(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0028】
(実施形態1)
まず、本実施形態における樹脂モールド成形方法に用いられる樹脂モールド金型10およびこれを備えた樹脂モールド装置100について、
図1を参照して説明する。
図1は、樹脂モールド装置100の要部である樹脂モールド金型10の断面図である。なお、樹脂モールド金型10は、
図1中の一点鎖線を中心として左右対称の構成となっており、
図1では、左側の構成を示している。
【0029】
樹脂モールド装置100は、量産用の場合、図示しない供給部と収納部との間に、樹脂モールド金型10を含んで構成されたプレス部(樹脂モールド金型機構)を少なくとも一つ備えて構成される。供給部では、ワークW(ここでは被成形品である)や樹脂R(例えば、タブレット状、顆粒状あるいは液状のモールド樹脂)をプレス部へ供給する準備、処理がされる。収納部では、樹脂モールド成形されたワークW(ここでは成形品である)を収納する準備、処理がされる。供給部、プレス部、収納部間のワークWや樹脂Rの搬送には、プレス部への搬入を行うローダ(図示せず)と、プレス部からの搬出を行うアンローダ(図示せず)が用いられ、これらは公知の機構で構成される。
【0030】
ワークWは、基板101(例えば、配線基板)上にチップ部品102(例えば、CPUなどの半導体チップ)が搭載されたものである。チップ部品102は、マトリクス状に配置されたバンプ103を介して基板101とフリップチップ実装されている。このため、基板101とチップ部品102との間には、狭隘な箇所(バンプ高さ分や狭ピッチのバンプ間のギャップ)が形成されることとなる。後述するが、本実施形態の樹脂モールド金型10によれば、基板101とチップ部品102との間のアンダーフィル(モールドアンダーフィル:Mold Under Fill)を行うことができる。
【0031】
樹脂モールド金型10は、型開き・型閉じ(型締め)可能な一対の金型を構成する上型11(一方の金型)および下型12(他方の金型)と、上型11と下型12との間で挟まれるプレート状の中間型20(中間の金型)とを備えている。本実施形態における樹脂モールド金型10では、中間型20を挟んで上型11と下型12で型閉じすることによって、ワークWがクランプされると共に型内で気密される(閉止される)キャビティ16が形成されて、キャビティ16内で充填された樹脂が所定の成形温度(金型温度)で加熱・硬化される。
【0032】
また、樹脂モールド金型10は、型閉じに合わせて上型11および下型12を内包するように閉止されるチャンバ70を備えている。このチャンバ70は、気密可能(閉止可能)に構成されるものとして説明する。
【0033】
また、樹脂モールド金型10は、上型11と下型12との間であって中間型20の周囲に設けられるキャビティシール部80を備えている。例えば、Oリングからなるキャビティシール部80は、型閉じの際に上型11の下面(パーティング面)の外周部と、下型12の上面(パーティング面)の外周部とで押し潰されることによって、キャビティ16内を含む上型11と下型12との間の空間を気密する。この気密されたキャビティ16内を減圧するために、樹脂モールド金型10は、キャビティ16と連通してチャンバ70外に設けられ、キャビティ16内のエアを排出する機能(例えば、真空ポンプ)を有し、キャビティ16の内圧を調節するキャビティ内圧調節部81を備えている。キャビティ16内の減圧効率を高めるために、チャンバ70外におけるキャビティ内圧調節部81までの連通路は太く、短い方が好ましい。
【0034】
本実施形態では、チャンバ70は、一方(上型ベース71)および他方(下型ベース72)が対向する凹設された空間部を有する一対のベースを備えている。上型ベース71および下型ベース72は、外形上が凹状となるように凹設されて空間部を有しており、上型ベース71の凹部内に上型11が組み付けられ、下型ベース72の凹部内に下型12が組み付けられる。また、この組み付けのためのサポートブロックなどが、上型ベース71と上型11との間や、下型ベース72と下型12との間に設けられる。
【0035】
また、チャンバ70は、上型ベース71と下型ベース72との間であって開口縁部(外周部)に設けられるベースシール部73を備えている。例えば、Oリングからなるベースシール部73は、型閉じの際に上型ベース71の開口縁部と、下型ベース72の開口縁部とで押し潰されることによって、上型ベース71と下型ベース72との間で形成される空間(これをチャンバという場合もある。)内を気密する。このように、一対のベース(上型ベース71および下型ベース72)をそのままチャンバ70として用いることで、新たにチャンバを設ける必要がなく、樹脂モールド金型10の構成をシンプルにすることができる。
【0036】
気密されたチャンバ70内を減圧するために、樹脂モールド金型10は、チャンバ70外に設けられ、チャンバ70内のエアを排出する機能(例えば、真空ポンプ)を有し、チャンバ70の内圧を調節するチャンバ内圧調節部74を備えている。このチャンバ内圧調節部74は、上型ベース71に形成されたエア路75を介して、チャンバ70内と連通されている。チャンバ70内の減圧効率を高めるために、チャンバ70外におけるチャンバ内圧調節部74までの連通路は太く、短い方が好ましい。
【0037】
このような樹脂モールド金型10は、一対の金型(上型11および下型12)において形成されたキャビティ16を含む空間を気密にし、更に、一対のベース(上型ベース71および下型ベース72)において形成された空間(一対の金型が内包された空間)を気密して、ダブルシール(Double Seal)を構成している。また、樹脂モールド金型10は、ダブルシールとされるそれぞれの空間を減圧して、ダブルバキューム(Double Vacuum)を構成している。以下では、より具体的な樹脂モールド金型10の構成を説明し、ダブルシールおよびダブルバキュームによる作用効果について説明する。
【0038】
樹脂モールド金型10では、上型11を固定型とし、下型12を可動型(駆動型)とした場合、上型ベース71(上型11)は図示しない固定プラテン、下型ベース72(下型12)は図示しない可動プラテンに固定して組み付けられる。この場合、樹脂モールド金型10は、図示しない駆動源(電動モータ)により駆動する駆動伝達機構(トグルリンクなどのリンク機構若しくはねじ軸など)を介して可動プラテンを昇降させる公知の機構によって型開閉が行われる。
【0039】
型閉じすることによって上型11と下型12とで中間型20をクランプした状態において、樹脂モールド金型10には、ポット13、カル14、ランナゲート15、キャビティ16、スルーゲート17、ダミーキャビティ18、エアベント19の順で連通(接続)される連通路が形成される。この連通路を介してポット13から樹脂Rが圧送され、キャビティ16に充填された樹脂Rが加熱・硬化される。
【0040】
なお、エアの排出の点でキャビティ16に連通するエアベント19を設けているので、ダミーキャビティ18は、設けなくともよい。しかし、ダミーキャビティ18を設けることで、キャビティ16から樹脂Rをエアと共にダミーキャビティ18に圧送して、キャビティ16内で充填された樹脂Rのエアが残存するのをより防止することができる。
【0041】
上型11は、具体的には、上型チェイスブロック30と、上型クランパブロック31と、上型キャビティブロック32と、スプリング33、34とを備えて構成されている。
【0042】
上型チェイスブロック30には、この中央部において下型12側の面から凹む凹部30aが形成されている。この凹部30aの内底面には、上型クランパブロック31が、上下動可能となるように、その上面でスプリング33を介して組み付けられている(吊り下げ支持されている)。
【0043】
上型クランパブロック31には、厚さ方向に貫通する貫通孔31aが形成されている。この貫通孔31a内には、上型キャビティブロック32が、上下動可能となるように、その上面でスプリング34を介して組み付けられている(吊り下げ支持されている)。このスプリング34により、上型キャビティブロック32は、上型クランパブロック31に対して相対的に可動することとなる。
【0044】
また、上型クランパブロック31の下面には、カル14を構成する凹部およびダミーキャビティ18を構成する凹部が形成されている。これら凹部の壁面(側面)は、ワークW(成形品)の離型を容易とするため、それぞれ開口部から底部へ向かって縮径するようなテーパ状となっている。
【0045】
上型クランパブロック31の下面および上型キャビティブロック32の下面を含む上型11のパーティング面には、リリースフィルム35が張設される。具体的には、例えば、長尺状のリリースフィルム35は、ロール状に巻き取られた繰出しロールから引き出されて上型11のパーティング面を通過して巻取りロールへ巻き取られるように設けられる。そして、リリースフィルム35は、上型11のパーティング面に上型クランパブロック31と上型キャビティブロック32との隙間や図示しない吸引路を利用した公知の吸引機構により吸着保持されるようになっている。
【0046】
リリースフィルム35を設けない構成とすることもできるが、リリースフィルム35を介することで、上型11から容易に成形品(ワークW)を取り出すことができる。また、上型クランパブロック31と上型キャビティブロック32間などの隙間がリリースフィルム35によって覆われるため、キャビティ16内を減圧する際のリークの発生を防止することができる。また、上型キャビティブロック32を上下動可能とした場合には、リリースフィルム35を用いることで、上型クランパブロック31と上型キャビティブロック32の隙間からの樹脂漏れをより確実に防止することができる。また、チップ部品102の上面(リリースフィルム35と接する面)の保護とフラッシュばりを防止することもできる。
【0047】
リリースフィルム35は、樹脂モールド金型10の加熱温度に耐えられる耐熱性を有するもので、上型11のパーティング面から容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するフィルム材である。リリースフィルム35としては、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジンなどが好適に用いられる。
【0048】
下型12は、具体的には、下型チェイスブロック40と、下型クランパブロック41と、ワーク支持ブロック42と、板厚調節機構部(板厚調節ブロック43a、43b)と、スプリング44とを備えて構成されている。
【0049】
下型チェイスブロック40には、この中央部において上型12側の面から凹む凹部40aおよび凹部40aにおいて厚さ方向に貫通する貫通孔40bが形成されている。この凹部40aの内底面には、下型クランパブロック41がその下面で固定して組み付けられている。
【0050】
下型クランパブロック41には、厚さ方向に貫通する貫通孔41a、41bが形成されている。下型クランパブロック41の貫通孔41bは、下型チェイスブロック40の貫通孔40bと直列して連通しており、連通する貫通孔40bおよび貫通孔41b内には、樹脂Rが供給される筒状のポット13が固定して組み付けられている。ポット13内には公知のトランスファ駆動機構(図示せず)により上下動可能なプランジャ45が設けられている。なお、ポット13と下型ベース72との間であってプランジャ45の周囲には、樹脂漏れを防止するためのプランジャシール部46(例えば、Oリング)が設けられている。
【0051】
下型クランパブロック41の貫通孔41aの底部で露出する下型チェイスブロック40(凹部40aの内底面)には、スプリング44の一端が固定して組み付けられている。スプリング44の他端には、ワーク支持ブロック42がその下面側で固定して組み付けられている。このため、ワーク支持ブロック42は、下型クランパブロック41の貫通孔41a内で上下動可能となるように、フローティング支持されている。このワーク支持ブロック42の上面は、ワークWの載置面を構成する。
【0052】
スプリング44は、上型11に設けられるスプリング34より弾性力が小さく設定される。具体的には、ワークWおよびワーク支持ブロック42に対して、スプリング34によって加えられる力が、スプリング44によって付勢される力よりも大きい。これにより、型閉じの際に下型12を上昇させてもスプリング34を撓ませずにスプリング44を撓ませることができ、ワークW(基板101)の板厚に拘わらず均一な高さ位置でワークWをクランプすることができる。すなわち、チップ部品102の上面(バンプ103形成面の反対面)に対して、上型キャビティブロック32の下面がリリースフィルム35を介してクランプ力を作用し続けることができる。
【0053】
スプリング44に支持されたワーク支持ブロック42と下型チェイスブロック40との間には、界面が互いにテーパ面(傾斜面)に形成された板厚調節ブロック43a、43bが重ね合わせて設けられている。具体的には、板厚調節ブロック43a、43bは、断面視奥行き方向(紙面垂直方向)に厚みの異なるブロックを組み合わせることで、全体の厚みが断面視奥行き方向に均一になるようにウエッジ構成されている。この上下段に重ね合わせた板厚調節ブロック43a、43bのうち一方をエアシリンダ、モータなどの駆動源によりスライド可能として、板厚調節機構部が設けられている。
【0054】
これにより、下型12を上昇させることで上型キャビティブロック32(スプリング34)によってワーク支持ブロック42を押し下げる力が加わっても板厚調節機構部(板厚調節ブロック43a、43b)のウエッジ構造で所定高さに支持固定することができる。すなわち、上型キャビティブロック32によってワーク支持ブロック42が過度に押し下げられないようにしている。板厚調節機構部は本願には必ずしも必須の機構ではない。
【0055】
上型11と下型12との間で挟まれる中間型20は、上型11、下型12と同じ材料から構成されるもの(例えば、ステンレス鋼(鋼材)、チタン、ニッケル、銅などの各種合金のような金属材料)を用いることが、熱膨張係数のミスマッチを防止する点で好ましい。この中間型20は、厚さ方向に貫通して形成された、カル14を構成する貫通孔(カル孔)と、キャビティ16を構成する貫通孔(キャビティ孔)と、ダミーキャビティ18を構成する貫通孔(ダミーキャビティ孔)とを有している。また、中間型20は、上型11側の面から一定の深さで形成された、ランナゲート15を構成する溝(ランナゲート溝)と、スルーゲート17を構成する溝(スルーゲート溝)と、エアベント19を構成する溝(エアベント溝)とを有している。
【0056】
このエアベント19の開閉を行うために、樹脂モールド金型10は、シャットオフピン50を含んで構成されている樹脂止め機構部を備えている。シャットオフピン50は、上型クランパブロック31に貫通状態であってエアベント19の中途部に進退動(上下動)可能に設けられている。シャットオフピン50は、例えば、上型チェイスブロック30内に設けられた弾発材のコイルスプリング(図示せず)によりエアベント19から一端が離隔する方向に他端が付勢された状態で設けられている。そして、シャットオフピン50は、中継ピン(図示せず)を介して可動ピン用アクチュエータによりエアベント19への進退動作が制御可能に構成されている。
【0057】
このような構成からなる樹脂止め機構部は、シャットオフピン50を下方に動かして、エアベント19内にシャットオフピン50を進入させることによってエアベント19を閉塞し、連通路内を圧送されてきた樹脂Rを堰き止めることができる。また、樹脂止め機構部は、シャットオフピン50を上方に動かして(コイルスプリングの付勢力によって離隔される)、エアベント19外にシャットオフピン50を退出させることによってエアベント19を開放させる。
【0058】
樹脂モールド金型10で形成される連通路において、ポット13側(上流側)とは反対側の下流側で連通されたキャビティ内圧調節部81によって、特にキャビティ16内のエアを排出している。キャビティシール部80によって上型11と下型12との間の空間が気密されており、エアベント19からキャビティ内圧調節部81までは、下型11に形成されたエア路82や下型ベース72に形成されたエア路83を介して連通される。この際、エア路82を形成する、下型チェイスブロック40と下型クランパブロック41との間には、例えばOリングからなるシール部84が設けられ、エア路82の中途での気密性が確保されている。また、エア路82とエア路83とを連結する、下型ベース72と下型チェイスブロック40との間には、例えばOリングからなるシール部85が設けられ、エア路82とエア路83との間の気密性が確保されている。
【0059】
このように、本実施形態における樹脂モールド金型10(樹脂モールド装置100)は、ダブルシール機構(キャビティシール部80およびベースシール部73を含む)と、ダブルバキューム機構(キャビティ内圧調節部81およびチャンバ内圧調節部74を含む)を備えている。以下では、これら機構による作用効果について、
図2を参照して説明する。
【0060】
図2は、樹脂モールド金型10の作用効果を説明するための図であり、横軸に時間(t)、縦軸にキャビティ16の内圧(P)を対数でとり、型閉じ(クランプ)状態における時間に対するキャビティ16内の減圧到達度を示すものである。
図2に示すパラメータAは、キャビティシール部80を用いてキャビティ内圧調節部81のみを作動させた場合(このとき、ベースシール部73を用いず、チャンバ内圧調節部74を作動させていない。)である。また、パラメータBは、ベースシール部73を用いてチャンバ内圧調節部74のみを作動させた場合(このとき、キャビティシール部80を用いず、キャビティ内圧調節部81を作動させていない。)である。また、パラメータCは、キャビティシール部80およびベースシール部73を用いてキャビティ内圧調節部81およびチャンバ内圧調節部74を一緒に作動させた場合である。
【0061】
図2に示すように、パラメータAの構成に対して、パラメータBの構成の方が、キャビティ16内の減圧到達度の実効性を高めることができる。パラメータAの構成では、クランプ後もキャビティ16内を減圧することができるが、本実施形態のように複数の金型ブロックから構成される一対の金型(上型11および下型12)では、各金型ブロックの隙間からリークが発生してしまう。これに対して、パラメータBの構成では、クランプ後はキャビティ16内を減圧することができないこととなるが、それまではキャビティ16が形成される一対の金型(上型11および下型12)を内包するチャンバ70内を減圧することができる。
【0062】
そして、パラメータA、Bの構成に対して、パラメータCの構成の方が、キャビティ16内の圧力を一桁程度低くすることができる。このことは、チャンバ内圧調節部74によって一対の金型(上型11および下型12)の外の空間(すなわちチャンバ70内の空間)を減圧した状態でリークを最小限にし、クランプ後であってもキャビティ内圧調節部80によってキャビティ16内を減圧することで、キャビティ16内の減圧到達度に対してチャンバ内圧調節部74およびキャビティ内圧調節部80による相乗効果が得られた結果と考えられる。このように、パラメータCの構成によれば、別個で行うパラメータA、Bの構成よりもキャビティ16内の減圧到達度の実効性を高めることができる。
【0063】
また、
図2に示すように、減圧到達度P1となるまでの時間でみても、パラメータAの構成による時間ta、パラメータBの構成による時間tbに対して、パラメータCの構成による時間tcの方が、短くなっている。さらに、キャビティ内圧調節部81がキャビティ16内へ圧縮空気を送入する機能(例えば、コンプレッサ)を有するものであれば、型閉じした状態で、まず、キャビティ16内へ圧縮空気を送入し、圧力が高まった状態のキャビティ16に対して、エアを排出することで、より短時間でキャビティ16内の減圧到達度の実効性を高めることもできる。
【0064】
なお、
図2には示していないが、キャビティシール部80およびベースシール部73を用いてキャビティ内圧調節部81のみを作動させた場合や、キャビティシール部80およびベースシール部73を用いてチャンバ内圧調節部74のみを作動させた場合などの組み合わせも考えられるが、パラメータCの構成が最も有効である結果が得られている。
【0065】
また、キャビティシール部80を用いずに、ベースシール部73を用いて、チャンバ内圧調節部74およびキャビティ内圧調節部80を一緒に作動させた場合も考えられるが、パラメータCの構成が有効である結果が得られている。具体的には、パラメータCの構成のようにキャビティシール部80も用いることで、用いない場合よりも減圧到達度の実効性を高めることができる。すなわち、キャビティシール部80によって、キャビティ16の近傍(周囲)で気密することができ、よりキャビティ16内の減圧到達度の実効性を高めることができる。
【0066】
なお、型閉じの際には、上型チェイスブロック30と下型チェイスブロック40とは図示しないロックブロックによって位置合わせがされるが、そのロックブロックによる隙間もキャビティシール部80で囲まれていることで、リーク源となるのを防止することができる。また、本実施形態のように、板厚調節部を設ける場合であっても、その可動部(例えば、板厚調節ブロック43a、43b)の隙間もキャビティシール部80で囲まれていることで、リーク源となるのを防止することができる。
【0067】
そして、更に、気密可能なチャンバ70を内包する別のチャンバ、あるいは、一対の金型(上型11および下型12)とチャンバ70との間の空間に別のチャンバを備えた構成とすることもできる。すなわち、トリプルシール(これ以上のマルチシール)およびトリプルバキューム(これ以上のマルチバキューム)とすることで、よりキャビティ16内の減圧到達度の実効性を高めることができる。なお、別のチャンバとしては、例えば、上型11、下型12と同じ材料から構成されるものを箱形にして用いることができる。
【0068】
なお、本実施形態では、シャットオフピン50を設けた場合について説明しているが、必ずしもシャットオフピン50を設ける必要はない。しかしながら、シャットオフピン50を設けることで、エアベント19を深く形成することができる。すなわち、エアを排出し易くすることができ、キャビティ16内の減圧到達度の実効性をより高めることができる(高効率のキャビティ16内の脱気を行うことができる)。
【0069】
次に、樹脂モールド金型10を用いた、トランスファ方式の樹脂モールド成形方法について説明する。本実施形態では、ワークW(被成形品)に対して、基板101とチップ部品102の下面との狭隘な箇所を含むチップ部品102の側面をモールド(封止)し、チップ部品102の上面を露出するような樹脂成形部を形成する。これによりワークWは、成形品となる。なお、樹脂としては、狭隘な箇所への樹脂充填(アンダーフィル)を行うため、フィラー径の小さい低粘度で流動性の高い樹脂を用いる。
【0070】
まず、樹脂モールド金型10が型開きした状態において、ワーク支持ブロック42の上面(上型11側の面)は、その周囲の下型クランパブロック41の上面(上型11側の面)より若干下方の位置にある。このような状態において、基板101にフリップチップ実装されたチップ部品102をワークWとして樹脂モールド金型10に供給(搬入)し、ワーク支持ブロック42の上面上にワークW(基板101)を載置する。なお、このときの基板101の上面が下型クランパブロック41の上面より若干上方の位置にくるように、ワーク支持ブロック42が組み付けられている。
【0071】
また、型開きした状態では、シャットオフピン50をエアベント19内から待避させておき、上型11のパーティング面でリリースフィルム35が吸着保持される。また、型開きした状態では、ポット13内においてプランジャ45のヘッド部が下方(後退)した位置(樹脂供給位置)で待機しており、このポット13内に低粘度の樹脂Rが供給される。ポット13内の樹脂Rは、上型11および下型12が予め内蔵されたヒータによって加熱されているので、その熱によって溶融することとなる。
【0072】
次いで、中間型20のキャビティ孔(キャビティ16ともいう。)内にチップ部品102を収容してワークWを覆うように、下型12のパーティング面上に中間型20をワークWに重ねて配置する。
【0073】
次いで、可動型の下型12を固定型の上型11に近づけるように駆動させて(下型12を上昇させて)、上型11と下型12との間で中間型20と共にワークWをクランプして型閉じする。これにより、ポット13、カル14、ランナゲート15、キャビティ16、スルーゲート17、ダミーキャビティ18、エアベント19で連通される連通路が形成される。
【0074】
具体的には、カル14は、ポット13と対向する上型11(上型クランパブロック31)の中央部に形成された凹部および中間型20のカル孔を含んで形成される空間である。また、キャビティ16は、中間型20のキャビティ孔の両端をそれぞれ上型11のパーティング面および基板101の上面で囲まれて形成される空間である。また、ダミーキャビティ18は、上型11(上型クランパブロック31)の外周部に形成された凹部および中間型20のダミーキャビティ孔を含んで形成される空間である。また、ランナゲート15は、上型11のパーティング面および中間型20のランナゲート溝を含んで形成される空間である。また、スルーゲート17は、上型11のパーティング面および中間型20のスルーゲート溝を含んで形成される空間である。また、エアベント19は、上型11のパーティング面および中間型20のエアベント溝を含んで形成される空間である。
【0075】
また、型閉じされることによって、上型11(上型チェイスブロック30)および下型12(下型チェイスブロック40)の外周部では、キャビティシール部80が上型11と下型12によりクランプされるのでキャビティ16を含む金型内部に気密された空間が形成される。また、型閉じされることによって、上型ベース71および下型ベース72の外周部では、ベースシール部73が上型ベース71と下型ベース72によりクランプされるので上型ベース71および下型ベース72で形成されるチャンバ70内に気密された空間が形成される。
【0076】
ここで、型閉じ途中においてキャビティシール部80が上型11に接触した後にキャビティ内圧調節部81を作動してキャビティ16を含む金型内部に減圧環境下を形成することもできる。また、型閉じ途中においてベースシール部73が上型ベース71に接触した後にチャンバ内圧調節部74を作動してチャンバ70内に減圧環境下を形成することもできる。なお、型閉じ直前からキャビティ内圧調節部81およびチャンバ内圧調節部74を駆動しておけば、型閉じと同時に、連通路中のエア吸引が行われて減圧環境下を形成でき、サイクルタイムを短縮することができる。
【0077】
また、型閉じされる過程では、板厚調整機構部によって板厚調整が行われる。具体的には、まず、上型11と下型12との間で中間型20がクランプされる際に、基板101およびワーク支持ブロック42が押し下げられる。次いで、下段の板厚調整ブロック43bを所定量前進または進退させて上段の板厚調整ブロック43aがワーク支持ブロック42の下面に密着させて固定される。
【0078】
これにより、基板101上面と下型クランパブロック41の上面とが面一となるように板厚差が吸収されて、基板101が中間型20と下型クランパブロック41との間でクランプされる。すなわち、ポット13を中心として左右対称に載置されたワークWの基板101の板厚に差があったとしても、各基板101上面が均一な高さとなってクランプされる。このため、基板101上面での樹脂Rのフラッシュばりを防止することができる。これは、特に、低粘度の場合に有効である。
【0079】
次いで、ワークWをクランプした状態で、キャビティ内圧調節部81およびチャンバ内圧調節部74を一緒に作動させてキャビティ16内を減圧しながら、プランジャ45を上昇させてポット13からカル14に連通するランナゲート15を通じてキャビティ16まで樹脂Rを圧送して、キャビティ16内へ充填する。このとき、キャビティ16内の減圧到達度の実効性が高いため、樹脂充填性が向上し、基板101とチップ部品102との間のような狭隘な箇所であっても、樹脂充填することができる。
【0080】
次いで、更に、プランジャ45を上昇させて溶融した樹脂Rをエアと共に圧送し、キャビティ16から樹脂Rをオーバーフローさせ、スルーゲート17を経てダミーキャビティ18へ樹脂Rを流入させる。
【0081】
また、スルーゲート17およびダミーキャビティ18を通過してエアベント19に樹脂Rの流頭が差し掛かかる前に、樹脂止め機構部を駆動して、エアベント19内にシャットオフピン50を進入させる。これによって、エアベント19が閉塞され、圧送されてくる樹脂Rをシャットオフピン50で堰き止めることができる。シャットオフピン50で樹脂Rを堰き止める構成とすることで、エアベント19を深く形成して、エアを排出し易くすることができ、キャビティ16内の減圧到達度の実効性をより高めることで、充填性を向上することができる。また、樹脂モールド金型10外への樹脂汚れを防止することができる。また、樹脂汚れを防止することで、クリーニング工程を簡素化できサイクルタイムを短縮することもできる。
【0082】
次いで、シャットオフピン50によって樹脂Rが堰き止められた状態で、更に、プランジャ45を上昇させて、キャビティ16内の圧力を所定の成形圧力まで高めた後、保圧した状態においてキャビティ16内で充填された樹脂Rの硬化を完了させる。
【0083】
次いで、可動型の下型12を固定型の上型11から遠ざけるように駆動させて(下型12を下降させて)、上型11と下型12とを隔離して型開きする(すなわち、上型ベース71と下型ベース72も離れる)。これにより、硬化した樹脂Rによって中間型20に食い付いた状態でワークWを取り出すことができる。次いで、ワークWを中間型20から下方に押し出して取り出すことで、ワークWが成形品となる。前述したように、樹脂モールド金型10を用いることで、キャビティ16内の減圧到達度の実効性を高めることができるので、樹脂充填性が向上し、成形品にボイドが発生する(不良品となる)のを防止することができる。したがって、製造歩留まりが低下するのを防止することができる。また、ボイドの発生を防止することによって、成形品の信頼性を向上することができる。
【0084】
(実施形態2)
前記実施形態1では、上型11と下型12との間で中間型20を介してワークWをクランプしてモールドアンダーフィルを行う樹脂モールド金型10に適用した場合について説明した。これに限らず、
図3に示すように、中間型を用いずに、上型11と下型12との間でBGAタイプのワークWをクランプして行う樹脂モールド金型10Aにも適用することができる。
図3は、本発明の実施形態における樹脂モールド装置100の要部である樹脂モールド金型10Aの断面図である。
【0085】
本実施形態における樹脂モールド金型10Aは、上型11および下型12を型閉じすることによって、ワークWがクランプされると共にキャビティ16が形成されて、キャビティ16内で充填された樹脂Rが加熱・硬化される一対の金型を備えている。本実施形態では、キャビティ16は、上型キャビティブロック32の下面、上型クランプブロック31に形成された貫通孔31aの壁面、および基板101の上面で囲まれて形成される空間である。また、上型キャビティブロック32が上型クランパブロック31に対して相対的に可動する構成であるため、キャビティ16の容積が変化することとなる。
【0086】
また、樹脂モールド金型10Aは、型閉じによって一対の金型(上型11および下型12)を内包するように密閉されるチャンバ70と、チャンバ70外に設けられ、チャンバ70内のエアを排出する機能(例えば、真空ポンプ)を有するチャンバ内圧調節部74とを備えている。本実施形態では、チャンバ70は、対向する凹設された空間部を有する一対のベース(上型ベース71および下型ベース72)と、該一対のベースで囲まれた空間内を気密するベースシール部73とを備えている。
【0087】
また、樹脂モールド金型10Aは、キャビティ16と連通してチャンバ70外に設けられ、キャビティ16内のエアを排出する機能(例えば、真空ポンプ)を有するキャビティ内圧調節部81を備えている。本実施形態では、一対の金型(上型11および下型12)において、ポット13、カル14、ランナゲート15、キャビティ16、エアベント19の順で連通される連通路と、キャビティ内圧調節部81とが接続されている。エアベント19は、上型クランパブロック31の下面に刻設されたエアベント溝と、基板101の上面あるいは下型クランパブロック41の上面とで形成される空間である。このエアベント19の中途部には、進退動(上下動)可能なエアベントピン51が設けられている。
【0088】
このような樹脂モールド金型10Aにおいても、前記実施形態1と同様の作用効果を得ることができ、キャビティ16内の減圧到達度の実効性を高めることができる。
【0089】
また、樹脂モールド金型10Aを用いて、トランスファ方式の樹脂モールド成形をすることができる。具体的には、まず、ポット13に樹脂Rを供給して、上型キャビティブロック32を上型クランパブロック31に対して相対的に可動させてワークWをクランプする。次いで、ワークWをクランプした状態で、キャビティ内圧調節部81およびチャンバ内圧調節部74を作動させてキャビティ16内を減圧しながら、ポット13からカル14に連通するランナゲート15を通じてキャビティ16まで樹脂Rを圧送し、キャビティ16内で充填された樹脂Rを加熱・硬化する。本実施形態では、キャビティ16内の減圧到達度の実効性を高めることができるので、樹脂充填性が向上し、成形品にボイドが発生するのを防止することができる。
【0090】
(実施形態3)
前記実施形態2では、上型キャビティブロック32を上型クランパブロック31に対して相対的に可動させてキャビティ16の容量を変化させる場合について説明した。これに限らず、
図4に示すように、キャビティ16の容積を固定させて、上型11と下型12との間でBGAタイプのワークWをクランプして行う樹脂モールド金型10Bにも適用することができる。
図4は、本発明の実施形態における樹脂モールド装置100の要部である樹脂モールド金型10Bの断面図である。
【0091】
本実施形態における樹脂モールド金型10Bは、上型11および下型12を型閉じすることによって、ワークWがクランプされると共にキャビティ16が形成されて、キャビティ16内で充填された樹脂Rが加熱・硬化される一対の金型を備えている。本実施形態では、キャビティ16は、上型クランパブロック31の下面から凹む凹部、および基板101の上面で囲まれて形成される空間である。上型クランパブロック31は、上型チェイスブロック30に固定して組み付けられており、キャビティ16へ進退動可能なエジェクタピン52が設けられている。
【0092】
また、樹脂モールド金型10Bは、型閉じによって一対の金型(上型11および下型12)を内包するように密閉されるチャンバ70と、チャンバ70外に設けられ、チャンバ70内のエアを排出する機能(例えば、真空ポンプ)を有するチャンバ内圧調節部74とを備えている。本実施形態では、チャンバ70は、対向する凹設された空間部を有する一対のベース(上型ベース71および下型ベース72)と、該一対のベースで囲まれた空間内を気密するベースシール部73とを備えている。
【0093】
また、樹脂モールド金型10Aは、キャビティ16と連通してチャンバ70外に設けられ、キャビティ16内のエアを排出する機能(例えば、真空ポンプ)を有するキャビティ内圧調節部81を備えている。本実施形態では、一対の金型(上型11および下型12)において、ポット13、カル14、ランナゲート15、キャビティ16、エアベント19の順で連通される連通路と、キャビティ内圧調節部81とが接続されている。なお、本実施形態では、エアベント19の中途部には、エアベントピンを設けていない。
【0094】
このような樹脂モールド金型10Bにおいても、前記実施形態2と同様の作用効果を得ることができ、キャビティ16内の減圧到達度の実効性を高めることができる。なお、本実施形態では、上型11において可動部が少なく、各金型ブロック間の隙間からのリークが少ないと考えられることから、上型11のパーティング面に張設されるリリースフィルムを用いていない。
【0095】
また、樹脂モールド金型10Bを用いて、トランスファ方式の樹脂モールド成形をすることができる。具体的には、まず、ポット13に樹脂Rを供給してワークWをクランプする。次いで、ワークWをクランプした状態で、キャビティ内圧調節部81およびチャンバ内圧調節部74を作動させてキャビティ16内を減圧しながら、ポット13からカル14に連通するランナゲート15を通じてキャビティ16まで樹脂Rを圧送し、キャビティ16内で充填された樹脂Rを加熱・硬化する。本実施形態では、キャビティ16内の減圧到達度の実効性を高めることができるので、樹脂充填性が向上し、成形品にボイドが発生するのを防止することができる。
【0096】
(実施形態4)
前記実施形態1では、トランスファ方式の樹脂モールド金型10に適用した場合について説明した。これに限らず、
図5に示すように、トランスファ方式と圧縮方式とを掛け合わせたTCM(Transfer Compression Mold)方式の樹脂モールド金型10Cにも適用することができる。
図5は、本発明の実施形態における樹脂モールド装置100の要部である樹脂モールド金型10Cの断面図である。
【0097】
本実施形態における樹脂モールド金型10Cは、上型11および下型12を型閉じすることによって、ワークWがクランプされると共にキャビティ16が形成されて、キャビティ16内で充填された樹脂Rが加熱・硬化される一対の金型を備えている。
【0098】
上型11は、型開閉方向に形成された貫通孔31a(収納孔)および貫通孔31aに続く拡径孔31bを有する上型クランプブロック31と、上型クランパブロック31の貫通孔31a内に収納された上型キャビティブロック32とを備えている。下型12は、下型チェイスブロック40と、これに挿入、固定されたワーク支持ブロック42とを備えている。本実施形態では、キャビティ16は、上型キャビティブロック32の下面、上型キャビティブロック32の下面と拡径孔31bとの間の、貫通孔31aの内壁面の一部をなす段差壁面、拡径孔31bの内壁面(これまでによって上型11にキャビティ凹部が形成される)、および基板101の上面で囲まれて形成される空間である。
【0099】
上型クランパブロック31は、上型チェイスブロック30との間に所要の隙間76ができるようにスプリング33を介して上型ベース71側に吊り下げ支持されている。スプリング33は、上型チェイスブロック30に設けられた貫通孔30b内に配置され、上型ベース71の下面と上型クランパブロック31の上面とに当接して、上型クランパブロック31を下方に付勢している。
【0100】
また、樹脂モールド金型10Cは、型閉じによって一対の金型(上型11および下型12)を内包するように密閉されるチャンバ70と、チャンバ70外に設けられ、チャンバ70内のエアを排出する機能(例えば、真空ポンプ)を有するチャンバ内圧調節部74とを備えている。本実施形態では、チャンバ70は、対向する凹設された空間部を有する一対のベース(上型ベース71および下型ベース72)と、該一対のベースで囲まれた空間内を気密するベースシール部73とを備えている。
【0101】
また、樹脂モールド金型10Cは、キャビティ16と連通してチャンバ70外に設けられ、キャビティ16内のエアを排出する機能(例えば、真空ポンプ)を有するキャビティ内圧調節部81を備えている。本実施形態では、一対の金型(上型11および下型12)において、ポット13、カル14、ランナゲート15、キャビティ16、エアベント19の順で連通される連通路と、キャビティ内圧調節部81とが接続されている。エアベント19は、上型クランパブロック31の下面に刻設されたエアベント溝と、基板101の上面とで形成される空間である。
【0102】
このような樹脂モールド金型10Cにおいても、前記実施形態1と同様の作用効果を得ることができ、キャビティ16内の減圧到達度の実効性を高めることができる。
【0103】
また、樹脂モールド金型10Cを用いて、TCM方式の樹脂モールド成形をすることができる。具体的には、まず、型開きした状態において、ワーク支持ブロック42の上面にワークWを供給する。また、キャビティ凹部の内面を含む上型11のパーティング面にリリースフィルム35を張設(吸着保持)する。また、ポット13に樹脂Rを供給する。次いで、上型11および下型12を型閉じ(第1の型閉じ)をすることによって、ワークWをクランプする。
【0104】
第1の型閉じの段階では、下型12および上型11のパーティング面がリリースフィルム35を介して当接し、なおかつ、スプリング33が若干圧縮されて、樹脂Rがキャビティ16内から漏出しないクランプ力でもって型閉じがなされる。
【0105】
次いで、ワークWをクランプした状態で、キャビティ内圧調節部81およびチャンバ内圧調節部74を一緒に作動させてキャビティ16内を減圧しながら、プランジャ45を上昇させてポット13からカル14に連通するランナゲート15を通じてキャビティ16まで樹脂Rを圧送して、キャビティ16内へ充填する。第1の型締めの段階では、チップ部品102の上面と上型キャビティブロック32の下面との間には充分な隙間があり、溶融した樹脂Rはキャビティ16内の隅々まで良好に充填される。
【0106】
次いで、更に上型11と下型12が接近し、第2の型閉じを行う。第2の型閉じの段階では、スプリング33の付勢力に抗して、上型チェイスブロック30の開口縁部がキャビティシール部80を介して下型チェイスブロック40の開口縁部に当接するまで両金型がさらに接近するように型閉じがなされる。これにより、上型クランパブロック31が下型12に接近し、キャビティ16内の空間が狭められるから、キャビティ16内の溶融した樹脂Rがポット32内に押し戻される。この状態で保圧することによって、樹脂Rが硬化される。本実施形態では、キャビティ16内の減圧到達度の実効性を高めることができるので、樹脂充填性が向上し、成形品にボイドが発生するのを防止することができる。
【0107】
(実施形態5)
前記実施形態1では、トランスファ方式の樹脂モールド金型10に適用した場合について説明した。これに限らず、
図6に示すように、圧縮方式の樹脂モールド金型10Dにも適用することができる。
図6は、本発明の実施形態における樹脂モールド装置100の要部である樹脂モールド金型10Dの断面図である。なお、樹脂モールド金型10Dは、
図6中の一点鎖線を中心として左右対称の構成となっており、
図6では、右側が型開きした状態、左側が型閉じした状態を示している。
【0108】
本実施形態における樹脂モールド金型10Dは、上型11および下型12を型閉じすることによって、ワークWがクランプされると共にキャビティ16が形成されて、キャビティ16内で充填された樹脂Rが加熱・硬化される一対の金型を備えている。樹脂モールド金型10Dでは、上型11を可動型とし、下型12を固定型とした場合、上型ベース71(上型11)は図示しない可動プラテン、下型ベース72(下型12)は図示しない固定プラテンに固定して組み付けられる。
【0109】
上型チェイスブロック30の下面には、ワークW(基板101)が吸着保持されるようになっている。上型チェイスブロック30には、下面に開口するエア路90が形成されており、これと連通する吸引機能部91(例えば、真空ポンプ)によって、上型チェイスブロック30下面側に負圧吸引力を及ぼし、この負圧吸引力によってワークWが上型チェイスブロック30下面側に吸着保持される。
【0110】
下型12は、第1下型チェイスブロック40Aと、第2下型チェイスブロック40Bと、下型キャビティブロック32Aと、下型クランパブロック41とを備え、第1下型チェイスブロック40Aと下型キャビティブロック32Aとはボルト92で一体化され、これらは第2下型チェイスブロック40Bと一体に組み付けられている。下型クランパブロック41は、その貫通孔41a内において下型キャビティブロック32Aを囲んで上下動可能に、スプリング93によって第2下型チェイスブロック40Bに弾床されている。
【0111】
具体的には、スプリング93が、下型クランパブロック41下面に固定されたボルト94の頭部94aと第2下型チェイスブロック40Bとの間に弾装され、頭部32aが第1下型チェイスブロック40A下面に当接することによって、下型クランパブロック41の上動が規制され、下型クランパブロック41の下面が第1下型チェイスブロック40Aの上面に当接することによって下型クランパブロック41の下降が規制される。
【0112】
キャビティ16は、上型11、下型12がスプリング93の付勢力に抗して下型クランパブロック41を押圧しつつ型閉じされた際、下型キャビティブロック32Aの上面、下型クランパブロック41の貫通孔41aの壁面、および基板101の下面で囲まれて形成される空間である。そして、キャビティ16内に供給される樹脂Rを上型11および下型12によって圧縮して、上型チェイスブロック30の下面に保持され、キャビティ16にセットされたワークWを樹脂モールドするようになっている。
【0113】
下型クランパブロック41上面に、キャビティ16内のエアをチャンバ70外に逃がすエアベント19を構成するエアベント溝が形成されている。エアベント19が位置する部位には、下型クランパブロック41を上下に貫通する貫通孔41cが形成されている。この貫通孔41cにエアベントピン51が上下動自在にその一端部がエアベント19に向けられて設けられている。エアベントピン51は、上動してその上端がリリースフィルム35を介してワークWに当接した際は、エアベント19を閉止し(閉じ)、下降した際はエアベント19を開放するようになっている。
【0114】
エアベントピン51の下端にはフランジ51aが設けられ、このフランジ51a下面と第2下型チェイスブロック40Bとの間に、閉止スプリング95が弾装され、フランジ51a上面と第1下型チェイスブロック40Aとの間に、閉止スプリング95よりもスプリング力の弱いリターンスプリング96が弾装されている。リターンスプリング96は、エアベントピン51を型開き時に当初位置に戻すことを目的として設けている。エアベントピン51は、閉止スプリング95からの力とリターンスプリング96からの力とが釣り合った位置で静止しており、常時(通常時)はこの位置で、エアベント19を開放する位置にある。
【0115】
本実施の形態では、キャビティ16内およびその周辺の下型クランパブロック41上面に、リリースフィルム35が配置された状態で樹脂Rの圧縮成形がなされる。リリースフィルム35とキャビティ16の底面との間は、吸引機能部97によりエアが吸引され、これによりリリースフィルム35がキャビティ16底面に密着した状態で圧縮成形がなされる。
【0116】
また、樹脂モールド金型10Dは、型閉じによって一対の金型(上型11および下型12)を内包するように密閉されるチャンバ70と、チャンバ70外に設けられ、チャンバ70内のエアを排出する機能(例えば、真空ポンプ)を有するチャンバ内圧調節部74とを備えている。
【0117】
本実施形態におけるチャンバ70は、対向する一対のベース(板状の上型ベース71および下型ベース72)と、上型ベース71の下面に固定して組み付けられた筒状部材77Aと、筒状部材77Aの外周面で摺動するように、上型ベース71の下面にスプリング78を介して組み付けられた筒状部材77Bと、筒状部材77Aの外周面と筒状部材77Bの内周面との間に設けられたシール部79とを備えている。
【0118】
また、本実施形態におけるチャンバ70は、筒状部材77Bの下端面に設けられ、これらで囲まれた空間を気密するベースシール部73を備えている。このベースシール部73は、上型11および下型12を型閉じすることによって、ワークWがクランプされる際には、筒状部材77Bの下端面と、下型ベース72の上面とで押し潰される。これによって、上型ベース71と下型ベース72との間で形成される空間内を気密することができる。
【0119】
また、樹脂モールド金型10Dは、キャビティ16と連通してチャンバ70外に設けられ、キャビティ16内のエアを排出する機能(例えば、真空ポンプ)を有するキャビティ内圧調節部81を備えている。本実施形態では、一対の金型(上型11および下型12)において、キャビティ16、エアベント19の順で連通される連通路と、キャビティ内圧調節部81とが接続されている。エアベント19は、下型クランパブロック31Aの上面に刻設されたエアベント溝と、基板101の下面とで形成される空間である。
【0120】
このような樹脂モールド金型10Dにおいても、前記実施形態1と同様の作用効果を得ることができ、キャビティ16内の減圧到達度の実効性を高めることができる。
【0121】
また、樹脂モールド金型10Dを用いて、圧縮方式の樹脂モールド成形をすることができる。具体的には、まず、上型11および下型12が型開きされた状態において、上型11にワークWを吸着させると共に、下型12のパーティング面にリリースフィルム35を張設して樹脂Rを供給する。また、キャビティ内圧調節部81およびチャンバ内圧調節部74を作動させて、キャビティ16内を減圧できる状態としておく。
【0122】
次いで、上型11を下動させて上型11、上型12同士を接近させることで、下型クランパブロック41の上面を基板101の下面(上型チェイスブロック30の下面)にリリースフィルム35を介して当接させて型閉じを行い、ワークWをクランプする。なお、この段階では、エアベント19はエアベントピン51によってほとんど閉じられていない。
【0123】
次いで、上型11、下型12が、スプリング93の付勢力に抗してさらに型閉じされた段階では、下型クランパブロック41がエアベントピン51の他端部に対して相対的に接近する方向に移動して(エアベントピン51が上動して)、エアベントピン51の一端部が下型クランパブロック41のパーティング面を通過して上型11側に接近することとなる。
【0124】
これにより、エアベントピン51がリリースフィルム35に緩く当接した状態となる。エアベントピン51は、閉止スプリング95を介して第2下型チェイスブロック40Bに押動させられており、上下からリターンスプリング96および閉止スプリング95によって受けられているので、リリースフィルム35に弾性的に当接し、リリースフィルム35を突き破るようなことはない。なお、この段階でも、エアベントピン51がリリースフィルム35を介してワークWに緩く当接している状態であるから、キャビティ16内のエアは、エアベント19あるいはリリースフィルム35とワークWとの間より外部に排出可能である。
【0125】
次いで、上型11、下型12が、スプリング93の付勢力に抗してさらに強く型閉じされた最終段階では、下型クランパブロック41がエアベントピン51に対してさらに相対的に接近する方向に移動し、エアベントピン51が閉止スプリング95の作用によりリリースフィルム35を介してワークWに強く当接した状態となる。
【0126】
これにより、エアベントピン51はその一端部が強い押圧力でエアベント19側により突出することになりエアベント19を完全に閉止し(閉じ)、また、下型クランパブロック41もリリースフィルム35をワークW下面に強く押圧する状態となるから、キャビティ16は完全に密閉される状態となり、圧縮成形圧がキャビティ16内に及び、樹脂Rを圧縮した状態で熱硬化させることによって圧縮成形が完了する。本実施形態では、キャビティ16内の減圧到達度の実効性を高めることができるので、樹脂充填性が向上し、成形品にボイドが発生するのを防止することができる。
【0127】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、例えば前記実施形態5では下キャビティ機構を例に記載したが上キャビティ機構であってもよい。このように本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0128】
前記実施形態では、一対の金型(上型および下型)の外側の一対のベースからチャンバを構成し、一対のベースで形成される空間を減圧する場合について説明した。必ずしも一対のベースからチャンバを構成する必要はなく、例えば、一対の金型およびこれが組み付けられる一対のベース全体を内包するチャンバを構成することもできる。