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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6259581
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】信号処理装置及び信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20171227BHJP
   B60G 17/0185 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   G01D5/244 F
   B60G17/0185
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-73643(P2013-73643)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-199181(P2014-199181A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】原 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】永井 勇冴
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−69035(JP,A)
【文献】 特開2010−197373(JP,A)
【文献】 特開2002−228488(JP,A)
【文献】 特開2005−49097(JP,A)
【文献】 特開平6−152950(JP,A)
【文献】 特開2006−145528(JP,A)
【文献】 特開2010−151771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/38
G01B 7/00−7/34
B60G 17/0185
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定部位の状態を検出するセンサから出力されるアナログ信号である調整前信号を調整値に基づき調整して調整後信号を出力する信号調整部と、
前記信号調整部から出力される前記調整後信号に基づいて前記調整値を設定すると共に、前記調整後信号に基づいて前記測定部位の状態の検出結果を処理する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記調整後信号が設定された目標値となるように前記調整値を設定し、
前記調整値は、前記調整後信号に応じてそれぞれ設定されるオフセット調整値とゲイン調整値とを含み、
前記目標値は、前記調整後信号の中央値の目標値である中央値目標値と、前記調整後信号の振幅値の目標値である振幅値目標値とを含み、
前記制御部は、前記中央値目標値と前記調整後信号の中央値とに基づいて前記オフセット調整値を設定すると共に、前記振幅値目標値と前記調整後信号の振幅値とに基づいて前記ゲイン調整値を設定し、
前記信号調整部は、
基準電圧信号と前記基準電圧信号とは極性が異なる前記オフセット調整値とを加算することで、前記調整前信号を正方向及び負方向にオフセット可能に構成され、
前記調整前信号と前記オフセット調整値と前記基準電圧信号とを加算することにより前記調整前信号の中央値を調整すると共に、前記ゲイン調整値に基づき前記調整前信号の振幅値を調整する
ことを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記調整値は、前記調整後信号に応じて設定されるオフセット調整値を含み、
前記制御部は、前記調整後信号の中央値を、前記調整後信号の最大値と最小値との和を二分することにより算出すると共に、算出した中央値が前記調整後信号の中央値目標値となるように、前記オフセット調整値を設定することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記調整値は、前記調整後信号に応じて設定されるゲイン調整値を含み、
前記制御部は、前記調整後信号の振幅値を前記調整後信号の最大値と最小値との差から算出すると共に、算出した振幅値が前記調整後信号の振幅値の目標値となるように、前記ゲイン調整値を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記信号調整部は、オフセット調整器とゲイン調整器とを有し、
前記オフセット調整器は、前記調整前信号と前記オフセット調整値とを加算し、
前記ゲイン調整器は、前記オフセット調整器から出力される信号と前記ゲイン調整値とを乗算することにより前記調整後信号を生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記センサは、二つの部位の相対的な動作を検出するストロークセンサであり、
前記アナログ信号は、所定の周期で振動する信号であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の信号処理装置。
【請求項6】
測定部位の状態を検出して調整前信号であるアナログ信号を取得し、
調整値に基づいて前記アナログ信号を調整後信号へと調整し、
調整された前記アナログ信号が目標値となるように前記調整値を設定し、
調整された前記アナログ信号に基づいて前記測定部位の状態の検出結果を処理する
ことを特徴とする信号処理方法であって、
前記調整値は、前記調整後信号に応じてそれぞれ設定されるオフセット調整値とゲイン調整値とを含み、
前記目標値は、前記調整後信号の中央値の目標値である中央値目標値と、前記調整後信号の振幅値の目標値である振幅値目標値とを含み、
前記中央値目標値と前記調整後信号の中央値とに基づいて前記オフセット調整値を設定すると共に、前記振幅値目標値と前記調整後信号の振幅値とに基づいて前記ゲイン調整値を設定し、
基準電圧信号と前記基準電圧信号とは極性が異なる前記オフセット調整値とを加算することで、前記調整前信号を正方向及び負方向にオフセット可能に構成され、
前記調整前信号と前記オフセット調整値と前記基準電圧信号とを加算することにより前記調整前信号の中央値を調整すると共に、前記ゲイン調整値に基づき前記調整前信号の振幅値を調整する
ことを特徴とする信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ等からの信号を取得して、取得した信号を調整する信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ばね上部材とばね下部材との間に介装される緩衝器が発生する減衰力を制御することができる制御装置が知られている。このような制御装置として、ばね上部材とばね下部材との相対変位を検出するストロークセンサの検出結果から得られるストローク信号(アナログ信号)に基づいて、緩衝器が発生する減衰力を制御する減衰器の制御装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−192805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のように、アナログ信号を出力するセンサからの信号に基づいた処理を行う制御装置では、アナログ信号の調整を行う必要がある。従来、アナログ信号の調整は、センサから出力されるアナログ信号の電圧値をモニタしながら、トリマ調整等を手動で行っていた。
【0005】
このような調整法は人手で行う必要があるため、工数が増加する。特に、センサの出力値毎のばらつきが大きい場合には個別に調整が必要となり、更に工数が増加する。また、センサの出力値に経時変化が発生する場合は、これを調整するために更に人手を要していた。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、センサ等のアナログ信号を取得して出力する信号処理装置において、アナログ信号のばらつきや経時変化に対して、調整を自動で行うことができる信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の信号処理装置は、測定部位の状態を検出するセンサから出力されるアナログ信号である調整前信号を調整値に基づき調整して調整後信号を出力する信号調整部と、信号調整部から出力される調整後信号に基づいて前記調整値を設定すると共に、調整後信号に基づいて測定部位の状態の検出結果を処理する制御部と、を備え、制御部は、調整後信号が設定された目標値となるように調整値を設定し、調整値は、調整後信号に応じてそれぞれ設定されるオフセット調整値とゲイン調整値とを含み、目標値は、調整後信号の中央値の目標値である中央値目標値と、調整後信号の振幅値の目標値である振幅値目標値とを含み、制御部は、中央値目標値と調整後信号の中央値とに基づいてオフセット調整値を設定すると共に、振幅値目標値と調整後信号の振幅値とに基づいてゲイン調整値を設定し、信号調整部は、基準電圧信号と基準電圧信号とは極性が異なるオフセット調整値とを加算することで、調整前信号を正方向及び負方向にオフセット可能に構成され、調整前信号とオフセット調整値と基準電圧信号とを加算することにより調整前信号の中央値を調整すると共に、ゲイン調整値に基づき調整前信号の振幅値を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、センサの出力にばらつきがある場合でも、信号調整部によって、取得したアナログ信号を自動的に調整することができる。これにより、従来、人手で行う必要があったアナログ信号の調整を、自動的に行うことができて、人手による作業を低減して、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の信号処理装置の説明図である。
図2】本発明の実施形態のコントローラの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態の信号調整部の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態の信号調整部を、制御を主体として示す説明図である。
図5】本発明の実施形態の信号調整部の動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態の信号処理装置によるアナログ信号の調整を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の信号処理装置を説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態の信号処理装置100の説明図である。
【0012】
信号処理装置100は、緩衝器1の状態を取得するストロークセンサ36と、ストロークセンサ36から取得した検出結果を処理し、緩衝器1の減衰力を制御するコントローラ40と、により構成される。
【0013】
緩衝器1は、車両におけるばね上部材31とばね下部材32との間に懸架ばね33と並列に介装される。緩衝器1が発生する減衰力は、コントローラ40によって制御される。具体的には、ばね上部材31は車体であり、ばね下部材32は車輪であり、緩衝器1は車輪毎に設けられる。図1では、1つの車輪に設けられた信号処理装置100を示す。
【0014】
コントローラ40は、緩衝器1が発生する減衰力を制御する。コントローラ40には、ばね上部材31とばね下部材32との相対変位を検出するストロークセンサ36が検出したセンサ信号が入力される。コントローラ40は、この相対変位に基づいて、緩衝器1が発生する減衰力を制御する。
【0015】
ストロークセンサ36は、ばね上部材31とばね下部材32との間に配置された車高センサであり、緩衝器1におけるシリンダ5に対するピストンロッド7の変位を検出し、この変位に応じたセンサ信号を出力する。
【0016】
緩衝器1には減衰弁2が備えられている。減衰弁2は、緩衝器1の内部の作動油の流通状態を変化させることにより緩衝器1の減衰力を変更する。減衰弁2にはソレノイドが備えられており、コントローラ40からの指令信号によってソレノイドを動作させることで作動油の流通状態を変化させて、緩衝器1の減衰力が制御される。なお、必要に応じて車両の車速や加速度等を取得してもよい。
【0017】
次に、コントローラ40の構成について説明する。
【0018】
図2は、本発明の実施形態のコントローラ40の構成を示すブロック図である。
【0019】
コントローラ40は、ストロークセンサ36からのセンサ信号を処理する信号調整部50、緩衝器1の減衰弁2への指令信号を出力する信号出力部62、及び、信号調整部50からの入力信号に基づいて指令信号を信号出力部から出力させるマイコン60から構成される。マイコン60は、信号調整部50におけるセンサ信号の調整値を制御する機能を有している。
【0020】
センサ信号を出力するストロークセンサ36は、ばね上部材31及びばね下部材32(所定の部位)の間の変位に対応して軸方向に可動する可動軸を備える。この可動軸上に所定間隔で磁力を有する磁石等が配置されており、磁石の磁力をホールセンサにより検出し、所定の部位の状態の変化として、センサ信号を出力する。このセンサ信号は、アナログ信号であって、可動軸の移動に伴って最大値と最小値とが周期的に変化するサイン波に類似した波形となる。
【0021】
コントローラ40では、ストロークセンサ36から取得したセンサ信号が信号調整部50により調整されて、パルス信号としてマイコン60に入力される。マイコン60はこのパルス信号をカウントし、ばね上部材31とばね下部材32との間の変位(移動量及び移動速度)を検出する。マイコン60は検出した変位に基づいて、減衰弁2に出力する指令信号を決定し、信号出力部62を介して出力する。
【0022】
次に、センサ信号の調整方法について説明する。
【0023】
ストロークセンサ36から送られるセンサ信号はアナログ信号であるため、設置状況や環境等に応じて、出力されるセンサ信号にずれや誤差が生じる。このようなずれや誤差を補正し、センサ信号が目標値となるように、センサ信号のゲインやオフセットを調整する必要がある。従来、センサ信号の調整は、センサ信号の電圧値をモニタしながら、トリマ等により電圧値を調整するなどの人手による作業が主流であった。
【0024】
このような調整は人手で行う必要があるため、工数が増加する。特に、センサ毎のばらつきが大きい場合には個別に調整が必要となり、更に工数が増加する。また、センサの経時変化が発生する場合は、経時変化に応じて、都度これを調整するために、更に人手を要していた。
【0025】
これに対して本発明の実施形態では、次のように、センサ信号の調整を信号調整部50とマイコン60とにより自動的に行うことによって、人手による作業を低減して、コストを低減することができるよう構成した。
【0026】
図3は、本発明の実施形態の信号調整部50の構成を示すブロック図である。
【0027】
信号調整部50は、分圧器51、ローパスフィルタ(LPF)52、オフセット調整器53、ゲイン調整器54、コンパレータ55及びD/Aコンバータ56を備える。
【0028】
分圧器51は、ストロークセンサ36から出力されるセンサ信号を受けて、これを信号調整部50内で処理するために適した電圧に変換し、ローパスフィルタ52へ出力する。
【0029】
ローパスフィルタ52には、分圧器51の出力信号が供給される。ローパスフィルタ52は、入力されたセンサ信号の低周波域のみを通過させ、高周波域のノイズを取り除く。ローパスフィルタ52の出力を調整前信号V1とする。
【0030】
オフセット調整器53には、リファレンス電圧Vref、ローパスフィルタ52の出力信号及びセンサ信号の最大値と最小値との間の中央値を調整するためのオフセット調整値が供給される。なお、オフセット調整値は可変の電圧信号である。オフセット調整器53は、リファレンス電圧Vref及びオフセット調整値により、入力されたセンサ信号のオフセットを表すセンサ信号の最大値と最小値との間の中央値が所定の目標値となるように調整する。オフセット調整器53は、例えばオペアンプにより構成され、リファレンス電圧Vref、センサ信号及びオフセット調整値を加算することで、センサ信号の中央値が目標値となるように調整する。
【0031】
ゲイン調整器54には、オフセット調整器53の出力信号が供給される。ゲイン調整器54は、センサ信号の最大値と最小値との信号レベルの差が所定の範囲におさまるように調整するためのゲイン調整値により、センサ信号の最大値と最小値との差である振幅値が所定の目標値となるように調整する。ゲイン調整器54は、例えば乗算型D/Aコンバータにより構成され、マイコン60から出力されるデジタル指令値により、入力されるセンサ信号を逓倍して、センサ信号の最大値と最小値との差である振幅値が所定の目標値となるように調節する。また、ゲイン調整器54の出力信号は、マイコン60に供給される。ゲイン調整器54の出力信号を調整後信号V2とする。
【0032】
コンパレータ55には、ゲイン調整器54の出力信号が供給される。コンパレータ55は、マイコン60が供給するしきい値とオフセット及びゲインが調整されたセンサ信号とを比較して、しきい値を満たす信号のみをマイコン60へと出力する。コンパレータ55は、調整後信号V2とマイコン60から供給されるしきい値とを比較し、パルス信号を出力する。例えば、調整後信号V2がしきい値より大きい場合にはハイレベル、調整後信号がしきい値より小さい場合にはハローレベルとなるパルス信号を出力する。前述のように入力信号であるサイン波が所定の目標値とされた場合に、コンパレータ55によりパルス信号がマイコン60へと出力される。
【0033】
マイコン60は、このパルス信号に基づいて、ストロークセンサ36が検出した変位を取得する。マイコン60はストロークセンサ36が検出した変位等に基づいて、緩衝器1の減衰力を決定し、減衰弁2のソレノイドに供給する電圧を決定して、信号出力部62を介して減衰弁2に指令信号を出力する。
【0034】
D/Aコンバータ56は、マイコン60から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換する。本実施形態の信号調整部50では、オフセット調整値及びしきい値がマイコン60からデジタル信号として出力され、D/Aコンバータ56によりアナログ信号に変換されて、オフセット調整器53及びコンパレータ55に出力される。
【0035】
なお、図3において、信号調整部50は、例えば、センサ信号が0〜5Vの範囲で調整されるように構成される。より具体的には、オフセット調整部53では、リファレンス電圧Vrefとオフセット調整値に基づいて、センサ信号が0〜5Vとなるように制御される。オフセット調整値として正電圧が印加される場合は、リファレンス電圧Vrefを負電圧とする。これにより、センサ信号を正方向及び負方向にオフセットすることができ、D/Aコンバータ56として片電源出力のものを用いることができる。
【0036】
このようにオフセット調整値によりセンサ信号を調整することで、信号調整部50の全体の電源を+5Vのみの片電源として動作させることができる。これにより、両電源(+5V、−5V)として動作させるよりも信号調整部50の回路構成や採用部品を簡略化でき、コストを低減化することができる。なお、リファレンス電圧Vrefを用いずに、D/Aコンバータ56として正負の電圧出力が可能な両電源動作のものを用いてもよい。
【0037】
図4は、本発明の実施形態の信号調整部50を、制御を主体として示す説明図である。
【0038】
ストロークセンサ36から出力されるセンサ信号は、調整前信号V1としてマイコン60に入力される。マイコン60では、調整後信号V2に基づいて、オフセット調整値を算出する。算出されたオフセット調整値は、リファレンス電圧Vrefと共に、オフセット調整器53に入力される。オフセット調整器53では、センサ信号とリファレンス電圧Vrefとオフセット調整値とを加算することによりセンサ信号の最大値と最小値との間の中央値を調整する。このように、オフセット調整器53は、制御上は加算器151として振る舞う。
【0039】
また、マイコン60は、調整後信号V2に基づいて、ゲイン調整値を算出する。算出されたゲイン調整値はゲイン調整器54に入力される。ゲイン調整器54では、センサ信号に対してゲイン調整値を乗算することによりセンサ信号の最大値と最小値との差である振幅値を調整する。このように、ゲイン調整器54は、制御上は乗算器152として振る舞う。
【0040】
オフセット及びゲインが調整された調整後信号V2は、マイコン60に入力され、再びオフセット調整値及びゲイン調整値が算出される。調整前信号V1と調整後信号V2とは、マイコン60にてA/D変換され、それぞれ常時モニタされる。
【0041】
また、オフセット及びゲインが調整された調整後信号V2は、マイコン60が出力するしきい値と共に、コンパレータ55に入力され、しきい値を満たす信号のみがパルス信号としてマイコン60へと入力される。コンパレータ55に供給されるしきい値として、例えば調整後信号V2の中央値が設定される。これにより、ストロークセンサ36が検出した変位を正確に求めることができる。
【0042】
このような処理により、入力されたセンサ信号が所定の目標値となるように調整されて、パルス信号としてマイコン60へと入力される。
【0043】
図5は、本発明の実施形態のマイコン60が実行する信号調整の動作を示すフローチャートである。
【0044】
ステップS10では、マイコン60は、ゲイン調整値、オフセット調整値等の初期化を行う。例えば、オフセット調整値を初期値0に、ゲイン調整値を初期値1に設定する。
【0045】
次に、ステップS20では、マイコン60は、ストロークセンサ36からのセンサ信号である調整前信号V1と、オフセット及びゲインの調整を行った後の調整後信号V2とを取得する。
【0046】
次に、ステップS30では、マイコン60は、取得した調整前信号V1が異常値であるか否かを判定する。例えば、調整前信号V1が所定の期間を超えて全く変動しない、又は、予め設定した信号の限界値等を超えている等の場合は、ストロークセンサ36から出力されるセンサ信号に何らかの異常があると判定する。
【0047】
ステップS30において異常があると判定した場合は、ステップS40に移行して、マイコン60は、センサ異常処理を行う。例えば、操作者にアラームを報知したり、減衰弁2の制御を停止させる等のセンサ異常処理を実施する。
【0048】
ステップS30において異常がないと判定した場合は、ステップS50に移行して、マイコン60は、取得した信号の振幅値VPPを算出する。マイコン60は、調整後信号V2の最大値(V2max)と最小値(V2min)との差を算出し、算出した差を振幅値VPPとする。
【0049】
次に、ステップS60では、マイコン60は、算出した振幅値VPPが目標値となっているか否かを判定する。例えば、予め設定されている目標値と振幅値VPPとが数パーセント以内の差の範囲内にある場合には、目標の値となっていると判定し、ステップS80に移行する。目標値に対して振幅値VPPが小さい又は目標値に対して振幅値VPPが大きい場合は、ステップS70に移行する。
【0050】
ステップS70では、振幅値VPPが目標値に合致するように、マイコン60がゲイン調整値を設定する。目標値に対して振幅値VPPが小さい場合は、ゲイン調整値により振幅値VPPが増加するように、ゲイン調整値を大きくする。目標値に対して振幅値VPPが大きい場合は、ゲイン調整により振幅値VPPが減少するようにゲイン調整値を小さくする。このステップS70の処理の後、ステップS60に戻り、処理を繰り返す。
【0051】
ステップS80では,マイコン60は、取得した信号の中央値である振央VOFFを算出する。マイコン60は、調整後信号V2の最大値V2maxと最小値V2minとの和を二分して、これを振央VOFFとする。なお、振央VOFFは、調整後信号V2の最大値と最小値との間の値によって求めたが、調整後信号V2の平均値等により求めてもよい。
【0052】
次に、ステップS90に移行し、マイコン60は、算出した振央VOFFが、目標値となっているか否かを判定する。例えば、予め設定されている目標値と振央VOFFとが数パーセント以内の差の範囲内にある場合には、目標の値となっていると判定する。この場合は、ステップS20に戻り、新たにセンサからのアナログ信号を取得して、処理を繰り返す。
【0053】
目標値に対して振央VOFFが小さい、又は目標値に対して振央VOFFが大きい場合は、ステップS100に移行する。
【0054】
ステップS100では、振央VOFFが目標値に合致するように、マイコン60がオフセット調整値を設定する。目標値に対して振央VOFFが小さい場合は、オフセット調整値により振央VOFFが増加するように、オフセット調整値を設定する。目標値に対して振央VOFFが大きい場合は、オフセット調整値により振央VOFFが減少するようにオフセット調整値を設定する。このステップS100の処理の後、ステップS90に戻り、処理を繰り返す。
【0055】
マイコン60は、ゲイン調整値及びオフセット調整値を用いて、入力されたセンサ信号に対して処理を行うことによって、センサ信号が目標値となるように調整する。特に、センサ信号に対してオフセット調整値及びゲイン調整値の調整を繰り返し行うことにより、自動的に所定の目標値となるように調整することができる。
【0056】
なお、図5に示すフローチャートは、コントローラ60において常時実行してもよいが、所定のメンテナンス周期(数日、数ヶ月、数年)で実行してもよい。また、ステップS40において、センサ信号が経時変化した場合、すなわち、調整前信号V1が予め設定したしきい値を超えた場合に、以降の処理を実行して調整を行うように制御してもよい。
【0057】
図6は、本発明の実施形態の信号処理装置100によるアナログ信号の調整を示す説明図である。
【0058】
図6(A)は、調整前信号V1を示し、図6(B)は、調整後信号V2を示す。
【0059】
マイコン60において、ゲイン調整値及びオフセット調整値が初期値である場合は、調整前信号V1=調整後信号V2となる。すなわち、図6(A)のような信号を調整後信号V2とみなし、マイコン60は、前述の図5に示すフローチャートに従って、この信号の振幅値VPP及び振央VOFFを算出する。振幅値VPPはこの信号の最大値と最小値との差であり、振央VOFFはこの信号の最大値と最小値との和を二分した値である。この図6(A)に示す調整前信号V1は、振幅値VPP及び振央VOFFが、いずれも目標値に対して小さい場合の例を示す。そこで、これらが目標値となるように、ゲイン調整値及びオフセット調整値を設定して、振幅値VPP及び振央VOFFが目標値となるように調整する。
【0060】
図6(B)は、図6(A)に示す調整前信号V1に対して、ゲイン調整値とオフセット調整値とにより調整された後の調整後信号V2を示す。
【0061】
マイコン60は、図5に示すフローチャートに従って、図6(A)に示す調整前信号V1の振幅値VPPと振央VOFFとがそれぞれ目標値となるまで、ゲイン調整値及びオフセット調整値による調整を繰り返して、調整前信号V2を生成する。
【0062】
図6(B)を参照すると、調整後信号V2の振幅値VPPは、設定されたゲイン調整値によって調整前信号V1と比較して大きくなるように調整されている。これにより、調整後信号V2の信号の最大値と最小値との信号レベルの差が拡大され、目標値となった。また、調整後信号V2の振央VOFFは、設定されたオフセット調整値によって調整前信号V1と比較して大きくなるように調整されている。これにより、調整後信号の振央VOFFの電圧レベルが増幅され、目標値となった。
【0063】
このように、信号調整部50において入力されたセンサ信号に対して調整を行った結果、調整後信号V2が、コントローラ40が処理するために適切な信号として生成される。
【0064】
また、オフセット調整器53をゲイン調整器54の前に設けることによって、オフセット調整値がゲイン調整器54の影響を受けることなく、センサ信号の中央値を調整することができる。
【0065】
特に、ストロークセンサ36が出力するセンサ信号のばらつきや、経時変化によってセンサ信号にばらつきが生じたとしても、目標値に追従するように自動的に制御を行うことができる。これにより、信号調整のためのトリマ等の追加部品を削減することができ、接触構造部品を削減することにより信頼性や寿命が向上できる。また、人手による信号調整の工数を削減することができ、センサ信号の調整のためのコストを削減することができる。
【0066】
また、マイコン60は、センサ信号の振幅値を算出し、これが目標値となるようにゲイン調整値を算出すると共に、センサ信号の中央値である振央を算出して、これが目標値となるようにオフセット調整値を算出する。特に、本発明の実施形態のセンサ信号は、前述のように最大値と最小値とが交互に登場するサイン波に類似した波形であるので、マイコン60が、容易に振幅値と振央とを算出でき、ゲイン調整値とオフセット調整値とを容易に算出できる。従って、調整のための処理が簡易となり、製造コストを増加することがない。
【0067】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【0068】
例えば、上記実施例では、車両の変位を検出するストロークセンサ36が出力するアナログ信号を調整する例を説明したが、これに限られない。測定部位の変位や温度、磁束、速度、加速度等の状態を取得してこれをアナログ信号として出力するセンサに対して、本実施形態の信号処理装置60を適用することができる。また、アナログ信号は、最大値、最小値及びその中央値が判別できるものであれば、どのような波形であっても本実施形態の信号処理装置60を適用することができる。一例として、アナログ信号は、正弦波以外にも、三角波、のこぎり波、矩形波や、それぞれに類似する信号であってもよい。
【0069】
また、上記実施例では、ゲイン調整器54の前にオフセット調整器53を設けたが、オフセット調整器53の前にゲイン調整器54を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 緩衝器
2 減衰弁
36 ストロークセンサ(センサ)
40 コントローラ
50 信号調整部
51 分圧器
52 ローパスフィルタ(LPF)
53 オフセット調整器(信号調整部)
54 ゲイン調整器(信号調整部)
55 コンパレータ
56 D/Aコンバータ
60 マイコン(制御部)
62 信号出力部
100 信号処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6