(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6259664
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】走査光学系、光走査装置、及び距離測定装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20171227BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G02B5/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-1177(P2014-1177)
(22)【出願日】2014年1月7日
(65)【公開番号】特開2015-129678(P2015-129678A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】松原 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】磯野 雅史
【審査官】
請園 信博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−229255(JP,A)
【文献】
特開平11−166832(JP,A)
【文献】
特開平05−249689(JP,A)
【文献】
特開2010−217782(JP,A)
【文献】
特開平02−236109(JP,A)
【文献】
国際公開第2003/087875(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 − 11/30
G01C 1/00 − 15/14
G01S 7/48 − 7/51
17/00 − 17/95
G02B 5/00 − 5/08
5/10 − 5/136
6/35
26/00 − 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた回転軸を中心として回転し、光源から出射された光ビームを予め定めた方向へ反射させることにより、前記予め定めた方向の対象物へ向けて投光する投光ミラーと、
光反射面が、前記投光ミラーの光反射面を前記回転軸に垂直な面に対して反転させた向きに設置され、且つ、前記回転軸を中心として前記投光ミラーと共に回転し、前記投光ミラーにより前記対象物に投光された光ビームに対する反射ビームを受光する受光ミラーと、
を備え、
前記投光ミラー及び前記受光ミラーの少なくとも一方の光反射面が、前記光ビームの像を反転させる直角ミラー面を有する
走査光学系。
【請求項2】
前記投光ミラー及び前記受光ミラーの少なくとも一方の光反射面が、前記直角ミラー面を複数有する
請求項1記載の走査光学系。
【請求項3】
前記投光ミラー及び前記受光ミラーの少なくとも一方の光反射面の周縁に沿って、前記直角ミラー面を有する直角ミラー反射面が複数配置され、
前記投光ミラーの中心と前記光源から前記光ビームが照射される位置とを結ぶ基準線と、前記投光ミラーの中心と前記直角ミラー反射面の中心とを結ぶ線と、が成す角度をθとして、前記直角ミラー反射面の軸方向と、前記直角ミラー反射面の中心を通り且つ前記基準線と平行な方向と、が成す角度が、θ/2となるように、前記直角ミラー面が形成されている
請求項1又は請求項2記載の走査光学系。
【請求項4】
光ビームを出射する光源と、
前記光源から出射された光ビームを予め定めた監視領域へ走査させる請求項1〜3の何れか1項に記載の走査光学系と、
前記監視領域に存在する対象物からの反射光を検出する光検出器と、
を備えた光走査装置。
【請求項5】
請求項4記載の光走査装置と、
前記光源から光ビームが出力されてから前記光検出器で検出されるまでの時間に基づいて、前記対象物までの距離を算出する距離算出部と、
を備えた距離測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査光学系、光走査装置、及び距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、距離測定の対象物に光を投光すると共に当該対象物から反射した光を受光する投受光光学系を投光光学系及び受光光学系に分離し、且つ、投光光学系の光軸及び受光光学系の光軸を隣接させた構造の距離測定装置が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。このように投光光学系及び受光光学系の光軸を隣接させて配置するのは、以下の2つの理由により、近距離にある対象物も検知できるようにするためである。
【0003】
まず、第1の理由は、距離測定装置内部における散乱光が受光素子に入ってしまうと、その信号と近距離の対象物からの反射光が重なってしまい、近い対象物の検知ができなくなるからである。
【0004】
第2の理由は、投光光学系と受光光学系の光軸が離れると、近距離の対象物の反射点が受光視野から外れてしまうためである。
【0005】
例えば特許文献1記載の装置は、受光光学系をよりコンパクトにするために、装置背面のミラーで折り返す構造となっている。
【0006】
また、特許文献2記載の装置のように、近距離の対象物を検知しようとする場合、投光用の走査ミラー及び受光用の走査ミラーを上下反転して配置するのが妥当であるが、走査に伴って投光像が受光素子上で回転するという問題がある。
【0007】
この問題について、
図11を参照して説明する。
図11に示すように、投光ミラー100及び受光ミラー102は、矢印A方向を回転軸として一緒に矢印B方向に回転する。
【0008】
投光ミラー100は、図示しないレーザ光源から矢印A方向に出射された投光ビームL1を矢印A方向と直交する矢印C1方向に反射させることにより、対象物に向けて投光する。一方、受光ミラー102は、投光ミラー100を
図11において上下反転させた位置に配置され、対象物から矢印C2方向へ反射された反射ビームL2を矢印A方向に反射させる。
【0009】
高出力のレーザ光源は発光領域が細長い領域のため、高出力のレーザ光源から出射されたレーザ光をそのままコリメートした場合は、
図11に示すように、投光ビームL1も細長いビーム形状となる。従って、対象物により反射された反射ビームL2の受光素子上におけるビーム形状も細長い形状となる。
【0010】
図11の状態から更に投光ミラー100及び受光ミラー102を矢印B方向に回転させた状態を
図12に示す。
図12に示すように、投光ビームL1の長手方向の向きは、投光ミラー100の回転に伴って回転する。対象物で反射した反射ビームL2の長手方向の向きは、受光ミラー102によって更に回転し、
図12に示すように、受光素子上では投光ミラー100及び受光ミラー102の回転角θに対して2倍の回転角2θで回転する。
【0011】
このように、受光素子上で反射ビームL2が回転するため、この光を全て受光しようとした場合、反射ビームL2の長軸の長さ以上の直径を持った大きな受光素子が必要となる。しかしながら、受光素子のサイズが大きくなると、応答速度やノイズが大きくなるという問題がある。このため、従来では、投光ビームL1のビーム形状を、縦横の長さが同じとなる矩形の形状や円形となるように複雑な光学系で整形したり、幅が狭い低出力のレーザ光源を用いる必要があった。
【0012】
特許文献1記載の装置のように、受光した反射ビームを装置背面のミラーで折り返す構造とすることにより、反射ビームの受光素子上における像の回転を低減することができる。
【0013】
しかしながら、特許文献1記載の装置では、受光ミラーの傾斜角が投光ミラーと同一ではないため、完全に回転をキャンセルすることは困難である。また、受光ミラーの傾斜角を投光ミラーと同一にするのも物理的に困難である。
【0014】
また、特許文献3には、ダブプリズムを用いることにより、反射ビームの受光素子上における像の回転を低減することができる装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2011−257221号公報
【特許文献2】特許第4032061号公報
【特許文献3】特開平9−21872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献3記載の装置は、部品点数が増加すると共に、ダブプリズムを走査ミラーの半分の速度で回転させる必要があり、装置構成が複雑になる、という問題がある。
【0017】
本発明は上記事情に鑑み成されたものであり、本発明の目的は、部品点数を増加させることなく、受光素子上における反射ビームの像が回転するのを防ぐことができる走査光学系、光走査装置、及び距離測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の走査光学系は、予め定めた回転軸を中心として回転し、光源から出射された光ビームを予め定めた方向へ反射させることにより、前記予め定めた方向の対象物へ向けて投光する投光ミラーと、光反射面が、前記投光ミラーの光反射面を前記回転軸に垂直な面に対して反転させた向きに設置され、且つ、前記回転軸を中心として前記投光ミラーと共に回転し、前記投光ミラーにより前記対象物に投光された光ビームに対する反射ビームを受光する受光ミラーと、を備え、前記投光ミラー及び前記受光ミラーの少なくとも一方の光反射面が、前記光ビームの像を反転させる直角ミラー面を有する。
【0019】
なお、請求項2に記載したように、前記投光ミラー及び前記受光ミラーの少なくとも一方の光反射面が、前記直角ミラー面を複数有する構成としてもよい。
【0020】
また請求項3に記載したように、前記投光ミラー及び前記受光ミラーの少なくとも一方の光反射面の周縁に沿って、前記直角ミラー面を有する直角ミラー反射面が複数配置され、前記投光ミラーの中心と前記光源から前記光ビームが照射される位置とを結ぶ基準線と、前記投光ミラーの中心と前記直角ミラー反射面の中心とを結ぶ線と、が成す角度をθとして、前記直角ミラー反射面の軸方向と、前記直角ミラー反射面の中心を通り且つ前記基準線と平行な方向と、が成す角度が、θ/2となるように、前記直角ミラー面が形成されている構成としてもよい。
【0022】
請求項
4記載の発明の光走査装置は、光ビームを出射する光源と、前記光源から出射された光ビームを予め定めた監視領域へ走査させる請求項1〜
3の何れか1項に記載の走査光学系と、前記監視領域に存在する対象物からの反射光を検出する光検出器と、を備える。
【0023】
請求項
5記載の発明の距離測定装置は、請求項
4記載の光走査装置と、前記光源から光ビームが出力されてから前記光検出
器で検出されるまでの時間に基づいて、前記対象物までの距離を算出する距離算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、部品点数を増加させることなく、受光素子上における反射ビームの像が回転するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】距離測定装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る投光ミラーの斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る投光ミラーの断面図である。
【
図5】平面ミラーの反射による像について説明するための図である。
【
図6】直角ミラー面の反射による像の反転について説明するための図である。
【
図7】投光ミラーによる投光ビームの反転について説明するための図である。
【
図8】第2実施形態に係る投光ミラーの平面図である。
【
図9】第2実施形態に係る投光ミラーの平面図である。
【
図10】第2実施形態に係る投光ミラーの平面図である。
【
図11】従来における投光ミラーにより反射される像について説明するための図である。
【
図12】従来における投光ミラーにより反射される像について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、第1実施形態に係る距離測定装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る距離測定装置10の構成図である。
図1に示すように、距離測定装置10は、光走査装置12及び制御部14を備えている。
【0028】
光走査装置12は、制御部14からの指示により、予め定めた監視領域を走査する投光ビームL1を出射すると共に、前記監視領域に存在する対象物Fからの反射ビームL2を受光する。
【0029】
本実施形態では、距離測定装置10は、一例としてレーザ光により走査を行って対象物Fまでの距離を測定するレーザレーダ装置である場合について説明する。
【0030】
光走査装置12は、レーザ光源16、走査光学系18、及び光検出器20を備えている。
【0031】
制御部14は、CPU、ROM、RAM、入出力部(I/O)を備えたコンピュータとして構成されている。制御部14は、レーザ光源16、走査光学系18、及び光検出器20を制御して、投光ビームL1を監視領域に向けて投光させると共に反射ビームL2を受光させ、投光ビームL1を受光してから反射ビームL2を光検出器20が受光するまでの遅延時間に基づいて、対象物Fまでの距離を算出する。
【0032】
図2は、走査光学系18の構成図である。
図2に示すように、走査光学系18は、コリメートレンズ22、投光ミラー24、回転モータ26、受光ミラー28、及び受光レンズ30を備えている。
【0033】
レーザ光源16は、例えば半導体レーザ等を含んで構成され、制御部14からの指示によりレーザ光を出射する。なお、本実施形態ではレーザ光源は一例として高出力の半導体レーザを含んで構成され、出射されるレーザ光のビーム形状が細長い形状の場合について説明する。
【0034】
コリメートレンズ22は、レーザ光源16から出射されたレーザ光を平行光にする。
【0035】
投光ミラー24は、レーザ光源16からの出射光の出射方向である矢印A方向(鉛直方向)に対して一例として45°(135°)傾いた角度で支持部32に取り付けられており、支持部32は回転モータ26に取り付けられている。また、受光ミラー28は、矢印A方向に対して一例として135°(45°)傾いた角度で支持部34に取り付けられており、支持部34は回転モータ26に取り付けられている。
【0036】
このように、受光ミラー28は、投光ミラー24を
図2において上下反転させた位置に配置されている。すなわち、受光ミラー28は、投光ミラー24を回転モータ26の回転軸Xに垂直な面に対して反転させた向きで設置されている。また、投光ミラー24及び受光ミラー28の形状は円盤状であり、
図2に示すように、投光ミラー24の直径は、受光ミラー28の直径よりも小さくなっている。
【0037】
回転モータ26は、制御部14の指示により回転駆動され、投光ミラー24及び受光ミラー28は、回転モータ26が回転することにより、回転軸Xを中心として一緒に回転する。
【0038】
そして、投光ミラー24は、レーザ光源16から矢印A方向に出射された投光ビームL1を矢印A方向と直交する矢印B1方向に反射させることにより、監視領域に向けて投光する。
【0039】
また、受光ミラー28は、監視領域の対象物Fに投光された投光ビームL1が対象物Fにより矢印A方向と直交する矢印B2方向へ反射された反射ビームL2を矢印A方向に反射させる。受光ミラー28によって矢印A方向に反射された反射ビームL2は、受光レンズ30によって光検出器20上に結像される。
【0040】
また、
図3には、投光ミラー24の斜視図を、
図4には投光ミラー24の断面図を示した。
図3、4に示すように、受光ミラー28の光反射面には、同一の深さの複数の溝が同一方向に沿って形成されており、それぞれの溝は、ダハ面、すなわち直角に交わる2つの面から成る直角ミラー面24Aとなっている。
【0041】
ここで、直角ミラー面24Aで反射した光が反転する現象について説明する。例えば
図5に示すように、光反射面36が平面であるプリズム38に入射した光の像40は、平面である光反射面36によって1回だけ反射される。このため、プリズム38から出射された光の像42の左右は反転しない。
【0042】
これに対し、
図6に示すように、光反射面44が直角ミラー面であるプリズム46に入射した光の像48は、直角ミラー面を構成する2つの直交する面によって2回反射される。このため、プリズム46から出射された光の像50は左右が反転した像となる。
【0043】
レーザ光源16から出射された出射光は、コリメートレンズ22によりコリメートされて投光ミラー24に照射されるが、投光ミラー24の光反射面は複数の直角ミラー面24Aが形成された構成となっている。このため、
図7に示すように、投光ミラー24に照射された投光ビームL1は矢印D方向へ反転し、監視領域の対象物Fに向けて反射される。すなわち、投光ミラー24が平面ミラーであった場合と比較して反対方向に投光ビームL1が回転する。
【0044】
像が反転した投光ビームL1は、対象物Fに照射され、その反射ビームL2は、受光ミラー28によって光検出器20へ向けて反射され、光検出器20上に結像される。
【0045】
上記のように、投光ミラー24が平面ミラーであった場合と比較して反対方向に投光ビームL1が回転するため、
図7に示すように、光検出器20上の像は、投光ミラー24及び受光ミラー28の回転によって変化せず、レーザ光源16から出射された投光ビームL1と同じ向きとなる。このため、光検出器20のサイズを、投光ビームL1の長軸以上の直径を有するサイズとする必要はなく、投光ビームL1のビーム形状と同様に細長い形状の光検出器を用いて効率良く反射ビームL2を検出することができる。これにより、応答速度やノイズが大きくなるのを防ぐことができる。
【0046】
また、投光ビームL1の形状を細長い形状にできるので、投光ビームL1の走査方向と直交する方向(鉛直方向)の監視領域を拡げることができる。また、光検出器20に受光素子アレイを用いて、鉛直方向に長い像を分解して受光することにより、一度に複数点の計測が可能となる。
【0047】
なお、本実施形態では、投光ミラー24の光反射面に複数の直角ミラー面24Aを設けた場合について説明したが、投光ミラー24を平面ミラーとし、受光ミラー28の光反射面に複数の直角ミラー面を備えた構成としてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、投光ミラー24の光反射面に複数の直角ミラー面24Aを設けた場合について説明したが、直角ミラー面24Aは複数に限らず一つでもよい。直角ミラー面24Aが少ない方が光のロスが少ないため、測定精度の悪化を抑えることができる。ただし、投光ビームL1の大きさを変えずに直角ミラー面24Aの数を減らすためには、直角ミラー面24Aにより形成される溝を深くしなければならないので、投光ミラー24のサイズは大きくなる。従って、投光ミラー24のサイズを小さくしたい場合には、溝が小さい直角ミラー面24Aを多数設ける方がよい。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部分については同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0051】
第1実施形態で説明した距離測定装置10は、投光ミラー24の光反射面が直角ミラー面24Aを備えた構造となっているので、光検出器20上で反射ビームL2の像が回転するのを防ぐことができる。
【0052】
しかしながら、投光ビームL1が走査方向に応じて回転してしまうことに変わりはない。例えば細長いビーム形状の投光ビームL1が、投光ミラー24により鉛直方向に最も長い縦長の形状で反射されるときの投光ミラー24の位置を投光ミラー24の正面とする。この状態から投光ミラー24が+90°又は−90°回転すると、投光ミラー24によって反射された投光ビームL1のビーム形状は、水平方向に長い横長の形状となる。このため、投光ミラー24が正面から+90°又は−90°回転した状態では、高さ方向(鉛直方向)における監視領域が狭くなってしまう。
【0053】
そこで、本実施形態では、投光ミラー24の回転角に関係なく投光ビームL1が鉛直方向に長い縦長のビーム形状を維持しながら走査することができる距離測定装置について説明する。
【0054】
図8には、本実施形態に係る投光ミラー24Bの平面図を示した。なお、投光ミラー24B以外の構成は第1実施形態と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0055】
図8に示すように、投光ミラー24Bは、第1の実施形態で説明したのと同様の複数の直角ミラー面を有する直角ミラー反射面24Cが投光ミラー24Bの周縁に沿って複数配置されている。レーザ光源16は、投光ミラー24Bの周縁の予め定めた位置Pの
図8の紙面に対して上方に設けられており、
図8において縦長の形状の投光ビームL1を位置Pに照射する。投光ミラー24Bに照射された縦長の投光ビームL1は、投光ミラー24Bが回転することにより、投光ミラー24Bの周縁に設けられた複数の直角ミラー反射面24Cにより順次反射される。
【0056】
ここで、
図8に示すように、投光ミラー24Bの中心H1とレーザ光源16から投光ビームL1が照射される位置Pとを結ぶ基準線60と、投光ミラー24Bの中心H1と直角ミラー反射面24Cの中心H2とを結ぶ線62と、が成す角度をθとすると、直角ミラー反射面24Cには、直角ミラー反射面24Cの軸方向(直角ミラー面により形成される溝の延伸方向)64と、中心H2を通り且つ基準線60と平行な方向66と、が成す角度αがθ/2となるように、複数の直角ミラー面(溝)が形成されている。
【0057】
図9に示すように、投光ビームL1が照射される位置Pにおける直角ミラー反射面24Cの軸方向が基準線60の延伸方向と同一方向の場合、位置Pにおける直角ミラー反射面24Cで反射した投光ビームL1は、
図9の紙面に対して垂直方向に長い縦長のビームとなる。
【0058】
そして、
図9の状態から投光ミラー24Bが回転し、
図10に示すように、投光ビームL1が照射される位置Pにおける直角ミラー反射面24Cの軸方向が基準線60の延伸方向と異なる方向となっても、位置Pにおける直角ミラー反射面24Cに照射された投光ビームL1は反転して反射されるため、この場合も投光ビームL1は、
図10の紙面に対して垂直方向に長い縦長のビームとなる。
【0059】
このように、投光ミラー24Bの中心H1とレーザ光源16から投光ビームL1が照射される位置Pとを結ぶ基準線60と、投光ミラー24Bの中心H1と直角ミラー反射面24Cの中心H2とを結ぶ線62と、が成す角度をθとして、直角ミラー反射面24Cの軸方向64と、中心H2を通り且つ基準線60と平行な方向66と、が成す角度αがθ/2となるように、複数の直角ミラー面を有する直角ミラー反射面24Cが投光ミラー24の周縁に複数設けられた構成となっている。
【0060】
このため、投光ミラー24Bを回転させて投光ビームL1を走査させた場合であっても、直角ミラー反射面24Cによって投光ビームL1が適切な方向に反転されるため、鉛直方向を保った状態で投光ビームL1を監視領域に対して照射することができる。
【0061】
なお、
図8に示すように、直角ミラー反射面24Cは、ある程度離散的に配置されていてもよいが、離散的に配置された直角ミラー反射面24C以外の部分で反射された投光ビームL1は若干回転してしまうため、なるべく軸方向が連続的に変化するように直角ミラー反射面24Cを設けることが好ましい。これにより、測定点が連続する場合でも鉛直方向を保った投光ビームL1を照射することができるため、精度良く測定することが可能となる。
【0062】
また、投光ビームL1が鉛直方向に長い縦長のビームを保つように照射した場合、光検出器20上では像が回転してしまうため、これを防ぐために、受光ミラー28を投光ミラー24と同一構造のミラーとしてもよい。すなわち、受光ミラー28の周縁に直角ミラー反射面24Cと同様の光反射面を複数設けた構成としてもよい。
【0063】
なお、上記各実施の形態で説明した走査光学系、光走査装置、及び距離測定装置の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内においてその構成を変更してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
10 距離測定装置
12 光走査装置
14 制御部
16 レーザ光源
18 走査光学系
20 光検出器
24、24B 投光ミラー
24 投光ミラー
24A 直角ミラー面
24C 光反射面
28 受光ミラー
60 基準線
64 軸方向