特許第6259503号(P6259503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6259503
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】眼疾患の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20171227BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20171227BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20171227BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20171227BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20171227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171227BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20171227BHJP
【FI】
   A61K39/395 NZNA
   A61P27/02
   A61P27/06
   A61K47/34
   A61K9/08
   A61P43/00 111
   !C07K16/28
【請求項の数】26
【外国語出願】
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-178592(P2016-178592)
(22)【出願日】2016年9月13日
(62)【分割の表示】特願2014-535978(P2014-535978)の分割
【原出願日】2012年10月15日
(65)【公開番号】特開2016-210811(P2016-210811A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2016年9月26日
(31)【優先権主張番号】61/546,708
(32)【優先日】2011年10月13日
(33)【優先権主張国】US
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-7580
(73)【特許権者】
【識別番号】512112644
【氏名又は名称】エアーピオ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ピーターズ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート シャルウィッツ
【審査官】 中尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−533337(JP,A)
【文献】 特表2011−500086(JP,A)
【文献】 特表2011−522794(JP,A)
【文献】 特表2010−532369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 45/00
A61K 9/08
A61K 47/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の血管新生の低下を必要とするヒトの眼において血管新生を低下させるための組成物であって、前記組成物は、治療有効量の無傷のヒトタンパク質チロシンホスファターゼベータ細胞外ドメイン(ΗΡΤΡβ−ECD)結合剤を含み、前記ΗΡΤΡβ−ECD結合剤は、モノクローナル抗体であり、前記モノクローナル抗体は、前記ΗΡΤΡβ−ECDにおけるFN3ドメインに結合し、前記HPTPβ−ECD結合剤は、HPTPβを阻害する、組成物。
【請求項2】
前記組成物が薬剤的に許容可能な担体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記治療有効量が、前記ヒトの体重に対して約0.01mg/kg〜約10mg/kgである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記モノクローナル抗体が、ビヒクルに結合されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ビヒクルがポリエチレングリコールである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が眼内注射による投与のために製剤化されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が皮下注射による投与のために製剤化されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が静脈内注射による投与のために製剤化されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記モノクローナル抗体が、ハイブリドーマ細胞株ATCC番号PTA−7580により産生されたモノクローナル抗体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記モノクローナル抗体がR15E6である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記血管新生が前記眼の網膜内の血管新生である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記血管新生が前記眼の脈絡膜内の血管新生である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
眼の血管新生の低下を必要とするヒトの眼において血管新生を低下させるための医薬の製造における組成物の使用であって、前記組成物は、治療有効量の無傷のヒトタンパク質チロシンホスファターゼベータ細胞外ドメイン(ΗΡΤΡβ−ECD)結合剤を含み、前記ΗΡΤΡβ−ECD結合剤は、モノクローナル抗体であり、前記モノクローナル抗体は、前記ΗΡΤΡβ−ECDにおけるFN3ドメインに結合し、前記HPTPβ−ECD結合剤は、HPTPβを阻害する、使用。
【請求項14】
前記組成物が薬剤的に許容可能な担体を含む、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記治療有効量が、前記ヒトの体重に対して約0.01mg/kg〜約10mg/kgである、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
前記モノクローナル抗体が、ビヒクルに結合されている、請求項13に記載の使用。
【請求項17】
前記ビヒクルがポリエチレングリコールである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記医薬が眼内注射による投与のために製剤化されたものである、請求項13に記載の使用。
【請求項19】
前記医薬が皮下注射による投与のために製剤化されたものである、請求項13に記載の使用。
【請求項20】
前記医薬が静脈内注射による投与のために製剤化されたものである、請求項13に記載の使用。
【請求項21】
前記モノクローナル抗体が、ハイブリドーマ細胞株ATCC番号PTA−7580により産生されたモノクローナル抗体である、請求項13に記載の使用。
【請求項22】
前記モノクローナル抗体がR15E6である、請求項13に記載の使用。
【請求項23】
前記血管新生が前記眼の網膜内の血管新生である、請求項13に記載の使用。
【請求項24】
前記血管新生が前記眼の脈絡膜内の血管新生である、請求項13に記載の使用。
【請求項25】
前記ΗΡΤΡβ−ECD結合剤がヒト化モノクローナル抗体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記ΗΡΤΡβ−ECD結合剤がヒト化モノクローナル抗体である、請求項13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年10月13日に出願された米国仮特許出願第61/546,708号の優先権を主張する。米国仮特許出願第61/546,708号の全容を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
電子提出資料の参照による組込
全容を参照により組み込まれるのは、本明細書と共に同時に提出され、次のように特定されるコンピューター可読配列表である:92KBのASCII(テキスト)ファイル1件、ファイル名「233106-331562_Seq_Listing_ST25.txt」、2012年10月12日午後12時42分作成。
【0003】
眼の浮腫、眼の血管新生、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性症、脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞(中心または分枝)、眼虚血、眼外傷、手術による浮腫およびぶどう膜炎などの、血管不安定性、血管漏出および血管新生により特徴づけられる眼疾患または病状を治療する方法。
【背景技術】
【0004】
眼は、視力の維持に重要な眼の構成要素に供給する、複数の構造的および機能的に異なる血管床を含む。これらには、網膜のそれぞれ内部および外部に供給する網膜血管系および脈絡膜血管系と、角膜の周囲に位置する角膜縁血管系が含まれる。これら血管床の正常な構造または機能を損なう傷害および疾患は、視力障害および失明の筆頭原因として挙げられる。例えば、糖尿病性網膜症は、網膜血管系に影響を及ぼす最も一般的な疾患であり、米国の労働年齢人口の視力喪失の筆頭原因である。傷害または疾患の二次的な角膜血管新生はさらに別分類の、重篤な視力障害をもたらし得る眼血管疾患である。
【0005】
「黄斑変性症」は、一般的な医学用語であり、網膜中央の黄斑領域の細胞と組織の変性による視力の漸進的損失または障害を含む、複数の疾患の症候群のすべてに適用される。黄斑変性症は、非滲出性(乾燥型)または滲出性(湿潤型)の2タイプのいずれかとしてしばしば特徴付けられる。どちらのタイプも両眼性かつ進行性であるが、それぞれのタイプが異なる病理学的過程を反映し得る。加齢黄斑変性症(AMD)の湿潤型は、最も典型的な脈絡膜血管新生のタイプで、高齢者の筆頭失明原因である。AMDは60歳以上の何百万人もの米国人に影響を及ぼし、高齢者における新たな失明の筆頭原因である。
【0006】
脈絡膜新生血管膜(CNVM)は多様な網膜疾患に関連する問題であるが、加齢黄斑変性症と最も関係深い。CNVMでは、脈絡膜(網膜直下の血管に富んだ組織層)から出た異常な血管が網膜層を通って成長する。これらの新たな血管は非常に脆いので容易に破れ、網膜の層内に血液と体液が貯留される原因となる。
【0007】
糖尿病(真性糖尿病)は代謝性疾患であり、膵臓がインスリンを産生することまたは産生されたインスリンを使用することができないことを原因とする。最も一般的な糖尿病のタイプは、I型糖尿病(しばしば若年発症糖尿病と呼ばれる)およびII型糖尿病(しばしば成人発症糖尿病と呼ばれる)である。I型糖尿病は、インスリン産生細胞の欠失により体がインスリンを産生できない結果生じ、現在は当人がインスリンを注射することを必要とする。II型糖尿病は一般に、インスリン耐性、つまり細胞がインスリンを適切に使用できない状態により生じる。II型糖尿病は、インスリン欠乏の構成要素も有し得る。
【0008】
糖尿病は、ほとんどの先進国において視力喪失と失明の筆頭原因である糖尿病性網膜症(DR)および糖尿病性黄斑浮腫(DME)を含む眼の状態または疾患を含む多くの疾患状態の直接的原因である。世界中で増加しつつある糖尿病人口は、DRとDMEが将来も引き続き視力喪失とそれに付随する機能障害の主要な原因となることを示唆している。
【0009】
糖尿病性網膜症は、眼の後部の光を感じる組織(網膜)の血管の損傷を原因とする、糖尿病の合併症である。糖尿病性網膜症は最初は何ら症状がないかまたは軽度な視力問題の原因となるのみである。しかし、糖尿病性網膜症は徐々に失明につながり得る。糖尿病性網膜症はI型糖尿病またはII型糖尿病をもっていれば誰でも発症し得る。
【0010】
最初のステージでは、非増殖性網膜症、毛細血管瘤が網膜の微小血管内で生じる。疾患が進行すると、これらの血管のより多くが損傷するか詰まり、網膜のこれらの領域は栄養供給のため新血管を成長させるよう局所組織にシグナルを送る。このステージは、増殖性網膜症と呼ばれている。新血管は、網膜と、眼の内部を満たす透明な硝子体ゲル表面に沿って成長する。
【0011】
これらの血管自体が症状または視力喪失の原因となるわけではない。しかし、これらの新血管は薄く脆い壁を有するので、タイムリーな治療をしなければ血液(全血またはその構成要素)を漏出しかねず、血液漏出は重篤な視力喪失または失明さえもたらし得る。
【0012】
また、体液は、鋭敏な、真っ直ぐ前方の視覚が生じる眼の部位である黄斑の中心部内に漏出し得る。体液とそれに付随するタンパク質は黄斑上または下に堆積し始め、その結果、患者の中心視覚は歪んでくる。この状態は黄斑浮腫と呼ばれている。これは糖尿病性網膜症のどのステージでも発症し得るが、疾患の進行にしたがって発症しやすい。増殖性網膜症を有する人の約半数が黄斑浮腫も有する。
【0013】
ぶどう膜炎は、ぶどう膜が炎症をきたす状態である。眼はテニスボールとよく似た形状をしており、内部は空洞になっていて、異なる3つの組織層が中心の腔を取り囲んでいる。最外層は強膜(眼の白い被覆)であり、最内層は網膜である。強膜と網膜の間の中央層はぶどう膜と呼ばれている。ぶどう膜は眼に栄養を与える血管の多くを含む。ぶどう膜炎の合併症には、緑内障、白内障または新血管形成(血管新生)が含まれる。
【0014】
滲出性(湿潤型)黄斑変性症、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、脈絡膜新生血管膜、ぶどう膜炎または眼外傷の合併症に対する現在利用可能な介入には、レーザー光凝固治療、低線量放射線(遠隔照射治療)および血管新生膜の外科的除去(硝子体切除)が含まれる。レーザー治療の成功率は限られており、当初はレーザー治療に応答する選択された脈絡膜新生血管膜は再発率が高い。レーザー治療を原因とする失明の可能性もある。低線量放射線を適用しても、脈絡膜血管新生の退縮は有効に誘発されない。最近、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、ラニビズマブおよびアフリベルセプトが、加齢黄斑変性症、糖尿病性黄斑浮腫および網膜静脈閉塞(RVO)への使用を承認された。
【0015】
(RVO)は、糖尿病性網膜症の次に最も一般的な網膜血管疾患である。網膜静脈還流が有効に閉塞されている領域により、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、半側網膜静脈閉塞症(HRVO)または網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)のいずれかに大きく分類される。これらにはそれぞれ2つのサブタイプがあることが観察されている。RVOの症状は一般に、網膜血管蛇行、網膜出血(染み状および火炎状)、綿状白斑、視神経円板膨張および黄斑浮腫からなる眼底所見の任意の組合せを含む様々な無痛の失明を含む。網膜出血は、CRVOでは眼底の4つの4分円のすべてに見いだされるが、HRVOではこれらは眼底半球の上方か下方のいずれかに限定されている。BRVOでは、出血は主として網膜静脈内の閉塞により還流される領域に特化されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、血管不安定性、血管漏出および血管新生に特徴づけられる眼疾患を治療する方法が長い間、相当に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
眼疾患を治療または予防する方法であって、対象に有効量のΗΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を含む組成物を投与することを含む、方法。
(項目2)
前記組成物が薬剤的に許容可能な担体をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記眼疾患が、眼の血管新生、眼の浮腫、網膜浮腫、網膜血管新生、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性症、脈絡膜血管新生、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、眼外傷、手術による浮腫、手術による血管新生、嚢胞様黄斑浮腫、眼虚血、非増殖性網膜症、網膜血管腫性増殖、黄斑毛細血管拡張症またはぶどう膜炎である、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
前記眼疾患が網膜浮腫である、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記眼疾患が網膜血管新生である、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記眼疾患が糖尿病性網膜症である、項目3に記載の方法。
(項目7)
前記眼疾患が糖尿病性黄斑浮腫である、項目3に記載の方法。
(項目8)
HPTPβ−ECD結合剤が、HPTPβの細胞外部分に結合する抗体、タンパク質、ペプチド、アプタマー、ペプチボディー、アドネクチンまたは核酸である、項目1〜7のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記HPTPβ−ECD結合剤が、モノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片またはポリクローナル抗体若しくはその抗原結合断片である、項目1〜7のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記HPTPβ−ECD結合剤が、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記HPTPβ−ECD結合剤が、ハイブリドーマ細胞株ATCC番号PTA−7680により産生されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である、項目1〜7のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記HPTPβ−ECD結合剤が、ハイブリドーマ細胞株ATCC番号PTA−7680により産生された前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と同じまたは実質的に同じ生物学的特徴を有する、項目1〜8のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記HPTPβ−ECD結合剤が抗体の抗原結合断片であり、前記抗原結合断片はF(ab’)、Fab、Fabの二量体、Fv、Fvの二量体、またはscFvの二量体である、項目9〜12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記HPTPβ−ECD結合剤が抗体の抗原結合断片であり、前記抗原結合断片はF(ab’)、Fabの二量体、Fvの二量体、またはscFvの二量体である、項目9〜12のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記HPTPβ−ECD結合剤が、タンパク質、ペプチド、アプタマー、ペプチボディー、核酸またはアドネクチンである、項目8に記載の方法。
(項目16)
前記対象に投与される前記HPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩の用量が、前記対象の体重により約0.01mg/kg〜約500mg/kgである、項目1〜15のいずれかに記載の方法。
(項目17)
前記対象に投与される前記HPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩の用量が、前記対象の体重により約0.1mg/kg〜約10mg/kgである、項目1〜15のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記用量が、1日1回、毎週3回、毎週2回、毎週1回、毎月3回、毎月2回、毎月1回、および隔月に1回で投与される、項目16または項目17に記載の方法。
(項目19)
前記HPTPβ−ECD結合剤がビヒクルに結合されている、項目1〜18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記ビヒクルがPEGである、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記HPTPβ−ECD結合剤が眼内注射により投与される、項目1〜20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記HPTPβ−ECD結合剤が皮下注射により投与される、項目1〜20のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記HPTPβ−ECD結合剤が静脈内注射により投与される、項目1〜20のいずれか一項に記載の方法。
細胞外部分に結合し、ヒトタンパク質チロシンホスファターゼベータ(HPTPβ)を阻害する剤が開示される。眼の浮腫、眼の血管新生、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性症、脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞(中心または分枝)、眼虚血、眼外傷、手術による浮腫およびぶどう膜炎などの、血管不安定性、血管漏出および血管新生により特徴づけられる眼疾患または状態を治療する方法も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】モノクローナル抗体R15E6は内皮細胞上の内在性ΗΡΤΡβを認識する。(パネルA)内皮細胞溶解物は対照抗体(レーン1)、R15E6(レーン2)、または抗Tie2抗体と抗VEGFR2抗体の混合物(レーン3)を用いて免疫沈降される。免疫沈降物は、SDS−PAGEで分離され、PVDF膜に転写され、R15E6、抗Tie2および抗VEGFR2抗体の混合物を用いてウエスタンブロットにより検出される。ΗΡΤΡβと一致する1つの主要な高分子量バンドがR15E6(レーン2)では見られるが、対照抗体(レーン1)または抗Tie2および抗VEGFR2混合物(レーン3)では見られない。(パネルB)内皮細胞をR15E6(白色ピーク)または1次抗体なしの対照(黒色ピーク)を用いるFACS分析に供する。強力な蛍光シフトは、R15E6が無傷の内皮細胞の表面でHPTPβに結合することを示す。
図2】モノクローナル抗体R15E6がHUVECにおけるTie2受容体活性化を増大させる。Tie2活性化は、実施例4に記載するように、ヒト内皮細胞において測定される。R15E6は、基礎のおよびAng1に誘導されるTie2活性化の両方を用量依存的に増大させる。
図3】眼のレーザー傷害後14日目の、1μgまたは2μgの抗VE−PTP細胞外ドメイン抗体の硝子体内注射により片眼を処置され、もう一方の眼に対照で同様の処置をされた、C57BL/6マウスにおける脈絡膜血管新生の平均面積のグラフ表示である。
図4】マウスを75%の酸素雰囲気中にP5〜P12まで閉じ込め、大気に戻したときP12に抗VE−PTP細胞外ドメイン抗体の硝子体内注射をした後の、P17日目のC57BL/6マウスの網膜血管新生の平均面積(mm)を示す。
図5】ビヒクルまたは2μgの抗VE−PTP細胞外ドメイン抗体の硝子体内注射後の酸素誘発網膜症モデルにおけるマウス網膜の代表的な蛍光顕微鏡写真を示す。
図6】マウスを75%の酸素雰囲気中にP5〜P12まで閉じ込め、P12に大気に戻し、1mg/kgの抗VE−PTP細胞外ドメイン抗体をP12、14および16日目に皮下投与した後の、P17日目のC57BL/6マウスの網膜血管新生平均面積(mm)を示す。
図7】マウスを75%の酸素雰囲気中にP5〜P12まで閉じ込め、P12に大気に戻し、2mg/kgの抗VE−PTP細胞外ドメイン抗体をP12、14および16日目に皮下投与した後の、P17日目のC57BL/6マウスの網膜血管新生平均面積(mm)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一般的な定義
この明細書およびそれに続く特許請求の範囲において、いくつかの用語が参照されるが、それらは以下の意味を有すると定義される。
【0020】
「HPTPβ−ECD結合剤」と「特異的結合剤」という用語は本明細書では交換可能に使用され、HPTPβのTie2デホスホリラーゼ活性を阻害する、HPTPβの細胞外部分並びに本明細書で定義されるその変異体および誘導体に特異的に結合する分子を指す。
【0021】
「剤(agent)」は、本明細書では特に断らない限り「HPTPβ結合剤」を指す。
【0022】
「HPTPβ−ECDを特異的に結合する」は、本発明の特異的結合剤がHPTPβの細胞外ドメインのエピトープを認識し、他の関連および/または非関連分子に対するよりも高い親和性でそれに結合する能力を指す。特異的結合剤は、タンパク質および/または巨大分子の複雑な混合物において優先的にHPTPβに結合する。特異的結合剤は、好ましくはHPTPβに対し選択的である。「選択的」とは、剤が、他の分子に対し全く不活性であるということではなく、他の関連および/または非関連分子に対するよりもHPTPβに対しはるかに大きい活性を有するという意味である。例えば、選択的剤は、他の関連または非関連分子に対するよりもHPTPβに対し10倍、100倍または1000倍の選択性を示しうる。
【0023】
「抗ΗΡΤΡβ−ECD抗体」という用語は、ΗΡΤΡβの細胞外ドメインに結合する抗体または抗体断片を指す。抗ΗΡΤΡβ−ΕCD抗体は、本明細書で定義されるような種類のΗΡΤΡβ−ECD結合剤である。
【0024】
「VE−PTP」という用語は、ΗΡΤΡβのマウスオーソログを指す。
【0025】
全てのパーセンテージ、比率および割合は、本明細書では、特に断らない限り、重量による。全ての温度は特に断らない限り摂氏(℃)である。
【0026】
本明細書では範囲は1つの特定の値から別の特定の値まで、両端の値を含んで表され得る。例えば、「1mg〜50mg」の範囲には1mgと50mgの特定の値が含まれる。「約」という先行詞は値が近似値であることを意味する。例えば、「約1mg〜約50mg」の範囲とは、値が近似値であることを意味する。さらに、このような範囲が示される場合、「1mg〜50mg」の範囲が含まれる。範囲の両端の値は、互いの関係において、および互いに独立して有意味であることがさらに理解されよう。例えば、「1mg〜50mg」の範囲は「30mg〜40mg」の範囲を含む。
【0027】
「有効量」とは、治療される患者の症状を寛解または予防するか、または生存期間を延長する効果のある活性剤またはその併用の量を意味する。有効量は、当技術分野で既知の、治療されるヒトまたは動物の疾患状態、年齢、性別および体重などの要因により変わり得る。本明細書では実施例の中で特定の投与レジメンを記載する場合があるが、当業者であれば、投与レジメンは、最適の治療反応を得るために変更され得ることを理解しよう。例えば、用量を何回かに分けて毎日投与してもよいし、治療状況の緊急事態によっては比例的に減量してもよい。さらに、本開示の組成物は、治療量を得るため必要に応じた頻度で投与してよい。治療上有効な量は、当業者であれば、特に本明細書における詳細な開示に鑑み決定する能力が十分ある。
【0028】
本明細書では、「阻害する」または「阻害している」という用語は、統計的に有意かつ測定可能な活性の低下、好ましくは、対照に対し少なくとも約10%の低下、より好ましくは約50%以上の低下、さらに好ましくは約80%以上の低下を指す。
【0029】
本明細書では、「増加させる」または「増加する」という用語は、統計的に有意かつ測定可能な活性の増加、好ましくは、対照に対し少なくとも約10%の増加、より好ましくは約50%以上の増加、さらに好ましくは約80%以上の増加を指す。
【0030】
「HPTPベータ」または「ΗΡΤΡβ」は本明細書では交換可能に使用され、ヒトタンパク質チロシンホスファターゼベータの略語である。
【0031】
本明細書では、「対象」とは個体を意味する。したがって、「対象」は、飼われる動物(例えばネコ、イヌなど)、家畜(例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモットなど)およびトリを含み得る。「対象」は、霊長類またはヒトなどの哺乳動物も含み得る。本明細書では「対象」と「患者」は交換可能に使用される。好ましくは、対象はヒトである。
【0032】
「低下させる(reduce)」または「低下する」または「低下」などの変化形は、ある事象または特徴(例えば血管漏出)を低下させることを意味する。これは、典型的には何らかの標準または期待値との関係において、言い換えれば相対的であるが、必ずしも標準または相対値に言及する必要はないことが理解される。
【0033】
「治療」、「治療している」「治療する」などの用語は、宿主の疾患または疾病を緩和する、および/または疾患(例えば眼浮腫)関連の特定の特徴または事象を軽減する、阻害する、または除去するなどの所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。したがって、「治療」という用語には、特に宿主がその疾患にかかる素因を有するがまだその疾患とは診断されていない場合に宿主における疾病の発症を予防すること;その疾病を阻害すること;および/またはその疾病を軽減または逆転することを含む。本発明の方法は疾病予防に関するが、「予防」という用語は、疾患状態が完全に妨害されていることは要しない。むしろ、本明細書では、予防という用語は、本発明の組成物の投与が疾患発症前に生じ得るように、疾病にかかりやすい集団を同定する当業者の能力を指す。この用語は疾患状態の完全回避は含意しない。
【0034】
特に断らない限り、糖尿病性網膜症は、非増殖性網膜症と増殖性網膜症のすべてのステージを含む。
【0035】
本明細書の説明と特許請求の範囲を通して、「含む」という用語および「含んでいる」「含む(三人称)」などの変化形は、限定ではなく含むことを意味し、例えば他の添加剤、成分、整数またはステップを除外する意図はない。
【0036】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形の「a」、「an」および「the」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数形の指示物を包含する。したがって、例えば、「(単数形の)組成物」への言及は、1つの組成物またはそのような組成物の2以上の混合物を含む。
【0037】
「所望の」または「所望により」とは、その後ろに記載された事象又は状況が発生することもしないこともでき、および、該記載は事象又は状況が発生する場合と発生しない場合を含む。
【0038】
「HPTPβを特異的に結合する」は、本発明の剤がHPTPβの細胞外ドメインのエピトープを認識し、他の関連および/または非関連分子に対するよりも高い親和性でそれに結合する能力を指す。剤は、好ましくはHPTPβに対し選択的である。「特異的」とは、剤が、他の分子に対し全く不活性であるということではなく、他の関連および/または非関連分子に対するよりもHPTPβに対しはるかに大きい活性を有するという意味である。例えば、選択的剤は、他の関連または非関連分子に対するよりもHPTPβに対し10倍、100倍または1000倍の選択性を示しうる。
【0039】
「エピトープ」という用語は、剤の抗原結合領域の1つ以上において剤に認識され結合される能力のある任意の分子の任意の部分を指す。エピトープは通常、アミノ酸、糖、脂質、ホスホリルまたはスルホニルなどの異なる認識可能な表面基からなり、ある特定の実施形態では、特異的な3次元構造特徴および/または特異的な電荷特徴を有し得る。本明細書ではエピトープは立体構造でも直線型でもよい。
【0040】
「ペプチボディー」は、少なくとも1つのペプチドに付着した抗体Fcドメインを含む分子である。ペプチボディーの生産は一般に国際公開第2002/24782号に記載されている。
【0041】
「断片」は剤の一部分を指す。断片は、剤の望ましい生物学的活性を保持し得、剤自体と見なされ得る。例えば、アミノ末端および/またはカルボキシ末端および/または内部アミノ酸残基が欠失している切断されたタンパク質は、そのタンパク質の断片であり、イムノグロブリン分子のFabは該イムノグロブリンの断片である。そのような断片は、直接的な結合(例えばペプチドまたはジスルフィド結合)により、またはリンカーにより、別の分子に結合され得る。
【0042】
「タンパク質」は本明細書ではペプチドとポリペプチドと交換可能に使用される。
【0043】
本発明のペプチドは、限定ではなく、約3〜約75のアミノ酸、または約5〜約50のアミノ酸、または約10〜約25のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む。ペプチドは、天然または人工的なアミノ酸配列であり得る。
【0044】
本発明のタンパク質は、当技術分野では周知の、例えば標準的直接的ペプチド合成法を使用して、例えば固相合成により得てよい。遺伝子シーケンスが既知であるか推定できる場合は、そのタンパク質は標準的な組換え法により生産され得る。タンパク質は当業者に知られる様々な方法で単離または精製され得る。標準的な精製法は、塩を用いての沈殿、電気泳動、クロマトグラフィー法などを含む。
【0045】
剤は、ビヒクルに共有結合的に結合していても、非共有結合的に結合していてもよい。「ビヒクル」という用語は、剤の劣化を回避しおよび/または半減期を増加し、毒性を低下し、免疫原性を低下し、または生物学的活性を増加する分子を指す。例示的ビヒクルには、限定ではなく、イムノグロブリンのFcドメイン;ポリマー、例えば:ポリエチレングリコール(PEG)、ポリリジン、デキストラン;脂質;コレステロール群(ステロイドなど);炭水化物、またはオリゴ糖;または任意の天然または合成タンパク質;またはサルベージ受容体に結合するペプチドが含まれる。
【0046】
「誘導体」は、挿入、欠失または置換変異体とは異なる何らかの方法で化学的に修飾されている結合剤を含む。例えば、結合剤がタンパク質である場合、カルボキシル末端はNHなどのアミノ基でキャップされ得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、1以上の分子は互いに結合して剤を形成する。例えば抗体断片はリンカーにより結合され得る。一般に、リンカーは主として空間として働くのでその化学構造は重要ではない。ある実施形態では、リンカーは、ペプチド結合により互いに結合するアミノ酸でできている。別の実施形態では、リンカーは、非立体的障害C〜Cアルキル基などの非ペプチドリンカーである。別の実施形態では、リンカーは、PEGリンカーである。リンカーは、分子上の多くの場所に挿入され得ることをさらに理解されたい。
【0048】
剤の変異体が本発明の範囲に含まれる。「変異体(単数)」または「変異体(複数)」は、本明細書では非変異体剤のタンパク質またはヌクレオチド配列と実質的に同じタンパク質またはヌクレオチド配列を有し、非変異体剤と同様の活性を有する剤を意味する。タンパク質またはヌクレオチド配列は、本発明が包含する変異体を生じる、置換、欠失、切断、挿入および他の修飾を含むあらゆる方法で改変され得る。そのような操作方法は、当技術分野では周知である。例えば、CurrentProtocols in Molecular Biology (およびアップデート版) Ausubel et al., Eds (1996), JohnWiley and Sons, New York: Methods in Molecular Biology, Vol. 182, In VitroMutagenesis Protocols, 2ndEdition, Barman Ed. (2002), Humana Press)およびそこに引用される文献を参照されたい。例えば、変異体は、アミノ酸残基が結合剤の既知のアミノ酸配列に挿入、そこから欠失および/またはそこに置換されたペプチドおよびポリペプチドを含む。ある実施形態では、アミノ酸の置換は、変異体の生化学的特性を最小限しか改変しない点において保存的である。他の実施形態では、変異体は、インビボ若しくはインビトロのタンパク質酵素処理、化学修飾、または修飾アミノ酸を用いてのタンパク質合成で達成され得る、全長タンパク質の活性断片、化学修飾タンパク質、親和性若しくはエピトープタグまたは蛍光若しくは他の標識部分を付加されて修飾されたタンパク質であり得る。
【0049】
融合タンパク質も本明細書で企図される。当業者は、既知の方法を用いて、天然型とは異なるが有用であり得る、本発明のタンパク質の融合タンパク質を作製できよう。例えば、融合パートナーは、合成部位から別の部位へのタンパク質の転移を共翻訳的または翻訳後に指令するシグナル(またはリーダー)ポリペプチド配列であり得る(例えば酵母α因子リーダー)。あるいは、それは本発明のタンパク質の精製または同定を促進するために付加され得る(例えば、ポリHis、Flagペプチドまたは蛍光タンパク質)。
【0050】
標準的な技法が組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、および組織培養と形質転換(例えば電気穿孔、リポフェクション)に使用され得る。酵素反応および精製技法が製造者または業者の仕様書に従って、または当技術分野で一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように、実行される。技法と手順は、一般に、当技術分野で公知の一般的な方法に従い、本明細書全体で引用され論じられる様々な一般的およびより具体的な参照物において記載されるように、実施される。特に断らない限り、本明細書に記載される分析化学、合成有機化学および医薬化学と関連して使用される命名法およびそれらの実験手順および技法は当技術分野で既知であり一般的に使用されているものである。標準的技法は、化学合成、化学分析、医薬調製、製剤および送達、および患者治療に使用され得る。
【0051】
【表1】
【0052】
HPTPβ−ECD結合剤
本発明において有用な剤には、限定ではなく、ΗΡΤΡβの細胞外部分に特異的に結合し、少なくとも1つのΗΡΤΡβのホスファターゼ活性を阻害する抗体、タンパク質、ダルピンズ(darpins)、ペプチド、アプタマー、アドネクチン、ペプチボディーまたは核酸が含まれる。本明細書では「ホスファターゼ活性」は、酵素活性および生物学的活性を含み、生物学的活性はTie2リン酸化を評価して測定される。
【0053】
本発明において有用な剤は、以下をさらに含む:ΗΡΤΡβの細胞外部分に結合する抗体またはそれらの抗原結合断片であって、抗体またはその抗原結合断片は少なくとも1つのΗΡΤΡβ活性を阻害する。これらの剤は、モノクローナルおよびポリクローナル抗体を含む。剤は、抗体の断片であってもよく、本明細書で断片は重鎖および軽鎖可変領域を含み、または断片はF(ab’)であり、または断片はFab、Fv、scFvの二量体または三量体、または抗体由来のジアボディ、トリアボディまたはテトラボディである。
【0054】
例えば、剤は、限定ではなく、ΗΡΤΡβの細胞外部分に結合する抗体または抗体断片;または具体的にはΗΡΤΡβのFN3繰り返し体に結合する抗体、またはより具体的にはΗΡΤΡβの第1のFN3繰り返し体に結合する抗体であり得る。
【0055】
剤は、その全容が本明細書に組み込まれている米国特許第7,973,142号に記載されるモノクローナル抗体R15E6をさらに含む。(抗体の産生に使用され得るマウスハイブリドーマ、Balbc脾臓細胞(B細胞)は郵便番号20108、米国バージニア州マナサス私書箱1549のアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)に2006年5月4日に寄託され、ATCC番号PTA−7580を割り当てられている)(本明細書ではR15E6と呼ばれる))R15E6と実質的に同じ生物学的特徴を有する抗体;R15E6の抗体断片であって、断片は重鎖および軽鎖可変領域を含む;R15E6のF(ab’);Fab、Fv、scFvの二量体または三量体;およびR15E6由来のジアボディ、トリアボディまたはテトラボディ。
【0056】
具体的には、本発明での使用に適する剤は、既知の技法により得られる、単独または他のアミノ酸配列との併用の抗体、抗体断片、その変異体または誘導体である。そのような技法には、限定ではなく、酵素的切断、化学的切断、ペプチド合成または組換えの技法が含まれる。本発明はさらに誘導体剤、例えばペプチボディーを包含する。
【0057】
したがって、ΗΡΤΡβ−ECD結合剤の1つの実施形態は抗体であり、別の実施形態はタンパク質であり、さらに別の実施形態はペプチドであり、別の実施形態はダルピンであり、別の実施形態はアプタマーであり、別の実施形態はペプチボディーであり、さらに別の実施形態はアドネクチンであり、別の実施形態は核酸である。いくつかの実施形態では、ΗΡΤΡβ−ECD結合剤はモノクローナル抗体であるか、ポリクローナル抗体である。特定の実施形態では、ΗΡΤΡβ−ECD結合剤は、ΗΡΤΡβ−ECDに結合できる抗体断片である。好ましくは、HPTPβ−ECD結合剤は、抗体または抗体断片であり、限定ではなくHPTPβの細胞外部分に結合するF(ab’)、Fab、Fabの二量体、Fv、Fvの二量体、scFv、scFvの二量体、Fabの二量体、Fv、Fvの二量体、scFv、scFvの二量体、Fabの三量体、Fvの三量体、scFvの三量体、ミニボディ、ジアボディ、トリアボディ、テトラボディ、直鎖状抗体、タンパク質、ペプチド、アプタマー、ペプチボディー、アドネクチンまたは核酸を含む。ある特定の実施形態では、HPTPβ−ECD結合剤はモノクローナル抗体のF(ab’)である。いくつかの実施形態では、HPTPβ−ECD結合剤は複数のHPTPβ−ECD結合部位を含み、例えばHPTPβ−ECD結合剤は無傷の抗体、またはF(ab’)、またはFabの二量体、またはFabの三量体である。例えば、いくつかの実施形態ではHPTPβ−ECD結合剤は、同一または別のエピトープで同時に2つのHPTPβ分子に結合でき、それによって該2つのHPTPβ分子を互いに近接させる。別の実施形態ではHPTPβ−ECD結合剤は、同一または別のエピトープで同時に3つのHPTPβ分子に結合でき、それによって該3つのHPTPβ分子を互いに近接させる。別の実施形態では、HPTPβ−ECD結合剤は、ハイブリドーマ細胞株ATCC番号PTA−7680により産生されたモノクローナル抗体である。さらに別の実施形態では、HPTPβ−ECD結合剤は、ハイブリドーマ細胞株ATCC番号PTA−7680により産生されたモノクローナル抗体の抗原結合断片である。さらに別の実施形態では、HPTPβ−ECD結合剤は、ハイブリドーマ細胞株ATCC番号PTA−7680により産生されたモノクローナル抗体と同じまたは実質的に同じ生物学的特徴を有する抗体またはその抗原結合断片である。
【0058】
本願に開示のHPTPβ−ECD結合剤のどの実施形態も、ビヒクルに共有結合または非共有結合していてよい。「ビヒクル」という用語は、剤の生物学的特性に影響を及ぼす分子を指す。例えば、ビヒクルは、剤の分解を回避および/または半減期、吸収を増加、毒性を低下、免疫原性を低下、または生物学的活性を増加し得る。例示的ビヒクルには、限定ではなく、イムノグロブリンのFcドメイン;ポリマー、例えば:ポリエチレングリコール(PEG)、ポリリジン、デキストラン;脂質;コレステロール群(ステロイドなど);炭水化物、デンドリマー、オリゴ糖またはサルベージ受容体に結合するペプチドが含まれる。いくつかの実施形態では、ビヒクルはポリエチレングリコール(PEG)であり、他の実施形態ではビヒクルはポリリジンであり、さらに別の実施形態ではビヒクルはデキストランであり、さらに他の実施形態ではビヒクルは脂質である。
【0059】
それらの全容が本明細書に組み込まれる米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号および同第4,179,337号に記載されるような、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどの水溶性ポリマー付着物(attachments)。さらに他の当技術分野で既知の有用なポリマーには、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロースまたは他の糖質系ポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)−ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリ酸化プロピレン/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコール、並びにこれらのポリマーの混合物が含まれる。特に好ましいのは、ポリエチレングリコール(PEG)サブユニットで共有結合的に修飾されたペプチボディーである。水溶性ポリマーは、特定の位置、例えばペプチボディーのアミノ末端、またはポリペプチドの1以上の側鎖にランダムに結合し得る。剤、例えばペプチボディーおよび具体的にはヒト化抗体の治療能力を向上させるためのPEGの使用が米国特許第6,133,426号に記載されている。本発明はまた、ペプチドおよび/または剤のビヒクル部分(portion)の誘導体化も企図する。そのような誘導体は、剤の溶解性、吸収、生物学的半減期などを改良し得る。部分(moieties)は代わりに剤の任意の望ましくない副作用などを排除または緩和し得る。
【0060】
「抗体」(Ab)という用語は、本明細書では、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば二特異性抗体)、一本鎖抗体、例えば、ラマおよびラクダ由来の抗体、所望の生物学的活性、例えば抗原結合活性を示す限り抗体断片、例えば、可変領域および/または定常領域断片を含む。「イムノグロブリン」(Ig)という用語は、本明細書では「抗体」と交換可能に使用される。
【0061】
「抗原結合断片」は、本明細書では、HPTPβの一部分に結合しHPTPβの活性を阻害する剤の断片である。
【0062】
「単離抗体」は、その天然環境から特定された、および/または分離された、および/または回収された抗体である。
【0063】
基本の4本鎖抗体ユニットは、2本の同一の軽(L)鎖と2本の同一の重(H)鎖で構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である(IgM抗体は、追加のJ鎖と呼ばれるポリペプチドと共に、5つの基本ヘテロ四量体ユニットからなるので、10個の抗原結合部位を含むが、分泌されたIgA抗体は重合して、J鎖と共に塩基性4本鎖ユニット2〜5つを含む多価の集合を形成し得る)。IgGの場合、4本鎖ユニットは一般に約150キロダルトン(kDa)である。各L鎖は1つのH鎖に1つの共有結合的ジスルフィド結合で連結され、2本のH鎖は、H鎖イソタイプによって、互いに1以上のジスルフィド結合で連結されている。各H鎖とL鎖は、規則的な間隔で鎖内ジスルフィド架橋も有する。各H鎖はN末端に可変ドメイン(V)を有し、それに続きα鎖とγ鎖のそれぞれは3つの定常ドメイン(C)を、μイソタイプとεイソタイプは4つのCドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(V)と、それに続く定常ドメイン(C)を他端に有する。VはVと整列し、Cは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列する。特定のアミノ酸残基が軽鎖と重鎖可変ドメインの界面を形成すると考えられている。VとVの対合は共に1つの抗原結合性部位を形成する。抗体の異なるクラスの構造と特性については、例えばBasicand Clinical Immunology, 8th edition, Daniel P. Stites, Abba I. Terr andTristram G. Parslow (eds.), Appleton & Lange, 1994の71ページ第6章を参照されたい。
【0064】
どの脊椎動物種由来のL鎖も、定常ドメインのアミノ酸配列によって、明白に区別できるカッパとラムダと呼ばれる2種類のうち1つに割り当てられる。重鎖定常ドメイン(C)のアミノ酸配列により、イムノグロブリンは5つの別々のクラスまたはイソタイプに割り当てられ得る。イムノグロブリンには5つのクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと命名された重鎖を有する。ガンマとアルファのクラスは、C配列および機能の比較的マイナーな差に基づいてさらにサブクラスに分けられ、例えば、ヒトは次のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2。
【0065】
ラクダ科を構成する、例えばラマ、ラクダおよびヒトコブラクダは、軽鎖が欠失しているうえにCH1ドメインも欠失している独特の種類の抗体を有する(Muyldermans,S., Rev. Mol. Biotechnol., Vol. 74, pp. 277-302 (2001))。これら重鎖抗体の可変領域は、VHHまたはVHHと命名され、機能性イムノグロブリン由来の入手可能な最小(15kDa)の無傷の抗原結合断片を構成している。
【0066】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定のセグメントの配列が抗体間で大きく異なる事実を指す。Vドメインは抗原結合を媒介し、特定の抗体の抗原に対する特異性を定める。しかし、可変性は可変ドメインの110個のアミノ酸全長にわたって均等に分布しているわけではない。代わりに、V領域は、各9〜12アミノ酸長と短い高可変性の「超可変領域」と呼ばれる領域により分離された、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的可変性のない15〜30個のアミノ酸の伸長部からなる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、4つのFRを含み、主としてβシート構造をとり、該βシート構造を接続し場合によっては一部を形成しているループを形成する3つの超可変領域により接続されている。各鎖の超可変領域はFRにより互いに近接近しており、他方の鎖の超可変領域と共に抗体の抗原結合部位の形成に貢献する。定常ドメインは抗体の抗原結合に直接は関与しないが、抗体依存性細胞毒性(ADCC)における抗体の関与など様々なエフェクター機能を呈する。
【0067】
「超可変領域」という用語は本明細書では抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は一般に、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(例えばVのだいたい残基24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)の周り、およびVのだいたい1〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)の周り;Kabatet al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public HealthService, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))および/または「超可変ループ」由来の残基を含む。
【0068】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書では実質的に均質な抗体の母集団から得られた抗体を指し、すなわち、母集団を構成する個々の抗体は、ごく少量で存在し得る可能な天然の突然変異を除き同一である。異なるエピトープに対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体の調製とは対照的に、各モノクローナル抗体は単一のエピトープすなわち単一の抗原決定基に対する。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体に汚染されることなく合成され得るという点が利点である。「モノクローナル」という修飾語は、何らかの特定の方法で抗体を産生することを要するとみなしてはならない。例えば、本発明で有用なモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法で調製してもよいし、細菌、真核生物の動物または植物の細胞において組換えDNA法を用いて作製してもよい(例えば米国特許第4,816,567号を参照)。「モノクローナル抗体」は、ファージ抗体ライブラリから利用可能な技法、例えばClacksonet al., Nature, Vol. 352, pp. 624-628 (1991)を利用して単離してもよい。
【0069】
モノクローナル抗体は、本明細書では、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の種由来の抗体の対応する配列と同一か類似であるか、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属し、鎖(複数可)の残りの部分が別の種由来の抗体の対応する配列と同一か類似であるか、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する「キメラ」抗体、並びに所望の生物学的活性を示す限りそのような抗体の断片を含む(米国特許第4,816,567号およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 81, 6851- 6855 (1984)を参照)。
【0070】
「抗体断片」は、マルチマー抗体の一部分、好ましくは無傷の抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)、Fab複合体の二量体および三量体、Fv、scFv、ミニボディ;ジアボディ、トリアボディおよびテトラボディ;直鎖状抗体(Hudsonet al., Nature Med. Vol. 9, pp. 129-134 (2003)を参照)が含まれる。
【0071】
「Fv」は最小の抗体断片であり完全な抗原結合部位を含む。この断片は、緊密に非共有結合した1つの重鎖と1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みから、アミノ酸残基を抗原結合に寄与して抗体に抗原結合特異性を与える6つの可変ループ(H鎖とL鎖からそれぞれ3つずつ)が出ている。しかし、1個の可変ドメイン(またはある抗原に特異的なCDRを3つだけ含むFvの半分)であっても抗原を認識し結合する能力があるので、Fvの定義に含まれる。
【0072】
一本鎖可変断片(scFv)は、イムノグロブリンの重鎖可変領域(V)および軽鎖可変領域(V)が10〜約25アミノ酸長の短いリンカーペプチドで連結された融合タンパク質である。リンカーは通常、溶解性のためのセリンまたはスレオニンのみならず柔軟性のためのグリシンにも富み、VのN末端をVのC末端と、またはその逆のいずれかを連結できる。このタンパク質は、定常領域の除去とリンカーの導入にもかかわらず、もとのイムノグロブリンの特異性を保持している。
【0073】
二価(divalentまたはbivalent)の一本鎖可変断片(di−scFv、bi−scFv)が2つのscFvを結合することにより設計され得る。このことは、2つのVと2つのV領域を有する単一のペプチド鎖を生産しタンデムscFvを得ることにより実施され得る。別の可能性は、2つの可変領域を共に折り畳むには短すぎるリンカーペプチド(約5アミノ酸)を用いてscFvを作製しscFvを二量体化させることである。このタイプはジアボディとして知られる。ジアボディは、対応するscFvよりも40倍まで低い解離定数を有することが知られ、これは標的に対しはるかに高い親和性を有することを意味する。したがって、ジアボディ薬物は他の抗体医薬よりもはるかに低用量で投与でき、インビボではるかに高い特異性で腫瘍を標的化する能力がある。さらに短いリンカー(1または2つのアミノ酸)は、いわゆるトリアボディまたはトリ(トライ)ボディと呼ばれる三量体の形成をもたらす。テトラボディは、標的に対しジアボディよりもはるかに高い親和性を示すことが知られ、それが示されている。
【0074】
「ヒト化抗体」または「ヒト抗体」は、非ヒト種(例えばマウス)由来の重鎖および軽鎖可変領域の配列を含むが、少なくともVおよび/またはV配列の一部分はより「ヒト様」に、すなわちヒト生殖系の可変配列に類似して改変されている抗体を指す。ヒト化抗体の1つのタイプはCDRグラフト化抗体であり、ヒトCDR配列が非ヒトVおよびV配列に導入されて、対応する非ヒトCDR配列と置き換わっている。キメラ、CDRグラフト化およびヒト化抗体を作製する方法は当業者には既知である(例えば米国特許第4,816,567号および同第5,225,539号を参照)。ヒト抗体を作製する1つの方法ではトランスジェニックマウスなどのトランスジェニック動物を使用する。これらのトランスジェニック動物は、それら自体のゲノムに挿入されたヒト抗体産生ゲノムの相当な部分を含み、動物自体の内在性の抗体産生は抗体産生において不十分にされている。そのようなトランスジェニック動物を作製する方法は、当技術分野では既知である。そのようなトランスジェニック動物は、XenoMouse.RTM.技法を使用して、または「小遺伝子座(minilocus)」法を使用して作製してよい。XenoMice.RTM.を作製する方法は米国特許第6,162,963号、同第6,150,584号、同第6,114,598号および同第6,075,181号に記載されている。「小遺伝子座」方を使用してトランスジェニック動物を作製する方法は、米国特許第5,545,807号、同第第5,545,806号、同第第5,625,825号および国際公開第93/12227号に記載されている。
【0075】
非ヒト抗体のヒト化は近年ルーチンになり、今や当業者に既知である。例えばXoma社、Aries社、Medarex社、PDL社およびCambridgeAntibody Technologies社などのいくつかの企業がヒト化抗体を作製するサービスを提供している。ヒト化プロトコルは、例えば、Kipriyanovand Le Gall, Molecular Biotechnol, Vol. 26, pp. 39-60 (2004), Humana Press,Totowa, N.J.; Lo, Methods Mol. Biol., Vol. 248, pp. 135-159 (2004), HumanaPress, Totowa, N.J.; Wu et al., J. Mol. Biol., Vol. 294, pp. 151-162 (1999)などの技術文献に広く記載されている。
【0076】
特定の実施形態では、本発明において有用な抗体は、ハイブリドーマ細胞株以外の細胞株において発現され得る。特定の抗体をコードする配列を、例えばポリヌクレオチドをウイルス(またはウイルスベクター)内に包み宿主細胞にウイルス(またはベクター)を形質導入する、または米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、同第4,740,461号および同第4,959,455号に例示されるような当技術分野で既知の形質移入手順を含む、ポリヌクレオチオドを宿主細胞に導入する既知の方法により、適当な哺乳動物宿主細胞の形質転換に使用してよい。使用される形質転換手順は形質転換される宿主により得る。異種性ポリヌクレオチオドを哺乳動物細胞に導入する方法は当技術分野で既知であり、限定ではなく、デキストラン媒介形質移入、カルシウムリン酸沈殿、ポリブレン媒介形質移入、原形質体融合、電気穿孔、ポリヌクレオチド(複数可)のリポソーム内への封入、核酸と正に帯電した脂質の混合、およびDNAの核への直接的マイクロインジェクションが含まれる。
【0077】
抗体の重鎖定常領域、重鎖可変領域、軽鎖定常領域または軽鎖可変領域、またはその断片のアミノ酸配列をコードする核酸分子を、所望により適当に組み合わせて、標準的なライゲーション法を用いて適切な発現ベクターに挿入する。抗体重鎖または軽鎖定常領域は、適切な可変領域のC末端に付けられ結合されて発現ベクターにされ得る。ベクターは、典型的には使用する特定の宿主細胞において機能的であるように選択される(すなわち、ベクターは宿主細胞の機構と適合するので遺伝子の増幅および/または遺伝子発現が生じ得る)。発現ベクターの概説については、MethodsEnzymol., Vol. 185 (Goeddel, ed.), 1990, Academic Pressを参照されたい。
【0078】
特異的結合剤の特定
適切なHPTPβ−ECD結合剤は、当技術分野で既知の様々な技法を用いて特定され得る。例えば、候補剤は、HPTPβへの結合についてスクリーニングされ得、および活性についてスクリーニングされ得る。一般に、候補剤は、最初に結合ついてスクリーニングされ、選択的結合を示すものは次いでTie2のHPTPβ媒介脱リン酸化を阻害する能力を決定するスクリーニングに供される。しかし、場合によっては候補剤は最初にインビトロで活性をスクリーニングされる。
【0079】
結合活性の決定
特異的結合剤の特定に使用される適切なアッセイの選択は、スクリーニングされる候補剤の性質による。当業者であれば、特定の候補剤の適切なアッセイを選択できよう。
【0080】
例えば、候補が抗体またはFc部分を有するペプチボディーである場合、実施例3Bに記載するようなFACS分析により、HPTPβを発現する細胞に結合する能力に基づき候補剤が選択できる。細胞は、内在的にHPTPβを発現してもよいし、遺伝子操作されてHPTPβを発現してもよい。
【0081】
アプタマーなどの他の候補剤については、他の技法が当技術分野で知られている。例えば、HPTPβに特異的に結合するアプタマーは、SELEX(試験管内進化法)として知られる、反復回のインビトロの選択を通じて特異的なアプタマーを選択する技法を用いて選択され得る。
【0082】
ウエスタンブロットによる阻害剤の活性決定
実施例4に例示されるように、1つの適切なアッセイではHUVECが無血清培地において様々な濃度の候補剤の存在または非存在下で培養され、細胞溶解物が調製され、Tie2抗体を用いて免疫沈降され、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離され、PVDF膜に転写される。膜に結合した免疫沈降されたタンパク質は次いで連続的ウエスタンブロットに供され、抗ホスホチロシン抗体を用いてTie2リン酸化を定量化してからTie2抗体を用いて全Tie2を定量化する。Tie2リン酸化は、抗ホスホチロシンシグナルの全Tie2シグナルに対する比率として表す。抗ホスホチロシンシグナルのレベルのほうが大きいことは、候補剤によりHPTPβがより阻害されていることを示す。
【0083】
スクリーニングされ得る候補剤は、限定ではなく、植物または動物の抽出物などの天然物を含む既知の剤のライブラリ、タンパク質、限定ではなくランダムペプチドライブラリおよびコンビナトリアルケミストリー由来のD体またはL体アミノ酸でできた分子ライブラリのメンバーを含むペプチド、限定ではなくポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト、一本鎖抗体、Fab、F(ab)およびFab発現ライブラリ断片およびそのエピトープ結合断片を含む抗体を含む生物学的活性分子を含む。
【0084】
本明細書では「抗体断片」は、限定ではなく、抗体由来のF(ab’)、Fabの二量体または三量体、Fv、scFvまたはジアボディ、トリアボディまたはテトラボディを含む。
【0085】
方法
眼の疾患または状態、特に網膜症、眼の浮腫および眼の血管新生を治療する方法が開示される。これらの疾患または状態の非限定的な例は、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性症(湿潤型)、脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜症、眼虚血、ぶどう膜炎、網膜静脈閉塞(中心または分枝)、眼外傷、手術による浮腫、手術による血管新生、嚢胞様黄斑浮腫、眼虚血、ぶどう膜炎、などを含む。これらの疾患または状態は、進行性であれ非進行性であれ、急性の疾患または状態、または慢性の疾患または状態の結果であれ、眼の血管系の変化により特徴づけられる。
【0086】
本開示の方法の1つの態様は、糖尿病、とりわけ糖尿病性黄斑浮腫および糖尿病性網膜症の直接的または間接的な結果である疾患に関する。糖尿病患者の眼の血管系は時間が経つと不安定になり、非増殖性網膜症、黄斑浮腫および増殖性網膜症などの病状につながる。体液が、鋭敏な、真っ直ぐ前方の視覚が生じる眼の部位である黄斑の中心部内に漏出すると、体液とそれに付随するタンパク質の蓄積が黄斑上または下に堆積し始める。その結果、対象の中心視覚を乱す膨張が生じる。この状態は「黄斑浮腫」と呼ばれている。生じ得る別の病状は、毛細血管瘤などの血管に変化が生じる非増殖性網膜症であり、眼の黄斑領域の外側で生じ得る。
【0087】
これらの状態は、進行して血管新生に特徴づけられる糖尿病性増殖性網膜症になることもならないこともある。これらの新血管は脆く出血しやすい。結果として網膜は瘢痕化し、新血管の過形成により眼を通る光路が閉塞または完全に塞がる。典型的には、糖尿病性黄斑浮腫を有する対象は、糖尿病性網膜症の非増殖性ステージに苦しんでいるが、増殖性ステージの発症時に初めて対象に黄斑浮腫が生じることは珍しくはない。
【0088】
糖尿病性網膜症は、治療しなければ、最終的には失明につながり得る。実際、糖尿病性網膜症は、労働年齢人口の視力喪失の筆頭原因である。
【0089】
したがって、本開示の方法は、糖尿病を有する対象または糖尿病と診断された対象における眼の血管新生を予防、治療、制御、軽減、および/またはその他最小限化することに関する。さらに、糖尿病を有する対象または糖尿病と診断された対象は、糖尿病関連の失明が発症するリスクについて注意または認識し得、したがって本発明の方法は、リスクがあるとわかっている対象における非増殖性網膜症を予防または発症を遅延させるのに使用され得る。同様に、本発明の方法は、非増殖性糖尿病性網膜症を有するかまたはそう診断された対象を治療し病状の進行を予防するのに使用され得る。
【0090】
本開示の方法は、対象に有効量のHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することにより、眼の血管新生を予防または制御する、または眼の血管新生の発症に関する疾患または状態を治療することに関する。
【0091】
この方法の1つの態様は、対象に有効量のHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することにより、眼の血管新生を治療または予防することに関する。この態様の1つの実施形態は、対象に有効量のHΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および1以上の担体または適合性のある賦形剤を含む組成物を投与することを含む、眼の血管新生を治療する方法に関する。
【0092】
したがって、本開示の1つの実施形態は、対象における眼の血管新生を治療または予防する方法であって、有効量のΗΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む。本開示の別の実施形態は、対象における眼の血管新生を治療または予防する方法であって、HΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および1以上の担体または適合性のある賦形剤を含む有効量の組成物を投与することを含む。本開示のさらに別の実施形態は、眼の血管新生の治療におけるHΡΤΡβ−ECD結合剤の使用である。
【0093】
本開示の方法は、対象にHPTPβ−ECD結合剤を投与することにより、眼の浮腫を予防または制御する、または眼の浮腫の発症に関する疾患または状態を治療することにも関する。
【0094】
この方法の1つの態様は、対象に有効量のHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することにより、眼の浮腫を治療または予防することに関する。この態様の1つの実施形態は、眼の浮腫を治療する方法に関し、該方法は、以下を含む組成物を対象に投与することを含む:
a.有効量のHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩;および
b.1以上の担体または適合性のある賦形剤。
【0095】
したがって、本開示の1つの実施形態は、対象における眼の浮腫を治療または予防する方法であって、有効量のΗΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む。本開示の別の実施形態は、対象における眼の浮腫を治療または予防する方法であって、HΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および1以上の担体または適合性のある賦形剤を含む有効量の組成物を投与することを含む。本開示の1つの実施形態は、眼の浮腫の治療におけるHΡΤΡβ−ECD結合剤の使用である。
【0096】
本開示の別の方法は、対象にHPTPβ−ECD結合剤を投与することにより、網膜浮腫または網膜血管新生を予防または制御する、または網膜浮腫または網膜の血管新生の発症に関する疾患または状態を治療することに関する。この方法の1つの態様は、対象に有効量のHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することにより、網膜浮腫または網膜血管新生を治療または予防することに関する。この態様の1つの実施形態は、に関する。この態様の1つの実施形態は、対象に有効量のHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩、および1以上の担体または適合性のある賦形剤を含む組成物を投与することを含む、網膜浮腫または網膜血管新生を治療する方法に関する。
【0097】
したがって、本開示の1つの実施形態は、対象における網膜浮腫を治療または予防する方法であって、有効量のΗΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む。別の実施形態は、網膜血管新生を治療または予防する方法であって、有効量のΗΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む。本開示の1つの実施形態は、有効量のHΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および1以上の担体または適合性のある賦形剤を含む組成物を投与することにより、対象における網膜浮腫を治療または予防する方法である。別の実施形態は、有効量のHΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および1以上の担体または適合性のある賦形剤を投与することにより、網膜血管新生を治療または予防する方法である。別の実施形態は、網膜浮腫の治療におけるHΡΤΡβ−ECD結合剤の使用である。さらなる実施形態は、網膜血管新生の治療におけるHΡΤΡβ−ECD結合剤の使用である。
【0098】
さらに開示される方法は、対象にHPTPβ−ECD結合剤を投与することにより、糖尿病性網膜症を治療、予防または制御する、または糖尿病性網膜症の発症に関する疾患または状態を治療することに関する。
【0099】
この方法の1つの態様は、対象に有効量のHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することにより、糖尿病性網膜症を治療または予防することに関する。この態様の1つの実施形態は、対象に有効量のHΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および1以上の担体または適合性のある賦形剤を含む組成物を投与することを含む、糖尿病性網膜症を治療する方法に関する。
【0100】
したがって、本開示の1つの実施形態は、対象における糖尿病性網膜症を治療または予防する方法であって、有効量のΗΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む。本開示の別の実施形態は、有効量のHΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および1以上の担体または適合性のある賦形剤を含む組成物を投与することにより、対象における糖尿病性網膜症を治療または予防する方法である。本開示のさらに別の実施形態は、糖尿病性網膜症の治療におけるHΡΤΡβ−ECD結合剤の使用である。
【0101】
さらに開示される方法は、対象に有効量のHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む、非増殖性網膜症を治療または予防する方法に関する。
【0102】
この態様の別の実施形態は、対象に有効量のHΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および1以上の担体または適合性のある賦形剤を含む組成物を投与することを含む、非増殖性網膜症を治療または予防する方法に関する。
【0103】
したがって、本開示の1つの実施形態は、対象における非増殖性網膜症を治療または予防する方法であって、有効量のΗΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む。本開示の別の実施形態は、有効量のHΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および1以上の担体または適合性のある賦形剤を含む組成物を投与することにより、対象における非増殖性網膜症を治療または予防する方法である。本開示のさらに別の実施形態は、非増殖性網膜症の治療におけるHΡΤΡβ−ECD結合剤の使用である。
【0104】
さらに開示される方法は、対象にHPTPβ−ECD結合剤を投与することにより、糖尿病性黄斑浮腫を予防または制御する、または糖尿病性黄斑浮腫の発症に関する疾患または状態を治療することに関する。
【0105】
この方法の1つの態様は、対象に有効量のHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することにより、糖尿病性黄斑浮腫を治療または予防することに関する。この態様の1つの実施形態は、対象に、(a)有効量の1以上のHΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および(b)1以上の担体または適合性のある賦形剤、を含む組成物を投与することを含む、糖尿病性黄斑浮腫を治療する方法に関する。
【0106】
したがって、本開示の1つの実施形態は、対象における糖尿病性黄斑浮腫を治療または予防する方法であって、有効量のΗΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む。本開示の別の実施形態は、有効量のHΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および1以上の担体または適合性のある賦形剤を含む組成物を投与することにより、対象における糖尿病性黄斑浮腫を治療または予防する方法である。本開示のさらに別の実施形態は、糖尿病性黄斑浮腫の治療におけるHΡΤΡβ−ECD結合剤の使用である。
【0107】
本開示の別の実施形態は、対象における湿潤型加齢黄斑変性浮腫を治療または予防する方法であって、有効量のΗΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む。本開示の別の実施形態は、有効量のHΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および1以上の担体または適合性のある賦形剤を含む組成物を投与することにより、対象における湿潤型加齢黄斑変性浮腫を治療または予防する方法である。本開示のさらに別の実施形態は、湿潤型加齢黄斑変性浮腫の治療におけるHΡΤΡβ−ECD結合剤の使用である。
【0108】
さらなる実施形態は、対象に有効量のHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することにより、脈絡膜血管新生、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、眼外傷、手術による浮腫、手術による血管新生、嚢胞様黄斑浮腫、眼虚血またはぶどう膜炎を治療、予防または制御する方法である。別の実施形態は、対象に有効量のHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および1以上の担体または適合性のある賦形剤を含む組成物を投与することにより、脈絡膜血管新生、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、眼外傷、手術による浮腫、手術による血管新生、嚢胞様黄斑浮腫、眼虚血、網膜血管腫性増殖、黄斑毛細血管拡張症またはぶどう膜炎を治療、予防または制御する方法である。本開示のさらに別の実施形態は、脈絡膜血管新生、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、眼外傷、手術による浮腫、手術による血管新生、嚢胞様黄斑浮腫、眼虚血、網膜血管腫性増殖、黄斑毛細血管拡張症またはぶどう膜炎の治療におけるHPTPβ−ECD結合剤の使用である。
【0109】
別の実施形態は、HΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および1以上の薬剤的に許容可能な担体を含む、眼疾患を治療または予防するための組成物である。さらに別の実施形態は、HPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩および1以上の薬剤的に許容可能な担体の組成物を含む、眼疾患を治療または予防する組成物であり、該眼疾患は、眼の血管新生、眼の浮腫、網膜血管新生、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性症、脈絡膜血管新生、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、眼外傷、手術による浮腫、手術による血管新生、嚢胞様黄斑浮腫、眼虚血、非増殖性網膜症、網膜血管腫性増殖、黄斑毛細血管拡張症またはぶどう膜炎である。
【0110】
いくつかの実施形態では、HPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩が眼疾患の治療に使用される。いくつかの実施形態では、HPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩が眼疾患の治療に使用され、該眼疾患は、眼の血管新生、眼の浮腫、網膜血管新生、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性症、脈絡膜血管新生、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、眼外傷、手術による浮腫、手術による血管新生、嚢胞様黄斑浮腫、眼虚血、非増殖性網膜症、網膜血管腫性増殖、黄斑毛細血管拡張症またはぶどう膜炎である。
【0111】
さらに他の実施形態では、HPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩が眼疾患を治療する医薬の製造に使用される。いくつかの実施形態では、眼疾患は、眼の血管新生、眼の浮腫、網膜血管新生、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性症、脈絡膜血管新生、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、眼外傷、手術による浮腫、手術による血管新生、嚢胞様黄斑浮腫、眼虚血、非増殖性網膜症、網膜血管腫性増殖、黄斑毛細血管拡張症またはぶどう膜炎である。
【0112】
用量
HPTPβ−ECD結合剤投与の有効な用量とスケジュールは経験的に決定してよく、このような決定をすることは当該分野の範囲内である。当業者であれば、投与されなければならない剤の用量は、例えば、剤を受ける対象、投与経路、使用される剤の特定の種類、および対象に投与されている他の薬物により異なることを理解しよう。例えば、抗体の適切な用量を選択する案内が、抗体医薬の文献、例えば、Handbookof Monoclonal Antibodies, Ferrone et al., eds., Noges Publications, Park Ridge,N.J., (1985) ch. 22 and pp. 303-357; Smith et al., Antibodies in HumanDiagnosis and Therapy, Haber et al., eds., Raven Press, New York (1977) pp.365-389に見られる。単独で使用する場合の剤の典型的な用量は、上述の要因により、1日当たり体重の約0.01mg/kg〜500mg/kg以上、または約0.01mg/kg〜約50mg/kg、または約0.1mg/kg〜約50mg/kg、または約0.1mg/kg〜約10mg/kgまで、または約0.2mg/kg〜約1mg/kgの範囲であり得る。
【0113】
1つの実施形態は、対象に約0.01mg/kg〜約50mg/kgのHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む、眼の浮腫および/または血管新生を治療する方法に関する。この実施形態の別の繰り返しは、対象に、HPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を治療対象の体重により約0.1mg/kg〜約10mg/kg投与することに関する。この実施形態のさらなる繰り返しは、治療対象の体重により約1mg/kg〜約10mg/kgのHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を対象に投与することを含む、眼の浮腫および/または血管新生に関する疾患または状態を治療または予防する方法に関する。この実施形態のさらに別の繰り返しは、治療対象の体重により約5mg/kg〜約10mg/kgのHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を対象に投与することを含む、眼の浮腫および/または血管新生に関する疾患または状態を治療または予防する方法に関する。この実施形態のさらなる繰り返しでは、治療対象の体重により約1mg/kg〜約5mg/kgのHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を対象に投与することを含む、眼の浮腫および/または血管新生に関する疾患または状態を治療または予防する方法に関する。この実施形態のさらなる繰り返しでは、治療対象の体重により約3mg/kg〜約7mg/kgのHPTPβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩を対象に投与することを含む、眼の浮腫および/または血管新生に関する疾患または状態を治療または予防する方法に関する。
【0114】
HPTPβ−ECD結合剤の投与スケジュールは、限定ではなく、1日1回、毎週3回、毎週2回、毎週1回、毎月3回、2回、毎月1回、および隔月に1回、を含む。
【0115】
別の薬剤的活性剤の投与の結果である、眼浮腫および/または血管新生に関する本明細書で上述した1以上の疾患または状態を治療または予防する方法がさらに開示される。したがって、この態様は、対象に、(a)有効量のHΡΤΡβ−ECD結合剤またはその薬剤的に許容可能な塩、(b)1以上の追加の薬剤的活性剤、および(c)1以上の担体または適合性のある賦形剤を含む組成物を投与することを含む方法に関する。
【0116】
本発明の方法は、限定ではなくレーザー治療を含む標準治療と組み合わせてよい。
【0117】
HPTPβ−ECD結合剤との併用に適した薬剤的活性剤の非限定的な例は、感染症治療薬、すなわちアミノグリコシド、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗コリン剤/鎮痙剤、抗糖尿病薬、降圧薬、抗腫瘍薬、心血管薬、中枢神経系薬、凝固調節剤、ホルモン類、免疫剤、免疫抑制剤、眼科用調製物などを含む。
【0118】
本開示の方法は、本開示の剤と組成物の投与にも関する。投与は、皮下または静脈を介する全身的投与であり得、またはHPTP−β阻害剤は直接眼に、例えば局所投与されよう。局所投与の方法には、例えば、点眼剤により、結膜下注射または埋め込み、硝子体内注射または埋め込み、テノン下注射または埋め込み、外科的洗浄液への添加などを含む。
【0119】
本開示の方法は、医薬組成物の一部としてHPTPβ−ECD結合剤を投与することに関する。局所投与に適する組成物は当業界で既知である(例えば米国特許公報第2005/0059639号を参照)。様々な実施形態において、本発明の組成物は、溶液、懸濁液、またはその両方中に活性剤を含む液体を含み得る。本明細書では、液体組成物はゲルを含む。1つの実施形態では、液体組成物は水性である。あるいは、組成物は、軟膏形態をとり得る。別の実施形態では、組成物はインサイツのゲル化水性組成物である。そのような組成物は、眼または眼の外部で涙液と接触した際にゲル化を促進するのに有効な濃度のゲル化剤を含み得る。本発明の水性組成物は、眼と適合するpHと浸透圧を有する。組成物は、結膜下投与用の活性剤を含む眼科用徐放性製剤を含み得る。活性剤を含む微粒子が、生体適合性の薬剤的に許容可能なポリマーまたは脂質被包剤に埋め込まれ得る。徐放性製剤は、長時間に渡り活性物質を全て、または実質的に全て放出するようにされてよい。ポリマーまたは脂質マトリックスが存在する場合は、十分に分解されて、全てのまたは実質的に全ての活性物質の放出後、投与部位から輸送されるようにされてよい。徐放性製剤は、薬剤的に許容可能なポリマーと溶解または分散活性剤を含む液体製剤であり得る。注射されると、ポリマーは例えばゲル化または沈降により注射部位にデポーを形成する。組成物は、眼と瞼の間、または結膜嚢の中などの眼の適切な場所に挿入され得、そこで活性剤を放出する固形物を含み得る。そのような態様で眼内埋め込みに適する固形物は、一般にポリマーを含み、生体内分解性であっても非生体内分解性であってもよい。
【0120】
本開示の方法の1つの実施形態では、少なくとも片方の眼に視覚障害をもつヒト対象を、硝子体内注射により2〜4000μgのHPTPβ−ECD結合剤で治療する。臨床症状の改善は、当業界に既知の1以上の方法、例えば間接的眼底検査、眼底写真、フルオレセイン血管障害、網膜電図検査、眼外部の検査、細隙灯生体顕微鏡検査、圧平眼圧測定、パキメトリー、光干渉断層撮影および自動屈折(autorefaction)によりモニタリングされる。2回目以降の投薬は、毎週または毎月、例えば2〜8週または1〜12か月おきの頻度で投与され得る。
【0121】
本開示の方法は、本開示の剤を薬剤的に許容可能な担体と併用で投与することを含む。「薬剤的に許容可能な」とは、生物学的にまたはその他の望ましくないものではない物質を意味し、すなわち、物質は、何らの所望でない生物学的効果を引き起こすことなく、またはそれが含有される医薬製剤の他のすべての成分と有害な態様で相互作用することなく、対象に投与され得る。担体は、当然ながら、あらゆる活性成分の分解を最小限化し、当業者には周知であるような、対象におけるあらゆる有害な副作用を最小限化するように、選択される。別の態様では、本開示の剤の多くが予防的に、すなわち予防薬として、そのままでも薬剤的に許容可能な担体と共にでも、使用され得る。本明細書に開示されるイオン性の液体組成物は、便利にも、イオン性液体そのものからなる、または薬剤的に許容可能な担体と共に、医薬組成物へと製剤され得る。本明細書に記載される剤の製剤の調製と関連して使用され得る典型的な担体と医薬組成物を調製する従来の方法を開示しているRemington'sPharmaceutical Sciences, 18th ed., Gennaro, AR. Ed., Mack Publishing, EastonPa.(1990)(参照として本明細書に組み込まれる)を参照されたい。そのような医薬担体は、最も典型的には、無菌水、生理学的pHの生理食塩緩衝溶液などの溶液を含む、ヒトと非ヒトに組成物を投与する標準的担体であろう。他の剤が、当業者に使用される標準的手順により投与され得る。例えば、医薬組成物は、抗微生物剤、抗炎症剤、麻酔剤などの1以上の追加の活性成分も含み得る。
【0122】
薬剤的に許容可能な担体の例は、限定ではなく、食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液を含む。溶液のpHは好ましくは約5〜約8、より好ましくは約7〜約7.5である。さらなる担体は、本開示の剤を含む固形疎水性ポリマーの半透過性マトリックスなどの徐放調整物を含み、該マトリックスは形のある物品、例えばフィルム、リポソーム、微粒子またはマイクロカプセルの形をとる。当業者であれば、例えば投与経路および投与される組成物の濃度により、ある特定の担体がより好ましい場合があることを理解されよう。他の剤が、当業者に使用される標準的手順により投与され得る。
【0123】
医薬製剤は、本明細書に開示の剤に加え、追加の担体並びに増粘剤、希釈物、バッファー、保存料、表面活性因子などを含み得る。医薬製剤は、抗微生物剤、抗炎症剤、麻酔剤などの1以上の追加の活性成分も含み得る。
【0124】
本開示の目的に関し、「賦形剤」と「担体」という用語は本開示の記載全体で交換可能に使用され、本明細書では「安全で有効な医薬組成物の製剤の実施で使用される成分」と定義される。
【0125】
製剤業者は、賦形剤は、主として安全で安定した機能的な医薬を送達する働きをし、送達用の全ビヒクルの一部としてだけではなく、活性成分がレシピエントにおいて有効に吸収される手段としても作用するのに使用されることを理解しよう。賦形剤は、不活性フィラーとして単純で直接的な役割を果たし得るか、または賦形剤は本明細書ではpH安定化システムの一部であり得る。製剤業者は、本発明の剤が改良された細胞能力、薬物動態学的特性を有するという事実を利用することもできる。
【0126】
本開示の剤は、活性治療薬を送達する液体、乳剤または懸濁液中にも存在し得る。液体の薬剤的に投与可能な組成物は、例えば、本明細書に記載される活性因子および所望により薬剤的アジュバントを、例えば、水、食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどの賦形剤中に溶解、分散させるなどして調整され得、それによって溶液または懸濁液が生成する。所望であれば、投与される医薬組成物は、湿潤または乳化剤、pH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミンなどの少量の非毒性補助剤も含み得る。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者には既知であるまたは明らかになろう。例えば、上記参照のRemington'sPharmaceutical Sciencesを参照されたい。
【0127】
キット
ヒト、哺乳動物または細胞に送達される剤および組成物を含むキットも開示される。キットは、ヒト、哺乳動物または細胞内に送達される1以上の剤を含む組成物の1以上の包装された単位用量を含み得る。送達される剤が使用前に包装されている単位用量のアンプルまたは複数用量の容器は、組成物の単位用量または複数の単位用量を封入する気密密封容器を含み得る。剤は、無菌製剤として包装され得、使用時まで製剤の無菌性を保つ気密密封容器が設計される。
【実施例1】
【0128】
HPTPβ細胞外ドメインタンパク質の産生
全長HPTPβcDNA(配列番号1)を、製造者(Origene社)の指示に従いヒト胎盤ライブラリーからクローン化する。全ての可溶性のHPTPβの細胞外ドメイン(ECD)をコードするcDNAを、c末端にHis−His−His−His−His−His−Gly(6His−Gly)(配列番号3)を付加されたアミノ酸1〜1621をコードする全長cDNAからPCRによりクローン化する。得られたcDNAを、HEK293細胞における一過性(pShuttle−CMV)または安定した(pcDNA3.1(−))発現のため、哺乳動物発現ベクターにクローン化する。精製HPTPβECD(βED)を得るため、βECD発現ベクターで形質移入したHEK293細胞をOptiMEM無血清(Gibco社)中通常の成長条件下で24時間培養する。次いで培養上清を回収し、遠心分離してデブリを除去し、1mLの洗浄済みNi−NTAアガロース(Qiagen社)(500μLのパック入り)を各清澄培地10μLに加えて、4℃で一晩振とうする。翌日、混合物をカラムに充填し、20ベッド体積のpH8の50mMのNaHPO、300mMのNaCl、20mMのイミダゾールで洗浄する。次いで、精製したHPTPβ細胞外ドメインタンパク質(配列番号4)をpH8の50mMのNaHPO、300mMのNaCl、250mMのイミダゾール中200μL/溶出で溶出する。画分のタンパク質含有量を還元−変性SDS−ポリアクリルイミドゲル電気泳動法を用い、銀染色(Invitrogen社)により検出し、質量分析により確認して分析する。
【実施例2】
【0129】
HPTPβ細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体の生成
精製されたHPTPβ細胞外ドメインタンパク質を、例えば実施例1に記載の手順により産生する。HPTPβ細胞外ドメイン免疫原を産生するため、精製されたHPTPβ細胞外ドメイン−6−Hisタンパク質をEDC結合化学を用いてブタのサイログロブリン(Sigma社)に結合させる(Hockfield,S. et al., (1993) Cold Spring Habor Laboratory Press. Vol. 1 pp. 111-201,Immunocytochemistry)。得られたHPTPβ細胞外ドメイン−サイログロブリン複合体をpH7.4のPBSに対し透析する。次に、成体Balb/cマウスを複合体(100〜200μg)と完全フロイントアジュバントの1:1の混合物で皮下免疫感作する。2〜3週後、マウスに不完全フロイントアジュバントと複合体の1:1の混合物を腹腔内または皮下注射する。注射を4〜6週に繰り返す。3回目の注射から7日後にマウスから血清を採取し、HPTPβ細胞外ドメイン抗原に対する免疫反応性をELISAおよびウエスタンブロット法でアッセイする。抗原に対し良好な応答を示すマウスは、31ゲージの超長針を用いて50μlの精製されたHPTPβ細胞外ドメインタンパク質を1:1で水酸化ミョウバンと混合した単回脾臓内注射でブーストする(Coding,J. W., (1996) Monoclonal Antibodies: Principles and Practices. Third Edition,Academic Press Limited, p.145)。マウスは2.5%アベルチンで短時間麻酔し、皮膚と左斜体壁を1センチ切開する。抗原混合物を、針を脾臓の後方部分から前方部分に挿入し、長手方向に注入して投与する。体壁を縫合し、皮膚を2つの小型金属クリップで封着する。マウスの無事な回復をモニタリングする。術後4日目にマウスの脾臓を除去し、単一細胞の懸濁液を作製してマウス骨髄腫細胞と融合させハイブリドーマ細胞株を作製する(Spitz,M., (1986) Methods In Enzymology, Vol. 121. Eds. John J, Lagone and Helen VanVunakis. pp. 33-41 (Academic Press, New York, NY))。得られたハイブリドーマを15%のウシ胎児血清(Hyclone社)とヒポキサンチン、アミノプテリンとチミジンを補充したダルベッコ変法培地(Gibco社)中で培養する。
【0130】
陽性ハイブリドーマのスクリーニングは融合の8日後から開始し、15日間継続する。ハイブリドーマ産生抗HPTPβ細胞外ドメイン抗体は、2組の96ウェルのプレート上でELISAにより同定され、1組はヒスチジンタグをつけたHPTPβ細胞外ドメインでコートされ、もう一方は陰性対照としてヒスチジンタグをつけた細菌性MurAタンパク質でコートされる。二次抗体は西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)(Jackson Immunoresearch社)で標識されたロバ抗マウスIgGである。免疫応答性は、ABTS錠剤をpH7.5のTBSバッファーに溶解させて開始される発色を用いてウェル内でモニタリングされる。個々のHRP反応混合物は、100マイクロリットルの1%SDSを添加されて停止され、分光光度計で405nmで吸光度を読み取られる。HPTPβ細胞外ドメイン−6Hisと相互作用するがmurA−6Hisタンパク質とは相互作用しないハイブリドーマ産生抗体は、さらなる分析に使用される。限界希釈(0.8細胞/ウェル)を96ウェルプレートの陽性クローンに2回行い、クローン性は、ウェルの99%超が陽性反応を有することと定義される。抗体イソタイプを、イソストリップ手法(Roche社)を用いて決定する。さらなる評価用に精製抗体を得るために、組織培地上清をプロテインAまたはプロテインGカラムを用いて親和性精製する。
【0131】
HPTPβ−ECDタンパク質に対し免疫応答性のある5つのモノクローナル抗体が単離され、以下のとおり命名された:R15E6、R12A7、R3A2、R11C3、R15G2およびR5A8。ELISAとウエスタンブロット法におけるHPTPβ−ΕCDタンパク質との反応に基づき、R15E6がさらなる研究用に選ばれた。
【実施例3】
【0132】
モノクローナル抗体R15E6
モノクローナル抗体R15E6を本願の実施例2と米国特許第7,973,142号に記載されるように同定し特徴づけた;手順と結果を以下に要約する。
【0133】
A.免疫沈降により示されるようにR15E6は内在性のHPTPβと結合する。
材料:Cambrex社のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、EGM培地、およびトリプシン中和液;OPTIMEMI(Gibco社)、ウシ血清アルブミン(BSA;Santa Cruz社)、リン酸緩衝食塩水(PBS;Gibco社)、アンジオポエチン1(Ang1)、血管内皮増殖因子(VEGF)および線維芽細胞増殖因子(FGF)を含む増殖因子(R&D Systems社)、Tie2モノクローナル抗体(Duke大学/P&GP社)、VEGF受容体2(VEGFR2)ポリクローナル抗体(Whitakeret.al)、タンパク質A/Gアガロース(Santa Cruz社)、トリス−グリシンプレキャストゲル電気泳動/転写システム(6〜8%)(Invitrogen社)、PVDF膜(Invitrogen社)、溶解バッファー(20mmのトリス−HCl、137mmのNaCl、10%のグリセロール、1%のトリトン−X−100、2mMのEDTA、1mMのNaOH、1mMのNaF、1mMのPMSF、1μg/mlのロイペプチン、1μg/mlのペプスタチン)
【0134】
方法:HUVECを抗体(OPTIMEM中)またはOPTIMEM Iのみで30分間前処理した。前処理除去後、細胞をAng1(100ng/ml)で6分間PBS+0.2%BSA中で処理し、溶解バッファー中で溶解させた。溶解物をトリス−グリシンゲルに直接通すか、または2〜5μg/mlのTie−2抗体または10μg/mlのR15E6抗体とプロテインA/Gアガロースを用いて免疫沈降させた。免疫沈降した試料を溶解バッファーで1回すすぎ、1倍濃度の試料バッファー中、5分間沸騰させた。試料をトリス−グリシンゲルで分離し、PVDF膜に転写し、表示された抗体(pTYR Ab (PY99、Santa Cruz社)、Tie−2、VEGFR2および/またはR15E6)を用いてウエスタンブロット法で検出した。
【0135】
結果:IP/ウエスタンブロット法により、R15E6はHPTPβのサイズと一致する主要な高分子量のバンドを認識する(図1、パネルA、レーン2)。強度がより低い、低分子量のバンドは、HPTPβの低グリコシル化前駆体をおそらく表している。対照の非免疫IgGを用いての免疫沈降(IP)は、HPTPβの分子量範囲内にバンドを示さず(図1、パネルA、レーン1)、併用Tie2/VEGFR2のIPは、予測された分子量のバンドを示す(図1、パネルA、レーン3)。この結果は、R15E6がHPTPβを認識し、HPTPβに対し特異的であることを示す。
【0136】
B.FACS分析で示されるように、R15E6は内在性のHPTPβに結合する。
材料:Cambrex社のHUVEC、EGM培地およびトリプシン中和液;Molecular Probes社の二次Alexfluor 488−タグ付き抗体;ハンクス平衡塩類溶液(Gibco社);FACSCANフローサイトメーターおよびBecton Dickenson社のCellQuestソフトウェア。
【0137】
方法:HUVECをトリプシン化し、トリプシン中和液で処理し、HBSSですすぐ。R15E6抗体(0.6μg)を50μlのHBSS中250,000個の細胞に加え、氷中20分インキュベートする。細胞を1mlのHBSSですすいだ後、2μgの蛍光結合二次抗体を氷中20分かけて加えた。細胞をすすいで1mlのHBSS中に再懸濁させてから、CellQuestソフトウェアを用いてFACSCANフローサイトメーターで分析した。対照細胞は蛍光結合二次抗体のみで処理した。
【0138】
結果:FACS分析により、蛍光シグナルにおいて、無傷のHUVEC、R15E6は、二次抗体のみと比較して強力なシフト(細胞の90超)をもたらす(図1、パネルB)。この結果は、R15E6が無傷の内皮細胞表面に提示される内在性のHPTPβに結合することを示す。
【実施例4】
【0139】
R15E6はTie2活性化を増大させる。
R15E6は、Tie2リガンドであるアンジオポエチン1(Ang1)の存在下および非存在下でTie2リン酸化を増大させる。
【0140】
方法:様々な濃度のR15E6の存在または非存在下で、Ang1の添加ありまたはなしで、HUVECを上述したように無血清培地で培養する。溶解物が調製され、Tie2抗体を用いて免疫沈降され、ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離され、PVDF膜に転写される。膜に結合した免疫沈降されたタンパク質は次いで連続的ウエスタンブロットに供され、抗ホスホチロシン抗体を用いてTie2リン酸化を定量化してからTie2抗体を用いて全Tie2を定量化する。Tie2リン酸化は、抗ホスホチロシンシグナルの全Tie2シグナルに対する比率として表す。
【0141】
結果:R15E6は、Ang1の存在下および非存在下の両方でTie2リン酸化を増大させる(図2)。この結果は、内皮細胞表面のHPTPβにR15E6が結合することで、その生物学的機能が調節され、その結果としてリガンドの有無にかかわらずTie2の活性化が増大することを示す。
【実施例5】
【0142】
抗VE−PTP細胞外ドメイン抗体の生成
A.マウスVE−PTP細胞外ドメインタンパク質(VE−PTP−ECD)の産生
VE−PTP−ECDは任意適当な方法により産生され得る。そのような操作方法は、当技術分野では周知である。例えば、VE−PTP−ECDは、HPTPβ−ECDをコードするcDNAの代わりにVE−PTP−ECDcDNAが使用される、本開示の実施例1に類似の方法を用いて産生され得る。配列番号7は、VE−PTP−ECDをコードするヌクレオチド配列を提供する。配列番号8は、VE−PTP−ECDのアミノ酸配列を提供する。
【0143】
B.VE−PTP ECDに対する抗体の生成
抗VE−PTP抗体は、当技術分野では周知の方法により、容易に生成される。例えば、抗VE−PTP抗体は、VE−PTP−ECDをHPTPβ細胞外ドメインの代わりにし、得られたタンパク質でラットを免疫感作することにより、本開示の実施例2の方法を用いて生成され得る。この研究で使用されたラット抗マウスVE−PTP抗体は、D.Vestweber博士のご厚意により提供された(mAb 109)。抗体は、BaumerS. et al., Blood, 2006; 107: 4754-4762に記載のように生成した。簡単に説明すると、抗体は、ラットをVE−PTP−Fc融合タンパク質で免疫感作することで生成された。免疫感作、ハイブリドーマ融合、およびスクリーニングは、GotschU., et al., J Cell Sci. 1997, Vol. 110, pp. 583-588およびBosse R. and VestweberD., Eur J Immunol. 1994, Vol. 24, pp. 3019-3024に記載のように実施した。
【0144】
融合タンパク質を構築し、VE−PTPの732位のアミノ酸で終わる最初の8個のフィブロネクチンIII型様リピートがヒトIgG1のFc部分とフレームを合わせて融合されるようにした(239位のアミノ酸プロリンから始まる)。このpcDNA3(Invitrogen社)にクローン化した構築物をCHO細胞細胞に安定的に形質移入し、融合タンパク質をプロテインAセファロース親和性精製により精製した。
【実施例6】
【0145】
抗VE−PTP ECD抗体の硝子体内注射
レーザー誘発脈絡膜血管新生モデル:脈絡膜血管新生モデルは、血管新生加齢黄斑変性モデルを代表すると考えられている。脈絡膜血管新生を前述のように生成した。TobeT, et al., Am. J. Pathol. 1998, Vol. 153, pp. 1641-1646を参照されたい。成体C57BL/6マウスは、各眼のブルッフ膜の3か所にレーザー誘発性裂創を有し、1または2μgのVE−PTP−ECD抗体(IgG2a)の硝子体内注射1μLを片眼に受け、もう一方の眼にはビヒクル(5%のデキストロース)を受けた。これらの処置を7日目に反復した。レーザーの14日後、マウスをフルオレセイン標識デキストラン(平均分子量2×l0、Sigma社、ミズーリ州セントルイス)で潅流し、血管新生の程度を蛍光顕微鏡により脈絡膜フラットマウントにおいて評価した。各ブルッフ膜裂創部位における脈絡膜血管新生の面積を、治療群については観察者に隠して画像分析により測定した。脈絡膜血管新生の面積は、片眼の3つの裂創の平均である。図3に示すように、VE−PTP−ECD抗体での処置は、1および2μgの両用量で、ビヒクル対照での処置に対し、脈絡膜血管新生を有意に減少させた。
【実施例7】
【0146】
酸素誘発虚血性網膜症
酸素誘発虚血性網膜症モデルは、増殖性糖尿病性網膜症モデルを代表すると考えられている。虚血性網膜症は、Smith, L.E.H., et al.Oxygen-induced retinopathy in the mouse. Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 35,101-111 (1994)に記載された方法により、C57BL/6マウスにおいて作製された。
【0147】
出生後7日目(P7)のC57BL/6マウスとそれらの母マウスを気密チャンバに入れ、高酸素状態(75±3%の酸素)に5日間曝した。酸素はPROOXモデル 110 酸素コントローラ(Reming Bioinstruments Co.社、ニューヨーク州レッドフィールド)により継続的にモニタリングした。P12にマウスは大気に戻され、手術用顕微鏡下で、ハーバードポンプマイクロインジェクションシステムおよび引いた(pulled)ガラスピペットを使用して、1または2μgのVE−PTP−ECD抗体の1μlの硝子体内注射を片眼に送達し、もう一方の眼にビヒクルを注射した。P17に、前述したように、網膜表面の血管新生の面積をP17に測定した。ShenJ, et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2007, Vol. 48, pp. 4335- 4341を参照されたい。簡単に説明すると、マウスに0.5μgのラット抗マウスPECAM抗体(Pharmingen社、カリフォルニア州サンノゼ)を含む1μlの眼内注射をした。12時間後、マウスを安楽死させ、眼を10%ホルマリン中に固定した。網膜を切除し、1:500で、Alexa488を結合させたヤギ抗ラットIgG(Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド)中、40分かけてインキュベートし、洗浄し、全載した。治療群について隠された観察者が、ニコン蛍光顕微鏡を用いてスライドを検査し、ImagePro Plusソフトウェア(Media Cybernetics社、メリーランド州シルバースプリング)を用いてコンピュータ化画像分析により網膜当たりの血管新生面積を測定した。図4は、VE−PTP−ECD抗体での処置が、1および2μgの両用量で、ビヒクル対照での処置に対し、網膜の脈絡膜血管新生を有意に減少させたことを示す。図5は、ビヒクル処置のマウス対2μgのVE−PTP−ECD抗体で処置したマウスの代表的なホールマウントを示す。
【実施例8】
【0148】
VE−PTP−ECD抗体の皮下注射
硝子体内投与の酸素誘発虚血性網膜症モデルを実施例7に記載のように実施したが(P5〜P12まで75%の酸素雰囲気中に閉じ込める)、VE−PTP−ECD抗体(1mg/kg)は、マウスが大気に戻されたP12と、P14とP16に再度(全部で3回投与)皮下投与した。血管新生は上述のようにP17日目に評価した。図6は、VE−PTP−ECD抗体の皮下投与により、網膜血管新生の面積が減少することを示す。
【実施例9】
【0149】
実施例8に記載した実験を2mg/kgの皮下投与量で反復した(図7)。
【0150】
本開示の多くの実施形態が記載されるが、基本例が変更されて、本発明のHPTPβ−ECD結合剤、方法および過程を利用または包含する他の実施形態を提供し得ることは、明らかである。実施形態と例は例示目的であり、本開示を限定するものと解釈してはならず、むしろ、添付の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]