーバ内液室Raのみを図示し、他方の緩衝器D2のリザーバ内液室を図示せず)を備えており、上記各緩衝器D1,D2の上記車体側ばね受け(隔壁部材)8L,8Rは、この車体側ばね受け8L,8Rを貫通する連通孔81a,83aを備えるとともに、上記各緩衝器D1,D2が所定量圧縮されると上記リザーバ内液室Raに進入し、上記連通孔81a,83aを通過する作動液に抵抗を与えるものである。
【0114】
このため、上記各緩衝器D1,D2は、所定量以上圧縮された状態にあるとき、作動液が上記連通孔81a,83aを通過する際の抵抗に起因する位置依存の減衰力を発生することができる。したがって、対となる緩衝器D1,D2がともに位置依存の減衰力を発生するため、片側の緩衝器のみが位置依存の減衰力を発生する場合と比較して、フロントフォークFのバランスがよい。
【0115】
また、本実施の形態において、上記各緩衝器D1,D2の上記リザーバR1,R2は、作動液が貯留されるリザーバ内液室Ra(一方の緩衝器D1のリザーバ内液室Raのみを図示し、他方の緩衝器D2のリザーバ内液室を図示せず)を備えている。
【0116】
そして、正立側に設定される上記一方の緩衝器D1は、上記シリンダ1Lの反ピストンロッド側の内側に固定され上記作動液室L1を上記圧側室L
bと液溜室Lcとに区画するベース部材5と、上記シリンダ1Lの外周に軸方向に移動可能に取り付けられて上記リザーバ内液室Raを上室Ra1と下室Ra2とに区画する可動隔壁7と、上記下室Ra2と上記液溜室Lcとを連通する孔11aと、上記可動隔壁7を下室側に附勢する懸架ばね(附勢手段)S1と、上記可動隔壁7が所定量車体側に移動したとき上記上室Ra1と上記下室Ra2とを連通するリリーフ機構とを備えている。
【0117】
また、上記他方の緩衝器D2は、上記シリンダ1R内に軸方向に移動可能に挿入されて上記シリンダ1R内に上記作動液室L2を区画するフリーピストン6と、このフリーピストン6を作動液室側に附勢する附勢ばね(附勢手段)S3と、上記フリーピストン6が所定量車体側に移動したとき上記作動液室L2と上記リザーバR2とを連通するリリーフ機構とを備えている。
【0118】
つまり、本実施の形態においては、対となる緩衝器D1,D2がともに、作動液室L1,L2を加圧する加圧機構と、加圧された作動液室L1,L2の作動液を逃がすリリーフ機構とを備えている。したがって、片側の緩衝器のみが加圧機構やリリーフ機構を備える場合と比較して、フロントフォークFのバランスがよい。
【0119】
さらに、対となる緩衝器D1,D2に、加圧機構をそれぞれ設けることで、伸長と圧縮が切り替わったとき、対となる緩衝器D1,D2がともに、応答性よく伸側減衰力や圧側減衰力を発生することができる。したがって、上記構成を備えることにより、フロントフォークFの性能が格段に向上する。
【0120】
また、本実施の形態において、上記一方の緩衝器D1は、上記上室Ra1と上記下室Ra2とを連通する連通路70と、作動液が上記連通路70を通過して上記上室Ra1から上記下室Ra2へ移動することのみを許容する逆止弁V7と、気体が封入される気室E1を上記下室Ra2内に区画するブラダ12とを備えている。
【0121】
したがって、一方の緩衝器D1の伸長時において、液溜室Lcから圧側室Lbに作動液が移動するとき、下室Ra2内で作動液が不足することがなく、下室Ra2から液溜室Lcに速やかに作動液を供給することができる。
【0122】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【0123】
例えば、上記実施の形態において、第一アクチュエータM1で伸側低速減衰力を調整し、第二アクチュエータM2で圧側低速減衰力を調整している。しかし、第一アクチュエータM1や第二アクチュエータM2で調整する減衰力の速度領域は適宜選択することが可能であり、第一アクチュエータM1で伸側中高速減衰力を調整したり、第二アクチュエータM2で圧側中高速減衰力を調整したりしてもよい。
【0124】
また、一方の緩衝器D1において伸側室LaとリザーバR1を連通する第一流路B1は、緩衝器本体Tの外側に配置される第一ハウジングH1の内部を通り、この第一ハウジングH1に第一アクチュエータM1が取り付けられている。しかし、上記第一流路B1の構成や、第一アクチュエータM1の取り付け位置は上記の限りではなく、第一アクチュエータM1がキャップ部材9Lに取り付けられるとしてもよい。
【0125】
また、他方の緩衝器D2において圧側室Lbと液溜室Ldとを連通する第二流路B2は、緩衝器本体Tの外側に配置される第二ハウジングH2の内部を通り、この第二ハウジングH2に第二アクチュエータM2が取り付けられている。しかし、上記第二流路B2の構成や、第二アクチュエータM2の取り付け位置は上記の限りではなく、第二アクチュエータM2がキャップ部材9Rに取り付けられるとしてもよい。
【0126】
また、上記実施の形態において、第一、第二アクチュエータM1,M2は、比例ソレノイドからなり、弁体V5,V6の開弁圧を変更して減衰力を調整している。しかし、第一、第二アクチュエータM1,M2の構成は、上記の限りではなく、弁体V5,V6の位置を任意に変更し、
第一、第二ハウジング流路h3,h6の流路面積を変更するモータやリニアアクチュエータであるとしてもよい。また、減衰力の調整方法も上記の限りではなく、特許文献1に記載のように、プッシュロッドを利用してもよい。
【0127】
さらに、上記弁体V5,V6がリーフバルブからなるとしてもよく、この場合には、弁体V5,V6を閉じ方向に附勢するばねの附勢力を第一、第二アクチュエータM1,M2で変更することにより、減衰力を調整するとしてもよい。
【0128】
また、第一減衰力調整手段A1及び第二減衰力調整手段A2の構成も上記の限りではなく、第一圧力センサK1及び第二圧力センサK2の一方若しくは両方を廃してもよい。
【0129】
また、上記実施の形態において、対となる緩衝器D1,D2は、ともに伸側減衰弁V1及び圧側減衰弁V4を備えており、伸側減衰力及び圧側減衰力を発生することができる。しかし、各緩衝器D1,D2が備えるバルブの種類は適宜選択することが可能であり、例えば、一方の緩衝器D1が伸側減衰力のみを発生し、他方の緩衝器D2が圧側減衰力のみを発生するとしてもよい。
【0130】
また、上記実施の形態において、対となる緩衝器D1,D2は、ともに加圧機構、リリーフ機構、位置依存の減衰力を発生するための車体側ばね受け(隔壁部材)8L,8Rを備えているが、対となる緩衝器D1,D2の片側若しくは両側が、これら構成のうちの一部若しくは全部を備えていなくてもよい。
【0131】
また、上記実施の形態において、一方の緩衝器(伸側減調緩衝器)D1は、加圧機構を備え、ブラダ12を有しているが、ブラダ12を廃し、気室E1を下室Ra
2に区画していなくてもよい。
【0132】
また、上記実施の形態において、第一減衰力調整手段A1の弁体V5と、第二減衰力調整手段A2の弁体V6が同じ方向に取り付けられている。しかし、弁体V5,V6の取り付け状態を第一減衰力調整手段A1と第二減衰力調整手段A2とで変えてもよく、例えば、
図6に示すようにしてもよい。
図6には、第一減衰力調整手段A1の変形例(
図6(a))と第二減衰力調整手段A2の変形例(
図6(b))を示しており、当該変形例において、第一減衰力調整手段A1は、一実施の形態と同様に、弁体V5と、この弁体V5の開弁圧を変更する第一アクチュエータM1とを備えており、第二減衰力調整手段A2も一実施の形態と同様に、弁体V6と、この弁体V6の開弁圧を変更する第二アクチュエータM2とを備えている。第一アクチュエータM1で調節される弁体V5は、
図6(a)に示すように、重力に逆らって開弁するように取り付けられている。他方、第二アクチュエータM2で調節される弁体V6は、
図6(b)に示すように、重力に従って開弁するように取り付けられている。
【0133】
このようにすることで、車両がコブに乗り上げる時など突き上げ入力がフロントフォークFに入力されたとき、ハウジングH1,H2は上向きに加速するが、弁体V5,V6は慣性でその場にとどまろうとするので、ハウジング側に固定されて弁体V5,V6が離着座する弁座V50,V60と弁体V5,V6との相対関係において、弁体V5,V6は、見かけ上、上記加速の方向とは逆向き(
図6中下向き)の慣性力を受ける。つまり、第一減衰力調整手段A1の弁体V5は、閉弁する方向に上記慣性力を受け、第二減衰力調整手段A2の弁体V6は、開弁する方向に上記慣性力を受けるので、伸側減衰力を高く、圧側減衰力を低くすることができる。したがって、低い圧側減衰力で突き上げ入力を効果的にいなすとともに、この後の伸長運動を高い伸側減衰力で抑制することが可能となり、車両の乗り心地を良好にすることができる。
【0134】
反対に、車体前部が落下するとき、ハウジングH1,H2は下向きに加速するが、弁体V5,V6は慣性でその場にとどまろうとするので、ハウジング側に固定される弁座V50,V60と弁体V5,V6との相対関係において、弁体V5,V6は、見かけ上、上記加速の方向とは逆向き(
図6中上向き)の慣性力を受ける。つまり、第一減衰力調整手段A1の弁体V5は、開弁する方向に上記慣性力を受け、第二減衰力調整手段A2の弁体V6は、閉弁する方向に上記慣性力を受けるので、伸側減衰力を低く、圧側減衰力を高くすることができる。
【0135】
さらに、スカイフック制御により、上記したような減衰力特性を実現する場合、
図6に示すような弁体V5,V6の取り付け方にすることで、車体上部(ばね上)が上向きに加速するときの伸側減衰力を高く、同圧側減衰力を低く、車体上部(ばね上)が下向きに加速するときの伸側減衰力を低く、同圧側減衰力を高くすることを、弁体V5,V6が受ける上記した慣性力が助けるので、制御の立ち遅れを抑制することが可能となる。