特許第6259656号(P6259656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6259656
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】スピニング成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/14 20060101AFI20171227BHJP
【FI】
   B21D22/14 Z
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-265535(P2013-265535)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2015-120184(P2015-120184A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂根 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】今村 嘉秀
(72)【発明者】
【氏名】三上 恒平
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 勇人
(72)【発明者】
【氏名】北野 博
【審査官】 岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−041965(JP,A)
【文献】 特開2008−276974(JP,A)
【文献】 特開2006−294396(JP,A)
【文献】 実開平02−079594(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形されるべき板材の中心部を支持する受け治具と、
前記受け治具が取り付けられた回転軸と、
前記板材における変形対象部位を押圧して前記板材を変形させる加工具と、
前記変形対象部位を誘導加熱により局所的に加熱する加熱器と、を備え、
前記加熱器は、内部に冷却液が流れる電通管であって、前記回転軸の周方向に延びる、前記板材の一方面に沿った二重円弧状のコイル部、および前記コイル部から前記回転軸の径方向外向きに延びる一対のリード部を有する電通管を含み、
前記一対のリード部は、前記コイル部側の端部で、前記コイル部よりも前記板材から遠ざかるように後退している、スピニング成形装置。
【請求項2】
前記一対の前記リード部は、少なくとも二段で前記板材から遠ざかるように後退している、請求項1に記載のスピニング成形装置。
【請求項3】
前記加熱器は、前記板材を挟んで前記加工具と反対側に配置された裏側加熱器である、請求項1または2に記載のスピニング成形装置。
【請求項4】
前記加熱器は、前記板材を挟んで前記加工具と反対側に配置された裏側加熱器と、前記板材に対して前記加工具と同じ側に配置された表側加熱器の両方である、請求項1または2に記載のスピニング成形装置。
【請求項5】
前記裏側加熱器は、前記コイル部の内側円弧部を前記板材と反対側から覆う第1コアと、前記コイル部の外側円弧部を前記板材と反対側から覆う第2コアと、を含み、
前記第2コアにおける前記外側円弧部の径方向外側に位置する外壁部の少なくとも一部が、先端に向かって細くなる形状を有している、請求項3または4に記載のスピニング成形装置。
【請求項6】
成形されるべき板材の中心部を支持する受け治具と、
前記受け治具が取り付けられた回転軸と、
前記板材における変形対象部位を押圧して前記板材を変形させる加工具と、
前記変形対象部位を誘導加熱により局所的に加熱する、前記板材に対して前記加工具と同じ側に配置された表側加熱器と、を備え、
前記表側加熱器は、内部に冷却液が流れる電通管であって、前記回転軸の周方向に延びる、前記板材の一方面に沿った二重円弧状のコイル部を有する電通管と、前記コイル部の内側円弧部を前記板材と反対側から覆う第1コアと、前記コイル部の外側円弧部を前記板材と反対側から覆う第2コアと、を含み、
前記第1コアにおける前記内側円弧部の径方向内側に位置する内壁部の少なくとも一部が先端に向かって細くなる形状を有する、または前記内壁部が第1コアにおける前記内側円弧部の径方向外側に位置する外壁部よりも細くなっている、スピニング成形装置。
【請求項7】
前記板材における変形対象部位を誘導加熱により局所的に加熱する、前記板材を挟んで前記加工具と反対側に配置された裏側加熱器をさらに備え、
前記裏側加熱器は、内部に冷却液が流れる電通管であって、前記回転軸の周方向に延びる、前記板材に沿った二重円弧状のコイル部を有する電通管を含む、請求項6に記載のスピニング成形装置。
【請求項8】
前記表側加熱器のコイル部の中心位置は、前記裏側加熱器のコイル部の中心位置から前記回転軸の径方向外側に所定距離だけずれており、
前記所定距離をS、前記表側加熱器のコイル部の中心の曲率半径をRu、前記裏側加熱器のコイル部の中心の曲率半径をRbとしたとき、以下の式
0.5S≦Ru−Rb≦1.5S
を満たす、請求項4または7に記載のスピニング成形装置。
【請求項9】
成形されるべき板材の中心部を支持する受け治具と、
前記受け治具が取り付けられた回転軸と、
前記板材における変形対象部位を押圧して前記板材を変形させる加工具と、
前記変形対象部位を誘導加熱により局所的に加熱する、前記板材に対して前記加工具と同じ側に配置された表側加熱器と、
前記変形対象部位を誘導加熱により局所的に加熱する、前記板材を挟んで前記加工具と反対側に配置された裏側加熱器と、
前記表側加熱器および前記裏側加熱器を前記回転軸の軸方向に移動させる軸方向移動機構と、
前記裏側加熱器を前記回転軸の径方向に移動させる第1径方向移動機構と、
前記表側加熱器を前記裏側加熱器よりも速い速度で前記回転軸の径方向に移動させる第2径方向移動機構と、を備え、
前記表側加熱器および前記裏側加熱器のそれぞれは、内部に冷却液が流れる電通管であって、前記回転軸の周方向に延びる、前記板材に沿った二重円弧状のコイル部を有する電通管と、前記コイル部の内側円弧部を前記板材と反対側から覆う第1コアと、前記コイル部の外側円弧部を前記板材と反対側から覆う第2コアと、を含む、スピニング成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を回転させながら所望の形状に成形するスピニング成形装置およびスピニング成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、板材を回転させながらその板材に加工具を押圧して当該板材を変形させるスピニング成形装置が知られている。このようなスピニング成形装置は通常は回転軸に取り付けられたマンドレル(成形型)を有し、板材が加工具によってマンドレルに押し付けられることにより成形が行われる。
【0003】
近年では、板材を局所的に加熱しながらスピニング成形を行うスピニング成形装置が提案されている。例えば、特許文献1には、チタン合金用のスピニング成形装置として、板材におけるヘラ(加工具)によってマンドレルに押し付けられる部位を高周波誘導加熱により加熱するスピニング成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−218427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明の発明者らは、誘導加熱によって板材を局所的に加熱すれば、マンドレルを用いなくても、板材を大気中で最終形状に合わせて変形できることを見出した。このような観点から、本件出願の出願人は、本件出願に先立つ出願(特願2012−178269号)において、マンドレルの代わりに、板材の中心部を支持する受け治具を用いたスピニング成形装置を提案した。このスピニング成形装置では、板材における変形対象部位が、受け治具から離れた位置で、加熱器によって加熱されるとともに加工具によって押圧される。
【0006】
さらに、本発明の発明者らは、上記の受け治具を用いたスピニング成形装置に好適な加熱器として、二重円弧状のコイル部を有する加熱器を考え出した。コイル部は、内部に冷却液が流れる電通管の一部分であり、電通管を通じた冷却液の循環によって電通管に大電流を流すことが可能となっている。このようなスピニング成形装置では、板材と加熱器とを非接触状態に保つ必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、板材と加熱器との接触を防止することができるスピニング成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、1つの側面から、成形されるべき板材の中心部を支持する受け治具と、前記受け治具が取り付けられた回転軸と、前記板材における変形対象部位を押圧して前記板材を変形させる加工具と、前記変形対象部位を誘導加熱により局所的に加熱する加熱器と、を備え、前記加熱器は、内部に冷却液が流れる電通管であって、前記回転軸の周方向に延びる、前記板材に沿った二重円弧状のコイル部、および前記コイル部から前記回転軸の径方向外向きに延びる一対のリード部を有する電通管を含み、前記一対のリード部は、前記コイル部側の端部で、前記コイル部よりも前記板材から遠ざかるように後退している、スピニング成形装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、別の側面から、成形されるべき板材の中心部を支持する受け治具と、前記受け治具が取り付けられた回転軸と、前記板材における変形対象部位を押圧して前記板材を変形させる加工具と、前記変形対象部位を誘導加熱により局所的に加熱する、前記板材に対して前記加工具と同じ側に配置された表側加熱器と、を備え、前記表側加熱器は、内部に冷却液が流れる電通管であって、前記回転軸の周方向に延びる、前記板材に沿った二重円弧状のコイル部を有する電通管と、前記コイル部の内側円弧部を前記板材と反対側から覆う第1コアと、前記コイル部の外側円弧部を前記板材と反対側から覆う第2コアと、を含み、前記第1コアにおける前記内側円弧部の径方向内側に位置する内壁部が、先端に向かって細くなる形状を有する、または第1コアにおける前記内側円弧部の径方向外側に位置する外壁部よりも細くなっている、スピニング成形装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、さらに別の側面から、成形されるべき板材の中心部を支持する受け治具と、前記受け治具が取り付けられた回転軸と、前記板材における変形対象部位を押圧して前記板材を変形させる加工具と、前記変形対象部位を誘導加熱により局所的に加熱する、前記板材に対して前記加工具と同じ側に配置された表側加熱器と、前記変形対象部位を誘導加熱により局所的に加熱する、前記板材を挟んで前記加工具と反対側に配置された裏側加熱器と、前記表側加熱器および前記裏側加熱器を前記回転軸の軸方向に移動させる軸方向移動機構と、前記裏側加熱器を前記回転軸の径方向に移動させる第1径方向移動機構と、前記表側加熱器を前記裏側加熱器よりも速い速度で前記回転軸の径方向に移動させる第2径方向移動機構と、を備え、前記表側加熱器および前記裏側加熱器のそれぞれは、内部に冷却液が流れる電通管であって、前記回転軸の周方向に延びる、前記板材に沿った二重円弧状のコイル部を有する電通管と、前記コイル部の内側円弧部を前記板材と反対側から覆う第1コアと、前記コイル部の外側円弧部を前記板材と反対側から覆う第2コアと、を含む、スピニング成形装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、板材と加熱器との接触を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るスピニング成形装置の概略構成図である。
図2】第1実施形態における表側加熱器および裏側加熱器の断面側面図である。
図3図2の一部を拡大した図である。
図4図2のIV−IV線に沿った位置での表側加熱器の平面図である。
図5図2のV−V線に沿った位置での裏側加熱器の平面図である。
図6】第1実施形態の変形例における表側加熱器および裏側加熱器の断面側面図である。
図7】第1実施形態の別の変形例における表側加熱器および裏側加熱器の断面側面図である。
図8】第1実施形態のさらに別の変形例における表側加熱器および裏側加熱器の拡大断面側面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るスピニング成形装置の概略構成図である。
図10】第2実施形態における表側加熱器の断面側面図である。
図11図10の一部を拡大した図である。
図12図10のXII−XII線に沿った位置での表側加熱器の平面図である。
図13】第2実施形態の変形例における表側加熱器の拡大断面側面図である。
図14】第2実施形態の別の変形例における表側加熱器の拡大断面側面図である。
図15】本発明の第3実施形態に係るスピニング成形装置の概略構成図である。
図16】成形開始位置および成形終了位置と表側加熱器のコイル部との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態として、第1〜第3実施形態を説明する。
【0014】
板材と加熱器とが接触する態様としては、例えば、以下の態様が考えられる。例えば、板材における変形対象部位を加熱する加熱器は、コイル部から回転軸の径方向外向きに延びる一対のリード部を有するように構成され得る。
【0015】
マンドレルを用いた従来のスピニング成形装置は、通常は加熱器を具備しない。しかも、加工具によって板材の変形対象部位がマンドレルに押し付けられるため、板材の周縁部の変形を気にする必要はない。これに対し、加工具によって板材が押し付けられない受け治具、換言すれば成形面を有しない受け治具を用いた場合には、変形対象部位が空中に浮いた状態で板材の加工が行われる。従って、加熱器を具備するスピニング成形装置において受け治具を用いた場合には、板材の周縁部の変形が問題となる。すなわち、板材の周縁部が変形すると、板材が上述した一対のリード部と接触するおそれがある。
【0016】
第1実施形態は、板材とリード部との接触を防止することを主な目的とするものである。
【0017】
また、板材と加熱器とが接触する態様としては、例えば、以下の態様も考えられる。スピニング成形装置では、加工具が、回転軸の径方向外向きに移動させられながら、板材の変形対象部位を回転軸の軸方向に押圧する。すなわち、変形対象部位が径方向外側に推移するにつれて、変形対象部位の直ぐ内側に形成される円錐状部分(いわゆる、成形直後部分)は、しだいにその直径を大きくする。これに対し、変形対象部位を加熱する加熱器のコイル部の半径は通常は一定である。
【0018】
加熱器は、一般的に、コイル部を板材と反対側から覆う、磁束を集約するためのコアを有する。従って、加熱器が加工具と同じ側に配置されている場合、板材の成形直後部分が加熱器のコアに接触するおそれがある。
【0019】
第2および第3実施形態は、板材の成形直後部分とコアとの接触を防止することを主な目的とするものである。
【0020】
以下、第1〜第3実施形態を詳細に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係るスピニング成形装置1Aを示す。このスピニング成形装置1Aは、回転軸21と、回転軸21に取り付けられた受け治具22と、固定治具31を備えている。受け治具22は、成形されるべき板材9の中心部91を支持し、固定治具31は、受け治具22と共に板材9を挟持する。さらに、スピニング成形装置1Aは、板材9における回転軸21の軸心20から所定距離Rだけ離れた変形対象部位92を誘導加熱により局所的に加熱する表側加熱器5および裏側加熱器4と、変形対象部位92を押圧して板材9を変形させる加工具8を備えている。
【0022】
例えば、図16に示すように、変形対象部位92は、所定距離Rが徐々に大きくなるように、成形開始位置Psから成形終了位置Pfまで推移する。
【0023】
図1に戻って、回転軸21の軸方向(軸心20が延びる方向)は、本実施形態では鉛直方向である。ただし、回転軸21の軸方向は、水平方向や斜め方向であってもよい。回転軸21の下部は基台11に支持されており、基台11内には回転軸21を回転させるモータ(図示せず)が配置されている。回転軸21の上面はフラットであり、この上面に受け治具22が固定されている。
【0024】
板材9は、例えばフラットな円形状の板である。ただし、板材9の形状は、多角形状や楕円状であってもよい。また、板材9は、必ずしも全面に亘ってフラットである必要はなく、例えば中心部91の厚さが周縁部93の厚さよりも厚かったり、全体または一部が予めテーパー状に加工されたりしてもよい。板材9の材質は、特に限定されるものではないが、例えばチタン合金である。
【0025】
受け治具22は、板材9における成形開始位置Psによって規定される円に収まるサイズを有している。例えば、受け治具22が円盤状である場合は、受け治具22の直径は、板材9における成形開始位置Psによって規定される円の直径以下である。また、従来のマンドレルと異なり、板材9は、受け治具22の径方向外向きの側面に押し付けられて変形されることはない。
【0026】
固定治具31は、加圧ロッド32に取り付けられている。加圧ロッド32は、駆動部33によって上下方向に駆動されることにより、固定治具31を介して板材9を受け治具22に押し付ける。例えば、加圧ロッド32および駆動部33は油圧シリンダであり、回転軸21の上方に配置されたフレーム12に駆動部33が固定され、駆動部33には加圧ロッド32を回転可能に支持するベアリングが内蔵される。
【0027】
なお、加圧ロッド32および駆動部33は必ずしも必要ではない。例えば、固定治具31は、ボルトやクランプなどの締結部材によって板材9と共に受け治具22に固定されてもよい。あるいは、固定治具31を省略し、例えばボルトによって板材9を受け治具22に直接的に固定してもよい。
【0028】
本実施形態では、板材9の変形対象部位92を押圧する加工具8が板材9の上方に配置され、加工具8によって板材9が受け治具22を収容するような下向きに開口する形状に加工される。すなわち、板材9の上面が表面であり、板材9の下面が裏面である。ただし、加工具8が板材9の下方に配置され、加工具8によって板材9が固定治具31を収容するような上向きに開口する形状に加工されてもよい。すなわち、板材9の下面が表面であり、板材9の上面が裏面であってもよい。
【0029】
加工具8は、径方向移動機構14により回転軸21の径方向に移動させられるとともに、軸方向移動機構13により径方向移動機構14を介して回転軸21の軸方向に移動させられる。軸方向移動機構13は、上述した基台11とフレーム12を橋架するように延びている。本実施形態では、加工具8として、板材9の回転に追従して回転するローラが用いられている。ただし、加工具8は、ローラに限定されず、例えばヘラであってもよい。
【0030】
表側加熱器5は、板材9に対して加工具8と同じ側に配置されており、裏側加熱器4は、板材9を挟んで加工具8と反対側に配置されている。本実施形態では、表側加熱器5および裏側加熱器4が同一のヒートステーション6に連結されている。表側加熱器5および裏側加熱器4は、ヒートステーション6を介して径方向移動機構16により回転軸21の径方向に移動させられるとともに、軸方向移動機構15により径方向移動機構16を介して回転軸21の軸方向に移動させられる。軸方向移動機構15は、上述した基台11とフレーム12を橋架するように延びている。
【0031】
例えば、表側加熱器5および裏側加熱器4のどちらか一方には、板材9の変形対象部位92までの距離を計測する変位計(図示せず)が取り付けられる。表側加熱器5および裏側加熱器4は、その変位計の計測値が一定となるように、回転軸21の軸方向および径方向に移動させられる。
【0032】
表側加熱器5および裏側加熱器4と加工具8との相対位置は、それらが回転軸21の軸心20を中心とするほぼ同一円周上に位置している限り、特に限定されるものではない。例えば、表側加熱器5および裏側加熱器4は、回転軸21の周方向に加工具8から180度離れていてもよい。
【0033】
次に、図2図5を参照して、表側加熱器5および裏側加熱器4の構成を詳細に説明する。
【0034】
表側加熱器5および裏側加熱器4が連結されたヒートステーション6は、箱状の本体60と、本体60における回転軸21に対向する側面に固定された一対の接続箱61,62を含む。本体60の内部には、交流電源回路が形成されている。接続箱61,62は、導電性の部材からなり、絶縁板72を挟んで互いに隣接している。接続箱61,62のそれぞれは、本体60内の電源回路と電気的に接続されている。本実施形態では、接続箱61,62が、表側加熱器5と裏側加熱器4に跨るように鉛直方向に延びている。
【0035】
接続箱61,62同士は、後述する表側加熱器5の電通管51および裏側加熱器4の電通管41を介して電気的に接続される。すなわち、接続箱61,62の一方から他方へ、電通管51,41を通じて交流電流が流される。交流電流の周波数は、特に限定されるものではないが、5k〜400kHzの高周波数であることが望ましい。すなわち、表側加熱器5および裏側加熱器4による誘導加熱は、高周波誘導加熱であることが望ましい。
【0036】
また、接続箱61,62には、冷却液ポート63,64がそれぞれ設けられている。そして、接続箱61,62の一方の内部には冷却液ポート(63または64)を通じて冷却液が供給され、この冷却液が後述する電通管51,41を循環した後に、接続箱61,62の他方の内部から冷却液ポート(64または63)を通じて排出される。このような電通管51,41を通じた冷却液の循環により、電通管51,41に大電流(例えば、1000〜4000A)を流すことが可能となっている。
【0037】
表側加熱器5は、内部に冷却液が流れる電通管51と、支持板50を含む。電通管51の断面形状は、本実施形態では正方形状であるが、その他の形状(例えば、円形状)であってもよい。支持板50は、例えば、耐熱性の材料(例えば、セラミック繊維系材料)からなり、図略の絶縁部材を介して電通管51を支持する。また、支持板50は、図略の絶縁部材を介してヒートステーション6の本体60に固定される。なお、支持板50を絶縁性の樹脂で構成することも可能である。この場合は、支持板50が電通管51を直接的に支持していてもよいし、支持板50がヒートステーション6の本体60に直接的に固定されてもよい。
【0038】
電通管51は、回転軸21の周方向に延びる、板材9に沿った二重円弧状のコイル部54と、コイル部54から回転軸21の径方向外向きに延びる一対のリード部52,53を有する。一対のリード部52,53は、回転軸21の軸心20と垂直な面(本実施形態では、水平面)上で互いに平行であり、コイル部54の略中央から延びている。すなわち、コイル部54は、1つの内側円弧部55と、リード部52,53の両側に広がる2つの外側円弧部56を含む。内側円弧部55と外側円弧部56は、回転軸21の径方向に互いに離間している。コイル部54の開き角度(両端部間の角度)は、例えば60〜120度である。
【0039】
一方(図4でヒートステーション6から回転軸21に向かって左側)のリード部52は、上述した接続箱61につながっており、リード部52の内部が接続箱61の内部と連通している。他方(ヒートステーション6から回転軸21に向かって右側)のリード部53は、中継管71につながっている。
【0040】
また、表側加熱器5は、コイル部54の内側円弧部55を板材9と反対側から覆う1つの第1コア57と、外側円弧部56を板材9と反対側から覆う2つの第2コア58を含む。第1コア57および第2コア58は、内側円弧部55および外側円弧部56の周囲に発生する磁束を集約するためのものであり、第1コア57と第2コア58の間には僅かな隙間が確保されている。第1コア57および第2コア58は、図略の絶縁部材を介して支持板50に支持されている。第1コア57および第2コア58は、例えば、金属磁性粉末が樹脂中に分散されたものである。あるいは、第1コア57および第2コア58は、フェライトやケイ素鋼などからなっていてもよい。
【0041】
リード部52,53は、コイル部54側の端部で、コイル部54よりも板材9から遠ざかるように後退している。換言すれば、リード部52,53における回転軸21の径方向に平行な部分とコイル部54との間には段差が形成されている。本実施形態では、リード部52,53は、コア57,58の溝底(円弧部(55または56)と支持板50の間の部分)の厚さ分だけ、回転軸21の軸方向に後退している。すなわち、リード部52,53のコイル部54側の端部は、外側円弧部56の中央側端部から上方に延びた後に水平方向に90度に折れ曲がっている。
【0042】
ただし、リード部52,53が後退する形状はこれに限られるものではない。例えば、リード部52,53のコイル部54側の端部は、外側円弧部56の中央側端部から斜め上向きに延びた後に水平方向に折れ曲がっていてもよい。
【0043】
裏側加熱器4は、内部に冷却液が流れる電通管41と、支持板40を含む。電通管41の断面形状は、本実施形態では正方形状であるが、その他の形状(例えば、円形状)であってもよい。支持板40は、例えば、耐熱性の材料(例えば、セラミック繊維系材料)からなり、図略の絶縁部材を介して電通管41を支持する。また、支持板40は、図略の絶縁部材を介してヒートステーション6の本体60に固定される。なお、支持板40を絶縁性の樹脂で構成することも可能である。この場合は、支持板40が電通管41を直接的に支持していてもよいし、ヒートステーション6の本体60に直接的に固定されてもよい。
【0044】
電通管41は、回転軸21の周方向に延びる、板材9に沿った二重円弧状のコイル部44と、コイル部44から回転軸21の径方向外向きに延びる一対のリード部42,43を有する。一対のリード部42,43は、回転軸21の軸心20と垂直な面(本実施形態では、水平面)上で互いに平行であり、コイル部44の略中央から延びている。すなわち、コイル部44は、1つの内側円弧部45と、リード部42,43の両側に広がる2つの外側円弧部46を含む。内側円弧部45と外側円弧部46は、回転軸21の径方向に互いに離間している。コイル部44の開き角度(両端部間の角度)は、例えば60〜120度である。
【0045】
一方(図5でヒートステーション6から回転軸21に向かって右側)のリード部42は、上述した接続箱62につながっており、リード部42の内部が接続箱62の内部と連通している。他方(ヒートステーション6から回転軸21に向かって左側)のリード部43は、中継管71につながっている。
【0046】
また、裏側加熱器4は、コイル部44の内側円弧部45を板材9と反対側から覆う1つの第1コア47と、外側円弧部46を板材9と反対側から覆う2つの第2コア48を含む。第1コア47および第2コア48は、内側円弧部45および外側円弧部46の周囲に発生する磁束を集約するためのものである。第1コア47および第2コア48は、図略の絶縁部材を介して支持板40に支持されている。第1コア47および第2コア48は、例えば、金属磁性粉末が樹脂中に分散されたものである。あるいは、第1コア47および第2コア48は、フェライトやケイ素鋼などからなっていてもよい。
【0047】
リード部42,43は、コイル部44側の端部で、コイル部44よりも板材9から遠ざかるように後退している。換言すれば、リード部42,43における回転軸21の径方向に平行な部分とコイル部44との間には段差が形成されている。本実施形態では、リード部42,43は、コア47,48の溝底(円弧部(45または46)と支持板40の間の部分)の厚さ分だけ、回転軸21の軸方向に後退している。すなわち、リード部42,43のコイル部44側の端部は、外側円弧部46の中央側端部から下方に延びた後に水平方向に90度に折れ曲がっている。
【0048】
ただし、リード部42,43が後退する形状はこれに限られるものではない。例えば、リード部42,43のコイル部44側の端部は、外側円弧部46の中央側端部から斜め下向きに延びた後に水平方向に折れ曲がっていてもよい。
【0049】
上述した表側加熱器5の右側のリード部53と裏側加熱器4の左側のリード部42とは、クランク状に折れ曲がる中継管71によって互いに接続されている。換言すれば、表側加熱器5と裏側加熱器4における同じ位置のリード部同士ではなく異なる位置のリード部同士が連結されている。これにより、表側加熱器5のコイル部54と裏側加熱器4のコイル部44とには、同じ方向に冷却液および電流が流れる。ただし、表側加熱器5と裏側加熱器4における同じ位置のリード部同士を連結することも可能である。
【0050】
以上説明したように、本実施形態のスピニング成形装置1Aでは、裏側加熱器4のリード部42,43が、コイル部44側の端部で、コイル部44よりも板材9から遠ざかるように後退しているとともに、表側加熱器5のリード部52,53が、コイル部54側の端部で、コイル部54よりも板材9から遠ざかるように後退している。このため、板材1の周縁部93が下方に垂れ下がるように変形したり、上方に反り上がるように変形したとしても、板材9の周縁部93がリード部42,43,52,53と接触することを防止することができる。
【0051】
ただし、当初から、板材9の周縁部93の変形が下方に垂れ下がる変形か上方に反り上がる変形かを想定できる場合には、裏側加熱器4と表側加熱器5の一方のみでリード部を後退させるという構成を採用してもよい。この場合、裏側加熱器4と表側加熱器5の他方では、リード部(42,43または52,53)がコイル部(44または54)から真っ直ぐに回転軸21の径方向に延びていてもよい。すなわち、裏側加熱器4と表側加熱器5の他方では、リード部とコイル部との間に段差が形成されていなくてもよい。
【0052】
ところで、本実施形態では、図2に示すように、表側加熱器5のコイル部54の中心Cuの位置は、裏側加熱器4のコイル部44の中心Cbの位置から回転軸21の径方向外側に所定距離Sだけずれている。所定距離Sと、表側加熱器5のコイル部54の中心Cuの曲率半径Ru(図4参照)と、裏側加熱器4のコイル部44の中心Cbの曲率半径Rb(図5参照)との関係は、以下の式1、
0.5S≦Ru−Rb≦1.5S ・・・(式1)
を満たすことが望ましい。
【0053】
加工具8は、回転軸21の径方向外向きに移動させられながら、板材9の変形対象部位92を回転軸21の軸方向に押圧する。このため、変形対象部位92の直ぐ内側に形成される円錐状部分(いわゆる、成形直後部分)は、しだいにその直径を大きくする。これに対し、変形対象部位92を加熱する表側加熱器5のコイル部54の半径は一定である。従って、図16に示すように、仮に、コイル部54の半径を成形開始位置Psの半径と一致させた場合には、成形終了時に平面視でコイル部54の両端部が成形終了位置Pfよりも径方向内側に入り込むため、板材9の成形直後部分が第1コア57と接触するおそれがある。上記式1を満たす構成であれば、そのような板材9の成形直後部分と表側加熱器5の第1コア57との接触を抑制できる。なお、上記式1を満たす場合のコイル部54の半径は、成形終了位置Pfの半径と一致していてもよい。また、成形開始位置Psおよび成形終了位置Pfの半径によっては、Ru=Rbとしてもよい。
【0054】
<変形例>
第1実施形態では、裏側加熱器4および表側加熱器5のリード部(42,43,52,53)が、コイル部(44,54)側の端部で、一段で板材9から遠ざかるように後退している。しかし、裏側加熱器4および表側加熱器5の少なくとも一方のリード部が、コイル部側の端部で、少なくとも二段で板材9から遠ざかるように後退していてもよい。この構成によれば、板材9の周縁部93とリード部との接触をより効果的に防止することができる。
【0055】
例えば、図6に示すように、表側加熱器5の第1コア57および第2コア58と支持板50との間にスペーサ59を挿入し、一段目の後退では第1実施形態と同様とし、二段目の後退ではスペーサ59の厚さ分だけリード部52,53を後退させればよい。同様に、裏側加熱器4の第1コア47および第2コア48と支持板40との間にスペーサ49を挿入し、一段目の後退では第1実施形態と同様とし、二段目の後退ではスペーサ49の厚さ分だけリード部42,43を後退させればよい。
【0056】
なお、表側加熱器5でリード部52,53を一段だけ後退させ、裏側加熱器4でリード部42,43を二段で後退させてもよい。同様に、裏側加熱器4でリード部42,43を一段だけ後退させ、表側加熱器5でリード部52,53を二段で後退させてもよい。
【0057】
さらには、リード部(42,43および/または52,53)を一段だけ後退させる場合も少なくとも二段で後退させる場合も、図7に示すように、リード部を滑らかに湾曲するように後退させてもよい。この構成によれば、電通管(41および/または51)の全長に亘って冷却液をスムーズに流すことができ、電通管内で気泡が留まることを防止することができる。従って、良好な冷却性能を得ることができ、電通管の溶融を防止することができる。
【0058】
また、表側加熱器5および裏側加熱器4の少なくとも一方では、図8に示すように、第2コア(58,48)における外側円弧部(56,46)の径方向外側に位置する外壁部(58a,48a)の少なくとも一部が、先端に向かって細くなる形状を有していてもよい。例えば、外壁部は、径方向外側の先端角部が斜めに切り取られたような形状を有してもよい。換言すれば、外壁部に、外側円弧部における板材9と対向する面と同一面上のフラットな先端面の一部が残るように、または先端面が全く残らないように、傾斜面が形成されてもよい。この構成によれば、板材9の周縁部93と第2コアとの接触をも防止することができる。
【0059】
また、スピニング成形装置1Aは、必ずしも表側加熱器5と裏側加熱器4の双方を有している必要はなく、どちらか一方のみを有していてもよい。ただし、スピニング成形装置1Aが少なくとも裏側加熱器4を有していれば、加工中の板材9の形状に拘らずに、裏側加熱器4を板材9の変形対象部位92の直近に位置させることができる。これにより、変形対象部位92を適切に加熱することができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、図9〜12を参照して、本発明の第2実施形態に係るスピニング成形装置1Bを説明する。なお、本実施形態および後述する第3実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0061】
本実施形態では、スピニング成形装置1Bが表側加熱器5のみを有している。ただし、第1実施形態と同様に、スピニング成形装置1Bが裏側加熱器4をも有してもよいことは言うまでもない。この場合、表側加熱器5および裏側加熱器4は、同一のヒートステーション6に連結されていてもよいし、後述する第3実施形態と同様に別々のヒートステーション6A,6B(図15参照)に連結されていてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、電通管51の一対のリード部52,53が、コイル部54から真っ直ぐに回転軸21の径方向に延びており、接続箱61,62につながっている。
【0063】
図11に示すように、コイル部54の内側円弧部55を板材9と反対側から覆う第1コア57は、内側円弧部55の径方向内側に位置する内壁部57aと、内側円弧部55の径方向外側に位置する外壁部57bとを含む。外壁部57bは、基部から先端まで一定の幅(回転軸21の径方向の寸法)を有している。一方、内壁部57aの少なくとも一部は、先端に向かって細くなる形状を有している。
【0064】
本実施形態では、内壁部57aは、径方向内側の先端角部が斜めに切り取られたような形状を有している。換言すれば、内壁部57aに、内側円弧部55における板材9と対向する面と同一面上のフラットな先端面の一部が残るように傾斜面が形成されている。なお、傾斜面は、内壁部57aの先端面が全く残らないように形成されていてもよい。
【0065】
加工具8は、回転軸21の径方向外向きに移動させられながら、板材9の変形対象部位92を回転軸21の軸方向に押圧する。このため、変形対象部位92の直ぐ内側に形成される円錐状部分(いわゆる、成形直後部分)は、しだいにその直径を大きくする。これに対し、変形対象部位92を加熱する表側加熱器5のコイル部54の半径は一定である。従って、図16に示すように、仮に、コイル部54の半径を成形開始位置Psの半径と一致させた場合には、成形終了時に平面視でコイル部54の両端部が成形終了位置Pfよりも径方向内側に入り込むため、板材9の成形直後部分が第1コア57と接触するおそれがある。
【0066】
これに対し、本実施形態のスピニング成形装置1Bのように、第1コア57の内壁部57aが先端に向かって細くなる形状を有していれば、そのような板材9の成形直後部分と表側加熱器5の第1コア57との接触を抑制できる。なお、コイル部54の半径は、成形終了位置Pfの半径と一致していてもよい。
【0067】
<変形例>
第1コア57は、内壁部57aの形状が先端に向かって細くなっていれば、どのような形状を有していてもよい。例えば、図14に示すように、第1コア57の断面形状の輪郭は、円の一部(例えば、直径の1/10〜1/3の部分)を直線的に切断したような形状であってもよい。
【0068】
あるいは、内壁部57aの形状は、必ずしも先端に向かって細くなる必要はない。例えば、図13に示すように、内壁部57aは、外壁部57bよりも細くなっていてもよい。この構成であっても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、スピニング成形装置1Bが裏側加熱器4をも有する場合は、第1実施形態と同様に、表側加熱器5のコイル部54の中心Cuの位置が、裏側加熱器4のコイル部44の中心Cbの位置から回転軸21の径方向外側に所定距離Sだけずれていてもよい。そして、所定距離Sと、表側加熱器5のコイル部54の中心Cuの曲率半径Ru(図4参照)と、裏側加熱器4のコイル部44の中心Cbの曲率半径Rb(図5参照)との関係は、以下の式1、
0.5S≦Ru−Rb≦1.5S ・・・(式1)
を満たすことが望ましい。この構成であれば、板材9の成形直後部分と表側加熱器5の第1コア57との接触をより効果的に抑制できる。
【0070】
(第3実施形態)
次に、図15を参照して、本発明の第3実施形態に係るスピニング成形装置1Cを説明する。本実施形態では、表側加熱器5と裏側加熱器4が別々に径方向に移動できるように構成されている。
【0071】
具体的に、本実施形態では、表側加熱器5および裏側加熱器4が別々のヒートステーション6A,6Bに連結されている。裏側加熱器4は、ヒートステーション6Aを介して、第1径方向移動機構17により回転軸21の径方向に移動させられる。表側加熱器5は、ヒートステーション6Bを介して、第2径方向移動機構18により回転軸21の径方向に移動させられる。表側加熱器5および裏側加熱器4は、軸方向移動機構15により径方向移動機構17,18を介して回転軸21の軸方向に移動させられる。
【0072】
第2径方向移動機構18は、表側加熱器5を、第1径方向移動機構17が裏側加熱器4を回転軸21の径方向に移動させる速度よりも速い速度で、回転軸21の径方向に移動させる。すなわち、板材9の成形が進行するにつれて、表側加熱器5は、裏側加熱器4よりも回転軸21の軸心20から遠ざかる。
【0073】
ヒートステーション6A,6Bの構成は、第1実施形態で説明したヒートステーション6の構成と同様である。すなわち、ヒートステーション6A,6Bのそれぞれは、内部に交流電源回路が形成された本体60(図2参照)を含み、裏側加熱器4の電通管41と表側加熱器5の電通管51には、独立した電流および冷却液が流れる。
【0074】
加工具8は、回転軸21の径方向外向きに移動させられながら、板材9の変形対象部位92を回転軸21の軸方向に押圧する。このため、変形対象部位92の直ぐ内側に形成される円錐状部分(いわゆる、成形直後部分)は、しだいにその直径を大きくする。これに対し、変形対象部位92を加熱する表側加熱器5のコイル部54の半径は一定である。従って、図16に示すように、仮に、コイル部54の半径を成形開始位置Psの半径と一致させた場合には、成形終了時に平面視でコイル部54の両端部が成形終了位置Pfよりも径方向内側に入り込むため、板材9の成形直後部分が第1コア57と接触するおそれがある。
【0075】
これに対し、本実施形態のスピニング成形装置1Cのように、表側加熱器5が裏側加熱器4よりも速い速度で回転軸21の径方向に移動すれば、そのような板材9の成形直後部分と表側加熱器5の第1コア57との接触を抑制できる。なお、コイル部54の半径は、成形終了位置Pfの半径と一致していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、種々の素材からなる板材をスピニング成形する際に有用である。
【符号の説明】
【0077】
1A〜1C スピニング成形装置
13,15 軸方向移動機構
14,16 径方向移動機構
17 第1径方向移動機構
18 第2径方向移動機構
21 回転軸
22 受け治具
4 裏側加熱器
5 表側加熱器
41,51 電通管
42,43,52,53 リード部
44,54 コイル部
45,55 内側円弧部
46,56 外側円弧部
47,57 第1コア
48,58 第2コア
57a 内壁部
57b,48a 外壁部
8 加工具
9 板材
91 中心部
92 変形対象部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16