(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記補正ゲイン生成部は、上記低周波成分が上記ダンパが伸長状態を示す場合には上記制御指令を大きくするように上記補正ゲインを設定し、上記低周波成分が上記ダンパが収縮状態を示す場合には上記制御指令を小さくするように上記補正ゲインを設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のダンパ制御装置。
上記制御部は、上記振動レベルに基づいてレベルゲインを生成するレベルゲイン生成部と、上記振動レベルに上記レベルゲインを乗じる振動レベル補正部とを備え、補正された振動レベルに基づいて上記制御指令を生成し、
上記レベルゲイン生成部は、上記振動レベルが所定値以上となると上記レベルゲインを1未満の値として生成する
ことを特徴とする請求項3または4に記載のダンパ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1に示すように、ダンパ制御装置Eは、この例では、車両におけるばね上部材Bとばね下部材Wとの間に介装されるダンパDにおける減衰力を制御するようになっており、ダンパDの伸縮速度の低周波成分Dvを検出する低周波成分検出部1と、当該低周波成分に基づいてダンパDの減衰力を制御する制御部2とを備えている。
【0014】
ダンパDは、この例では、懸架ばねVSに並列されて車両におけるばね上部材Bとばね下部材Wとの間に介装されており、ばね上部材Bは懸架ばねVSによって弾性支持されている。なお、ばね下部材Wは、車体であるばね上部材Bに揺動可能に取り付けられた車輪とリンクを含んでいる。
【0015】
そして、ダンパDは、たとえば、
図2に示すように、シリンダ12と、シリンダ12内に摺動自在に挿入されるピストン13と、シリンダ12内に移動自在に挿入されてピストン13に連結されるピストンロッド14と、シリンダ12内にピストンで区画した二つの圧力室15,16と、圧力室15,16同士を連通する減衰力調整通路17と、減衰力調整通路17を通過する流体の流れに抵抗を与える減衰力調整部としての比例ソレノイドバルブ18とを備えて構成される流体圧ダンパとされている。そして、このダンパDは、伸縮作動に応じて圧力室内に充填された流体が通路を通過する際に比例ソレノイドバルブ18にて抵抗を与えて当該伸縮作動を抑制する減衰力を発揮し、ばね上部材Bとばね下部材Wの相対移動を抑制するようになっている。
【0016】
シリンダ12内には作動油、水、水溶液といった液体が充填されており、比例ソレノイドバルブ18は、たとえば
、制御部2から供給される電流の大きさに応じてダンパDの減衰特性を変更することができるようになっている。なお、比例ソレノイドバルブ18は、たとえば、上記ダンパDの図示しない減衰力調整通路17の流路面積を可変にする弁体と、当該弁体を駆動して減衰力調整通路17の流路面積を調節することができるソレノイドとで構成されればよいが、ソレノイド以外のアクチュエータで弁体を駆動するものであってもよく、当該アクチュエータへ与える電流量を増減させることで減衰力調整通路17の流路面積を調整して、減衰力調整通路17を流れる流体に与える抵抗を変化させてダンパDが発生する減衰力を調整することができる。
【0017】
減衰力調整部は、比例ソレノイドバルブ18以外にも、たとえば、流体が磁気粘性流体とされる場合には、減衰力調整通路17に磁界を作用させる装置とされて、ダンパ制御装置Eから供給される電流量によって磁界の大きさを調整して減衰力調整通路17を通過する磁気粘性流体の流れに与える抵抗を変化させてダンパDの減衰力を可変にするものであってもよい。さらに、流体が電気粘性流体とされる場合には、減衰力調整部は、減衰力調整通路17に電界を作用させることができる装置であってもよく、ダンパ制御装置Eから与えられる電圧によって電界の大きさを調整して、減衰力調整通路17を流れる流体に与える抵抗を変化させることでダンパDの発生減衰力を可変にしてもよい。
【0018】
また、流体が液体であって、ダンパDが片ロッド型ダンパである場合、ダンパDは、シリンダ12内にピストンロッド14が出入りする体積を補償するために気体室やリザーバを備えるが、流体が気体である場合、気体室やリザーバを備えずともよい。ダンパDがリザーバを備えて伸長しても収縮してもシリンダ12内からリザーバへ通じる通路を介して流体が排出されるユニフロー型に設定される場合、シリンダ12からリザーバへ通じる通路の途中に減衰力調整部を設けて、流体の流れに抵抗を与えて減衰力を発揮するようにしてもよい。
【0019】
さらに、ダンパDは、上記以外にも、電磁力でばね上部材Bとばね下部材Wの相対移動を抑制する減衰力を発揮する電磁ダンパとされてもよく、電磁ダンパとしては、たとえば、モータと、モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構とを備えて構成されるか、リニアモータとされる。このようにダンパDが電磁ダンパである場合には、減衰力調整部は上記モータ或いはリニアモータに流れる電流を調節するモータ駆動装置とされればよい。
【0020】
以下、各部について説明する。低周波成分検出部1は、
図1および
図3に示すように、ダンパDのストローク変位を検出するストロークセンサ21とストロークセンサ21で検出したダンパ変位からダンパ速度を求める微分器22と、微分器22で求めたダンパ速度を濾波してダンパ速度の低周波成分Dvを抽出するバンドパスフィルタ23とを備えている。
【0021】
ストロークセンサ21は、詳しくは図示はしないが、ばね上部材Bとばね下部材Wとの間に介装されており、ダンパDのストローク変位を検出する。ストロークセンサ21は、ダンパDに一体化して設けるようにしてもよい。微分器22は、ストローク変位を微分してダンパ速度を求めて、当該ダンパ速度を出力する。バンドパスフィルタ23は、この場合、ダンパDの伸縮速度の低周波成分Dvは、ばね上部材Bの振動状況に依存する成分であるため、ダンパDの伸縮速度の振動成分のうちばね上共振周波数帯の周波数を低周波成分として抽出してこれを出力する。バンドパスフィルタ23の透過周波数帯域は、ばね上共振周波数帯としてあり、濾波後の低周波成分Dvにばね上共振周波数成分が含まれる一方、ばね下共振周波数成分が含まれないようになっている。
【0022】
制御部2は、この実施の形態の場合、ばね上部材Bの振動レベルVLを求める振動レベル生成部30と、振動レベルVLに基づいてレベルゲインLGを生成するレベルゲイン生成部31と、振動レベルVLにレベルゲインLGを乗じて振動レベルVLを補正する振動レベル補正部32と、補正後の振動レベルVL
*に基づいて制御指令Iを生成する制御指令生成部33と、上記低周波成分DvにレベルゲインLGを乗じて低周波成分Dvを補正する速度補正部34と、補正後の低周波成分Dv
*に基づいて補正ゲインHGを求める補正ゲイン生成部35と、補正ゲインHGを制御指令Iに乗じて補正して補正後の制御指令I
*を求める制御指令補正部36と、補正後の制御指令I
*通りに減衰力調整部としての比例ソレノイドバルブ18を駆動する駆動部37とを備えて構成されている。
【0023】
振動レベル生成部30は、
図3に示すように、低周波成分検出部1で検出したダンパ速度の低周波成分Dvをオリジナル信号Oとして、このオリジナル信号Oを利用して、位相が異なる二つ以上の、この例では5個のレベル算出信号L1〜L5を生成する信号生成部30aと、各レベル算出信号L1〜L5の絶対値のうち最大値を求め、当該最大値を上記振動レベルとするレベル演算部30bとを備えている。
【0024】
信号生成部30aは、オリジナル信号Oと振幅は同じであるが、互いに位相の異なる5個のレベル算出信号L1〜L5を求める。具体的には、信号生成部30aは、オリジナル信号Oからレベル算出信号Ln(n=1,2,3,4,5)を得るために、オリジナル信号Oに対して振幅は変えずに位相のみを変更する位相変更フィルタF1〜F5を備え、これら位相変更フィルタF1〜F5を並列させて、オリジナル信号Oを位相変更フィルタF1〜F5でフィルタ処理するようになっている。位相変更フィルタは、レベル算出信号L1〜L5の数に対応して設ければよく、この場合、5つ設ければよい。
【0025】
位相変更フィルタF1〜F5の伝達関数G(s)は、以下の式(1)によって設定されている。なお、式(1)中、O(s)は、オリジナル信号Oのラプラス変換量を示し、Ln(s)(n=1,2,3,4,5)は、レベル算出信号Ln(n=1,2,3,4,5)のラプラス変換量を示し、sは、ラプラス演算子を示しており、さらに、ωn(n=1,2,3,4,5)は、周波数を示しω1〜ω5までそれぞれ異なる周波数が設定される。
【0027】
したがって、信号生成部24は、レベル算出信号Ln(n=1,2,3,4,5)を求めるには、周波数をωn(n=1,2,3,4,5)として設定される伝達関数G(s)をもつ位相変更フィルタFn(n=1,2,3,4,5)を利用して、オリジナル信号Oから当該レベル算出信号Ln(n=1,2,3,4,5)を求める。たとえば、レベル算出信号L4を求めるには、信号生成部30aは、周波数にω4を入力して設定される伝達関数G(s)をもつ位相変更フィルタF4でオリジナル信号Oをフィルタ処理し、オリジナル信号Oから当該レベル算出信号L4を求めることになる。
【0028】
このように信号生成部30aで位相変更フィルタF1〜F5を用いてレベル算出信号L1〜L5を求めると、
図4に示すように、或る周波数xのオリジナル信号Oに対して振幅は変わらないが互いに位相のみが異なる5個のレベル算出信号L1〜L5を簡単に求めることができる。なお、オリジナル信号Oとレベル算出信号L1の位相差およびレベル算出信号L1〜L4間での位相差が等間隔になっているが、レベル算出信号L4とレベル算出信号L5の位相差がオリジナル信号Oとレベル算出信号L1の位相差および他のレベル算出信号L1〜L5間での位相差と異なる。これは、レベル算出信号L1〜L
5の周波数位相特性が、
図5に示すようになっており、上限の0度から下限の−180度の範囲で変化する特性となっており、0度と−180度で制限される。レベル算出信号L1〜L5の位相は、オリジナル信号の周波数が極低い周波数である場合、0度か0度近傍となり、オリジナル信号の周波数が極高い周波数である場合、−180度か−180度近傍となる。そのため、
図4に示すように、周波数xのオリジナル信号Oに対してフィルタ処理して得られたレベル算出信号L1〜L4では位相差が等間隔に配置されるが、レベル算出信号L5の位相が−180度の近くなって隣のレベル算出信号L4との位相差が小さくなるようになっている。 なお、位相変更フィルタF1〜F5の伝達関数G(s)は、以下の式(2)によって設定されてもよい。式(2)中、O(s)は、オリジナル信号Oのラプラス変換量を示し、Ln(s)(n=1,2,3,4,5)は、レベル算出信号Ln(n=1,2,3,4,5)のラプラス変換量を示し、sは、ラプラス演算子を示しており、さらに、ωn(n=1,2,3,4,5)は、周波数を示しω1〜ω5までそれぞれ異なる周波数が設定される。
【0030】
さらに、位相変更フィルタF1〜F5は、二次のローパスフィルタとすることも可能である。具体的には、位相変更フィルタF1〜F5の伝達関数G(s)は、以下の式(3)によって設定されてもよい。式(3)中、O(s)は、オリジナル信号Oのラプラス変換量を示し、Ln(s)(n=1,2,3,4,5)は、レベル算出信号Ln(n=1,2,3,4,5)のラプラス変換量を示し、sは、ラプラス演算子を示しており、さらに、ζは減衰率、ωn(n=1,2,3,4,5)は、カットオフ周波数を示しω1〜ω5までそれぞれ異なるカットオフ周波数が設定される。
【0032】
位相変更フィルタF1〜F5にローパスフィルタを用いれば、オリジナル信号Oに対してレベル算出信号L1〜L5の位相を遅らせることができ、ハイパスフィルタを用いれば、オリジナル信号Oに対してレベル算出信号L1〜L5の位相を進ませることができるため、位相変更フィルタF1〜F5の一部にハイパスフィルタを用いて、位相変更フィルタF1〜F5の残りにローパスフィルタを用いるといったことも可能である。
【0033】
さらに、信号生成部30aにあっては、オリジナル信号Oから位相の異なるレベル算出信号L1〜L5を得るものであるから、上記したフィルタ処理を用いずに、オリジナル信号Oに対して規定時間ずつ遅れた信号をレベル算出信号L1〜L5として生成するようにしてもよい。
【0034】
レベル演算部30bは、オリジナル信号Oおよび各レベル算出信号L1〜L5を絶対値処理して得られた信号のうち最大値を求める。オリジナル信号Oおよび各レベル算出信号L1〜L5を絶対値処理すると、絶対値処理後のオリジナル信号Oおよびレベル算出信号L1〜L5の波形は、
図6に示すように、オリジナル信号Oおよびレベル算出信号L1〜L5の波形のうち負の値をもつ部分が時間軸を中心に正側へ折り返した格好となる。なお、オリジナル信号Oおよびレベル算出信号L1〜L5の絶対値は、互いに位相を異にしているので、レベル算出信号L1〜L5を絶対値処理しても当該処理後のオリジナル信号Oおよびレベル算出信号L1〜L5における各波形が時間的にずれを生じるようになっている。
【0035】
このように処理することで、
図6中、どの時間をとっても、絶対値処理後のオリジナル信号Oおよびレベル算出信号L1〜L5の最大値は、オリジナル信号Oの最大振幅と等しいか或いは最大振幅に近似した値となることが分かる。たとえば、時間aにおける絶対値処理後のオリジナル信号Oおよびレベル算出信号L1〜L5の最大値はレベル算出信号L2の最大値となり、時間bにおける絶対値処理後のオリジナル信号Oおよびレベル算出信号L1〜L5の最大値は、オリジナル信号Oの最大振幅の値に近似した値となる。
【0036】
レベル算出信号L1〜L5の最大振幅は、オリジナル信号Oの速度における最大振幅と等しく、オリジナル信号OがダンパDの伸縮速度の低周波成分Dvであってばね上部材Bの速度にほぼ等しいため、オリジナル信号Oの最大振幅は、速度を尺度としてみた際におけるばね上部材Bの振動レベルVLに等しい。つまり、オリジナル信号Oが一周期した場合の最大値がばね上部材Bの振動レベルになるのであるが、一周期分をサンプリングするのではタイムリーにばね上部材Bの振動レベルVLを求めることができず、また、ばね上部材Bの振動の周波数が変化すると一周期に要する時間が変化するために最大振幅を得ることができないが、上記したように、オリジナル信号Oと振幅が同じで、互いに位相のみが異なるレベル算出信号L1〜L5を生成すると、振動レベルVLを演算する時点において、絶対値処理後のオリジナル信号Oおよびレベル算出信号L1〜L5のうちいずれかが最大値か最大値に近い値となることが期待でき、絶対値処理後のオリジナル信号Oおよびレベル算出信号L1〜L5のうち最大値を求めて振動レベルVLとすることで、振動レベルVLをオリジナル信号Oの最大振幅の値そのものかこれに近似した値として得ることができる。
【0037】
そして、たとえば、
図7に示すように、周波数xよりも低い周波数yのオリジナル信号Oを入力しても、オリジナル信号Oとこのオリジナル信号Oに対して位相が異なるレベル算出信号L1〜L5のうち演算時点での最大値を得て振動レベルVLとするので、振動レベルVLは、オリジナル信号Oの最大振幅の値かこれに近似した値となる。つまり、オリジナル信号Oの周波数が変化しても、オリジナル信号Oの最大振幅の値に近似した値を振動レベルVLとして得ることができる。
【0038】
なお、
図7に示したところでは、レベル算出信号L1〜L5間での位相差が等間隔になっているが、オリジナル信号Oとレベル算出信号L1の位相差が他のレベル算出信号L1〜L5間での位相差と異なる。
図5に示すように、オリジナル信号Oの位相は0度で一定であるものの、レベル算出信号L1の位相は、周波数が低くなると上限の0度で制限されるため、レベル算出信号L1の位相が0度の近くなってオリジナル信号Oとの位相差が小さくなるようになっている。さらに、周波数が低い領域では、レベル算出信号L1と隣のレベル算出信号L2との位相差も小さくなる。しかしながら、周波数が低くなっても、位相差が等間隔になるレベル算出信号L2〜L5によって、オリジナル信号Oの最大振幅の値に近似した値を振動レベルVLとして得ることができる。このように、オリジナル信号Oの周波数が変化してもリアルタイム且つタイムリーに、オリジナル信号Oの最大振幅の値かこれに近似した値を振動レベルVLとして求めることができ、幅広い周波数帯の信号に対して精度良く振動レベルVLを求めることができる。
【0039】
また、この実施の形態で求めた振動レベルVLは、オリジナル信号Oがばね上部材Bの振動情報である速度であるため、このように振動レベルVLを検知することで、ばね上部材Bの振動の大きさ(振動レベル)をタイムリーかつリアルタイムに検知することができ、このように求めた振動レベルは、ばね上部材Bの振動に対して時間的に遅れが少ないので、たとえば、車両の振動の抑制制御への使用にも十分に耐えうる。また、上記した実施の形態では、オリジナル信号Oとレベル算出信号L1〜L5を用いてばね上部材Bの振動レベルVLを得ていたが、オリジナル信号Oからばね上部材Bの振動レベルVLを得たい周波数帯域において位相の異なる三つ以上のレベル算出信号を生成すれば、ばね上部材Bの振動レベルVLを精度よく得ることができるので、レベル演算部30bにて、オリジナル信号Oを使用せずレベル算出信号のみを用いて上記手順を実行することでばね上部材Bの振動レベルVLを得るようにしてもよい。
【0040】
さらに、位相変更フィルタF1〜F5は、オリジナル信号Oを並列して処理してレベル算出信号L1〜L5を得るようになっているが、位相変更フィルタF1〜F5を直列配置することも可能である。たとえば、オリジナル信号OをフィルタF1で処理してレベル算出信号L1を得て、レベル算出信号L1を位相変更フィルタF2で処理してレベル算出信号L2を得てというように、続く、位相変更フィルタF2〜F5で、直前の位相変更フィルタで処理されたレベル算出信号を直後の位相変更フィルタで処理してレベル算出信号を得ることも可能である。
【0041】
ここで、上記したように、レベル算出信号の周波数位相特性は、
図5に示すように、上限の0度から下限の−180度の範囲で変化し、周波数が低くなると0度に近づき、周波数が高くなると−180度に近づくようになっていて、高い周波数xに対して
はオリジナル信号Oとレベル算出信号L1〜L4の間の位相が等間隔となり、オリジナル信号Oの最大振幅或いはこれに近似した値の振動レベルVLを得ることができ、低い周波数yに対しては位相変更フィルタF1〜F5で処理したレベル算出信号L1〜L5の位相が等間隔となり、オリジナル信号Oの最大振幅或いはこれに近似した値の振動レベルVLを得ることができる。
【0042】
つまり、高周波数の周波数xから低周波数の周波数yまでのオリジナル信号Oに対して、精度良く振動レベルVLを検知することができる。上記したところから、周波数xのオリジナル信号Oに対して振動レベルVLの検知に寄与するのは、オリジナル信号Oと位相変更フィルタF1〜F4で生成したレベル算出信号L1〜L4となり、周波数yのオリジナル信号Oに対して振動レベルVLの検知に寄与するのは、位相変更フィルタF1〜F5となり、オリジナル信号Oの周波数によって振動レベルVLの検知に寄与する位相変更フィルタが変化することが理解できる。
【0043】
したがって、ばね上部材Bの振動レベルVLを精度よく検知することができる周波数帯域を広げたい場合、周波数帯域の下限から上限の範囲内では、オリジナル信号Oをレベル算出信号とともに用いる場合にはオリジナル信号Oと少なくとも二つ以上のレベル算出信号が180度の範囲内で等間隔の位相差で分散されるようにするとよく、レベル算出用信号のみを用いてばね上部材Bの振動レベルVLを求める場合には、少なくとも三つ以上のレベル算出信号が180度の範囲内で等間隔の位相差で分散されるようにするとよい。したがって、レベル算出信号を生成するフィルタの設置数は、レベル算出信号の生成数に応じて決定すればよい。
【0044】
よって、オリジナル信号Oの入力に対して信号生成部3がオリジナル信号Oと振動レベルVLの検知に寄与するレベル算出信号L1〜L5とが180度の範囲内で60度以下の等間隔の位相差で分散されるようにこれらレベル算出信号L1〜L5をする生成するようにすれば、幅広い周波数帯の信号に対して振動レベルVLを検知でき、精度も向上する。これは、信号を正弦波で表現すると、60度位相がずれた三つのレベル算出信号を生成して振動レベルVLを求めると、振動レベルVLは、少なくとも物体のオリジナル信号Oの波高の0.85倍を下回ることがないので、良好な振動レベルVLを求めることができる。なお、オリジナル信号Oがレベル算出信号の生成のみに使用される場合には、信号生成部30aが振動レベルVLの検知に寄与するレベル算出信号L1〜L5を180度の範囲内で60度以下の等間隔の位相差で分散されるように生成するようにすれば、幅広い周波数帯の信号に対して振動レベルVLを検知でき、精度も向上する。
【0045】
さらに、ある周波数のオリジナル信号Oの入力に対して、位相180度の範囲内で位相差が等間隔となるレベル算出信号の生成数が多く、レベル算出信号同士の位相差が小さい場合、レベル算出信号の絶対値のうち最大値を振動レベルVLとする以外に、2番目や3番目に大きな値を振動レベルVLとしたり、最大値と2番目に大きな値の平均値を振動レベルVLとしても実用上問題はない。たとえば、信号を正弦波とする場合、12個のレベル算出信号を15度ずつの位相差で生成すると、レベル算出信号の絶対値のうち三番目に大きな値を振動レベルVLとしても、振動レベルVLは、少なくとも物体のオリジナル信号Oの波高の0.9倍を下回ることがないので、良好な振動レベルVLを求めることができる。無論、レベル算出信号の絶対値のうち最大値が実際の振動レベルVLに一番近い値を採るため、最大値を振動レベルVLとして求めることが好ましい。
【0046】
また、
図3に示すように、レベル演算部30bが出力する振動レベルVLをローパスフィルタ30cで処理するようにすれば、得られた振動レベルVLからリップルを取り除くことができ、振動レベルVLの急変を抑制することができる。
【0047】
なお、上記したところでは、振動レベルVLの検知に当たって、レベル算出信号を生成して最大値を振動レベルVLとするようにしているが、ばね上部材Bの変位、速度、加速度のうち、任意に選択した情報の最大振幅の値を振動レベルとして採用すればよいので、変位、速度、加速度のうちいずれかを選択し、選択した情報と、選択した情報の積分値或いは微分値の合成ベクトルの長さを求めて振動レベルとすればよい。さらに、振動レベルVLの検知に当たり、低周波成分検出部1の出力を利用せず、ばね上部材Bの加速度、速度、変位といった振動情報を別途取得して振動レベルVLを求めるようにしてもよい。
【0048】
レベルゲイン生成部31は、上記のようにして求めた振動レベルVLに基づいてレベルゲインLGを生成する。具体的には、レベルゲイン生成部31は、予め振動レベルVLとレベルゲインLGとの関係をマップ化しておき、このマップを利用し振動レベルVLをパラメータとしてマップ演算を行ってレベルゲインLGを求める。マップでは、
図8に示すように、振動レベルVLが所定値αまでの範囲ではレベルゲインLGが1を採り、所定値αを超えると振動レベルVLの増加に対してレベルゲインLGが徐々0へ向かって減少するようになっている。なお、たとえば、振動レベルVLが所定値αを超えるとレベルゲインLGが単調減少するようであれば、マップ演算によらずとも振動レベルVLをパラメータとする演算式を用いてレベルゲインLGを求めるようにしてもよい。所定値αおよびマップは、任意に設定することができ、ダンパ制御装置Eが実際に使用される車両に適用するうえで振動レベルVLに許容される上限値との兼ね合いで決定すればよい。
【0049】
振動レベル補正部32では、上述のようにして求めたレベルゲインLGを振動レベルVLに乗じて振動レベルVLを補正し、補正後の振動レベルVL
*を制御指令生成部33へ入力する。制御指令生成部33は、補正後の振動レベルVL
*に制御ゲインを乗じて制御指令Iを出力する。
【0050】
振動レベルVLを補正せずに振動レベル生成部30から直接に制御指令生成部33へ振動レベルVLを入力することも可能である。ばね上共振周波数帯よりも若干高い周波数の振動をバンドパスフィルタ23で完全に取り除くことはできないため、低周波成分検出部1で検知するダンパDの伸縮速度の低周波成分Dvには、ばね上共振周波数帯よりも若干高い周波数成分も含まれる。車両走行中に路面からの振動入力によってばね上部材Bに入力されるばね上共振周波数より若干高い周波数帯の振動は、ばね上部材Bの振動を励起するため、低周波成分検出部1で検知する低周波成分Dvから振動レベルVLを生成する際に、振動レベルVLが非常に大きな値になることがある。すると、制御指令Iも大きくなって、減衰力が過大となってしまうことがあるので、振動レベルVLが所定値αを超えると0より大きく1以下のレベルゲインLGを振動レベルVLに乗じて補正することで、制御指令Iが過大となってしまうことを防止することができる。
【0051】
レベルゲイン生成部31で求めたレベルゲインLGは、低周波成分Dvの補正にも使用されるため、この実施の形態では、振動レベルVLからレベルゲインLGを求めて、振動レベルVLに乗じるといった手法を採用しているが、低周波成分Dvの補正をレベルゲインLGで行う必要が無い場合には、レベルゲイン生成部31を廃止してもよいし、レベルゲイン生成部31の代わりに振動レベルVLの上限をクランプするリミッタを設けるようにしてもよい。
【0052】
速度補正部34は、ダンパDの伸縮速度の低周波成分Dvにレベルゲイン生成部31が生成したレベルゲインLGを乗じて低周波成分Dvを補正して補正後の低周波成分Dv
*を求める。
【0053】
補正ゲイン生成部35は、ダンパDの伸縮速度の低周波成分Dv
*から補正ゲインHGを生成する。具体的には、補正ゲイン生成部35は、予め低周波成分Dv
*と補正ゲインHGとの関係をマップ化しておき、このマップを利用して補正後の低周波成分Dv
*をパラメータとしてマップ演算を行って補正ゲインHGを求める。マップでは、
図9に示すように、ダンパDが伸長する場合の速度の符号を負とし、収縮する場合の速度の符号を正とすると、低周波成分Dv
*の値が負であってダンパDの伸長状態である場合、補正ゲインHGが1以上の値を採るように設定されるとともに、低周波成分Dv
*の値が0であるときに補正ゲインHGが1となり、低周波成分Dv
*の値が正であってダンパDの収縮状態である場合、補正ゲインHGが0以上1未満の値を採るように設定されている。より詳細には、補正ゲインHGの上限と下限が設定されており、低周波成分Dv
*の値が所定値β以下では補正ゲインHGが上限値を採り、低周波成分Dv
*の値が所定値γ以上では補正ゲインHGが下限値を採るようになっている。なお、このように補正ゲインHGの上限と下限が設定されることによって、補正ゲインHGが際限なく大きく或いは小さくならないようになっており、特に、補正ゲインHGの下限は0以上に設定される。なお、補正ゲインHGは、後述するように制御指令Iに乗じられるゲインであり、その上限は1.3、その下限は0.7程度に設定すればよいが、車両に適するよう任意に設定することができる。所定値β,γは、任意に設定することができ、マップは、低周波成分Dv
*と補正ゲインHGの関係を示す特性が低周波成分Dv
*が0のときに補正ゲインHGが1となるポイントを通過するようになっており、低周波成分Dv
*の増加によって補正ゲインHGが上限から下限に徐々に減少するようになっている。なお、
図9に示した補正ゲインHGを求めるマップは補正ゲインHGを正規化したマップであって、補正ゲインHGを求めるマップの一例であり、補正ゲインHGが正規化されていない場合には、補正ゲインHGが低周波成分Dv
*の値が0であるときに必ず1となるマップでなくともよい。予め制御指令Iに所定のゲインを乗じるような場合には、補正ゲインHGと所定のゲインの積の値が低周波成分Dv
*の値が0であるときに1になるようにし、上記積の値が低周波成分Dv
*の値が負の時には1以上の値を採り、上記積の値が低周波成分Dv
*の値が正の時には0以上1未満の値となるよう、補正ゲインHGを設定するマップを用いればよい。つまり、補正ゲイン生成部35は、低周波成分Dv
*の値が負の時には制御指令Iを大きくするような補正ゲインHGを設定すればよく、低周波成分Dv
*の値が正の時には制御指令Iを小さくするような補正ゲインHGを設定すればよい。
【0054】
なお、レベルゲインLGを利用して低周波成分D
vを補正するのは、バンドパスフィルタ23でばね上共振周波数帯よりも若干高い周波数成分完全に取り除くことはできないため、低周波成分検出部1で検知するダンパDの伸縮速度の低周波成分Dvが過大になって補正ゲインHGも過大になる可能性があるためであり、レベルゲインLGを乗じて低周波成分D
vを補正することで、補正ゲインHGが大きくなりすぎることを抑制することができる。ただし、レベルゲインLGによる低周波成分D
vの補正については、省略することが可能である。また、レベルゲインLGで低周波成分Dvを補正するのではなく、レベルゲインLGを補正ゲインHGに乗じて補正ゲインHGを補正するようにしてもよい。
【0055】
制御指令補正部36は、上記のようにして得た補正ゲインHGと、制御指令生成部33が生成した制御指令Iを乗じて制御指令Iを補正して補正後の制御指令I
*を求める。こうして求められた補正後の制御指令I
*は、駆動部37に入力される。駆動部37は、たとえば、PWM回路などを備えていて、制御指令補正部36が求めた制御指令I
*通りに比例ソレノイドバルブ18へ電流を供給する。この場合、減衰力調整部は比例ソレノイドバルブ18であるため、駆動部37へ出力される制御指令I
*は電流指令とされる。
【0056】
ダンパDにおける減衰力調整部である比例ソレノイドバルブ18は、駆動部37から電流の供給を受けてダンパDにおける減衰力特性を調整する。そして、ダンパDは、その時の伸縮速度に応じた減衰力を発揮することになり、ダンパ制御装置EによってダンパDの減衰力が制御される。
【0057】
以上のように、ダンパ制御装置Eは、ダンパDの伸縮速度の低周波成分Dvに基づいて補正ゲインHGを生成し、制御指令Iを補正ゲインHGで補正して制御指令I
*を生成して、減衰力調整部としての比例ソレノイドバルブ18へ制御指令通りに電流を与えて、ダンパDの減衰力を制御する。
【0058】
ところで、ダンパDがゆっくり伸長している状況で車両が路面の突起を通過してばね下部材Wが突き上げられるとダンパDは収縮しようとするが、ダンパDの収縮速度は、突き上げによる収縮側への速度成分からゆっくりとした伸長側への速度成分を差し引きした速度となるために、ゆっくりとした伸長側への速度成分により緩和されて高くなりにくい。
【0059】
そして、補正ゲインHGは、ダンパDの伸縮速度の低周波成分Dvが負の場合には、1以上の値となっているため、制御指令I
*≧制御指令Iとなって、ダンパDの減衰力は大きくなるように誘導される。ダンパDがゆっくり伸長している状態、つまり、ダンパDの伸縮速度の低周波成分DvがダンパDが伸長状態であることを示す負の値をとる場合、制御指令I
*が指示する減衰力は、補正前の制御指令Iが指示する減衰力よりも大きくなる傾向にある。
【0060】
上記したように、ダンパDがゆっくり伸長している状況では、ダンパDの収縮速度はゆっくりとした伸長側への速度成分によって高くなりにくく、路面の突起に乗り上げてもダンパDが発生する減衰力が大きくなりにくいことからインパクトショックが発生しにくいため、制御指令I
*を大きくするよう補正することで、ばね上部材Bの路面追従性を向上させることができる。
【0061】
他方、ダンパDがゆっくり収縮している状況で車両が路面の突起を通過してばね下部材Wが突き上げられるとダンパDは収縮しようとするが、ダンパDの収縮速度は、突き上げによる収縮側への速度成分にゆっくりとした収縮側への速度成分が重畳された速度となるために、ゆっくりとした収縮側への速度成分により助長されて高くなりやすい。
【0062】
ダンパDの伸縮速度の低周波成分Dvが正の場合には、補正ゲインHGは、1未満で0以上の値となっているため、制御指令I
*<制御指令Iとなって、ダンパDの減衰力は小さくなるように誘導される。ダンパDがゆっくり収縮している状態、つまり、ダンパDの伸縮速度の低周波成分DvがダンパDが収縮状態であることを示す正の値をとる場合、制御指令I
*が指示する減衰力は、補正前の制御指令Iが指示する減衰力よりも小さくなる。
【0063】
上記したように、ダンパDがゆっくり収縮している状況では、ダンパDの収縮速度はゆっくりとした収縮側への速度成分によって高くなりやすく、路面の突起に乗り上げてもダンパDが発生する減衰力が大きくなりやすいことからインパクトショックが発生しやすい。この場合には、制御指令I
*が補正されて制御指令Iよりも小さくなるので、ダンパDの減衰力を小さくするため、インパクトショックを低減することができる。
【0064】
以上より、本発明のダンパ制御装置Eにあっては、インパクトショックが発生しにくい状況では、ダンパDの減衰力を大きくしてばね上部材Bの路面追従性を向上することができ、車両搭乗者に安心感を与えることができ、インパクトショックが発生しやすい状況では、ダンパDの減衰力を小さくしてインパクトショックを低減することができる。よって、本発明のダンパ制御装置Eによれば、インパクトショックを低減しつつ路面追従性を向上させることができるのである。
【0065】
本実施の形態のダンパ制御装置Eでは、ばね上部材Bの振動レベルVLに基づいて制御指令Iを生成するようにしているので、効果的に振動を抑制することができる。つまり、単純に、ばね上部材Bの速度のみを検知して振動を制御しようとする場合には、振動速度が0となる場合に制御装置で演算される減衰力が小さくなって振動抑制に必要な力が不足してしまう問題があるが、振動レベルVLを用いて制御指令Iを生成して制御することで振動の大きさを把握することができ、振動レベルVLが大きくなればそれに応じた減衰力を大きくする制御を実施でき効果的に振動を抑制することができるのである。また、ダンパDの伸縮速度が低いがばね上部材Bの速度が大きい場合、ばね上部材Bの速度から直接制御指令を得ようすると制御指令が過大となって車両における乗り心地を悪化させてしまう可能性があるが、本発明のダンパ制御装置Eは、振動レベルVLを求めて、この振動レベルVLから制御指令Iを得ているので、制御指令Iが過大となってしまうことを防止でき、車両における乗り心地を良好に保つことが可能である。なお、本実施の形態のダンパ制御装置Eでは、制御指令Iをダンパ制御装置E自体で生成するようにしているが、外部から制御指令Iの入力を受けて制御指令Iを補正ゲインHGで補正するようにしてもよい。なお、制御指令Iは、ばね上部材Bである車体全体のピッチ、ロール、バウンスのうち任意に選択されるものの振動レベルから求めるようにしてもよい。さらに、制御部2は、振動レベルVLにゲインを乗じて制御指令Iを求めているが、これに限定されるものではなく、振動レベルVLから任意のマップを用いマップ演算を行って制御指令Iを求めてもよい。
【0066】
さらに、本実施の形態のダンパ制御装置Eでは、ダンパDの伸縮速度の低周波成分Dvにばね上部材Bの共振周波数成分が含まれていることから、振動レベルVLをダンパDの伸縮速度の低周波成分Dvに基づいて求めており、別途、制御指令Iを得るのにばね上部材Bの振動状況を把握するためのセンサを設ける必要が無く、経済的である。
【0067】
また、振動レベルVLが所定値α以上となると1未満の値としてレベルゲインLGを生成するレベルゲイン生成部31と、振動レベルVLにレベルゲインLGを乗じる振動レベル補正部32とを備えて、補正された振動レベルVL
*に基づいて制御指令Iを生成するので、制御指令Iが過大となって減衰力が過大となってしまうことが防止され、車両における乗り心地をより一層向上することができる。
【0068】
さらに、低周波成分DvにレベルゲインLGを乗じて低周波成分Dvを補正する速度補正部34を備え、補正後の低周波成分Dv
*に基づいて補正ゲインHGを生成するので、補正ゲインHGが大きくなりすぎることが抑制されて、制御指令I
*が過大となって減衰力が過大となってしまうことが防止され、車両における乗り心地をより一層向上することができる。なお、補正ゲインHGにレベルゲインLGを乗じて補正ゲインHGを補正するようにしても同様の効果を得ることができる。
【0069】
本発明のダンパ制御装置Eでは、比例ソレノイドバルブ18を用いたダンパDを制御するので、比例ソレノイドバルブ18へ供給する電流量によって乗り心地を損なうことなくダンパDの伸圧の減衰特性が車両にとって適正化されているため、振動レベルVLに比例ゲインを乗じて制御指令を作るだけでダンパDの減衰力を制御することができ、振動レベルVLから制御指令を得るのに複雑な演算を行わずとも、本制御を適用するだけで車両における乗り心地を確実に向上することができる。
【0070】
また、減衰力調整部に比例ソレノイドバルブ18を用いるので、この制御部2における制御指令は電流指令としているが、減衰力調整部に適する指令を制御指令とすればよい。したがって、上記したように減衰力調整部が比例ソレノイドバルブ18以外にも、たとえば、ロータリバルブとステッピングモータとで構成される場合には制御指令をパルス発生回数としてもよく、ダンパD内の流体が電気粘性流体である場合には減衰力調整部が電界を発生させるので制御指令を電圧指令としてもよい。
【0071】
なお、ダンパ制御装置Eは、この実施の形態の場合、ハードウェア資源としては、図示はしないが具体的にはたとえば、ストロークセンサ21が出力する信号を取り込むためのA/D変換器と、振動レベル検知と電流値Iの演算に必要な処理に使用されるプログラムが格納されるROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、上記プログラムに基づいた処理を実行するCPU(Central Processing Unit)などの演算装置と、上記CPUに記憶領域を提供するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置とを備えて構成されればよく、CPUが上記プログラムを実行することで、低周波成分検出部1および制御部2の動作を実現すればよい。
【0072】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。