特許第6259495号(P6259495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6259495
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】ロータリートランス
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/18 20060101AFI20171227BHJP
【FI】
   H01F38/18 E
   H01F38/18 Q
   H01F38/18 G
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-132742(P2016-132742)
(22)【出願日】2016年7月4日
(65)【公開番号】特開2017-22376(P2017-22376A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2017年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-145301(P2015-145301)
(32)【優先日】2015年7月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-155476(P2015-155476)
(32)【優先日】2015年7月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305027353
【氏名又は名称】有限会社UWAVE
(74)【代理人】
【識別番号】100074675
【弁理士】
【氏名又は名称】柳川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】大西 一正
【審査官】 岩間 直純
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−026419(JP,A)
【文献】 特開昭47−024516(JP,A)
【文献】 特開2008−235690(JP,A)
【文献】 国際公開第93/026020(WO,A1)
【文献】 実開昭56−015013(JP,U)
【文献】 特開2008−183698(JP,A)
【文献】 特開2013−021749(JP,A)
【文献】 米国特許第03611230(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/18
H01F 38/14
H01F 7/08
H02J 50/10
B65G 43/00
B23B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれコイルの巻き線が付設された、円形外縁を持つ回転子と、側面縦断面が「コ」
の字の形状となるように支持部により結合された二枚の平面部材からなり、上記回転子の
円形外縁に沿う形状の凹部を備えた一もしくは二以上の固定子とから構成された縦型のロ
ータリートランスであって、
一もしくは二以上の固定子の凹部を、合計長さが回転子の円形外縁の長さの半分以下と
なる長さの円形弧状の凹部とした上で、全ての平面部材を、弧状の円形凹部が回転子の円
形外縁の半円周域に沿った位置にのみあるように配置し、
そして
固定子に付設するコイルの巻き線を、回転子のコイルの巻き線方向に沿った方向に、か
つ固定子の一の平面部材の上側面と下側面とを巻き回すようにして付設したことを特徴と
する、回転子と固定子とが分離可能なロータリートランス。
【請求項2】
固定子の平面部材が、長方形もしくは扇状の平面部材である請求項1に記載のロータリ
ートランス。
【請求項3】
回転子が複数個のコアの組み合わせからなる請求項1に記載のロータリートランス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリートランスに関し、さらに詳しくは、研削工具としてエンドミルを用いる超音波研削装置のような、超音波を印加しながら研削工具を回転させることにより研削などの加工を行う装置において用いるのに特に有用な、結線を必要とすることなく、装置本体から回転体への電気エネルギー(または電気信号)の伝送を可能にするロータリートランスに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリートランスは、回転子(ロータ)と固定子(ステータ)とから構成された結線を必要としない電気エネルギーの伝達部材であり、回転子から固定子あるいは、その逆の固定子から回転子への電気エネルギーの伝送を、結線を必要とすることなく可能にする部材である。ロータリートランスの代表的な形状として、平型(ディスク型)と縦型(シリンダ型)の二つのタイプの形状が知られている。添付図面の図1に縦型(シリンダ型)のロータリートランスの構造の説明図を示す。図1において、(A)は、縦型(シリンダ型)のロータリートランス1の平面図を示す図であり、(B)は、その模式断面図である。図1の(A)、(B)において、ロータリートランス1は、中央のシリンダ状もしくは円盤状の回転子(ロータ)2と、その回転子(ロータ)2の周囲に配設された、同じくシリンダ状もしくは円盤状の固定子(ステータ)3とから構成されている。回転子2は一般にフェライトから形成されたボビン状の形状を持ち、その内側の凹部には、回転子の円周方向に沿って導線4がコイル状に巻かれている。また、固定子3も一般にフェライトから形成され、その内周側は「コ」の字の形状の凹部が設けられている。そして、この固定子3の凹部にも全周に沿って導線5がコイル状に巻かれている。そして、回転子2と固定子3との間の電気エネルギーの伝送は、それらのコイルに発生する磁界を介して行われる。
【0003】
ロータリートランスは、従来よりビデオテープレコーダやデジタルオーディオテープレコーダなどの録画/画像再生機器あるいは録音/音声再生機器における回転ヘッドからの入出力信号の伝送のために一般的に用いられてきた。
【0004】
一方、特許文献1は、本願発明の発明者による超音波工具ホルダの発明を開示する明細書の公開特許公報であるが、そこには、結線を利用せずに電気エネルギーの伝送を可能にするロータリートランスを利用しての超音波加工装置における枠体(ハウジング)から回転体への電気エネルギーの伝送システムが開示されている。添付図面の図2に、特許文献1の図4に示されているロータリートランスを備えた超音波研削装置を転記する。図2において超音波研削装置20は、回転する超音波工具ホルダ21とその超音波工具ホルダ21を回転可能に支持し、かつ超音波工具ホルダ21にロータリートランス22を介して超音波エネルギーを供給する枠体(ハウジング)23とから構成されている。
【0005】
これまでに知られている縦型(シリンダ型)のロータリートランスは、図1及び図2から明らかなように、リング状の回転子と同じくリング状の固定子とからなる二重リングの構造を持っている。従って、図2の超音波研削装置20の修理や保守作業などの作業において、超音波工具ホルダ21を枠体23から取り外す作業が必要となった場合に、ロータリートランス22の解体(回転子と固定子との分離)が必要となるが、回転子と固定子のそれぞれに各種構造体が結合されているため、その解体作業は容易ではない。また、それぞれ複雑な構造物が付設された回転子と固定子とを嵌めあわす作業も複雑な工程が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−194613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の発明者は、特許文献1に記載の超音波加工装置及びそれに類似する超音波加工装置の改良のための検討を引き続き行ってきたが、その検討の過程において、特許文献1に記載されたような超音波加工装置に用いるために有利に用いることができるロータリートランスの改良、すなわち、比較的大型の機械装置における回転体への電気エネルギー伝送のために用いるロータリートランスの構造の改良の必要性に気付き、その改良の検討を行った。すなわち、互いに近接対向して設置された回転子から固定子の、あるいは固定子から回転子の取り外しの作業性そして固定子と回転子との嵌めあわせの作業性の向上が可能となるロータリートランスの構造の改良を目的として検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上記のロータリートランスの構造の改良の検討を進める内に、ロータリートランスの固定子3は、必ずしも図1に示されているような回転子2の周囲の全周を取り囲むようなリング状構造にある必要はなく、固定子3に備えられるコイル5が作りだす磁界に回転子2のコイル4が接触下に置かれるように、固定子の構造と固定子に付設するコイルの巻き線を回転子のコイルの巻き線方向に沿った方向で、かつ固定子の上側面と下側面とを巻き回すようにして付設することにより、実用的に充分な機能を示すロータリートランスとなることを見出した。
【0009】
ただし、そのような構成としたロータリートランスであっても、回転子の外側円周部に対向する固定子の内側円周部が回転子の外側円周部の半分以上の長さとなる場合には、ロータリートランスとしての機能については問題ないものの、図1に示したような従来の縦型のロータリートランスの構造において問題となる回転子と固定子との間の相互の離脱作業そして嵌めあわせの複雑さの問題の解決が困難となる。従って、固定子の内側円周部は、その内側円周部に対向する回転子の外側円周部の長さの半分以下となるような弧状とする必要がある。
【0010】
本発明は、このようなロータリートランスの構造の改良を目的とした検討の結果完成した発明である。
【0011】
従って、本発明は、回転子と固定子とから構成された縦型のロータリートランスであって、回転子の円形外縁に沿って形成される固定子の円形内周を回転子の円形外縁周の長さの半分以下の長さの弧状とし、固定子に付設するコイルの巻き線を、回転子のコイルの巻き線方向に沿った方向に、かつ固定子の上側面と下側面とを巻き回すようにして付設したことを特徴とするロータリートランスにある。
【0012】
本発明のロータリートランスの好ましい態様を以下に記載する。
(1)固定子が、側面縦断面が「コ」の字の形状となるように支持部により結合された二枚の長方形の平面部材から構成されていて、その一方の端部に円形弧状の凹部が形成され、この凹部にて回転子の円形外縁面と対向するようにされている。
(2)固定子のコイルの巻き線が、上記(1)の平面部材の内の一方の側の平面部材の側面と上下面とを巻き回すように付設されている。
(3)固定子が、側面縦断面が「コ」の字の形状となるように支持部により結合された二枚の扇状平面部材から構成されていて、その一方の端部に円形弧状の凹部が形成され、この凹部にて回転子の円形外縁面と対向するようにされている。
(4)固定子が、側面縦断面が「コ」の字の形状となるように支持部により結合された二枚の扇状平面部材から構成されていて、その一方の端部に円形弧状の凹部が形成され、この凹部にて回転子の円形外縁面と対向するようにされている互いに分離された二以上の固定子片から構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のロータリートランスは、固定子から回転子を容易に分離することができる。従って、超音波を印加しながら研削工具を回転させることにより研削などの加工を行う装置に、電気エネルギーの伝送手段としてロータリートランスを組み込んだ場合において、固定子が備えられている固定体からの回転子が接続する回転体の分離作業が極めて容易となる。また、固定子が備えられている固定体に、回転子が接続する回転体を対向配置する作業も極めて容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来一般的に用いられているロータリートランスの概念図を示し、(A)は平面図であり、(B)は模式断面図である。
図2】特許文献1の図4に示されている超音波研削装置の構成を示す図である。
図3】本発明のロータリートランスの代表的構成を示す図であり、(A)は斜視図であって、(B)は模式断面図である。
図4図3に示したロータリートランスを組み込んだ超音波研削装置の構成を示す図である。
図5】本発明のロータリートランスの別の代表的構成を示す図であり、(A)は平面図であって、(B)は模式断面図である。
図6】本発明のロータリートランスのさらに別の代表的構成を示す図であり、(A)は平面図であって、(B)は模式断面図である。
図7図6に示した分割タイプの回転子の固定に利用することのできる回転子固定具と回転子コア部材を示す図であって、(A)は回転子固定具の斜視図であり、(B)は巻き線が施されたコア部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のロータリートランスを添付図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
【0016】
本発明のロータリートランスの代表的構成を図3に示す。(A)は斜視図であって、(B)は(A)の斜視図のA−A線に沿う断面の模式図である。図に示すように、本発明のロータリートランス31を構成する回転子と固定子の内、回転子32については、従来より一般的に用いられている回転子と実質的な相違はない。一方、図3の固定子33は、回転子32の円形外縁に沿って形成される円形内周を回転子32の円形外周部の長さの半分以下の弧状とし、固定子33に付設するコイルの巻き線35を、回転子32のコイルの巻き線34の方向に沿った方向に、かつ固定子33の上側面と下側面とを巻き回すようにして付設している。
【0017】
図4は、図2に示した超音波研削装置と類似の超音波研削装置に図3に示した本発明のロータリートランス31を付設した構成を示している。図4に示す超音波研削装置における回転体21と枠体23との対向配設や分離はいずれも、回転体21を、図4に示す矢印(→)の方向、あるいはその逆の方向に移動させることにより、容易に実現する。
【0018】
図5は、本発明のロータリートランスの別の代表的構成を示す図であり、(A)は平面図であって、(B)は図(A)のA−A線に沿った断面の構造を示す模式図である。図5でも、回転子52については、従来より一般的に用いられている回転子と実質的な相違はない。一方、図5のロータリートランスの固定子は、二つに分割された側面縦断面がコの字型で、平面が扇状の形状にある固定子53a、53bとから構成され、それらの固定子53a、53bの回転子52の円形外縁に沿って形成される円形内周の長さを合計で、回転子52の円形外縁の半分以下となるように弧状とし、固定子53a、53bに付設するコイルの巻き線55を、回転子52のコイルの巻き線54の方向に沿った方向に、かつ固定子53a、53bのそれぞれの上腕部の上側面と下側面とを巻き回すようにして付設している。ただし、この巻き線54は、固定子53a、53bのそれぞれの下腕部の上側面と下側面とを巻き回すようにして付設してもよい。
【0019】
ロータリートランスの回転子は前述のように、通常は、フェライトの成形体である。回転子の径が小さい場合には特に問題はないが、ロータリートランスを図2図4に示したような超音波研削装置に組み込む場合には、必然的にロータリートランスの回転子の径を大きくする必要がある。しかしながら、このように大きな直径を持つフェライト製の回転子は、その高速回転により発生する大きな遠心力により破壊され易くなる。
【0020】
本発明の発明者は、上記のような大きな遠心力が働く回転子の強度(耐破壊強度)を高めるために、回転子を複数個のコアの組み合わせとすることが有効であることを見出した。
【0021】
図6は、本発明のロータリートランスのさらに別の代表的構成を示す図であって、回転子を複数個のコア部材の組み合わせとした構成を示す。(A)は平面図であって、(B)は図(A)のA−A線に沿った断面の構造を示す模式図である。図6において、軸体66の周囲に配設される回転子62は、互いに側面に沿って分離配設された8個の回転子コア62a、62b、62c、62d、62e、62f、62g、62hから構成されている。そして、コア部材の導電用の巻き線64を、回転子62の回転方向に沿った方向(複数のコア部材により構成される回転子62の円周に沿った方向)で、各コア部材の上側面と下側面とを巻き回すようにして付設している。
【0022】
一方、図6のロータリートランスの固定子は、図3に示した側面縦断面がコの字型で、固定子の回転子の円形外縁に沿って形成される円形内周を、回転子の円形外周の合計長さの半分以下の長さの弧状とし、固定子63に付設するコイルの巻き線65を、回転子のコイルの巻き線64の方向に沿った方向に、かつ固定子63の上腕部の上側面と下側面とを巻き回すようにして付設している。
【0023】
なお、図6に示す構成のロータリートランスは、本発明の構成例として示してあり、その固定子は、図3に示した本発明の特徴的な構成の固定子として図示している。しかしながら、明らかなように、図6の構成の複数個のコア部材からなる回転子は、従来から利用されている図1に示したような形状のリング状の固定子との組み合わせからなるロータリートランスでも有効に用いることができる。
【0024】
図7は、図6に示した分割タイプの回転子の固定に利用することのできる回転子固定具と回転子コア部材を示す図であって、(A)は回転子固定具の斜視図であり、(B)は巻き線が施されたコア部材を示す斜視図である。(A)の回転子固定具71は、合計3個のコア部材を収容する凹部が形成された成形部材であり、たとえば合成樹脂材料の成形体として製造される。この(A)の回転子固定具71の凹部のそれぞれに接着剤等の接着手段を利用してコア部材を接着固定する。なお、(A)の回転子固定具71は、二個一組として用い、合計6個のコア部材を収容する。
【0025】
図7の(B)に斜視図で示したコア部材72は、(A)に示した回転子固定具71に収容する回転子コア部材72の構成の例を示しており、図6の(A)に示したコア部材と同様に、コア部材の導電用の巻き線74を、回転子の回転方向に沿った方向(複数のコア部材により構成される回転子の円周に沿った方向)で、コア部材72の上側面と下側面とを巻き回すようにして付設している。
【符号の説明】
【0026】
1 従来のロータリートランス
2 従来の回転子(ロータ)
3 従来の固定子(ステータ)
4 回転子の配線コイル
5 固定子の配線コイル
20 特許文献1の図4に示されている超音波研削装置
21 回転体
22 ロータリートランス
23 枠体
31 本発明のロータリートランス
32 回転子
33 固定子
34 回転子の配線コイル
35 固定子の配線コイル
52 回転子
53a、53b 固定子
62 回転子
62a、62b、62c、62d、62e、62f、62g、62h 回転子コア部材
63 固定子
66 軸体
71 回転子固定具
72 回転子コア部材
74 回転子コア部材の配線コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7