(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。まず、
図1に示す試験体1〜7とその配合について説明する。なお、これらの試験体1〜7は、重量細骨材として銅スラグが混入されている点で共通している。
【0013】
試験体1〜3は本発明の実施例である。すなわち、試験体1は単位容積質量2.5t/m
3の実施例であり、試験体2は単位容積質量2.7t/m
3の実施例であり、試験体3は単位容積質量2.9t/m
3の実施例である。一方、試験体4〜7は比較例である。すなわち、試験体4,5は単位容積質量2.5t/m
3の比較例であり、試験体6,7は単位容積質量2.9t/m
3の比較例である。
【0014】
これらの試験体1〜7は、記号Cで示すセメント、記号S1で示す重量細骨材、記号S2で示す細骨材、記号Gで示す粗骨材を、混和剤とともに後述する割合で混合し、記号Wで示す水で練り混ぜることで作製される。
【0015】
ここで、
図2を参照して使用材料について説明する。セメントCは、記号OPCで示す普通ポルトランドセメントと、記号BBで示す高炉セメントB種の二種類を用いた。普通ポルトランドセメントの密度は3.16g/cm
3であり、高炉セメントB種の密度は3.04g/cm
3である。
【0016】
重量細骨材S1は銅スラグ細骨材を用いた。銅スラグ細骨材は、製造時に微粒分が取り除かれるため粗粒であり、表面が平滑なガラス質の粒子である。本実施形態では、小名浜精錬株式会社の小名浜精錬所で産出された銅スラグ細骨材を用いた。この銅スラグ細骨材はJIS適合品であり、その密度は3.52g/cm
3、粗粒率は3.30である。
【0017】
細骨材S2は山砂と砕砂を用いた。山砂は千葉県富津市産のものであり、密度が2.60g/cm
3、粗粒率が2.10である。砕砂は福島県白河産のものであり、密度が2.64g/cm
3、粗粒率が2.75である。
【0018】
粗骨材Gは砕石や電気炉酸化スラグ粗骨材を用いた。混和剤は、減水剤と消泡材を用いた。減水剤に関し、記号WRで示すAE減水剤(高機能タイプAE減水剤)と記号SPで示す高性能AE減水剤とを用いた。
【0019】
試験体1では、細骨材に関し、重量細骨材S1と細骨材S2の細骨材混合率が体積比で50対50となるように細骨材S1,S2の単位量を定めた。そして、細骨材S2として山砂を用い、細骨材の合成粗粒率を2.70とした。また、セメントCとしては普通ポルトランドセメントOPCを用い、混和剤として消泡材とAE減水剤WRとを添加した。
【0020】
具体的には、試験体1は、単位量158kg/cm
3の水Wと、単位量395kg/cm
3の普通ポルトランドセメントOPCと、単位量561kg/cm
3の重量細骨材S1と、単位量413kg/cm
3の細骨材(山砂)S2と、単位量1020kg/cm
3の粗骨材Gと、混和剤とを練り混ぜることでフレッシュコンクリートを得た。このフレッシュコンクリートの水セメント比W/Cは40%であった。
【0021】
試験体2では、細骨材に関し、重量細骨材S1と細骨材S2の細骨材混合率が体積比で56対44となるように細骨材S1,S2の単位量を定めた。そして、細骨材S2として山砂を用い、細骨材の合成粗粒率を2.77とした。セメントCとしては高炉セメントB種BBを用い、混和剤として消泡材とAE減水剤WRとを添加した。
【0022】
具体的には、試験体2は、単位量179kg/cm
3の水Wと、単位量377kg/cm
3の高炉セメントB種BBと、単位量595kg/cm
3の重量細骨材S1と、単位量361kg/cm
3の細骨材(山砂)S2と、単位量1191kg/cm
3の粗骨材Gと、混和剤とを練り混ぜることでフレッシュコンクリートを得た。このフレッシュコンクリートの水セメント比W/Cは47.5%であった。
【0023】
試験体3では、細骨材に関し、重量細骨材S1と細骨材S2の細骨材混合率が体積比で57対43となるように細骨材S1,S2の単位量を定めた。そして、細骨材S2として山砂を用い、細骨材の合成粗粒率を2.78とした。セメントCとしては高炉セメントB種BBを用い、混和剤として消泡材とAE減水剤WRとを添加した。
【0024】
具体的には、試験体3は、単位量178kg/cm
3の水Wと、単位量406kg/cm
3の高炉セメントB種BBと、単位量577kg/cm
3の重量細骨材S1と、単位量348kg/cm
3の細骨材(山砂)S2と、単位量1391kg/cm
3の粗骨材Gと、混和剤とを練り混ぜることでフレッシュコンクリートを得た。このフレッシュコンクリートの水セメント比W/Cは43.9%であった。
【0025】
試験体4は、試験体1に対応する比較例であり、細骨材として重量細骨材S1のみを使用した。このため、試験体4の合成粗粒率は、重量細骨材S1の粗粒率である3.30となる。セメントCとしては普通ポルトランドセメントOPCを用い、混和剤として消泡材とAE減水剤WRとを添加した。
【0026】
具体的には、試験体4は、単位量158kg/cm
3の水Wと、単位量288kg/cm
3の普通ポルトランドセメントOPCと、単位量1241kg/cm
3の重量細骨材S1と、単位量1020kg/cm
3の粗骨材Gと、混和剤とを練り混ぜることでフレッシュコンクリートを得た。このフレッシュコンクリートの水セメント比W/Cは54.9%であった。
【0027】
試験体5もまた、試験体1に対応する比較例であり、重量細骨材S1と細骨材S2の細骨材混合率が体積比で80対20となるように細骨材S1,S2の単位量を定めた。そして、細骨材S2として山砂を用い、細骨材の合成粗粒率を3.06とした。セメントCとしては普通ポルトランドセメントOPCを用い、混和剤として消泡材とAE減水剤WRとを添加した。
【0028】
具体的には、試験体5は、単位量158kg/cm
3の水Wと、単位量352kg/cm
3の普通ポルトランドセメントOPCと、単位量936kg/cm
3の重量細骨材S1と、単位量172kg/cm
3の細骨材(山砂)S2と、単位量1020kg/cm
3の粗骨材Gと、混和剤とを練り混ぜることでフレッシュコンクリートを得た。このフレッシュコンクリートの水セメント比W/Cは44.9%であった。
【0029】
試験体6は、試験体3に対応する比較例であり、細骨材S2として砕砂を使用し、重量細骨材S1と細骨材S2の細骨材混合率が体積比で50対50となるように細骨材S1,S2の単位量を定めた。これにより、試験体6の合成粗粒率は3.03となった。また、セメントCとしては普通ポルトランドセメントOPCを用い、混和剤として消泡材と高性能AE減水剤SPとを添加した。
【0030】
具体的には、試験体6は、単位量157kg/cm
3の水Wと、単位量400kg/cm
3の普通ポルトランドセメントOPCと、単位量561kg/cm
3の重量細骨材S1と、単位量438kg/cm
3の細骨材(砕砂)S2と、単位量1421kg/cm
3の粗骨材Gと、混和剤とを練り混ぜることでフレッシュコンクリートを得た。このフレッシュコンクリートの水セメント比W/Cは39.3%であった。
【0031】
試験体7もまた、試験体3に対応する比較例であり、細骨材S2として砕砂を使用し、重量細骨材S1と細骨材S2の細骨材混合率が体積比で30対70となるように細骨材S1,S2の単位量を定めた。これにより、試験体7の合成粗粒率は2.92となった。また、セメントCとしては普通ポルトランドセメントOPCを用い、混和剤として消泡材と高性能AE減水剤SPとを添加した。
【0032】
具体的には、試験体7は、単位量162kg/cm
3の水Wと、単位量400kg/cm
3の普通ポルトランドセメントOPCと、単位量331kg/cm
3の重量細骨材S1と、単位量578kg/cm
3の細骨材(砕砂)S2と、単位量1421kg/cm
3の粗骨材Gと、混和剤とを練り混ぜることでフレッシュコンクリートを得た。このフレッシュコンクリートの水セメント比W/Cは40.5%であった。
【0033】
各試験体1〜7のフレッシュコンクリートを作製した後、それぞれの試験体についてスランプ、空気量、単位容積質量、圧縮強度の測定を行った。ここで、スランプの測定はJIS A 1110、空気量の測定はJIS A 1128、単位容積質量の測定はJIS A 1116、圧縮強度の測定はJIS A 1108に即して行った。試験結果を
図3〜
図10に示す。
【0034】
まず、単位容積質量の試験結果について検討する。
図3に示すように、単位容積質量に関し、試験体1は2546kg/m
3、試験体2は2790kg/m
3、試験体3は2990kg/m
3であった。また、試験体4は2595kg/m
3、試験体5は2624kg/m
3であり、試験体6は2943kg/m
3、試験体7は2909kg/m
3であった。試験体1,4,5に関し、何れも単位容積質量2.5t/m
3の要求を満たすことが確認された。同様に、試験体2に関して単位容積質量2.7t/m
3の要求を満たすこと、及び、試験体3,6,7に関して何れも単位容積質量2.9t/m
3の要求を満たすことが確認された。
【0035】
次に、空気量の試験結果について検討する。
図3に示すように、空気量に関し、試験体1は2.6%、試験体2は0.8%、試験体3は1.0%であった。また、試験体4は5.2%、試験体5は2.8%、試験体6は2.7%、試験体7は2.1%であった。試験体4に関して5.2%と高い数値であったが、他の試験体は0.8〜2.8%と3.0%よりも少ない空気量であった。特に、試験体2,3については1.0%以下と極めて少ない空気量であった。
【0036】
次に、スランプの試験結果について検討する。まず、試験体1,4,5(単位容積質量2.5t/m
3の銅スラグ入りコンクリート)について検討する。
図3に示すように、試験体1のスランプは7.0cmであった。これに対し、試験体4のスランプは0.0cm、試験体4のスランプは2.0cmであった。
図4に示すように、試験体1では、プラスティシティー(一体に変形できる性能)を保ったまま沈んでいることが確認された。これに対し、
図7,8に示すように、試験体4,5では、スランプコーンを取り去ったあとも、ほぼスランプコーンの形状のままであることが確認された。加えて、
図8に示すように、試験体5では上端部に多少の崩れが生じていることも確認された。
【0037】
これらの結果から、試験体1は流動性及びプラスティシティーが良好であるといえる。これに対し、試験体4は流動性がなく、試験体5は流動性が不足していることが理解できる。特に試験体4は、空気量が5.2%であり、他の試験体よりも多くの空気を含んでいるにもかかわらず、流動性が得られなかった。これは、空気量測定用の容器内にコンクリートを充てんする際に、コンクリートの流動性がないため未充てんの空隙部分が残ったためと考えられる。また、試験体5については、流動性の不足に加えて、プラスティシティーが損なわれていることも理解できる。
【0038】
試験体1,4,5のスランプ試験から、山砂(細骨材S2)を、体積比で銅スラグ(重量細骨材S1)の50%混合し、普通ポルトランドセメントOPCの単位セメント量を395kg/m
3まで高めることにより、良好なワーカビリティーが得られることが確認できた。
【0039】
次に、試験体3,6,7(単位容積質量2.9t/m
3の銅スラグ入りコンクリート)について検討する。
図3に示すように、試験体3のスランプは17.5cmであった。これに対し、試験体6のスランプは17.0cm、試験体7のスランプは14.0cmであった。各試験体3,6,7のスランプ値には大きな違いはみられなかったが、プラスティシティーが大きく異なっていた。
【0040】
すなわち、
図6に示すように、試験体3ではプラスティシティーを保ったまま、ほぼ半分程度の高さになるまで沈んでいることが確認された。また半径方向において、ほぼ均等(平面視でほぼ円形)に拡がっていることも確認された。これに対し、
図9,10に示すように、試験体6,7では、小さな塊に分かれた状態で崩れてしまい、プラスティシティーが損なわれていることが確認された。
【0041】
これらの結果から、試験体3は流動性及びプラスティシティーが良好であるといえる。これに対し、試験体6,7はプラスティシティーに難があり、材料分離を生じてしまうことが理解できる。そして、試験体3,6,7のスランプ試験から、山砂(細骨材S2)を、体積比で銅スラグ(重量細骨材S1)の43%混合し、高炉セメントBBの単位セメント量を406kg/m
3まで高めることにより、良好なワーカビリティーが得られることが確認できた。
【0042】
次に、試験体2(単位容積質量2.7t/m
3の銅スラグ入りコンクリート)について検討する。
図3に示すように、試験体1のスランプは20.0cmであった。そして、
図5に示すように、試験体2ではプラスティシティーを保ったまま、ほぼ1/3程度の高さになるまで沈んでいることが確認された。そして、試験体3と同様に、半径方向において、ほぼ均等に拡がっていることが確認された。これらのことから、試験体2は、良好なワーカビリティーが得られることが確認できた。
【0043】
次に、圧縮強度の試験結果について検討する。普通ポルトランドセメントOPCを用いた試験体1では材令28日の圧縮強度で60N/mm
2以上の値を示した。また、高炉セメントBBを用いた試験体2,3では材令28日の圧縮強度で40N/mm
2以上の値を示した。何れの試験体1〜3も十分な強度が得られていることが確認された。
【0044】
以上の試験結果を総括すると、次のことがいえる。
【0045】
細骨材を重量細骨材S1と細骨材S2から構成し、重量細骨材S1として銅スラグを、細骨材S2として粗粒率2.75未満の砂をそれぞれ用い、細骨材全体に対する砂の比率を体積比で43%以上に定めることで、銅スラグを用いても材料分離が生じず、良好なワーカビリティーのコンクリートを実現でき、コンクリート構造物を構築できる。
【0046】
土木学会の無筋コンクリート標準示方書では、細骨材の粗粒率が、コンクリートの配合を定める時に仮定した細骨材の粗粒率にくらべて、0.20以上の変化を示したときは、配合を変えなければその細骨材を用いてはならないとされている。この基準に照らせば、細骨材S2に関し、粗粒率2.10±0.20を超えなければ等価といえる。すなわち、砂の粗粒率については、1.90〜2.30の範囲が好ましいといえる。同様に、重量細骨材S1に関しても、粗粒率3.30±0.20を超えなければ等価といえる。すなわち、銅スラグの粗粒率については、3.10〜3.50の範囲が好ましいといえる。
【0047】
また、重量細骨材S1と細骨材S2の合成粗粒率は2.78以下、詳しくは2.78から2.70の範囲内であることが好ましいといえる。さらに、細骨材全体における細骨材S2の容積比率は43%以上、詳しくは43%から50%の範囲内であることが好ましいといえる。
【0048】
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。
【0049】
セメントCに関し、試験体1では普通ポルトランドセメントOPCを用い、試験体2,3では高炉セメントBBを用いたが、何れの種類のセメントを用いてもよい。例えば、試験体1に高炉セメントBBを用いてもよいし、試験体2,3に普通ポルトランドセメントOPCを用いてもよい。
【0050】
細骨材S2に関し、試験体1〜3では山砂を用いたが、これに限定されない。すなわち、山砂と同様に角の少ない天然砂であれば、山砂に代えて用いることができる。例えば、海砂、川砂、陸砂を用いることができる。