(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記環状突起は、前記フランジ部の表面又は前記側面部の表面からの突出量を0.05mmから2.0mmの範囲内に設定したことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1記載の収納容器。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者は、本発明を成すに先立って、上述した問題点に鑑みて、従来の収納容器の一部を改良した
図10に示すような収納容器100(非公知)を開発した。この収納容器100は、清掃シートが収納される容器本体101と、この容器本体101の上面の開口部を開閉可能な蓋体102とを備えて構成されている。そして、蓋体102は図示しないヒンジによって容器本体101に回動可能に連結されている。
【0018】
容器本体101は、平面形状が略長方形をなす底面部104と、この底面部104の四辺に連続して周囲を囲むように形成された側面部105とを備えており、これら底面部104及び側面部105によって上方に開口された収納凹部106が形成されている。この容器本体101の側面部105の上端には、周方向に連続して環状に形成されたフランジ部107が設けられている。このフランジ部107は、同心状に配置された外フランジ片113と内フランジ片114を有している。そして、内フランジ片114の内周面に、収納凹部106側に突出すると共に環状をなすよう周方向に連続する環状突起108が設けられている。
【0019】
この容器本体101に対して着脱可能に装着される蓋体102は、収納凹部106の上面を覆うことができる上面部110と、この上面部110の四辺に連続して周囲を囲むよう下方に突出して形成された側面部111とを備えており、この側面部111が容器本体101のフランジ部107に対向されている。側面部111は、同心状に配置された外側面片115と内側面片116とを有している。
【0020】
蓋体102の外側面片115は、フランジ部107の外面と同一平面をなすように形成されており、この外側面片115がフランジ部107の外フランジ片113の上方に対向されるようになっている。一方、内側面片116は、フランジ部107の内フランジ片114の内側に対向されるように下方に大きく突出されており、これにより内フランジ片114の内面に設けた環状突起108が内側面片116の外面に当接するように形成されている。この内側面片116による環状突起108への圧接力により、収納容器100の内部の気密性を確保できるように構成されている。
【0021】
ところが、容器本体101及び蓋体102の形状が、平面から見て略長方形をなしており、その長辺部及び短辺部が適度な大きさの曲率半径を有する曲面となっている。更に、容器本体101及び蓋体102の4箇所の角部、即ち、それらの長辺と短辺が交差する部分には適当な大きさの曲面が設定されている。そして、
図11に示すように、フランジ部107である外フランジ片113及び内フランジ片114の4箇所の角部には曲面部113c,114cが設定されている。これらの曲面部113c,114cの曲率半径RA,RDは、長辺部113a,114aの曲率半径RB,RE及び短辺部113b,114bの曲率半径RC,RFと比較して大幅に小さいものであった。しかも、容器本体101のフランジ部107には環状突起108が設けられているため、容器本体101において、フランジ部107の樹脂量が側面部105の他の部分と比べて局所的に多量に必要とされる構造となっていた。
【0022】
これにより、
図11に示すように、容器本体101のフランジ部107の外フランジ片113及び内フランジ片114において、曲面部113c,114cの曲率半径RA,RDと長辺部113a,114aの曲率半径RB、RE及び短辺部113b,114bの曲率半径RC、RFとが大きく異なるために、これらが1つの曲率半径によって連続した1つの曲面となっておらず、2箇所に変曲点STを有する形状となっていた。この点、金型の設計段階では、変曲点STができないように、更に中間の曲率半径による曲面部を設けて長辺部113a,114aと短辺部113b,114bをスムースにつなげるように構成していた。
【0023】
その結果、蓋体102を容器本体101に嵌合させたときに、フランジ部107の内フランジ片114の内面と蓋体102の内側面片116の外面との間に三日月形の隙間117,118,119が形成されるようになっていた。そのため、容器本体101に対する蓋体102の開放操作はスムースに行うことができるが、容器本体101と蓋体102との間の高度な気密性を確保することが不十分であった。
【0024】
本願発明は、このような先行技術(非公知)の不十分な点を解決するためになされたもので、容器本体に対する蓋体の開放操作をスムース(容易)に行うことができると共に、容器本体と蓋体との間の高度な気密性を確保することが可能な収納容器を提供することができる。
【0025】
以下に、
図1乃至
図9及び
図12乃至
図14を参照して、本発明の収納容器の例を説明する。まず、収納容器の第1の実施例について、
図1乃至
図9を参照して説明する。
図1〜
図4に示すように、本発明の第1の実施例に係る収納容器1は、物品を収納することができる上面が開口された収納凹部4を有する容器本体2と、その容器本体2の上部に対して着脱可能であって、容器本体2の開口部を開閉可能な蓋体3と、を備えている。この収納容器1の収納凹部4に収納される物品としては、例えば、洗浄剤が含浸された清掃シート、ティッシュペーパー、ペーパータオル等を挙げることができる。
【0026】
図1等に示すように、容器本体2は、4箇所の角部を有する平面形状が略四角形をなす底面部6と、その底面部6の四辺に連続すると共に、その底面部6を囲うように形成され且つ4箇所の角部を有する周方向に連続された側面部7と、その側面部7の上端に連続して形成され且つ4箇所の角部を有する周方向に連続された環状をなすフランジ部8と、そのフランジ部8の内面に設けられ且つ4箇所の角部を有する周方向に連続された環状突起9と、を有している。
【0027】
図4に示すように、容器本体2の底面部6は、4箇所の角部が直角をなす矩形の四角形ではなく、長辺部6a及び短辺部6bのいずれにおいても、中央部が外側に突出した円弧状に形成されていて、その長辺部6aの端部と短辺部6bの端部とが交わる4箇所の角部には適当な曲率半径を有する円弧状に形成された曲面部6cが設けられている。この曲面部6cの曲率半径に比べて長辺部6a及び短辺部6bの曲率半径は極めて大きなものとなっている。なお、底面部6の形状としては、この実施例で示す四角形に限定されるものではなく、3箇所以上18箇所以下の角部を有する多角形、即ち、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形、十一角形、十二角形、十三角形、十四角形、十五角形、十六角形、十七角形及び十八角形の多角形を適用することができる。
【0028】
図1等に示すように、容器本体2の側面部7は、底面部6の周囲に連続すると共にその底面部6を囲うように形成され且つ4箇所の角部を有する4つの側面、即ち、前側面片7aと後側面片7bと左側面片7cと右側面片7dとを有している。そして、隣り合う側面片の間は、底面片6の曲面部6cと略同様の大きさからなる曲率半径を有する曲面片7eとして形成されている。
【0029】
図1及び
図4に示すように、容器本体2のフランジ部8は、側面部7の上端に連続して形成され且つ4箇所の角部を有する無端状に連続された環状の枠体として形成されている。このフランジ部8は、
図5等に示すように、側面部7の上端に連続して水平方向外側に突出された水平片11aと、この水平片11aの先端に連続して形成されると共に縦断面形状がコの字形をなすコ字状片11bとからなっている。フランジ部8のコ字状片11bは、その開口側を下方に向けた状態とされており、水平方向の外側に配置された外フランジ片12と、この外フランジ片12と同心状に配置された内フランジ片13とを有している。そして、内フランジ片13の内面に環状突起9が一体に設けられている。これら外フランジ片12及び内フランジ片13における長辺部12a,13a、短辺部12b,13b及び曲面部12c,13cの曲率半径の大小関係については、後に詳細に説明する。
【0030】
図6A等に示すように、環状突起9は、内フランジ片13の内面において、収納凹部4側に突出する断面形状が略三角形をなす凸部からなり、この凸部を周方向に連続させることにより環状をなす無端状の突条として形成されている。従って、環状突起9にも4箇所に角部が設定されている。このフランジ部8の水平片11aの4箇所の角部に、蓋体3の後述する内側面片26を案内(ガイド)して環状突起9に接触又は圧接させるガイド突起21が設けられている。このガイド突起21については、後に詳細に説明する。
【0031】
図6Bには、環状突起の他の実施例を示す。この
図6Bに示す実施例は、蓋体3に設けた内側面片26の外面に断面形状が半円形をなす環状突起9Aを設けたものである。この環状突起9Aは、収納凹部4と反対側に突出する断面形状が略半円形をなす凸部を周方向に連続させて無端状の突条として形成している。従って、環状突起9Aにも4箇所に角部が設定されている。
【0032】
図1及び
図4に示すように、フランジ部8の長辺部の背面側に、蓋体3を回動自在に支持するためのヒンジ14の一方を構成する一対の軸受部15,15が設けられている。一対の軸受部15,15は、長辺部の長手方向に所定の隙間をあけて配置されており、各軸受部15,15には、互いに対向する面に開口する軸受穴がそれぞれ設けられている。
【0033】
図1等に示すように、蓋体3は、容器本体2の収納凹部4の上面を覆うことができる4箇所の角部を有する上面部17と、その上面部17の周囲に連続すると共に下方に突出してフランジ部8に対向されると共に4箇所の角部を有する側面部18と、を有している。蓋体3の上面部17は、容器本体2の底面部6と同様の形状を有しており、この実施例では、底面部6と同様の略四角形として形成されている。
【0034】
即ち、蓋体3の上面部17は、
図3に示すように、容器本体2の底面部6と同様に、4箇所の角部が直角をなす矩形の四角形ではなく、長辺部及び短辺部のいずれにおいても、中央部が外側に突出した円弧状に形成されており、その長辺部と短辺部とが交わる4箇所の角部においては、適当な曲率半径を有する円弧状に形成された曲面部が設けられている。この曲面部の曲率半径に比べて長辺部及び短辺部の曲率半径は極めて大きなものとなっている。この上面部17の形状は、必然的に底面部6の形状に対応した形状とされており、底面部6が三角形の場合には上面部17の形状も三角形とされ、底面部6が十八角形の場合には上面部17の形状も十八角形とされる。このように、蓋体3の上面部17の形状についても、この実施例で示す四角形に限定されるものではなく、3箇所以上18箇所以下の角部を有する多角形、即ち、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形、十一角形、十二角形、十三角形、十四角形、十五角形、十六角形、十七角形及び十八角形の多角形を適用することができる。
【0035】
蓋体3の側面部18は、4箇所の角部が直角をなしておらず共に中央部が外側に突出した円弧状の曲面部となっており、水平方向の外側に配置された外側面片25と、この外側面片25の内側に所定の間隔をあけて同心状に配置された内側面片26とを有している。内側面片26の上下方向の長さ(深さ)は、外側面片25の略2倍の長さに設定されており、容器本体2に蓋体3を装着した状態において、外側面片25はフランジ部8の外フランジ片12の上方に対向されて同一平面をなす一方、内側面片26はフランジ部8の内フランジ片13の内側に対向される。
【0036】
図1及び
図3に示すように、側面部18の背面側の長辺部に、蓋体3を容器本体2に回動自在に連結するためのヒンジ14の他方を構成する軸部19が設けられている。軸部19は、容器本体2のフランジ部8に設けた一対の軸受部15,15間に装着されるもので、その軸方向の両端には、それぞれ軸方向の外側に突出する枢軸19a,19aが設けられている。これら一対の枢軸19a,19aを一対の軸受部15,15の軸受穴に回動可能に嵌合させることによってヒンジ14が構成され、このヒンジ14を介して容器本体2と蓋体3とが回動自在に連結されている。
【0037】
また、
図1及び
図4〜
図8に示すように、容器本体2のフランジ部8の4箇所の角部には、上方に突出するガイド突起21がそれぞれ設けられている。ガイド突起21は、蓋体3の内側面片26をコ字状片11b側にガイドすると共に、内側面片26の下部を環状突起9に接触又は圧接させるこものである。これにより、収納容器1の収納凹部4内部の気密性を高めて収納された清掃シートやウエットティッシュ等の収納物品に含まれている洗浄剤等の乾燥を防止し又は抑制することができる。このガイド突起21は、容器本体2の4箇所の角部において、その曲率半径に対応した大きさを有する円の略1/4の長さを有する円弧状の凸部として形成されている。
【0038】
このガイド突起21の機能を確保するため、
図7A,
図7Bに示すように、ガイド突起21の縦方向の断面形状を略三角形に形成しており、そのガイド突起21の内側面片26と対向する傾斜面にガイド面21aが設定されている。このガイド面21aの傾斜角度(収納容器1の載置面と垂直をなす垂直線とのなす角度)θは20度に設定されている。この傾斜角度θは、この実施例に限定されるものではなく、3度から45度の範囲内で設定できるが、好ましい範囲は10度から30度の範囲である。傾斜角度θが3度から45度の範囲内であれば、内側面片26をスムースに移動させることができ、更に、10度から30度の範囲内に設定することにより、内側面片26をより一層スムースに移動させることができる。これにより、内側面片26を環状突起9に確実に接触又は当接させて高い気密性を確保できると共に、容器本体2からの蓋体3の開放操作をスムースに行うことができる、という利点がある。
【0039】
図7Bに示すように、フランジ部8の内フランジ片13の表面から収納凹部4側へ突出する環状突起9の突出量Hは、この実施例では0.25mmに設定している。この環状突起9の突出量Hは、この実施例に限定されるものではなく、0.05mmから2.0mmの範囲内の寸法に設定することが好ましい。突出量Hが0.05mmから2.0mmの範囲内であれば、内側面片26が接触又は当接することにより環状突起9との間の気密性を確保するという機能を達成しつつ、射出成形による製造時において金型からの離型を確実に行うことができる、という利点がある。
【0040】
また、
図7Bに示すように、容器本体2に蓋体3を嵌合させる前の状態における容器本体2の環状突起9と蓋体3の内側面片26との間の隙間Kは、この実施例では0.2mmに設定している。この隙間Kは、この実施例に限定されるものではなく、0.1mmから0.5mmの範囲内の寸法に設定することが好ましい。隙間Kが0.1mmから0.5mmの範囲内であれば、容器本体2の収納凹部4に対する蓋体3の開閉操作をスムース且つ確実に行うことができる、という利点がある。
【0041】
更に、
図8に示すように、蓋体3で容器本体2の開口部を閉じたときに、ガイド突起21で内側面片26を案内(ガイド)して環状突起9に内側面片26を接触又は圧接させるために内側面片26を弾性変形させる変形量Mは、この実施例では0.05mmに設定している。この変形量Mは、この実施例に限定されるものではなく、0.01mmから0.3mmの範囲内の寸法に設定することが好ましい。内側面片26の変形量Mが0.01mmから0.3mmの範囲内であれば、収納容器1の気密性を確保しつつ、容器本体2の収納凹部4に対する蓋体3の開閉操作をスムース且つ確実に行うことができる、という利点がある。
【0042】
このような構成を有する容器本体2及び蓋体3の材質としては、例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等の熱可塑性樹脂が好適である。しかしながら、容器本体2及び蓋体3の材質は、これらPP,PEに限定されるものではなく、これら容器本体2及び蓋体3を射出成形によって製作可能な各種の熱可塑性樹脂を用いて形成することができる。
【0043】
前述したような構成を有する容器本体2と蓋体3とからなる収納容器1は、例えば、洗浄剤を含浸した清掃シートが収納凹部4に収納される気密性の高い収納容器1として、次のようにして使用することができる。
【0044】
容器本体2の収納凹部4に所定形状の図示しない清掃シートを収納した後、その収納凹部4の上方に対向した蓋体3を、ヒンジ14を回動中心として容器本体2側に回動し、蓋体3に設けた内側面片26を容器本体2のフランジ部8に嵌め合わせる。
図6Aは、内側面片26をフランジ部8の内フランジ片13に近づけ、その内側面片26がガイド突起21に接触する直前の状態を示すもので、このときの内側面片26と内フランジ片13の内面に設けた環状突起9との間の隙間Kは0.25mm程度である。
【0045】
この状態から、蓋体3を容器本体2側に近づけると、フランジ部8の水平片11aに設けたガイド突起21のガイド面21aに内側面片26の先端が当接する。更に、蓋体3を容器本体2側に押し付けると、
図7A及び
図7Bに示すように、ガイド突起21の抵抗によりガイド面21aにガイドされて弾性を有する内側面片26が内フランジ片13側に弾性変形される。このとき、ガイド突起21のガイド面21aの傾斜角度θは、容器本体2の載置面から垂直に立てた垂直線と20度をなす角度に設定されているため、ガイド突起21のガイド面21aによって内側面片26を容易に弾性変形させつつ移動させることができる。
【0046】
更に、蓋体3を所定位置まで押し込むと、内側面片26の外面が環状突起9に圧接され、これにより、容器本体2と蓋体3との間の気密性を確保することが可能となる。即ち、容器本体2に設けたガイド突起21は、収納凹部4の開口部を囲う4箇所の角部のみであるが、その4箇所の環状突起21が、
図9に示すように、内側面片26を押圧してその4箇所の曲面部26cを内フランジ片13の4箇所の曲面部13cに押し付ける。その結果、内側面片26が有する塑性力により、内側面片26の長辺部26aが内フランジ部13の長辺部13aに圧接され、内側面片26の短辺部26bが内フランジ部13の短辺部13bに圧接される。これにより、環状突起21の全体に内側面片26を圧接又は接触させることができ、収納凹部4内の気密性を高めて高度な気密状態を確保することができる。
【0047】
ここで、
図9において、符号12aは、外フランジ片12の長辺部であり、この長辺部12aの曲率半径はRBである。符号12bは、外フランジ片12の短辺部であり、この短辺部12bの曲率半径はRCである。符号12cは、外フランジ片12の4箇所の角部に設けた曲面部であり、この曲面部12cの曲率半径はRAである。また、符号13aは、内フランジ片13の長辺部であり、この長辺部13aの曲率半径はREである。符号13bは、内フランジ片13の短辺部であり、この短辺部13bの曲率半径はRFである。更に、符号13cは、内フランジ片13の4箇所の角部に設けた曲面部であり、この曲面部13cの曲率半径はRDである。
【0048】
なお、符号RGは、環状突起21の外周面の曲率半径である。また、符号STは、曲面部12c,13cの曲率半径RA,RDと長辺部12a,13aの曲率半径RB,RE及び短辺部12b,13bの曲率半径RC,RFとが大きく異なるために、それらが連続する部分に形成された変局点を示す。
【0049】
この実施例に係る収納容器1と先行技術に係る収納容器(非公知)100の気密性を試験したことについて、
図12A,
図12Bを参照して説明する。
(1)試験の目的は、容器本体の4箇所の角部(コーナー)に設けたガイド突起21が、本願発明の収納容器1及び先行技術に係る収納容器100の気密性の向上に繋がっているか否かを検証する。
(2)測定方法は、各収納容器に、その収納容量(ml)の1/10に相当する量(ml)のエタノールを入れて容器全体の重量(g)を測定し、時間の経過によるエタノールの減少量を重量で測定する。測定回数は、充填後24時間経過後と、48時間経過後と、72時間経過後の3回行った。
【0050】
図12Aは、本願発明に係る収納容器1と先行技術に係る収納容器(非公知)100の気密性を試験した結果を棒グラフで表したものであり、
図12Bはその結果を数値で表したものである。
【0051】
容器本体の4箇所の角部にガイド突起21を設けていない
図10に示す先行技術に係る収納容器100においては、24時間後のエタノール減少量Q
24(%)は0.99%、48時間後のエタノール減少量Q
48(%)は1.70%、そして、72時間後のエタノール減少量Q
72(%)は2.29%であった。これに対して、4箇所の角部にガイド突起21を設けた
図5等に示す本願発明に係る収納容器1においては、24時間後のエタノール減少量P
24(%)は0.67%、48時間後のエタノール減少量P
48(%)は1.07%、そして、72時間後のエタノール減少量P
72(%)は1.36%であった。
【0052】
先行技術に係る収納容器100の気密性が本願発明の収納容器1の気密性よりも劣る結果となった理由は、収納容器100の4箇所にガイド突起が無いため、
図11に示したような隙間117,118,119からエタノールが漏れ出してしまうことが原因であると考えられる。これに対して、本願発明に係る収納容器1によれば、容器本体2に設けた4箇所の角部にガイド突起21をそれぞれ設ける構造としたため環状突起9の略全周に亘って内側面片26を環状突起9に圧接又は接触させることが可能となった。
【0053】
即ち、ガイド突起21が内側面片26の曲面部26cを内フランジ片13の曲面部13cに押し付けるため、
図11に示したような三日月形の隙間117を解消することができ、その隙間117からの気体漏れを確実に防ぐことができる。また、曲面部26cの両側がガイド突起21で押圧されることは無いが、内側面片26が有する塑性力に基づいて、曲面部26cを押圧するガイド突起21の押圧力により、内側面片26の長辺部26aが内フランジ部13の長辺部13aに押し付けられ、内側面片26の短辺部26bが内フランジ部13の短辺部13bに押し付けられる。これにより、
図11に示した隙間118及び隙間119も解消され、これらの隙間118、隙間119からの気体漏れを防ぐことが可能となった。その結果、
図12A,12Bに示したように、時間の経過に対するエタノールの減少量を少なくし、長時間に亘って高い気密性を保持できることが確認された。
【0054】
一方、蓋体3を開放する場合、容器本体2と蓋体3とが接触する部分は、環状突起9とその環状突起9の略全周に亘って接触する内側面片26の線状をなす接触部分のみであるため、これらによる摩擦抵抗はあまり大きなものではない。そのため、環状突起9とガイド突起21とで挟まれている内側面片26を、それらの摩擦抵抗に抗して比較的小さな力でスムースに引き抜くことができる。即ち、本願発明に係る収納容器1によれば、比較的小さな力でスムースに蓋体の開閉操作を行うことができると共に、蓋体3を閉じた状態において収納容器1の高度な気密性を確保できることが可能となった。
【0055】
なお、ガイド突起21は、容器本体2の角部とは別に、水平部11aの長辺部及び/又は短辺部の中間部に1又は2のガイド突起を併用して設ける構造としてもよい。かかる場合には、長辺部及び/又は短辺部の中間部で内側面片26を環状突起9に接触又は圧接させることができるため、前記気密性を更に高めることが可能となる。一方、ガイド突起21を容器本体の全周に亘って連続させて設ける構造とすることもできるが、これはあまり好ましいものではない。その理由は、容器本体の全周に亘って連続するガイド突起を設けると、そのガイド突起によって樋状の溝が形成されることになり、その溝にホコリが溜ると、そのホコリを取り除くことが難しくなるという弊害が生ずるためである。これに対して、4箇所の角部に環状突起を設けた場合には、周方向に連続する環状溝が形成されることがないため、ホコリが貯まることが無く、水平部11aのホコリ等を容易に清掃することができ、衛生的であるという利点がある。
【0056】
図13及び
図14は、本願発明の第2の実施例を示すものである。この実施例で示す収納容器は、容器本体32と蓋体33とによって構成されており、容器本体32と蓋体33は、図示しないヒンジによって回動自在に連結されている。これらの容器本体32及び蓋体33が第1の実施例に係る容器本体2及び蓋体3と異なる点は、容器本体32の底面部36及び蓋体33の上面部47を、4箇所に角部を有する長方形とし、その長辺部及び短辺部を共に直線状に形成した点である。
【0057】
容器本体32は、4箇所の角部を有する平面形状が四角形をなす底面部36と、その底面部36の四辺に連続すると共に、その底面部36を囲うように形成され且つ4箇所の角部を有する側面部37と、その側面部37の上端に連続して形成され且つ4箇所の角部を有する環状をなすフランジ部38と、そのフランジ部38の内面に設けられ且つ4箇所の角部を有する周方向に連続する環状突起(図示しない)と、を有している。
【0058】
容器本体32の底面部36は長辺部36aと短辺部36bを有しており、これら長辺部36a及び短辺部36bはそれぞれ直線状に形成されている。そして、長辺部36aの端部と短辺部36bの端部とが交わる部分は適当な曲率半径を有する曲面部36cによって形成されている。この底面部36の周縁に、同じく4箇所に角部を有する側面部37が連続されて上方へ立ち上がるように形成されている。そして、側面部37の上端部に、4箇所に角部を有するフランジ部38が形成されている。
【0059】
フランジ部38は、側面部37の上端に連続して水平方向外側に展開された水平片41aと、この水平片41aの外縁に連続して一体に設けられたコ字状片41bとによって形成されている。コ字状片41bは、図示しないが、開口側を下方に向けた状態とされており、水平方向の外側に配置された外フランジ片と、この外フランジ片と同心状に配置された内フランジ片とを有している。そして、内フランジ片の内面に環状突起が一体に設けられている。
【0060】
このフランジ部38の水平片41aの4箇所の角部の上面に、上方に突出したガイド突起61が設けられている。ガイド突起61は、平面形状が1/4の円弧形状に形成されており、その断面形状及びガイド面等の形状及び構造は、前述した第1実施例のガイド突起21と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0061】
蓋体33は、容器本体32の収納凹部34の上面を覆うことができる4箇所の角部を有する上面部47と、その上面部47の周囲に連続すると共に下方に突出してフランジ部38に対向されると共に4箇所の角部を有する側面部48と、を有している。蓋体33の上面部47は、容器本体32の底面部36と同様の形状を有しており、この実施例では、底面部36と同様の四角形として形成されている。
【0062】
蓋体33の上面部47の長辺部及び短辺部はそれぞれ直線状に形成されている。そして、長辺部の端部と短辺部の端部とが交わる部分は適当な曲率半径を有する曲線部によって形成されている。更に、蓋体33の上面部47は、容器本体32の底面部36と同様に、4箇所の角部が直角をなす矩形の四角形とされており、その長辺部と短辺部とが交わる4箇所の角部には適当な曲率半径を有する円弧状に形成された曲線部が設けられている。
【0063】
上面部47の形状は、必然的に底面部36の形状に対応した形状に形成されており、底面部36が三角形の場合には上面部47の形状も三角形とされ、底面部36が十八角形の場合には上面部47の形状も十八角形とされる。このように、蓋体33の上面部47の形状についても、この実施例で示す四角形に限定されるものではなく、3箇所以上18箇所以下の角部を有する多角形、即ち、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形、十一角形、十二角形、十三角形、十四角形、十五角形、十六角形、十七角形及び十八角形の多角形を適用することができる。
【0064】
蓋体33の側面部48は、上面部47の周縁に連続すると共に、同じく4箇所に角部を有し且つ下方へ立ち下がるように形成されている。この側面部48は、水平方向の外側に配置された外側面片51と、この外側面片51の内側に所定の間隔をあけて同心状に配置された内側面片52とからなっている。内側面片52は、外側面片51の略2倍の長さに設定されており、容器本体32に蓋体33を装着した状態において、外側面片51はフランジ部38の外フランジ片の上方に対向されて同一平面をなす一方、内側面片52はフランジ部38の内フランジ片の内側に対向されるようになっている。
【0065】
容器本体32及び蓋体33のその他の構成、作用及び効果は、前記第1の実施例と同様であるため、それらの記載は省略する。このような構成を有する収納容器によっても前記実施例と同様に、容器本体32に対する蓋体33の開閉操作を比較的小さな力でスムースに行うことができると共に、蓋体33を閉じた状態において収納容器の高度な気密性を確保することが可能になった。
【0066】
以上説明したが、本発明は上記2つの実施例に限定されるものではなく、均等の範囲内で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された発明の範囲において様々な変更が可能であることは、当業者によって容易に理解されよう。