特許第6260014号(P6260014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6260014
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】バッテリの充電率検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20180104BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20180104BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20180104BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20180104BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20180104BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20180104BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   G01R31/36 AZHV
   H01M10/48 P
   H01M4/505
   H01M4/587
   H01M4/525
   H01M4/485
   H02J7/00 M
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-171894(P2013-171894)
(22)【出願日】2013年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-40764(P2015-40764A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2015年9月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】板橋 欣之介
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/031559(WO,A1)
【文献】 特開2012−058028(JP,A)
【文献】 特開2012−137408(JP,A)
【文献】 特開2006−098134(JP,A)
【文献】 特開2012−181976(JP,A)
【文献】 特開2011−034699(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0326842(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 4/485
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 4/587
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの充放電電流を検出する電流検出手段と、
前記バッテリの端子電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電流検出手段で検出した充放電電流を積算して第1の充電率を算出する第1充電率算出手段と、
前記電流検出手段で検出した充放電電流、前記電圧検出手段で検出した端子電圧、バッテリの等価回路のインピーダンスからバッテリの開放電圧を推定して得られた推定開放電圧、該推定開放電圧に基づいて第2の充電率を算出する第2充電率算出手段と、
前記第1充電率算出手段で得た第1の充電率および前記第2充電率算出手段で得た第2の充電率を、前回の充電率が存在する充電率の領域によって決まる前記バッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間に応じて設定したウェイトを用いて重み付けして合成し、バッテリの第3の充電率を算出する第3充電率算出手段と、
を備え、
前記第3充電率算出手段は、前記バッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間が長いほど、前記第1の充電率のウェイトを大きくするようにし、
前記第1の充電率のウェイトを大きくする範囲を、前記前回の充電率が50%以上の領域では前記バッテリの正極の材料に基づいて決定し、前記前回の充電率が50%未満の領域では前記バッテリの負極の材料に基づいて決定する
ことを特徴とするバッテリの充電率検出装置。
【請求項2】
バッテリの充放電電流を検出する電流検出手段と、
前記バッテリの端子電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電流検出手段で検出した充放電電流を積算して第1の充電率を算出する第1充電率算出手段と、
前記電流検出手段で検出した充放電電流、前記電圧検出手段で検出した端子電圧、バッテリの等価回路のインピーダンスからバッテリの開放電圧を推定して得られた推定開放電圧、該推定開放電圧に基づいて第2の充電率を算出する第2充電率算出手段と、
前記第1充電率算出手段で得た第1の充電率および前記第2充電率算出手段で得た第2の充電率を、前回の充電率が存在する充電率の領域によって決まる前記バッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間に応じて設定したウェイトを用いて重み付けして合成し、バッテリの第3の充電率を算出する第3充電率算出手段と、
を備え、
前記第3充電率算出手段は、前記バッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間が長いほど、前記第1の充電率のウェイトを大きくするようにし、
前記バッテリは、正極にマンガン酸リチウムを用いたバッテリであって、
前記第3充電率算出手段は、前回の充電率が50〜80%の領域にあるとき、前記第1の充電率のウェイトを大きくするようにした、
ことを特徴とするバッテリの充電率検出装置。
【請求項3】
バッテリの充放電電流を検出する電流検出手段と、
前記バッテリの端子電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電流検出手段で検出した充放電電流を積算して第1の充電率を算出する第1充電率算出手段と、
前記電流検出手段で検出した充放電電流、前記電圧検出手段で検出した端子電圧、バッテリの等価回路のインピーダンスからバッテリの開放電圧を推定して得られた推定開放電圧、該推定開放電圧に基づいて第2の充電率を算出する第2充電率算出手段と、
前記第1充電率算出手段で得た第1の充電率および前記第2充電率算出手段で得た第2の充電率を、前回の充電率が存在する充電率の領域によって決まる前記バッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間に応じて設定したウェイトを用いて重み付けして合成し、バッテリの第3の充電率を算出する第3充電率算出手段と、
を備え、
前記第3充電率算出手段は、前記バッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間が長いほど、前記第1の充電率のウェイトを大きくするようにし、
前記バッテリは、負極にグラファイトを用いたバッテリであって、
前記第3充電率算出手段は、前記前回の充電率が10〜40%の領域にあるとき、前記第1の充電率のウェイトを大きくするようにした、
ことを特徴とするバッテリの充電率検出装置。
【請求項4】
バッテリの充放電電流を検出する電流検出手段と、
前記バッテリの端子電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電流検出手段で検出した充放電電流を積算して第1の充電率を算出する第1充電率算出手段と、
前記電流検出手段で検出した充放電電流、前記電圧検出手段で検出した端子電圧、バッテリの等価回路のインピーダンスからバッテリの開放電圧を推定して得られた推定開放電圧、該推定開放電圧に基づいて第2の充電率を算出する第2充電率算出手段と、
前記第1充電率算出手段で得た第1の充電率および前記第2充電率算出手段で得た第2の充電率を、前回の充電率が存在する充電率の領域によって決まる前記バッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間に応じて設定したウェイトを用いて重み付けして合成し、バッテリの第3の充電率を算出する第3充電率算出手段と、
を備え、
前記第3充電率算出手段は、前記バッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間が長いほど、前記第1の充電率のウェイトを大きくするようにし、
前記バッテリは、正極にマンガン酸リチウムを用い、負極にグラファイトを用いたバッテリであって、
前記第3充電率算出手段は、前記前回の充電率が65〜80%と30〜40%の領域にあるとき、前記第1の充電率のウェイトを大きくするようにした、
ことを特徴とするバッテリの充電率検出装置。
【請求項5】
バッテリの充放電電流を検出する電流検出手段と、
前記バッテリの端子電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電流検出手段で検出した充放電電流を積算して第1の充電率を算出する第1充電率算出手段と、
前記電流検出手段で検出した充放電電流、前記電圧検出手段で検出した端子電圧、バッテリの等価回路のインピーダンスからバッテリの開放電圧を推定して得られた推定開放電圧、該推定開放電圧に基づいて第2の充電率を算出する第2充電率算出手段と、
前記第1充電率算出手段で得た第1の充電率および前記第2充電率算出手段で得た第2の充電率を、前回の充電率が存在する充電率の領域によって決まる前記バッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間に応じて設定したウェイトを用いて重み付けして合成し、バッテリの第3の充電率を算出する第3充電率算出手段と、
を備え、
前記第3充電率算出手段は、前記バッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間が長いほど、前記第1の充電率のウェイトを大きくするようにし、
前記バッテリは、正極にニッケル系材料を用い、負極にグラファイトを用いたバッテリであって、
前記第3充電率算出手段は、前記前回の充電率が50〜80%と10〜30%の領域にあるとき、前記第1の充電率のウェイトを大きくするようにした、
ことを特徴とするバッテリの充電率検出装置。
【請求項6】
バッテリの充放電電流を検出する電流検出手段と、
前記バッテリの端子電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電流検出手段で検出した充放電電流を積算して第1の充電率を算出する第1充電率算出手段と、
前記電流検出手段で検出した充放電電流、前記電圧検出手段で検出した端子電圧、バッテリの等価回路のインピーダンスからバッテリの開放電圧を推定して得られた推定開放電圧、該推定開放電圧に基づいて第2の充電率を算出する第2充電率算出手段と、
前記第1充電率算出手段で得た第1の充電率および前記第2充電率算出手段で得た第2の充電率を、前回の充電率が存在する充電率の領域によって決まる前記バッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間に応じて設定したウェイトを用いて重み付けして合成し、バッテリの第3の充電率を算出する第3充電率算出手段と、
を備え、
前記第3充電率算出手段は、前記バッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間が長いほど、前記第1の充電率のウェイトを大きくするようにし、
前記バッテリが、正極にマンガン酸リチウムを用い、負極にチタン酸リチウムを用いたバッテリであって、
前記第3充電率算出手段は、前記前回の充電率が50〜70%の領域にあるとき、前記第1の充電率のウェイトを大きくするようにした、
ことを特徴とするバッテリの充電率検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次バッテリの充電率を精度良く検出することができるバッテリの充電率検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバッテリの充電率検出装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。
この従来のバッテリの充電率検出装置は、バッテリの充放電電流を積算して求めた充電率(SOC:State of Charge)と、バッテリ開放電圧の推定値から求めた充電率とを、バッテリの使用状況に応じて随時変化させるウェイトにより重み付けして合成し、バッテリの最終的な充電率に相当する充電容量を求めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−201743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のバッテリの充電率検出装置には、以下に説明するような問題がある。
すなわち、上記従来のバッテリの充電率検出装置においては、バッテリのゆっくりした速度となる応答(遅い応答)が現れ、これに起因して充電率の精度が悪化している充電率の範囲にあっても、上記演算をそのまま行っているので、バッテリの実際の特性を反映できず、算出された充電率が悪化してしまうといった問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、積算充放電電流に基づいて得た充電率と、開放電圧に基づいて得た充電率と、を用いてこれらを重み付けすることで最終的な充電率を求める場合に、前回の充電率が存在する充電率の領域によって決まるバッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間が長い(遅い応答速度)部分をも考慮して、バッテリの充電率をより高い精度で検出することができるようにしたバッテリの充電率検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため本発明によるバッテリの充電率検出装置は、
バッテリの充放電電流を検出する電流検出手段と、
前記バッテリの端子電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電流検出手段で検出した充放電電流を積算して第1の充電率を算出する第1充電率算出手段と、
前記電流検出手段で検出した充放電電流、前記電圧検出手段で検出した端子電圧、バッテリの等価回路のインピーダンスからバッテリの開放電圧を推定して得られた推定開放電圧、該推定開放電圧に基づいて第2の充電率を算出する第2充電率算出手段と、
前記第1充電率算出手段で得た第1の充電率および前記第2充電率算出手段で得た第2の充電率を、前回の充電率が存在する充電率の領域によって決まる前記バッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間に応じて設定したウェイトを用いて重み付けして合成し、バッテリの第3の充電率を算出する第3充電率算出手段と、
を備え、
前記第3充電率算出手段は、前記バッテリの端子電圧が安定するまでの時間が長いほど、前記第1の充電率のウェイトを大きくするようにした、
ことを特徴とする。
【0008】
好ましくは、第3充電率算出手段が、端子電圧が安定するまでにかかる時間に比例して、第1の充電率のウェイトを大きくするようにした、
ことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、第1ウェイトを大きくする範囲を、前回の充電率が50%以上の領域ではバッテリの正極の材料に基づいて決定し、前回の充電率が50%未満の領域ではバッテリの負極の材料に基づいて決定する、
ことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、バッテリが、正極にマンガン酸リチウムを用いたバッテリであって、
第3充電率算出手段が、前回の充電率が50〜80%の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくするようにした、
ことを特徴とする。
【0011】
好ましくは、バッテリが、負極にグラファイトを用いたバッテリであって、
第3充電率算出手段が、前回の充電率が10〜40%の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくするようにした、
ことを特徴とする。
【0012】
好ましくは、バッテリが、正極にマンガン酸リチウムを用い、負極にグラファイトを用いたバッテリであって、
第3充電率算出手段が、前回の充電率が65〜80%と30〜40%の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくするようにした、
ことを特徴とする。
【0013】
好ましくは、バッテリが、正極にニッケル系材料を用い、負極にグラファイトを用いたバッテリであって、
第3充電率算出手段が、前回の充電率が50〜80%と10〜30%の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくするようにした、
ことを特徴とする。
【0014】
好ましくは、バッテリが、正極にマンガン酸リチウムを用い、負極にチタン酸リチウムを用いたバッテリであって、
第3充電率算出手段が、前回の充電率が50〜70%の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくするようにした、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のバッテリの充電率検出装置にあっては、前回の充電率が存在する充電率の領域によって決まるバッテリの充放電電流の流れを停止してからバッテリの端子電圧が安定するまでの時間が長い(遅い応答速度)部分をも考慮して、バッテリの端子電圧が安定する時間が長いほど、第1の充電率のウェイトを大きくするようにしたので、バッテリの充電率をより高い精度で検出することができる。
【0017】
また、第3充電率算出手段が、端子電圧が安定するまでにかかる時間に比例して、第1の充電率のウェイトを大きくするようにしたので、バッテリの遅い応答速度の部分の影響に合わせて小さくすることで、精度の高い充電率を検出することが可能となる。
【0018】
また、第1ウェイトを大きくする範囲を、充電率が高い領域ではバッテリの正極の材料に基づいて決定し、充電率が低い領域ではバッテリの負極の材料に基づいて決定するようにしたので、バッテリの極の材料に応じて精度の高い充電率を検出することが可能となる。
【0019】
また、バッテリが、正極にマンガン酸リチウムを用いたバッテリであって、第3充電率算出手段が、前回の充電率が50〜80%の応答速度が遅くなる充電率の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくするようにしたので、上記バッテリを用いる場合でも、バッテリの極の材料に応じて精度の高い充電率を検出することが可能となる。
【0020】
また、バッテリが、負極にグラファイトを用いたバッテリであって、第3充電率算出手段が、前回の充電率が10〜40%の応答速度が遅くなる充電率の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくするようにしたので、精度の高い充電率を検出することが可能となる。
【0021】
また、バッテリが、正極にマンガン酸リチウムを用い、負極にグラファイトを用いたバッテリであって、第3充電率算出手段が、前回の充電率が65〜80%と30〜40%の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくするようにしたので、精度の高い充電率を検出することが可能となる。
【0022】
また、バッテリが、正極にニッケル系材料を用い、負極にグラファイトを用いたバッテリであって、第3充電率算出手段が、前回の充電率が50〜80%と10〜30%の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくするようにしたので、精度の高い充電率を検出することが可能となる。
【0023】
また、バッテリが、正極にマンガン酸リチウムを用い、負極にチタン酸リチウムを用いたバッテリであって、第3充電率算出手段が、前回の充電率が50〜70%の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくするようにしたので、精度の高い充電率を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例1に係るバッテリの充電率検出装置の構成を示すブロック図である。
図2】バッテリの充電率検出装置の充電率判定部で実行される充電率検出プロセスのフローチャートを示す図である。
図3】(a)はバッテリの充電率−開放電圧との関係を経過時間ごとに表した図、(b)は充電率と重みとの関係を示す図である。
図4】本発明の実施例2に係るバッテリの充電率検出装置を構成する充電率判定部の構成を示すブロック図である。
図5】(a)は充電率と電圧差の関係を経過時間別に示す図、(b)は充電率と第1ウェイトとの関係を示す図である。
図6】充電率が60〜80%の範囲にあるときの走行距離と充電率の関係につき、充電率の真値,従来技術による充電率、実施例2による充電率の実験結果を比較して示した図である。
図7】充電率が20〜50%の範囲にあるときの走行距離と充電率の関係につき、充電率の真値,従来技術による充電率、実施例2による充電率の実験結果を比較して示した図である。
図8】正極にニッケル系、負極にグラファイトをそれぞれ用いたバッテリにおける、異なる経過時間ごとの、充電率−開放電圧の関係を示す図である。
図9】正極にニッケル系酸、負極にグラファイトをそれぞれ用いたバッテリにおける、異なる経過時間ごとの、充電率−端子電圧と開放電圧との差の関係を示す図である。
図10】正極にマンガン酸リチウム、負極にチタン酸リチウムをそれぞれ用いたバッテリにおける、異なる経過時間ごとの、充電率−開放電圧の関係を示す図である。
図11】正極にマンガン酸リチウム、負極にチタン酸リチウムをそれぞれ用いたバッテリにおける、異なる経過時間ごとの、充電率−端子電圧開放電圧と開放電圧との差の関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
なお、以下の各実施例にあって実質的に同じ部分については同じ符号を用いて示し、その省略を説明する場合がある。
【実施例1】
【0026】
まず、実施例1のバッテリの充電率検出装置の全体構成を説明する。
この実施例1のバッテリの充電率検出装置は、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される。
すなわち、図1に示すように、充電率検出装置は、同じく車載したバッテリ1に接続され、充放電電流検出部2と、端子電圧検出部3と、電流積算法充電率推定部4と、開放電圧推定法充電率推定部5と、充電率判定部6と、前回値保持部7と、を備えている。
【0027】
バッテリ1は、充放電が可能な二次バッテリであり、多数のセルを直列接続・配置したものである。ここでは、リチウムイオンバッテリを用いるが、これに限られず他の種類のバッテリを用いるようにしてもよい。
【0028】
充放電電流検出部2は、バッテリ1への充電時およびバッテリ1からの放電時のそれぞれにおいて流れる充放電電流を検出するもので、本発明の電流検出手段に相当する。
端子電圧検出部3は、バッテリ1の端子電圧を検出するもので、本発明の電圧検出手段に相当する。
【0029】
電流積算法充電率推定部4は、電流積算法(クーロンカウント法とも言われる)による演算を行う。すなわち、充放電電流検出部2で検出した充放電電流を積算して電荷の変化量を求め、満充電量で除算した値を初期充電率に加算することで第1の充電率SOC1を算出し、これを充電率判定部6に入力する。
なお、電流積算法充電率推定部4は、本発明の第1の演算手段に相当する。
【0030】
開放電圧推定法充電率推定部5は、開放電圧推定法による演算を行う。すなわち、バッテリ1の図示しない等価回路モデルおよびカルマンフィルタを有しており、充放電電流検出部2で検出した充放電電流と端子電圧検出部3で検出した端子電圧とが入力されて、これらに基づいてバッテリ1の開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)を推測する。また、予め計測して得たバッテリ1の開放電圧(OCV)−充電率(SOC)の関係データを有しており、上記関係データをもとに、推測した開放電圧に相当する充電率を第2の充電率SOC2として算出して、これを充電率判定部6に入力する。
なお、開放電圧推定法充電率推定部5は、第2の演算手段に相当する。
【0031】
充電率判定部6は、電流積算法充電率推定部4で算出した第1の充電率SOC1と開放電圧推定法充電率推定部5で算出した第2の充電率SOC2とが入力されるとともに、充電率判定部6で前回算出され前回置保持部7で保持された第3の充電率SOC3の前回値SOC3(k-1)が入力される。
ここでkは現時刻(ただし離散時刻)を表すので、k-1はその前のサンプリングの時刻を表す。
充電率判定部6は、前回位置SOC(k-1)の値に応じて第1の充電率SOC1と第2の充電率SOC2にそれぞれ後で説明するウェイトを乗算して重み付けによる合成を行い、第3の充電率SOC3を算出して出力する。
なお、充電率判定部6は、本発明の第3の演算手段に相当する。
【0032】
前回値保持部7は、充電率判定部6から出力された第3の充電率SOC3(k)を記憶するもので、この値を次の充電率判定処理時に前回の第3の充電率SOC3(k-1)として用いるためこの前回値を充電率判定部6に入力可能である。なお、ブロック中のzはz変換を示す。
【0033】
充電率判定部6では、図2に示すフローチャートにしたがって、充電率判定プロセスを実行する。
充電率判定部6は、ステップS1で前回置保持部7から第3の充電率SOC3の前回値SOC3(k-1)を読み込む。次いで、ステップS2に進む。
ステップS2では、読み込んだ前回値SOC3(k-1)が、60%<SOC3(k-1)<80%、または20%<SOC3(k-1)<50%の範囲にあるか否かを判定する。
この判定結果がYESであればステップS3へ進み、NOであればステップS4へ進む。
【0034】
ここで、前回値SOC3(k-1)が上記範囲内にあるか否かを判定するのは、バッテリ1が上記範囲内では不安定性が高まる、言い換えると、バッテリ1の端子電圧が長い時間落ち着かないからである。この結果、上記範囲では、カルマンフィルタは推定可能な応答範囲が限られていて、このため開放電圧法では精度の高い充電率SOC2を得ることはできない。
なお、上記のように端子電圧が長い時間落ち着かないのは、バッテリ1に遅い応答部分(長い時定数)による電圧の変化があるからである。
【0035】
一般的に、バッテリ1の正極であるスピネル型マンガン酸リチウムは、充電状態(リチウムイオンの脱離状態)からリチウムの挿入に伴って4価から3価のマンガンに還元され、この還元につれて結晶格子の不安定性が高まり、充電率SOCが60〜80%近傍の範囲で結晶格子が転移する。このため、電極電位に非線形性が現れる。
一方、充電率SOCが20〜50%近傍の範囲ではバッテリ1の負極であるグラファイトでのリチウムイオンの脱離、挿入が行われ、バッテリ1でのステージ構造が変化する。このため、電極電位に非線形性が現れる。
【0036】
ステップS3では、第1の充電率SOC1に値が1のウェイトを乗算し、第2の充電率SOC2には値が0のウェイトを乗算してその値を第3の充電率SOC3とする。したがって、この場合SOC3=SOC1となる。
一方、ステップS4では、第1の充電率SOC1に値0のウェイトを乗算し、第2の充電率SOC2には値1のウェイトを乗算してその値を第3の充電率SOC3とする。したがって、この場合SOC3=SOC2となる。
【0037】
このような重み付けを表した図が図3である。すなわち、同図(a)の充電率−開放電圧の特性図に示すように、前回の第3の充電率が、20〜30%、60〜80%の領域にあるときは電流積算法で算出した第1の充電率SOC1を第3の充電率SOC3とし、それ以外の領域では開放電圧法で算出した第2の充電率SOC2を第3の充電率SOC3とする。
ここで、同図(b)に第2の充電率SOC2に乗算されるウェイトαと前回の第3の充電率SOC3(k-1)(ただし、同図には単にSOCと記している)との関係を示してある。
【0038】
ウェイトα(図3中(b)に太い実線で描いてある)は、第1の充電率SOC1に乗算されるウェイトである。すなわち、本実施例では、ウェイトαは前回の第3の充電率SOC3(k-1)に応じて1か0を取るようにしてある。
一方、第2の充電率SOC2には、上記とは逆の0か1なるウェイトが乗算されることになる。
なお、同図に示す一点鎖線がより実際に近いウェイトであるが、太い実線のウェイトは、1と0の2値ながら、かなりよくその値を近似している。
【0039】
この結果、前回の第3の充電率SOC3(k-1)が上記範囲内にある場合には、第1の充電率SOC1にはウェイト1が乗算され、第2の充電率SOC2には0が乗算されることになる。
これに対し、前回の第3の充電率SOC3(k-1)が上記範囲外にある場合には、第1の充電率SOC1にはウェイト0が乗算され、第2の充電率SOC2には1が乗算されることになる。
そして、第3の充電率は、上記ウェイトをそれぞれ考慮した第1、第2の充電率SOC1、SOC2の加算値である。
【0040】
実施例1の充電率検出装置の作用について、以下に説明する。
充放電電流検出部2は、バッテリ1の充放電電流を検出し、この検出信号を電流積算法充電率推定部4と開放電圧推定法充電率推定部5とに入力する。
また、端子電圧検出部3は、バッテリ1の端子電圧を検出し、この検出信号を開放電圧推定法充電率推定部5に入力する。
【0041】
電流積算法充電率推定部4では、入力された充放電電流を積算して得た値に基づいてバッテリ1の第1の充電率SOC1を算出し、これを充電率判定部6に入力する。
また、これと同時に開放電圧推定法充電率推定部5は、入力された充放電電流と端子電圧とに基づいて第2の充電率SOC2を算出し、これを充電率判定部6に入力する。
【0042】
充電率判定部6は、ここで前回算出され前回値保持部7に記憶された第3の充電率の前回値SOC3(k-1)と、第1の充電率SOC1と、第2の充電率SOC2とが入力されて、前回の第3の充電率の前回位置SOC3(k-1)が20〜50%の範囲内あるいは60〜80%の範囲内にあるか否かを判定する。ここで、上記範囲内にあるということは、バッテリ1の端子電圧が安定するまでに所定値以上の時間がかかるということに相当することになる。
一方、上記範囲外であれば、ウェイトを1とするので、第1の充電率SOC1には0が乗算され、第2の充電率SOC2には1が乗算される。したがって、この場合、第3の充電率SOC3は第2の充電率SOC2となる。
【0043】
これに対し、上記範囲内にあれば、ウェイトを0とするので、第1の充電率SOC1には値1のウェイトが乗算され、第2の充電率SOC2には値0のウェイトが乗算される。したがって、この場合、第3の充電率SOC3は第1の充電率SOC1となる。
この結果、バッテリ1の反応速度が遅い部分の影響が大きくでる部分では、精度が悪化する開放電圧推定法で得た第2充電率SOC2を用いず、その影響を受けない電流積算法で得た第1の充電率SOC1を用いることで、充電率の推定精度の悪化を抑えるようにしている。
【0044】
以上の説明から分かるように、実施例1のバッテリ1の充電率検出装置は、以下の効果を得ることができる。
すなわち、バッテリ1の充電率検出装置では、充電率SOCが20〜50%近傍の範囲内および60〜80%近傍の範囲内にあるときは、電流積算法で算出した第1の充電率SOC1のウェイトの値を1とし、開放電圧法で算出した第2の充電率SOC2のウェイトの値を0として、充電率の領域によって決まるバッテリ1の応答速度に応じてウェイトαを設定している。すなわち、この応答速度が遅い領域では、開放電圧法により算出した第2の充電率SOC2は用いないようにした。
したがって、バッテリ1の遅い応答速度部分をも考慮してバッテリ1の充最終的な電率、すなわち第3の充電率SOC3を算出することができ、この結果、従来技術の場合より高い精度で充電率を検出することができる
【0045】
また、ウェイトを0と1との2値にしたので、簡単な演算で高い精度の充電率を算出することができるようになる。
【実施例2】
【0046】
次に、本発明の実施例2に係るバッテリの充電率検出装置について、図面に基づいて説明する。
実施例2のバッテリの充電率検出装置は、図1に示した実施例1のバッテリの充電率検出装置と同じ構成の機能ブロックを備えているが、充電率判定部6の具体的な構成が実施例1の場合と異なる。
【0047】
すなわち、実施例2では、充電率判定部6は、図4に示すように、第1ウェイト設定部6aと、第1乗算器6bと、加算器6cと、第2ウェイト設定部6dと、第2乗算器6eと、を備えている。
第1ウェイト設定部6aは、充電率−第1ウェイトの関係データを記憶しており、前回値保持部7で保持した前回の第3の充電率SOC3(k-1)が入力されて、これに相当する第1ウェイトαを上記データに基づいて決定し、第1乗算器6bに入力する。
なお、充電率−第1ウェイトの関係データについては、後で説明する。
【0048】
第1乗算器6bは、第1ウェイト設定部6aで決定された第1ウェイトαと電流積算法充電率推定部4で算出した第1の充電率SOC1とが入力されて、これらを乗算して、この乗算値を加算器6cに入力する。
【0049】
第2ウェイト設定部6dは、充電率−第2ウェイトの関係データを記憶しており、前回値保持部7で保持した前回の第3の充電率SOC3(k-1)が入力されて、これに相当する第2ウェイトβを上記データに基づいて決定し、第2乗算器6eに入力する。
なお、充電率−第2ウェイトの関係データについては、後で説明する。
【0050】
第2乗算器6eは、開放電圧推定法充電率推定部5で算出された第2の充電率SOC2と第2ウェイト設定部6dで設定された第2ウェイトβとが入力されて、これらを乗算して、この乗算値を加算器6cに入力する。
【0051】
加算器6cは、第1乗算器6bで得られた乗算値と第2乗算器6eで得られた乗算値とを加算して、この加算値を第3の充電率SOC3として出力する。
その他の構成は、実施例1と同じであり、それらの説明は省略する。
【0052】
ここで、上記第1ウェイトα、第2ウェイトβの値について説明する。
図5(a)は、バッテリ1の充電率と電圧差との関係を示し、バッテリ1の充放電電流の流れを停止してからの経過時間ごとの特性を示している。ここで、電位差は、バッテリ1が安定したときの開放電圧と異なる経過時間での開放電圧との電圧差である。
同図において、実線は3時間経過後、一点鎖線は1時間経過後、破線は10分経過後、二点鎖線は1分経過後をそれぞれ示す。経過時間が短いほど、バッテリ1の遅い応答部分の影響が出ている。すなわち、短時間における開放電圧推定法では、開放電圧に推定誤差が出てしまうことが分かる。
【0053】
そこで、同図(b)に示すように、バッテリ1の遅い応答部分の影響が大きい部分ほど、第1ウェイトαの値が大きくなるようにして、開放電圧推定法で算出する第2の充電率SOC2の第2ウェイトβの値が小さくなるようにする。
なお、第1ウェイトαと第2ウェイトβとの加算値は、常時1となるように設定するので、第2ウェイトβは、1から第1ウェイトαを減算した値になる。したがって、第2ウェイトβのグラフは図4に示すように、同図(b)を上下方向に反転させた形状となる。
【0054】
実施例2の充電率検出装置の作用を以下に説明する。
電流積算法充電率推定部4で第1の充電率SOC1を算出し、開放電圧推定法充電率推定部5で第2の充電率SOC2を算出して、これらの算出値を充電率判定部6に入力するまでの信号の流れや処理は、実施例1と同じである。
【0055】
充電率判定部6は、前回値保持部7で記憶していた前回の第3の充電率SOC3(k-1)が入力されて、この値に基づいて第1ウェイト設定部6aおよび第2ウェイト設定部6dにて、それぞれ対応する第1ウェイトα、第2ウェイトβをそれぞれ決定する。
第1ウェイト設定部6aで決定された第1ウェイトαは第1乗算器6bに入力されて、第1の充電率SOC1に乗算され、また、第2ウェイト設定部6dで決定された第2ウェイトβは第2除算器6eに入力されて、第2の充電率SOC2に乗算される。
【0056】
これらの除算値は、加算器6bで加算されて第3の充電率SOC3(k)となる。
すなわち、SOC3=α・SOC1+β・SOC2 である。なお、α+β=1である。
ここで、第前回の第3の充電率SOC3(k-1)が20〜50%、あるいは60〜80%の範囲内にあるときは、1ウェイト設定部6aでは、第1ウェイトαを第2ウェイトβより大きくなるようにし、範囲外にあるときは逆傾向にする。
【0057】
言い換えると、バッテリ1の端子電圧が安定するまでにかかる時間が長いときには、第1の充電率に乗算する第1ウェイトを大きくする。そして、実施例2では、この場合、端子電圧が安定するまでにかかる時間に比例して第1ウェイトαが大きくなるようにする。第2ウェイトβは、上記とは逆の傾向となる。
【0058】
図6および図7に、それぞれ前回の第3の充電率SOC3(k-1)が60〜80%の範囲、あるいは20〜50%の範囲に有る場合に、充電率の精度を比較した実験結果を示す。いずれも横軸は走行時間(秒)、縦軸は充電率(%)を表している。
上記両図において、真値は実線で、従来技術での充電率は一点鎖線で、また実施例2の充電率検出装置での充電率を破線でそれぞれ表す。
60〜80%の範囲を表す図6では、約2,500秒から約3,500秒の範囲で従来技術の場合には充電率の検出精度が悪化しているが、実施例2のものでは真値に極めて近い値が得られていることが分かる。
一方、20〜50%の範囲を表す図7では、約約19,700秒以降、従来技術のものでは真値からのずれが大きくなってしまっているにもかかわらず、実施例2のものでは真値に極めて近い値が得られていることが分かる。
【0059】
以上、説明したように、実施例2のバッテリ1の充電率検出装置は、以下の効果を得ることができる。
すなわち、実施例2のバッテリ1の充電率検出装置にあっては、前回の第3の充電率SOC3(k-1)が60〜80%の範囲、あるいは20〜50%の範囲といったバッテリ1の端子電圧が安定するまでにかかる時間が長くなる領域では、第1の充電率SOC1の第1ウェイトαをその時間に比例させて大きくし、第2の充電率SOC2の第2ウェイトβをαとは逆の傾向(β=1−α)となるようにして重み付けを行って加算した値を第3の充電率SOC3とした。
したがって、バッテリ1の遅い応答速度の部分の存在にもかかわらず、バッテリ1の充電率SOC3を精度よく検出することができるようになる。この精度は、実施例1の場合よりも良くなる。
【0060】
以上のように、実施例1、実施例2について説明してきたが、ここでバッテリの種類に応じた、応答速度が遅くなる範囲等につき、実験したのでそれらの例について以下に説明する。
なお、本発明にあっては、充電率が高い領域の第1のウェイトを大きくする範囲は、バッテリの正極の材料に基づいて決定し、充電率が低い領域の第1のウェイトを大きくする範囲を、バッテリの負極の材料に基づいて決定する。このようにすることで、高い精度の充電率を算出することができるようになる。
【0061】
実験の結果、好ましい態様は、以下の通りである。
正極にマンガン酸リチウムを用いたバッテリの場合は、前回の充電率が50〜80%近傍の応答速度が遅くなる充電率の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくすることである。
また、負極にグラファイトを用いたバッテリの場合、前回の充電率が10〜40%近傍の応答速度が遅くなる充電率の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくすることである。
また、正極にマンガン酸リチウムを用い、負極にグラファイトを用いたバッテリの場合、前回の充電率が65〜80%近傍と30〜40%近傍の応答速度が遅くなる充電率の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくすることである。
また、正極にニッケル系材料を用い、負極にグラファイトを用いたバッテリの場合、前回の充電率が50〜80近傍と10〜30%近傍の応答速度が遅くなる充電率の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくすることである。
また、正極にマンガン酸リチウムを用い、負極にチタン酸リチウムを用いたバッテリの場合、前回の充電率が50〜70%近傍の応答速度が遅くなる充電率の領域にあるとき、第1の充電率のウェイトを大きくすることである。
【0062】
ここで、上記各実験例のうち、正極にニッケル系材料を用い、負極にグラファイトを用いたバッテリの場合における、異なる経過時間ごとの、充電率(SOC)−開放電圧(OCV)の関係、および端子電圧異なる経過時間ごとの、充電率(SOC)−端子電圧と開放電圧との差(すなわち、24時間後など安定したときの端子電圧)の関係を、それぞれ図8図9に示す。
【0063】
ここで、経過時間は、1分後、10分後、30分後、1時間後、3時間後、24時間後を取ってあり、それぞれ同図中直線、点線、破線、一点鎖線、二点鎖線、太線で示してある。
図8から分かるように、経過時間の大きさによって開放電圧が変化して行くことが分かる。なお、経過時間が長くなるにつれて、開放電圧は端子電圧に近づいていくことが知られている。
一方、図9をみると、充電率が50〜80%近傍および10〜30%の領域で応答速度が遅くなっており、この領域での開放電圧法で得られた充電率は、短い経過時間では精度が悪くなることが分かる。
【0064】
次に、正極にマンガン酸リチウムを用い、負極にチタン酸リチウムを用いたバッテリの場合における、異なる経過時間ごとの、充電率(SOC)−開放電圧(OCV)の関係、および端子電圧異なる経過時間ごとの、充電率(SOC)−端子電圧と開放電圧との差の関係を、それぞれ図10図11に示す。
【0065】
ここでは、経過時間は、1分後、10分後、1時間後、3時間後、24時間後を取ってあり、それぞれ同図中直線、点線、一点鎖線、二点鎖線、太線で示してある(ただし、図11では、24時間後は省略してある)。
図10から分かるように、経過時間の大きさによって開放電圧が変化して行くことが分かる。なお、経過時間が長くなるにつれて、開放電圧は端子電圧に近づいていくことが知られている。
一方、図11をみると、充電率が60%近傍の応答速度が遅くなっており、この領域での開放電圧法で得られた充電率は、短い経過時間では精度が悪くなることが分かる。
【0066】
以上、本発明を上記実施例に基づき説明してきたが、本発明は上記実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
【0067】
たとえば、上記重み付けは、外部電源による充電時、登坂路走行時、高速走行時などのように、充放電電流が大きい場合に、行うようにしてもよい。この場合、大きな効果を得ることができる。
【0068】
また、第3充電率算出手段は、前記充放電電流値が所定値以上となるときに、前記第1の充電率のウェイトを大きくするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 バッテリ
2 充放電電流検出部(充放電電流検出手段)
3 端子電圧検出部(端子電圧検出手段)
4 電流積算法充電率推定部(第1の演算手段)
5 開放電圧推定法充電率推定部(第2の演算手段)
6 充電率判定部(第3の演算手段)
6a 第1ウェイト設定部
6b 第1乗算器
6c 第2ウェイト設定部
6d 第2乗算器
6e 加算器
7 前回値保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11