特許第6260056号(P6260056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6260056
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】歯科治療椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 15/02 20060101AFI20180104BHJP
   A61G 15/12 20060101ALI20180104BHJP
   A61C 19/00 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   A61G15/02
   A61G15/12 510
   A61C19/00 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-113714(P2014-113714)
(22)【出願日】2014年6月2日
(65)【公開番号】特開2015-226664(P2015-226664A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】502080704
【氏名又は名称】長田電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153110
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(72)【発明者】
【氏名】井上 未結
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−183046(JP,A)
【文献】 特開2005−087289(JP,A)
【文献】 特開平04−295357(JP,A)
【文献】 特表平07−506507(JP,A)
【文献】 特開2011−217870(JP,A)
【文献】 特開2007−068769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 15/00−15/18
A61C 19/00
A61H 7/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックレストおよびコンターシートを有し、前記バックレストあるいは前記コンターシートの少なくとも一方に袋体を設けた歯科治療椅子であって、
患者の頭部による圧力を測定するための圧力センサを複数敷設した安頭台と、前記圧力センサの測定結果に基づいて前記袋体の内部圧力を制御する圧力制御部とを備えたことを特徴とする歯科治療椅子。
【請求項2】
自動調整モードが選択された場合、前記圧力制御部が前記袋体の内部圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載の歯科治療椅子。
【請求項3】
前記袋体が、前記バックレストあるいは前記コンターシートの少なくとも一方に複数敷設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科治療椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックレストおよびコンターシートを有し、バックレストあるいはコンターシートの少なくとも一方に袋体を設けた歯科治療椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療椅子は中央にコンターシートを有し、コンターシートの後方にはバックレストや安頭台が、コンターシートの前方にはレッグレストがそれぞれ設けられ、安頭台は患者の頭部を、バックレストは患者の背部を、コンターシートは患者のでん部を、レッグレストは患者の脚部をそれぞれ支持する。また、歯科治療椅子は、術者が患者を治療し易い姿勢にするために、起倒や上下動可能に構成されており、患者を起状態の姿勢から寝状態の姿勢に変更することができる。
【0003】
ここで、患者の体型や座り方などによって歯科治療椅子の押圧位置が異なり、押圧力の分布に応じて歯科治療椅子のクッション性能を変更したい場合がある。このため、例えば、特許文献1には、バックレスト、コンターシート、レッグレストの少なくとも1つに袋体(エアーバックともいう)を複数敷設すると共に、各袋体の上面に体圧測定センサを配置し、体圧測定センサの測定結果に基づいて各袋体の内部圧力を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−87289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1による体圧測定センサの測定結果はこのセンサを設けた袋体の内部圧力を調整するのみである。よって、仮に特許文献1の構造に安頭台を追加すると共に、この安頭台にセンサ付きの袋体を設け、安頭台への押圧力の分布に応じて安頭台の袋体の内部圧力を調整したとしても、安頭台はバックレストやコンターシート等に比べて小型であって多くの袋体を配置できないので、患者の頭部の位置を効果的に変更できないという問題がある。
【0006】
これでは、患者の頭部が安頭台の所定位置にない場合や安頭台が患者の頭部の形状に合わない場合などには、例えば患者の頭部を抱きかかえるような、術者自身が無理な姿勢で患者の頭部の位置を調整しなければならず、術者にとって大きな負担となる。一方、例えば起き上がることが困難な患者等のように、患者が頭部を安頭台に安定して固定できない場合、患者自身が無理な姿勢で治療を受けなければならず、患者にとって大きな負担になる。
【0007】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、患者の背部あるいはでん部の位置変更によって患者の頭部の位置を効果的に変更できる歯科治療椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、バックレストおよびコンターシートを有し、前記バックレストあるいは前記コンターシートの少なくとも一方に袋体を設けた歯科治療椅子であって、患者の頭部による圧力を測定するための圧力センサを複数敷設した安頭台と、前記圧力センサの測定結果に基づいて前記袋体の内部圧力を制御する圧力制御部とを備えたことを特徴としたものである。
【0009】
請求項2の発明は、自動調整モードが選択された場合、前記圧力制御部が前記袋体の内部圧力を制御することを特徴としたものである。また、請求項3の発明は、前記袋体が、前記バックレストあるいは前記コンターシートの少なくとも一方に複数敷設されることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、患者の頭部による圧力が安頭台の複数個の圧力センサで測定され、圧力制御部が圧力センサの測定結果に基づいてバックレストの袋体あるいはコンターシートの袋体の内部圧力を制御し、患者の背部あるいは患者のでん部の位置を変更するので、患者の頭部の位置を効果的に変更できる。その結果、術者や患者への負担軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一形態に係る歯科治療椅子の外観斜視図などである。
図2図1の歯科治療椅子に適用可能な回路ブロック図である。
図3図1の歯科治療椅子の使用例を説明するための図である。
図4図1の歯科治療椅子の使用例を説明するための図である。
図5】第2実施形態の歯科治療椅子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の歯科治療椅子について説明する。図1(A)は、本発明の第1実施形態に係る歯科治療椅子の外観斜視図であり、歯科治療椅子を右斜め前方から見ている。
歯科治療椅子1は、スピットンやワークテーブル(いずれも図示省略)等を有した歯科治療ユニットの一構成要素である。歯科治療椅子1は基台2の上方にコンターシート3を有し、コンターシート3の一端にはバックレスト4や安頭台5が、コンターシート3の他端にはレッグレスト6がそれぞれ設けられている。
【0013】
コンターシート3は基台2に対して上下動可能であり、バックレスト4および安頭台5はコンターシート3に対して起倒可能に構成されている。また、レッグレスト6もコンターシート3に対して起倒可能である。よって、歯科治療椅子1は、患者を図1(A)に示す起状態の姿勢から、バックレスト4やレッグレスト6をコンターシート3と同様に水平に配置した寝状態の姿勢に変更することができる。
【0014】
図1(A)に示すように、コンターシート3の内部には、歯科治療椅子1の前後方向および左右方向に例えば2個ずつの計4個の袋体(エアーバックともいう)3aが設けられると共に、バックレスト4の内部にも前後方向および左右方向に例えば2個ずつの計4個の袋体4aが設けられている。各袋体3a,4aは上記スピットン内のコンプレッサに接続され、このコンプレッサで生成された圧縮空気が袋体3a,4aの内部にそれぞれ供給される。なお、コンプレッサで生成された圧縮空気は、歯科用インスツルメントのエアータービンにも供給可能である。
【0015】
図1(B)は例えばカバーを外した安頭台の正面図であり、この安頭台5の表面には、複数個の体圧測定センサ7が例えば網目状に配置されている。体圧測定センサ7は、患者の頭部による圧力を測定するために、安頭台5の表面に生じた押圧力を例えば電気抵抗や電気容量などの電気信号に変換可能に構成されている。なお、体圧測定センサ7が本発明の圧力センサに相当する。
【0016】
図2は、図1の歯科治療椅子に適用可能な回路ブロック図である。体圧測定センサ7で得られた信号は圧力制御部9に出力され、平均値や最大値などの適切な演算処理が施された後、体圧測定センサ7の測定結果として利用される。この体圧測定センサ7の測定結果は記憶部10に格納される。
また、例えば上記ワークテーブルに設置された操作パネル8からの信号も圧力制御部9に出力されている。例えば操作パネル8で自動調整モードが選択された場合、圧力制御部9は袋体3a,4aの内部圧力を自動的に制御する。このように、自動調整モードを設ければ、仮に通常は安頭台を位置調整しない医院であっても、患者の姿勢を容易に変更可能になる。
【0017】
圧力制御部9は、体圧測定センサ7の測定結果に基づいて給気バルブ11や排気バルブ12を開閉させる。
給気バルブ11は、例えば上記コンプレッサと袋体3a,4aとを接続する配管(図示省略)に設置される。給気バルブ11が開弁すると、コンプレッサで生成された圧縮空気が袋体3aや袋体4aの内部にそれぞれ供給されるので、袋体3aや袋体4aが膨張する。
【0018】
一方、排気バルブ12は、例えば袋体3a,4aと外部とを接続する配管(図示省略)に設置され、排気バルブ12が開弁すると、袋体3aや袋体4a内の圧縮空気が外部に放出されるので、袋体3aや袋体4aが収縮する。
袋体3aや袋体4aの内部圧力は、圧力センサ13で検出されて圧力制御部9に出力される。圧力センサ13の測定結果も記憶部10に格納される。
【0019】
そして、圧力制御部9は、安頭台5の体圧測定センサ7の測定結果および袋体3aや袋体4aの圧力センサ13の測定結果に基づいて給気バルブ11や排気バルブ12の開度を調整し、計4個の袋体3aや計4個の袋体4aに上記コンプレッサで生成された圧縮空気を供給し、安頭台5に対する患者の頭部の位置を変更している。
【0020】
図3図4は、図1の歯科治療椅子の使用例を説明するための図である。
まず、患者が図3(A)で見て歯科治療椅子1の奥に片寄って座ったため、患者の頭部も安頭台5の同じく奥に片寄って配置された場合を想定する。この場合、体圧測定センサ7の測定結果による圧力分布をイメージとして可視化すると、図3(B)のように、患者から見て安頭台5の左寄りの位置に高圧領域(図中に濃い色で表示する)Hがあり、この高圧領域Hを中心に中圧領域M、中低圧領域L1、低圧領域L2までが広範囲に亘って形成されている。
【0021】
よって、この場合には、圧力制御部9が例えば患者から見てコンターシート3の左前側および左後側の袋体3a並びにバックレスト4の左前側および左後側の袋体4aの内部に圧縮空気を供給すると、患者の左半身が持ち上がり、患者の身体が歯科治療椅子1の中央位置に向けて傾くので、患者の頭部も安頭台5の中央位置に配置可能になる。
【0022】
次に、患者の頭部の一部分が安頭台5に部分的に接触している場合を想定する。この場合の圧力分布を可視化すると、例えば図4(A)のように、患者から見て安頭台5の右下寄りの位置に狭い範囲の中圧領域(図中にやや濃い色で表示する)Mがあり、この中圧領域Mの周囲に中低圧領域L1が形成されている。
よって、この場合には、圧力制御部9が例えば患者から見てバックレスト4の右後側の袋体4aの内部に圧縮空気を供給すると、患者の右肩部が持ち上がり、患者の右後頭部が安頭台5に浅めに配置されるので、安頭台5の高圧部分を緩和可能になる。
【0023】
続いて、患者の首部が安頭台5に接触している場合を想定する。この場合の圧力分布を可視化すると、図4(B)のように、安頭台5の中央下寄りの位置に高圧領域(図中に濃い色で表示する)Hがあり、この高圧領域Hの周囲に中圧領域Mや中低圧領域L1が形成されている。
よって、この場合にも、圧力制御部9が例えば患者から見てバックレスト4の左後側および右後側の袋体4aの内部に圧縮空気を供給すると、患者の両肩部が持ち上がり、患者の首部が安頭台5に浅めに配置されるので、患者の首部への負担を軽減可能になる。
【0024】
このように、患者の頭部による圧力が安頭台5の複数個の体圧測定センサ7で測定され、圧力制御部9が体圧測定センサ7の測定結果に基づいてコンターシート3の袋体3aやバックレスト4の袋体4aの内部圧力を制御し、患者の背部や患者のでん部の位置を変更するので、患者の頭部の位置を効果的に変更できる。その結果、術者や患者への負担軽減を図ることができる。
また、体圧測定センサ7を安頭台5に複数敷設すれば、患者の頭部の圧力を高精度に測定できる。
【0025】
図5は、第2実施形態の歯科治療椅子の斜視図である。
この歯科治療椅子1は、コンターシート3、バックレスト4に複数個の袋体を設置しており、また、レッグレスト6にも複数個の袋体を設置している。詳しくは、コンターシート3の内部には、歯科治療椅子1の前後方向および左右方向に例えば5個ずつの計25個の袋体(エアーバックともいう)3aが、バックレスト4の内部にも前後方向および左右方向に例えば5個ずつの計25個の袋体4aが、そして、レッグレスト6の内部にも前後および左右の各方向に例えば5個ずつの計25個の袋体6aがそれぞれ設けられている。
【0026】
圧力制御部9は、安頭台5の体圧測定センサ7の測定結果などに基づいて、計25個の袋体3aの一部、計25個の袋体4aの一部、計25個の袋体6aの一部にも上記コンプレッサで生成された圧縮空気を供給可能である。したがって、この第2実施形態のように、細分化された袋体3a,4a,6aをコンターシート3、バックレスト4、レッグレスト6にそれぞれ敷設すれば、患者の姿勢をより一層細やかに調整できる。
【0027】
具体的には、図3(B)に示したような、患者の頭部が安頭台5の左寄りに位置していた場合、図5に示したバックレスト4の計25個の袋体4aのうち、患者から見てバックレスト4の右後端の袋体(図5中に斜線で示す)を1行1列目の袋体4aと称し、また、コンターシート3の計25個の袋体3aのうち、患者から見てコンターシート3の右後端の袋体(図5中に斜線で示す)を1行1列目の袋体3aと称すると、圧力制御部9は、バックレスト4の例えば4列目と5列目に位置する計10個の袋体4aの内部に圧縮空気を供給すると共に、コンターシート3の例えば4列目と5列目に位置する計10個の袋体3aの内部に圧縮空気を供給する。これにより、患者の左半身が持ち上がり、患者の身体が歯科治療椅子1の中央位置に向けて速やかに傾くので、患者の頭部を安頭台5の中央位置に容易に配置できる。
【0028】
なお、寝状態の姿勢において患者の左半身を持ち上げたい場合、レッグレスト6の計25個の袋体6aのうち、患者から見てレッグレスト6の右後端の袋体(起状態の姿勢の図5中に斜線で示す)を1行1列目の袋体6aと称すると、圧力制御部9は、上記の各袋体3a,4aの内部に圧縮空気を供給すると共に、レッグレスト6の例えば4列目と5列目に位置する計10個の袋体6aの内部にも圧縮空気を供給してもよい。
【0029】
次に、図4(A)に示したような、患者の頭部の一部分が安頭台5に部分的に接触していた場合、圧力制御部9は、バックレスト4の計25個の袋体4aのうち、例えば1行1列目から1行3列目までに位置する計3個の袋体4aの内部に圧縮空気を供給する。これにより、患者の右肩部が持ち上がり、患者の右後頭部が安頭台5に浅めに配置されるので、安頭台5の高圧部分を容易に緩和できる。
【0030】
続いて、図4(B)に示したような、患者の首部が安頭台5に接触していた場合、圧力制御部9は、バックレスト4の計25個の袋体4aのうち、例えば1行目に位置する計5個の袋体4aの内部に圧縮空気を供給する。これにより、患者の両肩部が持ち上がり、患者の首部が安頭台5に浅めに配置されるため、患者の首部への負担を容易に減らすことができる。
【0031】
なお、上記第1実施形態では、コンターシート3およびバックレスト4の双方に袋体3a,4aを設置し、また、第2実施形態では、さらにレッグレスト6にも袋体6aを設置した例を挙げてそれぞれ説明したが、袋体をコンターシート3あるいはバックレスト4の一方にだけ設置してもよい。また、上記各実施形態では、コンターシートやバックレストには複数個の袋体をそれぞれ敷設した例で説明したが、コンターシートあるいはバックレスト内に1個の袋体を敷設することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1,20…歯科治療椅子、2…基台、3…コンターシート、3a…袋体、4…バックレスト、4a…袋体、5…安頭台、6…レッグレスト、6a…袋体、7…体圧測定センサ、8…操作パネル、9…圧力制御部、10…記憶部、11…給気バルブ、12…排気バルブ、13…圧力センサ。
図1
図2
図3
図4
図5