(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一つの可動部と、固定部と、両側から前記可動部を前記固定部に支持する一対の梁部とを含み、前記梁部を捻り回転軸とする軸心周りに前記可動部を揺動可能な微小機械装置の前記梁部に用いられる金属弾性部材であって、
互いに分離して構成され前記可動部を揺動する断面積0.001mm2以上1mm2以下で一様に構成された一対の金属棒状部と、前記一対の金属棒状部の各々の一端側に配置され前記固定部に固定する固定側パッドと、前記一対の金属棒状部の各々の他端側に配置され前記可動部に固定する可動側パッドとを含み、
少なくとも前記一対の金属棒状部は、研削加工物及び塑性加工物を除く物理的または化学的加工物により構成されている金属弾性部材。
少なくとも一つの可動部と、固定部と、両側から前記可動部を前記固定部に支持する一対の梁部とを含み、前記梁部を捻り回転軸とする軸心周りに前記可動部を揺動可能な微小機械装置の前記梁部に用いられる金属弾性部材であって、
互いに分離して構成され前記可動部を揺動する断面積0.001mm2以上1mm2以下に一様に構成された一対の金属棒状部と、前記一対の金属棒状部の各々の一端側に配置され前記固定部に固定する固定側パッドと、前記一対の金属棒状部の各々の他端側に配置され前記可動部に固定する可動側パッドと、前記一対の金属棒状部が直線状に対称に配置されるとともに、各パッドが複数本の支持部を介して分離可能に連結された枠体とが、研削加工物及び塑性加工物を除く物理的または化学的加工物により一体に構成されている金属弾性部材。
少なくとも一つの可動部と、固定部と、両側から前記可動部を前記固定部に支持する一対の梁部とを含み、前記梁部を捻り回転軸とする軸心周りに前記可動部を揺動可能に構成された微小機械装置であって、
前記梁部は、前記可動部を揺動する断面積0.001mm2以上1mm2以下の一様で互いに分離して構成された一対の金属棒状部と、前記一対の金属棒状部の各々の一端側に配置され前記固定部に固定する固定側パッドと、前記一対の金属棒状部の各々の他端側に配置され前記可動部に固定する可動側パッドとを含み、少なくとも前記一対の金属棒状部は、研削加工物及び塑性加工物を除く物理的または化学的加工物により構成されている微小機械装置。
前記可動部にコイルが形成されるとともに、前記固定部に磁界形成部が設けられ、前記コイルに流れる電流と前記磁界形成部により形成される磁界によって発生する電磁力で前記可動部が揺動するように構成され、
前記梁部は、前記可動部を支持する機能と、前記コイルに通電する導電体としての機能と、前記可動部を基準位置に戻すばねとしての機能を備えている請求項5から7の何れかに記載の微小機械装置。
少なくとも一つの可動部と、固定部と、両側から前記可動部を前記固定部に支持する一対の梁部とを含み、前記梁部を捻り回転軸とする軸心周りに前記可動部を揺動可能な微小機械装置の製造方法であって、
前記固定部と前記可動部との間に、請求項2記載の金属弾性部材を、前記金属棒状部及び各パッドが枠体に支持された状態で、前記固定部及び/または前記可動部に位置決め配置し、前記固定部及び/または前記可動部を各パッドに固定した後に、各支持部を切断して前記枠体を分離する微小機械装置の製造方法。
前記可動部の表面に測定光源から照射された測定光を測定空間に向けて偏向走査し、その測定光の反射光を測定用受光部に向けて偏向する第1光偏向面が形成されるとともに、前記可動部の裏面に第2光偏向面が形成され、
前記振幅検知部は前記第2光偏向面に向けてモニタ光を照射するモニタ光源をさらに備え、その反射光が前記モニタ用受光部で受光される請求項11記載の揺動制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した光偏向ミラーを用いた小型の走査型の測距装置または当該走査型の測距装置を用いた障害物検知装置を構成する場合には、例えば数mm角の偏向ミラーを150Hzから500Hzの範囲の比較的低い周波数で揺動して、例えば45°の走査角度範囲で測定光を走査する必要がある。
【0011】
しかし、特許文献1に記載されたようなシリコン材を用いて製作した梁部は、比較的高い周波数で可動部を駆動する必要がある場合に好適な材料であり、500Hz以下の周波数では安定駆動できないという問題があり、またシリコン材は比較的容易にへき開するために、耐衝撃性を要求される用途には使用し辛いという問題もあった。
【0012】
特許文献2に記載されたような導電性アモルファスアルミニウム合金を用いた梁部は、モノリシック製造工程で製作されるために製造コストが嵩むという問題があり、また十数μm角の光偏向ミラーを含めてサイズが微小であるために、ある程度のビーム径が要求される計測用途に用いるのは困難であるという問題もあった。
【0013】
特許文献3に記載されたような金属をプレス加工して得られる梁部は、加工時にその表面に多数の微小な凹凸や傷が形成され、そこに応力振幅による応力の集中が起こるため、繰返し使用により微小な凹凸や傷が起点となって亀裂に成長し、疲労破壊を招き易いという問題があった。
【0014】
特に、測定光を走査して測定光に対応する反射光に基づいて障害物の有無を検知する光走査装置は長時間連続して作動するため、例えば100Hzの周波数で使用しても1年間で30億回の応力振幅に耐える必要がある。
【0015】
そのため、通常これらの金属部品は、数万回から数十万回、あるいは数百万回から数千万回の寿命試験、時間にして数十時間あるいは数百時間の寿命試験を行ない、その結果に基づいて算出した安全率を考慮した範囲で使用されているが、近年、数百万回から数千万回の応力振幅による評価では不足することが指摘されている。表面の傷等に端を発する亀裂は高サイクル疲労と呼ばれ、内部の結晶欠陥等に端を発する亀裂は超高サイクル疲労と言われ、その評価には数億回あるいは数十億回の試験が必要となり、それに伴って試験時間も膨大になり、そこまでの寿命を保証するのは事実上困難である。
【0016】
特許文献4に記載されたような導電性ポリマーで形成された梁部は、150Hz以下の低周波数で好ましい特性を示すが、周波数が150Hzから500Hzの範囲では安定駆動できず、安定駆動を目指してポリマーの硬度を上げると容易に応力破壊を招くという問題があった。
【0017】
ところで、特許文献5,6に記載されたように、微小機械装置の可動部を一定の振幅で揺動制御するために、コイルへの印加電流値を可変に制御する場合には、回路素子の温度特性等の変動要因を含めて印加電流値を正確に制御する複雑で大掛かりな電源回路が必要になり、コストが嵩むばかりでなく、大きな設置スペースが必要になるという問題もあった。
【0018】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、可動部を比較的低い周波数範囲で揺動可能なねじり回転軸となる梁部を構成する長寿命で信頼性の高い金属弾性部材、当該金属弾性部材を用いた微小機械装置、微小機械装置の製造方法、揺動制御装置及び揺動制御方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述の目的を達成するため、本発明による金属弾性部材の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、少なくとも一つの可動部と、固定部と、両側から前記可動部を前記固定部に支持する一対の梁部とを含み、前記梁部を捻り回転軸とする軸心周りに前記可動部を揺動可能な微小機械装置の前記梁部に用いられる金属弾性部材であって、互いに分離して構成され前記可動部を揺動する断面積0.001mm
2以上1mm
2以下に一様に構成された一対の金属棒状部と、前記一対の金属棒状部の各々の一端側に配置され前記固定部に固定する固定側パッドと、前記一対の金属棒状部の各々の他端側に配置され前記可動部に固定する可動側パッドとを含み、少なくとも前記一対の金属棒状部は、
研削加工物及び塑性加工物を除く物理的または化学的加工物により構成されている点にある。
【0020】
既に説明したように、梁部を構成する金属棒状部をプレス加工や研削加工等の機械的加工物(塑性加工物
や研削加工物)で構成すると、加工時に表面にできる複数の微小な傷に、応力振幅に起因する応力の集中が起こり、微小な傷が起点となって亀裂に成長して、疲労強度が低下する虞がある。特に硬い材料でこの現象がよく見られる。
【0021】
しかし、
研削加工物及び塑性加工物を除く物理的または化学的加工物により梁部となる金属棒状部を構成すると、応力振幅により亀裂に成長するような傷が表面に形成される確率が非常に小さく、従って疲労強度が低下する虞が極めて低くなる。一般に金属材料の諸物性、例えば耐力等は10mm径(断面積78.5mm
2)の試験片に基づいて測定されるが、少なくとも試験片の1桁以下の寸法(1mm径(断面積0.785mm
2)以下)で作製された試験片の耐力は公表されている値よりも大きな値になる傾向があり、断面積を微小にすることで実効耐力が数十%高い値を示すことが想定できる。対象物の表面の傷の存在確率が一定であるならば、超高サイクル疲労の亀裂の基点となる傷の絶対数が小型化による表面積の減少に伴って減少する結果、或いは、対象物の内部の欠陥確率が同一であるならば、超高サイクル疲労の亀裂の基点となる内部欠陥の絶対数が体積の減少により減少する結果、耐久性や耐力が増加すると定性的に理解されているためである。
【0022】
そこで、金属棒状部を断面積1mm
2以下に成形することにより、それだけ良好な実効耐力を示す梁部が構成できるようになる。また、限度はあるが、物質は小さくなればその物質本来の物性値に近くなると考えられる。本願発明者は、10mm径の試験片で得られた捻り方向の疲労限界が機械角±9.25°であるのに対して、同じ金属材料を用いて0.2mm×0.25mmの断面を持つ金属梁では機械角±15.5°であることを実験により確認している。捻り部分の最大応力は1.4倍程度であり、断面寸法が1桁下がると20%程度丈夫になるという当業者による経験上の知見を考慮すれば、2桁小さいサイズ効果から1.2×1.2=1.4倍程度に疲労限度が上昇することになる。このような耐久性、耐力の上昇は、上述した定性的な一般的理解から定量的理解へと実験を行った結果により裏付けられている。
【0023】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、少なくとも一つの可動部と、固定部と、両側から前記可動部を前記固定部に支持する一対の梁部とを含み、前記梁部を捻り回転軸とする軸心周りに前記可動部を揺動可能な微小機械装置の前記梁部に用いられる金属弾性部材であって、互いに分離して構成され前記可動部を揺動する断面積0.001mm
2以上1mm
2以下に一様に構成された一対の金属棒状部と、前記一対の金属棒状部の各々の一端側に配置され前記固定部に固定する固定側パッドと、前記一対の金属棒状部の各々の他端側に配置され前記可動部に固定する可動側パッドと、前記一対の金属棒状部が直線状に対称に配置されるとともに、各パッドが複数本の支持部を介して分離可能に連結された枠体とが、
研削加工物及び塑性加工物を除く物理的または化学的加工物により一体に構成されている点にある。
【0024】
研削加工物及び塑性加工物を除く物理的または化学的加工物により、一端側に固定側パッドが配置され他端側に可動側パッドが配置された一対の金属棒状部が、枠体の内部で直線状に対称に配置され、各パッドが支持部を介して枠体に固定されるように一体に構成されることで、枠体に一対の金属棒状部が直線状に位置決め配置された金属弾性部材が得られる。一対の金属棒状部が枠体内部で直線状に位置決め配置された状態で、固定部に固定側パッドを固定するとともに、可動側パッドに可動部を固定し、その後に支持部を切断するような工程を経ると、一対の金属棒状部で構成されるねじり回転軸の直線性が高精度に保たれた状態で可動部を支持できるようになり、しかも組立作業も簡素化できる。
【0025】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、ステンレス材、炭素工具鋼材、またはみがき鋼材の何れかのテンションアニール処理材で構成されている点にある。
【0026】
テンションアニール法で圧延されたステンレス材、炭素工具鋼材、またはみがき鋼材の何れかの金属を用いて金属弾性部材を構成すれば、長期にわたり安定して動作可能な梁部が得られる。
【0027】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記物理的または化学的加工物に収束イオンビーム加工物、エッチング加工物、及びメッキ加工物が含まれる点にある。
【0028】
研削加工物及び塑性加工物を除く物理的または化学的加工物として、収束イオンビーム加工物、エッチング加工物、及びメッキ加工物を好適に用いることができる。
【0029】
本発明による微小機械装置の第一の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、少なくとも一つの可動部と、固定部と、両側から前記可動部を前記固定部に支持する一対の梁部とを含み、前記梁部を捻り回転軸とする軸心周りに前記可動部を揺動可能に構成された微小機械装置であって、前記梁部は、前記可動部を揺動する断面積0.001mm
2以上1mm
2以下の一様で互いに分離して構成された一対の金属棒状部と、前記一対の金属棒状部の各々の一端側に配置され前記固定部に固定する固定側パッドと、前記一対の金属棒状部の各々の他端側に配置され前記可動部に固定する可動側パッドとを含み、少なくとも前記一対の金属棒状部は、
研削加工物及び塑性加工物を除く物理的または化学的加工物により構成されている点にある。
【0030】
上述の構成によれば、耐衝撃性に優れ、長期にわたり安定して作動する微小機械装置が得られる。
【0031】
同第二の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記梁部は、ステンレス材、炭素工具鋼材、またはみがき鋼材の何れかのテンションアニール処理材で構成されている点にある。
【0032】
同第三の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記物理的または化学的加工物に収束イオンビーム加工物、エッチング加工物、及びメッキ加工物が含まれる点にある。
【0033】
同第三の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記可動部にコイルが形成されるとともに、前記固定部に磁界形成部が設けられ、前記コイルに流れる電流と前記磁界形成部により形成される磁界によって発生する電磁力で前記可動部が揺動するように構成され、前記梁部は、前記可動部を支持する機能と、前記コイルに通電する導電体としての機能と、前記可動部を基準位置に戻すばねとしての機能を備えている点にある。
【0034】
例えば、可動部に形成されたコイルに交流電流を供給すれば、コイルに流れる交流電流と固定部に備えた永久磁石により形成される磁界とによってコイルに作用するローレンツ力により、梁部で支持された可動部が繰り返し揺動される。このような梁部は、長期にわたり金属疲労を招くことなく、安定して可動部を支持できるようになる。
【0035】
同第四の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記可動部に、入射光を反射して偏向走査する光偏向面が形成されている点にある。
【0036】
可動部に光偏向面を形成すれば、光偏向面で偏向された光が、可動部の揺動に伴って繰返し所定の走査角度範囲で安定して走査されるようになる。
【0037】
本発明による微小機械装置の製造方法の第一の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、少なくとも一つの可動部と、固定部と、両側から前記可動部を前記固定部に支持する一対の梁部とを含み、前記梁部を捻り回転軸とする軸心周りに前記可動部を揺動可能な微小機械装置の製造方法であって、前記固定部と前記可動部との間に、請求項2記載の金属弾性部材を、前記金属棒状部及び各パッドが枠体に支持された状態で、前記固定部及び/または前記可動部に位置決め配置し、前記固定部及び/または前記可動部を各パッドに固定した後に、各支持部を切断して前記枠体を分離する点にある。
【0038】
一対の金属棒状部が枠体内部で直線状に位置決め配置された状態で、固定部に固定側パッドを固定するとともに可動側パッドに可動部を固定し、その後に支持部を切断するような工程を経ると、一対の金属棒状部で構成されるねじり回転軸の直線性が高精度に保たれた状態で可動部を支持できるようになり、しかも組立作業も簡素化できる。
【0039】
本発明による揺動制御装置の第一の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述した第三の特徴構成を備えた微小機械装置の可動部を揺動制御する揺動制御装置であって、前記可動部から導かれるモニタ光であって、前記可動部の揺動に伴って角度が変化する光軸に沿ったモニタ光を、前記可動部の揺動中心方向に対して揺動方向に偏った方向から検知するモニタ用受光部と、前記モニタ用受光部で検知されたモニタ光に基づいて、前記可動部の1揺動周期を構成する長周期区間と短周期区間の二つの区間を検知する振幅検知回路とを含む振幅検知部と、前記振幅検知部で検知された長周期区間と短周期区間の時間比が目標値になるように、前記コイルへの印加電流の電流値を維持しながら周波数を可変制御する振幅制御部と、を備えている点にある。
【0040】
モニタ用受光部で検知されるモニタ光の検出周期は、可動部の揺動周期と同じ周期となる。可動部が揺動中心方向からモニタ用受光部側の第1揺動方向に揺動する場合には、最大揺動角度に向かって揺動する往動時と反対側の最大揺動角度に向かって揺動する復動時にモニタ用受光部でモニタ光が検知され、その後可動部が揺動中心方向からモニタ用受光部とは反対側の第2揺動方向に揺動して、反対側の最大揺動角度からの復帰時にモニタ用受光部でモニタ光が検知される。振幅検知部は、第1揺動方向から第2揺動方向にかけて揺動する場合に検知されるモニタ光の検知間隔を短周期区間と検知し、第2揺動方向から第1揺動方向にかけて揺動する場合に検知されるモニタ光の検知間隔を長周期区間と検知し、短周期区間と長周期区間の合計時間を可動部の1周期と検知する。
【0041】
駆動電流の周波数が一定の下で、温度変化等に起因して可動部を含む梁部の共振周波数が変動する場合に、駆動電流の周波数が共振周波数に近くなれば振幅が大きくなり、駆動電流の周波数が共振周波数から遠ざかれば振幅が小さくなる。そのような場合であっても、振幅検知部で検知された長周期区間と短周期区間の時間比が目標値になるように、振幅制御部によってコイルへの印加電流の電流値を一定に維持しながら周波数が可変制御される結果、可動部の振幅が一定に維持されるようになる。周波数を可変に制御するためには、例えばPLL回路を組み込んだ交流電源回路等、比較的簡単かつ小型の電源回路で構成できるので、コストを低減するとともに設置スペースも小さくでききる。
【0042】
同第二の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記可動部の表面に測定光源から照射された測定光を測定空間に向けて偏向走査し、その測定光の反射光を測定用受光部に向けて偏向する第1光偏向面が形成されるとともに、前記可動部の裏面に第2光偏向面が形成され、前記振幅検知部は前記第2光偏向面に向けてモニタ光を照射するモニタ光源をさらに備え、その反射光が前記モニタ用受光部で受光される点にある。
【0043】
仮にモニタ光源を設けずに測定光をモニタ用受光部で検知する場合には、測定光の走査範囲にモニタ用受光部を設置する必要があり、測定範囲が制限されるようになる。また、所定の測定範囲を確保するために可動部の振幅を大きくすると、梁部の歪が大きくなり寿命が短くなるという問題が生じる。しかし、上述の構成によれば、測定光を測定空間に向けて偏向走査するという可動部の本来の機能を阻害することなく正確に振幅が検知でき、そのために可動部の振幅も必要最小限に留めることができ、梁部の寿命が短くなるようなこともない。
【0044】
同第三の特徴構成は、同請求項13に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記可動部の揺動位相を検知する揺動位相検知部と、前記揺動位相検知部で検知された揺動位相に同期して前記測定光による測定時期を調整する同期信号出力部を備えている点にある。
【0045】
測定光を利用する測定周期を一定に維持した状態で、振幅を一定に制御するために可動部の揺動周期が変化すると測定方向が変化して、本来必要な測定方向に対応する測定値が得られなくなる虞がある。また、揺動周期内で必要な測定値の数の増減が発生する虞もある。そのような場合であっても、同期信号出力部から出力される揺動位相に同期した同期信号に基づいて測定光による測定時期を調整すれば、可動部の揺動周期が変化しても本来必要な測定方向に対応する測定値を確実に得ることができるようになる。
【0046】
同第四の特徴構成は、同請求項14に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記可動部の揺動位相を検知する揺動位相検知部と、前記測定光による測定時期に同期して前記揺動位相検知部で検知された揺動位相を出力する位相信号出力部を備えている点にある。
【0047】
測定光を利用する測定周期を一定に維持した状態で、振幅を一定に制御するために可動部の揺動周期が変化すると測定方向が変化して、何れの方向に対する測定値であるかが特定できなくなる虞がある。そのような場合でも、位相信号出力部から出力される位相信号によって、測定光による測定時期に同期した可動部の揺動位相が把握できるので、正確に測定値に対応する方向が特定できるようになる。
【0048】
本発明による揺動制御方法の特徴構成は、同請求項15に記載した通り、上述した第三の特徴構成を備えた微小機械装置の可動部を揺動制御する揺動制御方法であって、前記可動部から導かれるモニタ光であって、前記可動部の揺動に伴って角度が変化する光軸に沿ったモニタ光を、前記可動部の揺動中心方向に対して揺動方向に偏った方向から検知し、検知されたモニタ光に基づいて、前記可動部の1揺動周期を構成する長周期区間と短周期区間の二つの区間を検知し、検知された長周期区間と短周期区間の時間比が目標値になるように、前記コイルへの印加電流の電流値を維持しながら周波数を可変制御する点にある。
【発明の効果】
【0049】
以上説明した通り、本発明によれば、可動部を比較的低い周波数範囲で揺動可能なねじり回転軸となる梁部を構成する長寿命で信頼性の高い金属弾性部材、当該金属弾性部材を用いた微小機械装置、微小機械装置の製造方法、揺動制御装置及び揺動制御方法を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明による金属弾性部材、微小機械装置及び微小機械装置の製造方法を図面に基づいて説明する。
【0052】
図1及び
図4には、走査型の測距装置等に用いられる微小機械装置1が示されている。微小機械装置1は、固定部2となる枠体と、可動部3となる平坦な板状体と、固定部2に対して可動部3を軸心P周りに揺動可能に支持する一対の梁部4,4と、梁部4,4を挟んで可動部3の両側に配置された永久磁石5,6と、上部カバー体8等を備えている。
【0053】
固定部2はポリカーボネート等の樹脂製の直方体部材で構成され、その中央部が、平面視で可動部3よりもやや大きな面積で、厚み方向に刳り抜かれた開口空間が形成され、その開口空間に可動部3が配置されている。
【0054】
梁部4,4は金属弾性部材で構成され、所定長の金属棒状部4aと、金属棒状部4aの一端側に形成され固定部2に固定する固定側パッド4bと、金属棒状部4aの他端側に形成され可動部3に固定する可動側パッド4cとを備えている。
【0055】
断面が“コ”の字形で、高透磁率の部材で構成される磁性体保持部7に、永久磁石5,6のうち一方5がN極、他方6がS極となるように対向配置され、固定部2の開口空間に、可動部3を挟むように下方から挿入固定されている。
【0056】
可動部3は、ガラス基板、或いはシリコン基板に金またはアルミニウム等が蒸着された偏向ミラー3aと、ガラスエポキシ基板に銅製のコイルCと電極パッドEが印刷形成されたコイル基板3cと、それら間に配置される同じくガラスエポキシ製のスペーサ3bを備えている。一対の梁部4,4の各可動側パッド4cが電極パッドEに接触するように位置決めされ、導電性接着剤を用いて偏向ミラー3aとコイル基板3cとの間に接着固定されている。尚、コイル基板3cを、エポキシ樹脂等を用いた各基板層にコイルパターンを形成し、各基板層のコイルをビアで連結した多層基板で構成してもよい。
【0057】
一対の梁部4,4を介してコイルCに交流電流を印加すると、コイルCに流れる交流電流と固定部2に備えた永久磁石5,6により形成される磁界とによってコイルCに作用するローレンツ力により、梁部4,4で支持された可動部3が繰り返し揺動される。
【0058】
即ち、微小機械装置1は、少なくとも一つの可動部3と、固定部2と、両側から可動部3を固定部2に支持する一対の梁部4,4とを含み、梁部4を捻り回転軸とする軸心P周りに可動部2が揺動可能に構成されている。そして、梁部4,4は、可動部3を支持する機能と、コイルCに通電する導電体としての機能と、可動部3を基準位置に戻すばねとしての機能を備えている。さらに、可動部3に、入射光を反射して偏向走査する光偏向面が形成されている。
【0059】
可動部3を揺動駆動する周波数、つまりコイルCに印加する交流電流の周波数は、可動部3を含む梁部4,4の機械的共振周波数から僅かにずらせた周波数に設定することが好ましく、可動部3の大きさ、金属棒状部4aの断面積と長さとその物理的特性に依存して50Hzから約1KHzの範囲で設定可能である。
【0060】
例えば、可動ミラーの面積が12mm×12mmの場合で、本発明による金属弾性部材を用いた梁部4の場合には、150Hzから500Hzの周波数範囲が好適である。
【0061】
図2(e)に示すように、梁部4,4は、一端側に固定側パッド4bが形成され他端側に可動側パッド4cが形成された一対の金属棒状部4aが、枠体40の内部で、直線状に対称に配置され、各パッド4b,4cが支持部41を介して枠体40に固定されるように一体に形成されている。
【0062】
図3(a)に示すように、先ず、固定部2に設けられた一対の位置決めピン2pが各固定側パッド4bに形成された一対の位置決め用の孔部に嵌め込まれて接着固定される。
【0063】
次に、
図3(b)に示すように、可動側パッド4cに形成された一対の位置決め用孔部の上方から、偏向ミラー3aの裏面に形成された一対の位置決めピンが嵌め込まれ、次に可動側パッド4cの下方から開放空間を通してスペーサ3bがあてがわれ、さらにコイル基板3cに形成された一対の位置決め用孔部に偏向ミラー3aの位置決めピンが嵌め込まれ、それぞれが接着剤で接着固定される。
【0064】
その後、
図3(c)に示すように、各支持部41が切断されて枠体40が離脱され、さらに固定部2の上方から上部カバー体8が被覆されて、固定側パッド4bが確実に固定される。一対の金属棒状部4aで構成されるねじり回転軸の直線性が高精度に保たれた状態で可動部3を支持できるようになり、しかも組立作業も簡素化できるようになる。
【0065】
図5(a),(b)には、コイル基板3cに形成された電極パッドEと、梁部4,4の一端部に形成された可動側パッド4cとが、スペーサ3bを介して電気的に接触するように位置決め配置された状態が示されている。スペーサ3bは中央部が絶縁部材33で形成され、両端部が金属部材34で構成されている。各電極パッドE,Eと各可動側パッド4c,4cとが金属部材34,34を通して電気的に接続されている。当該構成については後に
図7に基づいて詳述する。
【0066】
図3(c)に示すように、固定部2に設けられた位置決めピン2pは金属で構成され、梁部4,4を介してコイル基板3cに形成されたコイルCに交流電流を印加する電極ピンとなる。
【0067】
図6に示すように、レーザダイオード等の発光素子LDから光学レンズ(図示せず)を介して平行光に形成された測定光を偏向ミラー3aに入射させ、コイルCに交流電流を印加すると、梁部4,4を捻り回転軸とする軸心P周りに偏向ミラー3aが揺動し、発光素子LDからの入射光が偏向ミラー3aで偏向され、偏向ミラー3aの揺動角度の2倍の角度で反射光が偏向走査される。例えば、偏向ミラー3aの揺動角度を±11.25°に設定すると、±22.5°の走査角度範囲で反射光が走査される。
【0068】
梁部4,4は、テンションアニール法で圧延されたステンレス材、炭素工具鋼材、またはみがき鋼材の何れかの金属を用いて、プレス加工等の機械的加工法を除く物理的または化学的加工法で形成される。テンションアニール法とは、ステンレス材等に一定の引っ張り応力をかけながら、高温下の水素ガスを含む窒素ガス雰囲気中で一定時間の放置を行なう処理のことをいう。物理的または化学的加工法として、収束イオンビーム法、エッチング法、及びメッキ法(電鋳法)が好適に用いられる。
【0069】
図2(a)から
図2(e)には、化学的加工法の一例であるエッチング法を用いて、梁部4,4を構成する金属弾性部材の製作過程が示されている。本実施例では、SUS304CSP−Hのテンションアニール材を用いている。
【0070】
所定厚さ(本実施形態では0.2mm)のステンレス薄板42(
図2(a)参照)の表面にフォトレジスト43を均一に塗布し(
図2(b)参照)、金属棒状部4a、固定側パッド4b、可動側パッド4c、枠体40、支持部41に対応する領域が遮光されるように形成されたフォトマスク(図示せず)を介して光露光する(
図2(c)参照)。
【0071】
露光された領域のフォトレジスト43bを所定のエッチング液で除去すると、ステンレス薄板42の表面のうち、枠体40や梁部4に対応する領域にのみフォトレジスト43層が形成される(
図2(d)参照)。
【0072】
その後、ステンレス薄板42の表面にステンレスを溶かすエッチング液を吹きかけて徐々にエッチング処理を進め、エッチング処理が完了すると溶剤でフォトレジスト43を除去する。以上のプロセスによって、一端側に固定側パッド4bが形成され他端側に可動側パッド4cが形成された一対の金属棒状部4aが、枠体40の内部で直線状に対称に配置され、各パッド4b,4cが支持部41を介して枠体40に固定されるように一体に形成された金属弾性部材が出来上がる(
図2(e)参照)。
【0073】
メッキ法を用いて金属弾性部材を製作する場合には、
図2(d)に示したフォトレジスト43の形状が凹部となる所定深さの型枠を作成し、型枠に離型材を塗布した後に、金属イオンを含む電解液を満たし、電解液中の金属を電着させることにより製作することができる。
【0074】
梁部4を構成する金属棒状部4aをプレス加工や研削加工等の機械的加工(塑性加工
や研削加工)法で形成すると、加工時に表面にできる複数の微小な傷に、応力振幅に起因する応力の集中が起こり、微小な傷が起点となって亀裂に成長して、疲労強度が低下するため、可動部3を長期にわたり安定して揺動することができない。
【0075】
しかし、機械的加工法を除く物理的または化学的加工法を用いて梁部となる金属棒状部4aを形成すると、応力振幅により亀裂に成長するような傷が表面に形成される確率が非常に小さく、従って疲労強度が低下する虞が極めて低くなる。
【0076】
一般に金属材料の諸物性、例えば耐力等は10mm径(断面積78.5mm
2)の試験片に基づいて測定されるが、少なくとも試験片の1桁以下の寸法(1mm径(断面積0.785mm
2)以下)で作製された試験片の耐力は公表されている値よりも大きな値になる傾向があり、断面積を微小にすることで実効耐力が数十%高い値を示すことが想定できる。
【0077】
そこで、金属棒状部を断面積1mm
2以下に成形することにより、それだけ良好な実効耐力を示す梁部が構成できるようになり、周波数150Hzから500Hzの範囲で可動部3を長期にわたり安定して揺動することができるようになる。尚、可動部3を構成する偏向ミラー3aの揺動角度は±11.25°に制限されることは無く、微小機械装置1の用途に応じて適宜設定される値である。
【0078】
図2(e)に示す梁部4,4を構成する金属棒状部4aは、断面積が1mm
2以下に形成されていればよく、0.001mm
2〜1mm
2の範囲で成形されていることが好ましい。
【0079】
本実施形態では、金属棒状部4aは幅1.0mm、厚さ0.2mm、長さ5mmに形成され、断面積が0.20mm
2に形成されている。尚、微小機械装置1の各部の大きさは以下の通りである。固定部2は幅23mm、奥行き26mm、厚さ5.5mm、可動部3は幅12.0mm、奥行き12.0mm、厚さ2.0mmに形成されている。
【0080】
図11(a)には、断面積0.05mm
2、長さ4mmの梁4を用いて、面積144mm
2(12mm×12mm)の偏向ミラー3aを駆動周波数200Hz(共振周波数平均:188.6Hz)で揺動したときの破断試験の結果であるS−N線図が示されている。白丸はSUS304CSP−Hテンションアニール材で構成された梁の特性、黒丸はSUS304CSP−Hストレスリリース材で構成された梁の特性、黒三角は時効処理済みCoNi合金材(高耐久性を謳っている材料)で構成された梁の特性である。縦軸のOptical angleは測定光の全振れ角で例えばOptical angle 60°の場合は測定光の振れ角は±30°、偏向板の振れ角は±15°となる。試験の結果、黒丸及び黒三角は破断に到った。一方白丸(テンションアニール材)の場合、Optical angle 70°以上では破断に到ったが、Optical angle65°以下の場合は揺動サイクル1億回を超えても破断に到るサンプルは無かった。Optical angle 62°における白丸と黒丸のように、バネ材として好適なステンレスSUS304CSP−Hであっても、テンションアニールの有無で破壊サイクルが2桁以上変わることが明らかになった。
【0081】
図11(b),(c)は、偏向ミラー3aの面積、梁の断面積、梁の長さを変化させたときの共振周波数のシミュレーションの結果が示されている。試作した可動ミラー(条件1:面積12mm×12mm、梁断面積0.05mm
2、梁長4mm、実測共振周波数平均188.6Hz、及び条件2:面積12mm×12mm、梁断面積0.16mm
2、梁長5mm、実測共振周波数平均400.7Hz)でシミュレーションパラメータをフィッティングして、他の条件のシミュレーションを実施した。偏向ミラー及び梁の形状を変えることにより、共振周波数が変化して50Hzから1KHz超で遥動可能であることが確認された。
【0082】
図11(b)は、条件1に基づくシミュレーション結果であり、梁の長さを4mmに固定し、梁の断面積を変化させた場合の共振周波数の変化が示されている。図中、系列1は偏向ミラー20mm×20mm、系列2は偏向ミラー16mm×16mm、系列3は偏向ミラー12mm×12mm、系列4は可動ミラー8mm×8mmである。
【0083】
図11(c)は、条件2に基づくシミュレーション結果であり、梁の長さを5mmに固定し、梁の断面積を変化させた場合の共振周波数の変化が示されている。図中、系列1は偏向ミラー20mm×20mm、系列2は偏向ミラー16mm×16mm、系列3は偏向ミラー12mm×12mm、系列4は可動ミラー8mm×8mmである。
【0084】
図7には、金属棒状部4aの各端部に固定側パッド4b及び可動側パッド4cが形成された金属弾性部材と、可動部3を構成する上下のガラス基板、ガラスエポキシ基板(例えば偏向ミラーとコイル基板)3a,3c及びスペーサ3bの位置関係が示されている。
【0085】
上方のガラス基板3aの底面には、軸心Pと直交する方向に第1溝部30が形成されるとともに、軸心Pに沿う方向に一対の第2溝部31,31が形成されている。第1溝部30の深さは可動側パッド4cの厚みより僅かに深く形成され、第2溝部31,31の深さは第1溝部30の深さよりさらに深く形成されている。
【0086】
可動側パッド4cの位置決め用の孔部に第1溝部30に形成された一対の位置決めピン3Pを挿通した状態で、第1溝部30にスペーサ3bを挿入して、第1溝部30の底面とスペーサ3bの上面との間で可動側パッド4cを挟むように接着する。さらに、当該一対の位置決めピン3Pが下方のガラスエポキシ基板に形成された一対の位置決め用の孔部に挿通するように位置決めして上下のガラス基板、ガラスエポキシ基板を接着する。
【0087】
スペーサ3bのうち、コイル基板3cに形成された電極パッドEと金属弾性部材の可動側パッド4cとが対向する両端部には、両者を電気的に接続するために金属部材が配され、スペーサ3bは、それら一対の金属部材の間に絶縁部材を配置して構成されている。
【0088】
このように上方のガラス基板3aに第1溝部30及び第2溝部31,31を形成すると、金属棒状部4aが上下のガラス基板3a,ガラスエポキシ基板3cと接触しない状態でその姿勢が保持されるようになり、金属棒状部4aの捻り動作時にガラス基板3a,ガラスエポキシ基板3cと接触するような不都合が解消できる。しかも、上方のガラス基板3aを偏向ミラーとして機能させ、その偏向面の面積を大きくする必要がある場合でも、このような構成を採用すれば、金属棒状部4aの長さを短くする必要もない。
【0089】
図5(a),(b)及び
図7で説明した梁部4と可動部3との接続態様は一例であり、本願発明による梁部4と可動部3との接続態様がこのような構成に限定されるものではない。例えば、
図5(c)に示すように、可動側パッド4cが上下のガラス基板3a,ガラスエポキシ基板3cの縁部近傍に固定され、金属棒状部4aが上下のガラス基板3a,ガラスエポキシ基板3cで覆われないように配置される場合であれば、上部ガラス基板3aの縁部に可動側パッド4cを収容する凹部が形成されていればよく、スペーサを設ける必要は無い。
【0090】
また、
図8及び
図9に示すように、偏向ミラー3aの偏向面が永久磁石5,6の高さよりも高くなるように、偏向ミラー3aと可動側パッド4cとの間に、例えばポリカーボネート製のスペーサ部材3d,3eを挿入してもよい。このように偏向ミラー3aの偏向面を嵩上げすれば、偏向ミラー3aの揺動時に、偏向ミラー3aで偏向される測定光が永久磁石5,6の立ち上がり部で遮られる虞がなくなる。
【0091】
図10には、上述した金属弾性部材とは異なる形状の金属弾性部材が示されている。金属棒状部4aは、幅0.1mm、厚さ0.05mm、長さ1.50mmに形成され、断面積が0.005mm
2に形成されている。
【0092】
本発明による金属弾性部材を構成する金属棒状部4aは、その断面積が1mm
2以下に形成されていればよく、その幅、厚さ、長さは適宜設定することができる。また、固定側パッド4b及び可動側パッド4cの形状も特に制限されることなく、それが組み込まれる微小機械装置に合わせればよい。
【0093】
本発明による微小機械装置の用途は、走査型の測距装置に限らず、プロジェクタ等の光を走査する必要があるデバイスに適用できる。例えば、可動部3を構成する上方のガラス基板3aに発光素子を組み付け、走査角度に応じて微小機械装置を走査方向と直交する方向に揺動させつつ、発光素子の発光状態を制御すればプロジェクタを実現できる。
【0094】
上述した実施形態では、一対の梁部4,4で支持される一つの可動部3を一つ備えた微小機械装置1を説明したが、一つの微小機械装置1に一対の梁部4,4で支持される一つの可動部3を複数組設けた構成を採用してもよい。
【0095】
上述した実施形態は、何れも本発明による金属弾性部材、微小機械装置及び微小機械装置の製造方法の一例を説明したものであり、該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、また、各部の具体的構造や大きさ等は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計できることはいうまでもない。
【0096】
次に上述した微小機械装置の可動部を揺動駆動する揺動制御装置及び揺動制御方法について説明する。尚、本発明による揺動制御装置及び揺動制御方法の適用対象は、本発明による微小機械装置に限定されるものではなく、特許文献1から4に記載されたような従来の微小機械装置に広く適用可能である。
【0097】
図1,
図4及び
図5(a)で説明したように、揺動制御装置によって制御される微小機械装置は、一対の梁部4,4で固定部2に支持された可動部3にコイルCが形成されるとともに、固定部2に磁界形成部5,6,7が設けられ、コイルCに流れる電流と磁界形成部5,6,7により形成される磁界によって発生する電磁力で可動部3が揺動するように構成されている。
【0098】
図12には、測距装置として構成された微小機械装置に組み込まれた可動部3が示されている。可動部3の表面には、受発光部100に備えた測定光源から光路Leに沿って照射された測定光を測定空間に向けて偏向走査し、その測定光の反射光を受発光部100に備えた測定用受光部に向けて偏向する第1光偏向面が形成されている。
【0099】
可動部3の裏面、つまりコイル基板3cの裏面にも金またはアルミニウムが蒸着された第2光偏向面が形成されている。可動部3の裏面側に配置されたモニタ光源200から照射されたモニタ光が光路Loに沿って第2光偏向面に導かれ、その反射光が同じく可動部3の裏面側に配置されたモニタ用受光部300で検知される。
【0100】
モニタ光源と測定光を兼用して測定光をモニタ用受光部で検知する場合には、第1光偏向面で偏向反射される測定光の走査範囲にモニタ用受光部を設置する必要があり、偏向反射された測定光がモニタ用受光部で遮られることになり測定範囲が制限される。そこで、所定の測定範囲を確保するために可動部の振幅を大きくすると、梁部の歪が大きくなり寿命が短くなるという問題が生じる。しかし、可動部3の裏面にモニタ用の第2光偏向面を形成すると、測定光を測定空間に向けて偏向走査するという可動部の本来の機能を阻害することなく正確に振幅が検知でき、そのために可動部の振幅も必要最小限に留めることができ、梁部の寿命が短くなるようなこともない。
【0101】
受発光部100からの測定光が静止状態の可動部3の第1光偏向面に対して45°の入射角で入射し、モニタ光源200からのモニタ光が可動部3の第2光偏向面に対して0°の入射角で入射するように、受発光部100及びモニタ光源200が可動部3に対して位置決めされている。モニタ光源200としてレーザダイオードまたはLEDが好適に用いられ、モニタ用受光部300としてフォトダイオードやフォトトランジスタが用いられる。例えば、可動部3の揺動角度が±11.25°である場合には測定光及びモニタ光の走査角度範囲が±22.5°、つまり45°になる。
【0102】
モニタ光源200及びモニタ用受光部300は微小機械装置に組み込まれていてもよいし、微小機械装置に対して位置決めされた外部ケースに組み込まれていてもよい。
図4に示すように、磁性体保持部7の底部には、モニタ光を第2偏向面に導く開口部7a及びその反射光をモニタ用受光部300に導く開口部7bが形成されている。
【0103】
揺動制御装置350は、可動部3から導かれるモニタ光であって、可動部3の揺動に伴って角度が変化する光軸Loに沿ったモニタ光を、可動部3の揺動中心方向Dsに対して揺動方向Dmに偏った方向から検知するモニタ用受光部300と、モニタ用受光部300で検知されたモニタ光に基づいて、可動部3の1揺動周期を構成する長周期区間と短周期区間の二つの区間を検知する振幅検知回路310とを含む振幅検知部320と、振幅検知部320で検知された長周期区間と短周期区間の時間比が目標値になるように、コイルCへの印加電流の電流値を維持しながら周波数を可変制御する振幅制御部330とを備えている。
【0104】
モニタ用受光部300で検知されるモニタ光の検出周期は、可動部3の揺動周期と同じ周期となる。可動部3が揺動中心方向からモニタ用受光部300側の第1揺動方向Dm1に揺動する場合には、最大揺動角度に向かって揺動する往動時と反対側の最大揺動角度に向かって揺動する復動時にモニタ用受光部でモニタ光が検知され、その後可動部3が揺動中心方向Dsからモニタ用受光部300とは反対側の第2揺動方向Dm2に揺動して、反対側の最大揺動角度からの復帰時にモニタ用受光部300でモニタ光が検知される。
【0105】
振幅検知部320は、第1揺動方向Dm1から第2揺動方向Dm2にかけて揺動する場合に検知されるモニタ光の検知間隔を短周期区間と検知し、第2揺動方向から第1揺動方向にかけて揺動する場合に検知されるモニタ光の検知間隔を長周期区間と検知し、短周期区間と長周期区間の合計時間を可動部の1周期と検知する。具体的に、振幅検知部320は、モニタ光を所定の閾値で二値化するコンパレータと、コンパレータで検知された信号エッジをトリガーにして短周期区間と長周期区間の各時間をカウントするタイマー回路と、タイマー回路の値を記憶する記憶部等を備えている。
【0106】
図13の上部には、可動部3が目標振幅A(このとき、揺動角度は+11.25°)となるときの振幅特性曲線(実線)と、目標振幅Aよりも大きな振幅A´(このとき、揺動角度は+11.25°より大)となるときの振幅特性曲線(破線)と、目標振幅Aよりも小さな振幅A´´(このとき、揺動角度は+11.25°より小)となるときの振幅特性曲線(一点鎖線)が示され、さらに、モニタ光がモニタ用受光部300に向けて反射される揺動振幅aが示されている。
【0107】
図13の下部には、モニタ用受光部300によりモニタ光が検知されるタイミングが示されている。理想的には、可動部3が目標振幅Aで継続的に揺動されることが好ましいのであるが、環境温度の変動等に起因して可動部3を含む梁部4,4の共振周波数が変化すると振幅が目標振幅Aからずれるようになる。共振周波数がコイルCへの印加電流の周波数に近づくと可動部3の振幅が大きくなり、共振周波数がコイルCへの印加電流の周波数から遠ざかると可動部3の振幅が小さくなる。
【0108】
可動部3が目標振幅Aであるとき、振幅検知部320によって上述した短周期区間T11と長周期区間T12が検知され、短周期区間T11と長周期区間T12の合計時間T1が可動部3の1周期として検知される。
【0109】
可動部3が目標振幅Aよりも大きな振幅A´であるとき、振幅検知部320によって上述した短周期区間T21と長周期区間T22が検知され、短周期区間T21と長周期区間T22の合計時間T2(=T1)が可動部3の1周期として検知される。
【0110】
同様に、可動部3が目標振幅Aよりも小さな振幅A´´であるとき、振幅検知部320によって上述した短周期区間T31と長周期区間T32が検知され、短周期区間T31と長周期区間T32の合計時間T3(=T1)が可動部3の1周期として検知される。
【0111】
振幅制御部330は、振幅検知部320で検知された長周期区間と短周期区間の時間比が目標値(T11/T12)からずれると、当該時間比が目標値(T11/T12)になるように、コイルCへの印加電流の電流値を一定に維持しながら周波数fを可変制御する。その結果、可動部3の振幅が目標となる振幅Aに一定に維持されるようになる。具体的に、振幅制御部330は、長周期区間と短周期区間の時間比及び時間比の目標値との偏差を算出する演算回路と、偏差に基づいて印加電流の周波数の制御値を算出するPID演算等で例示されるフィードバック演算部と、フィードバック演算部で算出された制御値に対応して印加電流の周波数を調整するPLL回路を備えた交流電源回路等を備えている。尚、コイルCへの印加電流の電流値を一定に維持するとは、交流電流の実効値を一定に維持することを意味する。
【0112】
図14(a)に示すように、揺動振幅が共にAで揺動周波数がf1,f2(f1<f2)の可動部3に対して、振幅検知部320によって振幅αAとなる位置でモニタ光が検知される場合を想定する。
【0113】
揺動周波数f1の可動部3は、A1(t)=A sin 2πf1tで揺動し、揺動周波数f2の可動部3は、A2(t)=A sin 2πf2tで揺動する。振幅がαAとなる時間t11,t12,t13は、以下の式で求まる。
αA=A sin 2πf1t
αA=A sin 2πf2t
これから、
t11={1/(2πf1)}×sin
−1(α)
t12={1/(2πf1)}×{π−sin
−1(α)}
t13={1/(2πf1)}×{2π−sin
−1(α)}
と求まる。但し、0≦sin
−1(α)≦π/2である。
よって、
T11=t12−t11={1/(2πf1)}×{π−2sin
−1(α)}
T12=t13−t12={1/(2πf1)}×{π+2sin
−1(α)}
T11/T12={π−2sin
−1(α)}/{π+2sin
−1(α)}
となり、同様に、
T21/T22={π−2sin
−1(α)}/{π+2sin
−1(α)}
となる。
つまり、振幅が同一であれば周波数が変わってもT1/T2(=T11/T12=T21/T22)は一定となり、逆にT1/T2が一定になるように周波数を調整すれば、振幅が一定に維持されるようになるのである。
【0114】
図14(b)に示すように、可動部3を含む梁部4,4の当初の共振周波数がQbである場合に、振幅制御部330は、初期にコイルCへの印加電流を一定に維持しつつ、電流の周波数を共振周波数Qbよりも十分に高い周波数fmaxから共振周波数Qbよりも十分に低い周波数fminに向けて連続的にまたはステップ的に変化させる。
【0115】
振幅制御部330は、その都度、振幅検知部320により検知された長周期区間と短周期区間の時間比が目標値になるか否かを判定し、時間比が所定の許容範囲に収束すると、その周波数(
図14(b)ではfbと表記される周波数)に維持する。
図14(b)では、可動部3の動作点が共振周波数Qbの共振特性のPb点で示されている。
【0116】
その後、共振周波数がQlに低下すると動作点が共振周波数Qlの共振特性のPl点に変化して振幅が小さくなり、共振周波数がQhに上昇すると共振周波数Qhの共振特性のPh点に変化して振幅が大きくなる。例えば、共振周波数がQhに上昇した場合には、振幅制御部330は、長周期区間と短周期区間の時間比が目標値になるように、コイルCへの印加電流の周波数を共振周波数Qhより高いfh1または共振周波数Qhより低いfh2に調整する。その結果、可動部3は、共振周波数Qhの共振特性のPh1点またはPh2点で動作するようになる。Ph1点またはPh2点のうち、動作の安定性に差が見られる場合には、動作の安定性が高い方の動作点に調整すればよい。
【0117】
実際の試作においては、共振点の高周波側のほうが安定性が高かったため、常に周波数fmax側より走査して動作点を設定するようにした。従ってこの場合には、振幅が大きくなると周波数を上げ、振幅が小さくなると周波数を下げることで振幅を目標値に保つことができるようになり、
図14(b)の場合はPh1点に動作点が移ることになる。
【0118】
つまり、本発明による揺動制御方法は、可動部3から導かれるモニタ光であって、可動部3の揺動に伴って角度が変化する光軸に沿ったモニタ光を、可動部3の揺動中心方向Dsに対して揺動方向Dmに偏った方向から検知し、検知されたモニタ光に基づいて、可動部3の1揺動周期を構成する長周期区間T12と短周期区間T11の二つの区間を検知し、検知された長周期区間T12と短周期区間T11の時間比T11/T12(またはT12/T11)が目標値になるように、コイルCへの印加電流の電流値を維持しながら周波数を可変制御するのである。
【0119】
図13に示した各「受光タイミング」は、モニタ光源にレーザダイオードが用いられ、モニタ用受光部300で検知されるモニタ光の信号がコンパレータで二値化され、その立ち上がりエッジが各受光タイミングとして振幅検知部320で検知された波形を例に説明したが、
図13の「参考受光タイミング」の実線で示すアナログ信号波形のように、モニタ光源にLED等の比較的光芒が大きな光源を用いると、モニタ用受光部300で検知されるモニタ光に対応する信号波形がなまって、例えば短周期区間でt31,t32に対応する立ち上がりエッジを検知できない場合が生じる。このような場合には、二値化のための閾値を下げて、短周期区間の立ち上がりエッジt31´と立ち下りエッジt32´をt31,t32に対応する値として代用することができる。アナログ信号の場合は、温度変化により発光効率や受光感度が変化するため、
図13の「参考受光タイミング」の破線のように電気的な受光信号レベルが変化する。アナログ信号波形で制御する場合は温度に応じて適宜短周期期間と長周期期間の比を変化させたり、二値化のための閾値を変えることで温度変化の影響を防ぐことができる。
【0120】
以下に、揺動制御装置350のさらに好ましい実施形態を説明する。
可動部3の揺動位相φを検知する揺動位相検知部と、揺動位相検知部で検知された揺動位相φに同期して測定光による測定時期を調整する同期信号出力部を備えていることが好ましい。
【0121】
測距装置は、受発光部100に備えた測定光源から測定光の出射時期を基準に、その後検知された反射光との位相差または時間差に基づいて、測定光の反射位置(物体)までの距離を算出する測距演算部を備えている。例えば、TOF方式を採用する測距演算部は、所定周期で測定光源を点灯制御して物体までの距離を算出し、そのときの距離と測定光の出射方向とから物体の座標を特定する。
【0122】
しかし、可動部3の周期と測定光の出射時期とがずれると、測距演算部で物体の座標が正確に求めることができなくなる。つまり、測定光を利用した測定周期(点灯周期)を一定に維持した状態で、可動部の振幅を一定に制御するために可動部の揺動周期が変化すると測定方向が変化して、本来必要な測定方向に対応する測定値が得られなくなる虞があるのである。また、揺動周期内で必要な測定値の数の増減が発生する虞もある。そのような場合であっても、測距演算部が同期信号出力部から出力される揺動位相に同期した同期信号に基づいて測定光による測定時期を調整することが可能となり、可動部の揺動周期が変化しても本来必要な測定方向に対応する測定値を確実に得ることができるようになる。
【0123】
図14(a)に示すように、例えば、振幅検知部320で検知された長周期区間T12と短周期区間T11の各区間の1/2となる時期に振幅が最大となる。揺動位相検知部は、振幅検知部320で検知された長周期区間T12及び/または短周期区間T11の各開始時期から時間をカウントすることで各区間の1/2となる時間を検知することができる。すなわち短周期区間T11の1/2となる時間が位相π/2となる時間として、また長周期区間T12の1/2となる時間が位相3π/2となる時間として検知できる。また位相π/2となる時間より(1/4)×T1時間遡った時間が位相0となる時間と検知できる。
【0124】
同期信号出力部は、揺動位相検知部で検知された可動部3の揺動位相に基づいて、所定の揺動位相に応じた同期信号を測距演算部に出力することで、可動部3の揺動周期が変動しても、常に所定の揺動位相に対応して測距のための測定光を点灯させて測距演算を行なうことができるようになる。
【0125】
図15(a)に示すように、周波数f1で揺動している可動部3が揺動角Anの方向で測距する必要がある場合の位相をφnとすると、
An=A×sin(φn)
を満たす位相角で測距すればよい。周波数f1の場合、その時間t1nは、
t1n=(φn/2π)×T1
となり、この時間に測距すればよい。
【0126】
共振周波数が変動して周波数f2で揺動するようになった場合、そのままt1nで測距すると測定光は揺動角An´の方向となり、意図した方向での測距ができなくなる。この場合も測距すべき位相φnは同一であるので周波数f2の場合の測定時間t2nは
t2n=(φn/2π)×T2
で求められる。
【0127】
このように位相検知部320で検知された位相0の時間と一周期の時間に基づき、周波数f1の場合の位相φnに対応した時間t1nを算出して同期信号を出力することが可能となる。そして周波数がf2に変動した場合も位相φnに対応した時間t2nに同期信号を出力することで所定の位相φn、揺動角Anで測距することができる。すなわち振幅制御部330によって周波数f2に制御されると可動部3の振れ角がAn´に変動するが、このとき同期信号出力部によって可動部3が位相φnとなる時期t2nに同期信号が出力されると、測距演算部は可動部3の振れ角がAnとなる時期t2nに測定光を点灯させることができるようになる。
【0128】
ここで
図15(a)は、振れ角方向または走査方向に対して等間隔で発光制御する場合の測距タイミングを示す図、
図15(b)は位相方向または時間軸上で等間隔に発光制御する場合の測距タイミングを示す図である。どの位相または時間で発光制御するかは用途に応じて適宜定めるものであって、この事例に限定されない。またその発光タイミングは発光すべき位相情報あるいはそれに対応した情報として制御装置内部の記憶装置に予め設定しておいても良く、また外部の制御装置等から入力されてもよい。
【0129】
また、可動部3の揺動位相を検知する揺動位相検知部と、測定光による測定時期に同期して揺動位相検知部で検知された揺動位相を出力する位相信号出力部を備えていれば、位相信号出力部から出力される位相信号によって、測定光による測定時期に同期した可動部の揺動位相が把握できるので、正確に測定値に対応する方向が特定できるようになる。
【0130】
また、本微小機械装置を垂直方向の光走査機構として、他の水平方向の駆動装置と組み合わせて2次元の光走査を行う場合、検出精度を一定に保つ必要があるときには、2つの走査機構の位相を同期して走査するように制御する必要がある。このような場合にも位相信号出力部を備えていれば、その位相信号を用いて水平方向の駆動装置の位相を容易に制御できるようになる。ここで位相信号とは、位相ゼロ時を示す同期信号や一周期の時間情報など、位相に係わる信号であれば適宜選択が可能である。
【0131】
上述の同期信号出力部と位相信号出力部の双方を揺動制御装置350に備え、何れを機能させるかを切替える切替部(例えば、切替スイッチ)を備えてもよい。
【0132】
上述した揺動制御装置350の各機能ブロックを構成する具体的な回路は、特に限定されることはなく、公知のアナログ信号回路、デジタル信号回路、ゲートアレイ、マイクロコンピュータ等を用いて適宜構成することができる。