(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理気体は、前記基板の前記表面上の前記昇華対象物質の凝固体表面における、前記昇華対象物質の蒸気圧よりも前記昇華対象物質の分圧が小さい、前記昇華対象物質の気体を含む混合気体である請求項1に記載の基板処理方法。
前記処理気体は、前記基板の前記表面上の前記昇華対象物質の凝固体表面における、前記昇華対象物質の蒸気圧に対する前記混合気体中の前記昇華対象物質の分圧の割合が、前記液体の蒸気圧に対する前記液体の分圧の割合よりも大きい請求項2に記載の基板処理方法。
前記処理気体は、前記基板の前記表面上の前記昇華対象物質の凝固体表面における、前記昇華対象物質の蒸気圧に対する前記昇華対象物質の分圧の比の値が1未満である請求項2または3に記載の基板処理方法。
前記除去工程は、前記基板の前記表面上の前記昇華対象物質の凝固体表面における、前記昇華対象物質の蒸気圧に対する前記昇華対象物質の分圧の比の値が1以上である処理気体を供給した後、前記処理気体の前記昇華対象物質の蒸気圧に対する前記昇華対象物質の分圧の比の値を減少させる請求項1に記載の基板処理方法。
前記昇華対象物質は、ターシャリーブタノール、パラジクロロベンゼン、ナフタレンおよびL−メントールのうち少なくとも一種類の物質を含む請求項1ないし13のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2の装置では、液状のターシャリーブタノールを基板表面に供給してDIWを置換し、その後冷却することによりターシャリーブタノールを凝固させ、基板表面に窒素ガスを供給して昇華させることにより、基板表面を乾燥する。
【0006】
この、液状のターシャリーブタノールによりDIWを置換する工程において、完全にDIWとターシャリーブタノールを置換できるとは限らず、基板表面に液状のターシャリーブタノールを供給した後でも、DIWが基板表面あるいはターシャリーブタノールの液中に残留する可能性も否定出来ない。
【0007】
DIWが基板表面あるいはターシャリーブタノールの液中に残留したまま上記の昇華乾燥工程が行われると、ターシャリーブタノールの昇華とともにDIWも気化するものの、完全に除去することができず、基板表面にDIWが残留する可能性がある。このような場合、その後パターン間のDIWが気化するにつれてDIWの表面張力がパターンに作用し、パターンの倒壊が発生することとなる。従って、ターシャリーブタノールの昇華が完了するまでに基板表面やターシャリーブタノール内に残留するDIWを可能な限り除去し、よりパターン倒壊の可能性を低くできるプロセスを確立する必要があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板上のターシャリーブタノール等の昇華対象物質を昇華させて基板を乾燥させる基板処理方法および装置において、昇華対象物質の昇華工程中に、基板表面や昇華対象物質内に残留するDIW等のリンス液を低減し、基板のパターン倒壊の発生を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる基板処理方法は、上記目的を達成するために、パターンが形成され、液体が付着した基板に昇華対象物質を供給し、基板上の液体と昇華対象物質を混合する供給工程と、基板上の昇華対象物質を凝固し、基板上に昇華対象物質の凝固体を形成する凝固工程と、基板上の凝固体に対し、昇華対象物質の気体を含む処理気体を供給し、昇華対象物質を昇華させると同時に、凝固体に含まれる液体を気化する除去工程とを備える。
【0010】
また、本発明にかかる基板処理装置は、上記目的を達成するために、パターンが形成され、液体が付着した基板に昇華対象物質を供給し、基板上の液体と昇華対象物質を混合する供給手段と、基板上の昇華対象物質を凝固し、基板上に昇華対象物質の凝固体を形成する凝固手段と、基板上の凝固体に対し、昇華対象物質の気体を含む処理気体を供給し、昇華対象物質を昇華させると同時に、凝固体に含まれる液体を気化する除去手段とを備える。
【0011】
このように構成された本発明(基板処理方法、基板処理装置)では、パターンを有する基板の表面において液体と相互に混合しつつパターンを覆う昇華対象物質を凝固させることで、基板表面上に昇華対象物質の凝固体が形成される(凝固工程、凝固手段)。この際、基板の表面において、液体は昇華対象物質と相互に混合しており、ある程度分散している。従って、昇華対象物質を凝固することで得られる昇華対象物質の凝固体中において、液体はある程度分散した状態で存在する。こうして液体が分散された固体に対して、液体の気化および昇華対象物質の昇華が実行される(除去工程、除去手段)。この際、昇華対象物質は昇華によって固体から直接気体となるため、基板のパターンへ表面張力を及ぼすことがない。また、液体は、塊ではなく分散した状態から気化するため、基板のパターンに大きな表面張力を及ぼすことはない。
【0012】
また本発明では、昇華対象物質の凝固体に対して昇華対象物質の気体を含む処理気体を供給している。昇華対象物質の凝固体に対して昇華対象物質の気体を含む処理気体を供給することで、固体からの昇華対象物質の昇華を緩やかにあるいは一時的に停止させることができるため、同時に進行する液体の気化を相対的に促進して、昇華対象物質の昇華が完了した時点で基板に残留する液体を低減できる。その結果、基板のパターン倒壊の発生を抑えることが可能となっている。
【0013】
また、処理気体は、基板の表面上の昇華対象物質の凝固体表面における、昇華対象物質の蒸気圧よりも昇華対象物質の分圧が小さい、昇華対象物質の気体を含む混合気体とすることもできる。このように構成された発明では、昇華対象物質の凝固体からの昇華対象物質の昇華を抑制しつつ、同時に進行する液体の気化をより促進することができる。その結果、昇華対象物質の昇華が完了した時点で基板に残留する液体を確実に低減して、基板のパターン倒壊の発生を効果的に抑制することが可能となっている。
【0014】
また、処理気体は、基板の表面上の昇華対象物質の凝固体表面における、昇華対象物質の蒸気圧に対する処理気体中の昇華対象物質の分圧の割合が、液体の蒸気圧に対する液体の分圧の割合よりも大きくすることもできる。このように構成された発明では、昇華対象物質の凝固体からの昇華対象物質の昇華を抑制しつつ、同時に進行する液体の気化をより促進することができる。その結果、昇華対象物質の昇華が完了した時点で基板に残留する液体を確実に低減して、基板のパターン倒壊の発生を効果的に抑制することが可能となっている。
【0015】
また、処理気体は、基板の表面上の昇華対象物質の凝固体表面における、昇華対象物質の蒸気圧に対する昇華対象物質の分圧の比の値を1未満とすることもできる。このように構成された発明では、処理気体中の昇華対象物質が凝結あるいは気体から固体へ昇華することを抑制でき、基板の乾燥時間の短縮に資する。
【0016】
また、処理気体は、昇華対象物質に対して不活性な気体を含ませることもできる。このように構成された発明では、処理気体中で昇華対象物質と気体が反応することを防止することができる。不活性な気体として、窒素ガス、ヘリウムガスおよびアルゴンガスのうち少なくとも一種類の気体を含ませることができる。
【0017】
また、処理気体における昇華対象物質の分圧は、0kPaより大きく7kPa以下とすることができる。このように構成された発明では、除去行程中に、昇華対象物質の昇華をある程度確保でき、基板の乾燥時間の短縮を図ることができる。
【0018】
また、除去工程は、基板の表面上の昇華対象物質の凝固体表面における、昇華対象物質の蒸気圧に対する昇華対象物質の分圧の比の値が1以上である処理気体を供給した後、処理気体の昇華対象物質の蒸気圧に対する昇華対象物質の分圧の比の値を減少させる事もできる。このように構成された発明では、まず、昇華対象物質の蒸気圧に対する昇華対象物質の分圧の比の値が1以上である気体が供給される。これにより、昇華対象物質の凝固体からの昇華対象物質の昇華は停止あるいは殆ど停止する。従って、同時に進行する液体の気化が相対的により効率的に行われる。
【0019】
その後、昇華対象物質の凝固体の表面における昇華対象物質の蒸気圧に対する昇華対象物質の分圧の比の値が減少される。これにより、昇華対象物質の凝固体からの昇華対象物質の昇華が進行する。従って、昇華対象物質の凝固体表面から液体を効率的に除去し、昇華対象物質の昇華が完了した時点で基板に残留する水を確実に低減して、基板のパターン倒壊の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0020】
また、パターンが昇華対象物質の凝固体から露出しない範囲で昇華対象物質を昇華させる膜厚減少工程を更に備え、膜厚減少工程で昇華対象物質を昇華させる速度は、除去工程で昇華対象物質を昇華させる速度よりも速くすることもできる。このように構成された発明では、少なくともパターンが昇華対象物質の凝固体から露出するまでは、パターンが埋もれているため、パターンが凝固体に支持される状態が維持される。従って、昇華対象物質の昇華を速めても支障がない。従って、膜厚減少工程を実行し、パターンが昇華対象物質の凝固体から露出しない範囲で昇華対象物質の昇華を比較的速やかに進めることで、パターン倒壊を抑制しつつ基板の乾燥時間の短縮を図ることができる。
【0021】
また、供給工程は、融解した昇華対象物質を基板の表面に供給することで、昇華対象物質を液体の状態で基板の表面に供給し、凝固工程は、昇華対象物質の凝固点よりも低温に冷却することで昇華対象物質を凝固させることもできる。このように構成された発明では、昇華対象物質と液体の混合を容易に行うことができ、また、冷却するのみで昇華対象物質の凝固体を容易に形成することができる。
【0022】
また、昇華対象物質の凝固点は、常圧下において摂氏0度よりも高温とすることもでき、昇華対象物質の融点は、常圧下において摂氏100度より低温とすることもできる。このように構成された発明では、全ての処理を周囲の環境と同じ条件下で実施できるため、断熱や加圧・減圧のための設備を必要とせず、簡易な構成で処理を実施することができる。尚、昇華対象物質として、例えば、ターシャリーブタノール、パラジクロロベンゼン、ナフタレンおよびL−メントールのうち少なくとも一種類の物質を含むことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、基板に付着する昇華対象物質を昇華させて基板を乾燥させる基板処理方法および装置において、昇華対象物質の昇華が完了した時点で基板に残留する液体を低減して、基板のパターン倒壊の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の説明において、基板とは、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板をいう。
【0026】
以下の説明において、一方主面のみに回路パターン等(以下「パターン」と称する)が形成されている基板を例として用いる。ここで、パターンが形成されている主面を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた基板の面を「下面」と称し、上方に向けられた基板の面を「上面」と称する。尚、以下においては上面を表面として説明する。
【0027】
また、「昇華」とは、固相から直接気相へ相転移する現象を表すものとし、「気相から固相への昇華」は気相から直接固相へ相転移する現象を表すものとする。また、「気化」の用語には昇華も含むこととする。
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、半導体基板の処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明する。尚、本発明は、半導体基板の処理に限らず、液晶表示器用のガラス基板などの各種の基板の処理にも適用することができる。
<第1実施形態>
【0029】
図1は、本発明にかかる基板処理装置を模式的に示す図である。
図2は
図1の基板処理装置の電気的構成を模式的に示すブロック図である。この基板処理装置1は半導体ウエハ等の基板Wの表面WfにDIWを供給してリンス処理を行った後、基板Wを昇華乾燥により乾燥する枚葉式の基板処理装置である。
【0030】
基板処理装置1は、基板Wに対して処理を施す処理空間8をその内部に有する処理チャンバー10と、装置全体を制御する制御ユニット4とを備えている。また、処理チャンバー10内は、基板Wの表面Wfを上方に向けて略水平姿勢に保持した状態で、基板Wを回転させるスピンチャック2と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液体を吐出する吐出ノズル3と、スピンチャック2の上方から、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに対向して配置される遮断部材9とを備えている。
【0031】
スピンチャック2の中心軸21の上端部には、円板状のスピンベース23がネジなどの締結部品によって固定されている。この中心軸21はモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じてチャック回転機構22が駆動されると、中心軸21に固定されたスピンベース23が回転中心A0を中心に回転する。
【0032】
スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を保持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円盤状の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。各チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部(図示せず)と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部(図示せず)とを備えている。各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0033】
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、各チャックピン24を解放状態とし、基板Wに対してリンスや乾燥を行う際には、各チャックピン24を押圧状態とする。各チャックピン24を押圧状態とすると、各チャックピン24は基板Wの周縁部を保持して、基板Wがスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持されることとなる。これにより、基板Wは、その表面Wfを上方に向け、その裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。尚、基板Wの表面Wfには微細なパターンが形成されており、表面Wfがパターン形成面となっている。
【0034】
吐出ノズル3は、液体供給ユニット62に接続されており、液体供給ユニット62から供給されるDIWあるいは昇華対象物質であるターシャリーブタノール(ターシャリーブチルアルコール、化学式:C
4H
10O、融点:25.3〜25.6℃(摂氏)、沸点:82.8℃(摂氏)、25℃(摂氏)における水への溶解度:よく溶ける。以下「tert-ブタノール」と記載する)を吐出する。この吐出ノズル3は、旋回移動自在に構成されている。
【0035】
吐出ノズル3をスキャン駆動するための駆動源として、スピンチャック2の周方向外側にノズル駆動用の回転モータ31が設けられている。この回転モータ31には回転軸33が接続され、この回転軸33にはアーム35が水平方向に延びるように接続されており、このアーム35の先端に上記吐出ノズル3が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて回転モータ31が駆動されると、アーム35が吐出ノズル3を伴って回転軸33回りに旋回することとなる。尚、
図1及び
図2の例では、DIW及びtert−ブタノールが共通の吐出ノズル3により供給される。尚、DIW及びtert−ブタノールそれぞれについて吐出ノズルを設けても良い。
【0036】
遮断部材9は、中心部に開口を有する円板状に形成されている。遮断部材9の下面は、基板Wの表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。遮断部材9は略円筒形状を有する支持軸91の下端部に略水平に取り付けられている。この支持軸91は、水平方向に延びるアーム92により保持されている。また、アーム92には、遮断部材昇降機構94が接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接させたり、逆にスピンベース23から離間させたりする。
【0037】
即ち、制御ユニット4は、遮断部材昇降機構94の動作を制御して、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させたり、吐出ノズル3から液体を供給したりする際には、遮断部材9をスピンチャック2の上方の離間位置(
図1に示す位置)に上昇させる。一方、基板Wに対して後述する凝固工程、膜厚減少工程、除去工程、及び再付着防止工程を行う際、遮断部材9をスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで下降させる。
【0038】
支持軸91は中空になっており、その内部にガス供給管95が挿通されるとともに、当該ガス供給管95にガス供給管96が挿通されて、いわゆる二重管構造となっている。ガス供給管95は窒素ガス供給ユニット65に接続されている。窒素ガス供給ユニット65は、tert−ブタノールの凝固点である25℃(摂氏)より低い温度である20℃(摂氏)の窒素ガスを供給する。そして、ガス供給管95の下方端部は遮断部材9の開口に延設されており、その先端から窒素ガスを吐出する。
【0039】
一方、ガス供給管96は、処理気体供給ユニット64に接続されている。処理気体供給ユニット64は、tert−ブタノールの凝固点である25℃(摂氏)より低い20℃(摂氏)であって、tert−ブタノールの蒸気圧に対するtert−ブタノールの分圧の比が0.5(即ち、tert−ブタノールの湿度が50%)となる、tert−ブタノールの気体と窒素ガスの混合気体である処理気体を供給する。そして、ガス供給管96の下方端部は遮断部材9の開口に延設されており、その先端に設けられた吐出ノズル97から処理気体を吐出する。
【0040】
図3は、処理気体供給ユニット64の構成を模式的に示す図である。
図4は、処理気体供給ユニット64内における処理気体の状態変化をtert−ブタノールの蒸気圧曲線Cと対比して示す図である。処理気体供給ユニット64は、tert−ブタノールの液体を貯留する貯留タンク641と、tert−ブタノールの気体と窒素ガスの混合気体を冷却する冷却ユニット642と、冷却された混合気体を加熱する加熱ヒーター647を更に備える。
【0041】
貯留タンク641の内部は、tert−ブタノールの凝固点である25℃(摂氏)よりも高い温度である30℃(摂氏)に維持されている。従って、貯留タンク641の下部には、tert−ブタノールの液体が溜まるとともに、貯留タンク641の上部には、tert−ブタノールの気体が充満する。かかる貯留タンク641には、窒素導入管643及び接続管644が挿入されている。
【0042】
外部のユーティリティ等の窒素ガス供給源から、窒素導入管643を介して貯留タンク641に窒素ガスが供給されると、tert−ブタノールの気体と窒素ガスの混合気体が貯留タンク641から接続管644へ流出する。こうして接続管644へ流出する混合気体は、tert−ブタノールの凝固点より高温である30℃(摂氏)であり、tert−ブタノールの30℃(摂氏)における蒸気圧に対する分圧の比が1.0(即ち、tert−ブタノールの湿度が100%)となるtert−ブタノールの気体を含有しており、
図4における状態Saにある。
【0043】
接続管644は、貯留タンク641と冷却ユニット642とを接続する。貯留タンク641から接続管644へ流出した状態Saの混合気体は、冷却ユニット642に流入する。冷却ユニット642の内部には、螺旋状に巻かれた冷却管645が配置されており、冷却ユニット642の内部は、冷却管645内を流れる冷却DIWによって、tert−ブタノールの凝固点より低い温度である12℃(摂氏)に維持されている。
【0044】
冷却ユニット642に流入した混合気体は、12℃(摂氏)まで冷却され、
図4における状態Saから状態Sbへ変化する。その結果、処理気体に含まれるtert−ブタノールの分圧は変化幅Δだけ減少し、当該変化幅Δに応じた量のtert−ブタノールが凝固あるいは液化する。凝固あるいは液化したtert−ブタノールは、冷却ユニット642に設けられた排出口642aから排出される。
【0045】
冷却ユニット642には供給管646が挿入されており、冷却ユニット642内にある状態Sbの処理気体は供給管646へ流出する。この供給管646にはヒーター647が取り付けられており、供給管646内の処理気体は、12℃(摂氏)より高く、tert−ブタノールの凝固点より低い温度である20℃(摂氏)に加熱される。従って、処理気体は、ヒーター647の内部を通過することで、
図4において状態Sbから状態Scへ変化する。尚、ここではヒーター647を設けた構成を例示したが、ヒーター647を省いて供給管646の周囲の雰囲気(常温)によって処理気体を暖めるように構成しても良い。
【0046】
このような処理を経ることにより、処理気体に含まれるtert−ブタノールの分圧は、蒸気圧曲線Cの20℃(摂氏)における値の半分となる。こうして、tert−ブタノールの凝固点である25℃(摂氏)より低い温度である20℃(摂氏)であって、tert−ブタノールの蒸気圧に対するtert−ブタノールの分圧の比が0.5(即ち、tert−ブタノールの湿度が50%)となるtert−ブタノールの気体と窒素ガスの混合気体である処理気体が生成される。そして、この処理気体が処理気体供給ユニット64からガス供給管96へ供給される。
【0047】
以上が、基板処理装置1の概要である。続いて、基板処理装置1で実行される動作について説明する。上述のとおり、基板処理装置1は、基板Wに対してリンスを行う(リンス工程)。具体的には、制御ユニット4がチャック回転機構22へ動作指令を行い、スピンベース23の回転を開始し、リンス工程の間、回転を維持する。ここで、スピンベース23及び基板Wの回転速度は300rpmとする。
【0048】
次に、制御ユニット4は、液体供給ユニット62に動作指令を行い、吐出ノズル3からDIWを例えば10秒間だけ基板Wの表面Wfに供給する。基板Wの表面Wfに供給されたDIWには、基板Wの回転に伴う遠心力が作用し、基板Wの径方向外向きに均一に広げられて基板Wの表面Wfに対するリンスが実行される。そして、このリンス工程が完了すると、制御ユニット4は以下に示す基板Wの乾燥を実行する。
【0049】
図5は、基板乾燥の第1実施形態を示すフローチャートである。
図6は、
図5のフローチャートによって実行される処理を模式的に示す図である。基板乾燥では、まず、液体のtert−ブタノールを基板Wの表面に供給する供給工程(ステップS101)が行われる。
【0050】
即ち、制御ユニット4が、チャック回転機構22へ動作指令を行い、スピンベース23を300rpmで回転させる。尚、スピンベース23の回転は、先行するリンス工程から継続して行っても良いし、リンス工程の終了後に一度中断してから開始しても良い。
【0051】
次に、制御ユニット4が、回転モータ31に動作指令を行い、アーム35とともに吐出ノズル3を旋回移動し、吐出ノズル3を基板Wの表面Wfの中心付近上空に位置決めする。その後、制御ユニット4が、液体供給ユニット62に動作指令を行い、凝固点より高い温度である30℃(摂氏)の液体のtert−ブタノール301を吐出ノズル3から基板Wの表面Wfに供給する。
【0052】
基板Wの表面Wfに供給された液体のtert−ブタノール301は、DIW311を押し流しながら、基板Wの表面Wfの外周側へ向けて広がっていく。かかる供給工程によって、基板Wの表面Wfに形成されたパターンWpが液体のtert−ブタノール301に覆われるとともに、多くのDIW311が基板Wの表面Wfから除去される。但し、全てのDIW311を除去することは困難であるため、一部のDIW311は基板Wの表面Wfに残って、液体のtert−ブタノール301に混合される。その結果、
図6の「S101」の欄に示すように、分散した状態で存在するDIW311を含んだ液体のtert−ブタノール301が、基板Wの表面Wfにおいて液膜を形成する。
【0053】
供給工程において基板Wの表面Wf上に供給される液体のtert−ブタノールの温度は20℃(摂氏)であり、DIWの沸点である100℃よりはるかに低温である。従って、基板Wの表面Wfに残留するDIWを沸騰、あるいは急速に蒸発させることがなく、後続する凝固工程により凝固したtert−ブタノールにより基板Wの表面Wfに形成されたパターンWpが保持される前にDIWが蒸発してしまい、パターン倒壊を誘発するということがない。
【0054】
供給工程により、基板Wの表面Wf上に液体のtert−ブタノール301の膜が形成された後、制御ユニット4が、液体供給ユニット62に動作指令を行い、液体のtert−ブタノール301の供給を停止する。その後、制御ユニット4が、回転モータ31に動作指令を行い、アーム35とともに吐出ノズル3を旋回移動し、吐出ノズル3をスピンチャック2の周方向外側へ退避する。
【0055】
供給工程終了後、基板Wの表面Wf上に形成された液体のtert−ブタノール301を凝固する凝固工程が行われる。
【0056】
即ち、制御ユニット4が、遮断部材昇降機構94に対し動作指令を行い、遮断部材9を下降させて、基板Wの表面Wfに対向させる。続いて、制御ユニット4が、窒素ガス供給ユニット65に動作指令を行い、tert−ブタノールの凝固点より低温である20℃(摂氏)の、凝固用気体である窒素ガス321を、ガス供給管95を介して基板Wの表面Wf上で液膜を形成している液体のtert−ブタノール301に供給する。
【0057】
これにより、
図6の「S102」の欄に示すように、液体のtert−ブタノール301が、窒素ガス321によって凝固点よりも低温である20℃(摂氏)に冷却されて凝固する。その結果、同欄に示すように、分散した状態で存在するDIW311を含んだtert−ブタノールの凝固体303(基板Wの表面Wf上にtert−ブタノールが凝固して形成された膜)が形成され、凝固したtert−ブタノールが基板Wの表面WfにおいてパターンWpを覆ってパターンWpを保持することにより、パターンWpの変形を抑制する。このように本実施形態では、制御ユニット4及び窒素ガス供給ユニット65が協働して「凝固手段」として機能する。
【0058】
凝固工程終了後、基板Wの表面Wf上のtert−ブタノールの凝固体の膜の厚さを薄くする膜厚減少工程が行われる(ステップS103)。
【0059】
即ち、制御ユニット4が、窒素ガス供給ユニット65に動作指令を行い、窒素ガス321の供給を維持する。これにより、tert−ブタノールの凝固点より低温の窒素ガス321が、基板Wの表面Wf上のtert−ブタノールの凝固体303に供給され続けるため、tert−ブタノールの凝固体303は凝固点より低温に維持されたまま昇華する。
【0060】
また、窒素ガス321の供給によって、tert−ブタノールの凝固体303の表面に窒素ガス321の気流が生成されるため、tert−ブタノールの凝固体303から昇華した気体のtert−ブタノールは、窒素ガス321の気流に乗って速やかにtert−ブタノールの凝固体303の表面から除去される。従って、tert−ブタノールの凝固体303の表面では、昇華に伴うtert−ブタノールの分圧の上昇、及び気体のtert−ブタノールがtert−ブタノールの凝固体303表面へ、凝結あるいは気体から固体へ昇華することにより付着することが抑制される。
【0061】
従って、tert−ブタノールの蒸気圧と分圧の差を確保して、tert−ブタノールの凝固体303からの昇華を促進すること可能となる。その結果、tert−ブタノールの凝固体303は比較的速い昇華速度Vaで昇華し、tert−ブタノールの凝固体303の厚みは凝固を終えた時点(
図6の「S102」の欄に示す時点)から速やかに減少する(
図6の「S103」の欄)。
【0062】
tert−ブタノールの凝固体303の昇華が進むに伴って、DIW311がtert−ブタノールの凝固体303の表面に残留することが考えられるが、基板Wの表面Wf上のパターンWpは、tert−ブタノールの凝固体303の中に埋もれており、パターンWpがtert−ブタノールの凝固体303中に固定されているため、DIW311がtert−ブタノールの凝固体303上で気化したとしてもパターンWpに表面張力を及ぼすことはなく、パターン倒壊を誘発することはない。
【0063】
また、膜厚減少工程(ステップS103)では、tert−ブタノールの凝固体303の昇華に並行して、DIW311の気化も生ずるが、DIWの蒸気についてもtert−ブタノールの気体と同様、窒素ガス321の流れにより除去されるため、tert−ブタノールの凝固体303の表面でDIWの蒸気の分圧の上昇が抑制されると共に、tert−ブタノールの凝固体303の表面に再付着することが防止される。こうして、DIWの蒸気圧と分圧の差を確保して、DIW311の気化を促進することができる。尚、tert−ブタノールの凝固体303及びDIW311の気化を促進する膜厚減少工程は、基板Wの表面Wfに形成されたパターンWpが、tert−ブタノールの凝固体303から露出しない範囲で行われる。
【0064】
膜厚減少工程により、tert−ブタノールの凝固体303の膜厚が減少された後、制御ユニット4が、窒素ガス供給ユニット65に動作指令を行い、窒素ガス321の供給を停止する。
【0065】
膜厚減少工程終了後、基板Wの表面Wf上から、tert−ブタノールの凝固体303を除去する除去工程(ステップS104)が行われる。
【0066】
即ち、制御ユニット4が、処理気体供給ユニット64に動作指令を行い、tert−ブタノールの気体と窒素ガスの混合気体である処理気体323を、ガス供給管96を介して基板Wの表面Wf上のtert−ブタノールの凝固体303に供給する。
【0067】
処理気体323は、tert−ブタノールの気体を含むものの、前述のとおり処理気体323中のtert−ブタノールの湿度は50%であり、基板Wの表面Wfに形成されたtert−ブタノールの凝固体303表面における(処理気体323の供給温度である20℃(摂氏)での)tert−ブタノールの蒸気圧と比較して、処理気体323におけるtert−ブタノールの気体の分圧は小さい。
【0068】
即ち、tert−ブタノールの凝固体303の表面においてtert−ブタノールは飽和していないため、tert−ブタノールの凝固体303が昇華し、時間の経過とともにtert−ブタノールの凝固体303の厚さが減少する。但し、tert−ブタノールの蒸気圧と分圧の差は膜厚減少工程の際と比較して小さいため、除去工程におけるtert−ブタノールの昇華速度Vbは、膜厚減少工程におけるtert−ブタノールの昇華速度Vaよりも遅い(Vb<Va)。
【0069】
一方、除去工程におけるDIW311の気化は、基本的に膜厚減少工程の際と同程度で生じる。このように除去工程は、膜厚減少工程と同程度の速度でDIW311を気化させつつ膜厚減少工程よりも遅い速度でtert−ブタノールの凝固体303を昇華させる処理であり、換言すれば、tert−ブタノールの凝固体303の昇華を抑制することで、DIW311の気化を相対的に促進させるような効果を得るものである。
【0070】
図7は、tert−ブタノール及び水の蒸気圧曲線を示す図であり、tert−ブタノールの蒸気圧曲線を実線で示し、水の蒸気圧曲線を破線で示す。双方の蒸気圧曲線共、凝固点(tert−ブタノール:25℃(摂氏)、水:0℃(摂氏))より高温では液相から気相に相転移する際の蒸気圧曲線を、凝固点より低温では固相から気相に相転移する際の蒸気圧曲線が示されている。
【0071】
昇華工程が実行される温度範囲(常温)において、tert−ブタノールの蒸気圧はDIWの蒸気圧よりも大きく(
図7)、tert−ブタノールはDIWよりも気化し易い。従って、純粋な窒素ガス等のtert−ブタノールを含まない気体をtert−ブタノールの凝固体303の表面に供給しながらtert−ブタノールの凝固体303を昇華し続けるとtert−ブタノールの凝固体303の昇華がDIW311の気化より早く進むことにより、最終的に基板Wの表面WfにDIW311が残留する可能性もある。
【0072】
そこで、除去工程では、窒素ガスと気体のtert−ブタノールの混合気体である処理気体323をtert−ブタノールの凝固体303の表面に継続的に供給しながら、tert−ブタノールの凝固体303の昇華と、tert−ブタノールの凝固体303の表面に現れるDIWの気化を進行させる。
【0073】
この場合、tert−ブタノールの凝固体303の昇華については、温度が同じ場合、窒素ガス等、tert−ブタノールの成分を含まない気体を供給した場合に比べて、処理気体323に含まれるtert−ブタノールの量(即ち、tert−ブタノールの湿度50%に相当する量)だけtert−ブタノールの凝固体303の昇華が抑制され、DIWの気化が相対的に促進されることとなる。
【0074】
また、tert−ブタノールの凝固体303の中のDIW311の量は、基板Wの表面Wf上に形成されたtert−ブタノールの凝固体303の量より少ないため、処理気体323を供給ながら除去工程を行うことで、tert−ブタノールの凝固体303が全て昇華してしまう前にDIW311を気化することが可能となる。
【0075】
図5及び
図6に戻って説明を続ける。除去工程ではtert−ブタノールの気体と窒素ガスの混合気体である処理気体323が供給されるため、tert−ブタノールの凝固体303が昇華することによる厚みの減少を抑えつつ、tert−ブタノールの凝固体303の表面に現れたDIW311を気化させることができる。(
図6の「S104(A)」の欄)。
【0076】
また、tert−ブタノール301の昇華も低速度とは言え並行して行われるため、最終的には、DIW311及びtert−ブタノールの凝固体303は基板Wの表面Wfから除去される(
図6の「S104(B)」)。本実施形態では、制御ユニット4及び処理気体供給ユニット64が協働して「除去手段」及び「処理気体供給手段」として機能している。
【0077】
除去工程により、基板Wの表面Wfからtert−ブタノールの凝固体303及びDIW311が除去された後、制御ユニット4が、処理気体供給ユニット64に動作指令を行い、処理気体323の供給を停止する。
【0078】
除去工程終了後、基板Wの近傍からtert−ブタノールの気体及びDIWの蒸気を除去する再付着防止工程(ステップS105)が行われる。
【0079】
即ち、制御ユニット4が、窒素ガス供給ユニット65に動作指令を行い、窒素ガス321を、ガス供給管95を介して基板Wの表面Wfに供給する。
【0080】
これにより、基板W周辺に浮遊するtert−ブタノールの気体及びDIWの蒸気が基板Wの表面Wfから排出されて、tert−ブタノール及びDIWが、基板Wfに対し凝結あるいは気相から固相へ昇華して再付着することを抑制できる。
【0081】
再付着防止工程が所定時間継続された後、制御ユニット4が、窒素ガス供給ユニット65に動作指令を行い、窒素ガス321の供給を停止する。また、制御ユニット4が、遮断部材昇降機構94に対し動作指令を行い、遮断部材9を上昇させて、基板Wの表面Wfから離間させる。更に、制御ユニット4が、チャック回転機構22へ動作指令を行い、スピンベース23を停止させ、一連の処理を終了する。
<第2実施形態>
【0082】
次に、この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を説明する。以下では、第1実施形態との差異を中心に説明を行い、第1実施形態との共通点については適宜説明を省略する。尚、第1実施形態と共通する構成を具備することで第2実施形態においても同様の効果が奏されることは言うまでもない。
【0083】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様供給工程(ステップS101)、凝固工程(ステップS102)、及び膜厚減少工程(ステップS103)が行われる。第2実施形態では、除去工程において供給される処理気体323中のtert−ブタノールの気体の量が異なる。
【0084】
即ち、膜厚減少工程(ステップS103)が実行された後、除去工程(ステップS104)の初期の段階において、tert−ブタノールの蒸気圧に対するtert−ブタノールの分圧の比の値が1(即ち、tert−ブタノールの湿度が100%)の処理気体323を供給する。詳細には、
図3において、貯留タンク641を経由して冷却ユニットに導入された窒素ガスとtert−ブタノールの混合気体を、冷却管645内を流れる冷却DIWの温度を20℃(摂氏)とし、ヒーター647による加熱を行わないまま処理気体として基板Wの表面Wf上のtert−ブタノールの凝固体303に供給する。
【0085】
これにより、tert−ブタノールの凝固体303からのtert−ブタノールの昇華は、一時的に停止あるいは殆ど停止される。従って、膜厚減少工程終了後にtert−ブタノールの凝固体303の表面にDIW311が残留していたとしても、tert−ブタノールの湿度が100%の処理気体323を供給することによりtert−ブタノールの凝固体303の昇華を抑制するとともに、tert−ブタノールの凝固体303表面にあるDIW311の気化を進行させることにより、tert−ブタノールの凝固体303の表面からDIW311を除去することができる。
【0086】
tert−ブタノールの凝固体303表面のDIW311の量が減少した時点で、制御ユニット4が冷却ユニット642内の冷却管645に供給される冷却DIWの温度を12℃(摂氏)に変更し、また、ヒーター647の温度を20℃(摂氏)に設定し、tert−ブタノールの蒸気圧に対するtert−ブタノールの分圧の比が0.5(即ち、tert−ブタノールの湿度が50%)となる処理気体を基板Wの表面Wf上のtert−ブタノールの凝固体303に供給する。これにより、tert−ブタノールの凝固体303からの昇華が開始されて、最終的には基板Wの表面Wfからtert−ブタノールの凝固体303を除去することができる。また、DIW311についても、並行して基板Wの表面Wfから除去することができる。
【0087】
この、処理気体中のtert−ブタノールの分圧を減少させる態様としては、種々の具体的態様が考えられ、時間経過とともに分圧を漸減させても良いし、より低い所定分圧(ゼロを含む)のtert−ブタノールを含む気体に供給を切り換えても良い。例えば、tert−ブタノールを含まない窒素ガスを供給することで、tert−ブタノールの固体を一気に昇華させても良い。かかる構成では、気体を供給するといった簡便な構成で、除去工程を効果的に実行することができる。
【0088】
また、tert−ブタノールの凝固体303の周囲の雰囲気を、tert−ブタノールが融解しない温度までヒーター等によって加熱して、tert−ブタノールの蒸気圧を上昇させることで、tert−ブタノールの湿度を減少させても良い。
【0089】
また、除去工程の途中で複数回、処理気体323中のtert−ブタノールの蒸気圧に対するtert−ブタノールの分圧の比の値を1(即ち、tert−ブタノールの湿度が100%)にした状態を維持することで、tert−ブタノールの凝固体303表面に残留するDIW311を確実に除去しながら乾燥を進行させることも可能である。
【0090】
除去工程(ステップS104)終了後、第1実施形態と同様に再付着防止工程(ステップS105)が行われ、一連の処理が完了する。
<その他>
【0091】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0092】
上記実施形態では、基板処理装置1内に搬入された基板Wをリンスして乾燥する装置を例として用いたが、基板処理装置1内で行われる処理はリンス及び乾燥のみに限られない。即ち、リンスを行う前に基板Wに対して薬液処理、現像処理、洗浄処理などを行う装置であってもよい。
【0093】
また、基板Wの表面Wf上に形成されたtert−ブタノールの凝固体の表面におけるtert−ブタノールの蒸気圧に対する処理気体中のtert−ブタノールの分圧の割合を、処理気体中のDIWの蒸気圧に対する処理気体中のDIWの分圧の割合よりも大きくしてもよい。これにより、tert−ブタノールの固体からの昇華を抑制しつつ、並行して実行されるDIWの気化をより速やかに促進することができる。
【0094】
また、上記実施形態では処理気体を組成する気体として窒素ガスを例として用いたが、これに限らない。即ち、処理気体を組成する気体として、窒素ガス、ヘリウムガス及びアルゴンガスのうち少なくとも一種類の気体を含むような気体としてもよい。尚、tert−ブタノールに対して不活性な気体を含むように処理気体を組成した場合、処理気体とtert−ブタノールが反応することを抑制できるため好ましい。
【0095】
また、処理気体におけるtert−ブタノールの分圧の大きさについても、適宜変更が可能である。そこで、処理気体におけるtert−ブタノールの分圧を、0[kPa]より大きく7[kPa]以下に調整しても良い。かかる構成では、除去工程の実行中においても、tert−ブタノールの昇華をある程度確保でき、基板Wの乾燥時間の短縮を図ることができる。
【0096】
また、凝固工程(ステップS102)で供給される凝固用気体のDIWの露点をtert−ブタノールの凝固点より低温に調整しても良い。これにより、凝固用気体に含まれるDIWの蒸気が、基板Wの表面Wf上のtert−ブタノールの液体または凝固体に結露することを抑制できる。同様に、凝固用気体に含まれるDIW蒸気の露点を常温より低温に調整しても良い。
【0097】
また、凝固用気体にtert−ブタノールの気体を含ませてもよい。tert−ブタノールの分圧を上げた凝固用気体を用いることにより、凝固工程の実行中においてtert−ブタノールが気化することが抑制され、除去工程に至る前に基板Wの表面Wf上に存在するtert−ブタノールが減少し、tert−ブタノール中に存在するDIWを除去しきれないままtert−ブタノールのみが除去されるという事態を防止できる。
【0098】
また、供給工程において基板Wの表面Wfにtert−ブタノールを供給する具体的構成についても適宜変更が可能である。そこで、供給工程では、tert−ブタノールを有機溶媒等に溶解した溶液を基板Wの表面Wfに供給することで、tert−ブタノールを液状で基板Wの表面Wfに供給しても良い。この際、凝固工程では、基板Wの表面Wfにtert−ブタノールを析出させることでtert−ブタノールを凝固させることができる。こうして、液状で供給されたtert−ブタノールを析出させることで、tert−ブタノールの固体を簡便に形成することができる。
【0099】
また、供給工程において、基板Wの表面Wfに、昇華対象物質の固体を供給しても良い。例えば、DIWを基板Wの表面Wfに供給しながら、昇華対象物質の固体を基板Wの表面Wfに供給しても良い。この場合、供給工程においては、基板Wの表面Wfに昇華対象物質であるtert−ブタノールのDIW溶液の液膜が形成されることとなる。そして、後続する凝固工程において、tert−ブタノールを析出させることで、tert−ブタノールの固体を基板Wの表面Wfに形成することができる。
【0100】
また、供給工程で昇華対象物質の気体を供給しても良い。例えば、基板Wの表面Wfに存在するリンス液であるDIWの液膜に対してtert−ブタノールの気体を供給する。これにより、tert−ブタノールの気体がDIWに溶けることにより、tert−ブタノールのDIW溶液が基板Wの表面Wfに形成される。そして、後続する凝固工程において、tert−ブタノールを析出させることで、tert−ブタノールの固体を基板Wの表面Wfに形成することができる。
【0101】
また、上記実施形態では、昇華対象物質としてtert−ブタノールを用いたが、他の種々の物質も昇華対象物質として用いることができる。例えば、パラジクロロベンゼン(化学式:C
6H
4Cl
2、融点:53.5℃(摂氏)、沸点:174℃(摂氏)、25℃(摂氏)における水への溶解度:105mg/l)、ナフタレン(化学式:C
10H
8、融点:80.26℃(摂氏)、沸点:218℃(摂氏)、水への溶解度:30mg/l)、L−メントール(化学式:C
10H
200、融点:42〜44℃(摂氏)、沸点:212℃(摂氏)、水への溶解度:微溶)等である。
【0102】
この際、昇華対象物質は、常圧下において摂氏0度よりも高温の凝固点を有するものであっても良い。かかる構成では、例えば常圧かつ摂氏0度より高温の環境下において昇華対象物質を液状で供給することができ、昇華対象物質を液状で供給するためにとりわけ複雑な構成を設ける必要が無い。
【0103】
また、昇華対象物質は、常圧下において摂氏100度より低温の融点を有するものであっても良い。かかる構成では、常圧かつ摂氏100度より低温の環境下において、基板Wに付着したDIWを沸騰させることなく昇華対象物質を液状で供給することができる。
【0104】
また、昇華対象物質は、親水性を有するものであっても良い。このように昇華対象物質が親水性を有する場合、液状で供給された昇華対象物質に対して、基板Wに付着していたDIWを比較的細かく分散させることができる。その結果、昇華対象物質を凝固させた固体からDIWを気化させる際に、細かく分散されたDIWがパターンに及ぼす表面張力は極めて小さい。その結果、DIWの気化の際に基板のパターンが倒壊することが確実に抑制される。
【0105】
また、処理気体供給ユニット64の具体的構成について適宜変更が可能である。
図8は、処理気体供給ユニットの変形例を模式的に示す図である。当該変形例にかかる処理気体供給ユニット64は、窒素供給系648とtert−ブタノール供給系649とを並列に接続し、各系648、649が供給する気体を混合して処理気体を生成する。窒素供給系648は、窒素タンク648aからポンプ648bが吸引した窒素ガスをマスフローコントローラー648cで流量調整して供給する。
【0106】
tert−ブタノール供給系649は、tert−ブタノールタンク649aからポンプ649bが吸引した、tert−ブタノールの湿度が100%の窒素ガスをマスフローコントローラー649cで流量調整して供給する。かかる処理気体供給ユニット64によっても、tert−ブタノールの気体と窒素ガスの処理気体を基板Wに向けて供給することができる。この際、マスフローコントローラー648c、649cそれぞれの流量の比を調整することで、100%未満の所望のtert−ブタノールの湿度を有する、tert−ブタノールと窒素ガスの混合気体である処理気体を基板Wに向けて供給することができる。
【0107】
また、上記各実施形態では、リンス液としてDIWを供給しているが、リンス液としてはDIWに限定されるものではなく、純水、超純水や水素水、炭酸水等の液体であっても使用することができる。