特許第6259327号(P6259327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6259327
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20171227BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20171227BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20171227BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20171227BHJP
   B28B 11/04 20060101ALI20171227BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20171227BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   B01J35/02 G
   B01J32/00
   B01J35/04 301C
   B01J35/04 301F
   B01J35/04 301G
   B01J35/04 301Z
   B01J35/04 301D
   B01J35/04 301H
   B01J35/04 301P
   C04B38/00 303Z
   C04B38/00 304Z
   B28B11/04
   F01N3/20 K
   F01N3/24 L
【請求項の数】10
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-50842(P2014-50842)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-174011(P2015-174011A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】細井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 剛
(72)【発明者】
【氏名】井上 崇行
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/146955(WO,A1)
【文献】 特表2007−519505(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/126634(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/73
B01D 53/86−90
B01D 53/94−96
F01N 3/00−3/02
F01N 3/04−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となる第一端面から第二端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する柱状のハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部とを備え、
前記ハニカム構造部は、通電により発熱するものであり、
前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる帯状に形成され、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで反対側に配設され、
前記ハニカム構造部に、側面に開口するスリットが1本以上形成され、
前記ハニカム構造部が、少なくとも1本の前記スリットに充填された充填材を有し、前記充填材が、前記スリットの空間の少なくとも一部に配設されてなり、
前記充填材が、骨材と、ネック材とを含有し、
前記ネック材の材質が酸化ケイ素であり、前記充填材が、当該ネック材を5〜25質量%を含み、且つ、
前記ハニカム構造部の前記隔壁及び前記外周壁が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素を90質量%以上含有するものであり、
前記ハニカム構造部の25〜800℃の熱膨張係数α1に対する、前記充填材の25〜800℃の熱膨張係数α2の比率(α2/α1)が、0.8〜1.25である、ハニカム構造体。
【請求項2】
前記充填材の強度が、500kPa以上であり、且つ、前記充填材のヤング率が、1500MPa以下である、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記充填材の気孔率が、20〜90%である、請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記充填材が、炭化珪素を含む前記骨材を含み、且つ、前記充填材中の当該炭化珪素を含む骨材の含有量が、90質量%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記炭化珪素を含む骨材の平均粒子径が、300μm以下である、請求項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記充填材が、コージェライトを含む前記骨材を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記コージェライトを含む骨材の平均粒子径が、300μm以下である、請求項に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記充填材が、酸化ケイ素を含む前記骨材を含み、且つ、前記充填材中の当該酸化ケイ素を含む骨材の含有量が、80質量%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記酸化ケイ素を含む骨材の平均粒子径が、300μm以下である、請求項に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記ハニカム構造部の電気抵抗率が、1〜200Ωcmである、請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。さらに詳しくは、触媒担体であると共に電圧を印加することによりヒーターとしても機能し、電圧を印加したときの温度分布の偏りを抑制することができると共に、耐熱衝撃性を向上することができるハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コージェライト製のハニカム構造体に触媒を担持したものを、自動車エンジンから排出された排ガス中の有害物質の処理に用いていた。また、炭化珪素質焼結体によって形成されたハニカム構造体を排ガスの浄化に使用することも知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ハニカム構造体に担持した触媒によって排ガスを処理する場合、触媒を所定の温度まで昇温する必要があるが、エンジン始動時には、触媒温度が低いため、排ガスが十分に浄化されないという問題があった。
【0004】
そのため、触媒が担持されたハニカム構造体の上流側に、金属製のヒーターを設置して、排ガスを昇温させる方法が検討されている(例えば、特許文献2を参照)。また、金属製のヒーターに触媒を担持して使用する方法が検討されている(例えば、特許文献3を参照)。
【0005】
また、セラミック製のハニカム構造体を「加熱可能な触媒担体」として使用することが提案されている(例えば、特許文献4,5を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4136319号公報
【特許文献2】特許第2931362号公報
【特許文献3】特開平5−144549号公報
【特許文献4】国際公開第2011/125815号
【特許文献5】国際公開第2013/146955号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなヒーターを、自動車に搭載して使用する場合、自動車の電気系統に使用される電源が共通で使用され、例えば200Vという高い電圧の電源が用いられる。しかし、金属製のヒーターは、電気抵抗が低いため、このような高い電圧の電源を用いた場合、過剰に電流が流れ、電源回路を損傷させることがあるという問題があった。
【0008】
また、特許文献2,3では、ヒーターに抵抗調節機構であるスリットを設けて、過剰な電流が流れることを防止し、通電により良好に発熱させようとしている。このスリットは、電流が、一対の電極間を、最短距離で(直線的に)流れないように形成されている。
【0009】
また、特許文献4に記載のハニカム構造体は、所定の電気抵抗率のセラミック製であるため、通電により、電気回路の損傷等もなく、良好に発熱するものであった。引用文献4に記載のハニカム構造体は、通電発熱式の触媒担体として優れたものであるが、耐熱衝撃性という点で、更なる改良が求められていた。
【0010】
また、引用文献5に記載のハニカム構造体は、ハニカム構造部に、側面に開口するスリットが1本以上形成されたものである。そして、引用文献5に記載のハニカム構造体においては、上述したスリットに充填材を充填する技術が開示されている。しかしながら、スリットに充填材が充填されたハニカム構造体においては、例えば、以下の3点のような、ハニカム構造部又は充填材に破損が生じることがあり、充填材の構成について、更なる改良が求められていた。1点目は、例えば、充填材の熱膨張が大きすぎると、ハニカム構造部と充填材との境界にせん断応力が生じて、充填材が破損することがあった。2点目は、例えば、充填材の強度が低いと充填材が破壊されやすくなり、スリットの変形が大きくなって、スリット付近からハニカム構造部の端面に亘ってクラック等が生じることがあった。3点目は、例えば、充填材のヤング率が高すぎると、スリットによる応力緩和能が低減し、ハニカム構造部の端面等にクラック等が生じることがあった。
【0011】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものである。本発明は、触媒担体であると共に電圧を印加することによりヒーターとしても機能し、電圧を印加したときの温度分布の偏りを抑制することができると共に、耐熱衝撃性を向上することができるハニカム構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下のハニカム構造体を提供する。
【0013】
[1] 流体の流路となる第一端面から第二端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する柱状のハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部とを備え、前記ハニカム構造部は、通電により発熱するものであり、前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる帯状に形成され、前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで反対側に配設され、前記ハニカム構造部に、側面に開口するスリットが1本以上形成され、前記ハニカム構造部が、少なくとも1本の前記スリットに充填された充填材を有し、前記充填材が、前記スリットの空間の少なくとも一部に配設されてなり、前記充填材が、骨材と、ネック材とを含有し、前記ネック材の材質が酸化ケイ素であり、前記充填材が、当該ネック材を5〜25質量%を含み、且つ、前記ハニカム構造部の前記隔壁及び前記外周壁が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素を90質量%以上含有するものであり、前記ハニカム構造部の25〜800℃の熱膨張係数α1に対する、前記充填材の25〜800℃の熱膨張係数α2の比率(α2/α1)が、0.8〜1.25である、ハニカム構造体。
【0014】
[2] 前記充填材の強度が、500kPa以上であり、且つ、前記充填材のヤング率が、1500MPa以下である、前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0015】
[3] 前記充填材の気孔率が、20〜90%である、前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0017】
] 前記充填材が、炭化珪素を含む前記骨材を含み、且つ、前記充填材中の当該炭化珪素を含む骨材の含有量が、90質量%以下である、前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0018】
] 前記炭化珪素を含む骨材の平均粒子径が、300μm以下である、前記[]に記載のハニカム構造体。
【0019】
] 前記充填材が、コージェライトを含む前記骨材を含む、前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0020】
] 前記コージェライトを含む骨材の平均粒子径が、300μm以下である、前記[]に記載のハニカム構造体。
【0021】
] 前記充填材が、酸化ケイ素を含む前記骨材を含み、且つ、前記充填材中の当該酸化ケイ素を含む骨材の含有量が、80質量%以下である、前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0022】
] 前記酸化ケイ素を含む骨材の平均粒子径が、300μm以下である、前記[]に記載のハニカム構造体。
【0023】
10] 前記ハニカム構造部の電気抵抗率が、1〜200Ωcmである、前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0024】
本発明のハニカム構造体は、ハニカム構造部に、側面に開口するスリットが1本以上形成されている。そして、ハニカム構造部に形成されたスリット内に、複数の骨材粒子と、複数の骨材粒子相互間に入って骨材粒子同士を結合するネック材とを含有する充填材が配設されている。更に、本発明のハニカム構造体においては、ハニカム構造部の熱膨張係数α1に対する、充填材の熱膨張係数α2の比率(α2/α1)が、0.8〜1.25である。したがって、本発明のハニカム構造体は、触媒担体であると共に電圧を印加することによりヒーターとしても機能し、電圧を印加したときの温度分布の偏りを抑制することができると共に、耐熱衝撃性を向上することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
図3】本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
図4】本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
図5】本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図6】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図7】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図8】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図9】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図10】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図11】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図12】一対の電極部のそれぞれにおける両端部が、ハニカム構造部の端部に接していないハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
図13】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図14】充填材の強度の測定方法を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0027】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、図1図3に示すように、柱状のハニカム構造部4と、一対の電極部21とを備えるものである。柱状のハニカム構造部4は、一方の端面である第一端面11から他方の端面である第二端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する外周壁3とを有するものである。複数のセル2は、流体の流路となるものである。以下、ハニカム構造部4の第一端面11及び第二端面12を総称して、単に「ハニカム構造部4の端面」ということがある。一対の電極部21は、ハニカム構造部4の側面5に配設されたものである。本実施形態のハニカム構造体100のハニカム構造部4は、導電性を有する材料からなり、通電により発熱するものである。すなわち、ハニカム構造部4は、電流を流すことにより、ジュール熱により発熱するものである。本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状に形成されたものである。本実施形態のハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面において、一方の電極部21が、他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されたものである。一方の電極部21は、一対の電極部21,21における(一対の電極部21,21の中の)一方の電極部21であり、他方の電極部21は、一対の電極部21,21における(一対の電極部21,21の中の)他方の電極部21である。換言すると、一対の電極部21,21の中の片方の電極部21が一方の電極部21であり、一対の電極部21,21の中の残りの片方の電極部21が他方の電極部21である。
【0028】
本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4に、側面5に開口するスリット6が1本以上形成されたものである。また、ハニカム構造部4が、少なくとも1本のスリット6に充填された充填材7を有する。すなわち、本実施形態のハニカム構造体100においては、上記充填材7が、スリット6の空間の少なくとも一部を塞ぐように配設されている。本実施形態のハニカム構造体100においては、充填材7が、骨材と、ネック材とを含有する。すなわち、充填材7が、複数の骨材粒子と、複数の骨材粒子相互間に入って骨材粒子同士を結合するネック材とを含有する。本実施形態のハニカム構造体100においては、ハニカム構造部4の25〜800℃の熱膨張係数α1に対する、充填材7の25〜800℃の熱膨張係数α2の比率(α2/α1)が、0.8〜1.25である。以下、本明細書において、断りのない限り、熱膨張係数という場合は、25〜800℃の熱膨張係数のことを意味する。「ネック材」とは、骨材粒子の粒間に入って粒子同士を結合・固定化するもののことである。
【0029】
ハニカム構造部、及び充填材の熱膨張係数は、以下の方法にて測定することができる。まず、ハニカム構造体のハニカム構造部から、縦1mm×横3mm×長さ50mmの測定試料(ハニカム構造部用試料)を作製する。また、ハニカム構造体のスリットに充填された充填材から、縦1mm×横3mm×長さ50mmの測定試料(充填材用試料)を作製する。以下、それぞれの測定試料の長さが50mmとなる部位の一端から他端に向かう方向を、「測定試料の長さ方向」ということがある。それぞれの測定試料は、ハニカム構造体のセルの延びる方向が、当該測定試料の長さ方向となるように、ハニカム構造体から切り出して作製する。具体的には、測定試料の長さが50mmとなる方向(長さ方向)が、ハニカム構造体のセルの延びる方向に相当する。測定試料の横3mmとなる方向(横方向)が、ハニカム構造体の側面の周方向に相当する。測定試料の縦1mmとなる方向(縦方向)が、ハニカム構造体の側面から内側に向かう方向に相当する。それぞれの測定試料の縦方向の長さは、ハニカム構造体に形成されたセル1つ分の長さとしてもよい。それぞれの測定試料の横方向の長さは、ハニカム構造体に形成されたセル3つ分の長さとしてもよい。上述した大きさの測定試料の作製が困難な場合には、測定対象のハニカム構造体と同材質・同形態の測定用テストピースを別途作製し、作製した測定用テストピースから、それぞれの測定試料を切り出して作製してもよい。測定用テストピースは、それぞれの測定試料として必要な大きさよりも大きなものである。また、ハニカム構造体のセルの延びる方向の長さが短く、測定試料の長さが50mmを確保できない場合には、ハニカム構造体のセルの延びる方向に、予め熱膨張特性が判っている材質より作製した試料を補完的にあてがって、熱膨張係数の測定を行ってもよい。例えば、ハニカム構造体のセルの延びる方向の長さが25mmの場合には、長さが不足して25mm分の試料(熱膨張特性が判っているもの)をハニカム構造体にあてがって、熱膨張係数の測定を行うことが好ましい。作製したハニカム構造部用試料と充填材用試料とのそれぞれについて、JIS R 1618に準拠した方法により、25〜800℃の線熱膨張係数を測定する。25〜800℃の線熱膨張係数は、それぞれの測定試料の長さ方向について測定する。熱膨張計としては、BrukerAXS社製の「TD5000S(商品名)」を用いることができる。上記方法によって測定されたハニカム構造部用試料の熱膨張係数が、「ハニカム構造部の25〜800℃の熱膨張係数α1」である。上記方法によって測定された充填材用試料の熱膨張係数が、「充填材の25〜800℃の熱膨張係数α2」である。
【0030】
ここで、図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。図3は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【0031】
ハニカム構造部4の側面5は、ハニカム構造部4の外周壁3の表面のことである。そして、「(ハニカム構造部4の)側面5に開口するスリット6」とは、ハニカム構造部4の外周壁3の表面に開口するスリットのことである。また、「スリットがハニカム構造部の外周に開口する」とは、スリットの開口部により外周壁の表面に一方向に長い切り込みが形成されている状態になっていることを意味する。スリットは、側面に開口すると共に、第一端面や第二端面にも開口するものであってもよい。
【0032】
このように、本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4がジュール熱により発熱するものであるため、ヒーターとして好適に用いることができる。また、ハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状に形成されている。そして、ハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されている。そのため、ハニカム構造体100は、電圧を印加したときの温度分布の偏りを抑制することができる。
【0033】
ここで、「セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設される」の意味は、以下の通りである。つまり、図4に示されるように、まず、セル2の延びる方向に直交する断面において、「一方の電極部21の中央部C(「ハニカム構造部4の周方向」における中央の点)とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ線分」を線分L1とする。そして、セル2の延びる方向に直交する断面において、「他方の電極部21の中央部C(「ハニカム構造部4の周方向」における中央の点)とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ線分」を線分L2とする。そのとき、線分L1と線分L2とにより形成される角度β(「中心O」を中心とする角度)が、170°〜190°の範囲となるような位置関係になるように、一対の電極部21,21がハニカム構造部4に配設されていることを意味する。図4は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。図4においては、隔壁及びスリットは省略されている。
【0034】
図1図3に示すように、本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4に、側面5に開口するスリット6が1本以上形成されている。そして、このスリット6には、骨材と、ネック材とを含有する充填材7が配設されている。本実施形態のハニカム構造体100においては、ハニカム構造部4の熱膨張係数α1に対する、充填材7の熱膨張係数α2の比率(α2/α1)が、0.6〜1.5であり、特に、熱膨張係数比率(α2/α1)が、0.8〜1.25である。このため、充填材7がスリット6に配設されていることに起因する、ハニカム構造部4及び充填材7の破損を有効に防止することができる。例えば、ハニカム構造部4の熱膨張係数α1に対する、充填材7の熱膨張係数α2の比率(α2/α1)が、0.6未満であると、充填材の膨張不足により、ハニカム構造部4に縦クラックが生じることがある。ハニカム構造部4の熱膨張係数α1に対する、充填材7の熱膨張係数α2の比率(α2/α1)が、1.5超であると、充填材の膨張過剰により、ハニカム構造部4の端面にクラックが生じることがある。以下、「ハニカム構造部4の熱膨張係数α1に対する、充填材7の熱膨張係数α2の比率(α2/α1)」のことを、「熱膨張係数比率(α2/α1)」ということがある。
【0035】
本実施形態のハニカム構造体100においては、熱膨張係数比率(α2/α1)が、0.8〜1.25である。このように構成することにより、ハニカム構造部4の熱膨張係数α1と、充填材7の熱膨張係数α2とが近くなり、熱応力による各種のクラックの発生をより有効に抑制することができる。
【0036】
充填材7は、骨材と、ネック材とを含有するものである。ネック材の材質は、酸化ケイ素である。なお、ネック材の参考例として、金属酸化物、金属、及び金属化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含むものを挙げることができる。参考例としての他のネック材として、以下のような例を挙げることができる。ネック材は、酸化ケイ素及び金属酸化物のうちの少なくとも一方を含むものであってもよいし、ネック材は、酸化ケイ素及び金属酸化物のうちの少なくとも一方からなるものであってもよい。従来、電圧を印加することによりヒーターとしても機能するハニカム構造体において、ハニカム構造部に形成されたスリットに充填材を充填する場合、当該充填材が、導電性のものとなるように、骨材及びネック材の材料が選定されていた。例えば、従来のハニカム構造体においては、スリットに充填材を充填する場合、炭化珪素や金属珪素などの導電性材料をネック材として用いることにより、充填材を導電性のものとしていた。本実施形態のハニカム構造体100においては、充填材7に対して、必ずしも導電性を持たせる必要がないため、ネック材として酸化ケイ素のような、非導電性或いは導電性の低い材料を用いることができる。このように、本実施形態のハニカム構造体においては、従来のハニカム構造体においてネック材の材料として殆ど使用されていない酸化ケイ素を、積極的にネック材として使用することができ、ネック材の材料選定に関する自由度が上がる。
【0037】
充填材7の強度が、500kPa以上であることが好ましく、650kPa以上であることが更に好ましく、800kPa以上であることが特に好ましい。充填材7の強度が、500kPa未満であると、充填材7が破壊され易くなり、ハニカム構造部4の端面にてクラックが発生し易くなることがある。充填材7の強度の上限値については特に制限はないが、例えば、4000kPa程度である。
【0038】
充填材7のヤング率が、1500MPa以下であることが好ましく、1300MPa以下であることが更に好ましく、1000MPa以下であることが特に好ましい。充填材7のヤング率が、1500MPa超であると、応力緩和機能が低下して、ハニカム構造部4に縦クラックが発生し易くなることがある。充填材7のヤング率の下限値については特に制限はないが、例えば、10MPa程度である。
【0039】
本実施形態のハニカム構造体100においては、充填材7の強度が、500kPa以上であり、且つ、充填材7のヤング率が、1500MPa以下であることが好ましい。このように構成することによって、応力緩和機能を有効に確保しつつ、ハニカム構造部4に生じ得る各種のクラックの発生を有効に抑制することができる。
【0040】
充填材7の強度は、ハニカム構造体の中心に充填材を有しており、厚み:幅が1:2であるサンプルの4点曲げにて測定することができる。また、充填材7のヤング率は、4点曲げ強度測定の20〜50%の応力負荷時の応力とひずみから算出することができる。充填材7の強度の測定は、図14に示すような方法にて行うことができる。図14は、充填材の強度の測定方法を説明するための斜視図である。強度測定用の測定試料は、ハニカム構造体から、図14に示すような板状の曲げ試験用試料82を切り出して作製することができる。曲げ試験用試料82中の符号7で示される部分が、充填材であり、符号89で示される部分が、ハニカム構造部の一部である。4点曲げの強度測定においては、2つの外側支点84,84にて曲げ試験用試料82を支えた状態で、2つの内側支点83,83に荷重を加えて、曲げ試験用試料82の曲げ強度を測定する。図14に示すような強度測定においては、曲げ試験用試料82の厚さ87と幅86の比率、及び充填材7の幅88が固定されていれば、曲げ試験用試料82の大きさによる測定値への影響はほとんどない。このため、曲げ試験用試料82は、強度の測定に適した大きさの試料を作製すればよい。曲げ試験用試料82の厚さ87と幅86の比は、厚さ:幅=1:2とする。曲げ試験用試料82の厚さ87は、1〜3mmとすることが好ましい。充填材7の幅88は、ハニカム構造体に形成されるセル1つ分の幅とする。ハニカム構造体から所定の大きさの曲げ試験用試料82の作製が困難な場合には、測定対象のハニカム構造体と同材質・同形態の測定用テストピースを別途作製し、作製した測定用テストピースから、曲げ試験用試料82を切り出して作製してもよい。測定用テストピースは、曲げ試験用試料82として必要な大きさよりも大きなものである。測定用テストピースから作製した曲げ試験用試料82の厚さ87と幅86の比は、厚さ:幅=1:2とする。測定用テストピースから曲げ試験用試料82の厚さ87は、7mmとすることが好ましい。測定用テストピースから曲げ試験用試料82の充填材7の幅88は、ハニカム構造体に形成されるセル1つ分の幅とする。
【0041】
充填材7の気孔率が、20〜90%であることが好ましく、30〜85%であることが更に好ましく、45〜75%であることが特に好ましい。充填材7の気孔率が、20%未満であると、充填材7のヤング率が上昇することがある。充填材7の気孔率が、90%超であると、充填材7の強度が低下することがある。気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0042】
充填材7が、ネック材を5〜25質量%を含む。ネック材が2質量%未満であると、充填材7の強度が低下することがある。ネック材が90質量%超であると、充填材7の熱膨張係数α2が上昇することがある。また、ネック材が過剰量であると、充填材7の強度が低下することがある。充填材7中のネック材の質量比率は原料調合時の秤量にて測定することができる。また、充填材7中に含まれる骨材等の各構成要素の質量比率については、上述した充填材7中のネック材の質量比率の測定方法に準じて求めることができる。また、充填材7中のネック材の質量比率は、充填材の断面をSEM観察して、画像処理ソフトによって画像解析して求めることができる。画像処理ソフトとしては、Win ROOF(商品名)(三谷商事株式会社製)、又はPhotoshop(商品名)(Adobe社製)を用いることができる。具体的には、まず、充填材から、「断面」を観察するためのサンプルを切り出す。充填材の断面については、断面の凹凸を樹脂で埋め、更に研磨を行い、研磨面の観察を行う。そして、「断面」5視野(倍率100倍)の観察結果から、骨材とネック材との合計面積に対する、ネック材の合計面積を算出する。これにより、充填材中に占めるネック材の面積比率が求められる。そして、充填材に占めるネック材の面積比率を、充填材に占めるネック材の体積比率と見做し、骨材及びネック材の比重を考慮して、ネック材の体積比率を質量換算し、ネック材の質量比率を求める。ネック材の質量比率を求める際には、ネック材を構成する部分と骨材を構成する部分とを明確にするために2値化処理を行ってもよい。
【0043】
充填材7が、炭化珪素を含む骨材を含み、且つ、充填材7中の当該炭化珪素を含む骨材の含有量が、90質量%以下であることが好ましい。また、炭化珪素を含む骨材の含有量が、85質量%以下であることが更に好ましく、75質量%以下であることが特に好ましい。炭化珪素を含む骨材の含有量が、90質量%超であると、充填材7の熱膨張係数α2が上昇することがある。炭化珪素を含む骨材の含有量の下限値は、0質量%以上であることが好ましい。
【0044】
充填材7が、炭化珪素を含む骨材を含む場合には、炭化珪素を含む骨材の平均粒子径が、300μm以下であることが好ましく、1〜150μmであることが好ましく、2〜50μmであることが好ましい。炭化珪素を含む骨材の平均粒子径が小さ過ぎると、充填材7の熱膨張係数α2が上昇することがあり、また、充填材7のヤング率が上昇する傾向がある。炭化珪素を含む骨材の平均粒子径が300μm超であると、スリット6の中に、充填材7を形成するための充填材用原料の充填が困難になることがある。また、炭化珪素を含む骨材の平均粒子径が300μm超であると、充填材7の強度が低下する傾向にある。充填材7中の骨材の平均粒子径は、充填材の断面をSEM観察して、画像処理ソフトによって画像解析して求めることができる。画像処理ソフトとしては、Win ROOF(商品名)(三谷商事株式会社製)、又はPhotoshop(商品名)(Adobe社製)を用いることができる。具体的には、まず、充填材から、「断面」を観察するためのサンプルを切り出す。充填材の断面については、断面の凹凸を樹脂で埋め、更に研磨を行い、研磨面の観察を行う。そして、「断面」5視野(倍率100倍)の観察結果から、当該断面に存在する骨材の粒子径を計測し、その平均値を「骨材の平均粒子径」とする。骨材の粒子径を求める際には、ネック材を構成する部分と骨材を構成する部分とを明確にするために2値化処理を行ってもよい。上述した画像解析によって測定された「骨材の平均粒子径」と、充填材の原料の状態にて測定された「骨材の平均粒子径」とは一致する。そのため、充填材の原料の状態にて、骨材の平均粒子径を測定できる場合には、原料秤量時に、骨材の平均粒子径を測定してもよい。例えば、充填材7中の骨材の平均粒子径は、平均粒子径はレーザー回折法から求めることができる。
【0045】
充填材7が、コージェライトを含む骨材を含んでいてもよい。コージェライトを含む骨材は、充填材7中に0質量%以上含まれていることが好ましく、10質量%以上含まれていることが更に好ましく、50質量%以上含まれていることが特に好ましい。充填材7が、コージェライトを含む骨材を含むことにより、充填材7の熱膨張係数α2を小さくすることができる。すなわち、コージェライトを含む骨材により、充填材7の熱膨張係数α2を調節することができる。コージェライトを含む骨材の平均粒子径が、300μm以下であることが好ましく、1〜150μmであることが好ましく、2〜50μmであることが好ましい。コージェライトを含む骨材の平均粒子径が小さ過ぎると、充填材7のヤング率が上昇する傾向がある。コージェライトを含む骨材の平均粒子径が300μm超であると、スリット6の中に、充填材7を形成するための充填材用原料の充填が困難になることがある。また、コージェライトを含む骨材の平均粒子径が300μm超であると、充填材7の強度が低下する傾向にある。
【0046】
充填材7が、酸化ケイ素を含む骨材を含んでいてもよい。酸化ケイ素を含む骨材は、充填材7中に80質量%以下含まれていることが好ましく、45質量%以下含まれていることが更に好ましく、25質量%以下含まれていることが特に好ましい。充填材7が、酸化ケイ素を含む骨材を含むことにより、充填材7の熱膨張係数α2の上昇を調整することができる。例えば、酸化ケイ素を含む骨材が、25質量%未満であると、酸化ケイ素以外の骨材の種類にもよるが、充填材7の熱膨張係数α2が上昇することがある。酸化ケイ素を含む骨材の平均粒子径が、300μm以下であることが好ましく、1〜150μmであることが好ましく、2〜50μmであることが好ましい。酸化ケイ素を含む骨材の平均粒子径が小さ過ぎると、充填材7のヤング率が上昇する傾向がある。酸化ケイ素を含む骨材の平均粒子径が300μm超であると、スリット6の中に、充填材7を形成するための充填材用原料の充填が困難になることがある。また、酸化ケイ素を含む骨材の平均粒子径が300μm超であると、充填材7の強度が低下する傾向にある。
【0047】
充填材7に含まれる骨材は、上述した、炭化珪素を含む骨材、コージェライトを含む骨材、及び酸化ケイ素を含む骨材以外の骨材であってもよい。骨材に含まれる好ましい成分としては、炭化珪素、コージェライト、酸化ケイ素、アルミニウムチタネート、タルク、マイカ、及びリチウムアルミニウムチタネート、モンモリロナイト、タルク、ベーマイト、フォルステライト、カオリン、ムライトからなる群から選択される少なくとも1種の成分を挙げることができる。骨材は、上述した群から選択される少なくとも1種の成分を、10〜100質量%含むことが好ましく、50〜97質量%含むことが更に好ましく、75〜95質量%含むことが特に好ましい。
【0048】
上述したように、充填材7に含まれるネック材は、酸化ケイ素からなるものである。ネック材の参考例として、当該ネック材が、酸化ケイ素及び金属酸化物のうちの少なくとも一方からなるものであってもよい。ネック材を構成する金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウムを挙げることができる。
【0049】
また、本実施形態のハニカム構造体100においては、実質的に金属珪素が含有されていないことが好ましい。実質的に金属珪素が含有されていないとは、充填材7の構成成分として、意図的に金属珪素が含まれていないことを意味する。したがって、例えば、充填材7に金属珪素が不可避的に混入するような場合は、実質的に金属珪素が含有されていないとみなすことができる。従来のハニカム構造体において、ハニカム構造部に形成されたスリットに、応力緩和部材としての充填材を充填する場合には、金属珪素からなるネック材を含む充填材が用いられることがあった。しかしながら、このような従来の充填材は、材料の選定に制約があり、充填材の強度やヤング率の調整が困難であった。また、金属珪素からなるネック材を含む従来の充填材は、熱処理を不活性雰囲気にて行う必要があり、ハニカム構造体の製造工程が煩雑になるという問題があった。本実施形態のハニカム構造体100においては、充填材に対して必ずしも導電性が求められていないため、煩雑な製造工程(例えば、不活性雰囲気での熱処理)を行わずともよく、ハニカム構造体の製造工程を簡便なものとすることができる。
【0050】
また、本実施形態のハニカム構造体100においては、充填材7には、無機繊維などの繊維状の物質が含まれていないことが好ましい。充填材7に繊維状の物質が含まれていると、充填材7を形成するための充填材用原料の粘度が高くなり、ハニカム構造部4のスリット6に、当該充填材用原料を充填し難くなることがある。このため、スリット6内に、充填材7が均等に充填され難くなることがある。また、スリット6の開口部分の近傍に繊維状の物質が片寄って配置されてしまい、スリット6内に充填された充填材7の組成が、部分的に異なってしまうことがある。仮に、充填材7に、無機繊維などの繊維状の物質が含まれている場合には、当該繊維状の物質の含有率が30質量%以下であることが好ましく、実質的に繊維状の物質が含有されていないことが好ましい。充填材中に含まれる「無機繊維などの繊維状の物質」の有無は、充填材の断面をSEM観察して、画像処理ソフトによって画像解析して判断することができる。画像処理ソフトとしては、Win ROOF(商品名)(三谷商事株式会社製)、又はPhotoshop(商品名)(Adobe社製)を用いることができる。本明細書において、「繊維状の物質」とは、上記SEM観察の画像解析において、物質の最大長の長さが50μm以上であり、且つ、当該物質のアスペクト比が、5以上のものをいう。アスペクト比とは、最大長と、当該最大長が測定される方向に直交する方向の長さ(以下、この長さを「最少長」とする)との比(最大長/最少長)のことを意味する。充填材中に繊維状の物質が含まれている場合には、SEM観察の画像解析により、繊維状の物質の含有率(質量%)を求めることができる。具体的には、ます、充填材の「断面」5視野(倍率100倍)の観察結果から、当該断面に存在する繊維状の物質の面積比率を算出する。次に、この面積比率を、ネック材の質量比率を求める方法に用いた方法と同様の方法で質量換算し、充填材中の繊維状の物質の含有率(質量%)を求める。
【0051】
ハニカム構造体100は、少なくとも1本のスリット6が、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21のそれぞれの中央部C,C同士を結んだ直線(中心線)Lと交差しないように形成されたものであることが好ましい。このようにして少なくとも1本のスリット6を形成することにより、電圧を印加したときのハニカム構造部4の温度分布の偏りを抑制することができると共に、耐熱衝撃性をより向上させることができる。また、このように構成することによって、電圧を印加したときの温度分布の偏りを抑制することができる。更に、少なくとも1本のスリット6が、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21のそれぞれの中央部C,C同士を結んだ直線と交差しないように形成されたハニカム構造体100は、機械的強度にも優れたものとなる。図1図3に示すハニカム構造体100は、6本のスリット6のそれぞれが、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21のそれぞれの中央部C,C同士を結んだ直線Lと交差しないように形成されたものである。
【0052】
以下、ハニカム構造体100のセル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21のそれぞれの中央部C,C同士を結んだ直線Lと交差しないように形成されたスリット6を「非交差スリット」と称することがある。また、ハニカム構造体100のセル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21のそれぞれの中央部C,C同士を結んだ直線Lと交差するように形成されたスリット6を「交差スリット」と称することがある。本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4に、スリット6が2本以上形成され、2本以上のスリット6の中の50%以上のスリット6が、非交差スリットであることが好ましい。そして、ハニカム構造部4に形成されたスリット6の全てが、非交差スリットであることが更に好ましい。非交差スリットが、スリット6全体の50%以上であることにより、ハニカム構造体100の機械的強度が低下することを防止できる。すなわち、本実施形態のハニカム構造体100が機械的強度に優れたものとなる。非交差スリットが、スリット6全体の50%未満であると、交差スリットが多くなることにより、ハニカム構造体100の機械的強度が低下することがある。また、非交差スリットが、スリット6全体の50%未満であると、交差スリットが多くなるため、一対の電極21,21間を流れる電流の流れがスリットによって大きく妨げられ、均一な発熱が阻害され、不均一な発熱となることがある。
【0053】
本実施形態のハニカム構造体100において、スリット6の深さは、ハニカム構造部4の「セル2の延びる方向に直交する断面」における半径(以下、「ハニカム構造部の半径」と称することがある。)の1〜80%であることが好ましい。そして、スリット6の深さは、ハニカム構造部の半径の1〜60%であることが更に好ましく、1〜30%であることが特に好ましい。スリット6の深さが、ハニカム構造部の半径の1%より小さいと、スリット6による耐熱衝撃性の向上効果が得られ難くなることがある。スリット6の深さが、ハニカム構造部の半径の80%より大きいと、一対の電極21,21間を流れる電流の流れがスリットによって大きく妨げられ、均一な発熱が阻害され、不均一な発熱となることがある。スリット6の深さは、スリット6の「側面5における開口部」から、スリット6の最も深い位置までの距離のことである。スリットが複数本存在する場合には、スリット6の深さは、スリットによって異なっていてもよく、全て同じでもよい。
【0054】
本実施形態のハニカム構造体100において、スリット6の幅は、ハニカム構造部4の「セル2の延びる方向に直交する断面」における外周の長さ(以下、「ハニカム構造部の外周長」と称することがある。)の0.1〜5%であることが好ましい。そして、スリット6の幅は、ハニカム構造部の外周長の0.1〜3%であることが更に好ましく、0.1〜1%であることが特に好ましい。スリット6の幅が、ハニカム構造部の外周長の0.1%より小さいと、ハニカム構造体100の耐熱衝撃性を低減する効果が低下することがある。スリット6の幅が、ハニカム構造部の外周長の5%より大きいと、ハニカム構造体100の機械的強度が低下することがある。スリット6の幅は、スリット6の「ハニカム構造部4の周方向」における長さのことである。「ハニカム構造部4の周方向」とは、ハニカム構造部4の「セル2の延びる方向に直交する断面」における、外周に沿う方向のことである。スリットが複数本存在する場合には、スリット6の幅は、スリットによって異なっていてもよく、全て同じでもよい。
【0055】
本実施形態のハニカム構造体100において、スリット6の「セルの延びる方向」における長さは、ハニカム構造部の「セルの延びる方向」における長さと同じであることが好ましい。つまり、スリット6がハニカム構造部の両端面間に亘って(全長に亘って)形成されていることが好ましい。また、スリット6の「セルの延びる方向」における長さが、ハニカム構造部の「セルの延びる方向」における長さの5〜70%であることも好ましい態様である。耐熱衝撃性の点では全長に亘っている方がよいが、一部形成されていない部分が残っていると、強度の点で好ましい。全長に亘っていない場合、スリットの片端は、ハニカム構造体の片方の端面に位置することが好ましい。この場合、スリットは、ハニカム構造部の片方の端面側のみに形成されていてもよいし(図9を参照)、ハニカム構造部の両方の端面側に形成されていてもよい(図10を参照)。スリットが、ハニカム構造部の両方の端面側に形成された場合、スリットの「セルの延びる方向」における合計の長さが、ハニカム構造部の「セルの延びる方向」における長さの5〜70%であることが好ましい。また、スリットが、ハニカム構造部の片方の端面側のみに形成される場合、ハニカム構造体を使用する際に、スリットが形成された端面側を、熱衝撃がより大きくかかる方向を向けて使用することが好ましい。スリットが複数本存在する場合には、スリット6の長さは、スリットによって異なっていてもよく、全て同じでもよい。
【0056】
また、スリットが複数本存在する場合には、スリット形成パターン(含:本数)、スリットの深さ、スリットの幅、スリットの長さは、中心線Lを対称軸とする線対称であることが好ましい。
【0057】
本実施形態のハニカム構造体100において、スリット6の本数は、1〜20本が好ましく、1〜15本が更に好ましく、1〜10本が特に好ましい。スリット6の本数が20本を超えると、ハニカム構造体100の機械的強度が低下することがある。図1及び図2に示されるハニカム構造体100においては、6本のスリット6が形成されている。
【0058】
本実施形態のハニカム構造体100において、「ハニカム構造部4の側面5における開口部(スリット6の開口部)の位置が、電極部21に最も近い」スリット6を、「最短距離スリット」6aと称することにする。電極部21と「最短距離スリット」6aとの距離Dは、0.1〜30mmが好ましく、0.5〜20mmが更に好ましく、1〜10mmが特に好ましい。電極部21と「最短距離スリット」6aとの距離Dが、0.1mmより短いと、電流の流れが妨げられることがあり、均一発熱し難くなることがある。電極部21と「最短距離スリット」6aとの距離Dが、30mmを超えると、ハニカム構造体100の耐熱衝撃性を向上する効果が得られ難くなることがある。
【0059】
本実施形態のハニカム構造体100は、図1及び図2に示されるように、ハニカム構造部4の側面5の「電極部21が配設されていない」2箇所の領域(領域A、領域B)に、3本ずつスリット6が形成されている。本実施形態のハニカム構造体100は、スリットの深さより、対向するスリット間の距離のほうが長いものである。対向するスリット間の距離とは、領域Aに形成されたスリット6と、領域Bに形成されたスリット6との間の距離である。
【0060】
本実施形態のハニカム構造体100は、6本のスリットのスリット角度が、全て90°である。ここで、「スリット角度」は、以下のように定義されるものとする。図2に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100のセルの延びる方向に直交する断面において、スリット6と、ハニカム構造部4の外周との交点を点Pとする。そして、点Pを端点とし、点Pからハニカム構造部4の外周の外側に向かって伸びると共に、中心線Lに平行な半直線(又は、線分)を、半直線HLとする。尚、中心線Lは、上記のように、「一対の電極のそれぞれの中央部同士を結んだ直線」である。そして、そのときに、スリット6と半直線HLとにより形成される角度のうち、大きくない方の角度(180°以下の角度)を「スリット角度SA」とする。ここで、「大きくない方の角度」とは、「小さい方の角度、又は、同じ角度である場合には、同じである当該角度」を意味する。また、半直線とは、一方に端があって、他方に無限に伸びている直線のことである。また、「半直線HLが、ハニカム構造部4の外周の外側に向かって伸びる」とは、半直線HLが、ハニカム構造部4の断面内を通過しないような方向に伸びることを意味する。
【0061】
本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1及び外周壁3の材質が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするものである。「隔壁1及び外周壁3の材質が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とするものである」というときは、隔壁1及び外周壁3が、炭化珪素粒子及び珪素(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素−炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。また、炭化珪素は、炭化珪素が焼結したものである。
【0062】
本実施形態のハニカム構造体100は、図1図3に示されるように、ハニカム構造部4の側面5に一対の電極部21,21が配設されている。本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21間に電圧を印加することにより、発熱する。印加する電圧は12〜900Vが好ましく、64〜600Vが更に好ましいが、印加する電圧は適宜変更可能である。
【0063】
図1図3に示されるように、一対の電極部21,21のそれぞれは、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる「帯状」に形成されている。そして、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心部Oを挟んで反対側に配設されている。そのため、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを抑制することができ、これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを抑制することができる。そして、更に、図4に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面において、それぞれの電極部21,21の中心角αの0.5倍(中心角αの0.5倍の角度θ)が、15〜65°であることが好ましい。これにより、ハニカム構造部4内の発熱の偏りを、より効果的に抑制することができる。このように、「電極部21の中心角αの0.5倍が15〜65°であると共に、セルの延びる方向に延びている」という電極部21の形状は、「帯状」の一態様である。また、「電極部21の中心角α」は、図4に示されるように、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部21の両端とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ2本の線分により形成される角度である。換言すると、「電極部21の中心角α」は、直交断面において、「電極部21」と「電極部21の一方の端部と中心Oとを結ぶ線分」と「電極部21の他方の端部と中心Oとを結ぶ線分」とにより形成される形状(扇形、等)における、中心Oの部分の内角である。ここで、「直交断面」とは、「ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面」のことである。
【0064】
セル2の延びる方向に直交する断面において、電極部21,21の「中心角αの0.5倍の角度θ」の上限値は、60°が更に好ましく、55°が特に好ましい。また、セル2の延びる方向に直交する断面において、電極部21,21の「中心角αの0.5倍の角度θ」の下限値は、20°が更に好ましく、30°が特に好ましい。また、一方の電極部21の「中心角αの0.5倍の角度θ」は、他方の電極部21の「中心角αの0.5倍の角度θ」に対して、0.8〜1.2倍の大きさであることが好ましく、1.0倍の大きさ(同じ大きさ)であることが更に好ましい。これにより、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを抑制することができ、これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを抑制することができる。
【0065】
電極部21の厚さは、0.01〜5mmであることが好ましく、0.01〜3mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、均一に発熱することができる。電極部21の厚さが0.01mmより薄いと、電気抵抗が高くなり均一に発熱できないことがある。5mmより厚いと、キャニング時に破損することがある。
【0066】
電極部21が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることが好ましく、通常含有される不純物以外は、炭化珪素粒子及び珪素を原料として形成されていることが更に好ましい。ここで、「炭化珪素粒子及び珪素を主成分とする」とは、炭化珪素粒子と珪素との合計質量が、電極部全体の質量の90質量%以上であることを意味する。このように、電極部21が炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることにより、電極部21の成分とハニカム構造部4の成分とが同じ成分又は近い成分(ハニカム構造部の材質が炭化珪素である場合)となる。そのため、電極部21とハニカム構造部4の熱膨張係数が同じ値又は近い値になる。また、材質が同じもの又は近いものになるため、電極部21とハニカム構造部4との接合強度も高くなる。そのため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極部21がハニカム構造部4から剥れたり、電極部21とハニカム構造部4との接合部分が破損したりすることを防ぐことができる。
【0067】
図1及び図2に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセルの延びる方向に延びると共に「両端部間(両端面11,12間)に亘る」帯状に形成されている。このように、一対の電極部21,21が、ハニカム構造部4の両端部間に亘るように配設されていることにより、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りをより効果的に抑制することができる。そして、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを抑制することにより、ハニカム構造部4内の発熱の偏りをより効果的に抑制することができる。「電極部21が、ハニカム構造部4の両端部間に亘るように形成されている」とは、電極部21の一方の端部がハニカム構造部4の第一端面11の周縁に接し、且つ、電極部21の他方の端部がハニカム構造部4の第二端面12の周縁に接していることを意味する。
【0068】
本実施形態のハニカム構造体100においては、電極部21の「ハニカム構造部4のセル2の延びる方向」における両端部が、ハニカム構造部4の両端面の周縁に接していない状態も好ましい態様である。すなわち、電極部21の両端部が、ハニカム構造部4の第一端面11の周縁及び第二端面12の周縁に到達していない状態も好ましい態様である。また、電極部21の一方の端部が、ハニカム構造部4の第一端面11に接し、電極部21の他方の端部が、ハニカム構造部4の第二端面12に接していない状態も好ましい態様である。このように、電極部21を配設する形態については、ハニカム構造体100の使用形態に応じて、種々の変更が可能である。
【0069】
本実施形態のハニカム構造体においては、例えば、図1図3に示されるように、電極部21は、平面状の長方形の部材を、円柱形状の外周に沿って湾曲させたような形状となっている。ここで、湾曲した電極部21を、湾曲していない平面状の部材に変形したときの形状を、電極部21の「平面形状」と称することにする。上記、図1図3に示される電極部21の「平面形状」は、長方形になる。そして、「電極部の外周形状」というときは、「電極部の平面形状における外周形状」を意味する。本実施形態のハニカム構造体においては、図1図3に示されるように、帯状の電極部21の外周形状が長方形であってもよいが、帯状の電極部21の外周形状が、長方形の角部が曲線状に形成された形状であってもよい。また、帯状の電極部21の外周形状が、長方形の角部が直線状に面取りされた形状であってもよい。図12に、一対の電極部21,21のそれぞれにおける両端部が、ハニカム構造部4の端面の周縁に接していないハニカム構造体190の例を示す。図12に示されるハニカム構造体190は、帯状の電極部21の外周形状が、「長方形の角部が曲線状に形成された」形状である。
【0070】
電極部21の電気抵抗率は、0.1〜100Ωcmであることが好ましく、0.1〜50Ωcmであることが、更に好ましい。電極部21の電気抵抗率をこのような範囲にすることにより、一対の電極部21,21が、高温の排ガスが流れる配管内において、効果的に電極の役割を果たす。電極部21の電気抵抗率が0.1Ωcmより小さいと、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部21の両端付近のハニカム構造部の温度が上昇し易くなることがある。電極部21の電気抵抗率が100Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電極としての役割を果たし難くなることがある。電極部の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0071】
電極部21は、気孔率が30〜60%であることが好ましく、30〜55%であることが更に好ましい。電極部21の気孔率がこのような範囲であることにより、好適な電気抵抗率が得られる。電極部21の気孔率が、30%より低いと、製造時に変形してしまうことがある。電極部21の気孔率が、60%より高いと、電気抵抗率が高くなりすぎることがある。気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0072】
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁厚さが50〜200μmであり、70〜130μmであることが好ましい。隔壁厚さをこのような範囲にすることにより、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持しても、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることを抑制できる。隔壁厚さが50μmより薄いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。隔壁厚さが200μmより厚いと、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0073】
本実施形態のハニカム構造体100は、セル密度が40〜150セル/cmであることが好ましく、70〜100セル/cmであることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cmより低いと、触媒担持面積が少なくなることがある。セル密度が150セル/cmより高いと、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0074】
本実施形態のハニカム構造体100において、ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子(骨材)の平均粒子径は、3〜50μmであることが好ましく、3〜40μmであることが更に好ましい。ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子の平均粒子径をこのような範囲とすることにより、ハニカム構造部4の400℃における電気抵抗率を1〜200Ωcmにすることができる。炭化珪素粒子の平均粒子径が3μmより小さいと、ハニカム構造部4の電気抵抗率が大きくなることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径が50μmより大きいと、ハニカム構造部4の電気抵抗率が小さくなることがある。更に、炭化珪素粒子の平均粒子径が50μmより大きいと、ハニカム成形体を押出成形するときに、押出成形用の口金に成形用原料が詰まることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0075】
本実施形態のハニカム構造体100に用いられるハニカム構造部4は、ジュール熱により発熱するものであり、例えば、その電気抵抗率については特に制限はない。例えば、ハニカム構造部4の電気抵抗率は、1〜200Ωcmであることが好ましく、10〜100Ωcmであることが更に好ましい。また、ハニカム構造体100を使用する用途に合わせて、ハニカム構造部4の電気抵抗率を選択することもできる。ハニカム構造部の電気抵抗率は、四端子法により測定した値である。
【0076】
本実施形態のハニカム構造体100においては、電極部21の電気抵抗率は、ハニカム構造部4の電気抵抗率より低いものであることが好ましく、更に、電極部21の電気抵抗率が、ハニカム構造部4の電気抵抗率の、20%以下であることが更に好ましく、1〜10%であることが特に好ましい。電極部21の電気抵抗率を、ハニカム構造部4の電気抵抗率の、20%以下とすることにより、電極部21が、より効果的に電極として機能するようになる。
【0077】
本実施形態のハニカム構造体100においては、ハニカム構造部4の材質が、珪素−炭化珪素複合材である場合、ハニカム構造部4に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることが更に好ましい。10質量%より低いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。40質量%より高いと、焼成時に形状を保持できないことがある。
【0078】
ハニカム構造部4の隔壁1の気孔率は、35〜60%であることが好ましく、35〜45%であることが更に好ましい。気孔率が、35%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうことがある。気孔率が60%を超えるとハニカム構造体の強度が低下することがある。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0079】
ハニカム構造部4の隔壁1の平均細孔径は、2〜15μmであることが好ましく、4〜8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μmより小さいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。平均細孔径が15μmより大きいと、電気抵抗率が小さくなりすぎることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0080】
また、本実施形態のハニカム構造体100の最外周を構成する外周壁3の厚さは、0.1〜2mmであることが好ましい。0.1mmより薄いと、ハニカム構造体100の強度が低下することがある。2mmより厚いと、触媒を担持する隔壁の面積が小さくなることがある。
【0081】
本実施形態のハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状が、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせ、であることが好ましい。これ等のなかでも、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体100に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0082】
本実施形態のハニカム構造体の形状(ハニカム構造部の形状)は特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体の大きさは、底面の面積が2000〜20000mmであることが好ましく、4000〜10000mmであることが更に好ましい。また、ハニカム構造体の中心軸方向の長さは、50〜200mmであることが好ましく、75〜150mmであることが更に好ましい。
【0083】
本実施形態のハニカム構造体100のアイソスタティック強度は、1MPa以上であることが好ましく、3MPa以上であることが更に好ましい。アイソスタティック強度は、値が大きいほど好ましいが、ハニカム構造体100の材質、構造等を考慮すると、6MPa程度が上限となる。アイソスタティック強度が1MPa未満であると、ハニカム構造体を触媒担体等として使用する際に、破損し易くなることがある。アイソスタティック強度は水中にて静水圧をかけて測定した値である。
【0084】
本実施形態のハニカム構造体100は、触媒が担持されて、触媒体として使用されることが好ましい。
【0085】
図1に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100は、充填材7が、スリット6の空間の少なくとも一部に配設されたものである。そして、ハニカム構造部4に、スリット6が2本以上形成され、2本以上のスリット6の中の50%以上のスリットに充填材が配設されていることが好ましい。更に、ハニカム構造部4に形成された「2本以上のスリット6」の全てに充填材が配設されていることが好ましい。また、充填材7は、「スリット6の空間」の全部に配設されることが好ましい。図1に示されるハニカム構造体100においては、6本のスリット6が形成されている。そして、全てのスリット6のそれぞれにおいて、当該スリット6の空間全体に充填材7が配設されている。このように、スリット6に充填材が配設されることにより、ハニカム構造体のアイソスタティック強度を向上することができる。「少なくとも一部に配設」とは、スリットの深さ方向における「一部」でもよく、スリットの長さ方向における「一部」でもよく、これらの組合せでもよい。
【0086】
次に、本発明のハニカム構造体の他の実施形態について説明する。図5に示されるように、本実施形態のハニカム構造体120は、図1に示されるハニカム構造体100において、スリット6の深さより、対向するスリット間の距離のほうが短いものである。スリット6の深さが深くなると、耐熱衝撃性は向上するが、電流が流れにくくなることにより均一発熱させ難くなる。そのため、これらのバランスを考慮して、スリットの深さを適宜決定することが好ましい。図5に示されるハニカム構造体120は、全てのスリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、少なくとも1本のスリット6に充填されていればよい。例えば、図5に示されるハニカム構造体120において、6本のスリット6のうち、充填材7が充填されていないスリット6があってもよい。図5は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0087】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。図6に示されるように、本実施形態のハニカム構造体130は、図1に示されるハニカム構造体100において、セルの延びる方向に直交する断面において、セルの形状が六角形になったものである。以下、セルの延びる方向に直交する断面における「セルの形状」を、単に、「セル形状」と称することがある。セル形状が六角形であると、外周からの応力が分散されるという利点がある。本実施形態のハニカム構造体130は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。図6は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0088】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。図7に示されるように、本実施形態のハニカム構造体140は、図6に示されるハニカム構造体130において、スリット角度を変更したものである。本実施形態のハニカム構造体140は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。図7は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0089】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。図8に示されるように、本実施形態のハニカム構造体150は、図6に示されるハニカム構造体130において、一部のスリットについてスリットの深さを深くしたものである。具体的には、本実施形態のハニカム構造体150は、領域A及び領域Bのそれぞれに形成された3本のスリットの中で、中央に位置するスリットの深さが、より深くなったものである。本実施形態のハニカム構造体150は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。図8は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0090】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。図9に示されるように、本実施形態のハニカム構造体160は、図6に示されるハニカム構造体130において、スリット6の「セル2の延びる方向」の長さが短くなったものである。具体的には、本実施形態のハニカム構造体160は、スリット6が、ハニカム構造部4の側面5及び第一端面に開口すると共に、第二端面には開口しないように形成されたものである。これは、スリット6が、ハニカム構造部4の一方の端部のみに形成された構造であるということもできる。スリット6の「セル2の延びる方向」の長さは、ハニカム構造部4の「セル2の延びる方向」の長さより短くなっている。本実施形態のハニカム構造体160は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。図9は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0091】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。図10に示されるように、本実施形態のハニカム構造体170は、図9に示されるハニカム構造体160において、「セル2の延びる方向」の長さが短いスリット6が、ハニカム構造部の両端部に形成されたものである。本実施形態のハニカム構造体170は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。図10は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0092】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。図11に示されるように、本実施形態のハニカム構造体180は、図6に示されるハニカム構造体130において、「セルの延びる方向」に延びる6本のスリットが形成されず、ハニカム構造部4の端面に平行な1本のスリットが形成されたものである。本実施形態のハニカム構造体180において、スリット6は、ハニカム構造部4の側面に開口すると共に、ハニカム構造部4の端面には開口せず、ハニカム構造体4の端面に平行に形成されている。本実施形態のハニカム構造体180は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。図11は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0093】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。図13に示されるように、本実施形態のハニカム構造体200は、図7に示されるハニカム構造体140において、「セルの延びる方向」に延びる6本のスリットの中の、電極部21に近い4本のスリットが、電極部21に覆われる位置に形成されたものである。本実施形態のハニカム構造体200は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。図13は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0094】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体を製造する方法(以下、単に「ハニカム構造体の製造方法」という)について説明する。ハニカム構造体の製造方法については、以下に説明する製造方法に限定されることはない。ハニカム構造体の製造方法としては、電極部原料付きハニカム成形体を得るA1工程と、スリットを形成するA2工程と、ハニカム成形体を焼成する工程A3と、充填材用原料を充填するA4工程と、を備えた製造方法を挙げることができる。
【0095】
A1工程は、柱状のハニカム構造部の前駆体であるハニカム成形体に、電極部形成原料を塗布して、電極部原料付きハニカム成形体を得る工程である。柱状のハニカム構造部とは、図1図3に示すような、第一端面11から第二端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する隔壁1と、最外周に位置する外周壁3とを有するハニカム構造部4のことである。そして、ハニカム成形体とは、上述したハニカム構造部4を作製するための、焼成前のハニカム構造部のことである。
【0096】
ハニカム成形体の作製は、公知のハニカム構造体の製造方法におけるハニカム成形体の作製方法に準じて行うことができる。例えば、まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成する。次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。次に、得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。以下、乾燥後のハニカム成形体を「ハニカム乾燥体」と称することがある。ハニカム成形体(又は、ハニカム乾燥体)の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、ハニカム成形体の両端部を切断して所望の長さとすることが好ましい。
【0097】
次に、電極部を形成するための電極部形成原料を調合する。電極部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、電極部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。次に、得られた電極部形成原料を、乾燥させたハニカム成形体(ハニカム乾燥体)の側面に塗布し、電極部原料付きハニカム成形体を得る。電極部形成原料を調合する方法、及び電極部形成原料をハニカム成形体に塗布する方法については、公知のハニカム構造体の製造方法に準じて行うことができる。
【0098】
ハニカム構造体の製造方法の変更例1として、A1工程において、電極部形成原料を塗布する前に、ハニカム成形体を一旦焼成してもよい。すなわち、変更例1では、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を作製し、当該ハニカム焼成体に、電極部形成原料を塗布して、電極部原料付きハニカム成形体の代わりに電極部原料付きハニカム焼成体を得る。
【0099】
A2工程は、電極部原料付きハニカム成形体の側面に、当該側面に開口するスリットを形成する工程である。スリットは、リューター等を使用して形成することが好ましい。スリットは、電極部原料付きハニカム成形体の側面に開口するように形成する。電極部原料付きハニカム成形体に形成するスリットとしては、これまでに説明した本発明のハニカム構造体に形成されるスリットの好ましい態様と同様のスリットが好ましい。例えば、電極部原料付きハニカム成形体に、図1に示されるハニカム構造体100に形成されるスリット6と同様のスリットを形成することが好ましい。
【0100】
A3工程は、電極部原料付きハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体を得る工程である。焼成を行う前に、電極部原料付きハニカム成形体を乾燥してもよい。また、焼成の前に、充填材用原料中のバインダ等を除去するため、仮焼成を行ってもよい。焼成条件としては、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜10時間、酸化処理を行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。
【0101】
また、A3工程においては、電極部原料付きハニカム成形体を、300〜1500℃で熱処理してもよい。この熱処理は、これまでに説明した、仮焼成及び焼成に含まれる熱処理であってもよいし、仮焼成及び焼成とは別に行ってもよい。
【0102】
A4工程は、ハニカム焼成体に形成されたスリットに、充填材用原料を充填する工程である。A4工程では、まず、充填材用原料を調製する。充填材用原料は、これまでに説明した本発明のハニカム構造体における充填材を作製するための原料である。例えば、充填材用原料は、骨材、ネック材、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して得られた混合物を混練して得ることができる。充填材用原料は、スラリー状のものであることが好ましい。充填材用原料に含まれる骨材及びネック材は、これまでに説明した本発明のハニカム構造体における充填材の好ましい態様と同様のものであることが好ましい。ハニカム構造体の製造方法においては、最終的に得られるハニカム構造体のハニカム構造部の熱膨張係数α1に対する、上述した熱処理後の充填材の熱膨張係数α2の比率(α2/α1)
が、0.8〜1.25となるように、充填材用原料を調製する。
【0103】
骨材としては、炭化珪素、コージェライト、アルミニウムチタネート、タルク、マイカ、及びリチウムアルミニウムチタネート、モンモリロナイト、タルク、ベーマイト、フォルステライト、カオリン、ムライトからなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む骨材を用いることが好ましい。また、骨材として、群から選択される少なくとも1種の成分を含む骨材を複数種類用意し、複数種類の骨材を混合して使用してもよい。
【0104】
充填材用原料中の骨材の含有比率、及び充填材用原料中のネック材の含有比率は、本発明のハニカム構造体における充填材の好ましい態様と同様のものであることが好ましい。骨材の含有比率及びネック材の含有比率は、充填材用原料を調製する段階で、適宜、好ましい数値範囲となるように調節することができる。骨材の平均粒子径についても、本発明のハニカム構造体における充填材の好ましい態様と同様のものであることが好ましく、充填材用原料を調製する際、好ましい平均粒子径の骨材を選択して使用することができる。
【0105】
充填材用原料に用いるバインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、グリセリン等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、骨材及びネック材の合計質量を100質量部としたときに、0〜25質量部であることが好ましい。
【0106】
水の含有量は、骨材及びネック材の合計質量を100質量部としたときに、15〜75質量部であることが好ましい。
【0107】
充填材用原料に用いる界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、骨材及びネック材の合計質量を100質量部としたときに、0〜15質量部であることが好ましい。
【0108】
充填材用原料に用いる造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、骨材及びネック材の合計質量を100質量部としたときに、0〜85質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、3〜150μmであることが好ましい。3μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。150μmより大きいと、大気孔ができやすくなり、強度低下を起こすことがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0109】
電極部原料付きハニカム成形体に形成したスリットに、充填材用原料を充填する方法については特に制限はないが、シリンジ等を用いて、充填材用原料をスリットに充填する方法を挙げることができる。このような方法によれば、スリット内に充填材用原料を均等に充填することができる。勿論、充填材用原料を、箆(へら)等を用いてスリット内に充填してもよい。
【実施例】
【0110】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0111】
(実施例1)
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合して、炭化珪素−金属珪素混合物を作製した。そして、炭化珪素−金属珪素混合物に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とし、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部であった。造孔材の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部であった。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は20μmであった。炭化珪素、金属珪素及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0112】
得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いて成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両端面を所定量切断した。
【0113】
次に、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを60:40の質量割合で混合し、これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、保湿剤としてグリセリン、分散剤として界面活性剤を添加すると共に、水を添加して、混合した。混合物を混練して電極部形成原料とした。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに0.5質量部であった。グリセリンの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに10質量部であった。界面活性剤の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに0.3質量部であった。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は52μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素及び金属珪素の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。混練は、縦型の撹拌機で行った。
【0114】
次に、電極部形成原料を、乾燥させたハニカム成形体の側面に、厚さが1.5mm、「セルの延びる方向に直交する断面において中心角の0.5倍が50°」になるようにして、ハニカム成形体の両端面間に亘るように帯状に塗布した。電極部形成原料は、乾燥させたハニカム成形体の側面に、2箇所塗布した。そして、セルの延びる方向に直交する断面において、2箇所の電極部形成原料を塗布した部分の中の一方(1箇所の部分)が、他方(もう1箇所の部分)に対して、ハニカム成形体の中心を挟んで反対側に配置されるようにした。
【0115】
次に、ハニカム成形体に塗布した電極部形成原料を乾燥させて、電極部原料付きハニカム乾燥体を得た。乾燥条件は、70℃とした。
【0116】
次に、電極部原料付きハニカム乾燥体に、4本のスリットを形成した。スリットは、リューターを用いて形成した。なお、スリットは、電極部原料付きハニカム乾燥体を焼成した後に形成してもよい。例えば、電極部原料付きハニカム乾燥体を、脱脂し、焼成して、電極部原料付きハニカム焼成体を得、得られた電極部原料付きハニカム焼成体にスリットを形成してもよい。その後、スリットを形成した電極部原料付きハニカム焼成体を酸化処理して、スリット付きハニカム構造体を作製してもよい。
【0117】
次に、スリットを形成した電極部原料付きハニカム乾燥体を、脱脂し、焼成し、更に酸化処理して、スリット付きハニカム構造体を得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とした。焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。酸化処理の条件は、1300℃で1時間とした。得られたスリット付きハニカム構造体は、電極部が配設されていない2箇所の側面のそれぞれに2本ずつ、合計4本のスリットが形成されたものであった。4本のスリットの「セルの延びる方向」における長さは、ハニカム構造部の「セルの延びる方向」における長さと同じであった。スリット深さは、3mmであった。スリット幅は、1mmであった。スリット角度は、120°であった。4本のスリットのそれぞれは、スリット付きハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面において、当該断面の中心に向かって形成されたものであった。
【0118】
次に、充填材用原料を調製した。まず、シリカからなるネック材と、炭化珪素からなる骨材、コージェライトからなる骨材を混合した。以下、炭化珪素からなる骨材を、「SiC骨材」ということがある。コージェライトからなる骨材を、「Cd骨材」ということがある。ネック材とSiC骨材とCd骨材とは、質量比が12:6:82(ネック材:SiC骨材:Cd骨材)となるように混合した。これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、保湿剤としてグリセリン、分散剤として界面活性剤、造孔材を添加すると共に、水を添加して、混合した。混合物を混練して充填材用原料とした。バインダの含有量は、ネック材とSiC骨材とCd骨材の合計を100質量部としたときに、1.0質量部であった。グリセリンの含有量は、ネック材とSiC骨材とCd骨材の合計を100質量部としたときに、4.0質量部であった。界面活性剤の含有量は、ネック材とSiC骨材とCd骨材の合計を100質量部としたときに、0質量部であった。水の含有量は、ネック材とSiC骨材とCd骨材の合計を100質量部としたときに、34.5質量部であった。造孔材の含有量は、ネック材とSiC骨材とCd骨材の合計を100質量部としたときに、6.7質量部であった。充填材用原料に用いたSiC骨材の平均粒子径は、3μmであった。充填材用原料に用いたCd骨材の平均粒子径は、8μmであった。SiC骨材及びCd骨材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。混練は、縦型の撹拌機で行った。充填材用原料の粘度は、250Pであった。充填材用原料の粘度は、B型粘度計によって測定した値である。
【0119】
次に、得られた充填材用原料を、スリット付きハニカム構造体のスリット内に充填して、充填材用原料充填済みハニカム構造体を得た。充填材用原料を充填する際には、充填材用原料をシリンジ内に導入し、このシリンジを用いて、スリット内に充填(注入)した。充填材用原料は、4本のスリットの全てに充填した。充填材用原料の充填量は、スリット容積と同等とした。
【0120】
次に、得られた充填材用原料充填済みハニカム構造体を、1225℃の温度で熱処理した。熱処理は、大気雰囲気にて行った。熱処理の時間は、1時間とした。このようにして、実施例1のハニカム構造体を製造した。
【0121】
得られたハニカム構造体の隔壁の平均細孔径(気孔径)は8.6μmであり、気孔率は45%であった。平均細孔径および気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。また、ハニカム構造体の、隔壁の厚さは90μmであり、セル密度は90セル/cmであった。また、ハニカム構造体の底面は直径(外径)93mmの円形であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さは100mmであった。ハニカム構造体を構成するハニカム構造部の熱膨張係数α1は、4.5×10−6であった。2つの電極部の厚さは、いずれも1.5mmであった。また、電極部の電気抵抗率は、1.3Ωcmであり、ハニカム構造部の電気抵抗率は、100Ωcmであった。また、ハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、セルの形状は六角形であった。
【0122】
スリット内に充填された充填材は、強度が、1200kPa以上であり、ヤング率が、540MPa以下であった。充填材の強度は、ハニカム構造体の中心に充填材を有しており、厚み:幅が1:2であるサンプルの4点曲げにて測定した値である。充填材のヤング率は、4点曲げ強度測定の20〜50%の応力負荷時の応力と歪みにて測定した値である。
【0123】
充填材の気孔率は60%であった。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。充填材の熱膨張係数α2は、4.6×10−6であった。したがって、実施例1のハニカム構造体は、ハニカム構造部の熱膨張係数α1に対する、充填材の熱膨張係数α2の比率(α2/α1)が、1.022であった。
【0124】
実施例1のハニカム構造体における、ハニカム構造部の熱膨張係数α1に対する、充填材の熱膨張係数α2の比率(α2/α1)を、表1の「熱膨張係数比率(α2/α1)」の欄に示す。充填材の、「強度(kPa)」、「ヤング率(MPa)」、及び「気孔率(%)」を、表1に示す。「充填材の熱膨張係数α2」及び「ハニカム構造部の熱膨張係数α1」を、表1に示す。
【0125】
また、充填材の構成を、表2に示す。表2の「ネック材」の欄は、充填材に含まれる骨材とネック材の合計100質量部としたときの、ネック材の質量の比率(質量部)を示す。ここで、実施例1,3,6,10,12〜15,18〜21,24,25,28〜37、参考例2,4,5,7〜9,11,16,17,22,23,26,27及び比較例1〜10にて骨材として使用した「SiC骨材」、「Cd骨材」、及び「SiO骨材」を総称して、「骨材」という。実施例又は参考例1〜37及び比較例1〜10においては、骨材として、「SiO骨材」を使用していない場合もある。表2の「SiC骨材」の欄は、充填材に含まれる骨材とネック材の合計100質量部としたときの、SiC骨材の質量の比率(質量部)を示す。表2の「Cd骨材」の欄は、充填材に含まれる骨材とネック材の合計100質量部としたときの、Cd骨材の質量の比率(質量部)を示す。表2の「SiO骨材」の欄は、充填材に含まれる骨材とネック材の合計100質量部としたときの、SiO骨材の質量の比率(質量部)を示す。表2の「SiC骨材の平均粒子径」、「Cd骨材の平均粒子径」、「SiO骨材の平均粒子径」の欄は、上述した「SiC骨材」、「Cd骨材」、及び「SiO骨材」のそれぞれの平均粒子径を示す。表2の「造孔材量」の欄は、充填材を作製するための充填材用原料に含まれる造孔材の量を示し、骨材とネック材の合計100質量部としたときの、造孔材の質量の比率(質量部)を示す。また、各実施例、参考例及び比較例にて製造されたハニカム構造体について、充填材を構成する各成分の質量比率を、充填材の断面をSEM観察して、画像処理ソフトによって画像解析して求めた。この結果より、製造段階の充填材を構成する各成分の質量比率と、製造されたハニカム構造体における充填材を構成する各成分とが、同等の値であることが確認された。画像処理ソフトとしては、Win ROOF(商品名)(三谷商事株式会社製)を使用した。質量比率の算出方法は、以下の通りである。まず、充填材から、「断面」を観察するためのサンプルを切り出した。このサンプルの断面の凹凸を樹脂で埋め、更に研磨を行い、研磨面のSEM観察を行った。そして、「断面」5視野(倍率100倍)の観察結果から、充填材中に占める各成分の面積比率を求めた。求められた面積比率を、充填材中に占める各成分の体積比率と見做し、骨材及びネック材の比重を考慮して、上記体積比率を質量換算して、「充填材を構成する各成分の質量比率」を求めた。また、各実施例、参考例及び比較例にて製造されたハニカム構造体について、充填材に含まれる骨材の平均粒子径を、充填材の断面をSEM観察して、画像処理ソフト(Win ROOF(商品名)(三谷商事株式会社製))によって画像解析して求めた。この結果より、製造段階の骨材の平均粒子径と、製造されたハニカム構造体における充填材内の骨材の平均粒子径は同等の値であることが確認された。
【0126】
得られたハニカム構造体について、以下に示す方法で、「耐熱衝撃性試験」を行った。表3に、「耐熱衝撃性試験」の結果として、「縦クラックの発生温度」、及び「端面クラックの発生温度」を示す。
【0127】
[耐熱衝撃性試験(バーナー試験)]
「ハニカム構造体を収納する金属ケースと、当該金属ケース内に加熱ガスを供給することができるプロパンガスバーナーと、を備えたプロパンガスバーナー試験機」を用いてハニカム構造体の加熱冷却試験を実施した。上記加熱ガスは、ガスバーナー(プロパンガスバーナー)でプロパンガスを燃焼させることにより発生する燃焼ガスとした。そして、上記加熱冷却試験によって、ハニカム構造体にクラックが発生するか否かを確認することにより、耐熱衝撃性を評価した。具体的には、まず、プロパンガスバーナー試験機の金属ケースに、得られたハニカム構造体を収納(キャニング)した。そして、金属ケース内に、プロパンガスバーナーにより加熱されたガス(燃焼ガス)を供給し、ハニカム構造体内を通過するようにした。金属ケースに流入する加熱ガスの温度条件(入口ガス温度条件)を以下のようにした。まず、5分で指定温度まで昇温し、指定温度で10分間保持し、その後、5分で100℃まで冷却し、100℃で10分間保持した。このような昇温、冷却、保持の一連の操作を「昇温、冷却操作」と称する。その後、ハニカム構造体のクラックを確認した。そして、指定温度を825℃から25℃ずつ上昇させながら上記「昇温、冷却操作」を繰り返した。指定温度は、825℃から25℃ずつ、14段階設定した。つまり、上記「昇温、冷却操作」は、指定温度が1150℃になるまで行った。指定温度が高くなると昇温峻度が大きくなり、中心部に対して外周部の昇温が遅れることにより、中心部と外周部の温度差が拡大し、発生応力が大きくなる。指定温度が900℃を超えるまでクラックが発生しないハニカム構造体は、耐熱衝撃性試験が合格である。つまり、指定温度900℃においてクラックが発生しなければ、更に高い指定温度においてクラックが発生しても合格であり、指定温度900℃以下でクラックが発生した場合に不合格となる。本耐熱衝撃性試験では、以下の2種類のクラックについて、発生の有無を確認した。1種類目のクラックは、「縦クラック」と呼ばれるものであり、2種類目のクラックは、「端面クラック」と呼ばれるものである。「縦クラック」は、ハニカム構造体の側面に、当該ハニカム構造体の第一端面から第二端面に向かう方向に発生するクラックである。「端面クラック」は、ハニカム構造体の端面に発生するクラックである。表3の「縦クラックの発生温度」の欄には、上記した縦クラックの発生が確認された温度を示す。表3の「端面クラックの発生温度」の欄には、上記した端面クラックの発生が確認された温度を示す。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
(実施例3,6,10,12〜15,18〜21,24,25,28〜37、参考例2,4,5,7〜9,11,16,17,22,23,26,27、比較例1〜10)
各条件を、表1,表2,表4,表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様にして、「耐熱衝撃性試験」を行った。表3,表6に、「耐熱衝撃性試験」の結果として、「縦クラックの発生温度」、及び「端面クラックの発生温度」を示す。比較例3及び比較例5では、充填材用原料の粘度が高すぎて、スリットへの充填材用原料の充填が不可能で、ハニカム構造体を製造することできなかった。したがって、比較例3及び比較例5については、「耐熱衝撃性試験」を行うことができなかった。比較例3及び比較例5に関しては、表1において「充填材用原料の充填が不可」と記している。
【0132】
【表4】
【0133】
【表5】
【0134】
【表6】
【0135】
(結果)
表3及び表6に示すように、実施例1,3,6,10〜15,18〜21,24,25,28〜37及び参考例2,4,5,7〜9,16,17,22,23,26,27のハニカム構造体は、「縦クラックの発生温度」及び「端面クラックの発生温度」が、共に900℃以上であり、耐熱衝撃性に優れたものであった。一方、比較例1,2,4,6〜10のハニカム構造体は、「縦クラックの発生温度」及び「端面クラックの発生温度」のうちの少なくとも一方が、900℃未満であり、耐熱衝撃性に問題があるものであった。比較例3及び比較例5では、充填材用原料の粘度が高すぎて、スリットへの充填材用原料の充填が不可能であり、ハニカム構造体を製造することできなかった。以上の結果より、ハニカム構造部の熱膨張係数α1に対する、充填材の熱膨張係数α2の比率(α2/α1)を0.6〜1.5とすることにより、高温時のクラックの発生が抑制されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明のハニカム構造体は、自動車の排ガスを浄化する排ガス浄化装置用の触媒担体として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0137】
1:隔壁、2:セル、3:外周壁、4:ハニカム構造部、5:側面、6:スリット、6a:最短距離スリット、7:充填材、11:第一端面(端面)、12:第二端面(端面)、21:電極部、82:曲げ試験用試料、83:内側支点、84:外側支点、85:長さ、86:幅、87:厚さ、88:充填材の幅、89:ハニカム構造部、100,120,130,140,150,160,170,180,190,200:ハニカム構造体、O:中心、C:(電極部の)中央部、L:中心線、L1,L2:線分、α:中心角、β:角度、θ:中心角の0.5倍の角度、A,B:領域、D:距離、P:点(端点)、SA:スリット角度、HL:半直線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14