特許第6259384号(P6259384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6259384緊張材の伸び量計測装置、および緊張材の伸び量計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6259384
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】緊張材の伸び量計測装置、および緊張材の伸び量計測方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20171227BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   E04G21/12 104F
   G01B11/16 H
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-205944(P2014-205944)
(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-75073(P2016-75073A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】591121111
【氏名又は名称】株式会社安部日鋼工業
(73)【特許権者】
【識別番号】000163110
【氏名又は名称】極東鋼弦コンクリート振興株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】早川 岳
(72)【発明者】
【氏名】辛 軍青
(72)【発明者】
【氏名】黒輪 亮介
(72)【発明者】
【氏名】菊池 厚
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−021268(JP,A)
【文献】 特開平11−079700(JP,A)
【文献】 特開2006−242831(JP,A)
【文献】 特開2014−041145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/12
G01B 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物にプレストレスを付与するための緊張材をジャッキ装置を用いて引っ張る際に、その緊張材の伸び量を計測する伸び量計測装置であって、
前記ジャッキ装置は、前記構造物側に支持される被支持体と、その被支持体に対し、前記構造物から離れる側に移動可能な可動体とを、備え、
前記可動体は、その可動体の、前記構造物から離れる側への移動により、前記緊張材を引っ張ることができるよう、前記緊張材の端側を保持する保持部を有し、
前記伸び量計測装置は、第1マークと、第2マークと、撮像装置と、画像処理装置とを備え、
前記第1マークおよび前記第2マークは、相対的に前記第1マークが前記構造物側に位置して前記第2マークが前記構造物から離れた側に位置するようにして、前記第1マークが、前記被支持体または前記構造物における、前記緊張材の配置経路上の外表面に付され、前記第2マークが、前記緊張材に付され、
前記撮像装置は、前記第1マークおよび前記第2マークを同じフレーム内に収めて撮像するものであって、
前記画像処理装置は、前記撮像装置で撮像した画像を解析して、前記第1マークから前記第2マークまでの距離を計測し、かつ、その計測値の、前記緊張材の緊張の過程で変化する変化量を算出して、その変化量を、前記ジャッキ装置による前記緊張材の計測伸び量とする、緊張材の伸び量計測装置。
【請求項2】
前記ジャッキ装置は、複数本の前記緊張材を同時に引っ張るものであって、前記複数本の緊張材のうちの二本以上の緊張材のそれぞれに対応して、前記第1マークおよび前記第2マークが付され、前記撮像装置は、それら第1マークおよび第2マークの組のうちの二組以上を同じフレーム内に収めて撮像するものである、請求項1に記載の緊張材の伸び量計測装置。
【請求項3】
前記撮像装置は、前記ジャッキ装置の前記被支持体あるいは前記可動体に、アーム部材を介して固定される、請求項1または2に記載の緊張材の伸び量計測装置。
【請求項4】
構造物にプレストレスを付与するための緊張材をジャッキ装置を用いて引っ張る際に、その緊張材の伸び量を計測する伸び量計測装置であって、
前記ジャッキ装置は、前記構造物側に支持される被支持体と、その被支持体に対し、前記構造物から離れる側に移動可能な可動体とを、備え、
前記可動体は、その可動体の、前記構造物から離れる側への移動により、前記緊張材を引っ張ることができるよう、前記緊張材の端側を保持する保持部を有し、
前記伸び量計測装置は、マークと、撮像装置と、画像処理装置とを備え、
前記マークは、前記緊張材の端側に付され、
前記撮像装置は、前記構造物の設置面、前記構造物または前記被支持体に固定あるいは載置された状態で、前記マークを撮像するものであって、
前記画像処理装置は、前記撮像装置で撮像した画像を解析して、前記マークの、前記緊張材の緊張の過程で変位する変位量を計測し、その変位量を、前記ジャッキ装置による前記緊張材の計測伸び量とする、緊張材の伸び量計測装置。
【請求項5】
前記ジャッキ装置は、複数本の前記緊張材を同時に引っ張るものであって、前記複数本の緊張材のうちの二本以上の緊張材のそれぞれに対応して、前記マークが付され、前記撮像装置は、それらマークのうちの二つ以上を同じフレーム内に収めて撮像するものである、請求項4に記載の緊張材の伸び量計測装置。
【請求項6】
構造物にプレストレスを付与するための緊張材をジャッキ装置を用いて引っ張る際に、その緊張材の伸び量を、伸び量計測装置を用いて計測する伸び量計測方法であって、
前記ジャッキ装置は、前記構造物側に支持される被支持体と、その被支持体に対し、前記構造物から離れる側に移動可能な可動体とを、備え、
前記可動体は、その可動体の、前記構造物から離れる側への移動により、前記緊張材を引っ張ることができるよう、前記緊張材の端側を保持する保持部を有し、
前記伸び量計測装置は、第1マークと、第2マークと、撮像装置と、画像処理装置とを備え、
前記伸び量計測方法は、
相対的に前記第1マークが前記構造物側に位置して前記第2マークが前記構造物から離れた側に位置するようにして、前記第1マークを、前記被支持体または前記構造物における、前記緊張材の配置経路上の外表面に付すとともに、前記第2マークを、前記緊張材に付し、
前記撮像装置により、前記第1マークおよび前記第2マークを同じフレーム内に収めて撮像し、
前記画像処理装置により、前記撮像装置で撮像した画像を解析して、前記第1マークから前記第2マークまでの距離を計測し、かつ、その計測値の、前記緊張材の緊張の過程で変化する変化量を算出して、その変化量を、前記ジャッキ装置による前記緊張材の計測伸び量とする、緊張材の伸び量計測方法。
【請求項7】
前記ジャッキ装置は、複数本の前記緊張材を同時に引っ張るものであって、前記複数本の緊張材のうちの二本以上の緊張材のそれぞれに対応して、前記第1マークおよび前記第2マークを付し、前記撮像装置により、それら第1マークおよび第2マークの組のうちの二組以上を同じフレーム内に収めて撮像する、請求項6に記載の緊張材の伸び量計測方法。
【請求項8】
構造物にプレストレスを付与するための緊張材をジャッキ装置を用いて引っ張る際に、その緊張材の伸び量を、伸び量計測装置を用いて計測する伸び量計測方法であって、
前記ジャッキ装置は、前記構造物側に支持される被支持体と、その被支持体に対し、前記構造物から離れる側に移動可能な可動体とを、備え、
前記可動体は、その可動体の、前記構造物から離れる側への移動により、前記緊張材を引っ張ることができるよう、前記緊張材の端側を保持する保持部を有し、
前記伸び量計測装置は、マークと、撮像装置と、画像処理装置とを備え、
前記伸び量計測方法は、
前記マークを、前記緊張材の端側に付し、
前記撮像装置により、その撮像装置が、前記構造物の設置面、前記構造物または前記被支持体に固定あるいは載置された状態で、前記マークを撮像し、
前記画像処理装置により、前記撮像装置で撮像した画像を解析して、前記マークの、前記緊張材の緊張の過程で変位する変位量を計測し、その変位量を、前記ジャッキ装置による前記緊張材の計測伸び量とする、緊張材の伸び量計測方法。
【請求項9】
前記ジャッキ装置は、複数本の前記緊張材を同時に引っ張るものであって、前記複数本の緊張材のうちの二本以上の緊張材のそれぞれに対応して、前記マークを付し、前記撮像装置により、それらマークのうちの二つ以上を同じフレーム内に収めて撮像する、請求項8に記載の緊張材の伸び量計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート構造物とか鋼構造物等の構造物に、プレストレスを付与するための緊張材の伸び量を計測する計測装置、およびその計測装置を用いた伸び量計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばプレストレストコンクリート部材において、油圧ジャッキを用いて緊張材に緊張力を導入する際に使用される伸び量検出装置があった(例えば、特許文献1参照)。ここで、油圧ジャッキは、油圧によって、本体部から作動部が押し出されるものであて、コンクリート部材から突出した緊張材の端部を、本体部で把持し、作動部を、コンクリート部材に突き当てて本体部から押し出すことで、緊張材を引っ張ることができた。伸び量検出装置は、このときの緊張材の伸び量を検出するものであって、油圧ジャッキの作動部と本体部とにまたがって取り付けられ、作動部が本体部から押し出された量を測定することで、その測定値を緊張材の伸び量とするものであった。
【0003】
しかし、この伸び量の測定方法においては、緊張材を緊張した際、油圧ジャッキの本体部での緊張材の把持部分が、緊張の初期において滑ることから、正確な緊張材の伸び量を測定することができなかった。そこで、この問題を回避するため、作動部が本体部から押し出された量を測定するのではなく、コンクリート部材あるいは作動部と、緊張材の所定の位置との相対的な変位量を、ワイヤー式変位計により測定することがあった。すなわち、この方法は、コンクリート部材あるいは作動部に、変位計本体を設置し、その変位計本体から延びるワイヤーの先端を緊張材の所定の位置に取り付けるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−21343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記ワイヤー式変位計を用いた測定方法においては、変位計本体から延びたワイヤーが断線しやすく、使いづらかった。また、変位計本体は、コンクリート本体あるいは作動部における緊張材の配置経路に設置する必要があるが、その設置にあたって変位計本体が嵩張り、設置しづらかった。このことは、特に複数本の緊張材のそれぞれに対し変位計本体を設置しようとする場合には、大きな問題となった。
【0006】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、断線しやすいワイヤーが不要で、かつ、伸び量計測装置を簡単容易に設置することができる、緊張材の伸び量計測装置、および緊張材の伸び量計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る緊張材の伸び量計測装置、および緊張材の伸び量計測方法は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る緊張材の伸び量計測装置は、構造物にプレストレスを付与するための緊張材をジャッキ装置を用いて引っ張る際に、その緊張材の伸び量を計測する伸び量計測装置である。ここにおいて、前記ジャッキ装置は、前記構造物側に支持される被支持体と、その被支持体に対し、前記構造物から離れる側に移動可能な可動体とを、備える。そして、前記可動体は、その可動体の、前記構造物から離れる側への移動により、前記緊張材を引っ張ることができるよう、前記緊張材の端側を保持する保持部を有する。そこで、前記伸び量計測装置は、第1マークと、第2マークと、撮像装置と、画像処理装置とを備える。ここで、前記第1マークおよび前記第2マークは、相対的に前記第1マークが前記構造物側に位置して前記第2マークが前記構造物から離れた側に位置するようにして、前記第1マークが、前記被支持体または前記構造物における、前記緊張材の配置経路上の外表面に付され、前記第2マークが、前記緊張材に付される。前記撮像装置は、前記第1マークおよび前記第2マークを同じフレーム内に収めて撮像するものである。そして、前記画像処理装置は、前記撮像装置で撮像した画像を解析して、前記第1マークから前記第2マークまでの距離を計測し、かつ、その計測値の、前記緊張材の緊張の過程で変化する変化量を算出して、その変化量を、前記ジャッキ装置による前記緊張材の計測伸び量とする。なお、ジャッキ装置は、複数本の緊張材を同時に引っ張るものであってもよく、また、一本の緊張材を引っ張るものであってもよい。また、撮像装置は、例えば、構造物の設置面とか、構造物とか、ジャッキ装置の被支持体や可動体とかに、固定あるいは載置されてもよいし、また、構造物の設置面とかに、移動可能な状態で配備されて、緊張材の緊張の過程で、その配備位置が変わってもよい。
【0008】
この伸び量計測装置によると、第1マークが、ジャッキ装置の被支持体または構造物における、緊張材の配置経路上の外表面に付され、第2マークが、緊張材に付される。そこで、撮像装置で、第1マークおよび第2マークを同じフレーム内に収めて撮像し、画像処理装置で、その撮像した画像を解析して、第1マークから第2マークまでの距離を計測する。そして、その計測値の、緊張材の緊張の過程で変化する変化量を算出することで、緊張材の伸び量を計測する。これにより、従来のワイヤー式変位計を用いるのとは異なり、断線しやすいワイヤーが不要となる。そして、ジャッキ装置または構造物には第1マークが、また、緊張材には、第2マークが付されるが、それらマークは、嵩張らず、また、撮像装置や画像処理装置は、ジャッキ装置から離れて配置することができる。したがって、第1マークおよび第2マーク、そして、撮像装置および画像処理装置、つまり、この伸び量計測装置を簡単容易に設置することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明に係る緊張材の伸び量計測装置は、請求項1に記載の伸び量計測装置において、前記ジャッキ装置は、複数本の前記緊張材を同時に引っ張るものであって、前記複数本の緊張材のうちの二本以上の緊張材のそれぞれに対応して、前記第1マークおよび前記第2マークが付され、前記撮像装置は、それら第1マークおよび第2マークの組のうちの二組以上を同じフレーム内に収めて撮像するものである。こうして、第1マークおよび第2マークの組が複数組ある場合であっても、それらマークは、嵩張ることがなく、二本以上の緊張材の伸び量を、難なく計測することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明に係る緊張材の伸び量計測装置は、請求項1または2に記載の伸び量計測装置において、前記撮像装置は、前記ジャッキ装置の前記被支持体あるいは前記可動体に、アーム部材を介して固定される。
【0011】
また、請求項4に記載の発明に係る緊張材の伸び量計測装置は、構造物にプレストレスを付与するための緊張材をジャッキ装置を用いて引っ張る際に、その緊張材の伸び量を計測する伸び量計測装置である。ここにおいて、前記ジャッキ装置は、前記構造物側に支持される被支持体と、その被支持体に対し、前記構造物から離れる側に移動可能な可動体とを、備える。そして、前記可動体は、その可動体の、前記構造物から離れる側への移動により、前記緊張材を引っ張ることができるよう、前記緊張材の端側を保持する保持部を有する。そこで、前記伸び量計測装置は、マークと、撮像装置と、画像処理装置とを備える。ここで、前記マークは、前記緊張材の端側に付される。前記撮像装置は、前記構造物の設置面、前記構造物または前記被支持体に固定あるいは載置された状態で、前記マークを撮像するものである。そして、前記画像処理装置は、前記撮像装置で撮像した画像を解析して、前記マークの、前記緊張材の緊張の過程で変位する変位量を計測し、その変位量を、前記ジャッキ装置による前記緊張材の計測伸び量とする。
【0012】
この伸び量計測装置によると、マークが、緊張材の端側に付される。そこで、撮像装置で、マークを撮像し、画像処理装置で、その撮像した画像を解析して、マークの、緊張材の緊張の過程で変位する変位量を計測することで、緊張材の伸び量を計測する。これにより、従来のワイヤー式変位計を用いるのとは異なり、断線しやすいワイヤーが不要となる。そして、緊張材には、マークが付されるが、そのマークは、嵩張らず、また、撮像装置や画像処理装置は、ジャッキ装置から離れて配置することができる。したがって、マーク、そして、撮像装置および画像処理装置、つまり、この伸び量計測装置を簡単容易に設置することができる。
また、請求項5に記載の発明に係る緊張材の伸び量計測装置は、請求項4に記載の緊張材の伸び量計測装置において、前記ジャッキ装置は、複数本の前記緊張材を同時に引っ張るものであって、前記複数本の緊張材のうちの二本以上の緊張材のそれぞれに対応して、前記マークが付され、前記撮像装置は、それらマークのうちの二つ以上を同じフレーム内に収めて撮像するものである。こうして、マークが複数ある場合であっても、それらマークは、嵩張ることがなく、二本以上の緊張材の伸び量を、難なく計測することができる。
【0013】
また、請求項に記載の発明に係る緊張材の伸び量計測方法は、構造物にプレストレスを付与するための緊張材をジャッキ装置を用いて引っ張る際に、その緊張材の伸び量を、伸び量計測装置を用いて計測する伸び量計測方法である。ここにおいて、前記ジャッキ装置は、前記構造物側に支持される被支持体と、その被支持体に対し、前記構造物から離れる側に移動可能な可動体とを、備える。前記可動体は、その可動体の、前記構造物から離れる側への移動により、前記緊張材を引っ張ることができるよう、前記緊張材の端側を保持する保持部を有する。そして、前記伸び量計測装置は、第1マークと、第2マークと、撮像装置と、画像処理装置とを備える。そこで、前記伸び量計測方法は、相対的に前記第1マークが前記構造物側に位置して前記第2マークが前記構造物から離れた側に位置するようにして、前記第1マークを、前記被支持体または前記構造物における、前記緊張材の配置経路上の外表面に付すとともに、前記第2マークを、前記緊張材に付す。その後、前記撮像装置により、前記第1マークおよび前記第2マークを同じフレーム内に収めて撮像する。次いで、前記画像処理装置により、前記撮像装置で撮像した画像を解析して、前記第1マークから前記第2マークまでの距離を計測し、かつ、その計測値の、前記緊張材の緊張の過程で変化する変化量を算出して、その変化量を、前記ジャッキ装置による前記緊張材の計測伸び量とする。
【0014】
この伸び量計測方法によると、第1マークが、ジャッキ装置の被支持体または構造物における、緊張材の配置経路上の外表面に付され、第2マークが、緊張材に付される。そこで、撮像装置で、第1マークおよび第2マークを同じフレーム内に収めて撮像し、画像処理装置で、その撮像した画像を解析して、第1マークから第2マークまでの距離を計測する。そして、その計測値の、緊張材の緊張の過程で変化する変化量を算出することで、緊張材の伸び量を計測する。これにより、従来のワイヤー式変位計を用いるのとは異なり、断線しやすいワイヤーが不要となる。そして、ジャッキ装置または構造物には第1マークが、また、緊張材には、第2マークが付されるが、それらマークは、嵩張らず、また、撮像装置や画像処理装置は、ジャッキ装置から離れて配置することができる。したがって、第1マークおよび第2マーク、そして、撮像装置および画像処理装置、つまり、この伸び量計測装置を簡単容易に設置することができる。
また、請求項7に記載の発明に係る緊張材の伸び量計測方法は、請求項6に記載の緊張材の伸び量計測方法において、前記ジャッキ装置は、複数本の前記緊張材を同時に引っ張るものであって、前記複数本の緊張材のうちの二本以上の緊張材のそれぞれに対応して、前記第1マークおよび前記第2マークを付し、前記撮像装置により、それら第1マークおよび第2マークの組のうちの二組以上を同じフレーム内に収めて撮像する。こうして、第1マークおよび第2マークの組が複数組ある場合であっても、それらマークは、嵩張ることがなく、二本以上の緊張材の伸び量を、難なく計測することができる。
【0015】
また、請求項に記載の発明に係る緊張材の伸び量計測方法は、構造物にプレストレスを付与するための緊張材をジャッキ装置を用いて引っ張る際に、その緊張材の伸び量を、伸び量計測装置を用いて計測する伸び量計測方法である。ここにおいて、前記ジャッキ装置は、前記構造物側に支持される被支持体と、その被支持体に対し、前記構造物から離れる側に移動可能な可動体とを、備える。前記可動体は、その可動体の、前記構造物から離れる側への移動により、前記緊張材を引っ張ることができるよう、前記緊張材の端側を保持する保持部を有する。そして、前記伸び量計測装置は、マークと、撮像装置と、画像処理装置とを、備える。そこで、前記伸び量計測方法は、前記マークを、前記緊張材の端側に付す。その後、前記撮像装置により、その撮像装置が、前記構造物の設置面、前記構造物または前記被支持体に固定あるいは載置された状態で、前記マークを撮像する。次いで、前記画像処理装置により、前記撮像装置で撮像した画像を解析して、前記マークの、前記緊張材の緊張の過程で変位する変位量を計測し、その変位量を、前記ジャッキ装置による前記緊張材の計測伸び量とする。
【0016】
この伸び量計測方法によると、マークが、緊張材の端側に付される。そこで、撮像装置で、マークを撮像し、画像処理装置で、その撮像した画像を解析して、マークの、緊張材の緊張の過程で変位する変位量を計測することで、緊張材の伸び量を計測する。これにより、従来のワイヤー式変位計を用いるのとは異なり、断線しやすいワイヤーが不要となる。そして、緊張材には、マークが付されるが、そのマークは、嵩張らず、また、撮像装置や画像処理装置は、ジャッキ装置から離れて配置することができる。したがって、マーク、そして、撮像装置および画像処理装置、つまり、この伸び量計測装置を簡単容易に設置することができる。
また、請求項9に記載の発明に係る緊張材の伸び量計測方法は、請求項8に記載の緊張材の伸び量計測方法において、前記ジャッキ装置は、複数本の前記緊張材を同時に引っ張るものであって、前記複数本の緊張材のうちの二本以上の緊張材のそれぞれに対応して、前記マークを付し、前記撮像装置により、それらマークのうちの二つ以上を同じフレーム内に収めて撮像する。こうして、マークが複数ある場合であっても、それらマークは、嵩張ることがなく、二本以上の緊張材の伸び量を、難なく計測することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る緊張材の伸び量計測装置、および緊張材の伸び量計測方法によれば、撮像装置によって撮像されるマークを用いることで、断線しやすいワイヤーが不要となり、かつ、伸び量計測装置を簡単容易に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の第一の実施の形態の、全体を示す概略の正面図であり、実線は、緊張材を引っ張る初期の状態を示し、二点鎖線は、緊張材を引っ張った後の状態を示す。
図2】同じく、伸び量計測装置を示すブロック図である。
図3】同じく、マークを示す拡大正面図である。
図4】この発明の第二の実施の形態の、全体を示す概略の平面図であり、実線は、緊張材を引っ張る初期の状態を示し、二点鎖線は、緊張材を引っ張った後の状態を示す。
図5】同じく、伸び量計測装置を示すブロック図である。
図6】この発明の他の実施の形態の、全体を示す概略の平面図であり、実線は、緊張材を引っ張る初期の状態を示し、二点鎖線は、緊張材を引っ張った後の状態を示す。
図7】この発明のさらに他の実施の形態の、全体を示す概略の平面図であり、実線は、緊張材を引っ張る初期の状態を示し、二点鎖線は、緊張材を引っ張った後の状態を示す。
図8】この発明の実施の形態の、図1に対する変形例を示す平面図である。
図9】この発明の実施の形態の、図6に対する変形例を示す平面図である。
図10】この発明の実施の形態の、図7に対する変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明に係る緊張材の伸び量計測装置、および緊張材の伸び量計測方法を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1図3は、本発明の第一の実施の形態を示す。図中符号1は、構造物として、例えばポストテンション方式のコンクリート構造物とか鋼構造物、あるいは、コンクリートとか鋼以外の材料からなる構造物を示す。2は、前記構造物1に通される緊張材を示し、この緊張材2は、例えば、PC鋼材とか炭素繊維補強材とかアラミド繊維補強材等からなる。3は、ジャッキ装置を示す。4は、伸び量計測装置を示し、この伸び量計測装置4は、前記構造物1にプレストレスを付与するための前記緊張材2を前記ジャッキ装置3を用いて引っ張る際に、その緊張材2の伸び量を計測するものである。
【0021】
ここで、ジャッキ装置3は、構造物1側に支持される被支持体3aと、その被支持体3aに対し、構造物1から離れる側に移動可能な可動体3bとを、備える。そして、可動体3bは、その可動体3bの、構造物1から離れる側への移動により、緊張材2を引っ張ることができるよう、緊張材2の端側を保持する保持部3cを有する。
【0022】
伸び量計測装置4は、第1マーク5aと、第2マーク5bと、撮像装置6と、画像処理装置7とを備える。ここで、第1マーク5aおよび第2マーク5bは、相対的に第1マーク5aが構造物1側に位置して第2マーク5bが構造物1から離れた側に位置するようにして、第1マーク5aが、ジャッキ装置3の被支持体3aまたは構造物1(図示実施の形態においては、被支持体3a)における、緊張材2の配置経路上の外表面に付され、第2マーク5bが、緊張材2に付される(図示実施の形態においては、構造物1と保持部3cとの間において、緊張材2に付される)。
【0023】
撮像装置6は、第1マーク5aおよび第2マーク5bを同じフレーム内に収めて撮像するものである。画像処理装置7は、撮像装置6で撮像した画像を解析して、第1マーク5aから第2マーク5bまでの距離を計測し、かつ、その計測値の、緊張材2の緊張の過程で変化する変化量を算出して、その変化量を、ジャッキ装置3による緊張材2の計測伸び量とする。
【0024】
具体的には、構造物1は、内部にシース(図示せず)を有し、そのシース内に前記緊張材2が挿入される。そして、シースの各端には、緊張材2を定着するための定着具1aが、支圧板1bを介して配置され、緊張材2は、その定着具1a内を通り、構造物1の外に出る。図示実施の形態においては、シース内には、複数本の緊張材2、2が挿入されており、それら緊張材2、2が、定着具1a内を通り、構造物1の外に出る。なお、この定着具1aとか支圧板1bは、構造物1の一部として捉えられる。
【0025】
ジャッキ装置3は、例えば油圧によって作動し、前記被支持体3aは、ピストン3dと、その先に配置される座金3eとを備える。そして、この座金3eが、構造物1における定着具1aに突き当てられる。そこで、定着具1a内を通った緊張材2は、さらに座金3e内を通り、外部に露出する。一方、可動体3bは、前記ピストン3dがスライド可能に挿入されるシリンダーからなる。そこで、このシリンダーからなる可動体3bに対し、ピストン3dが相対移動することで、そのピストン3dを含む被支持体3aに対し、可動体3b(つまり、シリンダー)が、ピストン3dの軸方向に移動する。そして、この可動体3bの前端側の外周部には、緊張材2を掴むチャック3fを有する前記保持部3cが複数並設されている。
【0026】
伸び量計測装置4は、前述したように、第1および第2マーク5a、5bと、撮像装置6と、画像処理装置7を備えるが、第1マーク5aおよび第2マーク5bは、撮像装置6による撮像の対象となるマークであって、第1のマーク表示板501および第2のマーク表示板502にそれぞれ、印刷されたりして表示されて、それらマーク表示板501、502が、マーク5a、5bを付す対象物に取付固定される。
【0027】
撮像装置6は、例えば、ステレオカメラからなり、複数(図示実施の形態においては二つ)の、カメラ部としての撮像部6a、6aと、それら撮像部6a、6aが固定されるベース部6bとを備える。そして、二つの撮像部6a、6aのそれぞれが、第1マーク5aと第2マーク5bとの両方を視野に捉える。そして、図示実施の形態においては、この撮像装置6は、ジャッキ装置3における可動体3bに、固定用治具としてのアーム部材8を介して固定される。すなわち、アーム部材8は、その基端が、取付け具9によって可動体3bに固定され、アーム部材8の先端に、撮像装置6におけるベース部6bが固定される。なお、図1において、撮像部6aから延びる破線は、その撮像部6aにおける視野範囲を示す(後述する図4、および、図6図10においても同じ)。
【0028】
画像処理装置7は、例えば、パーソナルコンピューターからなり、撮像装置6からの電気信号を受けて、その信号の情報をソフトウエアにより処理する。
【0029】
ところで、図示実施の形態においては、ジャッキ装置3は、複数本の緊張材2、2(詳しくは、可動体3bの外周部に配置されて保持された複数本の緊張材2、2)を同時に引っ張るマルチストランドシステム用緊張ジャッキ装置であって、それら複数本の緊張材2、2のうちの二本以上の緊張材2、2のそれぞれに対応して、第1マーク5aおよび第2マーク5bが付され、撮像装置6は、それら第1マーク5aおよび第2マーク5bのうちの二組以上を同じフレーム内に収めて撮像するものとなっている。
【0030】
ここで、前記緊張材2の伸び量を、前記伸び量計測装置4を用いて計測する伸び量計測方法について、説明する。この伸び量計測方法は、初めに、相対的に第1マーク5a(第1のマーク表示板501)が構造物1側に位置して第2マーク5b(第2のマーク表示板502)が構造物1から離れた側に位置するようにして、第1マーク5aを、ジャッキ装置3の被支持体3aまたは構造物1(図示実施の形態においては、被支持体3a)における、緊張材2の配置経路上の外表面に付すとともに、第2マーク5bを、緊張材2に付す(図示実施の形態においては、構造物1と保持部3cとの間において、緊張材2に付す)。その後、撮像装置6により、第1マーク5aおよび第2マーク5bを同じフレーム内に収めて撮像する。次いで、画像処理装置7により、撮像装置6で撮像した画像を解析して、第1マーク5aから第2マーク5bまでの距離を計測し、かつ、その計測値の、緊張材2の緊張の過程で変化する変化量を算出して、その変化量を、前記ジャッキ装置3による緊張材2の計測伸び量とする。
【0031】
ここにおいて、第1マーク5aと第2マーク5bとの付す順序は、特に問わない。また、ジャッキ装置3は、緊張材2の一端側に配置されてもよく、両端側に配置されてもよい。すなわち、緊張材2を緊張するにあたって、その緊張材2を、一端側のみから引っ張る片引きであってもよく、両端側から引っ張る両引きであってもよい。そして、緊張材2を両端側から引っ張る場合には、それぞれの側の計測伸び量の和が、緊張材2の伸び量となる。そして、この緊張材2の伸び量と、別途計測したジャッキ装置3による引張りの荷重との関係を、理論的な計算値と比較することで、緊張材2の緊張状態の適否を評価することができる。また、この際には、必要に応じて、シースと緊張材2との摩擦抵抗とか、構造物1の縮み量とかの影響を、適宜考慮する。このことは、後述する、第二の実施の形態およびその他の実施の形態においても同様である。
【0032】
次に、この第一の実施の形態に示す、緊張材2の伸び量計測装置4、および緊張材2の伸び量計測方法の作用効果について説明する。この伸び量計測装置4および伸び量計測方法によると、第1マーク5aが、ジャッキ装置3の被支持体3aまたは構造物1(図示実施の形態においては、被支持体3a)における、緊張材2の配置経路上の外表面に付される。そして、第2マーク5bが、緊張材2に付される(図示実施の形態においては、構造物1と保持部3cとの間において、緊張材2に付される)。そこで、撮像装置6で、第1マーク5aおよび第2マーク5bを同じフレーム内に収めて撮像し、画像処理装置7で、その撮像した画像を解析して、第1マーク5aから第2マーク5bまでの距離を計測する。そして、その計測値の、緊張材2の緊張の過程で変化する変化量を算出することで、緊張材2の伸び量を計測する。これにより、従来のワイヤー式変位計を用いるのとは異なり、断線しやすいワイヤーが不要となる。そして、ジャッキ装置3または構造物1には第1マーク5aが、また、緊張材2には、第2マーク5bが付されるが、それらマーク5a、5bは、嵩張らず、また、撮像装置6や画像処理装置7は、ジャッキ装置3から離れて配置することができる。したがって、第1マーク5aおよび第2マーク5b、そして、撮像装置6および画像処理装置7、つまり、この伸び量計測装置4を簡単容易に設置することができる。すなわち、この伸び量計測装置4および伸び量計測方法によれば、撮像装置6によって撮像されるマーク5a、5bを用いることで、従来のワイヤー式変位計を用いた場合と異なり、断線しやすいワイヤーが不要となり、かつ、伸び量計測装置4を簡単容易に設置することができる。
【0033】
また、ジャッキ装置3は、複数本の緊張材2、2を同時に引っ張るものであって、そのうちの二本以上の緊張材2、2のそれぞれに対応して、第1マーク5aおよび第2マーク5bが付され、撮像装置6で、それら第1マーク5aおよび第2マーク5bの組のうちの二組以上を同じフレーム内に収めて撮像する。こうして、第1マーク5aおよび第2マーク5bの組が複数組ある場合であっても、それらマーク5a、5bは、嵩張ることがなく、二本以上の緊張材2、2の伸び量を、難なく計測することができる。
【0034】
図4図5は、本発明の第二の実施の形態を示す。この実施の形態は、第一の実施の形態とは、第1マーク5aおよび第2マーク5bに替えて、マーク5cが用いられ、また、その関係で、撮像装置6の配置とか画像処理装置7による処理の内容が異なるが、構造物1とかジャッキ装置3とかは同じであり、以下に、同様の部位には同一の符号を付して異なる部分を主に説明する。
【0035】
伸び量計測装置4は、マーク5cと、撮像装置6と、画像処理装置7とを備える。ここで、マーク5cは、緊張材2の端側に付される(図示実施の形態においては、構造物1と、ジャッキ装置3の可動体3bにおける保持部3cとの間において、緊張材2に付される)。詳しくは、第一の実施の形態に示す第1マーク5aとか第2マーク5bと同様に、マーク5cは、撮像装置6による撮像の対象となるマークであって、マーク表示板503に、印刷されたりして表示され、そのマーク表示板503が、マーク5cを付す対象物である緊張材2に取付固定される。
【0036】
例えばステレオカメラからなる撮像装置6は、構造物1の設置面、構造物1またはジャッキ装置3の被支持体3aに固定あるいは載置された状態で(図示実施の形態においては、構造物1の設置面に三脚等の台を介して載置された状態で)、前記マーク5cを撮像するものである。そして、画像処理装置7は、撮像装置6で撮像した画像を解析して、前記マーク5cの、緊張材2の緊張の過程で変位する変位量を計測し、その変位量を、ジャッキ装置3による緊張材2の計測伸び量とする。
【0037】
ところで、図示実施の形態においては、ジャッキ装置3は、複数本の緊張材2、2(詳しくは、可動体3bの外周部に配置されて保持された複数本の緊張材2、2)を同時に引っ張るマルチストランドシステム用緊張ジャッキ装置であって、それら複数本の緊張材2、2のうちの二本以上の緊張材2、2のそれぞれに対応して、マーク5cが付され、撮像装置6は、それらマーク5c、5cのうちの二つ以上を同じフレーム内に収めて撮像するものである。
【0038】
ここで、緊張材2の伸び量を、この伸び量計測装置4を用いて計測する伸び量計測方法は、初めに、マーク5cを、緊張材2の端側に付す(図示実施の形態においては、構造物1と保持部3cとの間において、緊張材2に付す)。その後、撮像装置6により、その撮像装置6が、構造物1の設置面、構造物1またはジャッキ装置3の被支持体3a(図示実施の形態においては、構造物1の設置面)に固定あるいは載置された状態で、前記マーク5cを撮像する。次いで、画像処理装置7により、撮像装置6で撮像した画像を解析して、前記マーク5cの、緊張材2の緊張の過程で変位する変位量を計測し、その変位量を、ジャッキ装置3による緊張材2の計測伸び量とする。
【0039】
次に、この第二の実施の形態に示す、緊張材2の伸び量計測装置4、および緊張材2の伸び量計測方法の作用効果について説明する。この伸び量計測装置4および伸び量計測方法によると、マーク5cが、緊張材2の端側に付される(図示実施の形態においては、構造物1と保持部3cとの間において、緊張材2に付される)。そこで、撮像装置6で、マーク5cを撮像し、画像処理装置7で、その撮像した画像を解析して、マーク5cの、緊張材2の緊張の過程で変位する変位量を計測することで、緊張材2の伸び量を計測する。これにより、従来のワイヤー式変位計を用いるのとは異なり、断線しやすいワイヤーが不要となる。そして、緊張材2には、マーク5cが付されるが、そのマーク5cは、嵩張らず、また、撮像装置6や画像処理装置7は、ジャッキ装置3から離れて配置することができる。したがって、マーク5c、そして、撮像装置6および画像処理装置7、つまり、この伸び量計測装置4を簡単容易に設置することができる。すなわち、この伸び量計測装置4および伸び量計測方法によれば、撮像装置6によって撮像されるマーク5cを用いることで、従来のワイヤー式変位計を用いた場合と異なり、断線しやすいワイヤーが不要となり、かつ、伸び量計測装置4を簡単容易に設置することができる。
【0040】
また、ジャッキ装置3は、複数本の緊張材2、2を同時に引っ張るものであって、そのうちの二本以上の緊張材2、2のそれぞれに対応して、マーク5cが付され、撮像装置6で、それらマーク5c、5cのうちの二つ以上を同じフレーム内に収めて撮像する。こうして、マーク5cが複数ある場合であっても、それらマーク5c、5cは、嵩張ることがなく、二本以上の緊張材2、2の伸び量を、難なく計測することができる。
【0041】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、構造物1は、内部のシースに対し、複数本の緊張材2、2が挿入されるが、この挿入される緊張材2は、複数本に限らず一本のみであってもよく、この場合には、例えばシングルストランドシステム用緊張ジャッキ装置等のジャッキ装置によって、その一本の緊張材2が引っ張られる。図6は、この一例を示し、ジャッキ装置3としてセンターホール型のジャッキが用いられ、ジャッキ装置3の中央を一本の緊張材2が貫通するように配置される。そして、ピストン側が被支持体3aとなり、シリンダー側が可動体3bとなって、そのシリンダー(可動体3b)の内側に、緊張材2を保持する保持部3cが設けられる。
【0042】
また、ジャッキ装置3は、油圧によって作動するものであって、ピストン側が被支持体3aとなり、シリンダー側が可動体3bとなっているが、反対に、シリンダー側を被支持体3aとし、ピストン側を可動体3bとしてもよい。図7は、この一例を示し、ジャッキ装置3としてセンターホール型のジャッキが用いられ、ジャッキ装置3の中央を複数本の緊張材2が貫通するように配置される。そして、シリンダー側が被支持体3aとなり、ピストン側が可動体3bとなって、そのピストン(可動体3b)の端部に、緊張材2を保持する保持部3cが設けられる。また、この例においては、撮像装置6は、ジャッキ装置3のシリンダー(被支持体3a)に、アーム部材8を介して固定される。
【0043】
また、ジャッキ装置3は、油圧シリンダー等のシリンダー方式のジャッキ以外に、ネジジャッキ等の機械式のジャッキからなってもよい。
【0044】
また、第一の実施の形態において、撮像装置6は、ジャッキ装置3の可動体3bに固定されるが、他に、構造物1の設置面とか、構造物1とか、ジャッキ装置3の被支持体3aに固定あるいは載置されてもよい。さらに、この撮像装置6は、構造物1の設置面とかに、移動可能な状態で配備されて、緊張材2の緊張の過程で、その配備位置が変わっても構わない。ここで、図8図10は、撮像装置6を構造物1の設置面に三脚等の台を介して載置した例を示し、図8は、図1に対する変形例であり、図9は、図6に対する変形例であり、図10は、図7に対する変形例である。
【0045】
また、第二の実施の形態において、撮像装置6は、構造物1の設置面に固定あるいは載置されるが、他に、構造物1とかジャッキ装置3の被支持体3aとかに固定あるいは載置されてもよい。
【0046】
また、撮像装置6は、複数(二つ、または三つ以上)の撮像部6aを備えるが、それら撮像部6a、6aは、その全部が、または、グループ毎に、ベース部6b等により連結されて配備されてもよく、また、それぞれが、個別に配備されてもよく、その配置は任意である。もっとも、撮像装置6は、一つの撮像部6aを備えるものであってもよい。
【0047】
また、第一の実施の形態において、第1マーク5aとか第2マーク5bは、第1のマーク表示板501とか第2のマーク表示板502に表示されて、そのマーク表示板501、502が、マーク5a、5bを付す対象物に取付固定されるが、第1マーク5aとか第2マーク5bを、それらマーク5a、5bを付す対象物である、被支持体3aとか構造物1とか緊張材2に、マーカーペン等により直接描いてもよい。このことは、第二の実施の形態におけるマーク5cについても同様である。また、マーク5a、5b、5cの図柄は、勿論図3に示すものに限定されるものではない。
【0048】
また、緊張材2は、構造物1に埋設されたシースに通されるもの(いわゆる、内ケーブル)の他に、構造物1における空洞部分とか周面に沿って通されるもの(いわゆる、外ケーブル)であってもよく、また、例えば斜張橋のように主桁(構造物)から露出するものでもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 構造物
2 緊張材
3 ジャッキ装置
3a 被支持体
3b 可動体
3c 保持部
4 伸び量計測装置
5a 第1マーク
5b 第2マーク
5c マーク
6 撮像装置
7 画像処理装置
8 アーム部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10