特許第6259240号(P6259240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6259240感光性樹脂の製造方法及びカラーフィルターの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6259240
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】感光性樹脂の製造方法及びカラーフィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/14 20060101AFI20171227BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20171227BHJP
   G03F 7/038 20060101ALN20171227BHJP
【FI】
   C08F8/14
   G02B5/20 101
   !G03F7/038 501
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-203738(P2013-203738)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-67734(P2015-67734A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】柳 正義
(72)【発明者】
【氏名】川口 恭章
(72)【発明者】
【氏名】木下 健宏
(72)【発明者】
【氏名】荻原 和重
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−231318(JP,A)
【文献】 特開2002−293876(JP,A)
【文献】 特開2010−168475(JP,A)
【文献】 特表平07−503273(JP,A)
【文献】 特開平09−136942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/00 − 8/50
G02B 5/20
G03F 7/004 − 7/04
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基含有共重合体(エポキシ樹脂を除く)とカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物とを、下記式(1)で表される3価の有機リン化合物触媒及び重合禁止剤の存在下に、酸素濃度が2体積%〜10体積%の気体の雰囲気下、100℃〜150℃の温度で反応させることを特徴とする感光性樹脂の製造方法。
【化1】
(式中、R〜R15は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアルコキシアルキル基又は炭素数2〜3のアルケニル基を表し、R〜Rのうちの少なくとも一つ、R〜R10のうちの少なくとも一つ及びR11〜R15のうちの少なくとも一つが、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアルコキシアルキル基又は炭素数2〜3のアルケニル基である。)
【請求項2】
前記エポキシ基含有共重合体の重量平均分子量が、3000〜40000である請求項1に記載の感光性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記エポキシ基含有共重合体が、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物とエチレン性不飽和結合を有する重合性単量体との共重合体である請求項1又は2に記載の感光性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記エポキシ基含有共重合体が、グリシジル(メタ)アクリレート及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上とスチレン及び(メタ)アクリレート化合物から選ばれる1種以上との共重合体である請求項1又は2に記載の感光性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記エポキシ基含有共重合体が、グリシジル(メタ)アクリレートとスチレンと脂環式アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体である請求項4に記載の感光性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物が、(メタ)アクリル酸及びイタコン酸から選ばれる1種以上である請求項の何れか一項に記載の感光性樹脂の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜の何れか一項に記載の方法により得られた感光性樹脂に無水多塩基酸を100℃〜150℃の温度でさらに反応させる感光性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記式(1)中、R〜Rのうちの少なくとも一つ、R〜R10のうちの少なくとも一つ及びR11〜R15のうちの少なくとも一つが、メチル基又はメトキシ基である請求項1〜の何れか一項に記載の感光性樹脂の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜の何れか一項に記載の方法で得られた感光性樹脂を含有する感光性樹脂組成物からなるレジスト塗膜を硬化させことを特徴とするカラーフィルターの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂の製造方法及びその製造方法で得られた感光性樹脂を用いたカラーフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源や省エネルギーの観点から、各種コーティング、印刷、塗料、接着剤などの分野において、紫外線や電子線などの活性エネルギー線により硬化可能な感光性樹脂組成物が広く使用されている。また、プリント配線基板などの電子材料の分野においても、活性エネルギー線により硬化可能な感光性樹脂組成物がソルダーレジストやカラーフィルター用レジストなどに使用されている。
【0003】
カラーフィルターは、一般に、ガラス基板などの透明基板と、透明基板上に形成された赤(R)、緑(G)及び青(B)の画素と、画素の境界に形成されるブラックマトリックスと、画素及びブラックマトリックス上に形成される保護膜とから構成される。このような構成を有するカラーフィルターは、通常、透明基板上にブラックマトリックス、画素及び保護膜を順次形成することによって製造される。画素及びブラックマトリックス(以下、画素及びブラックマトリックスのことを「着色パターン」という。)の形成方法としては、様々な方法が提案されているが、顔料/染料分散法は、耐光性や耐熱性などの耐久性に優れ、ピンホールなどの欠陥が少ない着色パターンを与えるため、現在の主流となっている。この顔料/染料分散法は、感光性樹脂組成物に顔料又は染料を分散させた着色感光性樹脂組成物の塗布、パターン露光、現像及びベーキングを繰り返すフォトリソグラフィ工法を利用する。
【0004】
一般に、フォトリソグラフィ工法に用いられる感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、反応性希釈剤、光重合開始剤、着色剤及び溶剤を含有する。顔料/染料分散法では、上記の利点を有している反面、ブラックマトリクス、R、G、Bのパターンを繰り返し形成することから、塗膜のバインダーとなるアルカリ可溶性樹脂に高い耐熱分解性と耐熱黄変性が要求される。耐熱分解性を向上させる方法として、従来から、マレイミドを含む単量体を共重合成分とする樹脂組成物(例えば、特許文献1)等が提案されている。しかし、マレイミドを含む単量体を共重合成分とする樹脂組成物では、分子中に含まれる窒素原子を原因とした黄色から黄褐色の着色を有しており、塗膜の透明性を悪化させる。さらに、加熱処理を行う後硬化時に着色が進行するという問題があった。また、メタクリル酸とベンジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等を含むアクリル系共重合体を用いたものが知られているが、耐熱分解性が十分でなくパターン固着時の加熱工程で熱分解物がアウトガスとなって発生し、基板や装置を汚染することが問題となっている。
【0005】
また、耐熱黄変性向上のために脂環式のシクロヘキシルメタクリレート等を使用したアクリル共重合体を用いると、耐熱分解性が十分でない。更にパターニング性や感度を向上させる手段として、パラクミルフェノールのエチレンオキサイド(EO)変性またはプロピレンオキサイド(PO)変性(メタ)アクリレートを用いることが提案されている(例えば、特許文献2及び3)。また、液晶配向用突起形成用ネガ型レジストとしてヒドロキシエチル化フェニルフェノール(メタ)アクリレートを用いることが提案されている(例えば、特許文献4)。しかし、カラーフィルター用のバインダーとして耐熱分解性や耐熱黄変性を満足するものはできていない。
特許文献5には、多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とを3価の有機リン化合物触媒及び重合禁止剤の存在下で反応させ、さらに酸無水物を反応させて得られる感光性樹脂が記載されている。しかし、耐熱分解性や耐熱黄変性の観点からは更なる改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−29018号公報
【特許文献2】特開2004−101728号公報
【特許文献3】特開2006−215452号公報
【特許文献4】特開2009−109879号公報
【特許文献5】特開2005−41958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、従来の感光性樹脂組成物は、感度や現像性が十分でない場合や、耐熱分解性及び耐熱黄変性に優れた着色パターンが得られない場合がある。
従って、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、感度や現像性が良好であると共に、耐熱分解性及び耐熱黄変性に優れた着色パターンを与えることのできる感光性樹脂の製造方法を提供することを目的とする。また、耐熱分解性及び耐熱黄変性に優れた着色パターンを有するカラーフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の有機リン化合物触媒を用いて特定の製造条件下で感光性樹脂を製造することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
[1]カルボキシル基含有共重合体とエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物とを、下記式(1)で表される3価の有機リン化合物触媒及び重合禁止剤の存在下に、酸素濃度が2%〜10%の気体の雰囲気下、100℃〜150℃の温度で反応させることを特徴とする感光性樹脂の製造方法。
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、R〜R15は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアルコキシアルキル基又は炭素数2〜3のアルケニル基を表し、R〜Rのうちの少なくとも一つ、R〜R10のうちの少なくとも一つ及びR11〜R15のうちの少なくとも一つが、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアルコキシアルキル基又は炭素数2〜3のアルケニル基である。)
【0011】
[2]前記カルボキシル基含有共重合体が、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物とエチレン性不飽和結合を有する重合性単量体との共重合体である[1]に記載の感光性樹脂の製造方法。
【0012】
[3]前記カルボキシル基含有共重合体が、(メタ)アクリル酸とスチレン及び(メタ)アクリレート化合物から選ばれる1種以上との共重合体である[1]に記載の感光性樹脂の製造方法。
【0013】
[4]前記エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物が、グリシジル(メタ)アクリレート及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上である[1]〜[3]の何れかに記載の感光性樹脂の製造方法。
【0014】
[5]エポキシ基含有共重合体とカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物とを、下記式(1)で表される3価の有機リン化合物触媒及び重合禁止剤の存在下に、酸素濃度が2%〜10%の気体の雰囲気下、100℃〜150℃の温度で反応させることを特徴とする感光性樹脂の製造方法。
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、R〜R15は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアルコキシアルキル基又は炭素数2〜3のアルケニル基を表し、R〜Rのうちの少なくとも一つ、R〜R10のうちの少なくとも一つ及びR11〜R15のうちの少なくとも一つが、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアルコキシアルキル基又は炭素数2〜3のアルケニル基である。)
【0017】
[6]前記エポキシ基含有共重合体が、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物とエチレン性不飽和結合を有する重合性単量体との共重合体である[5]に記載の感光性樹脂の製造方法。
【0018】
[7]前記エポキシ基含有共重合体が、グリシジル(メタ)アクリレート及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上とスチレン及び(メタ)アクリレート化合物から選ばれる1種以上との共重合体である[5]に記載の感光性樹脂の製造方法。
【0019】
[8]前記カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物が、(メタ)アクリル酸及びイタコン酸から選ばれる1種以上である[5]〜[7]の何れかに記載の感光性樹脂の製造方法。
【0020】
[9][1]〜[8]の何れかに記載の方法により得られた感光性樹脂に無水多塩基酸を100℃〜150℃の温度でさらに反応させる感光性樹脂の製造方法。
【0021】
[10]前記式(1)中、R〜Rのうちの少なくとも一つ、R〜R10のうちの少なくとも一つ及びR11〜R15のうちの少なくとも一つが、メチル基又はメトキシ基である[1]〜[9]の何れかに記載の感光性樹脂の製造方法。
【0022】
[11][1]〜[10]の何れかに記載の方法で得られた感光性樹脂を含有する感光性樹脂組成物からなるレジスト塗膜を硬化させたことを特徴とするカラーフィルター。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、感度や現像性が良好であると共に、耐熱分解性及び耐熱黄変性に優れた硬化塗膜を形成することのできる感光性樹脂の製造方法を提供することができる。また、本発明の方法で得られた感光性樹脂を含有する感光性樹脂組成物からなるレジスト塗膜を硬化させたカラーフィルターは、耐熱分解性及び耐熱黄変性に優れた着色パターンを有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明を詳細に説明する。
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る感光性樹脂(A−1)の製造方法は、カルボキシル基含有共重合体とエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物とを、下記式(1)で表される3価の有機リン化合物触媒及び重合禁止剤の存在下に、酸素濃度が2%〜10%の気体の雰囲気下、100℃〜150℃の温度で反応させることを特徴とするものである。
【0025】
【化3】
【0026】
(式中、R〜R15は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアルコキシアルキル基又は炭素数2〜3のアルケニル基を表し、R〜Rのうちの少なくとも一つ、R〜R10のうちの少なくとも一つ及びR11〜R15のうちの少なくとも一つが、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアルコキシアルキル基又は炭素数2〜3のアルケニル基である。)
【0027】
本発明に用いるカルボキシル基含有共重合体としては、カルボキシル基を含有する共重合体であればよく、例えば、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物とそれ以外のエチレン性不飽和結合を有する重合性単量体との共重合体が挙げられる。これらのカルボキシル基含有共重合体は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。ここで用いるカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、マレイン酸などが挙げられる。これらのカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、エチレン性不飽和結合を有する重合性単量体としては、ビニル基を有する単量体及び(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。ビニル基を有する単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、4-ビニル安息香酸などが挙げられる。(メタ)アクリレート化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有するものであればよく、例えば、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのエチレン性不飽和結合を有する重合性単量体は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのカルボキシル基含有共重合体の中でも、耐熱性向上及び現像性向上の点から、(メタ)アクリル酸とスチレン及び(メタ)アクリレート化合物から選ばれる1種以上との共重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸とスチレンと脂環式アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体がより好ましい。
なお、本発明における(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートから選択される1種以上をいう。
【0028】
また、本発明に用いるカルボキシル基含有共重合体の重量平均分子量は、耐熱黄変性向上及び現像性向上の点から、3000〜40000であることが好ましく、5000〜30000であることがより好ましい。カルボキシル基含有共重合体の重量平均分子量が3000未満であると、現像性が悪くなる場合があるため好ましくなく、一方、40000を超えると、以降の反応でゲル化が起こる場合があるため好ましくない。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記条件にて測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
カラム:ショウデックス(登録商標)LF−804+LF−804(昭和電工株式会社製)
カラム温度:40℃
試料:共重合体の0.2%テトラヒドロフラン溶液
展開溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:示差屈折計(ショウデックス(登録商標)RI−71S)(昭和電工株式会社製)
流速:1mL/min
【0029】
本発明で用いるエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては、エポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物であればよく、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、N−グリシジルフタルイミド、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらのエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物の中でも、耐溶剤性向上及び現像性向上の点から、グリシジル(メタ)アクリレート及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0030】
カルボキシル基含有共重合体とエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物との反応では、カルボキシル基含有共重合体に含まれるカルボキシル基1モルに対し、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物に含まれるエポキシ基を0.02モル〜0.95モルの量で反応させることが好ましい。エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物に含まれるエポキシ基の量が0.02モル未満であると、耐溶剤性が低下する場合があるため好ましくなく、一方、0.95モルを超えると、パターン形成時の現像性が下がる場合があるため好ましくない。
【0031】
カルボキシル基含有共重合体とエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物との反応において触媒として用いる3価の有機リン化合物は、上記式(1)で表される。
上記式(1)中、R〜R15は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアルコキシアルキル基又は炭素数2〜3のアルケニル基を表し、R〜Rのうちの少なくとも一つ、R〜R10のうちの少なくとも一つ及びR11〜R15のうちの少なくとも一つが、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアルコキシアルキル基又は炭素数2〜3のアルケニル基である。これらの3価の有機リン化合物の中でも、耐溶剤性向上及び耐熱黄変性向上の点から、上記式(1)中、R〜Rのうちの少なくとも一つ、R〜R10のうちの少なくとも一つ及びR11〜R15のうちの少なくとも一つが、メチル基又はメトキシ基であるものが好ましい。
上記式(1)で表される3価の有機リン化合物の具体例としては、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(m−トリル)ホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン、p−スチリルジフェニルホスフィンなどが挙げられる。これらの3価の有機リン化合物は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの3価の有機リン化合物の中でも、耐溶剤性向上及び耐熱黄変性向上の点から、トリ(m−トリル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン及びトリ(p−トリル)ホスフィンが好ましい。
【0032】
3価の有機リン化合物の使用量は、カルボキシル基含有共重合体及びエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物の総量100質量部に対し、0.1質量部〜1.0質量部であることが好ましく、0.2質量部〜0.5質量部であることがより好ましい。3価の有機リン化合物の使用量が、0.1質量部未満であると、エポキシと酸との反応率が低くなる場合があるため好ましくなく、一方、1.0質量部を超えると、触媒による着色が強くなる場合があるため好ましくない。
【0033】
カルボキシル基含有共重合体とエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物との反応において用いる重合禁止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン、ヒドロキノン、メトキノン、メチルヒドロキノンなどが挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合禁止剤の中でも、ゲル化防止という点から、メチルヒドロキノン及びブチルヒドロキシトルエンが好ましい。
【0034】
重合禁止剤の使用量は、カルボキシル基含有共重合体及びエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物の総量100質量部に対し、0.1質量部〜1.0質量部であることが好ましく、0.2質量部〜0.5質量部であることがより好ましい。重合禁止剤の使用量が、0.1質量部未満であると、ゲル化が起こる場合があるため好ましくなく、一方、1.0質量部を超えると、レジストにした際に硬化を阻害する場合があるため好ましくない。
【0035】
本発明においては、カルボキシル基含有共重合体とエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物との反応は、3価の有機リン化合物及び重合禁止剤の存在下に、酸素濃度が2%〜10%の気体の雰囲気下で行うことが必要である。酸素濃度が2%未満であると、反応中にゲル化が起こり、一方、10%を超えると、得られる感光性樹脂(A−1)が黄変するという問題が生じる。酸素濃度は3.0%〜6.0%であることが好ましい。酸素濃度が2%〜10%の気体としては、酸素と不活性ガスからなる気体、例えば空気と不活性ガスとからなる混合ガス、空気と酸素とからなる混合ガスなどを使用することができる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴンなど反応系において不活性であるものであればよく、一般的には、窒素が好ましい。
【0036】
反応器内を、酸素濃度が2〜10%の気体の雰囲気とするために、混合ガスを使用する場合は、予め混合ガスとして調整されたものを反応器内に導入してもよいし、あるいは混合ガスを構成するガスを別々に反応器内に導入して反応器内で混合してもよい。酸素濃度が2%〜10%の気体の導入方法としては、特に制限はないが、例えば、反応系の液面より上部から吹き込む方法、気体導入管を液面下に設定してバブリングする方法などがある。
【0037】
本発明においては、カルボキシル基含有共重合体とエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物との反応を100℃〜150℃の温度で行うことが必要である。反応温度が100℃未満であると、反応率が低下し、一方、150℃を超えると、重合禁止剤が失活してゲル化が起こったり、得られる感光性樹脂(A−1)が着色するという問題が起こる。反応温度は110℃〜140℃であることが好ましく、110℃〜130℃であることがより好ましい。
反応時間は、反応温度にもよるが、通常、1時間〜15時間、好ましくは2時間〜10時間の範囲で行えばよい。
【0038】
本発明において得られた感光性樹脂(A−1)のアルカリ溶液による現像性を向上させる目的で、カルボキシル基との反応によりエポキシ基が開環して生成したヒドロキシル基に無水多塩基酸を100℃〜150℃の温度でさらに反応させて感光性樹脂(A’−1)としてもよい。ここで使用する無水多塩基酸としては、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸などが挙げられる。これらの無水多塩基酸は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの無水多塩基酸の中でも、現像性向上及び耐熱性向上という点から、テトラヒドロフタル酸無水物が好ましい。
【0039】
感光性樹脂(A−1)と無水多塩基酸との反応では、感光性樹脂(A−1)に含まれるエポキシ基の開環によって生成したヒドロキシル基の合計1モルに対し、無水多塩基酸を0.01モル〜0.8モルの量で反応させることが好ましい。無水多塩基酸の量が0.01モル未満であると、無水多塩基酸を加えることによる効果が得られず、無水多塩基酸の量が0.8モルを超えると、付加反応の際に分子量の異常増大が起こる場合があるため好ましくない。
【0040】
このようにして得られた感光性樹脂(A−1)及び(A’−1)の重量平均分子量は、アルカリ溶液による現像性向上という点から、4000〜60000であることが好ましく、5000〜40000であることがより好ましい。感光性樹脂(A−1)及び(A’−1)の重量平均分子量が4000未満であると、現像性が低下する場合があるため好ましくなく、一方、60000を超えると、現像できない場合があるため好ましくない。
【0041】
本発明において得られた感光性樹脂(A−1)及び(A’−1)には、必要に応じて、溶剤(B)、反応性希釈剤(C)、光重合開始剤(D)及び着色剤(E)を添加して感光性樹脂組成物とすることができる。
【0042】
溶剤(B)は、感光性樹脂(A−1)及び(A’−1)と反応しない不活性な溶剤であれば特に限定されない。
溶剤(B)としては、感光性樹脂(A−1)及び(A’−1)を製造する際(共重合反応)に用いた溶剤と同じものを用いることができ、共重合反応後に含まれている溶剤をそのまま用いることもでき、更に加えることもできる。また、その他の成分を加える際に、そこに共存しているものでもよい。具体的には、溶剤(B)の例として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの中でも、感光性樹脂(A−1)及び(A’−1)を製造する際(共重合反応)において使用されるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテル系溶剤が好ましい。
【0043】
感光性樹脂組成物における溶剤(B)の配合量は、当該組成物中の溶剤(B)を除く成分の総和を100質量部とすると、一般に30質量部〜1000質量部、好ましくは50質量部〜800質量部であり、より好ましくは100質量部〜700質量部である。この範囲の配合量であれば、適切な粘度を有する感光性樹脂組成物となる。
【0044】
反応性希釈剤(C)としては特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネートなどの芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、アジピン酸ビニルなどのポリカルボン酸モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系モノマー;トリアリルシアヌレートなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
感光性樹脂組成物における反応性希釈剤(C)の配合量は、当該組成物中の溶剤(B)を除く成分の総和を100質量部とすると、一般に10質量%〜90質量%、好ましくは20質量%〜80質量%であり、より好ましくは25質量%〜70質量%である。この範囲の配合量であれば、適切な粘度を有する感光性樹脂組成物となり、感光性樹脂組成物は適切な光硬化性を有する。
【0046】
光重合開始剤(D)としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノンなどのアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類;及びキサントン類などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
感光性樹脂組成物における光重合開始剤(D)の配合量は、感光性樹脂組成物中の溶剤(B)を除く成分の総和を100質量部とすると、一般に0.1質量%〜30質量%、好ましくは0.5質量%〜20質量%、より好ましくは1質量%〜15質量%である。この範囲の配合量であれば、適切な光硬化性を有する感光性樹脂組成物となる。
【0048】
着色剤(E)は、溶剤(B)に溶解又は分散するものであれば特に限定されず、例えば、染料や顔料などが挙げられる。
特に、従来の感光性樹脂組成物では、染料を用いると輝度が高い着色パターンを得ることができたが、顔料を用いた場合に比べて着色パターンの耐熱性が低くなるという問題があった。これに対して、本発明で得られた感光性樹脂(A−1)及び(A’−1)を含有する感光性樹脂組成物では、染料を用いても耐熱性に優れた着色パターンを得ることができる。
【0049】
染料としては、溶剤(B)やアルカリ現像液に対する溶解性、感光性樹脂組成物中の他の成分との相互作用、耐熱性などの観点から、カルボン酸などの酸性基を有する酸性染料、酸性染料の窒素化合物との塩、酸性染料のスルホンアミド体などを用いることが好ましい。このような染料の例としては、acid alizarin violet N;acid black1、2、24、48;acid blue1、7、9、25、29、40、45、62、70、74、80、83、90、92、112、113、120、129、147;acid chrome violet K;acid Fuchsin;acid green1、3、5、25、27、50;acid orange6、7、8、10、12、50、51、52、56、63、74、95;acid red1、4、8、14、17、18、26、27、29、31、34、35、37、42、44、50、51、52、57、69、73、80、87、88、91、92、94、97、103、111、114、129、133、134、138、143、145、150、151、158、176、183、198、211、215、216、217、249、252、257、260、266、274;acid violet 6B、7、9、17、19;acid yellow1、3、9、11、17、23、25、29、34、36、42、54、72、73、76、79、98、99、111、112、114、116; food yellow3及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらの中でも、アゾ系、キサンテン系、アンスラキノン系もしくはフタロシアニン系の酸性染料が好ましい。これらは、目的とする画素の色に応じて、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
顔料の例としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、83、86、93、94、109、110、117、125、128、137、138、139、147、148、150、153、154、166、173、194、214などの黄色顔料;C.I.ピグメントオレンジ13、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65、71、73などの橙色顔料;C.I.ピグメントレッド9、97、105、122、123、144、149、166、168、176、177、180、192、209、215、216、224、242、254、255、264、265などの赤色顔料;C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60などの青色顔料;C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38などのバイオレット色顔料;C.I.ピグメントグリーン7、36、58などの緑色顔料;C.I.ピグメントブラウン23、25などの茶色顔料;C.I.ピグメントブラック1、7、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄などの黒色顔料などが挙げられる。これらは、目的とする画素の色に応じて、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、目的とする画素の色に応じて、上記の染料及び顔料を組み合わせて用いることもできる。
【0051】
感光性樹脂組成物における着色剤(E)の配合量は、感光性樹脂組成物中の溶剤(B)を除く成分の総和を100質量部とすると、一般に5質量%〜80質量%、好ましくは5質量%〜70質量%、より好ましくは10質量%〜60質量%である。
【0052】
着色剤(E)として顔料を用いる場合、顔料の分散性を向上させる観点から、公知の分散剤を感光性樹脂組成物に配合してもよい。分散剤としては、経時の分散安定性に優れる高分子分散剤を用いることが好ましい。高分子分散剤の例としては、ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性エステル系分散剤などが挙げられる。このような高分子分散剤として、EFKA(エフカーケミカルズビーブイ(EFKA)社製)、Disperbyk(ビックケミー社製)、ディスパロン(楠本化成株式会社製)、SOLSPERSE(ゼネカ社製)などの商品名で市販されているものを用いてもよい。
感光性樹脂組成物における分散剤の配合量は、使用する顔料などの種類に応じて適宜設定すればよい。
【0053】
感光性樹脂組成物には、上記の成分に加えて、所定の特性を付与するために、公知のカップリング剤、レベリング剤、熱重合禁止剤などの公知の添加剤を配合してもよい。これらの添加剤の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されない。
【0054】
感光性樹脂組成物は、公知の混合装置を用い、上記の成分を混合することによって製造することができる。なお、感光性樹脂組成物は、感光性樹脂(A−1)及び(A’−1)並びに溶剤(B)を含有する樹脂組成物を先に調製した後、反応性希釈剤(C)、光重合開始剤(D)及び着色剤(E)を混合して製造することも可能である。
【0055】
本発明において得られる感光性樹脂(A−1)及び(A’−1)を含有する感光性樹脂組成物は、感度及び現像性に優れると共に、耐熱分解性及び耐熱黄変性に優れた着色パターンを与えることができる。そのため、本実施の形態の感光性樹脂組成物は、各種レジスト、特に、有機ELディスプレイ、液晶表示装置、固体撮像素子に組み込まれるカラーフィルターを製造するために用いられるレジストとして用いるのに適している。
【0056】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る感光性樹脂(A−2)の製造方法は、エポキシ基含有共重合体とカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物とを、下記式(1)で表される3価の有機リン化合物触媒及び重合禁止剤の存在下に、酸素濃度が2%〜10%の気体の雰囲気下、100℃〜150℃の温度で反応させることを特徴とするものである。
【0057】
【化4】
【0058】
(式中、R〜R15は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアルコキシアルキル基又は炭素数2〜3のアルケニル基を表し、R〜Rのうちの少なくとも一つ、R〜R10のうちの少なくとも一つ及びR11〜R15のうちの少なくとも一つが、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアルコキシアルキル基又は炭素数2〜3のアルケニル基である。)
【0059】
本発明に用いるエポキシ基含有共重合体としては、エポキシ基を含有する共重合体であればよく、例えば、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物とそれ以外のエチレン性不飽和結合を有する重合性単量体との共重合体が挙げられる。なお、当該エポキシ基含有共重合体は、エチレン性不飽和結合を有する単量体を必須の重合成分とするものであり、エポキシ樹脂は含まれない。これらのエポキシ基含有共重合体は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。ここで用いるエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらのエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物の中でも、反応性の点から、グリシジル(メタ)アクリレート及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが好ましい。また、エチレン性不飽和結合を有する重合性単量体としては、ビニル基を有する単量体及び(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。ビニル基を有する単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、4-ビニル安息香酸などが挙げられる。(メタ)アクリレート化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有するものであればよく、例えば、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのエチレン性不飽和結合を有する重合性単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのエポキシ基含有共重合体の中でも、共重合性及び耐熱黄変性向上という点から、グリシジル(メタ)アクリレート及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上とスチレン及び(メタ)アクリレート化合物から選ばれる1種以上との共重合体が好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートとスチレンと脂環式アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体がより好ましい。
なお、本発明における(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートから選択される1種以上をいう。
【0060】
また、本発明に用いるエポキシ基含有共重合体の重量平均分子量は、現像性向上という点から、3000〜40000であることが好ましく、4000〜30000であることがより好ましい。エポキシ基含有共重合体の重量平均分子量が3000未満であると、製品の現像性が低下する場合があるため好ましくなく、一方、40000を超えると、現像できない場合があるため好ましくない。
【0061】
本発明で用いるカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物としては、カルボキシル基を含有するものであればよく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、マレイン酸などが挙げられる。これらのカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらのカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物の中でも、耐熱黄変性向上という点から、(メタ)アクリル酸及びイタコン酸が好ましい。
【0062】
エポキシ基含有共重合体とカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物との反応では、エポキシ基含有共重合体に含まれるエポキシ基1モルに対し、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物に含まれるカルボキシル基を0.9モル〜0.99モルの量で反応させることが好ましい。カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物に含まれるカルボキシル基の量が0.9モル未満であると、未反応のエポキシ基同士が反応しゲル化が起こる場合があるため好ましくなく、一方、0.99モルを超えると、未反応のカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物が残るため好ましくない。
【0063】
エポキシ基含有共重合体とカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物との反応において触媒として用いる上記式(1)で表される3価の有機リン化合物の具体例や好ましいものは、前記カルボキシル基含有共重合体とエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物との反応において用いる場合と同様である。
【0064】
3価の有機リン化合物の使用量は、エポキシ基含有共重合体及びカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物の総量100質量部に対し、0.1質量部〜1.0質量部であることが好ましく、0.2質量部〜0.5質量部であることがより好ましい。3価の有機リン化合物の使用量が、0.1質量部未満であると、エポキシと酸との反応率が低くなる場合があるため好ましくなく、一方、1.0質量部を超えると、触媒による着色が強くなる場合があるため好ましくない。
【0065】
エポキシ基含有共重合体とカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物との反応において用いる重合禁止剤も、前記カルボキシル基含有共重合体とエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物との反応において用いる場合と同様である。
【0066】
重合禁止剤の使用量は、エポキシ基含有共重合体及びカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物の総量100質量部に対し、0.1質量部〜1.0質量部であることが好ましく、0.2質量部〜0.5質量部であることがより好ましい。重合禁止剤の使用量が、0.1質量部未満であると、ゲル化が起こる場合があるため好ましくなく、一方、1.0質量部を超えると、レジストにした際に硬化を阻害する場合があるため好ましくない。
【0067】
本発明においては、エポキシ基含有共重合体とカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物との反応は、3価の有機リン化合物及び重合禁止剤の存在下に、酸素濃度が2%〜10%の気体の雰囲気下で行うことが必要である。酸素濃度が2%未満であると、反応中にゲル化が起こり、一方、10%を超えると、得られる感光性樹脂(A−2)が黄変するという問題が生じる。酸素濃度は3%〜6%であることが好ましい。酸素濃度が2%〜10%の気体としては、酸素を含有する気体、例えば空気と不活性ガスとからなる混合ガス、空気と酸素とからなる混合ガスなどを使用することができる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴンなど反応系において不活性であるものであればよく、一般的には、窒素が好ましい。
【0068】
反応器内を、酸素濃度が2〜10%の気体の雰囲気とするために、混合ガスを使用する場合は、予め混合ガスとして調整されたものを反応器内に導入してもよいし、あるいは混合ガスを構成するガスを別々に反応器内に導入して反応器内で混合してもよい。酸素濃度が2%〜10%の気体の導入方法としては、特に制限はないが、例えば、反応系の液面より上部から吹き込む方法、気体導入管を液面下に設定してバブリングする方法などがある。
【0069】
本発明においては、エポキシ基含有共重合体とカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物との反応を100℃〜150℃の温度で行うことが必要である。反応温度が100℃未満であると、反応率が低下し、一方、150℃を超えると、重合禁止剤が失活してゲル化が起こったり、得られる感光性樹脂(A−2)が着色するという問題が起こる。反応温度は110℃〜140℃であることが好ましく、110℃〜130℃であることがより好ましい。
反応時間は、反応温度にもよるが、通常、1時間〜15時間、好ましくは2時間〜10時間の範囲で行えばよい。
【0070】
本発明において得られた感光性樹脂(A−2)のアルカリ溶液による現像性を向上させる目的で、カルボキシル基との反応によりエポキシ基が開環して生成したヒドロキシル基に無水多塩基酸を100℃〜150℃の温度でさらに反応させて感光性樹脂(A’−2)としてもよい。ここで使用する無水多塩基酸としては、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸などが挙げられる。これらの無水多塩基酸は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの無水多塩基酸の中でも、現像性向上という点から、テトラヒドロフタル酸無水物が好ましい。
【0071】
感光性樹脂(A−2)と無水多塩基酸との反応では、感光性樹脂(A−2)に含まれるエポキシ基の開環によって生成したヒドロキシル基の合計1モルに対し、無水多塩基酸を0.05モル〜0.85モルの量で反応させることが好ましい。無水多塩基酸の量が0.05モル未満であると、無水多塩基酸を加えることによる効果が得られない場合があるため好ましくなく、一方、0.85モルを超えると、分子量の異常増大が起こる場合があるため好ましくない。
【0072】
このようにして得られた感光性樹脂(A−2)及び(A’−2)の重量平均分子量は、現像性向上及び耐溶剤性向上という点から、4000〜60000であることが好ましく、5000〜40000であることがより好ましい。感光性樹脂(A−2)及び(A’−2)の重量平均分子量が4000未満であると、耐溶剤性及び現像性が悪くなる場合があるため好ましくなく、一方、60000を超えると、現像できなくなる場合があるため好ましくない。
【0073】
本発明において得られた感光性樹脂(A−2)及び(A’−2)には、必要に応じて、溶剤(B)、反応性希釈剤(C)、光重合開始剤(D)及び着色剤(E)を添加して感光性樹脂組成物とすることができる。感光性樹脂(A−2)及び(A’−2)に対して、用いられる成分(C)〜(E)、その他添加剤や混合方法等は、感光性樹脂(A−1)及び(A’−1)に対して用いられるものと同様である。
【0074】
溶剤(B)は、感光性樹脂(A−2)及び(A’−2)と反応しない不活性な溶剤であれば特に限定されない。
溶剤(B)としては、感光性樹脂(A−2)及び(A’−2)を製造する際(共重合反応)に用いた溶剤と同じものを用いることができ、共重合反応後に含まれている溶剤をそのまま用いることもでき、更に加えることもできる。また、その他の成分を加える際に、そこに共存しているものでもよい。具体的には、溶剤(B)の例として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの中でも、感光性樹脂(A−2)及び(A’−2)を製造する際(共重合反応)において使用されるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテル系溶剤が好ましい。
【0075】
本発明において得られる感光性樹脂(A−2)及び(A’−2)を含有する感光性樹脂組成物は、感度及び現像性に優れると共に、耐熱分解性及び耐熱黄変性に優れた着色パターンを与えることができる。そのため、本実施の形態の感光性樹脂組成物は、各種レジスト、特に、有機ELディスプレイ、液晶表示装置、固体撮像素子に組み込まれるカラーフィルターを製造するために用いられるレジストとして用いるのに適している。
【実施例】
【0076】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明する。なお、実施例7〜18は参考例とする。
<実施例1>
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート569.9gを加え、窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。次いで、グリシジルメタクリレート519.5g(3.66モル)、トリシクロデカニルメタクリレート230g(1.05モル)、及びスチレン54.4g(0.52モル)からなる単量体混合物に、63.5gのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油社製、パーブチル(登録商標)O)を添加したものを、滴下ロートから2時間にわたって前記フラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃でさらに2時間攪拌して共重合反応を行い、エポキシ基含有共重合体溶液を生成させた。そこにアクリル酸457.4g、重合禁止剤としてブチルヒドロキシトルエン5.7g(0.3質量部)、触媒としてトリ(o−トリル)ホスフィンを5.7g(0.3質量部)を仕込み、酸素濃度が4%〜6%となるように窒素ガスを注入した低酸素エアーを吹き込みながら110℃で10時間加熱した。
その後、酸価が1.0KOHmg/g以下であることを確認して、テトラヒドロフタル酸無水物を390g仕込み110℃で2時間反応させ、固形分濃度70質量%の感光性樹脂(A’−2−1)溶液(固形分酸価62.6KOHmg/g、重量平均分子量9500)を得た。
反応溶液中の酸価(単量体残存率)を測定することにより、エポキシ基へのアクリル酸の付加反応率を算出したところ98.1%であった。
【0077】
<実施例2〜6及び比較例1>
トリ(o−トリル)ホスフィンの代わりに表1に記載の触媒を用いた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂溶液を得た。結果を表1に示す。
【0078】
<実施例7>
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1035.66gを加え、窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。
次いで、メタクリル酸311.1g(3.62モル)、トリシクロデカニルメタクリレート176.8g(0.80モル)及び、ベンジルメタクリレート636.6g(3.62モル)からなる単量体混合物に、15.7gのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油社製、パーブチル(登録商標)O)を添加したものを、滴下ロートから2時間にわたって前記フラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃でさらに2時間攪拌して共重合反応を行い、カルボキシル基含有共重合体溶液を生成させた。そこにグリシジルメタクリレート200.2g、重合禁止剤としてブチルヒドロキシトルエン4.5g(0.3質量部)、触媒としてトリ(o−トリル)ホスフィン4.5g(0.3質量部)を仕込み、酸素濃度が4%〜6%となるように窒素ガスを注入した低酸素エアーを吹き込みながら110℃で10時間加熱した。
その後、酸価が42.0KOHmg/g以下であることを確認して、固形分濃度56.6質量%の感光性樹脂(A−1−1)溶液(固形分酸価113.0KOHmg/g、重量平均分子量30000)を得た。
反応溶液中の酸価を測定することにより、酸とエポキシの反応率を算出したところ79.5%であった。
【0079】
<実施例8〜12及び比較例2>
トリ(o−トリル)ホスフィンの代わりに表2に記載の触媒を用いる以外は、実施例7と同様にして感光性樹脂溶液を得た。結果を表2に示す。
【0080】
<実施例13>
実施例7と同様にして感光性樹脂(A−1−1)溶液を得た後、酸価が42.0KOHmg/g以下であることを確認して、テトラヒドロフタル酸無水物を50g仕込み110℃で2時間反応させ、固形分濃度57.5重量%の感光性樹脂(A’−1−1)溶液(固形分酸価121.0KOHmg/g、重量平均分子量31500)を得た。
反応溶液中の酸価(単量体残存率)を測定することにより、反応率を算出したところ79.3%であった。
【0081】
<実施例14〜18及び比較例3>
トリ(o−トリル)ホスフィンの代わりに表3に記載の触媒を用いる以外は、実施例13と同様にして感光性樹脂溶液を得た。結果を表3に示す。
【0082】
<比較例4>
攪拌器装置、温度計、気体導入管及び還流冷却管を設置した60リットルの反応装置に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート9.2kgを仕込み、それにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔商品名:エポトートYDCN704、東都化成(株)製、エポキシ当量205〕20.5kg(100当量)を溶解させ、さらにアクリル酸7.2kg(100モル)、重合禁止剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール217g(1.0モル)及びトリオルトトリルフォスフィン41.5g(0.14モル)を仕込み、酸素濃度が4%〜6%となるように窒素ガスを注入した低酸素エアーを吹き込みながら110℃で10時間加熱し反応させて、樹脂固形分酸価1.0KOHmg/gのクレゾールノボラック型エポキシアクリレートを得た。
反応溶液中の酸価(単量体残存率)を測定することにより、反応率を算出したところ95.3%であった。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
実施例及び比較例で得られた感光性樹脂溶液を用いて、透明レジスト用の感光性樹脂組成物を調製した。
<透明レジストの調製>
感光性樹脂溶液の固形分100質量部に対して、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(重合性単量体)30質量部、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(光重合開始剤)4質量部を添加して透明レジスト組成物を調製した。
【0087】
<透明レジストから形成された塗膜の評価>
調製した透明レジスト組成物を使用して、コーターを用いて乾燥後の膜厚2.5μmとなるようにガラス基板上に塗布し、100℃で三分放置し溶媒を蒸発させた。これに露光量300mJ/cm(波長365nm)の条件で照射し塗膜を得た。形成された塗膜について、耐熱分解性、耐熱黄変性及び透明性を評価した。
【0088】
(1)アウトガスの評価
ガラス基板上に製膜した塗膜を切り出したサンプルを用い、熱重量分析(TGA)を行うことによって評価した。この分析では、このサンプルと、サンプルを220℃まで加熱して2時間保持したサンプルとの間の重量変化率を求めた。この評価の基準は以下の通りである。
◎:−1.0%未満
○:−1.0以上−1.5%未満
△:−1.5以上−2.0%未満
×:−2.0%以上
【0089】
(2)耐熱黄変性の評価
ガラス基板上に製膜した塗膜を230℃の乾燥機中に空気雰囲気下で1時間放置し、加熱処理前後の塗膜の着色を日本電色工業(株)製色差計SE2000にて比較した。この評価の基準は以下の通りである。
◎:ΔE*abが0.1未満
○:ΔE*abが0.1以上0.15未満
△:ΔE*abが0.15以上0.2未満
×:ΔE*abが0.2以上
【0090】
(3)透明性の評価
ガラス基板上に製膜した塗膜を230℃の乾燥機中に空気雰囲気下で1時間放置し、加熱処理前後の塗膜の400nmの光線透過率を(株)島津製作所製分光光度計UV−1650PCにて測定し、その透過率の変化率を調べることによって評価した。この評価の基準は以下の通りである。
◎:透過率の変化率が0.5%未満
○:透過率の変化率が0.5%以上1.0%未満
△:透過率の変化率が1.0%以上2.0%未満
×:透過率の変化率が2.0%以上
【0091】
上記の耐熱分解性、耐熱黄変性、透明性の評価結果を表4に示す。
【0092】
【表4】