(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンおよびエンジンに取り付けられる過給機には、例えば、エンジンに設けられるオイルパンから潤滑油が供給される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示される技術では、エンジンより動力が伝達されて駆動するメインオイルポンプによって、エンジンおよび過給機に潤滑油を供給する。特許文献1に開示される技術では、メインオイルポンプが供給する潤滑油量が十分ではない場合(例えば、運転条件等によって潤滑油の粘度が高くなってしまい、通常よりも多い量の潤滑油が必要となる場合等)に補助オイルポンプを駆動させる。
【0004】
これにより、特許文献1に開示される技術では、メインオイルポンプでの潤滑油供給量の不足分を補助オイルポンプで補っている。
【0005】
ここで、エンジンに潤滑油を供給することにより、潤滑油には多くのスラッジが含まれてしまう。
【0006】
特許文献1に開示される技術では、エンジンおよび過給機に供給した潤滑油を同じオイルパンに戻す構成であるため、多くのスラッジが含まれた潤滑油を過給機に供給してしまうこととなる。
【0007】
この場合には、過給機のタービン軸を支持する軸受を効果的に潤滑できない可能性がある。従って、特許文献1に開示される技術では、過給機の機械効率を向上させることができない可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の一実施形態に係る潤滑油供給機構1について説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係るエンジンは、シリンダブロック110およびシリンダヘッド120等を具備する。エンジンのシリンダヘッド120の一側面には、過給機130が取り付けられる。
【0022】
エンジンは、例えば、自動車等の車両に搭載される。シリンダブロック110には、クランクシャフト112およびピストン114等が設けられる。シリンダヘッド120には、エキゾーストカムシャフト122およびインテークカムシャフト124等が設けられる。
【0023】
過給機130は、エンジンの吸引空気の圧力を高めるためのものである。本実施形態に係る過給機130は、エンジンの排気ガスを利用して空気を圧縮し、当該圧縮した空気をエンジン内に送るものである。過給機130は、ターボ式の過給機であり、ハウジング132内に配置されるタービン軸134、タービン軸134の中途部を支持する二つの軸受136・138、タービン軸134の両端部に支持されるホイール等を具備する(
図2参照)。
【0024】
なお、過給機の種類は、本実施形態に限定されるものでなく、例えば、エンジンの動力が伝達されて駆動する機械式の過給機であっても構わない。
【0025】
潤滑油供給機構1は、このようなエンジン(シリンダブロック110およびシリンダヘッド120)および過給機130に潤滑油A1・A2を供給するものである。
【0026】
潤滑油供給機構1は、ブロック側オイルパン10、ブロック側オイルポンプ12、ブロック側油路14、ヘッド側オイルパン20、ヘッド側オイルポンプ22、およびヘッド側油路24等を具備する。
【0027】
ブロック側オイルパン10は、シリンダブロック110の下部に取り付けられる。ブロック側オイルパン10には、潤滑油A1が貯溜される。
【0028】
ブロック側オイルポンプ12は、エンジンのシリンダブロック110内に配置される。ブロック側オイルポンプ12は、例えば、エンジンのクランクシャフト112と連結され、クランクシャフト112の回転によって駆動するトコロイドポンプ等によって構成される。つまり、ブロック側オイルポンプ12は、エンジンによって駆動されるとともに、当該エンジンの回転数に応じた回転数で駆動される。
【0029】
ブロック側オイルポンプ12内には、当該ブロック側オイルポンプ12の吐出圧に応じて、当該ブロック側オイルポンプ12の吐出側から吸入側へと潤滑油A1を戻すリリーフバルブ(不図示)が設けられる。
【0030】
ブロック側オイルポンプ12は、オイルストレーナ10aおよび配管等を介してブロック側オイルパン10と連通する。ブロック側オイルポンプ12は、エンジンの駆動によって駆動することでブロック側オイルパン10より潤滑油A1を吸引し、シリンダブロック110のクランクシャフト112等に向けて潤滑油A1を圧送する。
【0031】
ブロック側オイルポンプ12によって圧送される潤滑油A1は、オイルフィルター12aを介して、シリンダブロック110に形成される孔であるメインオイルホール(不図示)へと供給される。オイルフィルター12aには、当該オイルフィルター12aに目詰まりが生じた際に潤滑油A1を流通させるためのリリーフバルブ(不図示)が設けられる。
【0032】
シリンダブロック110のメインオイルホールに供給された潤滑油A1は、シリンダブロック110内に配置される部材、例えば、クランクシャフト112、ピストン114、チェーンテンショナー116、およびタイミングチェーン118等にそれぞれ分岐して供給される。
【0033】
つまり、シリンダブロック110には、メインオイルホールよりクランクシャフト112およびピストン114等に向けて分岐して伸びる複数の通路が形成されている。潤滑油A1は、当該各通路を通ってシリンダブロック110に供給される。
【0034】
潤滑油A1は、シリンダブロック110に供給された後でブロック側オイルパン10に回収される。
【0035】
つまり、シリンダブロック110には、クランクシャフト112およびピストン114等の下方よりブロック側オイルパン10に向けて伸びるとともに、ブロック側オイルパン10の上方で開口する通路として、オイル落とし(不図示)が形成されている。潤滑油A1は、当該オイル落としを通ってブロック側オイルパン10に回収される。
【0036】
ブロック側油路14は、ブロック側オイルパン10からシリンダブロック110のクランクシャフト112およびピストン114等に供給され、その後、ブロック側オイルパン10に回収されるまでの潤滑油A1の経路である。
【0037】
つまり、本実施形態に係るブロック側油路14は、ブロック側オイルポンプ12とオイルストレーナ10aとを連通する配管、シリンダブロック110のメインオイルホール、シリンダブロック110に形成される各通路、およびオイル落とし等によって構成される。
【0038】
このように、本実施形態に係るブロック側油路14は、エンジンのシリンダブロック110に潤滑油A1を供給するための第一の油路として機能する。
【0039】
また、本実施形態に係るブロック側オイルパン10は、ブロック側油路14の経路上に配置され、ブロック側油路14を流れる潤滑油A1が貯溜される第一のオイルパンとして機能する。
【0040】
ヘッド側オイルパン20は、例えば、エンジンの過給機130が取り付けられる側面と同じ面に取り付けられ、過給機130の下方に配置される。つまり、ヘッド側オイルパン20は、エンジンのシリンダヘッド120一側面に取り付けられる。ヘッド側オイルパン20には、潤滑油A2が貯溜される。
【0041】
ヘッド側オイルポンプ22は、市販の電動式のポンプによって構成される。ヘッド側オイルポンプ22は、例えば、車両に搭載されるECU(Engine Control Unit)およびバッテリ(不図示)と電気的に接続され、ECUからの電気信号によってバッテリから電圧が印加されて駆動する。
【0042】
本実施形態に係るヘッド側オイルポンプ22は、ヘッド側オイルパン20の内側、より詳細には、ヘッド側オイルパン20の潤滑油A2に浸かった状態で配置される。ヘッド側オイルポンプ22は、配管等を介してシリンダヘッド120に形成される孔であるオイルホール(不図示)と連通する。
【0043】
ヘッド側オイルポンプ22は、駆動することでヘッド側オイルパン20よりシリンダヘッド120に向けて潤滑油A2を圧送する。
【0044】
つまり、本実施形態に係るヘッド側オイルポンプ22は、ヘッド側オイルパン20に貯溜される潤滑油A2を圧送するオイルポンプとして機能する。
【0045】
ヘッド側オイルポンプ22によって圧送される潤滑油A2は、シリンダヘッド120のオイルホールを通ってシリンダヘッド120内に配置される部材、例えば、エキゾーストカムシャフト122およびインテークカムシャフト124等にそれぞれ分岐して供給される。
【0046】
つまり、シリンダヘッド120には、オイルホールよりシリンダヘッド120のエキゾーストカムシャフト122およびインテークカムシャフト124等に向けて分岐して伸びる複数の通路が形成されている。潤滑油A2は、当該各通路を通ってシリンダヘッド120に供給される。
【0047】
潤滑油A2は、シリンダヘッド120に供給された後でヘッド側オイルパン20に回収される。
【0048】
つまり、シリンダヘッド120には、エキゾーストカムシャフト122およびインテークカムシャフト124等の下方よりヘッド側オイルパン20に向けて伸びるとともにヘッド側オイルパン20と連通する通路として、オイル落とし(不図示)が形成されている。潤滑油A2は、当該オイル落としを通ってヘッド側オイルパン20に回収される。
【0049】
また、
図1および
図2に示すように、ヘッド側オイルポンプ22によって圧送される潤滑油A2は、シリンダヘッド120のオイルホールを通って過給機130内に配置される部材、例えば、ハウジング132内のタービン軸134を支持する二つの軸受136・138等にもそれぞれ分岐して供給される。
【0050】
つまり、シリンダヘッド120には、オイルホールより過給機130に向けて分岐して伸びる通路(不図示)が形成されている。過給機130のハウジング132には、前記シリンダヘッド120の通路と連通し、軸受136・138等に向けて分岐して伸びる通路(不図示)が形成されている。潤滑油A2は、当該各通路を通って過給機130に供給される(
図2の上側に示す矢印A2参照)。
【0051】
潤滑油A2は、過給機130に供給された後でヘッド側オイルパン20に回収される。
【0052】
つまり、過給機130には、軸受136・138等の下方よりヘッド側オイルパン20に向けて伸びるとともに、ヘッド側オイルパン20の上方で開口する通路として、オイル落とし(不図示)が形成されている。潤滑油A2は、当該オイル落としを通ってヘッド側オイルパン20に回収される(
図2の下側に示す矢印A2参照)。
【0053】
ヘッド側油路24は、ヘッド側オイルパン20からシリンダヘッド120および過給機130に供給され、その後、ヘッド側オイルパン20に回収されるまでの潤滑油A2の経路である。
【0054】
つまり、本実施形態に係るヘッド側油路24は、ヘッド側オイルポンプ22とシリンダヘッド120とを連通する配管、シリンダヘッド120のオイルホール、シリンダヘッド120および過給機130の各通路、およびオイル落とし等によって構成される。
【0055】
このように、本実施形態に係るヘッド側油路24は、過給機130に潤滑油A2を供給するための第二の油路として機能する。
【0056】
また、本実施形態に係るヘッド側オイルパン20は、ヘッド側油路24の経路上に配置され、ヘッド側油路24を流れる潤滑油A2が貯溜される第二のオイルパンとして機能する。
【0057】
本実施形態に係るヘッド側オイルパン20は、過給機130の下方に配置されている。
【0058】
このため、潤滑油供給機構1は、過給機130の軸受136・138等を潤滑した潤滑油A2を自重によって落下させるだけで、潤滑油A2をヘッド側オイルパン20に戻すことができる。
【0059】
従って、潤滑油供給機構1は、効率的に(別途ポンプ等によってヘッド側オイルパン20に圧送することなく)潤滑油A2を回収できる。
【0060】
ここで、シリンダブロック110に潤滑油A1を供給することにより、潤滑油A1には多くのスラッジが含まれてしまう。
【0061】
そこで、本実施形態に係る潤滑油供給機構1は、一つの油路を分岐させてシリンダブロック110および過給機130に一つのオイルパンの潤滑油を供給するのではなく、独立した二つの油路14・24より二つのオイルパン10・20の潤滑油A1・A2を別々に供給する構成としている。
【0062】
つまり、本実施形態に係る潤滑油供給機構1は、シリンダブロック110に供給される潤滑油A1が過給機130に供給されることがないように、潤滑油の油路を二つに分けている。
【0063】
これによれば、潤滑油供給機構1は、スラッジが多く含まれる潤滑油A1をシリンダブロック110だけに供給することとなる。つまり、潤滑油供給機構1は、スラッジが多く含まれない潤滑油A2を過給機130に供給できる。
【0064】
このため、潤滑油供給機構1は、過給機130のタービン軸134を支持する軸受136・138を効果的に潤滑できるとともに、軸受136・138でのコーキングの発生を抑制できる。
【0065】
従って、潤滑油供給機構1は、過給機130に供給する潤滑油A2の耐酸化劣化性を向上できる。
【0066】
つまり、潤滑油供給機構1は、過給機130の機械効率を向上させることができる。
【0067】
このように、潤滑油供給機構1は、ブロック側油路14とヘッド側油路24とを互いに独立した油路として構成する。
【0068】
前述のように、本実施形態に係るヘッド側オイルポンプ22は、ヘッド側オイルパン20に貯溜される潤滑油A2に浸かった状態で配置されている。
【0069】
これによれば、潤滑油供給機構1は、低温環境下に置かれたエンジンを駆動させるとき等において、ヘッド側オイルポンプ22の発熱を利用して、ヘッド側オイルパン20の潤滑油A2を温めることができる。
【0070】
従って、潤滑油供給機構1は、低温環境下においても速やかに潤滑油A2の粘度を下げることができるため、過給機130のフリクションを低減できる。
【0071】
なお、本発明に係るオイルポンプ(本実施形態に係るヘッド側オイルポンプ22)は、駆動時に第二のオイルパン(本実施形態に係るヘッド側オイルパン20)内の空気を吸引しない程度に、第二のオイルパンの潤滑油に浸かっていればよい。
【0072】
つまり、本実施形態において、「潤滑油A2に浸かった状態」とは、ヘッド側オイルポンプ22の吸引口が、ヘッド側オイルポンプ22の駆動時に潤滑油A2に浸かっている状態を指す。従って、ヘッド側オイルポンプ22は、駆動時に必ずしも全体がヘッド側オイルパン20の潤滑油A2に浸かっている状態でなくてもよく、例えば、駆動時に上端部が油面から出ていても構わない。
【0073】
潤滑油供給機構1は、このようなヘッド側オイルポンプ22として電動式のオイルポンプを採用している。
【0074】
これによれば、ヘッド側オイルポンプ22は、印加電圧に応じた量の潤滑油A2を圧送できる。
【0075】
このため、ヘッド側オイルポンプ22は、クランクシャフト112の回転数、すなわち、エンジンの運転状態に関わらず、過給機130に潤滑油A2を安定して供給できる。つまり、ヘッド側オイルポンプ22は、過給機130に対して、常に適正量に調整された潤滑油A2を供給できる。
【0076】
従って、潤滑油供給機構1は、過給機130のフリクションを低減できるため、過給機130の機械効率を効果的に向上させることができる。
【0077】
また、潤滑油供給機構1は、ヘッド側オイルパン20に貯溜されている潤滑油A2によってヘッド側オイルポンプ22を冷却することができる。従って、潤滑油供給機構1は、ヘッド側オイルポンプ22の冷却効率を向上できる。
【0078】
さらに、潤滑油供給機構1は、ヘッド側オイルポンプ22をヘッド側オイルパン20から離れた位置に配置した場合と比較して、ヘッド側オイルポンプ22に潤滑油A2の漏れを防止するためのシール部材を取り付ける必要がなくなる。
【0079】
つまり、潤滑油供給機構1は、電動式のヘッド側オイルポンプ22をヘッド側オイルパン20の潤滑油A2に浸かった状態で配置することにより、過給機130の機械効率を向上させることができるだけでなく、ヘッド側オイルポンプ22の長寿命化および部品点数の削減を実現できる。
【0080】
本実施形態に係る潤滑油供給機構1は、過給機130を潤滑する潤滑油A2を、シリンダヘッド120にも供給している。
【0081】
これによれば、潤滑油供給機構1は、スラッジが多く含まれない潤滑油A2をシリンダヘッド120に供給できる。このため、潤滑油供給機構1は、シリンダヘッド120のエキゾーストカムシャフト122およびインテークカムシャフト124等を効果的に潤滑できる。
【0082】
従って、潤滑油供給機構1は、シリンダヘッド120に供給する潤滑油A2の耐酸化劣化性を向上できる。
【0083】
つまり、潤滑油供給機構1は、シリンダヘッド120内に配置される部材(例えば、エキゾーストカムシャフト122およびインテークカムシャフト124等)機械効率を向上させることができる。
【0084】
このように、ヘッド側油路24は、エンジンのシリンダヘッド120に、ヘッド側オイルパン20に貯溜される潤滑油A2を供給するための油路として形成される。
【0085】
なお、潤滑油供給機構の構成は、シリンダブロックに供給する潤滑油の油路と過給機に供給する潤滑油の油路とが隔絶されていればよく、本実施形態に限定されるものでない。
【0086】
例えば、潤滑油供給機構は、
図3に示す別実施形態に係る潤滑油供給機構201のように、シリンダブロック110およびシリンダヘッド120に潤滑油A201を供給する第一の油路214と、過給機130だけに潤滑油A202を供給する第二の油路224とを具備していても構わない。