特許第6259905号(P6259905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6259905血圧降下治療をガイドするアドレノメジュリン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6259905
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】血圧降下治療をガイドするアドレノメジュリン
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20171227BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20171227BHJP
   A61P 7/08 20060101ALI20171227BHJP
   A61P 9/02 20060101ALI20171227BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20171227BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20171227BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20171227BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20171227BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20171227BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20171227BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20171227BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20171227BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20171227BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20171227BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20171227BHJP
【FI】
   G01N33/53 BZNA
   G01N33/543 501A
   A61P7/08
   A61P9/02
   A61P7/00
   A61P31/00
   A61P9/04
   A61P9/00
   A61P9/10
   A61P9/06
   A61P17/02
   A61P13/12
   A61K45/00
   !C07K14/47
   !C12N15/00 A
【請求項の数】28
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-504582(P2016-504582)
(86)(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公表番号】特表2016-521351(P2016-521351A)
(43)【公表日】2016年7月21日
(86)【国際出願番号】EP2014055554
(87)【国際公開番号】WO2014147153
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2016年2月2日
(31)【優先権主張番号】13160265.8
(32)【優先日】2013年3月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514122524
【氏名又は名称】シュピーンゴテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ベルクマン
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−196693(JP,A)
【文献】 特表2008−525110(JP,A)
【文献】 M. R. Nandalur et al.,Vasopressor use in the critical care unit for treatment of persistent post-carotid artery stent induced hypotension,neurocritical care ,2007年 8月 1日,Vol.7,No.3,PP.232-237
【文献】 A. S. Belloni et al.,Proadrenomedullin-derived peptides as autocrine-paracrine regulators of cell growth,Histology and Histopathology,2001年,Vol.16,PP.1263-1274
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法であって:
・該対象の体液中の、proADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定する工程;
・該レベルを、該対象の輸液蘇生又は昇圧剤投与の必要性と相関させる工程:を含み、ここで該対象は、該対象の体液中のproADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルが閾値を上回る場合に、かかる必要性を有するものとして確定される方法。
【請求項2】
前記proADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片が、成熟ADM(配列番号:4)及び/又は成熟ADM 1−52−Gly(配列番号:5)及びMR−proADM(配列番号:3)及びCT−ADM(配列番号:6)を含む群から選択される、請求項1記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項3】
成熟ADM(配列番号:4)免疫反応性のレベル及び/又は成熟ADM 1−52−Gly(配列番号:5)−免疫反応性のレベル又はMR−proADM(配列番号:3)免疫反応性のレベル又はCT−ADM(配列番号:6)免疫反応性のレベルのいずれかが、輸液蘇生又は昇圧剤投与の該患者の必要性を決定し且つこれと相関され、ここで該患者が、該対象の体液中の成熟ADM(配列番号:4)免疫反応性のレベル及び/又は成熟ADM 1−52−Gly(配列番号:5)−免疫反応性のレベル又はMR−proADM(配列番号:3)免疫反応性のレベル又はCT−ADM(配列番号:6)免疫反応性のレベルが閾値を上回る場合に、かかる必要性を有するものとして確定される、請求項1又は2記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項4】
pro−ADM(配列番号:1)又はそれらの断片のレベルが、成熟ADM(配列番号:4)及び/又は成熟ADM 1−52−Gly(配列番号:5)の列内に構成される領域に結合するバインダー、及び成熟ADM(配列番号:4)及び/又は成熟ADM 1−52−Gly(配列番号:5)の列内に構成される領域に結合する第二のバインダーの群から選択される少なくとも1種のバインダーを使用することにより決定される、請求項1〜3のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項5】
pro−ADM(配列番号:1)及び/又はそれらの断片のレベルが、MR−proADM(配列番号:3)の列内に構成される領域に結合するバインダー、及びMR−proADM(配列番号:3)の列内に構成される領域に結合する第二のバインダーの群から選択される少なくとも1種のバインダーを使用することにより決定される、請求項1〜3のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項6】
pro−ADM(配列番号:1)及び/又はそれらの断片のレベルが、CT−proADM(配列番号:6)の列内に構成される領域に結合するバインダー、及びCT−proADM(配列番号:6)の列内に構成される領域に結合する第二のバインダーの群から選択される少なくとも1種のバインダーを使用することにより決定される、請求項1〜3のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項7】
アッセイが、proADM(配列番号:l)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定するために使用され、ここで該アッセイのアッセイ感度は、健常対象のADMを定量することができ、且つ<70pg/mlある、請求項1〜6のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項8】
前記アッセイのアッセイ感度が<40pg/mlである、請求項7に記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項9】
前記アッセイのアッセイ感度が<10pg/mlである、請求項7に記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項10】
前記バインダーが、proADM(配列番号:1)及び/又はそれらの断片への少なくとも107-1の結合親和性を示す、請求項4〜のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項11】
前記バインダーが、proADM(配列番号:1)及び/又はそれらの断片へ結合する抗体又は抗体断片又は非−Igスカフォールドを含む群から選択される、請求項4〜10のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項12】
アッセイが、proADM(配列番号:l)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定するために使用され、ここでかかるアッセイが、サンドイッチアッセイある、請求項1〜11のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項13】
前記アッセイが、完全に自動化されたアッセイである、請求項12に記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項14】
前記2種のバインダーの少なくとも1種が、検出されるために標識されている、請求項4〜13のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項15】
前記2種のバインダーの少なくとも1種が、固相に結合されている、請求項4〜14のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項16】
血漿ADMの閾値90pg/ml適用される、請求項1〜15のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項17】
血漿ADMの閾値70pg/mlが適用される、請求項1〜16のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項18】
血漿MR−proADM(配列番号:3)の閾値0.9nmol/L適用される、請求項1〜15のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項19】
血漿MR−proADM(配列番号:3)の閾値0.7nmol/Lが適用される、請求項1〜15のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項20】
前記試料が、ヒトクエン酸血漿、ヘパリン血漿、EDTA血漿、全血、血清を含む群から選択される、請求項1〜19のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項21】
前記患者が、該対象の体液中のproADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルが、閾値を上回る場合、並びに患者が、平均動脈圧(MAP)>66mmHg有する場合に、かかる必要性を有するものとして確定される、請求項1〜20のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項22】
前記患者が、該対象の体液中のproADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルが、閾値を上回る場合、並びに患者が、平均動脈圧(MAP)>70mmHgを有する場合に、かかる必要性を有するものとして確定される、請求項1〜20のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法であって:
・該対象の体液中の、proADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定する工程;
・該レベルを、患者の平均動脈圧とは無関係に輸液蘇生又は昇圧剤投与の必要性と相関させる工程:を含み、ここで該患者は、該対象の体液中のproADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルが閾値を上回る場合に、かかる必要性を有するものとして確定される方法。
【請求項24】
請求項1〜22のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法であって:
・該対象の体液中の、proADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定する工程;
・該レベルを、輸液蘇生又は昇圧剤療法を開始するための、患者の平均動脈圧の介入閾値を70mmHgで上昇する必要性と相関させる工程:を含み、ここで該患者は、該対象の体液中のproADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルが閾値を上回る場合に、かかる必要性を有するものとして確定される方法。
【請求項25】
請求項1〜22のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法であって:
・該対象の体液中の、proADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定する工程;
・該レベルを、輸液蘇生又は昇圧剤療法を開始するための、患者の平均動脈圧の介入閾値を75mmHgまで上昇する必要性と相関させる工程:を含み、ここで該患者は、該対象の体液中のproADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルが閾値を上回る場合に、かかる必要性を有するものとして確定される方法。
【請求項26】
請求項1〜22のいずれか記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法であって:
・該対象の体液中の、proADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定する工程;
・該レベルを、輸液蘇生又は昇圧剤療法を開始するための、患者の平均動脈圧の介入閾値を80mmHgまで上昇する必要性と相関させる工程:を含み、ここで該患者は、該対象の体液中のproADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルが閾値を上回る場合に、かかる必要性を有するものとして確定される方法。
【請求項27】
前記対象が、敗血症性ショック、心原性ショック及びアナフィラキシーショックを含む、生理的ショック状態;感染症、敗血症、心不全、心肺停止、心臓外科術後、右心室梗塞、徐脈性不整脈、多発性外傷、火傷、腎損傷の徴候を示すか又はこれらの状態に罹患している、請求項1〜26のいずれか記載の昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法。
【請求項28】
求項1〜27のいずれか記載の方法に従い確定される、昇圧剤投与の必要性のある対象においてショックの治療又は予防のための昇圧剤であって、昇圧剤が、アドレナリン、カテコールアミン、ホスフォジエステラーゼ阻害剤、バゾプレシン、レボシメンダン、バゾプレシンV1受容体アゴニスト、抗アドレノメデュリン抗体、ATP依存性K+チャネル阻害剤、NOS阻害剤、及びc−GMP阻害剤からなる群から選ばれる、前記昇圧剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、輸液蘇生又は昇圧剤の投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法であって:
・該対象の体液中の、proADM及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定する工程;
・該レベルを、該患者の輸液蘇生又は昇圧剤投与の必要性と相関させる工程:を含み、ここで該患者は、該対象の体液中のproADM及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルが閾値を上回る場合に、かかる必要性を有するものとして確定される方法である。
【背景技術】
【0002】
ペプチドアドレノメジュリン(ADM)は、ヒト褐色細胞腫から単離された、52個のアミノ酸を含む新規血圧降下ペプチドとして、最初に、Kitamuraらにより説明された(参照1;数値データは添付された参考文献を基にしている)。同じ年に、185個のアミノ酸を含む前駆体ペプチドをコードしているcDNA及びこの前駆体ペプチドの完全アミノ酸配列も、説明された。とりわけN−末端に21個のアミノ酸のシグナル配列を含む、前駆体ペプチドは、「プレプロアドレノメジュリン」(pre−proADM)と称される。Pre−proADMは、185個のアミノ酸を含む。成熟ADMは、配列番号:4に示され、ADM−Glyは配列番号:5に示されている。
【0003】
成熟ペプチドアドレノメジュリン(ADM)は、52個のアミノ酸を含み(配列番号:4)、且つこれはpre−proADMからタンパク質分解性切断により形成され、pre−proADMのアミノ酸95〜146を含む、アミド化されたペプチドである。今日まで、pre−proADMの切断において形成されたペプチド断片の実質的にごくわずかな断片が、より正確に特徴づけられ、特に生理活性ペプチドのアドレノメジュリン(ADM)、及び、20個のアミノ酸(22−41)を含むペプチドで、これにpre−proADMにおけるシグナルペプチドの21個のアミノ酸が続く「PAMP」である。ADM及びPAMPの両方に関して、生理活性のある亜−断片が、さらに発見され、より詳細に調べられている。1993年のADMの発見及び特徴決定は、活性の集中的研究及び溢れるような刊行物の引き金となり、その結果が様々な総説記事において最近まとめられ、本説明の文脈において、ADMに充てられた「ペプチド」号(Peptides 22 (2001))において認められた記事、特に(2)及び(3)が、特に参照された。更なる総説は、文献(4)である。今日までの科学的研究において、とりわけ、ADMは、多機能性制御ペプチドとみなすことができることがわかった。これは、循環血中に、グリシンにより延長された不活性型で放出される(5)。また、ADMに特異的であり且つADMの作用を恐らく調節する結合タンパク質(6)も、存在する。
【0004】
これまでの研究で最も重要であるADMに加えPAMPのこれらの生理作用は、血圧へ影響を及ぼす作用であった。したがって、ADMは、効果的血管拡張薬であり、これは、特にADMのC−末端部分のペプチドセグメントによる血圧降下作用に関連することが可能である。
【0005】
さらに、pre−proADMから形成された上述の更なる生理活性ペプチドPAMPは、ADMの作用機序とは異なる作用機序を有するように見えたとしても、PAMPは血圧降下作用を同様に示すことがわかった(上述の総説記事(3)及び(4)に加え、(7)、(8)又は(9)及び(10)参照)。
【0006】
さらに、循環血及び他の生物学的液体中で測定され得るADMの濃度は、数多くの病態において、対照健常者において認められる濃度を有意に上回っていることがわかった。したがって、うっ血性心不全、心筋梗塞、腎疾患、高血圧障害、糖尿病、ショックの急急性期並びに敗血症及び敗血症性ショックの患者におけるADMレベルは、様々な程度であるが、有意に増加した。またPAMP濃度も、該病態の一部において増加したが、それらの血漿レベルは、ADMに比べ低下した((3);1702頁)。
【0007】
通常ADMの高い濃度が、敗血症又は敗血症性ショックにおいて認められることが、さらに知られている((3)及び(11)、(12)、(13)、(14)及び(15)参照)。これらの知見は、敗血症及び他の重症症候群、例えばSIRSなどの患者における疾患経過の典型的現象として知られている典型的血行動態変化に関連付けられている。
【0008】
ADM及びPAMPは、これらのペプチドに相当するアミノ酸配列が等モル量の部分ペプチドとして存在するpre−proADMである同じ前駆体ペプチドから形成されると推定されるが、生物学的液体中で測定可能なADM又はPAMPの濃度は、明らかに異なる。このことは、特別なことではない。
【0009】
したがって、一種の及び同じ前駆体ペプチドの異なる分解産物の測定可能な濃度は異なって良く、例えばその理由は、これらは、例えば異なる病態の症例において、前駆体ペプチドの異なる断片化に繋がり、その結果異なる分解産物に繋がるような、異なる競合する分解経路の結果であるからである。前駆体ペプチドに含まれる特定の部分ペプチドは、遊離ペプチドとして形成されるか、又は形成されなくてよく、及び/又は異なるペプチドが、異なる様式で及び異なる量で形成される。前駆体ペプチドのプロセッシングのために例えただ一つの分解経路がとられ、その結果全ての分解産物が一種の及び同じ前駆体ペプチドから生じ、且つ主に等モル量でそれら自身形成されなければならないとしても、すなわち例えば、各生物学的液体中でそれらの個々のものが異なる速度で形成され及び/又は異なる個別の安定性(寿命)を有する場合、或いはこれらが異なるクリアランス機序を基に及び/又は異なるクリアランス率で循環から除去されるならば、生物学的液体中で測定可能な異なる部分ペプチド及び断片の定常状態濃度は、非常に異なってよい。
【0010】
アドレノメジュリンは、敗血症発症時((16)、(17))、並びに多くの急性及び慢性疾患において((18)、(4))、中心的役割を果たす。
ADMのコグネート前駆体ペプチドのより安定した断片の決定により、ADMを、直接又は間接のいずれかで循環ADMレベルを測定する、いくつかの方法が説明されている。ごく最近になって、循環成熟ADMを測定するアッセイを説明する方法が公開された(Di Somma S, Magrini L, Travaglino F, Lalle I, Fiotti N, Cervellin G, Avanzi GC, Lupia E, Maisel A, Hein Fら:「救急診療部における感染症及び敗血症管理のためのバイオマーカーの革新的方法に関する見解(Opinion paper on innovative approach of biomakers for infectious diseases and sepsis management in the emergency department)」、Clinical chemistry and laboratory medicine: CCLM / FESCC 2013: 1-9.)。
【0011】
ADM前駆体由来の断片を定量する他の方法が、例えば、MR−proADMの測定(Morgenthaler NG, Struck J, Alonso C, Bergmann A.:Clin Chem. 2005年10月;51 (10): 1823-9.)、PAMPの測定(Washimine H, Kitamura K, Ichiki Y, Yamamoto Y, Kangawa K, Matsuo H, Eto T.:Biochem Biophys Res Commun. 1994年7月29日;202(2):1081-7.)、CT−proADMの測定(EP211552)について説明されている。MR−proADM測定のための市販のアッセイが、利用可能である(BRAHMS MR-proADM KRYPTOR;BRAHMS社、へニッヒスドルフ、独国) (Clin Biochem. 2009年5月;42(7-8):725-8. doi: 10.1016/j.clinbiochem.2009.01.002. Epub 2009 Jan 23)。
【0012】
血漿中の中央領域(midregional)プロアドレノメジュリンの測定のための均一時間分解蛍光免疫測定は、完全自動化システムB.R.A.H.M.S KRYPTOR上である(Caruhel P, Mazier C, Kunde J, Morgenthaler NG, Darbouret B.)。これらのペプチドは同じ前駆体から化学量論的比で生成されるので、これらの血漿レベルは、ある程度相関している。
【0013】
わずかに数種の研究において、血漿ADMが、全身炎症、敗血症、重症敗血症又は敗血症性ショックを伴う患者において測定されており、そのレベルは、血行動態パラメータと相関している;
Hirataらの研究において、敗血症患者の血漿ADMは、心拍数、右動脈圧と相関するが、平均動脈圧(MAP)とは相関しないことがわかった(Hirata Y, Mitaka C, Sato K, Nagura T, Tsunoda Y, Amaha K, Marumo F:「敗血症において増加した循環アドレノメジュリン、新規血管拡張ペプチド」、The Journal of clinical endocrinology and metabolism 1996, 81(4): 1449-1453)。
Nishioらは、敗血症性ショック患者において、ADMの増加した血漿濃度は、血管緊張の緩和と相関する(心係数、1回拍出量係数、心拍数、拡張期血圧の低下、体血管抵抗指数及び肺血管抵抗指数と相関)が、平均血圧との有意な相関は存在しないことを報告した[19]。
運動中の健常対象において、血漿ADM及びMAPの有意な負の相関が認められた[20]。
【0014】
いずれも、ショックを発症している患者における、pro−ADM若しくはそれらの断片としての循環ADM又は関連ペプチドのレベルと、輸液蘇生及び昇圧剤の必要要件の関係については、わからなかった。昇圧剤は通常、患者の状態が非常に重篤である場合に非常に遅れて投与されるので、これに関する医学的必要性は、満たされていない。患者の状態が非常に重篤になる前に輸液蘇生及び昇圧剤を必要とするそのような患者を確定する医学的必要性は、満たされていない。ガイドラインが推奨する、カットオフ値65mmHgを適用する血圧測定によるよりも早く、輸液蘇生及び昇圧剤療法の必要性を予測する医学的必要性は、満たされていない[21]。血圧が降下したならば、これは、減少した酸素供給、臓器不全及び死亡につながる。したがって、血圧降下を発症するリスクのある患者を早くに確定する必要性は、満たされていない。そのような患者がより早く確定されたならば、他方例えば平均動脈圧についてより高いカットオフ値を、輸液蘇生及び昇圧剤療法の開始に適用することができる。より高い閾値レベルとは、<70mmHg、好ましくは<75mmHgである。これは、65mmHgを上回る時点で既に治療が始まることを意味する。
【発明の概要】
【0015】
本発明の主題は、輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法であって:
・該対象の体液中の、proADM及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定する工程;
・該レベルを、該対象又は患者の輸液蘇生又は昇圧剤投与の必要性と相関させる工程:を含み、ここで該対象又は患者は、該対象の体液中のproADM及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルが閾値を上回る場合に、かかる必要性を有するものとして確定される方法である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の方法の一実施態様において、対象は、平均動脈圧>65mmHgを有する。さらに、該対象は、平均動脈圧<75mmgHgを、別の実施態様において<70mmgHgを有する。
【0017】
本発明の一実施態様において、該方法は、輸液蘇生又は昇圧剤投与の早期確定の方法であり、ここでより早期とは、カットオフ値65mmgHgを適用する血圧測定によるよりもより早いこと、又は血圧の65mmgHgへの低下以前を意味する。
本発明の体液は、特定の実施態様において、血液試料である。血液試料は、全血、血清及び血漿を含む群から選択され得る。
【0018】
本発明の具体的実施態様において、該proADM及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片は、下記を含む群から選択される:
配列番号:1 (proADM):164個のアミノ酸(preproADMの22-185)
ARLDVASEF RKKWNKWALS RGKRELRMSS SYPTGLADVK AGPAQTLIRP QDMKGASRSP EDSSPDAARI RVRYRQSMN NFQGLRSFGC RFGTCTVQKL AHQIYQFTDK DKDNVAPRSK ISPQGYGRRR RRSLPEAGPG RTLVSSKPQA HGAPAPPSGS APHFL
配列番号:2(プロアドレノメジュリンN-20末端ペプチド):ペプチド22-41
ARLDVASEF RKKWNKWALS R
配列番号:3(中央領域アドレノメジュリン、MR-proADM):ペプチド45-92
ELRMSS SYPTGLADVK AGPAQTLIRP QDMKGASRSP EDSSPDAARIRV
配列番号:4(成熟アドレノメジュリン(成熟ADM);アミド化):ペプチド95-146-CONH2
YRQSMN NFQGLRSFGC RFGTCTVQKL AHQIYQFTDK DKDNVAPRSK ISPQGY-CONH2
配列番号:5(アドレノメジュリン1-52-Gly(ADM 1-52-Gly)):ペプチド95-147
YRQSMN NFQGLRSFGC RFGTCTVQKL AHQIYQFTDK DKDNVAPRSK ISPQGYG
配列番号:6(C-末端プロアドレノメジュリン、CT-proADM):ペプチド148-185
RRR RRSLPEAGPG RTLVSSKPQA HGAPAPPSGS APHFL
【0019】
本発明の具体的実施態様において、該proADM及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片は、成熟ADM(配列番号:4)及び/又は成熟ADM 1−52−Gly(配列番号:5)及びMR−proADM(配列番号:3)及びCT−ADM(配列番号:6)を含む群から選択される。
【0020】
本発明の具体的実施態様において、成熟ADM(配列番号:4)及び/若しくは成熟ADM 1−52−Gly(配列番号:5)−免疫反応性のレベル又はMR−proADM(配列番号:3)免疫反応性のレベル又はCT−ADM(配列番号:6)免疫反応性のレベルのいずれかが、輸液蘇生又は昇圧剤投与の該患者の必要性を決定し且つこれと相関され、ここで該患者は、該対象の体液中の成熟ADM(配列番号:4)及び/若しくは成熟ADM 1−52−Gly(配列番号:5)−免疫反応性のレベル又はMR−proADM(配列番号:3)免疫反応性のレベル又はCT−ADM(配列番号:6)免疫反応性のレベルが閾値を上回る場合に、かかる必要性を有するものとして確定される。
【0021】
本発明の具体的実施態様において、pro−ADM及び/又はそれらの断片のレベルは、成熟ADM(配列番号:4)及び/又は成熟ADM 1−52−Gly(配列番号:5)の列内に構成される領域に結合するバインダー、及び成熟ADM(配列番号:4)及び/又は成熟ADM 1−52−Gly(配列番号:5)の配列内に構成される領域に結合する第二のバインダー:の群から選択される少なくとも1種のバインダーを使用することにより決定される。
【0022】
本発明の具体的実施態様において、pro−ADM及び/又はそれらの断片のレベルは、MR−proADM(配列番号:3)の配列内に構成される領域に結合するバインダー、及びMR−proADM(配列番号:3)の配列内に構成される領域に結合する第二のバインダー:の群から選択される少なくとも1種のバインダーを使用することにより決定される。
【0023】
本発明の具体的実施態様において、pro−ADM(配列番号:1)及び/又はそれらの断片のレベルは、CT−proADM(配列番号:6)の配列内に構成される領域に結合するバインダー、及びCT−proADM(配列番号:6)の配列内に構成される領域に結合する第二のバインダー:の群から選択される少なくとも1種のバインダーを使用することにより決定される。
【0024】
本発明の具体的実施態様において、アッセイが、proADM及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定するために使用され、ここで該アッセイのアッセイ感度は、健常対象のADMを定量することができ、且つ<70pg/ml、好ましくは<40pg/ml、及びより好ましくは<10pg/mlである。
【0025】
本発明の具体的実施態様において、該バインダーは、proADM及び/又はそれらの断片への結合親和性の少なくとも107-1、好ましくは108-1を示し、好ましい親和性は、109-1より大きく、最も好ましくは1010-1よりも大きい。当業者は、化合物のより高い投与量を適用することにより、より低い親和性を補償すると考えることができ、この方策は、本発明の範囲外に繋がるものではないことを知っている。
【0026】
アドレノメジュリンに対する抗体の親和性を決定するために、アドレノメジュリンの固定化された抗体に対する結合キネティックスを、Biacore 2000システム(GE Healthcare Europe社、フライブルグ、独国)を使用する、非標識表面プラズモン共鳴により決定した。抗体の可逆的固定化は、製造業者の指示に従い、CM5センサー表面に高密度で共有結合された抗−マウスFc抗体を使用し実行した(マウス抗体捕獲キット;GE Healthcare社)(22)。
【0027】
本発明の具体的実施態様において、該バインダーは、proADM及び/又はそれらの断片へ結合する抗体又は抗体断片又は非−Igスカフォールドを含む群から選択される。
本発明の具体的実施態様において、アッセイは、proADM及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定するために使用され、ここでかかるアッセイは、サンドイッチアッセイ、好ましくは完全に自動化されたアッセイである。
【0028】
本発明の一実施態様において、これは、完全に自動化されたアッセイシステムを必要としない、患者の傍で1時間以内に検査を行うことができる検査技術である、いわゆるPOC−検査(ポイントオブケア)であってよい。この技術の一例は、免疫クロマトグラフィー検査技術である。
【0029】
本発明の一実施態様において、かかるアッセイは、非限定的に、酵素標識、化学発光標識、電気化学発光標識を含む検出技術の任意の種類を使用するサンドイッチイムノアッセイ、好ましくは完全自動化アッセイである。本発明の一実施態様において、かかるアッセイは、酵素標識されたサンドイッチアッセイである。自動化又は完全自動化アッセイの例は、下記のシステムの一つに使用され得るアッセイを含む:Roche Elecsys(登録商標)、Abbott Architect(登録商標)、Siemens Centauer(登録商標)、Brahms Kryptor(登録商標)、BiomerieuxVidas(登録商標)、Alere Triage(登録商標)。
【0030】
様々な免疫測定が公知であり、且つ本発明のアッセイ及び方法のために使用することができ、これらは、放射免疫測定(″RIA″)、均一酵素−増幅免疫測定(″EMIT″)、酵素結合免疫吸着測定(″ELISA″)、アポ酵素再活性化免疫測定(″ARIS″)、ディップスティック免疫測定及び免疫−クロマトグラフィーアッセイを含む。
本発明の具体的実施態様において、該2種のバインダーの少なくとも1種は、検出されるために標識されている。
【0031】
好ましい検出方法は、例えば放射免疫測定(RIA)、化学発光−及び蛍光−免疫測定、酵素結合免疫測定(ELISA)、Luminex−ベースのビーズアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイなどの、様々なフォーマットの免疫測定、並びに即時免疫クロマトグラフィーストリップ試験などの、迅速試験フォーマットを含む。
好ましい実施態様において、該標識は、化学発光標識、酵素標識、蛍光標識、放射性ヨウ素標識を含む群から選択される。
【0032】
これらのアッセイは、均一又は不均一アッセイ、競合及び非競合アッセイであることができる。一実施態様において、アッセイは、非競合的免疫測定である、サンドイッチアッセイの形状であり、ここで検出及び/又は定量されるべき分子は、第一の抗体及び第二の抗体へ結合される。第一の抗体は、固相、例えばビーズ、ウェル若しくは他の容器の表面、チップ又はストリップに結合され、第二の抗体は、例えば、色素、放射性同位体、又は反応性部分若しくは触媒活性部分により、標識されている抗体である。次に被検体へ結合された標識された抗体の量が、好適な方法により測定される。「サンドイッチアッセイ」に関与した一般的組成物及び手順は、良く確立されており、且つ当業者に公知である(23)。
【0033】
別の実施態様において、アッセイは、2種の捕獲分子、好ましくは両方共液体反応混合物中の分散体として存在する抗体を含み、ここで第一の標識成分は、第一の捕獲分子に付着され、該第一の標識成分は、蛍光−又は化学発光−消光又は増幅を基にした標識システムの一部であり、並びに該印付けシステムの第二の標識成分は、第二の捕獲分子へ付着され、その結果両方の捕獲分子の被検体への結合時に、測定可能なシグナルが発生され、試料を含有する溶液中で形成されたサンドイッチ複合体の検出が可能になる。
【0034】
別の実施態様において、該標識システムは、蛍光色素又は化学発光色素、特にシアニン型の色素と組合せた、希土類クリプテート又は希土類キレートを含む。
本発明の文脈において、蛍光ベースのアッセイは、色素の使用を含み、これは例えば、FAM(5−又は6−カルボキシフルオレセイン)、VIC、NED、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、IRD−700/800、CY3、CY5、CY3.5、CY5.5、Cy7などのシアニン色素、キサンテン、6−カルボキシ−2’,4’,7’,4,7−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、TET、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’7’−ジメトキシフルオレセイン(JOE)、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、5−カルボキシローダミン−6G(R6G5)、6−カルボキシローダミン−6G(RG6)、ローダミン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ローダミン110、BODIPY TMRなどのBODIPY色素、オレゴングリーン、ウンベリフェロンなどのクマリン、Hoechst 33258などのベンズイミド;フェナントリジン、例えばテキサスレッド、Yakima Yellow、Alexa Fluor、PET、臭化エチジウム、アクリジニウム色素、カルバゾール色素、フェノキサジン色素、ポルフィリン色素、ポリメチン色素及び同類のものを含む群から選択され得る。
【0035】
本発明の文脈において、化学発光ベースのアッセイは、文献(24)において化学発光物質に関して説明された物理原理を基に、色素の使用を含む。好ましい化学発光色素は、アクリジニウムエステルである。
【0036】
本明細書で言及する「アッセイ」又は「診断アッセイ」は、診断分野において適用される任意の型であることができる。かかるアッセイは、検出されるべき被検体の、1又は複数の捕獲プローブへの、ある親和性での結合を基にすることができる。捕獲分子と標的分子又は関心対象の分子の間の相互作用に関して、親和定数は、108-1よりも大きいことが好ましい。
【0037】
本発明の文脈において、「バインダー分子」は、試料由来の標的分子又は関心対象の分子、すなわち被検体(すなわち、本発明の文脈において、PCT及びそれらの断片)への結合に使用することができる分子である。したがってバインダー分子は、標的分子又は関心対象の分子へ特異的に結合するために、空間的に、並びに表面電荷、疎水性、親水性、ルイスドナー及び/又はアクセプターの存在若しくは非存在などの表面特徴に関しての両方で、適切に造形されなければならない。これにより、結合は、捕獲分子と標的分子又は関心対象の分子の間の、例えば、イオン結合、ファンデルワールス結合、π−π結合、σ−π結合、疎水性結合又は水素結合の相互作用又は前述の相互作用の2又はそれ以上の組合せにより媒介され得る。本発明の文脈において、バインダー分子は、例えば、核酸分子、糖分子、PNA分子、タンパク質、抗体、ペプチド又は糖タンパク質を含む群から選択され得る。好ましくは、バインダー分子は、標的又は関心対象の分子に対する十分な親和性を伴うそれらの断片を含む抗体、並びに組み換え抗体又は組み換え抗体断片を含む抗体に加え、それらの長さが少なくとも12個のアミノ酸を伴う変種鎖由来の該抗体又は断片の化学的及び/又は生化学的に修飾された誘導体である。
【0038】
化学発光標識は、アクリジニウムエステル標識、イソルミノール標識に関与するステロイド標識及び同類のものであることができる。
酵素標識は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチンキナーゼ(CPK)、アルカリホスファターゼ、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)、アラニンアミノ基転移酵素(ALT)、酸性ホスファターゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼなどであることができる。
【0039】
本発明の一実施態様において、該2種のバインダーの少なくとも1種は、磁気粒子として固相に、及びポリスチレン表面に結合されている。
本発明の具体的実施態様において、該2種のバインダーの少なくとも1種は、固相に結合されている。
【0040】
本発明の一実施態様において、試料中で測定されたADM又はそれらの断片の濃度は、血漿又は血液中で10〜500pg/mlの範囲である。
本発明のADMレベル又はproADMレベル又はそれらの断片のレベルは各々、実施例に概略されるような、記載されたADMアッセイ(又は各々、proADMアッセイ若しくはそれらの断片アッセイ)により決定される。前述の値は、それらの較正の方式に応じて、他のADMアッセイ(又は各々、proADMアッセイ若しくはそれらの断片アッセイ)とは異なることがある。したがって前述の値は、較正における差異を考慮し、かかる異なるように較正されたADMアッセイに適用されなければならない。ADMアッセイ(又は各々、proADMアッセイ若しくはそれらの断片アッセイ)は、それらの正常範囲(健常集団)による相関及び調節により較正されることができる。或いは、市販の対照試料を、異なる較正の調節に使用することができる(ICI Diagnostics社、ベルリン、独国)。
【0041】
記載されたADMアッセイにより、正常集団の中央値は、24.7pg/mLであると決定されている。
本発明の具体的実施態様において、血漿ADMの閾値90pg/ml、好ましくは70pg/mlが適用される。
本発明の具体的実施態様において、血漿MR−proADM閾値0.9nmol/L、好ましくは0.7nmol/Lが適用される。
本発明の具体的実施態様において、血漿CT−proADM閾値1.0nmol/L、好ましくは0.8nmol/Lが適用される。
【0042】
血漿ADM又は血漿MR−proADM又は血漿CT−proADMのレベルが、該閾値を上回る場合、当該対象は、昇圧剤による治療を必要とし得る。
本発明の具体的実施態様において、該試料は、ヒトクエン酸血漿、ヘパリン血漿、EDTA血漿、全血を含む群から選択される。
【0043】
輸液蘇生又は昇圧剤による治療が必要であり得る対象は、以下を含む群から選択される状態に罹患し得る:以下により詳細に説明する、生理的ショック状態が、感染症、SIRS、敗血症、心不全、心肺停止、心臓外科術後、右心室梗塞、徐脈性不整脈、多発性外傷、火傷、腎損傷などもを発症するリスクのある患者。
【0044】
この型のショックは、以下により引き起こされ得る:
・重度の出血、
・肺塞栓(肺内の血栓)、
・重度の吐気及び下痢、
・脊髄損傷、
・中毒。
また、非常に特定の症状を伴う、生理的ショックの具体的型も存在する。
【0045】
心原性ショック
心原性ショックは、心臓が重度に損傷された場合に−例えば、重度の心発作により−起こり、且つもはや適切に体の方々に血液を送り出すことができず、非常に低い血圧を引き起こす。これは、心発作後の約8%において発症する。これは、治療が困難であり得るが、心拍動をより強力にするために、薬物が投与される。これは、心臓がそれ自身修復するまで患者に最悪の状況をやり過ごさせるのに十分であるが、心原性ショックは依然10症例中8例と多くで致命的である。「血管再建」又は心筋への血流回復への新規治療は、生存率を向上する。
【0046】
敗血症性ショック
これは、重篤な細菌感染症が、血圧の低下を引き起こす場合に起こる。これは、50%を超える症例において致命的である。これは細菌感染症により引き起こされるが、抗生物質による敗血症性ショックの治療は簡単とは言えず、その理由は、細菌が全滅された場合に、細菌は大量の毒素を放出し、このことは最初にショックを増悪する。これは常に、正確な薬物及び補液がもたらされ得る病院において治療されなければならない。敗血症性ショックの一つの型は、毒素性ショック症候群であり−細菌ブドウ球菌の特定株により引き起こされる稀ではあるが重度の疾患である。
【0047】
アナフィラキシーショック
アナフィラキシーショックは、重度のアレルギー反応である。一般的誘発因子としては、ハチ及びジガバチの針、ナッツ、甲殻類、卵、ラテックス及びペニシリンを含む特定の医薬品が挙げられる。症状は以下である:
・口唇及び舌のしびれ及び腫れ、
・呼吸困難(喘息発作時のような)、
・発赤、掻痒又は水疱形成した皮膚、くしゃみ、
・涙目、
・悪心、
・不安症。
アナフィラキシーは、病院における緊急の治療を必要とする。リスクのある人は、常に、アドレナリンを含む緊急用アナフィラキシー処置キットを携帯すべきである。
【0048】
敗血症及びその進展した形(重症敗血症、敗血症性ショック)は、死亡率が30〜70%であり、大きい医療上の問題であり続けている。対症療法に利点があるが、米国だけでも、毎年750,000名が敗血症を発症し、225,000名が死亡しており、敗血症の発生率は、毎年1.5%〜8%の割合で上昇している[4−6]。敗血症患者の救命のためには、最初に適時、抗生物質又は他の手段により感染性刺激物と闘うことは必須であり、二番目には適時状態の悪化が認められた時点で、例えば重症敗血症が敗血症性ショックに進行した時、この理由のみでその後好適な昇圧剤療法を、早期に開始することができる。何らかの遅延は、患者を死に至らせるリスクが増大する。
【0049】
敗血症性ショックに進行している患者において輸液蘇生又は昇圧剤/変力作用薬療法を開始することが推奨される状況は、敗血症救命キャンペーン(SSC)ガイドラインに説明されている[3]:平均動脈圧(MAP)≧65mmHgを維持するために、初回輸液蘇生に反応しない低血圧症のために昇圧剤を適用することが推奨されている。このガイドラインはまた、どの時どの昇圧剤/変力作用薬が優先的に適用されるかについても語っている。現在の共通の見解は以下である:最初に選択される昇圧剤としてのノルエピネフリン。適切な血圧を維持するために追加の薬剤が必要とされる時点で、エピネフリン(ノルエピネフリンに追加及び可能性としてはこれと代替)。MAPの上昇又はノルエピネフリン(NE)用量(UG)の減少のいずれかを意図して、バゾプレシン0.03単位/分を、NEへ追加することができる。概して、臨床の実践において現在使用される昇圧剤及び変力作用薬は、以下である[7、8]:カテコールアミン(ドパミン、ドブタミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、イソプロテレノール、フェニレフリン)、ホスホジエステラーゼIII阻害剤(ミルリノン、アムリノン)、バゾプレシン、レボシメンダン。
【0050】
加えて、例えば選択的バゾプレシンV1受容体アゴニストであるSelepressin[9]及び抗−アドレノメジュリン抗体など、他の血管作用性化合物が開発中である。
他の化合物が、研究中であるが、これらの治療について入手可能な臨床データは、わずかであり、これらのアプローチのかなり曖昧な結果が、大規模治験において得られた[10]。これらは、ATP−依存性K+−チャネルの阻害剤(グリベンクラミド[11、12])及びNOS阻害剤(NG−モノメチル−L−アルギニン[13、14])及びcGMP阻害剤(メチレンブルー[15、16])である。
【0051】
昇圧剤及び変力作用薬は、様々な生理的ショックの型のみではなく、心臓血管疾患(うっ血性心不全、心肺停止、心臓外科術後、右心室梗塞、徐脈性不整脈)をも、治療及び予防するために、臨床適用される[7]。
【0052】
臨床の観点から、危篤状態の患者においては、血圧は常にモニタリングされるので、プレゼンテーション(presentation)時に昇圧剤を必要とせずに各閾値を上回る値の患者、例えば高ADM(>70pg/ml)の患者は、低血圧に関連した臓器不全及びそれに続く高死亡率から患者を保護するために、循環をより早く支援する目的で、決定した時点でMAP<66mmHgPから例えば<75mmHgまでに適合させることにより、昇圧剤治療されるべきである。ADM>70pg/mlの患者についてこの規則を用い且つMAP≦75mmHgで昇圧剤により治療し、患者(第3群)は、標準のケア処置(≦66mmHg)の前に、平均1.6日間治療されるであろう。
【0053】
したがって本発明の具体的実施態様において、該対象の体液中のproADM及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルが、閾値を上回る場合、及び患者が、MAP≦75mmHgを、しかし好ましくはMAP>66mmHg、より好ましくは>70mmHgを有する場合に、該患者は、昇圧剤投与の必要性を有するものとして、確定される。
【0054】
本発明の具体的実施態様において、血漿ADMの閾値90 pg/ml、好ましくは70 pg/mlが適用され、及び/又は患者は、MAP≦75mmHg、しかし好ましくはMAP>66mmHg、より好ましくは>70 mmHgを有する。
本発明の具体的実施態様において、血漿MR−proADMの閾値0.9nmol/L、好ましくは0.7nmol/Lが適用され、及び/又は患者は、MAP≦75mmHg、しかし好ましくはMAP>66mmHg、より好ましくは>70mmHgを有する。
【0055】
本発明の具体的実施態様において、血漿CT proADMの閾値1.0nmol/L、好ましくは0.8nmol/Lが適用され、及び/又は患者は、MAP≦75mmHg、しかし好ましくはMAP>66mmHg、より好ましくは>70mmHgを有する。
血漿ADM又は血漿MR−proADM又は血漿CT proADMのレベルが、該閾値を上回る場合、及び/又は患者が、MAP≦75mmHg、しかし好ましくはMAP>66mmHg、より好ましくは>70mmHgを有する場合、該患者は、昇圧剤による治療が必要である。
【0056】
補液又は輸液蘇生は、発汗、出血、体液移動、又は、前述のような他の病理学的プロセスにより失われた体液を補充する医療行為である。液体は、経口投与(飲料)、静脈内投与、経直腸的に、又は皮下注入、皮下組織への液体の直接注射により置き換えることができる。経口及び皮下経路により投与される液体は、静脈内に投与される液体よりも、より緩徐に吸収される。経口補液療法(ORT)は、コレラ又はロタウイルスにより引き起こされたものなど、下痢、特に胃腸炎/胃腸障害を伴う脱水のための簡単な処置である。ORTは、経口摂取される塩及び糖質の溶液からなる。
【0057】
重度の脱水において、静脈内補液が好ましく、且つ救命し得る。これは、細胞内腔及び血管腔の両方の内部の体液が枯渇した場合に、特に有用である。
補液はまた、前述の状態のいずれかによる、体液枯渇においても適応される。
【0058】
本発明の抗体は、抗原へ特異的に結合する免疫グロブリン遺伝子により実質的にコードされた1又は複数のポリペプチドを含むタンパク質である。認識された免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α(IgA)、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ(IgD)、ε(IgE)及びμ(IgM)定常領域遺伝子に加え、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。完全長免疫グロブリン軽鎖は一般に、約25Kd又は長さ214アミノ酸である。完全長免疫グロブリン重鎖は一般に、約50Kd又は長さ446アミノ酸である。軽鎖は、NH2−末端で可変領域遺伝子(長さ約110アミノ酸)により、及びCOOH−末端でκ又はλ定常領域遺伝子によりコードされている。重鎖は同様に、可変領域遺伝子(長さ約116アミノ酸)及び他の定常領域遺伝子の一つによりコードされている。
【0059】
抗体の基本的構造単位は一般に、免疫グロブリン鎖の2つの同一対からなる四量体であり、各対は、1本の軽鎖及び1本の重鎖を有する。各対において、軽鎖及び重鎖可変領域は、抗原へ結合し、且つ定常領域はエフェクター機能を媒介する。免疫グロブリンはまた、例えば、Fv、Fab、及び(Fab’)2、さらには二機能性ハイブリッド抗体及び単鎖抗体を含む、様々な他の形でも存在する(例えば、Lanzavecchiaら, Eur. J. Immunol. 17:105,1987;Hustonら:Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85:5879-5883, 1988;Birdら:Science 242:423-426, 1988;Hoodら:Immunology, Benjamin, N.Y., 第2版, 1984;Hunkapiller及びHood:Nature 323:15-16,1986参照)。免疫グロブリン軽鎖又は重鎖可変領域は、相補性決定領域(CDR)とも称される、3つの超可変領域により中断されたフレームワーク領域を含む(「免疫学的関心のあるタンパク質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」, E. Kabatら, U.S. Department of Health and Human Services, 1983参照)。前述のように、CDRは主に、抗原のエピトープへの結合に寄与する。免疫複合体は、抗原に特異的に結合された、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくはヒト抗体、又は機能性抗体断片などの、抗体である。
【0060】
キメラ抗体は、その軽鎖及び重鎖遺伝子が、通常異なる種に属する免疫グロブリン可変領域遺伝子及び定常領域遺伝子から、遺伝子操作により構築される抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変セグメントが、κ及びγ1又はγ3などの、ヒト定常セグメントへ連結され得る。したがって一例において、治療用キメラ抗体は、マウス抗体由来の可変又は抗原−結合ドメイン及びヒト抗体由来の定常又はエフェクタードメインで構成されたハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種も使用することができ、あるいは可変領域は、分子技術により作製することができる。キメラ抗体の作製方法は、当該技術分野において周知であり、例えば米国特許第5,807,715号を参照されたい。「ヒト化」免疫グロブリンは、ヒトフレームワーク領域及び非−ヒト(マウス、ラット又は合成など)免疫グロブリン由来の1又は複数のCDRを含む免疫グロブリンである。CDRを提供する非−ヒト免疫グロブリンは、「ドナー」と称され、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と称される。一実施態様において、全てのCDRは、ヒト化免疫グロブリン中のドナー免疫グロブリンに由来する。定常領域は、存在する必要はないが、存在する場合、これらはヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち少なくとも約85〜90%、例えば約95%以上など同一でなければならない。したがって、可能性のあるCDRを除き、ヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。「ヒト化抗体」は、ヒト化された軽鎖及びヒト化された重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合する。ヒト化免疫グロブリン又は抗体のアクセプターフレームワークは、ドナーフレームワークから採用されたアミノ酸による限定数の置換を有することができる。ヒト化又は他のモノクローナル抗体は、抗原結合又は他の免疫グロブリン機能に対し実質的に作用しない追加の保存的アミノ酸置換を有することができる。保存的置換の例は、gly、ala;val、ile、leu;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;及び、phe、tyrなどの置換である。ヒト化免疫グロブリンは、遺伝子操作により構築することができる(例えば、米国特許第5,585,089号参照)。ヒト抗体は、軽鎖遺伝子及び重鎖遺伝子が、ヒト起源である抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において公知の方法を用いて、産生することができる。ヒト抗体は、関心対象の抗体を分泌するヒトB細胞の不死化により産生することができる。不死化は、例えば、EBV感染によるか、又はトリオーマ細胞を作製するためのヒトB細胞の骨髄腫若しくはハイブリドーマ細胞との融合により、達成することができる。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイ法(例えば、Dowerら, PCT公開W091/17271;McCaffertyら, PCT公開WO92/001047;及び、Winter, PCT公開WO92/20791参照)により産生されるか、又はヒトコンビナトリアルモノクローナル抗体ライブラリーから選択されることができる(Morphosysウェブサイト参照)。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニック動物を用いて、調製することができる(例えば、Lonbergら, PCT公開W093/12227;及び、Kucherlapati、PCT公開WO91/10741参照)。
【0061】
したがって、本抗体は、当該技術分野において公知のフォーマットを有することができる。例としては、ヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、CDR−グラフト化抗体がある。好ましい実施態様において、本発明の抗体は、例えばIgG、典型的完全長免疫グロブリン、又は重鎖及び/又は軽鎖の少なくともF−可変ドメインを含む抗体断片のように、組み換えにより作製された抗体、例えば化学的に結合された抗体(断片抗原結合)であり、Fabミニボディ、一本鎖Fab抗体、エピトープタグを伴う一価Fab抗体、例えばFab−V5Sx2を含むFab−断片;CH3ドメインを伴う二量体化された二価Fab(ミニ−抗体);例えば異種ドメインに支援された多量体化により形成された、例えばdHLXドメインの二量体化により形成された、二価Fab又は多価Fab、例えばFab−dHLX−FSx2;F(ab’)2−断片、scFv−断片、多量体化された多価及び/又は多重特異性scFv−断片、二価及び/又は二重特異性ディアボディ、BITE(登録商標)(二重特異性T細胞誘導抗体)、三機能性抗体、例えばG以外の様々なクラス由来の多価抗体;単−ドメイン抗体、例えばラクダ科動物又は魚類免疫グロブリン由来のナノボディ、並びに多くの他のものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0062】
抗体に加え、標的分子と複合し且つ高度に標的特異性のバイオポリマーを作製するために使用される他のバイオポリマースカフォールドは、当該技術分野において周知である。例としては、アプタマー、スピーゲルマー、アンチカリン及びコノトキシンがある。
【0063】
好ましい実施態様において、抗体フォーマットは、Fv断片、scFv断片、Fab断片、scFab断片、(Fab)2断片及びscFv−Fc融合タンパク質を含む群から選択される。別の好ましい実施態様において、抗体フォーマットは、scFab断片、Fab断片、scFv断片、及びPEG化された断片など、それらの生物学的利用能が最適化された複合体を含む群から選択される。最も好ましいフォーマットの一つは、scFabフォーマットである。
【0064】
非−Igスカフォールドは、タンパク質スカフォールドであってよく、且つこれらはリガンド又は抗原に結合することが可能であるので、抗体模倣体として使用されてよい。非−Igスカフォールドは、テトラネクチン−ベースの非−Igスカフォールド(例えば、US 2010/0028995に開示)、フィブロネクチンスカフォールド(例えば、EP 1266 025に開示);リポカリン−ベースのスカフォールド(例えば、WO 2011/154420に開示);ユビキチンスカフォールド(例えば、WO 2011/073214に開示)、トランスフェリンスカフォールド(例えば、US 2004/0023334に開示)、プロテインAスカフォールド(例えば、EP 2231860に開示)、アンキリン反復配列ベースのスカフォールド(例えば、WO 2010/060748に開示)、マイクロタンパク質(好ましくは形成するシスチンノットを形成するマイクロタンパク質)スカフォールド(例えば、EP 2314308に開示)、Fyn SH3ドメインベースのスカフォールド(例えば、WO 2011/023685に開示)、EGFR−A−ドメインベースのスカフォールド(例えば、WO 2005/040229に開示)、及びKunitzドメインベースのスカフォールド(例えば、EP 1941867に開示)を含む群から選択されてよい。
【0065】
本発明の一実施態様において、本発明の抗体は、下記のように作製され得る:
Balb/cマウスを、0及び14日目に、ADM−100μgペプチド−BSA−複合体(完全フロイントアジュバント100μl中に乳化された)、並びに21及び28日目に50μg(不完全フロイントアジュバント100μl中)により免役化した。動物は、融合実験の3日前に、1回腹腔注射及び1回静脈内注射として投与される、食塩水100μl中に溶解した該複合体50μgを、受け取った。
【0066】
免疫化されたマウス由来の脾細胞及び骨髄腫細胞株SP2/0の細胞を、50%ポリエチレングリコール1mlにより、30秒間、37℃で融合した。洗浄後、細胞を、96−ウェル細胞培養プレートに播種した。ハイブリッドクローンを、HAT培地[20%ウシ胎仔血清及びHAT−補充物を補充したRPMI1640培養培地]において成長させることにより選択した。2週間後、HAT培地を、3継代のためにHT培地と交換し、引き続き通常の細胞培養培地に戻した。
【0067】
この細胞培養物上清を、融合後3週間、抗原特異性IgG抗体について一次スクリーニングした。陽性の試験した微量培養物を、増殖のために、24−ウェルプレートへ移した。再試験後、選択された培養物を、限定−希釈技術を用い、クローニング及び再クローニングし、且つアイソタイプを決定した(同じく、Lane, R.D. (1985)、「モノクローナル抗体-分泌性ハイブリドーマの生産増大のための短期ポリエチレングリコール融合技術(A short-duration polyethylene glycol fusion technique for increasing production of monoclonal antibody-secreting hybridomas)」、J. Immunol. Meth. 81 : 223-228;Ziegler, B.ら(1996)、「サイトフローメトリー及びモノクローナルGAD抗体の補体依存性抗体媒介性細胞傷害により試験したラット島細胞表面上で検出不可能なグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD) (Glutamate decarbosylase (GAD) is not detectable on the surface of rat islet cells examined by cytofiuorometry and complement-dependent antibody-mediated cytotoxicity of monoclonal GAD antibodies)」、Horm. Metab. Res. 28: 11-15参照)。
【0068】
抗体は、下記の手順に従うファージディスプレイにより作製することができる:
ヒトナイーブ抗体遺伝子ライブラリーHAL7/8を、アドレノメジュリンペプチドに対する組み換え一本鎖F−可変ドメイン(scFv)の単離のために、使用した。この抗体遺伝子ライブラリーを、アドレノメジュリンペプチド配列へ2種の異なるスペーサーにより連結されたビオチンタグを含むペプチドの使用を含む、パニング戦略によりスクリーニングした。非特異的に結合された抗原及びストレプトアビジン結合された抗原を使用するパニングラウンド混合物を使用し、非特異的バインダーのバックグラウンドを最小化した。パニングの第3ラウンドから溶離されたファージを使用し、モノクローナルscFv発現している大腸菌株を作製した。これらのクローン性株の培養物からの上清を、抗原ELISA試験に直接使用した(Hust, M., Meyer, T., Voedisch, B., Riilker, T., Thie, H., El-Ghezal, A., Kirsch, M.I., Schutte, M., Helmsing, S., Meier, D., Schirrmann, T., Diibel, S.:2011 「プロテオソーム研究のためのヒトscFv抗体作製ピペリン(A human scFv antibody generation pipeline for proteome research)」、Journal of Biotechnology 152, 159- 170;Schutte, M., Thullier, P., Pelat, T., Wezler, X., Rosenstock, P., Hinz, D., Kirsch, M.I.,Hasenberg, M., Frank, R., Schirrmann, T., Gunzer, M., Hust, M., Diibel, S.:2009 「アスペルギルス属の特異的検出のための推定Crfスプライシング変種の同定及び組み換え抗体の作製(Identification of a putative Crf splice variant and generation of recombinant antibodies for the specific detection of Aspergillus fumigatus)」、PLoS One 4, e6625参照)。
【0069】
マウス抗体のヒト化は、下記の手順に従い実行することができる:
マウス起源の抗体のヒト化のために、この抗体配列を、相補性決定領域(CDR)を伴うフレームワーク領域(FR)と抗原の構造的相互作用について分析した。構造モデリングを基に、ヒト起源の好適なFRを選択し、且つマウスCDR配列を、ヒトFRに移植した。CDR又はFRのアミノ酸配列に変動を導入し、FR配列に関する種スイッチにより無効とされた構造相互作用を取り戻すことができる。この構造相互作用の回復は、ファージディスプレイライブラリーを使用するランダムアプローチによるか、又は分子モデリングによりガイドされる方向づけられたアプローチを介して、達成され得る(Almagro JC, Fransson J.:2008 「抗体のヒト化(Humanization of antibodies)」、Front Biosci. 2008 Jan l;13:1619-33参照)。
【0070】
本発明の別の主題は、輸液蘇生又は昇圧剤投与の必要性のある対象の治療において使用する昇圧剤であり、ここで該対象は、前述のインビトロ方法の全ての実施態様を含む該インビトロ方法のいずれかに従い確定される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図の説明
図1図1は、典型的ADM投与量/シグナル曲線、及び100μg/mL抗体NT−Hの存在下でのADM投与量/シグナル曲線を示す。
図2図2は、ロジスティック回帰分析の結果の、推定院内死亡率である。
図3図3は、推定院内死亡率−ADMは、APACHEから独立し、且つ追加の予後情報を提供する。
図4図4は、血漿ADMレベルによって決まる平均動脈圧である。散布図及び相関係数を、入院時の患者から得た値について示している。統計的有意性は、p<0.0001であった。
図5図5は、入院時の昇圧剤療法を必要とする患者、対、昇圧剤療法を必要としない患者におけるアドレノメジュリン濃度である。これら2群間の差異は、統計学的に有意であった(p<0.0001)。
図6図6は、入院時に昇圧剤により治療を受けた患者(「ADMなし(no ADM)」)、入院後最初の4日間以内昇圧剤療法を必要としなかった患者(「処置なし(never)」)、及び入院後最初の4日以内に昇圧剤療法を必要としたが入院日は必要としなかった患者(「遅れて処置(later)」)の、入院時のADM濃度である。グラフにおいて、ADM濃度の正常範囲が示されている。
図7図7は、昇圧剤療法を必要とする(感度)及び必要としない(特異度)、急性心不全患者のADM濃度の受診者動作特性(ROC)曲線である。曲線下面積は、0.75であった(p<0.0001)。
【実施例】
【0072】
実施例1
抗体の作製及びそれらの親和定数の決定
本発明者らは、ADMのN−末端、中央領域及びC−末端部分に結合するマウスモノクローナル抗体を開発し、且つそれらの親和定数を決定した(表1)。
【0073】
免疫化のためのペプチド
ペプチドは、JPT Peptide Technologies社(ベルリン、独国)により供給された。ペプチドは、スルホ−SMCC架橋法を用い、BSAに結合させた。この架橋手順は、製造業者(Thermo Fisher/ Pierce社)の指示に従い行った。マウス抗体を、下記の方法に従い作製した:
Balb/cマウスを、0及び14日目に、100μgペプチド−BSA−複合体(完全フロイントアジュバント100μl中に乳化された)、並びに21及び28日目に50μg(不完全フロイントアジュバント100μl中)により免役化した。動物は、融合実験の3日前に、1回腹腔注射及び1回静脈内注射として投与される、食塩水100μl中に溶解した複合体50μgを受け取った。
【0074】
免疫化されたマウス由来の脾細胞及び骨髄腫細胞株SP2/0の細胞を、50%ポリエチレングリコール1mlにより、30秒間、37℃で融合した。洗浄後、細胞を、96−ウェル細胞培養プレートに播種した。ハイブリッドクローンを、HAT培地[20%ウシ胎仔血清及びHAT−補充物を補充したRPMI1640培養培地]において成長させることにより選択した。2週間後、HAT培地を、3継代のためにHT培地と交換し、引き続き通常の細胞培養培地に戻した。
【0075】
この細胞培養物上清を、融合後3週間、抗原特異性IgG抗体について一次スクリーニングした。陽性の試験した微量培養物を、増殖のために、24−ウェルプレートへ移した。再試験後、選択された培養物を、限定−希釈技術を用い、クローニング及び再クローニングし、且つアイソタイプを決定した(Lane, R.D. (1985)、「モノクローナル抗体-分泌性ハイブリドーマの生産増大のための短期間ポリエチレングリコール融合技術」、J. Immunol. Meth. 81 : 223-228;Ziegler, B.ら(1996)、「サイトフローメトリー及びモノクローナルGAD抗体の補体依存性抗体媒介性細胞傷害により試験したラット島細胞表面上で検出不可能なグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)」、Horm. Metab. Res. 28: 11-15参照)。
【0076】
【表1】
【0077】
モノクローナル抗体産生
抗体は、標準抗体産生法(Marxら, 「モノクローナル抗体産生(Monoclonal Antibody Production)」、ATLA 25, 121, 1997)により作製し、及びプロテインAにより精製した。抗体の純度は、SDSゲル電気泳動分析を基に、>95%であった。
【0078】
親和定数
抗体のアドレノメジュリンに対する親和性を決定するために、固定化された抗体に対するアドレノメジュリンの結合キネティックスを、Biacore 2000システム(GE Healthcare Europe社、フライブルグ、独国)を使用する、無標識表面プラズモン共鳴により決定した。抗体の可逆性固定化は、製造業者の指示に従い、CM5センサー表面へ、高密度で共有結合された抗-マウスFc抗体を用いて行った(マウス抗体捕獲キット;GE Healthcare社)。
【0079】
標識手順(トレーサー):抗体(PBS中1mg/ml、pH7.4)100ug(100ul)を、アクリジニウムNHS−エステル(アセトニトリル中1mg/ml、InVent社、独国)10ulと混合し(57)、且つ室温で20分間インキュベーションした。標識したCT−Hを、Bio−Sil(登録商標)SEC 400−5(Bio-Rad Laboratories社、米国)上のゲル−濾過HPLCにより精製した。精製された標識された抗体を、溶液(リン酸カリウム300mmol/L、NaCl 100mmol/L、Na−EDTA 10mmol/L、ウシ血清アルブミン5g/L、pH7.0)中に希釈した。最終濃度は、200μLにつき標識された化合物およそ800.000相対発光量(RLU)(およそ20ng標識抗体)であった。アクリジニウムエステル化学発光を、AutoLumat LB 953(Berthold Technologies社、KG)を用いて測定した。
【0080】
固相:ポリスチレンチューブ(Greiner Bio-One International社、オーストリア)を、抗体((抗体1.5μg/0.3mL、NaCl 100mmol/L、トリス/HCl 50mmol/L、pH7.8)によりコーティングした(室温、18時間)。5%ウシ血清アルブミンでブロックした後、チューブをPBS(pH7.4)で洗浄し、真空乾燥した。
【0081】
キャリブレーター:合成ヒトADM(Bachem社、スイス)を、50mMトリス/HCl、250mM NaCl、0.2%Triton X−100、0.5%BSA、20錠/Lプロテアーゼコンプリートプロテアーゼ阻害カクテル錠(Roche社);pH7.8を用い、線形希釈した。キャリブレーターは、使用まで−20℃で貯蔵した。
【0082】
実施例2
高シグナル/ノイズ比を生じる抗体組合せの決定
ADM免疫測定:
試料(又はキャリブレーター)50ulを、標識された二次抗体(200ul)の添加後、コーティングされたチューブにピペットで入れ、これらのチューブを、室温で2時間インキュベーションした。未結合のトレーサーを、洗浄液(20mM PBS、pH7.4、0.1%TritonX−100)により、5回洗浄(各1ml)することにより除去した。
チューブに結合した化学発光を、LB 953を用いて測定した。
【0083】
全ての抗体を、コーティングされたチューブ及び標識抗体として、サンドイッチイムノアッセイにおいて使用し、下記の変数と組み合わせた(表2):
インキュベーションは、hADM−免疫測定で説明したように行った。結果は、特異的シグナル(10ng/ml ADM)/バックグラウンド(ADMを含まない試料)シグナルの比で示した。
【0084】
【表2】
【0085】
驚くべきことに、本発明者らは、最高シグナル/ノイズ比の組合せとしてMR−ADMとCT−ADMの組合せを認めた。
引き続き、本発明者らは、この抗体−組合せを更なる研究に使用した。本発明者らは、固相抗体としてMR−ADMを、及び標識抗体としてCT−ADMを使用した。典型的投与量/シグナル曲線を、図1に示している。本アッセイの分析感度(10回試行の平均、ADM−非含有試料+2SD)は、2pg ADM/mlであった。
【0086】
実施例3
ヒトアドレノメジュリンの安定性
ヒトADMを、ヒトクエン酸血漿中に希釈し(n=5、最終濃度10ng ADM/ml)、24℃でインキュベーションした。選択された時点で、アリコートを、−20℃で凍結した。これらの試料を解凍した直後に、前述のhADM免疫測定を使用し、hADMを定量した。
【0087】
【表3】
【0088】
驚くべきことに、サンドイッチイムノアッセイにおいてMR−ADM及びCT−ADMの抗体−組合せを使用すると、この被検体の分析前安定性は、高かった(わずかに0.9%/時の免疫反応性の平均喪失)。対照的に、別のアッセイ法を使用すると、わずか22分間の血漿半減期が報告された(Hinson 2000)。病院の日常業務における試料の採取から分析までの時間は2時間未満であるので、使用されたADM検出法は、日常的診断に適している。許容し得るADM−免疫反応性の安定性に達するには、試料への一般的でない添加物(アプロチニンなど(20))は不要であることは、驚きに値する。
【0089】
実施例4
キャリブレーター−調製の再現性
本発明者らは、ADMアッセイのためのキャリブレーターの調製において、結果の高い変動性を認めた(平均CV 8.5%、表4参照)。これは、プラスチック及びガラスの表面へのhADMの高い吸着のためであるかもしれない(同じく(58)参照)。この作用は、界面活性剤(最大1%TritonX 100又は1%Tween 20)、タンパク質(最大5%BSA)及び高イオン強度物質(最大1M NaCl)又はそれらの組合せの添加により、わずかだけ低下した。驚くべきことに、余分の抗ADM抗体(10ug/ml)を、キャリブレーター希釈緩衝液に添加した場合、ADMアッセイキャリブレーター−調製物の回収及び再現性は、調製間(inter preparation)CV<1%まで実質的に改善された(表4)。
幸いなことに、N−末端抗体の存在は、MR−及びC−末端抗体の組合せにより発生したADM−シグナルに影響を及ぼさなかった(図1)。
【0090】
【表4】
【0091】
キャリブレーターの調製物間変動
ADMアッセイキャリブレーターを、NT−ADM−抗体10ug/mlを伴う又は伴わずに、上述のように調製した。変動係数(CV)は、5つの独立した調製試行から得た。キャリブレーターは、上述のADMアッセイを用いて測定した。シグナル対ノイズ比=s/n−r。
全ての下記の試験について、本発明者らは、トレーサー緩衝液中の補充物としてNT−ADM抗体10ug/ml及びNT−ADM抗体10ug/mlの存在下で調製したキャリブレーターを基にした、ADMアッセイを使用した。
【0092】
実施例5
感度
アッセイ感度の目的は、健常対象のADM濃度を完全に対象とすることである。
【0093】
健常対象におけるADM濃度
健常対象(n=100、平均年齢56歳)を、ADMアッセイを用いて測定した。中央値は24.7pg/mlであり、最低値は11pg/mlであり、99パーセンタイル値は43pg/mlであった。アッセイ感度は2pg/mlであったので、全健常対象の100%が、記載のADMアッセイを用い、検出可能であった。
【0094】
市販のアッセイを使用し、MR−proADM(BRAHMS MR-proADM KRYPTOR)(BRAHMS社、へニッヒスドルフ、独国)を測定した(ClinBiochem. 2009 May;42(7-8):725-8. doi: 10.1016/j.clinbiochem.2009.01.002. 電子版2009年1月23日)。
血漿中の中央領域プロアドレノメジュリンの測定に関する均一時間分解蛍光免疫測定は、完全に自動化されたシステムB.R.A.H.M.S KRYPTORである(Caruhel P, Mazier C, Kunde J, Morgenthaler NG, Darbouret B.)。
【0095】
実施例6
臨床試験
敗血症の定義を満たす救急診療部(ED)患者101名(Dellinger RP, Levy MM, Carlet JM, Bion J, Parker MM, Jaeschke R, Reinhart K, Angus DC, Brun-Buisson C, Beale Rら:「敗血症救命キャンペーン:重度敗血症及び敗血症性ショックの管理に関する国際指針(Surviving Sepsis Campaign: international guidelines for management of severe sepsis and septic shock)」、2008 Critical care medicine 2008, 36(1):296-327)は、引き続き入院し(平均5日間の入院)、標準ケア処置を受け取った。EDTA−血漿を、1日目に作製し(ED提示)、入院中は毎日1試料を作製した。後のADM−測定のために試料を凍結する時間は、4時間未満であった。
患者の特徴は、表5にまとめている。
【0096】
【表5-1】
【表5-2】
【0097】
全患者の26.7%は、入院期間中に死亡し、治療非反応者としてカウントし、且つ全患者の73.3%は、敗血症を生存し、治療反応者としてカウントした。
敗血症を示す全患者の66%は、非正常ADM値>43pg/ml(99パーセンタイル値)を有し、このことは、ADMはこの感染症のマーカーではないことを示している。
【0098】
臨床試験の結果
初期ADMは、高度に予後診断的である。
本発明者らは、初期ADM値を、院内死亡率と相関させ、且つADMを、APACHE2スコアと比較した。ADMは、敗血症の転帰について高度に予後診断的であり(図2参照)、且つAPACHE2スコアと同等である。ADMとAPACHE2が組合せられた場合、有意な追加情報が存在する(図3)。
【0099】
治療モニタリングにおけるADM
患者は、標準ケア処置を基に治療した(表5)。平均入院期間は、5日間であった。ADMは、入院中毎日測定し(1日目=入院日)、院内死亡率と相関させた(表6)。入院期間中に変化したADM及び変化した期間は、予後診断値を最初のカイ二乗19.2から5日目の29.2まで、52%改善した。
【0100】
ADMの70pg/mlでの単純なカットオフモデルを使用し、これは、ADM濃度>70pg/mlで始まる患者について68%の死亡リスクを、並びに>70pg/ml(治療非反応者)は全て入院し続けることを示した。常にADM値<70pg/mlを有する患者又は>70pg/mlから<70pg/mlへと進展する患者は、わずかに11%の死亡率を有し(良好に治療された/治療反応者)、並びにADM値>70pg/mlを示す患者及び入院治療時にそれらのADM濃度が値<70pg/mlまで低下する患者は、死亡率0%であった。入院治療時に<70pg/mlから>70pg/mlまで進展する患者はいなかった。全ての患者について反応者/非反応者の情報を得るのに必要な平均時間は、約1日であった。>70pg/mlの入院期間中に治療に反応する患者は、ADMによる治療の成功を示すのに、約2日間必要であった。
【0101】
【表6】
【0102】
血漿ADMの平均動脈圧(MAP)及び昇圧剤療法の必要性との関係
本発明者らは、ADM濃度の平均動脈圧との(図4)、及びショックを治療/予防するための昇圧剤療法の必要性との(図5)有意な相関関係を認めた。
本発明者らはまた、ADM濃度と昇圧剤療法の必要性の時間的関係も調べ(図6):ここで、患者101名を調べ、既に18名は、入院時に昇圧剤療法を必要とし;これらの患者の入院時のADM濃度中央値は、129pg/mLであった。入院後最初の4日以内の病院滞在時に昇圧剤療法の必要性を示さなかった患者(n=79)は、ADM濃度中央値48.5pg/mLを有した。重要なことに、入院時よりも病院滞在時に昇圧剤療法を必要とした患者は、既に入院時に上昇したADMレベル(中央値87.2pg/mL)を有し、例えば、血漿ADM濃度の上昇が、昇圧剤療法に先行していた。
【0103】
血漿試料中に、ADM前駆体分子の安定した断片であるMR−proADMも測定した。MR−proADMは、成熟ADM放出の代理マーカーとして提唱されている(Struck J, Tao C, Morgenthaler NG, Bergmann A:「敗血症患者の血漿中のアドレノメジュリン前駆体断片の同定(Identification of an Adrenomedullin precursor fragment in plasma of sepsis patients)」 Peptides 2004, 25(8): 1369-1372;Morgenthaler NG, Struck J, Alonso C, Bergmann A):「免疫発光測定による血漿中の中央領域プロアドレノメジュリンの測定: (Measurement of midregional proadrenomedullin in plasma with an immunoluminometric assay)」 Clinical chemistry 2005, 51(10):1823-1829)。市販のMR−proADMアッセイ(BRAHMS MR-proADM KRYPTOR)を、製造業者(BRAHMS社、へニッヒスドルフ、独国)の指示に従い使用した。入院時の日の中央値レベルは、昇圧剤療法を必要としない患者について0.63nmol/Lであり、並びに昇圧剤療法を必要とする患者について1.57nmol/Lであった。MR−proADMの濃度は、ADM濃度と有意に相関していた(r=0.79)。
【0104】
実施例7
昇圧剤必要性の診断及び予測のためのカットオフ分析
患者データは、実施例6参照。この分析は、敗血症患者の救急センターでのプレゼンテーション時の初回採血を基に行った。
【0105】
カットオフ値70pg/mlを選択し、<70pg/mlは、昇圧剤の必要性の低いリスクを示し、並びに>70pg/mlは、昇圧剤の必要性の高いリスクを示した。第1群は、昇圧剤の必要性がなく(MAP≦66mmHg)、4日間の経過観察期間中のプレゼンテーション時に昇圧剤を受け取らなかった患者である。第2群は、昇圧剤の必要性があるか(MAP≦66mmHg)、又はプレゼンテーション時に昇圧剤を受け取った患者である。第3群は、昇圧剤の必要性がなく、プレゼンテーション時に昇圧剤を受け取らなかったが、4日間の経過観察期間中に昇圧剤の必要性を顕在化した患者である。昇圧剤治療に関する情報が失われた患者(n=2)は、除外した。
【0106】
【表7】
【0107】
ADMの70pg/mlでの単純なカットオフ分析を使用し、EDプレゼンテーション時に昇圧剤を必要とする全患者の89.5%を、ADMにより確定した(第2群)。20名の患者は、>70pg/mlで、プレゼンテーション時に昇圧剤の必要性がなく(第1/3群)、15名(75%)は、4日間の経過観察期間中に昇圧剤の必要性を顕在化せず、並びに患者5名(25%)は、4日間の経過観察期間中に昇圧剤の必要性を顕在化した。対照的に、ADMが<70pg/mlである場合、患者はプレゼンテーション時に昇圧剤の必要性がなく(第1/3群)、56名(96.5%)は、4日間の経過観察期間中に昇圧剤の必要性を顕在化せず、並びにわずかに2名(3.5%)が、昇圧剤の必要性を顕在化した。ADM値が70pg/mlを上回る患者の次の4日間に昇圧剤の必要性を顕在化するリスクは、ADMレベルが70pg/mlを下回る患者よりも、7.1倍高かった(25%、対、3.5%)。
【0108】
臨床の観点から、血圧は常にモニタリングされるので、プレゼンテーション時に昇圧剤の必要性のない高ADM(>70pg/ml)を有する患者は、低血圧に関連した臓器不全及びそれに続く高い死亡率から患者を保護するために循環をより早期に支援する目的で、MAP<66mmHgから、例えば<75mmHgまでの決定時点を採用することにより、昇圧剤治療されなければならない。ADM>70pg/mlの患者についてこのルールを使用し、且つMAP≦75mmHgで昇圧剤により治療し、患者(第3群)は、標準ケア処置(≦66mmHg)前に、平均1.6日間治療されるであろう。
【0109】
ADMの代わりに分析において、MR−proADMのカットオフ値0.78noml/Lを使用した場合、同様の結果が得られた。
【0110】
【表8】
【0111】
実施例8
臨床試験/急性心不全
登録された患者は、急性心不全により救急診療部へ入院した患者であった。患者の特徴:年齢平均±SD 74.3±12.2歳;n=1022(男性643名、63%);既往歴、虚血性心疾患31%、高血圧58%、糖尿病33%、心不全35%。患者は、2年間経過観察した。ADM及び他の被検体の測定のための血漿試料は、入院日に入手した。
【0112】
コックス解析は、ADMは、急性非代償性心不全による、1年後死亡(表9)及び1年後死亡/入院(表10)の独立した予測因子であることを明らかにした。ロジスティック回帰分析は、ADMは、院内死亡の独立した予測因子であることを明らかにした(表11)。
【0113】
昇圧剤療法(変力作用薬)を必要とした患者は、全ての他の患者のADM濃度よりも有意に高い濃度を有した(曲線下面積=0.75;p<0.001;図7)。
【0114】
【表9】
【0115】
【表10】
【0116】
【表11】
【0117】
参考文献
【表12】
【0118】
【表13】
【0119】
【表14】
【0120】
【表15】
【0121】
【表16】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]