(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位置情報取得制御部は、前記呼吸信号のピーク位置のタイミングから予測する、前記照射対象のピーク位置のタイミングで、前記照射対象位置情報取得装置に前記照射対象の位置を示す情報を取得させる、請求項1に記載のモデル生成装置。
前記位置情報取得制御部は、前記照射対象位置情報取得装置に前記照射対象の位置を示す情報を取得させてから所定時間、次の前記照射対象の位置を示す情報の取得を抑制する、請求項1から4のいずれか一項に記載のモデル生成装置。
前記位置情報取得制御部は、前記呼吸信号のピーク位置のタイミングに応じた所定の時間範囲で、前記照射対象位置情報取得装置に前記照射対象の位置を示す情報を取得させる、請求項1に記載のモデル生成装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の一実施形態における放射線治療システムの機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、放射線治療システム1は、治療計画装置11と、放射線治療装置制御装置12と、放射線治療装置13とを具備する。
【0017】
放射線治療システム1は、放射線治療を行うためのシステムである。具体的には、放射線治療システム1は、放射線(治療用放射線)を照射する。放射線治療システム1が照射する治療用放射線は、X線などの電磁波であってもよいし、重粒子線または陽子線などの粒子線であってもよい。
特に、放射線治療システム1は、追尾照射によって放射線照射を行う。ここでいう追尾照射とは、呼吸などにより移動する照射対象の位置情報をリアルタイムに取得し、照射対象に放射線を連続照射するように放射線治療装置を制御する方法である。また、ここでいう照射対象は、腫瘍など、患者の体内において治療用放射線照射のターゲットとなる部分である。
【0018】
治療計画装置11は、放射線治療システム1が治療用放射線を照射するための治療計画を生成する。ここでいう治療計画は、放射線治療装置制御装置12が放射線治療装置13に対して行う制御の内容を示す情報である。具体的には、放射線治療システム1が生成する治療計画は、どのように放射線治療装置13を動作させて治療用放射線の照射を行わせるかの計画を示す。
【0019】
放射線治療装置制御装置12は、治療計画装置11が生成する治療計画に従って放射線治療装置13を制御し、追尾照射による治療用放射線の照射を行わせる。放射線治療装置制御装置12は、例えばコンピュータを含んで構成される。特に、放射線治療装置制御装置12は、呼吸信号と放射線の照射対象の位置との関係を示すモデルを生成し、当該モデルを用いて照射対象の位置を検出して、放射線治療装置の制御を行う。
放射線治療装置13は、放射線治療装置制御装置12の制御に従って、治療用放射線の照射を実行する。
【0020】
図2は、放射線治療装置13の装置構成を示す概略構成図である。同図において、放射線治療装置13は、旋回駆動装置311と、Oリング312と、走行ガントリ313と、首振り機構(ジンバル(Gimbal)機構)321と、照射部330と、センサアレイ351、361および362と、カウチ381とを具備する。照射部330は、放射線照射装置331と、マルチリーフコリメータ(Multi Leaf Collimator;MLC)332と、撮像用放射線源341および342と、赤外線(Infrared;IR)カメラ391とを具備する。
【0021】
旋回駆動装置311は、回転軸A11を中心に回転可能にOリング312を土台に支持し、放射線治療装置制御装置12の制御に従ってOリング312を回転させる。回転軸A11は、鉛直方向の軸である。
Oリング312は、回転軸A12を中心とするリング状に形成され、回転軸A12を中心に回転可能に走行ガントリ313を支持している。回転軸A12は、カウチ381の長手方向の軸である。また、回転軸A12は、水平方向の軸(すなわち、鉛直方向に直角な軸)であり、アイソセンタP11にて回転軸A11と直交する。回転軸A12は、Oリング312に対して固定されている。すなわち、回転軸A12は、Oリング312の回転に伴って回転軸A11を中心に回転する。
【0022】
走行ガントリ313は、回転軸A12を中心とするリング状に形成され、Oリング312の内側にOリング312と同心円になるように配置されている。放射線治療装置13は、さらに、図示されていない走行駆動装置を備えており、走行ガントリ313は、走行駆動装置からの動力にて回転軸A12を中心に回転する。
走行ガントリ313は、自らが回転することで、撮像用放射線源341およびセンサアレイ361や撮像用放射線源342およびセンサアレイ362など、走行ガントリ313に設置されている各部を一体的に回転させる。
【0023】
首振り機構321は、走行ガントリ313のリングの内側に固定され、照射部330を走行ガントリ313に支持している。首振り機構321は、照射部330を向き変更可能に支持しており、放射線治療装置制御装置12の制御に従って照射部330の向きを変化させる。具体的には、首振り機構321は、回転軸A12に平行なパン軸A21を中心に照射部330を回転させる。また、首振り機構321は、パン軸A21に直交するチルト軸A22を中心に照射部330を回転させる。
【0024】
照射部330は、走行ガントリ313の内側に、首振り機構321に支持されて配置されており、治療用放射線や撮像用放射線を照射する。
放射線照射装置331は、放射線治療装置制御装置12の制御に従って、患者T11の患部へ向けて治療用放射線を照射する。
マルチリーフコリメータ332は、放射線治療装置制御装置12の制御に従ってリーフの開閉を行うことで、治療用放射線の一部または全部を遮蔽する。これにより、マルチリーフコリメータ332は、治療用放射線が患者T11に照射される際の照射野を調整する。
【0025】
撮像用放射線源341は、放射線治療装置制御装置12の制御に従って、センサアレイ361へ向けて撮像用放射線(X線)を照射する。撮像用放射線源342は、放射線治療装置制御装置12の制御に従って、センサアレイ362へ向けて撮像用放射線を照射する。撮像用放射線源341と342とは、照射する放射線が直交する向きで照射部330(例えばマルチリーフコリメータ332の筐体)に固定されている。
【0026】
センサアレイ351は、放射線照射装置331からの治療用放射線が当たる位置に、放射線照射装置331の方を向いて配置されて、走行ガントリ313のリングの内側に固定されている。センサアレイ351は、患者T11等を透過した治療用放射線を、照射位置の確認や治療の記録用に受光する。なお、ここでいう受光とは、放射線を受けることである。
【0027】
センサアレイ361は、撮像用放射線源341からの撮像用放射線が当たる位置に、撮像用放射線源341の方を向いて配置されて、走行ガントリ313のリングの内側に固定されている。センサアレイ361は、撮像用放射線源341から照射されて患者T11等を透過した撮像用放射線を、患部位置特定用に受光する。
センサアレイ361が、撮像用放射線源341からの撮像用放射線を受光することで、放射線画像が得られる。
【0028】
センサアレイ362は、撮像用放射線源342からの撮像用放射線が当たる位置に、撮像用放射線源342の方を向いて配置されて、走行ガントリ313のリングの内側に固定されている。センサアレイ362は、撮像用放射線源342から照射されて患者T11等を透過した撮像用放射線を、患部位置特定用に受光する。
センサアレイ362が、撮像用放射線源342からの撮像用放射線を受光することで、放射線画像が得られる。特に、撮像用放射線源342とセンサアレイ362との組み合わせにより、撮像用放射線源341とセンサアレイ361との組み合わせとは異なる方向からの放射線画像が得られる。
【0029】
撮像用放射線源341とセンサアレイ361との組み合わせや、撮像用放射線源342とセンサアレイ362との組み合わせにより、動体追尾照射のためのモデルを生成する際、照射対象の位置を示す情報が得られる。具体的には、撮像用放射線源341とセンサアレイ361との組み合わせや、撮像用放射線源342とセンサアレイ362との組み合わせにて照射対象の透視画像を撮像することで、照射対象の三次元の位置情報が得られる。撮像用放射線源341とセンサアレイ361との組み合わせ、および、撮像用放射線源342とセンサアレイ362との組み合わせは、照射対象位置情報取得装置の一例に該当する。
【0030】
但し、照射対象位置情報取得装置の構成は、撮像用放射線源341とセンサアレイ361との組み合わせ、および、撮像用放射線源342とセンサアレイ362との組み合わせに限らず、照射対象の位置情報を取得可能な様々な構成とすることができる。例えば、照射対象位置情報取得装置として、位置情報を出力する測位装置を、照射対象の近傍に埋め込むようにしてもよい。
【0031】
カウチ381は、患者T11が横臥することに利用されて当該患者T11を支持する。カウチ381は、長手方向が回転軸A12の方向を向くように設置されている。そして、カウチ381は、長手方向を回転軸A12の方向に向けたまま様々な方向に移動可能である。
【0032】
赤外線(infrared;IR)カメラ391は、赤外線を受光して赤外線画像を撮像する。特に、赤外線カメラ391は、カウチ381に横臥する患者T11に向けて設置される。そして、赤外線カメラ391は、患者T11の患部付近の体表面に設けられた赤外線マーカを撮像して、当該赤外線マーカの位置情報をリアルタイムで取得する。特に、赤外線カメラ391は、時刻情報と対応付けて、当該時刻における赤外線マーカの位置情報を取得する。
【0033】
図3は、赤外線カメラ391が撮像する赤外線マーカの配置例を示す説明図である。同図の例では、患者T11の腹部表面に赤外線マーカM11が設けられている。赤外線マーカM11は、患者T11の呼吸に同期して周期的に動いており、赤外線カメラ391が赤外線マーカM11を撮像して得られる位置情報は、呼吸に同期して発生する信号である呼吸信号の一例に該当する。
【0034】
治療用放射線の照射時には、赤外線カメラ391が赤外線マーカM11を撮像して得られる呼吸信号に基づいて、放射線治療装置制御装置12がリアルタイムで照射対象の位置を算出し、治療用放射線が照射対象に向けて照射されるように首振り機構321を制御する。
【0035】
また、呼吸信号と照射対象の位置との関係を示すモデルを生成する際は、赤外線カメラ391が赤外線マーカM11を撮像し、撮像用放射線源341とセンサアレイ361との組み合わせ、および、撮像用放射線源342とセンサアレイ362との組み合わせにて対象部位の位置情報を取得する。これにより、呼吸信号と照射対象の位置との関係が示され、モデルの生成が可能になる。
【0036】
図4は、放射線治療装置制御装置12の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、放射線治療装置制御装置12は、通信部210と、記憶部220と、処理部230とを具備する。記憶部220は、基準モデル記憶部221と、テンプレート記憶部222とを具備する。処理部230は、位置情報取得制御部231と、モデル生成部232とを具備する。モデル生成部232は、位置履歴情報生成部233と、パラメータ設定部234とを具備する。
【0037】
通信部210は、治療計画装置11(
図1)や放射線治療装置13と通信を行う。特に、通信部210は、治療計画装置11から治療計画を取得する。また、通信部210は、放射線治療装置13から、赤外線カメラ391が赤外線マーカM11を撮像して得られる呼吸信号や、撮像用放射線源341とセンサアレイ361との組み合わせ、および、撮像用放射線源342とセンサアレイ362との組み合わせにて撮像する照射対象の透視画像を取得する。
通信部210は、呼吸信号取得部の一例に該当する。
【0038】
記憶部220は、放射線治療装置制御装置12の具備する記憶デバイスを用いて構成され、各種情報を記憶する。
基準モデル記憶部221は、周期的に移動する照射対象の動きの基準モデルを記憶する。基準モデル記憶部221が記憶する基準モデルは、照射対象の透視画像から得られる照射対象の位置情報を時間方向に補間するために用いられる。当該補間により、照射対象の撮像頻度を減らして正常部位の被ばく量を低減させることができ、かつ、モデル生成部232は、照射対象位置モデルを、より高精度に生成することができる。ここでいう照射対象位置モデルは、呼吸信号と照射対象の位置との関係を示すモデルである。
【0039】
図5は、基準モデル記憶部221が記憶する基準モデルの例を示す説明図である。同図のグラフの横軸は時刻を示し、縦軸は振幅を示す。
基準モデル記憶部221は、呼吸の1周期分の基準モデルを、吸気時における基準とモデルと呼気時における基準モデルとに分けて記憶している。これにより、容易に、吸気時と呼気時とで異なる倍率で基準モデルを拡大または縮小でき、周期毎に振幅が異なる場合に容易に対応し得る。
【0040】
基準モデルは、照射対象の位置の測定値から、1周期分を抽出することで得られる。
図6は、照射対象の取得例を示す説明図である。同図のグラフの横軸は時刻を示し、縦軸は振幅を示す。
同図において、呼吸信号を示す上側のグラフと、照射対象の位置を示す下側のグラフとが、時刻を揃えて示されている。線L211は、呼吸信号を示す。線L221は、照射対象の左右方向の動きを示す。線L222は、照射対象の背腹方向の動きを示す。線L223は、照射対象の頭尾方向の動きを示す。
【0041】
基準モデルの取得は、放射線治療装置制御装置12が自動で行うようにしてもよいし、人手で行うようにしてもよい。
まず、呼吸信号のピーク位置(極大の位置または極小の位置)を検出する。通常、人間の呼吸は平均4秒程度であるため、例えば、4秒幅で呼吸信号が最大となる位置または最小となる位置を検出する。
図6の例では、呼吸信号が極小となる点P21〜P29が抽出されている。
【0042】
次に、検出したピーク位置間の各々について周期を求める。
図6の例では、点P21から点P22までの時間、点P22から点P23までの時間、点P23から点P24までの時間、・・・をそれぞれ算出する。
そして、得られた周期のうち中央値となる周期の区間を選択する。その際、2秒以下や10秒以上など、極端に短い周期や極端に長い周期を除外するようにしてもよい。
図6の例では、点P24からP25までの周期が中央値となっており、時間T21の区間が選択されている。
線L221〜L223の各々について、時間T21の区間で得られる波形を吸気と呼気とに分けて、基準モデルとする。
【0043】
なお、周期の中央値を取るのは、標準的なデータを得るためである。中央値を取る方法に限らず、複数の波形の平均を取る方法や、基準モデルとして何パターン化の波形を予め用意しておき、パターンマッチにて測定値に最もマッチするパターンを選択する方法等を用いるようにしてもよい。
【0044】
図4に戻って、テンプレート記憶部222は、照射対象位置モデルのテンプレートを記憶する。テンプレート記憶部222が記憶するテンプレートのパラメータを設定することで、赤外線マーカM11の位置や変化量(速度および加速度)を入力として、照射対象の位置を出力する照射対象位置モデルが得られる。
【0045】
処理部230は、放射線治療装置制御装置12の各部を制御して各種機能を実行する。処理部230は、例えば、放射線治療装置制御装置12の具備するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が記憶部220からプログラムを読み出して実行することで構成される。
位置情報取得制御部231は、撮像用放射線源341とセンサアレイ361との組み合わせ、および、撮像用放射線源342とセンサアレイ362との組み合わせによる照射対象の透視画像の撮像タイミングを制御する。具体的には、位置情報取得制御部231は、赤外線カメラ391が撮像する赤外線マーカM11の位置がピーク(最も高い位置および最も低い位置)となるタイミングで、撮像を行わせる。このように、位置情報取得制御部231は、照射対象の位置を示す情報を取得する照射対象位置情報取得装置に、呼吸信号の位相にて示される所定のタイミングで、照射対象の位置を示す情報を取得させる。
照射対象の位置のピークを赤外線マーカM11の位置のピークで近似することで、位置情報取得制御部231は、照射対象の位置を求めるために複雑な演算を行う必要がない。この点で、位置情報取得制御部231の負荷を比較的低くすることができる。
【0046】
モデル生成部232は、基準モデルと、呼吸信号と、照射対象の位置を示す情報とに基づいて、呼吸信号と前記照射対象の位置との関係を示す照射対象位置モデルを生成する。
具体的には、まず、位置履歴情報生成部233が、通信部210が取得する照射対象の位置を示す情報に基づいて、吸気時における基準モデルと呼気時における基準モデルとを組み合わせて、照射対象の位置の履歴情報を生成する。
そして、パラメータ設定部234は、位置履歴情報生成部233が生成した照射対象の位置の履歴情報に整合するように、テンプレート記憶部222が記憶している照射対象位置モデルのテンプレートのパラメータを設定する。
【0047】
図7は、位置履歴情報生成部233が取得する照射対象の位置の履歴情報の例を示す説明図である。同図のグラフの横軸は時刻を示し、縦軸は振幅を示す。また、点P11〜P17は、それぞれ、撮像用放射線源341とセンサアレイ361との組み合わせ、および、撮像用放射線源342とセンサアレイ362との組み合わせが照射対象を撮像して得られた、照射対象の位置を示す。位置履歴情報生成部233は、各点間を基準モデルで補間することで、照射対象の位置の履歴情報を取得する。
【0048】
その際、
図5を参照して説明したように、位置履歴情報生成部233は、1周期が吸気と呼気とに分割されている基準モデルを用いる。
図7の例において、位置履歴情報生成部233は、点P31とP32との間を
図5の吸気の基準モデルで補間する。また、点P32とP33との間を
図5の呼気の基準モデルで補間する。
【0049】
基準モデルが吸気と呼気とに分かれていることで、吸気と呼気とを異なる倍率で拡大または縮小することができ、振幅や周期のばらつきに容易に対応し得る。例えば、
図7の例において、点P32から点P33までの振幅よりも、点P33から点P34までの振幅のほうが大きい。そこで、位置履歴情報生成部233は、点P33から点P34までの区間を吸気の基準モデルで補間する際、点P32からP33までの区間の場合よりも振幅が大きくなるように基準モデルを伸縮させて用いる。
【0050】
次に、
図8を参照して、放射線治療システム1における放射線治療の流れについて説明する。
図8は、放射線治療システム1を用いて、同一の患者に対して複数回の追尾照射を実施する際の治療の流れの例を示す説明図である。同図の例において、放射線の照射精度を高めるため、追尾照射を行う前に照射対象位置モデル(呼吸信号から照射対象の位置を得るためのモデル)を毎回生成している。
【0051】
初回の追尾照射(ステップS102)のための、初回の照射対象位置モデルの生成(ステップS101)では、未だ基準モデルが得られていない。この場合は、例えば80ミリ秒(msec)毎など短い時間間隔で照射対象の透視画像を撮像して、照射対象の位置情報の履歴を詳細に得る。ステップS101で詳細なデータを得ることで、
図6を参照して説明したように、基準モデルを得られる。
【0052】
2回目の追尾照射(ステップS104)のための、2回目の照射対象位置モデルの生成(ステップS103)では、基準モデルが得られていることから、
図7を参照して説明したように照射対象の位置のピークが得られれば、基準モデルを用いて補間することができる。従って、照射対象の位置がピークとなるタイミングでのみ照射対象の透視画像を撮像すればよく、撮像回数を大幅に減らすことができる。これにより、正常部位の被ばくを低減させ、かつ、照射対象位置モデルを精度よく得ることができる。
同様に、3回目以降の照射対象位置モデルの生成(ステップS105、・・・)でも、正常部位の被ばくを低減させ、かつ、照射対象位置モデルを精度よく得ることができる。
【0053】
次に
図9を参照して、放射線治療装置制御装置12の動作について説明する。
図9は、放射線治療装置制御装置12が、基準モデルを用いて照射対象位置モデルを取得する処理手順を示すフローチャートである。
同図の処理において、通信部210は、赤外線カメラ391から呼吸信号を取得する(ステップS201)。そして、位置情報取得制御部231は、呼吸信号がピークとなるタイミングか否かを判定する(ステップS202)。呼吸信号がピークとなるタイミングではないと判定した場合(ステップS202:NO)、ステップS201へ戻る。
【0054】
一方、呼吸信号がピークとなるタイミングであると判定した場合(ステップS202:YES)、位置情報取得制御部231は、撮像用放射線源341とセンサアレイ361との組み合わせ、および、撮像用放射線源342とセンサアレイ362との組み合わせに撮像を指示し、照射対象の位置情報を取得する(ステップS203)。
【0055】
そして、位置情報取得制御部231は、所定量のデータ(照射対象位置モデルを精度よく生成することのできる量のデータ)を得られたか否かを判定する(ステップS204)。所定量のデータを得られていないと判定した場合(ステップS204:NO)、ステップS201へ戻る。
一方、所定量のデータを得られたと判定した場合(ステップS204:YES)、位置履歴情報生成部233が、ステップS203で得られた照射対象の位置情報を基準モデルで補間して、照射対象の位置の履歴情報を生成する(ステップS205)。そして、パラメータ設定部234が、テンプレート記憶部222の記憶している照射対象位置モデルのテンプレートのパラメータを、ステップS205で得られた照射対象の位置の履歴情報に整合するように設定することで、照射対象位置モデルを取得する(ステップS206)。
ステップS206の後、
図9の処理を終了する。その後、得られた照射対象位置モデルを用いて追尾照射を行うことができる。
【0056】
次に、
図10を参照して、放射線治療装置制御装置12が生成する照射対象位置モデルの使用例について説明する。
図10は、放射線治療装置制御装置12が行う処理手順で得られた照射対象位置モデルを用いた、照射対象の位置の予測例を示す説明図である。同図のグラフの横軸は時刻を示し、縦軸は振幅を示す。
【0057】
図10において、照射対象の位置の実際値を示す上側のグラフと、上述した処理手順で得られた照射対象位置モデルを用いて算出された照射対象の位置の予測値(計算値)を示す下側のグラフとが、時刻を揃えて示されている。線L411は、照射対象の左右方向の動きの実際値を示す。線L412は、照射対象の背腹方向の動きの実際値を示す。線L413は、照射対象の頭尾方向の動きの実際値を示す。一方、線L421は、照射対象の左右方向の動きの予測値を示す。線L422は、照射対象の背腹方向の動きの予測値を示す。線L423は、照射対象の頭尾方向の動きの予測値を示す。
図10に示すように、実際値と予測値とで、波形、振幅、周期のいずれも類似しており、照射対象位置モデルを精度よく得ることができた。
【0058】
以上のように、基準モデル記憶部221は、周期的に移動する照射対象の動きの基準モデルを記憶する。また、通信部210は、呼吸に同期して発生する信号である呼吸信号を赤外線カメラ391から取得する。また、位置情報取得制御部231は、照射対象の位置を示す情報を取得する照射対象位置情報取得装置(撮像用放射線源341とセンサアレイ361との組み合わせ、および、撮像用放射線源342とセンサアレイ362との組み合わせ)に、呼吸信号ピークのタイミングで、照射対象の位置を示す情報を取得させる。そして、モデル生成部232は、基準モデルと、呼吸信号と、照射対象の位置を示す情報とに基づいて、呼吸信号と照射対象の位置との関係を示す照射対象位置モデルを生成する。
モデル生成部232が、照射対象の位置情報を、基準モデルを用いて補間することで、照射対象の位置情報の取得回数を低減し、かつ、より精度の高い照射対象位置モデルを生成することができる。これにより、正常部位の透視画像の撮像回数を減らして、正常部位の被ばく量を低減させることができる。また、照射対象位置情報取得装置の負荷を低減させることができる。
【0059】
なお、放射線治療装置制御装置12は、基準モデル記憶部221と、通信部210と、位置情報取得制御部231と、モデル生成部232とを具備しており、モデル生成装置の一例に該当する。
但し、モデル生成装置は、放射線治療装置制御装置12の一部として構成される態様に限らず、単体の装置として構成される、あるいは、CT(Computed Tomography)装置の一部として構成されるなど、様々な態様で構成可能である。
【0060】
また、基準モデル記憶部221は、吸気時における基準モデルと、呼気時における基準モデルとを記憶する。そして、位置履歴情報生成部233は、通信部210が取得する照射対象の位置を示す情報(照射対象の透視画像)に基づいて、吸気時における基準モデルと呼気時における基準モデルとを組み合わせて、照射対象の位置の履歴情報を生成する。そして、パラメータ設定部234は、照射対象の位置の履歴情報に基づいて、照射対象位置モデルのパラメータを設定する。
このように、位置履歴情報生成部233が、呼気時と吸気時とに分割された基準モデルを用いることで、呼気と吸気とを異なる倍率で拡大・縮小することができる。これにより、位置履歴情報生成部233は、照射対象の位置情報における振幅や周期にばらつきがある場合でも容易に照射対象の位置の履歴情報を生成できる。
【0061】
なお、以上では、位置情報取得制御部231が、呼吸信号のピーク位置のタイミングで、照射対象位置情報取得装置(撮像用放射線源341とセンサアレイ361との組み合わせ、および、撮像用放射線源342とセンサアレイ362との組み合わせ)に照射対象の位置を示す情報を取得させる場合を例に説明した。この場合、位置情報取得制御部231は、呼吸信号のピーク位置を検出するという比較的簡単な処理で、照射対象の位置を示す情報を取得するタイミングを検出することができる。この点において、位置情報取得制御部231の負荷の増加を回避することができる。
【0062】
一方、位置情報取得制御部231が、照射対象の位置を示す情報を取得するタイミングを検出する方法は、呼吸信号のピーク位置のタイミングを検出する方法に限らない。例えば、位置情報取得制御部231が、呼吸信号のピーク位置のタイミングから予測する、照射対象のピーク位置のタイミングで、照射対象位置情報取得装置に照射対象の位置を示す情報を取得させるようにしてもよい。例えば、位置情報取得制御部231は、呼吸信号のピーク位置のタイミングと、照射対象のピーク位置のタイミングとのオフセットを予め記憶しておき、呼吸信号のピーク位置のタイミングからオフセット分を増減したタイミングで、照射対象位置情報取得装置に照射対象の位置を示す情報を取得させる。
これにより、放射線治療装置制御装置12は、照射対象のピーク位置のタイミングおよび振幅を、より正確に得ることができる。
【0063】
また、位置情報取得制御部231が、照射対象位置情報取得装置に照射対象の位置を示す情報を取得させてから所定時間、次の照射対象の位置を示す情報の取得を抑制するようにしてもよい。
これにより、照射対象の位置がピーク付近でふらついた場合など、近接する極値(極大値または極小値)が存在する場合に、これら近接する極値の両方を検出することで、ピークの周期を誤検出してしまうことを回避し得る。
【0064】
あるいは、位置情報取得制御部231が、呼吸信号のピーク位置のタイミングに応じた所定の時間範囲で、照射対象位置情報取得装置に照射対象の位置を示す情報を取得させるようにしてもよい。
これにより、呼吸信号のピーク位置のタイミングと、照射対象のピーク位置のタイミングとのオフセットが一定でない場合や不明な場合でも、照射対象のピーク位置のタイミングおよび振幅を、より正確に得ることができる。また、所定の時間範囲以外の時間は、照射対象位置情報取得装置による照射対象の位置を示す情報の取得を抑制して、正常部位の被ばく量を低減させることができ、また、照射対象位置情報取得装置の負荷を低減させることができる。
【0065】
なお、放射線治療装置制御装置12の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。