特許第6260016号(P6260016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6260016
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】PTFE/PFSAブレンド膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/36 20060101AFI20180104BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20180104BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20180104BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20180104BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   B01D71/36
   B01D69/00
   B01D69/02
   C08J9/00 ACEW
   C08L27/18
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-98054(P2016-98054)
(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-39117(P2017-39117A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2016年5月16日
(31)【優先権主張番号】14/815,031
(32)【優先日】2015年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596064112
【氏名又は名称】ポール・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ティー. シッタラー
(72)【発明者】
【氏名】アマルナート シング
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−204486(JP,A)
【文献】 特開2013−030690(JP,A)
【文献】 特開2009−170692(JP,A)
【文献】 特開2007−042912(JP,A)
【文献】 特開2011−088143(JP,A)
【文献】 特開2014−237130(JP,A)
【文献】 特開2010−155233(JP,A)
【文献】 特表2011−525857(JP,A)
【文献】 特表2009−507643(JP,A)
【文献】 特開2005−342718(JP,A)
【文献】 特開2003−045449(JP,A)
【文献】 特表平06−503258(JP,A)
【文献】 特開2017−029975(JP,A)
【文献】 米国特許第06492431(US,B1)
【文献】 特開平08−089845(JP,A)
【文献】 特開2007−332441(JP,A)
【文献】 特開2008−019507(JP,A)
【文献】 Xiangguo Teng et. al.,,Solution casting Nafion/polytetrafluoroethylene membrane for vanadium redox flow battery application,Electronchimica Acta,ドイツ,ELSEVIER,2012年11月 8日,Vol. 88, p. 725-734
【文献】 Takuya Nagafuchi et. al.,,Particle retention mechanism of filter in high temperature chemical,Solid State Phenomena,スイス,Trans Tech Publications,2009年,Vol. 145-146, p. 69-72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00− 71/82
C02F 1/44
H01L 21/304
C02F 1/42
C08J 9/00− 9/42
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルフルオロスルホン酸(PFSA)とブレンドされたPTFEを含み、27ダイン/cm(27×10−5N/cm)〜41ダイン/cm(41×10−5N/cm)の臨界湿潤表面張力(CWST)を有し、1nm〜100nmの範囲の細孔等級を有する多孔質膜。
【請求項2】
少なくとも30ダイン/cm(30×10−5N/cm)のCWSTを有する、請求項1に記載の多孔質膜。
【請求項3】
金属を含有する流体をろ過する方法であって、前記方法がペルフルオロスルホン酸(PFSA)とブレンドされたPTFEを含む多孔質膜に金属を含有する流体を通過させるステップを含み、
前記膜が、27ダイン/cm(27×10−5N/cm)〜41ダイン/cm(41×10−5N/cm)の臨界湿潤表面張力(CWST)を有し、1nm〜100nmの範囲の細孔等級を有し、前記流体から金属を除去する、方法。
【請求項4】
前記金属を含有する流体がエレクトロニクス産業で使用される流体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属を含有する流体から第2族金属及び/又は遷移金属を除去するステップを含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
硫酸過酸化水素水混合物(SPM)流体をろ過する方法であって、前記方法がペルフルオロスルホン酸(PFSA)とブレンドされたPTFEを含む多孔質膜にSPM流体を通過させるステップを含み、
前記膜が、30ダイン/cm(30×10−5N/cm)〜41ダイン/cm(41×10−5N/cm)の臨界湿潤表面張力(CWST)を有し、1nm〜100nmの範囲の細孔等級を有し、前記流体から粒子を除去する、方法。
【請求項7】
前記流体から金属を除去するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属を含有する流体から第2族金属及び/又は遷移金属を除去するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
潤滑剤も含め、PTFE樹脂をペルフルオロスルホン酸(PFSA)ポリマー溶液と組み合わせるステップ;
テープを形成するステップ;
前記テープを延伸して多孔質膜を生成するステップ;及び
前記多孔質膜をイソプロピルアルコール(IPA)に浸漬するステップを含む、請求項1又は2に記載の多孔質膜を作製する方法。
【請求項10】
前記膜を乾燥するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
PTFE樹脂をペルフルオロスルホン酸(PFSA)ポリマー溶液と組み合わせる際、PFSAポリマー溶液が、1%〜4%の範囲のPFSAポリマー濃度を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
[0001]PTFE膜、特に延伸PTFE(ePTFE)膜は、腐食性又は化学的に活性な液体などの浸漬・負荷流体の処理を含む用途を含めて種々の液体及び気体のろ過用途で使用される。しかし、低い流れ抵抗をもちながら、熱い硫酸過酸化水素水混合物(SPM)流体をろ過することができ、及び/又は金属捕捉又は金属除去効率を示すことができる多孔質膜に対するニーズがある。
【0002】
[0002]本発明のこれら及びその他の利点は以下の説明から明らかとなろう。
【0003】
[発明の簡単な概要]
[0003]本発明の実施形態は、ペルフルオロスルホン酸(PFSA)とブレンドされたPTFEを含み、少なくとも約27ダイン/cm(約27×10−5N/cm)、幾つかの実施形態においては少なくとも約30ダイン/cm(約30×10−5N/cm)のCWSTを有する多孔質膜を提供する。
【0004】
[0004]別の実施形態においては、硫酸過酸化水素水混合物(SPM)流体をろ過する方法が提供され、上記方法はペルフルオロスルホン酸(PFSA)とブレンドされたPTFEを含む多孔質膜に流体を通過させるステップを含み、上記膜は少なくとも約27ダイン/cm(約27×10−5N/cm)、幾つかの実施形態においては少なくとも約30ダイン/cm(約30×10−5N/cm)のCWSTを有し、流体から粒子を除去する。
【0005】
[0005]さらに別の実施形態においては、金属を含有する流体をろ過する方法が提供され、上記方法はペルフルオロスルホン酸(PFSA)とブレンドされたPTFEを含む多孔質膜に金属を含有する流体を通過させるステップを含み、上記膜は少なくとも約27ダイン/cm(約27×10−5N/cm)、幾つかの実施形態においては少なくとも約30ダイン/cm(約30×10−5N/cm)のCWSTを有し、流体から金属を除去する。
【0006】
[0006]上記膜を含む装置、及び上記膜を作製する方法も、本発明の実施形態に従って提供される。
【0007】
[発明の詳細な説明]
[0007]本発明の実施形態によると、多孔質膜はペルフルオロスルホン酸(PFSA)とブレンドされたPTFEを含み、上記膜は少なくとも約27ダイン/cm(約27×10−5N/cm)、幾つかの実施形態においては少なくとも約30ダイン/cm(約30×10−5N/cm)のCWSTを有する。
【0008】
[0008]膜の一実施形態において、PFSAは架橋され、別の実施形態において、PFSAは架橋されない。
【0009】
[0009]別の実施形態においては、SPM流体をろ過する方法が提供され、上記方法はペルフルオロスルホン酸(PFSA)とブレンドされたPTFEを含む多孔質膜に流体を通過させるステップを含み、上記膜は少なくとも約27ダイン/cm(約27×10−5N/cm)、幾つかの実施形態においては少なくとも約30ダイン/cm(約30×10−5N/cm)のCWSTを有し、粒子(シリカを含有する粒子などの)を流体から除去する。
【0010】
[0010]本発明の実施形態による金属を含有する流体をろ過する方法は、ペルフルオロスルホン酸(PFSA)とブレンドされたPTFEを含む多孔質膜に金属を含有する流体を通過させるステップを含み、上記膜は、少なくとも約27ダイン/cm(約27×10−5N/cm)、幾つかの実施形態においては少なくとも約30ダイン/cm(約30×10−5N/cm)のCWSTを有し、流体から金属を除去する。本方法の幾つかの実施形態において、上記膜は第2族金属(例えば、Mg及び/又はCa)、多価金属及び/又は遷移金属(例えば、Cr、Mn、Fe、及び/又はNi)を流体から除去する。
【0011】
[0011]別の実施形態においては、膜を作製する方法が提供され、上記方法は、任意に潤滑剤も含め、PTFE樹脂をペルフルオロスルホン酸(PFSA)と組み合わせるステップ;テープを形成するステップ;テープを延伸して多孔質膜を生成するステップ;及び膜をイソプロピルアルコールに浸漬するステップを含む。
【0012】
[0012]別の実施形態においては、多孔質膜を製造する方法が提供され、上記方法は、PTFE及びPFSAを、任意に潤滑剤と共に含むブレンドを製造するステップ;ブレンドをテープに押し出すステップ;テープを二軸延伸して多孔質膜を得るステップ;任意に、約325℃の温度で約5分間、多孔質膜をアニールするステップを含む。
【0013】
[0013]本発明による膜を作製する幾つかの実施形態においては、架橋剤が含まれ、他の実施形態では架橋剤は使用されない。
【0014】
[0014]金属作用剤が使用され、(例えば、マイクロエレクトロニクス産業において)規格を満たすために後洗浄プロセスで(例えば、HClを用いて)上記金属作用剤を除去する幾つかの用途向けの膜の製造とは対照的に、本発明による膜は金属作用剤を含まないで製造することができて有利である。加えて、コーティングを伴って製造される膜と対照的に、本発明による膜は作製された状態のままで機能的であるように生成することができ、コーティングがないので、細孔構造に悪影響を及ぼすことがない。さらにまた、膜は本発明に従って製造に都合のよいプロセスで製造することができ、例えば、製造は現存する製造プロセスに容易に組み込むことができ、結果として製造速度が速くなる。
【0015】
[0015]加えて、本発明による膜の走査型電子顕微鏡写真はコントロール(ブレンドされてない)PTFE膜と比較して同様な細孔、フィブリル、及び節構造を示す。
【0016】
[0016]本発明による多孔質膜は、高い金属捕捉又は金属除去効率と低い流れ抵抗の組合せを示しつつ、処理される流体中で湿ったままでいる(すなわち、膜はプロセス流体中で脱湿されない)のが有利であり、滅菌ろ過用途を含む広範囲の液体、及び気体(空気を含む)のろ過用途に有用である。代表的な用途には、例えば、診断用途(例えば、サンプル調製及び/又は診断用側方流装置を含む)、インクジェット用途、リソグラフィー、例えば、HD/UHMW PEベースの媒体の代替として、医薬品産業用のろ過流体、金属除去、超純水の生産、工業用水及び地表水の処理、医学用のろ過流体(家庭用及び/又は患者用の使用、例えば、静脈内用途を含み、また例えば血液などの生物学的流体のろ過(例えば、ウィルス除去)も含む)、エレクトロニクス産業用ろ過流体(例えば、マイクロエレクトロニクス産業のフォトレジスト流体及び熱い硫酸過酸化水素水混合物(SPM)流体のろ過)、食品及び飲料産業用ろ過流体、ビールろ過、浄化、抗体及び/又はタンパク質を含有する流体のろ過、核酸を含有する流体のろ過、細胞検出(インサイチュを含む)、細胞収穫、及び/又は細胞培養流体のろ過が挙げられる。代わりに、又は加えて、本発明の実施形態による多孔質膜は、空気及び/又は気体をろ過するのに使用することができ、及び/又は通気用途(例えば、空気及び/又は気体は通過させるが、液体は通さない)に使用することができる。本発明の実施形態による多孔質膜は、例えば眼科手術用品などの手術用装置及び製品を含む、種々の装置に使用することができる。本発明の膜は寸法的に安定である。幾つかの実施形態において、多孔性のPTFE膜は、個別に、例えば支持されない膜として利用することができ、他の実施形態では、多孔質PTFE膜はその他の多孔質エレメント及び/又は別の構成要素と組み合わせて、例えば複合物品、フィルター素子、及び/又はフィルターなどの物品を提供することができる。
【0017】
[0017]PTFEとブレンドするのに使用される適切なPFSA添加剤の1つの例はSolvay Specialty Polymers(Borger、Texas)からアクイヴィオン(Aquivion)(登録商標)PFSA(例えば、アクイヴィオンPFSA D83−24B、アクイヴィオンPFSA D83−06A、及びアクイヴィオンPFSA D79−20BS)として入手可能であり、これはテトラフルオロエチレンとスルホニルフルオリドビニルエーテル(SFVE)F2C=CF−O−CF2−CF2−SO2Fの短い側鎖(SSC)のコポリマーをベースとしている。アイオノマー分散液はそのスルホン酸形態を含有する。適切なPFSA添加剤の別の例はデュポン(DuPont)(商標)ナフィオン(Nafion)(登録商標)PFSAポリマー分散液である。
【0018】
[0018]ブレンドを製造する際、PFSAの濃度はいろいろな用途に合わせて変えることができる。通例、濃度は少なくとも約0.05%であり、約1%〜約20%の範囲が好ましく、約1%〜約4%の範囲がより好ましい。
【0019】
[0019]種々のPTFE樹脂(市販されている樹脂を含む)を本発明に従ってPFSAとブレンドすることができる。潤滑剤を含ませるのが好ましい。当技術分野で公知のような種々の潤滑剤及び潤滑剤濃度が適している。
【0020】
[0020]膜は当技術分野で公知のように製造することができる。所望であれば、PFSAをPTFEと組み合わせる際、潤滑剤との物理的混合の前に、PFSA添加剤をPTFE樹脂に噴霧することができる(例えば、分布を改良するため)。
【0021】
[0021]例えば、必要とされる量のPTFE粉末を、適切な溶媒、例えばメタノール、エタノール、又はイソプロパノールなどのアルコール溶媒中のPFSAの溶液と混合してブレンドを得、次にこのブレンドを無臭のミネラルスピリット、例えばアイソパー(Isopar)Gなどの潤滑剤と混合し、得られたペーストを、例えば双ローラーでせん断に供し、少なくとも2回、約300psi又はそれ以上の圧力下で、各々約55秒間、ビレットに成形する。得られたビレットを室温で約12時間又はそれ以上平衡化させる。次いで、このビレットを所望の形状に押し出す。例えば、26mmのダイギャップサイズ、最大圧力、及び55℃の一定温度で押出を実施して、チューブ形状のPTFEテープを得る。次に、チューブ形状のテープを中心軸に沿って切り開き、ピペットの周りに再度巻き付けて、新しいビレット(非圧縮)を得る。この新しいビレットを、最初の押出プロセスで使用したのと同じ条件で再度押し出す。このステップは、有利な交差方向の機械的性質をPTFEテープに付与するために加えられる。カレンダー加工は、9〜10ミルのテープ厚さを目標として30℃で実施し、4×4”に切断する。得られたテープを次に125℃で1時間乾燥することにより、押し出されたテープから潤滑剤を除去する。
【0022】
[0022]次いで、テープを、例えば以下の条件で延伸する:300%/秒の延伸率で、縦方向(MD)及び横方向(TD)の延伸比は3である。延伸オーブン内の温度は150℃に設定する。
【0023】
[0023]次いで、延伸したテープをアニールする。アニーリングはアニーリングオーブンで行い、その後テープを冷却する。上記延伸により生成した多孔性は、冷却の際、保持される。
【0024】
[0024]いかなる特定の理論にも縛られることなく、膜をイソプロピルアルコール(IPA)に浸漬すると、より多くの表面が処理される流体との接触のために曝露され、金属捕捉能が改良されると考えられる。
【0025】
[0025]膜は、任意の適切な細孔構造、例えば、細孔サイズ(例えば、バブルポイントにより、又は例えば米国特許第4,340,479号に記載されているようにKにより証明されるか、又は毛管凝縮フローポロメーターにより証明される)、平均フローポア(MFP)サイズ(例えば、ポロメーター、例えばPorvairポロメーター(Porvair plc、Norfolk、英国)、又は商標ポロルクス(POROLUX)(Porometer.com;ベルギー)で入手可能なポロメーターを用いて特性決定されたとき)、細孔等級、細孔直径(例えば、例えば米国特許第4,925,572号に記載されている改良型OSU F2試験を用いて特性決定されたとき)、又は除去等級媒体を有することができる。使用される細孔構造は、利用される粒子のサイズ、処理される流体の組成、及び処理される流体の所望の流出レベルに依存する。
【0026】
[0026]通例、本発明による多孔性のPTFE膜は約1マイクロメートル又はそれ以下の細孔等級を有し、(特に脱湿されない適用の場合)約0.05マイクロメートル〜約0.02マイクロメートル、又はそれ以下の範囲であるのが好ましい。例えば、膜はナノ多孔質膜、例えば1nm〜100nmの範囲の直径の細孔を有する膜であってもよい。
【0027】
[0027]通例、膜は約0.2〜約5.0ミル(約5〜約127ミクロン)の範囲の厚さを有し、約0.5〜約1.0ミル(約13〜約25ミクロン)の範囲が好ましいが、膜はこれらの値より厚くても又は薄くてもよい。
【0028】
[0028]多孔質膜はある所望の臨界湿潤表面張力(例えば米国特許第4,925,572号に定義されているCWST)を有することができる。CWSTは一定の組成の一組の溶液を用いて測定することができる。各々の溶液は特定の表面張力を有する。溶液の表面張力は小さい不等価な増分で25〜92ダイン/cmの範囲である。膜の表面張力を測定するために、膜を白色光テーブルの上に置き、一定の表面張力の一滴の溶液を膜の表面に付け、その液滴が膜を貫通して透過し、光が膜を通り抜けたことを示す明るい白色になるのにかかった時間を記録する。液滴が膜を透過するのにかかる時間が≦10秒であるとき、瞬時の湿潤と考えられる。この時間が>10秒の場合、その溶液は膜を部分的に湿潤すると考えられる。CWSTは、当技術分野で公知のように、さらに例えば米国特許第5,152,905号、同第5,443,743号、同第5,472,621号、及び同第6,074,869号に開示されているように選択することができる。
【0029】
[0029]通例、膜は少なくとも約27ダイン/cm(約27×10−5N/cm)、より好ましくは少なくとも約30ダイン/cm(約30×10−5N/cm)、幾つかの実施形態では少なくとも約35ダイン/cm(約35×10−5N/cm)のCWSTを有する。例えば、膜は約30ダイン/cm(約30×10−5N/cm)〜約40ダイン/cm(約40×10−5N/cm)、又はそれ以上の範囲のCWSTを有してもよい。
【0030】
[0030]膜は第1の多孔性表面及び第2の多孔性表面、並びに第1の多孔性表面と第2の多孔性表面の間の容積を有しており、この容積はPFSAとブレンドされたPTFEを含む。
【0031】
[0031]多孔質膜を含むフィルター、フィルター素子及び/又は複合物品などの物品は、異なる構造及び/又は機能を有することができる追加の素子、層、又は構成要素、例えば、以下の:予備ろ過、支持、排出、スペーシング及び緩衝作用のいずれか1つ又はそれ以上の少なくとも1つを含むことができる。実例として、フィルターはメッシュ及び/又はスクリーンなどの少なくとも1つの追加の素子も含むことができる。
【0032】
[0032]本発明の実施形態によると、膜、フィルター素子、複合物品及び/又はフィルターは平面状、プリーツ状、らせん状、及び/又は中空円筒状を含めて種々の構成形状を有することができる。
【0033】
[0033]膜、フィルター素子、複合物品及び/又はフィルターは、通例、少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を含み、入口と出口との間に少なくとも1つの流体流路を定めるハウジング内に配置され、ここで、膜は流体流路を横切って、ろ過装置を実現する。交差流用途の場合、膜、複合物品及び/又はフィルターは、少なくとも1つの入口及び少なくとも2つの出口を含み、入口と第1の出口との間に少なくとも第1の流体流路を、入口と第2の出口との間に第2の流体流路を定めるハウジング内に配置され、ここで、膜は第1の流体流路を横切って、ろ過装置を実現するのが好ましい。このろ過装置は滅菌可能である。適切な形状及び少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を備える任意のハウジングを使用することができる。
【0034】
[0034]ハウジングは、処理される流体と適合できるあらゆる不浸透性の熱可塑性材料を含めて任意の適切な硬い不浸透性の材料から製作することができる。例えば、ハウジングはステンレス鋼などの金属、又はポリマーから製作することができる。ある実施形態において、ハウジングはアクリル、ポリプロピレン、ポリスチレン、又はポリカーボネート樹脂などのポリマーである。
【0035】
[0035]以下の実施例は本発明をさらに例証するが、もちろん、いかなる意味でもその範囲を限定するものと考えるべきではない。
【0036】
実施例1
[0036]この実施例は、本発明の実施形態に従っていろいろな濃度のPFSAとブレンドされた膜を製造する方法を説明する。
【0037】
[0037]PTFE樹脂を15phrの潤滑剤(EXXOL D80)及び5phr、10phr、及び20phrの濃度のPFSA添加剤(24% w/w;アクイヴィオンPFSA 24;D83−24B Solvay Plastics)と20分混合し、12時間平衡化させる。
【0038】
[0038]混合物を2回20バールで55秒間加圧することによりビレットを形成し、12時間室温で平衡化させる。
【0039】
[0039]26mmのギャップサイズ、最大圧力及び55℃の一定温度で押出を実施して、チューブ形状のPTFEテープを得る。チューブを中心軸に沿って切り開き、ピペットの周りに再度巻き付けて新しいビレットを得る。ビレットを、最初の押出プロセス中に使用したのと同じ条件で再度押し出す。
【0040】
[0040]カレンダー加工を室温で実施して、4×4インチの長さと幅の寸法で9〜10ミルの厚さのテープを得る。テープを125℃で1時間乾燥する。300%/秒の延伸率で、縦方向(MD)及び横方向(TD)の両方の比の延伸比が1.5及び3.0となるようにテープを延伸する。延伸オーブン内の温度を150℃に設定し、350℃のアニーリングオーブン内でアニーリングを5秒間行う。
【0041】
[0041]膜を5日間、1:1のイソプロピルアルコール(IPA):脱イオン(DI)水に浸漬する。
【0042】
[0042]最も高いPFSA濃度(20phr)の膜を静的モードで140℃の硫酸過酸化水素水混合物(SPM)に3時間浸漬・負荷させる。
【0043】
[0043]膜をDI水で一晩洗浄し、(SPMで浸漬・負荷した膜を含めて)160℃で10分間乾燥させる。
【0044】
[0044](PFSAとブレンドされてない未処理の(コントロール)PTFE膜と比較した)結果は以下の通り:
【表1】
【0045】
[0045]この実施例は、本発明の実施形態によると、SPMに曝露後でも、CWSTが安定して増大し、脱湿されない膜を提供することを示している。
【0046】
[0046]本明細書中で引用した刊行物、特許出願、及び特許を含めて全ての文献は、参照により、各々の文献が参照により組み込まれることが個別且つ具体的に示され、しかもその全体が本明細書中に記載されているのと同程度に本明細書に組み込まれる。
【0047】
[0047]本発明を説明する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)、単数形態の用語「a」、「an」、「the」及び「少なくとも1つ」及び類似の指示対象の使用は、本明細書中で他に示さない限り、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を含むものと考えられる。1つ又はそれ以上の項目のリストに続く用語「少なくとも1つ」の使用(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)は、本明細書中で他に示さない限り、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、リストされた項目から選択される1つの項目(A又はB)又はリストされた項目の2つ若しくはそれ以上の任意の組合せ(A及びB)を意味すると解釈されたい。用語「含む」、「有する」、「包含する」及び「含有する」は、他に示さない限り、非限定的な用語として解釈されたい(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)。本明細書中で値の範囲の記載は、本明細書中で他に示さない限り、単にその範囲内に入る各々の別個の値に個別に言及することの簡略表記方法として役立たせることを意図しており、各々の別個の値はあたかも本明細書中に個別に記載されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載されている方法は全て、本明細書中で他に示さない限り、又は他に文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書中に挙げるいずれかの及びあらゆる例、又は代表的な原語(例えば、「などの」)の使用は、単に本発明をより良好に明らかにすることを意図しており、他に断らない限り本発明の範囲に制限を課すことはない。本明細書中のいかなる原語も、特許請求の範囲に記載されてないいずれかの要素を本発明を実施するのに必須であるとして示すものと解釈されるべきではない。
【0048】
[0048]本明細書には、本発明者が知る、本発明を実施するための最良の態様を含めて本発明の好ましい実施形態が記載されている。これら好ましい実施形態の変形は以上の説明に接した当業者には明らかとなるであろう。本発明者は当業者がかかる変形を適宜使用することを期待し、また本発明者は本発明が本明細書中に具体的に記載されている以外の方法で実施されることを意図している。従って、本発明は、適用可能な法律により許されるように後続の特許請求の範囲に記載の主題のあらゆる修正及び等価物を包含する。さらにまた、本明細書中で他に示さない限り、又は他に文脈により明らかに矛盾しない限り、上記要素のあらゆる可能な変形における任意の組合せが本発明に包含される。