(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、上記従来の高分子凝集剤を添加する液状泥土の造粒固化方法においては、液状泥土を所望の状態に造粒させるために高価な凝集剤を多量添加する必要があり、非常に高コストの処理手法となる。また、例えば粘性の高い泥土が処理対象である場合等、好適に凝集作用が働かず、造粒できないケースもある。
【0006】
また、吸水性材料を添加して液状泥土を造粒固化する方法においても、やはり、液状泥土の含水比を低下させるために多量の吸水性材料を添加する必要が生じ、高コストになる。さらに、多量の吸水性材料を添加することで、当初の液状泥土の量に対し処理を施した後の液状泥土(処理土)の量が増大してしまうという問題もある。
【0007】
さらに、例えばセメント系固化材や石灰などの固化材を液状泥土に添加して造粒し、粒状物(造粒物)を生成したり、固化材を液状泥土に添加し、固化後に破砕する方法においては、セメント等の固化材を使用すると、固化するまでの養生時間が非常に長くかかり、養生スペースの占有時間が多く必要になる。また、粒状物(造粒物)を製造するために特殊な造粒機や破砕機が必要になる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、高価な凝集剤や吸水性材料を不要にし、固化材を用いて短時間で効率的に造粒物の製造を可能にする液状泥土の造粒固化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0010】
本発明の液状泥土の造粒固化方法は、液状泥土を造粒固化する方法であって、水硬性を有する固化材を前記液状泥土に添加して混合する固化材添加工程と、前記固化材添加工程後の前記液状泥土を半固体状になるまで養生する養生工程と、前記養生工程後の半固体状の前記液状泥土の処理塊をほぐして造粒するほぐし造粒工程とを備えていることを特徴とする。
【0011】
ここで、本発明に係る「液状泥土」とは、例えば、浚渫土やヘドロ、トンネルや杭、地中壁の構築、造成、地盤開削(掘削)などの建設工事で発生する泥土、下水処理や工場排水処理等で発生する汚泥などの高含水状態であることからそのままでは再利用できない土(土砂)を示す。あるいは、「JIS A 1205:土の液性限界・塑性限界試験方法」で求めた液性限界W
Lを上回る高含水状態の土を示す。
【0012】
また、本発明の液状泥土の造粒固化方法においては、前記ほぐし造粒工程で、前記処理塊をほぐすとともに撹拌して造粒するようにし、前記固化材添加工程における前記固化材の添加量、及び/又は前記養生工程における養生時間、及び/又は前記ほぐし造粒工程における撹拌時間を調節して、所望の粒度分布の粒状物を生成することが望ましい。
【0013】
さらに、本発明の液状泥土の造粒固化方法において、前記養生工程では、前記液状泥土の固化状態をコーン指数によって管理し、コーン指数が100〜1800kN/m
2になった段階で前記造粒工程によるほぐし造粒を行うことがより望ましい。
なお、ほぐし造粒を行う際、中礫、粗礫が卓越した礫質土(礫質土(粗)ともいう。)ではコーン指数が100〜300kN/m
2が好ましく、砂質土ではコーン指数が300〜1050kN/m
2が好ましく、細礫の卓越した礫質土(礫質土(細)ともいう。)ではコーン指数が1050〜1800kN/m
2が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液状泥土の造粒固化方法においては、例えば浚渫土や泥土、汚泥などの液状泥土にセメントや石灰などの水硬性を有する固化材を添加して混合し、液状から塑性状、塑性状から半固体状になるまで養生した段階で、この半固体状の処理塊をほぐして造粒することで粒状物(造粒物)を生成(製造)することができる。また、このようにして得た粒状物をさらに養生して固化を進行させることで、造粒硬化物を生成(製造)することが可能になる。
【0015】
よって、従来のように高価な凝集剤や吸水性材料を不要にすることができ、低コストで液状泥土を造粒固化することが可能になる。また、固化材を添加するだけであるため、従来の吸水性材料を添加する場合などと比較し、容積の増加量を最小限に抑えて液状泥土を造粒固化処理することが可能になる。
【0016】
さらに、完全固化状態ではなく半固体状になった段階でほぐし造粒するため、従来の固化材を用い破砕して造粒する方法と比較し、特殊な機械を必要とせず、さらに養生時間、養生スペースの占有時間を短くすることができ、この点からも効率的に且つ低コストで粒状物、造粒硬化物を製造することが可能になる。
【0017】
また、液状泥土に固化材を添加し、半固体状になるまで(例えばセメント系固化材を用いた場合には数時間から数日程度)養生し、半固体状の処理塊をほぐして造粒するだけでよいため、養生ヤードが確保できれば大量の液状泥土を処理し、大量の粒状物(造粒物)を容易に製造することができる。さらに、例えば、セメント系固化材を用いた場合には数時間から1日程度養生してほぐし造粒した粒状物は、そのまま第3種建設発生土として利用することができ、さらにほぐし造粒した粒状物を1日から1週間程度養生することで、第1種建設発生土や第2種建設発生土として利用することが可能になる。
【0018】
また、セメントや石灰等の水硬性を有する固化材を用いるため、この固化材を添加して固化することが可能な液状泥土であれば、高含水比の泥土や有機質泥土であっても粒状物を製造することができる。さらに、液状泥土の種類、状態に応じ、適宜固化材の種類、添加量を選定することで粒状物を製造することができ、汎用性の高い処理を実現することが可能になる。
【0019】
また、本発明の液状泥土の造粒固化方法においては、固化材の添加量、ほぐし造粒するまでの養生時間、ほぐし造粒時の撹拌時間を調節することにより、砂状から礫状まで、生成される粒状物の粒度分布(粒径分布)を自在にコントロールすることができる。さらに、強度が異なる粒状物も、固化材の種類や添加量(ほぐし造粒するまでの養生時間、ほぐし造粒時の撹拌時間)を調節することで自在に製造することが可能である。
【0020】
また、本発明の液状泥土の造粒固化方法においては、養生工程で液状泥土の固化状態をコーン指数によって管理し、すなわち、造粒工程でほぐし造粒を行うタイミングをコーン指数で(コーン試験を行って)管理し、このコーン指数が100〜1800kN/m
2となった段階で造粒工程によるほぐし造粒を行うことで、好適にほぐし造粒を行い、所望の粒状物を生成(さらに養生して所望の造粒硬化物を製造)することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1から
図5を参照し、本発明の一実施形態に係る液状泥土の造粒固化方法について説明する。ここで、本実施形態は、例えば、浚渫土やヘドロ、トンネルや杭、地中壁の構築、造成、地盤開削・掘削などの建設工事で発生する泥土、下水処理や工場排水処理等で発生する汚泥などの高含水状態の土、あるいは液性限界を上回る高含水状態の土を造粒固化して改質し、再利用/有効活用するための方法に関するものである。
【0023】
そして、本実施形態の液状泥土の造粒固化方法は、水硬性を有する固化材を液状泥土に添加して混合する固化材添加工程と、固化材添加工程後の液状泥土を半固体状になるまで養生する養生工程と、養生工程後の半固定状の処理塊をほぐして造粒するほぐし造粒工程とを備えている。
【0024】
すなわち、本実施形態の造粒固化方法では、上記の通り、例えばセメント系材料や石灰などの水硬性を有する固化材を用い、特殊な高分子凝集剤や吸水性材料を使用しない。
【0025】
また、造粒とは、粘土のような塑性状態にある粒子同士が粘着力等によって付着を繰り返し、団粒状に成長した(形成された)ものであり、通常、液状泥土にセメント系固化材を混合しただけでは、速やかに泥土が造粒するような組成状態に改質されないため、造粒しない。
これに対し、本実施形態の液状泥土の造粒固化方法では、液状泥土に固化材を添加した後、一定期間養生し固化材の固化反応を進行させ(固化材の硬化反応を発現させ)、液状泥土が塑性化するのを待ってから造粒する。
【0026】
具体的に、本実施形態の液状泥土の造粒固化方法では、例えば液性限界を上回る高含水状態の液状泥土に、セメント系固化材を5〜30重量%程度の割合で添加し、数時間から1日程度養生すると、液状泥土は、固化材の固化反応の進行とともに、液状から塑性状、さらに半固体状になる。そして、液状泥土が半固体状になった段階で、その半固体状の処理塊をほぐし、撹拌するなどして造粒する。
【0027】
このとき、液状泥土が液性限界を上回るような高含水状態で、液状であるため、セメント系固化材を添加しても容易に撹拌混合することができる。このため、特殊な撹拌ミキサーなどは不要であり、例えば、簡易な貯泥槽に液状泥土を投入し、固化材を添加してバックホウで撹拌する等のバケットミキシングでも対応可能で、液状泥土に対し確実且つ容易に固化材を好適に撹拌混合することが可能である。
【0028】
ここで、セメント系固化材を添加し、1日から数週間養生して固化反応が大方終了した固結塊を形成し、この固結塊を破砕して粒状物を得る従来の方法では、粒状物が破砕物であり、破砕した段階で既に硬化反応が終了している。このため、製造した粒状物は、この粒状物を手で強く握るなどして外力を加えても容易に変形することはない。
【0029】
これに対し、本実施形態の液状泥土の造粒固化方法のほぐし造粒工程で得られた粒状物(造粒物)は、養生時に半固体状であるが、造粒工程でほぐし撹拌すると、塑性状になる。すなわち、ほぐし造粒工程後の粒状物は、固結していないため、外力を加えると容易に変形し、手で握れば団子状になる。そして、この塑性状態にある粒状物が、時間の経過ととともに固化材の固化反応が進行して固化し、一定期間を経て所定の強度を有する造粒硬化物となる。このような粒状物を一定期間おいて固形物にするまでの一連の工程が「造粒固化」であり、本実施形態における「造粒固化」によって得られる造粒硬化物は、固結塊を破砕して得られる粒状物と、その生成過程、性状が全く異なるものである。
【0030】
また、「ほぐし造粒」ができるタイミングは、液状泥土の種類、固化材の種類や添加量、さらに養生時間によって異なる。すなわち、「ほぐし造粒」を実施可能な液状泥土の状態(性状)には、一定の幅(造粒ゾーン)が存在する。
【0031】
これに対し、この「造粒ゾーン」を調べる方法の一つとして、「JIS A 1228:締め固めた土のコーン指数試験方法」を採用することができる。すなわち、本実施形態の液状泥土の造粒固化方法では、養生工程で、液状泥土の固化状態をコーン指数によって管理し、コーン指数が所望の値になった段階で造粒工程によるほぐし造粒を行うようにする。
【0032】
例えば、バケットミキシングや耕運機等の撹拌機で固化材を撹拌混合した液状泥土を数時間静置して養生し、この液状泥土が半固体へと改質されている段階で、液状泥土の試料を採取し、締め固めた土のコーン指数試験を実施する。このコーン試験によって得られたコーン指数q
cが原料土の液状泥土の性状等に応じて決まる所定の範囲、例えば100〜1800kN/m
2の範囲にあることで、「ほぐし造粒」を実施可能な液状泥土の状態、すなわち「造粒ゾーン」にあると判断することができる。
【0033】
そして、本実施形態では、液状泥土が「ほぐし造粒」を実施可能な状態になった段階で、例えば、液状泥土の処理塊を貯泥槽からバックホウなどで取り出すとともに軽くほぐして土質改良機に投入する。このとき、コーン指数q
cが100〜1800kN/m
2であれば、バックホウで容易にほぐし作業が行える。また、液状泥土の処理塊をほぐし、土質改良機の撹拌翼で撹拌することにより、細粒化するとともに造粒する。そして、このように「ほぐし造粒」して得られた粒状物を1日から1週間程度養生することで、更なる固化反応が進行し、造粒硬化物を製造することができる。
【0034】
なお、固化材として早強セメント等の特殊セメントを用いたり、混和材、混和剤を添加するなどして固化反応を早めるようにすれば、「ほぐし造粒」を行うまでの養生時間や、「ほぐし造粒」後の粒状物の養生時間を短縮することができる。また、固化反応を確実に進行させるため、養生は湿潤状態で行うことが好ましい。勿論、水中養生であってもよい。
【0035】
(実施例1)
ここで、実施例1を示し、本実施形態の液状泥土の造粒固化方法についてより詳細な説明を行う。なお、本実施形態の液状泥土の造粒固化方法は本実施例に限定されるものではない。
【0036】
本実施例では、液性限界が80.1%、自然含水比が69.4%の非常に粘性の高い海成粘土を含水比が100%となるように調整したものを液状泥土として使用した。また、この液状泥土に、固化材としての普通ポルトランドセメントを添加率10重量%、20重量%、30重量%の3配合で添加した。
【0037】
さらに、液状泥土に固化材を添加するとともに1分間ミキサーで撹拌混合した後、各配合の液状泥土を2時間、4時間、8時間、16時間の4段階の異なる養生時間で養生し、これら養生時間が異なる液状泥土の処理塊をミキサーでほぐし、1分間撹拌した(「ほぐし造粒」作業を行った)。
【0038】
そして、このように処理して得た各処理物の状態(造粒の可否、工学的分類、コーン指数)を確認した。この結果を表1に示す。
【0040】
この表1に示す通り、養生時間が短い場合や、固化材の添加量が少なすぎる場合には、粘着力(土粒子同士の付着力)が卓越し、表1の造粒判定が×(柔らかすぎて団子状にしかならず造粒できない状態)や△(非常に大粒の造粒物にしかならない状態)になることが確認された。なお、再撹拌しない場合(「ほぐし造粒」作業を行わない場合)には、勿論、固化材を添加した液状泥土は粘土の塊の状態のままである。
【0041】
また、長時間養生した後に撹拌した場合には、固化材の添加量が多くなると、固化材による固化反応が卓越し、表1の造粒判定が○(造粒するが、好適な造粒物だけでなく一部が固結塊として残ってしまう状態)や◆(造粒ではなく破砕現象が主体となり固結塊が大量に出る状態)になることが確認された。
【0042】
一方、養生時間(「ほぐし造粒」を行うタイミング)と固化材の添加量を適正に調整すると、表1の造粒判定が◎(良好に造粒された状態)になることが確認された。
【0043】
ここで、
図1に、原料土である海成粘土と、各経過時間、固化材添加量で製造された粒状物(造粒物)の粒度分布を示す。なお、この
図1において、例えば「C10−4」などの表記は、「C(セメント)(添加率)−(養生時間)」を示す。
【0044】
そして、表1及び
図1の結果から、養生時間と固化材の添加量を適正に調節すると、良好な造粒物が製造できるとともに、養生時間と固化材の添加量を適宜調節することで、粒度分布が異なる粒状物を製造できることが確認された。すなわち、固化材の添加量に応じ、「ほぐし造粒」を行うタイミングを変えることで、粒度分布が異なる粒状物を自在に製造できることが確認された。また、「ほぐし造粒」を行う際の撹拌時間を調節することによっても粒度分布が異なる粒状物を自在に製造できることが確認されている。
【0045】
さらに、
図2及び
図3は、実験により得られた固化材添加量が異なる各試料の養生時間とコーン指数の関係を示す図である。そして、この
図2及び
図3から、固化材を添加した液状泥土のコーン指数は、固化材添加量と養生時間でコントロールできることが分かる。すなわち、固化材添加量を大きくすれば、造粒までの養生時間を短縮することが有効であり、少ない固化材添加量でほぐし造粒できるようにするためには、養生時間を長くすることが必要になる。
【0046】
そして、
図2及び
図3に示すように各固化材添加量に対する養生時間とコーン指数の関係を予め求めておくと、固化材添加量や養生時間、ほぐし造粒時の撹拌時間、さらに養生ヤードの広さやサイクルタイムなど、現場条件に合わせた最適な造粒条件を設定することが可能になる。
【0047】
また、これら
図2や
図3に示すように、コーン指数q
cが100〜1800kN/m
2となる範囲を造粒ゾーンに設定すると、バックホウなどで容易にほぐし作用が行え、また、容易に撹拌して造粒(「ほぐし造粒」)することが可能になる。
【0048】
なお、本実施例を行って得られた粒状物(表1の各造粒物)をさらに1週間養生した後、再度コーン試験を行った結果、いずれの試料も貫入不能という結果となった。このことから、造粒後に養生期間をさらに設けることで、第1種建設発生土や第2種建設発生土として利用可能な粒状物が製造できることが確認された。
【0049】
(実施例2)
次に、実施例2を示し、本実施形態の液状泥土の造粒固化方法について説明を行う。なお、実施例1と同様、本実施形態の液状泥土の造粒固化方法は本実施例に限定されるものではない。
【0050】
本実施例では、液性限界が80.1%、自然含水比が69.4%の非常に粘性の高い海成粘土を含水比160%(液性限界W
Lの2倍)に調泥しスラリー化したものを対象に、セメント系固化材(普通ポルトランドセメント)のみを、セメント添加率10重量%、20重量%、30重量%の3配合で添加した。そして、固化材添加後に1分間ミキサーで混合し、それぞれの配合について2、4、8、16、32、64時間経過後にミキサーで1分間再び撹拌してほぐし造粒を試みた。
【0051】
そして、実施例1と同様に、このように処理して得た各処理物の状態(造粒の可否、工学的分類、コーン指数)を確認した。この結果を表2に示す。
【0053】
そして、養生工程時にコーン試験を行って得られる処理塊のコーン指数q
cによって製造される粒状物の工学的分類が異なるが、表2及び
図4に示す実験結果から、コーン指数q
cが100〜450kN/m
2では中礫、粗礫が卓越した礫質土、コーン指数q
cが450〜1050kN/m
2では砂質土、コーン指数q
cが1050〜1800kN/m
2では細礫の卓越した礫質土がほぐし造粒によって製造されることが確認された。
なお、本願の発明者らにより本発明に係る実験研究を繰り返し、含水状態などが異なる他の液状泥土でほぐし造粒を行った際に、中礫、粗礫が卓越した礫質土(礫質土(粗)ともいう。)ではコーン指数が100〜300kN/m
2が好ましく、砂質土ではコーン指数が300〜1050kN/m
2が好ましく、細礫の卓越した礫質土(礫質土(細)ともいう。)ではコーン指数が1050〜1800kN/m
2が好ましいという結果も確認された。
【0054】
これは、実施例1の結果とほぼ同様の結果であり、このことから、含水比が液性限界W
Lの2倍の高含水状態の液状泥土であっても養生時間を延長することにより所望の粒状物に造粒可能であることを示し、さらにコーン指数で管理することによってこれを実現できることを示している。
【0055】
(実施例3)
次に、実施例3を示し、本実施形態の液状泥土の造粒固化方法について説明を行う。なお、実施例1、実施例2と同様、本実施形態の液状泥土の造粒固化方法は本実施例に限定されるものではない。
【0056】
本実施例では、液性限界が57.0%、塑性限界が37.9%、自然含水比が概ね30〜35%の非常に粘性の高い陸成粘土(火山灰質粘性土)を含水比90%(液性限界W
Lの1.5倍)に加水調泥したものを対象に、セメント系固化材(普通ポルトランドセメント)をセメント添加率15重量%で添加した。そして、固化材添加後に1分間ミキサーで混合し、12、18、24、30、36時間経過後にミキサーで1分間再び撹拌してほぐし造粒を試みた。
すなわち、本実施例では、実施例1、実施例2で用いた海成粘土ではなく、陸成粘土に対してほぐし造粒を試みた。
【0057】
なお、本実施例で用いた陸成粘土(原土)は、自然含水比状態(塑性限界以下)でパサパサして粘性の小さい土の性状を示す。一方、降雨などによって含水比が塑性限界を上回る状態になると著しく泥濘化し、非常に高い粘性を示す。例えば、含水比が塑性限界を上回る状態になると、歩行が困難な状態までトラフィカビリティを悪化させるほどに泥濘化する。
【0058】
そして、実施例1、実施例2と同様に、このように処理して得た処理物の状態(造粒の可否、工学的分類、コーン指数)を確認した。この結果を表3及び
図5に示す。
なお、
図5は、原料土である陸成粘土と、含水比、養生時間、固化材添加量で製造された粒状物(造粒物)の各粒度分布を示している。
【0060】
そして、養生工程時にコーン試験を行って得られる処理塊のコーン指数q
cによって製造される粒状物の工学的分類が異なるが、表3及び
図5に示す実験結果から、24時間養生すると中礫、粗礫が卓越した礫質砂、30時間養生すると砂質礫、36時間養生すると砂まじり礫がほぐし造粒によって製造されることが確認された。
【0061】
したがって、本実施形態の液状泥土の造粒固化方法においては、例えば浚渫土や泥土、汚泥などの液状泥土にセメントや石灰などの水硬性を有する固化材を添加して混合し、液状から塑性状、塑性状から半固体状になるまで養生した段階で、この半固体状の処理塊をほぐして造粒することで粒状物(造粒物)を生成・製造することができる。また、このようにして得た粒状物をさらに養生して固化を進行させることで、造粒硬化物を生成・製造することが可能になる。
【0062】
よって、従来のように高価な凝集剤や吸水性材料を不要にすることができ、低コストで液状泥土を造粒固化することが可能になる。また、固化材を添加するだけであるため、従来の吸水性材料を添加する場合などと比較し、容積の増加量を最小限に抑えて液状泥土を造粒固化処理することが可能になる。
【0063】
さらに、完全固化状態ではなく半固体状になった段階でほぐし造粒するため、従来の固化材を用い破砕して造粒する方法と比較し、特殊な機械を必要とせず、さらに養生時間、養生スペースの占有時間を短くすることができ、この点からも効率的に且つ低コストで粒状物、造粒硬化物を製造することが可能になる。
【0064】
また、液状泥土に固化材を添加し、半固体状になるまで養生し、例えばセメント系固化材を用いた場合には数時間から数日程度養生し、半固体状の処理塊をほぐして造粒するだけでよいため、養生ヤードが確保できれば大量の液状泥土を処理し、大量の粒状物を容易に製造することができる。さらに、例えば、セメント系固化材を用いた場合には数時間から1日程度養生してほぐし造粒した粒状物は、そのまま第3種建設発生土として利用することができ、さらにほぐし造粒した粒状物を1日から1週間程度養生することで、第1種建設発生土や第2種建設発生土として利用することが可能になる。
【0065】
また、セメントや石灰等の水硬性を有する固化材を用いるため、この固化材を添加して固化することが可能な液状泥土であれば、高含水比の泥土や有機質泥土であっても粒状物を製造することができる。さらに、液状泥土の種類、状態に応じ、適宜固化材の種類、添加量を選定することで粒状物を製造することができ、汎用性の高い処理を実現することが可能になる。
【0066】
また、本実施形態の液状泥土の造粒固化方法においては、固化材の添加量、ほぐし造粒するまでの養生時間、ほぐし造粒時の撹拌時間を調節することにより、砂状から礫状まで、生成される粒状物の粒度分布(粒径分布)を自在にコントロールすることができる。さらに、強度が異なる粒状物も、固化材の種類や添加量(ほぐし造粒するまでの養生時間、ほぐし造粒時の撹拌時間)を調節することで自在に製造することが可能である。
【0067】
また、本実施形態の液状泥土の造粒固化方法においては、養生工程で液状泥土の固化状態をコーン指数によって管理し、すなわち、造粒工程でほぐし造粒を行うタイミングをコーン指数で(コーン試験を行って)管理し、このコーン指数が100〜1800kN/m
2となった段階で造粒工程によるほぐし造粒を行うことで、好適にほぐし造粒を行い、所望の粒状物を生成、さらに養生して所望の造粒硬化物を製造することが可能になる。
【0068】
以上、本発明に係る液状泥土の造粒固化方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。