(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ等に使用される多階調のフォトマスクであるハーフトーンマスク、フォトマスクブランクス及びハーフトーンマスクの製造方法に関する。
【0002】
フラットパネルディスプレイなどの技術分野においては、半透過膜の透過率で露光量を制限するという機能を備えた、ハーフトーンマスクと呼ばれる多階調のフォトマスクが使用されている。
ハーフトーンマスクは、透明基板と遮光膜との中間の透過率を有する半透過膜を利用し、透明基板、半透過膜、遮光膜により、3階調又はそれ以上の多階調のフォトマスクを実現することができる。
【0003】
特許文献1に開示されるようなハーフトーンマスクを使用することにより、1回の露光で膜厚の異なるフォトレジストパターンを形成することができ、フラットパネルディスプレイの製造工程におけるリソグラフィーの工程数を削減し、製造コストを低減することが可能となる。
例えば、薄膜トランジスタ(TFT)を用いた液晶表示装置においては、TFTのチャネル領域及びソース/ドレイン電極形成領域で、それぞれ膜厚の異なるフォトレジストパターンを1回の露光工程で形成することで、リソグラフィー工程を削減し、それにより製造コストを削減する技術がとして用いられる。
【0004】
一方で、フラットパネルディスプレイの高画質化のため、配線パターンの微細化の要望が、ますます強くなってきている。プロジェクション露光機で、解像限界に近いパターンを露光しようとする場合、露光マージンを確保するため、特許文献2に開示されるように、遮光領域のエッジ部に位相を反転させる位相シフタを設けた位相シフトマスクが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハーフトーンマスクは、リソグラフィー工程の削減に寄与することはできるものの、半透過膜と遮光膜との境界における露光光の強度分布の変化が比較的緩やかであり、そのためハーフトーンマスクを用いて露光したフォトレジスト膜は、境界に相当する部分での断面形状が緩やかな傾斜を示し、プロセスマージンが低下し、微細なパターンを形成することが困難であるという問題がある。
【0007】
位相シフトマスクを使用することにより解像度が向上し、パターンの更なる微細化が可能となる。しかし、位相シフトマスクはバイナリマスクを対象とする技術であるため、ハーフトーンマスクの様なリソグラフィー工程の削減は不可能である。そのため、フラットパネルディスプレイの製造に使用した場合、リソグラフィー工程の削減に寄与することができない。
【0008】
このように従来のフォトマスクでは、フラットパネルディスプレイ製造コストの低減と解像度の問題を両立させることは不可能であった。
【0009】
上記課題を鑑み、本発明は、リソグラフィー工程の削減とパターンの更なる微細化を両立することができるフォトマスク及びその製造に使用するフォトマスクブランクス、ならびにフォトマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるフォトマスクは、
透明基板上に半透過部、位相シフト部、境界部及び透光部を有し、
前記透光部は、前記透明基板が露出した部分からなり、
前記半透過部は、前記透明基板上に設けられた半透過膜で形成され、
前記位相シフト部は前記透明基板上に設けられた位相シフト膜で形成され、
前記境界部は、前記半透過部と前記位相シフト部とが隣接する領域に形成され、
前記境界部の幅が一定幅以下であり、
前記境界部は、前記位相シフト膜、エッチングストッパー膜、前記半透過膜がこの順に形成された積層構造膜で形成された
ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかるフォトマスクは、
透明基板に半透過部、位相シフト部、境界部及び透光部を有し、
前記透光部は前記透明基板が露出した部分からなり、
前記半透過部は前記透明基板上に設けられた半透過膜で形成され、
前記位相シフト部は前記透明基板上に設けられた位相シフト膜で形成され、
前記境界部は、前記半透過部と前記位相シフト部とが隣接する領域に形成され、
前記境界部の幅が一定幅以下であり、
前記境界部は、前記半透過膜、エッチングストッパー膜、前記位相シフト膜がこの順に形成された積層構造膜で形成された
ことを特徴とする。
【0012】
本発明にかかるフォトマスクは、
前記位相シフト膜は、露光光に対する透過率が1〜10[%]であり、かつ露光光の位相が反転することを特徴とする。
【0013】
本発明にかかるフォトマスクは、
前記半透過膜の露光光に対する透過率は10〜60[%]であることを特徴とする。
【0014】
このような構成とすることで、半透過部は、位相シフト部及び透光部の中間の光透過率であり、半透過部、位相シフト部及び透光部によって多階調のフォトマスクを得ることができる。さらに半透過部と位相シフト部とを隣接させることで、半透過部と位相シフト部との境界部での露光光のプロファイルを急峻に変化させることができ、露光されたフォトレジストの形状を改善し、パターンの微細化を実現することができる。その結果、ハーフトーン効果と位相シフトの効果の両方を有するフォトマスクを得ることができる。
【0015】
本発明にかかるフォトマスクは、
前記位相シフト膜と前記半透過膜とは、同じエッチング液によりエッチング可能であり、前記エッチングストッパ膜は、前記エッチング液に対してエッチング選択性を有することを特徴とする。
【0016】
このような構成とすることで、フォトマスクの製造工程において、ウェットエッチングを用いて、フォトマスクの製造が容易になる。
【0017】
本発明にかかるフォトマスクは、
前記境界部の幅は、フォトマスク描画装置の位置合わせ誤差に設定され、前記フォトマスクが用いられる投影露光装置の解像限界以下であることを特徴とする。
【0018】
このような構成とすることで、境界部分のエッチングストッパ膜がフォトレジストの露光に対して悪影響を与えること無く、半透過部と位相シフト部とを隣接させることが可能となる。
【0019】
本発明にかかるフォトマスクブランクスは、
透明基板上に位相シフト膜及びエッチングストッパ膜が、この順に積層されたことを特徴とする。
【0020】
このような構成のフォトマスクブランクスとすることにより、フォトマスクブランクス上に顧客の仕様や用途に合わせた半透過膜を成膜し、多階調マスクを形成することができる。その結果、ハーフトーン効果と位相シフトの効果の両方を備えた、所望の特性を有するフォトマスクの製造工期を短縮することができる。
【0021】
本発明にかかるフォトマスクの製造方法は、
透明基板上に位相シフト膜及びエッチングストッパ膜をこの順に積層する工程と、
第1のフォトレジスト膜を形成する工程と、
前記第1のフォトレジスト膜をパターニングする工程と、
前記第1のフォトレジスト膜をマスクに前記エッチングストッパ膜をエッチングする工程と、
前記エッチングストッパ膜をマスクに前記位相シフト膜をエッチングする工程と、
前記第1のフォトレジスト膜を除去する工程と、
半透過膜を形成する工程と、
第2のフォトレジスト膜を形成する工程と、
前記第2のフォトレジスト膜をパターニングする工程と、
前記第2のフォトレジスト膜をマスクに前記半透過膜をエッチングする工程と、
前記第2のフォトレジスト膜を除去する工程と、
前記半透過膜をマスクに前記エッチングストッパ膜をエッチングする工程とを
含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明にかかるフォトマスクの製造方法は、
透明基板上に半透過膜及びエッチングストッパ膜をこの順に積層する工程と、
第3のフォトレジスト膜を形成する工程と、
前記第3のフォトレジスト膜をパターニングする工程と、
前記第3のフォトレジスト膜をマスクに前記エッチングストッパ膜をエッチングする工程と、
前記エッチングストッパ膜をマスクに前記半透過膜をエッチングする工程と、
前記第3のフォトレジスト膜を除去する工程と、
位相シフト膜を形成する工程と、
第4のフォトレジスト膜を形成する工程と、
前記第4のフォトレジスト膜をパターニングする工程と、
前記第4のフォトレジスト膜をマスクに前記位相シフト膜をエッチングする工程と、
前記第4のフォトレジスト膜を除去する工程と、
前記位相シフト膜をマスクに前記エッチングストッパ膜をエッチングする工程とを
含むことを特徴とする。
【0023】
このようなフォトマスクの製造方法により、半透過膜と位相シフト膜のパターニングが可能となる。さらに半透過膜のパターンと位相シフト膜のパターンとを隣接して配置することも可能となる。その結果、ハーフトーンの効果と位相シフトの効果の両方を有するフォトマスクを製造することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、パターンの更なる微細化とリソグラフィー工程の削減が可能な多階調のハーフトーンマスクを実現することができる。その結果、例えば高画質なフラットパネルディスプレの製造コストの低減に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0027】
(実施形態1)
以下、本発明に係るハーフトーンマスクの実施形態1の製造工程を詳細に説明する。
【0028】
図1(A)に示すように、合成石英ガラス等の透明基板11上に、位相シフト膜12をスパッタ法等により成膜し、その上にエッチングストッパ膜13をスパッタ法等により成膜することにより、フォトマスクブランクス10を準備する。
【0029】
位相シフト膜12は、その位相シフト角は略180[度]であり、露光光の位相を反転し、露光光に対する位相シフト膜12の光透過率は1%〜10%である。
位相シフト膜12の光透過率が低すぎると位相シフトの効果が小さくなるため、典型的な光透過率は5〜7[%]である。具体的には、例えば膜厚80〜200[nm]のCr(クロム)酸化膜、Cr酸窒化膜等を使用し、必要な特性に合わせて膜厚や組成を調整する。また、必ずしも単層膜である必要はなく、例えば膜厚方向に対して組成が変化する膜や、組成が異なる膜を積層した膜であってもよい。
なお、露光光として、g線、h線、i線やこれらの2つ以上の混合光を用いることができる。
ここで略180[度]とは、具体的には、180±10[度]の範囲であり、この範囲であれば位相反転の効果を十分に得ることができる。
【0030】
エッチングストッパ膜13は、位相シフト膜12とは材質が異なり、エッチング特性の異なる膜を使用する。具体的には、エッチングストッパ膜13として、例えば膜厚4〜30[nm]のTi(チタン)系膜(Ti、Ti酸化膜、Ti酸窒化膜、若しくはこれらの積層膜)、Ni(ニッケル)系膜(Ni、Ni酸化膜、Ni酸窒化膜、若しくはこれらの積層膜)、MoSi(モリブデンシリサイド)膜等を使用する。
【0031】
次に、エッチングストッパ膜13上に第1のフォトレジスト膜14を塗布法により形成する。
【0032】
次に
図1(B)に示すように、第1のフォトレジスト膜14を、例えばフォトマスク描画装置により露光し、その後現像することにより、第1のフォトレジストパターン14a、14b、14cを形成する。
【0033】
次に
図1(C)に示すように、第1のフォトレジストパターン14a、14b、14cをマスクにエッチングストッパ膜13をエッチングし、エッチングストッパ膜のパターン13a、13b、13cを形成する。
エッチングはウェットエッチング法又はドライエッチング法により行うことができる。位相シフト膜12に対して選択的にエッチングストッパ膜13をエッチングする場合、好適には高い選択比を有するウェットエッチングが使用できる。エッチング液は、位相シフト膜12に対して選択性を有し(エッチング耐性があり)、エッチングストッパ膜13の材質に合わせて、エッチングストッパ膜13をエッチングできる薬液を選択すればよい。例えばTi系膜を使用する場合、水酸化カリウム(KOH)と過酸化水素水の混合液を好適に使用できるが、これに限るものではない。
【0034】
次に
図2(A)に示すように、第1のフォトレジストパターン14a、14b、14cをアッシング等により除去し、その後、エッチングストッパ膜のパターン13a、13b、13cをマスクに位相シフト膜12をエッチングし、位相シフト膜のパターン12a、12b、12cを形成する。
位相シフト膜12のエッチング法として、ウェットエッチング法又はドライエッチング法が用いられる。ただし、エッチングストッパ膜に対して位相シフト膜12を選択的にエッチングするため、高いエッチング選択比が得られるウェットエッチング法が好適に使用できる。
例えば、上記のようにエッチングストッパ膜13をTi系膜、位相シフト膜12をCr酸化膜、Cr酸窒化膜とすると、位相シフト膜12のエッチング液として、セリウム系のエッチング液である例えば硝酸第二セリウムアンモニウム水溶液を好適に使用することができるが、これに限定するものではない。
【0035】
また、位相シフト膜12をエッチングし、位相シフト膜のパターン12a、12b、12cを形成した後に、アッシング法等により第1のフォトレジストパターン14aを除去してもよい。
この場合、エッチングストッパ膜13のエッチング工程と位相シフト膜12のエッチング工程を連続して行うこともできる。
【0036】
次に、
図2(B)に示すように、ハーフトーン膜として、例えば膜厚1〜40[nm]のCr、Cr酸化膜、Cr酸窒化膜等の半透過膜15、をスパッタ法等により形成し、その後、半透過膜15上に第2のフォトレジスト膜16を塗布法により形成する。
ここで、上記半透過膜15の光透過率は、10〜60%、典型的には20%〜55%に設定する。半透過膜15は露光光の位相を反転せず、位相シフト角は、例えば0.4〜15度である。半透過膜の上記光学的特性は、膜厚や組成によって調整することができる。
【0037】
ここでハーフトーン膜である半透過膜の光透過率は、使用目的や顧客の仕様等により決定されるものである。従って、位相シフト膜とエッチングストッパ膜を積層したフォトマスクブランクスを予め準備しておき、顧客等の仕様に合わせてハーフトーン膜を形成することにより、フォトマスクの仕様確定からフォトマスク完成までの製造工期を短縮することができる。
【0038】
次に、
図2(C)に示すように、第2のフォトレジスト膜16を露光及び現像することにより、第2のフォトレジストパターン16aを形成する。
【0039】
次に、
図2(D)に示すように、第2のフォトレジストパターン16aをマスクに、半透過膜15をエッチングし、半透過膜のパターン15aを形成し、その後アッシング等により第2のフォトレジストパターン16aを除去する。
半透過膜15のエッチング法として、ウェットエッチング法又はドライエッチング法が使用できるが、高いエッチング選択比が得られるウェットエッチング法が好適に使用できる。
位相シフト膜12と同様に半透過膜15としてCr系の膜を使用する場合、エッチング液として、例えば硝酸第二セリウムアンモニウム水溶液を使用することができる。
【0040】
次に、
図3に示すように、半透過膜のパターン15aをマスクに、位相シフト膜のパターン12a、12b、12c上のエッチングストッパ膜のパターン13a、13b、13cをエッチングする。半透過膜のパターン15aの下部には、一部のエッチングストッパ膜のパターン13d、13eが残存する。
エッチング法として、ウェットエッチング法又はドライエッチング法が使用できるが、高いエッチング選択比が得られるウェットエッチング法が好適に使用できる。エッチング液として、上記のとおりKOHと過酸化水素水の混合液を好適に使用できる。
【0041】
なお、
図2(C)の工程後、第2のフォトレジストパターン16aをマスクに、半透過膜15をエッチングし、半透過膜のパターン15aを形成し、位相シフト膜のパターン12a上のエッチングストッパ膜のパターン13aをエッチングした後に、第2のフォトレジストパターン16aをアッシング等により除去してもよい。
【0042】
図3に示される様に、フォトマスク上には、位相シフト膜のパターン12a、12b、12c、半透過膜のパターン15aが形成され、それ以外の領域では透明な基板11が露出している。
【0043】
図3において、位相シフト膜のパターン12b、12cで形成される位相シフト部と半透過膜のパターン15aで形成される半透過部との位相差は略180[度]となるため、これらの境界部分での位相シフト部と半透過部のパターン15aで形成される半透過部との位相差は、半透過膜の位相シフト角をα[度]とすると180−αであるが、半透過膜の透過率が高い場合、例えば透過率54%であればα=1.1[度]と極めて小さく、位相差は略180[度]とみなせる。或いは、必要ならば位相シフト膜12の膜厚等の微調整により位相差は、180±10[度]の範囲に容易に留めることができる。このためこれらの境界部分でも露光光分布は急峻に変化し、その結果、本フォトマスクを用いて例えばフラットパネル基板上に形成されるフォトレジストのプロファイルは、この境界部分で急峻に変化する。
【0044】
また、基板が露出した透明部と位相シフト膜で形成される位相シフト部との位相シフト角も略180度であるため、これらの境界においても、露光により形成されたフォトレジストのプロファイルも急峻となる。
その結果、ハーフトーンの効果と位相シフトの効果を両立できるフォトマスクを実現することができる。
【0045】
なお上述のように、位相シフト部と半透過部とが隣接する境界部には、エッチングストッパ膜のパターン13d、13eが残存する。境界部分において残存するエッチングストッパ膜のパターン13d、13eの幅は、第2のフォトレジストパターン16aを露光するためのフォトマスク描画装置(レーザー描画装置)の位置合わせ誤差(アライメントずれ)に相当する量である。その結果、半透過部と位相シフト部とが重ね合わせズレで、間隙が生ずること無く隣接させることが可能となる。
【0046】
また、エッチングストッパ膜のパターン13d、13eの幅は、フォトマスクパターンによってフォトレジストを露光する場合、露光結果に影響を与えない範囲の寸法に設定する。すなわち、エッチングストッパ膜のパターン13d、13eの幅は、フォトマスクを用いてフォトレジストを露光する投影(プロジェクション)露光装置の解像限界以下に設定する。
上記投影露光装置の解像限界の値については、経験則として以下の式
λ/(2NA)
を用いることができる。ここで、λは投影露光装置の波長(代表波長)であり、NAは投影露光装置の開口数である。エッチングストッパ膜のパターン13d、13eの幅を、この解像限界以下とすることで、フォトレジストの露光結果に影響を与えることは無い。
【0047】
具体的には、境界部分の13d、13eの幅(設定値)をフォトマスク描画装置の位置合わせ誤差d[μm]と設定することによって、作製されるフォトマスクでの13d、13eの実際の幅(実測値)は0から2dの範囲に収まる。レーザー描画装置のdの典型的な値は、例えば0.5[μm]であり、フォトマスクでの境界部の実際の幅は0〜1[μm]となる。
また、現在、広く用いられているフラットパネルディスプレイ用途の投影露光装置では、NAは0.09程度、代表波長λは365[nm]である。これらの値を上式にあてはめると解像限界の値は2.0[μm]となる。この解像限界の値と比較し、上記レーザー描画装置の位置合わせ誤差は十分に小さい。従って、上記エッチングストッパ膜のパターン13d、13eの幅をフォトマスク描画装置の位置合わせ誤差に設定することにより、実使用上、フォトレジストの投影露光装置の解像限界以下となり、上記2つの条件は両立させることが可能である。
【0048】
本実施形態のフォトマスクについて、例えば、位相シフト膜のパターン12b、12cをTFTのソースドレイン電極、半透過膜のパターン15aをTFTのチャネル領域のパターン形成に使用できる。ソースドレイン領域とチャネル領域の境界部分のフォトレジスト膜のプロファイルが急峻となり、またソースドレイン電極のエッジ部分も急峻となるため、TFTの微細化が実現できる。
【0049】
図4は、ハーフトーン膜と位相シフト膜とを組み合わせた本実施形態により露光したフォトレジストの形状と、ハーフトーン膜と露光光を透過しない遮光膜とを組み合わせた従来のフォトマスクにより露光したフォトレジストの形状とを比較して示す。
【0050】
図4(a)は、本実施形態のフォトマスクの断面であり、
図4(a)は
図3の一部を拡大した図である。
図4(b)は、特許文献1に開示される従来のフォトマスクの断面の一部であり、透明基板42上にハーフトーン膜のパターン43が形成され、ハーフトーン膜のパターン43上にバリア膜(エッチングストッパ膜)のパターン44及び遮光膜のパターン45が形成されている。
【0051】
図4(c)は、
図4(a)に示すフォトマスクにより露光されたフォトレジスト30の断面形状を模式的に示す。ハーフトーン膜である半透過膜に相当する箇所のフォトレジスト膜厚は、位相シフト膜に相当する箇所のフォトレジスト膜厚より薄く、1つのフォトマスクにより、1回の露光で異なるフォトレジスト膜厚を有する領域を形成することができる。
図4(c)において、黒丸で示す点Pは、ハーフトーン膜である半透過膜と位相シフト膜との境界に相当する箇所を示す。
【0052】
同様に、従来のフォトマスクを用いて、異なる膜厚を有するフォトレジスト40を1回の露光で形成することができ、
図4(d)は、
図4(b)に示すフォトマスクにより露光されたフォトレジスト40の断面形状を模式的に示す。
図4(d)中の黒丸で示す点Qは、ハーフトーン膜と遮光膜との境界に相当する箇所を示す。
【0053】
図4(e)は各フォトレジスト30、40の点P及びQでの傾斜角を比較して示すグラフである。
図4(e)より明らかなように、従来のフォトマスクの点Qの傾斜角と比較し、本実施形態によるフォトマスクの点Pの傾斜角は大きく、フォトレジスト30の境界部分の断面形状が急峻になることが理解できる。
すなわち、従来のフォトマスクによりフォトレジストを露光した場合と比較し、本実施形態によるフォトマスクによりフォトレジストを露光することにより、フォトレジスト膜の形状が改善され、レジスト膜厚が変化する境界領域において、急峻な断面形状を得ることができる。
【0054】
(実施形態2)
上記実施形態1においては、透明基板上に位相シフト膜を形成後に半透過膜を形成したが、透明基板上に半透過膜を形成し、その後位相シフト膜を形成することによりフォトマスクを製造してもよい。
以下、図を参照し、フォトマスクの製造方法について説明するが、透明基板、位相シフト膜、半透過膜、エッチングストッパ膜としては、実施形態1と同様の膜を使用することができる。
【0055】
図5(A)に示すように、合成石英ガラス等の透明基板21上に、ハーフトーン膜として、半透過膜22をスパッタ法等により形成し、その上に、エッチングストッパ膜23をスパッタ法等により成膜することにより、フォトマスクブランクス20を準備する。
【0056】
次に、エッチングストッパ膜23上に第3のフォトレジスト膜24を塗布法により形成する。
【0057】
次に
図5(B)に示すように、第3のフォトレジスト膜24を露光及び現像することにより、第3のフォトレジストパターン24aを形成する。
【0058】
次に
図5(C)に示すように、第3のフォトレジストパターン24aをマスクにエッチングストッパ膜23をエッチングし、エッチングストッパ膜のパターン23aを形成する。
【0059】
次に
図6(A)に示すように、第3のフォトレジストパターン24aをアッシング等により除去し、その後にエッチングストッパ膜のパターン23aをマスクに半透過膜22をエッチングし、半透過膜のパターン22aを形成する。
【0060】
また、
図5(C)の工程後、半透過膜22をエッチングし、半透過膜のパターン22aを形成した後に、アッシング法等により第3のフォトレジストパターン24aを除去してもよい。この場合、エッチングストッパ膜23のエッチング工程と半透過膜22のエッチング工程を連続して行うこともでき、エッチングストッパ膜23のエッチング工程において半透過膜22に対して高いエッチング選択比を必ずしも確保する必要が無い。
ただし、
図2(A)の工程と同様に、エッチングストッパ膜のパターン23aをマスクに半透過膜22をエッチングすることにより、両膜のサイドエッチングの抑制に効果的である。
【0061】
次に、
図6(B)に示すように、位相シフト膜25、をスパッタ法等により形成し、その後、位相シフト膜25上に第4のフォトレジスト膜26を塗布法により形成する。
【0062】
次に、
図6(C)に示すように、第4のフォトレジスト膜26を露光及び現像することにより、第4のフォトレジストパターン26a、26b、26cを形成する。
【0063】
次に、
図6(D)に示すように、第4のフォトレジストパターン26a、26b、26cをマスクに、位相シフト膜25をエッチングし、位相シフト膜のパターン25a、25b、25cを形成し、その後アッシング等により第4のフォトレジストパターン26a、26b、26cを除去する。
【0064】
次に、
図7に示すように、位相シフト膜のパターン25a、25bをマスクに、半透過膜のパターン22a上のエッチングストッパ膜のパターン23aをエッチングする。
【0065】
なお、
図6(C)の工程後、第4のフォトレジストパターン26aをマスクに、位相シフト膜25をエッチングし、位相シフト膜のパターン25a、25b、25cを形成し、半透過膜のパターン22a上のエッチングストッパ膜のパターン23aをエッチングした後に、第4のフォトレジストパターン26aをアッシング等により除去してもよい。
【0066】
図7において、位相シフト膜のパターン25a、25bにより形成される位相シフト部と半透過膜のパターン22aの半透過部との位相差は半透過膜の位相シフト角をα[度]とすると180−αであるが、半透過膜の透過率が高い場合、例えば透過率54%であればα=1.1度と極めて小さく、位相差は略180[度]とみなせる。或いは、必要ならば位相シフト膜12の膜厚等の微調整により位相差は、180±10[度]の範囲に容易に留めることができる。このためこの境界部分でも露光光分布は急峻に変化し、その結果、本フォトマスクを用いて例えばフラットパネル基板上に形成されるフォトレジストのプロファイルは、対応する境界部分で急峻に変化する。
また、位相シフト部と基板が露出した透光部との位相差も略180度であるため、その境界部分での露光光分布は急峻に変化し、本フォトマスクを用いて形成されるフォトレジストのプロファイルは、対応する境界部分で急峻な形状とすることができる。
【解決手段】透明基板上に、半透過膜のパターンからなる半透過部と位相シフト膜のパターンからなる位相シフト部とが形成されており、位相シフト膜は、露光光の位相を反転し、位相シフト膜の透過率は、半透過膜の透過率より低い。また、半透過部と位相シフト部とが隣接する境界部において、半透過膜と位相シフト膜とエッチングストッパ膜との積層膜とが形成され、エッチングストッパ膜は、半透過膜と位相シフト膜とのエッチング液によりエッチングされない材質からなる。その結果、ハーフトーンの効果と位相シフトの効果の両方を有するフォトマスクを実現する。