(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カウル構造は、前記前方開口よりも前方に設けられ、前記前方開口よりも前方の領域に到達する走行風を前記前方開口に集めるように案内する案内部を有する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る鞍乗型車両の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明で用いる各方向は、鞍乗型車両に乗った運転者から見た各方向であり、左右方向は車体の車幅方向と一致する。以下の説明では、車体の車幅方向の内側を「内側」といい、車体の車幅方向の外側を「外側」という。
【0012】
まず、本実施形態の鞍乗型車両10において、車体にダウンフォースを作用させることが必要な事情を説明する。鞍乗型車両10では、サイドカウル44a,44bは、前端部から後端部に進むにつれて車幅方向外側に進んで傾斜することで、運転者の脚部に向かう走行風を逸らす。サイドカウル44a,44bの後端部は、ラジエータコア22aの近傍に位置する。ラジエータコア22aを通過した走行風は、サイドカウル44a,44bに干渉することなく、車幅方向後方かつ下方に逸れて流れる。サイドカウル44a,44bは、ラジエータコア22aへ走行風を導く導風機能を有する。各サイドカウル44a,44bの車幅方向内側面は、ラジエータコア22aよりも前方に延びて配置される。左のサイドカウル44aと右のサイドカウル44bとの間の空間の上方は、ヘッドランプユニット56およびフロントカウル42等によって塞がれる。また、左右一対のサイドカウル44a,44b間は、走行風導入可能に開口が形成され、サイドカウル44a,44b間であって、サイドカウル44a,44bの前端部よりも後方にラジエータコア22aが配置される。これによって、サイドカウル44a,44b間で且つサイドカウル44a,44bの前端より後方に導かれた走行風は、車幅方向外側に逸れることが防がれて、ラジエータコア22aに導かれる。
【0013】
高速走行によってサイドカウル44a,44b間空間に導かれる走行風が多量になると、サイドカウル44a,44b間に導かれた走行風によって前輪26を上方に持上げる方向の力が車両10に生じて、前輪26の接地荷重が低下しやすい。本実施形態では、ラジエータコア22aの前面およびエンジン20のシリンダ前面が下方に進むにつれて後方に傾斜するので、前輪26を上方に持ち上げる方向の力が働きやすい。本実施形態では、後述するフロントカウル構造14が採用されることによって、フロントカウル42の上方に臨む面に衝突する走行風によって、ダウンフォースを発生させて、フロントカウル42を下方に押し付ける力を発生させる。これによって、高速走行時において、前輪26の接地荷重の低下を抑えて、駆動力及び制動力を前輪26から路面に伝えやすくできる。またサイドカウル44a,44b間の空間に導かれる走行風にかかわらず、ダウンフォースを発生させて、前輪26の接地荷重を高めることで、前輪26から路面に与える駆動力および制動力を高めることができ、走行性能を向上させることができる。
【0014】
以下、鞍乗型車両10の構成等を具体的に説明する。
図1は、実施形態に係る鞍乗型車両10の構成を示す平面図である。
図2は、鞍乗型車両10の構成を示す正面図である。本実施形態の鞍乗型車両10は、自動二輪車であり、走行時には、前方から走行風を受ける。
図1に示すように、鞍乗型車両10は、車体12と、車体12の前部を覆うように設けられたフロントカウル構造14とを有している。
【0015】
図1に示すように、車体12は、車体フレーム18と、車体フレーム18に搭載されたエンジン20と、エンジン20を冷却する冷却装置22とを有している。冷却装置22は、エンジン20から熱を奪った冷却液と走行風との間で熱交換を行うためのラジエータコア22aを有している。ラジエータコア22aは、走行風を受ける面が前方を向くようにして、エンジン20の前方に配置されている。
【0016】
また、
図2に示すように、車体12は、車体フレーム18(
図1)の前部に設けられた左右一対のフロントフォーク24a,24bと、フロントフォーク24a,24bに支持された前輪26と、車体フレーム18(
図1)の後部に設けられたスイングアーム(図示省略)と、スイングアームで支持された後輪28と、フロントフェンダー30とを有している。
【0017】
さらに、
図1に示すように、車体12は、ステアリングハンドル34と、ステアリングハンドル34の後方に設けられた燃料タンク36と、燃料タンク36の後方に設けられたシート38とを有している。ステアリングハンドル34には、左右一対のグリップ40a,40bが設けられている。運転者は、シート38に跨ってグリップ40a,40bを握り、ステアリングハンドル34を操作する。
【0018】
図2に示すように、フロントカウル構造14は、フロントフェンダー30の上方、かつ、フロントフォーク24a,24bの上端前方において車体12を覆うように構成されたフロントカウル42と、フロントフォーク24a,24bの左右方向両側において車体12を覆うように構成された左右一対のサイドカウル44a,44bとを有している。フロントカウル構造体14は、車体正面視において、前方に露出する部分である。フロントカウル構造体14は、一つの部材によって形成されてもよく、複数の部材が連結されて形成されてもよい。フロントカウル構造体14の外形形状は、前端から後方に進むにつれて車幅方向外側に離れるとともに、前端から上方および下方に離れる形状に形成される。本実施形態のフロントカウル構造14は、ダウンフォースを発生させるための空力デバイス46a,46bを含んで構成される。
【0019】
図2に示すように、フロントカウル42の上面は、後方に向かうにつれて高くなるように傾斜する傾斜面42aを構成している。そして、フロントカウル42は、ウインドシールド48を支持するとともに、左右一対のサイドミラー60a,60bが取り付けられる。
【0020】
図2に示すように、フロントカウル42の前端部42bには、左右一対の開口部62a,62bが前方に開くように形成されている。本実施形態では、ラムダクト63が左側の開口部62aに接続されている。開口部62aからラムダクト63に取り込まれた空気は、図示しないエアクリーナー等を通して、エンジン20(
図1)に供給される。フロントカウル42の下方には、ラジエータコア22aに走行風を供給するためのラジエータ開口23が構成されている。なお、ラムダクト63は、右側の開口部62bに接続されてもよい。
【0021】
図1に示すように、左右一対のサイドカウル44a,44bのそれぞれは、前端から後方に向かうにつれて外側に滑らかに膨らむように板状に形成されている。
図2に示すように、各サイドカウル44a,44bは、車体側面視において、それらの上部がフロントカウル42の外側部64a,64bと車幅方向に間隔をあけて重なるように、車体12に取付けられている。フロントカウル構造14の外側部14a,14bは、サイドカウル44a,44bによって構成されている。これにより、カウル構造14の外側部14a,14bには、平面視において、前端から後端に向かうにつれて外側に滑らかに膨らんで空気抵抗を低減させる膨出部83と、運転者へ向かう走行風を外側へ逸らす風防部81とが設けられている。フロントカウル構造体14は、車幅方向外面に位置する外側部14aが形成される。膨出部82は、外側部14aのうちで前部分に位置し、前端から後方に向かうにつれて車幅方向外側に滑らかに膨らむ。本実施形態では、膨出部82は、傾斜壁80、外側壁82及び上壁86を有している。風防部81は、車体正面視において、乗車姿勢の運転者と重なり、運転者よりも前方に位置する部分となる。運転者へ衝突する走行風を防ぐために、風防部81は、フロントカウル構造体14のうちで比較的外方側部分に形成される。本実施形態では、風防部81は、フロントカウル42の側部とサイドカウル44a,44bとで構成されている。
【0022】
図3は、カウル構造14の左半分に設けられた空力デバイス46aの構成を示す正面図である。
図4は、カウル構造14の左半分の構成を前方右側から見た拡大斜視図である。
図5は、左側の空力デバイス46aを縦に切断して左側から見た構成を模式的に示す断面図である。本実施形態では、フロントカウル42と左側のサイドカウル44aとによって左側の空力デバイス46aが構成されており、フロントカウル42と右側のサイドカウル44bとによって右側の空力デバイス46bが構成されている。左側の空力デバイス46aと右側の空力デバイス46bとは、左右対称に形成されている。以下には、空力デバイス46a,46bの構成を左側の空力デバイス46aに着目して説明する。
【0023】
図3及び4に示すように、空力デバイス46aは、走行風を用いて下向きの揚力であるダウンフォースを発生させる揚力発生部66と、走行風を揚力発生部66へ案内する案内部68とを有している。揚力発生部66は、フロントカウル構造14の外側部14aに設けられており、案内部68は、カウル構造14の前端部14cに設けられている。空力デバイス46aは、フロントカウル構造体14の車幅方向両側部に形成される。空力デバイス46aは、ラジエータ開口23よりも上方に配置されるとともに、フロントカウル構造体14の前部であってフロントフォーク24a,24bよりも前方に形成される。フロントフォーク24a,24bよりも前方に空力デバイス46a,46bを配置することで、ダウンフォースが発生した場合にフロントフォーク24a,24bを下方に押付けるモーメント力を大きくすることができる。このようになるべく前方に空力デバイス46a,46bを設けることが好ましい。空力デバイス46aは、フロントカウル42の上面よりも外側であるフロントカウル側面部に形成される。空力デバイス46aは、ウインドシールド48およびサイドミラー60aよりも後方に配置される。また空力デバイス46aは、ハンドルグリップ40aと同じ高さ位置に配置され、ヘッドランプユニット56の側方に配置される。
【0024】
図3及び4に示すように、揚力発生部66は、略四角形の横断面を有する筒状部70を有している。
図5に示すように、筒状部70の前部には、車体前方に開かれた前方開口72aが形成された前方開口形成部72が設けられている。車体前方の空間と、前方開口72aとを連通する空間が形成される。これによって車体前方から後方に流れる走行風が、前方開口72aに導入可能となる。同様に車体後方の空間と、後方開口とを連通する空間が形成される。これによって後方開口76aから後方に流れた走行風が、車体後方の外部空間に導出可能となる。また、筒状部70の前部における前方開口形成部72よりも前方には、導入口74aが形成された導入口形成部74が設けられている。導入口74aは車幅方向の内方に開かれている。導入口74aは、案内部68で案内された走行風を前方開口72aに向けて偏向する。筒状部70の後部には、車体後方に開かれた後方開口76aが形成された後方開口形成部76が設けられている。
【0025】
図5に示すように、筒状部70の内部には、導入口74aから前方開口72aを経て後方開口76aに至る走行風の流路Rが構成されている。前方開口72aは、その開口面積S1が後方開口76aの開口面積S2よりも小さく、かつ、導入口74aの開口面積S3よりも小さくなるように形成されている。つまり、流路Rの断面積は、前方開口72aにおいて絞られている。したがって、流路Rを流れる走行風は、前方開口72aにおいて流速が増大する。
【0026】
図5に示すように、筒状部70の底部には、後方に向かうにつれて高くなるように傾斜した滑らかな傾斜面80aを有する傾斜壁80が設けられている。傾斜壁80は、前方開口形成部72の下部と後方開口形成部76の下部との間に連続的に配置されている。傾斜壁80の傾斜面80aは、傾斜壁80の上面であって、前方開口72aの下端と後方開口76aの下端とを前後方向に接続し、前後方向に延びる。本実施例では、後方開口72aは、前方開口72aよりも車幅方向外側に配置される。したがって傾斜面80aは、前端から後方に進むにつれて車幅方向外側に進む。具体的には、傾斜面80aは、後方に進むにつれて車幅方向外側に滑らかに湾曲する。傾斜壁80の傾斜面80aは、上下方向寸法に比べて前後方向寸法が大きく形成される。本実施例では、傾斜壁80aの後端部は、ウインドシールド48よりも後方に位置し、具体的には、前後方向に関してフロントフォーク24a,24bの位置まで延びる。フロントカウル42の側面に傾斜面80aが形成されることで、フロントカウル42上面に傾斜面が形成される場合に比べて、前後長さを大きくしやすい。フロントカウル42の側面に傾斜面80aが形成されることで、後方開口76aから導出された走行風が運転者に向かって流れることを防ぐことができる。
図3に示すように、本実施形態では、傾斜壁80は、カウル構造14の外側部14aに設けられたサイドカウル44aの内側面に一体的に形成されている。つまり、傾斜壁80は、膨出部83よりも内側に配置されている。傾斜面80aは、ウインドシールド48よりも車幅方向外側に配置されている。
【0027】
図3に示すように、傾斜壁80の外側部80bから上方に突出して前後方向に延びる外側壁82が形成されている。本実施形態では、外側壁82は、カウル構造14の外側部14aに設けられたサイドカウル44aによって構成されている。外側壁82は、ステアリングハンドル34に設けられたグリップ40aの外側端よりも内側であって、前輪26よりも上方に配置されている。外側壁82の前端部には、筒状部70の前端を閉塞するように内側に湾曲した湾曲部82aが形成されている。導入口74aから流路Rに流入した走行風は、外側壁82によって外側へ逸れることが防止される。
【0028】
筒状部70の天井部には、後方に向かうにつれて高くなるように傾斜した滑らかな傾斜面86aを有する板状の上壁86が設けられている。
図5に示すように、上壁86は、導入口形成部74から前方開口形成部72を経て後方開口形成部76に至る領域に連続的に配置されている。上壁86の傾斜面86aの水平面に対する傾斜角度は、傾斜壁80の傾斜面80aの水平面に対する傾斜角度よりも大きく設定されている。これによって、後方開口76aの開口面積は、前方開口72aの開口面積よりも大きくなっている。また、上壁86の後端は、傾斜壁80の後端よりも前方に配置されており、後方開口76aは、後方に向かうにつれて高さが低くなるように傾斜している。これによっても、後方開口76aの開口面積は大きくなっている。
図3に示すように、本実施形態では、上壁86が、傾斜壁80および外側壁82と共にサイドカウル44aの内側面に一体的に形成されている。導入口74aから流路Rに流入した走行風は、上壁86によって上側へ逸れることが防止される。
【0029】
図3に示すように、傾斜面86aの上面の外側部には、上方へ突出する突条88が前後方向に延びて形成されている。突条88は、半円状の横断面を有しており、突条88によって、内側から外側に向けて高くなる段差部88aが構成されている。段差部88aによって傾斜面86a上を流れる走行風が外側に逸れることが抑制される。なお、突条88の横断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、三角状、四角状、逆L字状であってもよい。
【0030】
図3に示すように、傾斜壁80の内側部80cの上方には、内側壁90が前後方向に延びて形成されている。本実施形態では、内側壁90が、フロントカウル42の外側部64aによって構成されている。このように傾斜壁80、外側壁82、上壁86、内側壁90によって、前後に開口72a,76aが形成される四角筒状に形成される。これによって前方開口72aから導入された走行風は、後方開口76a以外から漏れ出ることが防がれる。前方開口72aは、前方に向いて開放され、その通路断面積は、上下寸法が車幅方向寸法よりも大きく形成される。これによって車体が車幅方向に大型化することを防ぎつつ、前方開口72aから導入される走行風を増やすことができる。また後方開口76aは、後方に向いて開口され、その通路断面積は、前後方向寸法が車幅方向寸法よりも大きく形成される。これによって車体が車幅方向に大型化することを防いで、前方開口72aから導出される走行風を増やすことができる。また前方開口72aの上端部は、後方開口76aの下端部よりも下方に位置することが好ましい。これによって前方開口72aの上端部付近を通過して水平に後方に進む走行風でも、後方開口76aに達する前に傾斜面80aに衝突することになり、ダウンフォースを高めやすい。
【0031】
また前方開口72aから後方開口76aに進むにあたっての通路断面積が徐々に小さくなるように形成される。具体的には、傾斜面80aは、後方に進むにつれて車幅方向寸法が徐々に短くなるように形成される。これによって傾斜面80a上を流れる走行風の流速の減少を抑え、後方に進むにつれて傾斜面80a上を流れる走行風の流速を高めることができる。また、カウリング構造体14のうち、ハンドル34付近へ流れる走行風を車幅方向外側に逸らす風防部81として車幅方向外側に膨らむ部分に空力デバイス46a,46bが形成される。これによってカウリング構造体14が不所望に車幅方向に大型化することを防いで、ダウンフォースを得ることができる。導入口74aから流路Rに流入した走行風は、内側壁90によって内側へ逸れることが防止される。
【0032】
図3及び4に示すように、案内部68は、前方領域Qに到達する走行風を前方開口72aに集めるように案内する部分である。ここで、前方領域Qとは、前方開口72aよりも前方の領域をいう。本実施形態の前方領域Qは、前方開口72aよりも車幅方向の内側に位置している。案内部68は、前方開口72aよりも前方において、前方開口72aよりも内側に配置されるように、フロントカウル42に対して一体的に形成されている。案内部68は、開口部62aの下方に形成された第1案内面96aと、第1案内面96aの上端縁と開口部62aの下端縁との間に形成された第2案内面96bと、第1案内面96aおよび第2案内面96bよりも内側に形成された第3案内面96cとを有している。第1案内面96a、第2案内面96bおよび第3案内面96cのそれぞれは、走行風を受けることができるように前方に向けて形成されている。
【0033】
第1案内面96aは、後方に向かうにつれて高くなるように傾斜した滑らかな傾斜面であり、第2案内面96bは、側面視において、後方に向かうにつれて低くなるように傾斜した滑らかな傾斜面である。第1案内面96aと第2案内面96bとによって、後方に窪んだV字状の溝98が形成されている。溝98の谷線98aは、外側に向かうにつれて高くなり且つ後方に進むように車幅方向に対して傾斜して直線状に延びて形成されている。V字上の溝98は、外側に進むにつれて上方に傾斜することで、内側よりも外側のほうが案内する走行風が増える。V字状の溝98を深くしたり、上方に傾斜させたりすることで、案内する走行風が増えたとしても、案内部からもれることを防ぐことができる。溝98の外側の端部は、導入口74aよりも内側に配置されている。第1案内面96aは、正面視における上下方向寸法および車幅方向寸法の両方が第2案内面96bよりも大きくなり、かつ、前方からの投影面積が第2案内面96bよりも大きくなるように形成されている。第3案内面96cは、内側に向かうにつれて前方に位置するように車幅方向に対して傾斜して形成されている。
【0034】
傾斜壁80の車幅方向外側部に上方に突出する外側壁82が形成されることで、傾斜壁80に沿って後方に流れる走行風が、傾斜壁80から車幅方向外側への逸脱を防ぐことができる。特に傾斜壁80が車幅方向外側に湾曲する場合には、遠心力によって車幅方向外側に力を受けやすいが、車幅方向外側への逸脱を好適に防ぐことができる。正面視における案内部68の投影面積は、前方開口72aの面積よりも大きく形成される。これによって前方開口72aを前方に向ける場合に比べて、前方開口72a内に導かれる走行風を増加することができる。特に案内部68は、フロントカウル構造体14の前面部に形成されることで、圧力が高い走行風を前方開口72aに導くことができる。前述した案内溝98の谷は、外側に向かうにつれて深くなるように形成されることが好ましい。案内溝98は、フロントカウル42前面部のうちで下方に形成される。具体的には、上下方向中央よりも下方、更に具体的には、ヘッドランプユニット56またはラムダクト63の開口よりも下方に形成されることで、傾斜壁80の傾斜面80aを下方位置から後方に延ばすことができる。これによって傾斜面80aの角度を所定値に固定した状態で、傾斜面80aの長さを大きくすることができる。
【0035】
導入口74aは、前後方向寸法に比べて上下方向寸法が大きく形成される。導入口形成部74は、導入口74aと前方開口72aとを接続するとともに、導入口74aに導入された走行風の向きを変えて前方開口72aに導く。具体的には、正面視において前端部から外方に進むにつれて滑らかに後方に向かう湾曲面が外側部14a,14bに形成される。このようにして案内面96a,96b,96cにて集められた走行風を、流速低下を防ぎつつ、走行風を後方に流して前方開口に導くことができる。また導入口形成部74に湾曲面が形成されることで、正面視において前方開口72aを隠すことができ、美観を向上することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、第2案内面96bが、後方に向かうにつれて低くなるように形成されているが、第2案内面96bは、水平面に対して垂直に形成されてもよいし、後方に向かうにつれて高くなるように形成されてもよい。第2案内面96bを後方に向かうにつれて高くなるように形成する場合には、V字状の溝98を構成するために、第2案内面96bの傾斜角度が第1案内面96aの傾斜角度よりも大きく設定されることが望ましい。
【0037】
図2に示す鞍乗型車両10の走行時には、カウル構造14が前方から走行風を受ける。カウル構造14の前方から前方領域Qに到達した走行風は、第1案内面96aによって下方へ逸れることが抑制され、第2案内面96bによって上方に逸れることが抑制され、第3案内面96cによって内側に逸れることが抑制される。これにより、前方領域Qに到達した走行風の一部は、溝98に集められ、溝98によって外側に導かれ、導入口形成部74によって偏向されて、導入口74aを通して前方開口72aに供給される。
図5に示すように、前方開口72aに供給された走行風は、前方開口72aを通ってその後方の領域に流入し、傾斜面80a上を流れて後方開口76aから車体後方に向けて車両外部に流出する。傾斜面80aは、後方に向かうにつれて高くなるように傾斜しているので、走行風が傾斜面80aに衝突することによって、ダウンフォースが発生する。これにより、前輪26(
図2)の浮き上がりを抑制でき、高速走行安定性を向上させることができる。
【0038】
図5に示すように、後方開口76aが車体後方に開いて形成されているので、前方開口72aから後方開口76aに向かう空気が詰まることが防がれて、空気の移動を促進でき、走行風の流速低下を抑制できる。また、傾斜面80aの上方の流路Rは筒状部70で構成されているので、走行風が流路Rから上下及び車幅方向内外に逸れることを抑制できる。さらに、案内部68で走行風を集めることによって、前方開口面積より大きい面積部分に衝突した走行風を前方開口に導くことができ、前方開口72aに供給される走行風の圧力(流量)を増大させることができる。さらに、断面積が絞られた前方開口72aにおいて、走行風の流速を増大させることができる。したがって、高速の走行風を傾斜面80aに衝突させることができ、ダウンフォースを効果的に発生させることができる。
【0039】
図5に示すように、導入口形成部74は、前方開口72aよりも前方に配置され、車幅方向の内方に開かれた第1導入口74aを有しており、案内部68は、前方開口72aおよび導入口74aよりも内側かつ前方に配置されているので、案内部68が集めた走行風を導入口74aから前方開口72aに導き易い。
図3に示すように、空力デバイス46aの外側壁82がサイドカウル44a,44bで構成されているので、案内部68の車幅方向寸法を大きくすることができ、案内部68によって大量の走行風を集めることができる。案内部68は、フロントカウル42(
図3)に一体的に形成されているので、部品点数を削減できる。
【0040】
図3及び4に示すように、案内部68の第1案内面96a、空力デバイス46aの傾斜面86aおよびフロントカウル42の傾斜面42aは、後方に向かうにつれて高くなるように傾斜しているので、これらの面に走行風が衝突することによってもダウンフォースを発生させることができる。
【0041】
図2に示すように、フロントカウル42の両外側部64a,64bの外側面に空力デバイス46a,46bが設けられているので、車幅方向におけるダウンフォースのバランスをよくすることができる。また、外側壁82(
図3)は、ステアリングハンドル34(
図1)に設けられたグリップ40aの外側端よりも内側であって、前輪26よりも上方に配置されているので、バンク角が小さくなることを抑制できる。
【0042】
前方領域Q(
図3)に到達した走行風の一部は、第1案内面96aに衝突して上方に向きを変え、開口部62aからラムダクト63に流入するので、より多くの空気をエンジン20(
図1)に供給することができる。
【0043】
図1に示すように、カウル構造14の外側部14a,14bは、平面視において、前端から後方に向かうにつれて外側に滑らかに膨らむ膨出部83を構成しているので、空気抵抗を低減できる。また、カウル構造14の外側部14a,14bは、運転者へ向かう走行風を外側へ逸らすための風防部を構成しているので、運転者に当たる走行風を減少でき、運転者の疲労を軽減できる。
図3に示すように、空力デバイス46aの外側壁82、傾斜壁80および上壁86は、風防部を構成するサイドカウル44aに一体的に形成されているので、部品点数を削減でき、空気抵抗低減効果、風防効果および走行安定効果を簡単な構成で得ることができる。また、外側壁82、傾斜壁80および上壁86のそれぞれがフロントカウル42の装備品と干渉することを抑制できる。空力デバイス46a,46bが、ハンドル34のグリップ40a,40bの高さと近い高さでグリップ40a,40bの前方にあり、例えば、サイドミラー60a,60bより下方で且つラジエータ開口23よりも上方に配置されることで、ハンドル34付近へ流れる走行風を抑えることができ、風防効果とダウンフォース発生とをともに実現することができる。
【0044】
図3に示すように、カウル構造14の外縁部の外側面と外側壁82の外側面とは、一つの共通面に形成されているので、カウル構造14の外縁部の外側面を流れる走行風の乱れを抑制できる。また、共通面とすることで段差が生じないので、美観が損なわれることを抑制できる。
【0045】
図3に示すように、上述の実施形態では、傾斜壁80がサイドカウル44aと一体的に形成されているが、傾斜壁80は、フロントカウル42と一体的に形成されてもよいし、サイドカウル44a,44bおよびフロントカウル42のそれぞれから独立して形成されてもよい。
【0046】
上記実施形態では、傾斜面80aが前端から後方に進むにつれて車幅方向外側に湾曲して進むとしたが、直線的に外側に向かってもよい。また傾斜壁80が、前後方向に平行に延びてもよい。傾斜面80aに沿って流れる走行風が、前方開口72aから後方開口76aに移動するまでに、走行風を車幅方向外側に偏向させることが好ましい。本実施形態では、外側壁82によって偏向させたが、傾斜面80aの形状によっては内側壁90によって変更させてもよい。例えば、前方開口72aがフロントカウル構造14の車幅方向中間部に位置させてもよい。この場合、前方開口72aに導入された走行風は、内側壁90によって車幅方向外側に案内されて後方開口76aから導出される。このような場合でも本発明に含まれる。この場合には、前方開口72aの車幅方向外側または、前方開口72aの車幅方向両側に案内部が形成されてもよい。
【0047】
このように案内部は、前方開口72aの車幅方向に隣接する位置に配置されればよい。このような案内部は、傾斜壁80および外側壁82が形成されればよく、傾斜壁80の上方の壁が形成されていないものも本発明に含まれるし、車体の左右方向一方だけに形成される場合も本発明に含まれる。また、ラムダクト63がない車両も本発明に含まれる。フロントカウル42の上面やサイドカウル44a,44bの側面に空力デバイス46a,46bが形成されてもよい。傾斜壁80は、風防として走行風を運転者から逸らす部分に形成されるので、風防効果を得るとともにダウンフォース発生さえることができ、走行時のライダーの負担を減らしつつ、走行安定性を向上できる。傾斜壁80がカウル構造14の外縁部の内側に形成されるので、カウル構造14の外縁近傍を流れる走行風の乱れを防ぎ、空気抵抗の増加を抑えることができる。また、、流路Rの断面積は、前方開口72aにおいて絞られいなくてもよい。
【0048】
本発明に係る鞍乗型車両は、上述の実施形態で示した自動二輪車の他、鞍乗型の三輪車両や四輪車両等にも適用可能である。