(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記底面排出口には、始動時には前記底面排出口を閉じ、定常運転時には前記底面排出口を全開する扉が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乾燥装置。
前記制御装置は、前記乾燥装置のメンテナンス時に、前記第一回転軸組及び前記第二回転軸組の回転軸を各々逆回転させる逆回転部を有することを特徴とする請求項4記載の乾燥装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、季節変動や時間変動等により汚泥性状が不安定になった場合、或いは汚泥供給ポンプの不具合(摩耗等)により汚泥供給量が不安定になった場合などでは、汚泥が十分に乾燥されず、性状が不安定な状態で汚泥が排出される。また、乾燥装置下流側まで高含水率、高粘性の汚泥が搬送されるため、汚泥が排出口に設置している堰板、スライドゲート等を越流せずに乾燥装置内に滞留して、機内閉塞によるトラブルを発生させることがある。
【0008】
この発明は、乾燥不十分の含水物が排出されるのを防止するとともに、乾燥不十分の含水物が機内に滞留するのを防止することができる乾燥装置及び乾燥システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様によれば、乾燥装置は、高粘性の含水物を粉粒体にして排出する乾燥装置であって、前部に形成されて前記含水物が投入される投入口と、後部の両側面に形成された一対の側面排出口と、を有するケーシングと、軸線を前記ケーシングの前記前部から前記後部へ配し、前記前部側から見て右回りに回転する複数の回転軸を備えた第一回転軸組と、前記前部側から見て前記第一回転軸組の右側に配置され且つ左回りに回転する複数の回転軸を備えた第二回転軸組と、前記回転軸に間隔を開けて配置され、前記含水物に対して間接加熱を行う複数のディスクと、前記ケーシングの後部の底面、且つ、前記第一回転軸組のうち前記第二回転軸組に最も近い回転軸と前記第二回転軸組のうち前記第一回転軸組に最も近い回転軸の軸間に形成され、前記含水物の流入を制限する堰が周囲に形成されていない底面排出口と、を備え、前記軸間で回転する前記ディスクは、回転軌跡が重ならないよう配置され、前記含水物が前記粉粒体まで乾燥された場合は前記一対の側面排出口から前記粉粒体が排出され、前記含水物が前記粉粒体まで乾燥されない場合は前記底面排出口から前記粉粒体まで乾燥されない乾燥不十分の含水物が排出され、前記底面排出口から排出された前記乾燥不十分の含水物を前記投入口に投入することを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、乾燥不十分となり、含水物が粉粒体まで乾燥されない場合に、含水物が投入口に再投入されることにより、乾燥不十分の含水物が排出されるのを防止することができる。また、粉粒体がディスクの回転により、ケーシングの両側面に向かって掻き寄せられることによって、十分に乾燥した粉粒体のみを側面排出口から排出することができる。
【0011】
上記乾燥装置において、前記底面は、複数の前記回転軸の形状に沿った略U字形状が連なる形状であり、前記ディスクは、前記回転軸の外側から見て回転方向前方に向かうに従って幅が狭くなるくさび形状であってよい。
【0012】
このような構成によれば、底面の形状が回転軸の形状に沿う形状となっていることによって、含水物の接触効率が向上するため、乾燥不十分を抑制することができ、また、搬送効率も向上させることができる。
【0013】
上記乾燥装置において、前記底面排出口には、始動時には前記底面排出口を閉じ、定常運転時には前記底面排出口を全開する扉が設けられてよい。
【0014】
このような構成によれば、ケーシング内に何も投入されていない始動時に液体状の含水物が、ケーシングの下部まで流れて、底面排出口から排出するのを防止することができる。
【0015】
上記乾燥装置において、前記底面排出口から排出される乾燥不十分の前記含水物の含水率を計測する含水率計または流量を計測する流量計と、前記投入口へ投入する前記含水物の投入量または前記第一回転軸組及び前記第二回転軸組の回転数を制御する制御装置とをさらに有し、前記制御装置は、前記含水率または前記流量に応じて、前記投入量または前記回転数を制御してよい。
【0016】
このような構成によれば、含水物の含水率または含水物の流量に応じて、含水物の投入量または回転数を制御することによって、より効率的に含水物を乾燥することができる。
【0017】
上記乾燥装置において、前記制御装置は、前記乾燥装置のメンテナンス時に、前記第一回転軸組及び前記第二回転軸組の回転軸を各々逆回転させる逆回転部を有してよい。
【0018】
このような構成によれば、底部に溜まった含水物がケーシングの中央に集められるため、容易にケーシング内の汚泥を全量排出することができる。これにより、側面排出口から汚泥を排出するために行う人力作業による堰の取り外しやハンドル操作が不要となる。
【0019】
上記乾燥装置において、前記後部の前記底面排出口に対応する位置から前記ケーシング内に空気を吸引する空気吸引装置を有し、前記空気吸引装置は、前記底面排出口に連続する内部シュートと、前記内部シュートの外側に配置され、複数の通気孔が形成されている外部シュートとを有し、前記空気を前記複数の通気孔を介して吸引してよい。
【0020】
このような構成によれば、底面排出口に対応する位置には、粉粒体がほとんど存在しないため、この位置から空気を吸引することにより、排ガス中へのダストの巻き込みを抑制することができ、ケーシングに空気吸引用の孔を別途形成することなく、空気を吸引することができる。また、通気孔が形成されている外側管の内側に内部シュートを設けることによって、外部シュートの通気孔から汚泥を流出することを抑制することができる。
【0021】
本発明の第二の態様によれば、乾燥システムは、上記いずれかの乾燥装置と、前記乾燥装置と同種または異種の第二の乾燥装置を備えた乾燥システムであって、前記底面排出口から排出された前記含水物の一部は、前記第二の乾燥装置へ投入されることを特徴とする。
【0022】
このような構成によれば、一台の乾燥装置では、処理が追いつかない場合に、第二の乾燥装置を用いることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、乾燥不十分となり、含水物が粉粒体まで乾燥されない場合に、含水物が投入口に再投入されることにより、乾燥不十分の含水物が排出されるのを防止することができる。また、粉粒体がディスクの回転により、ケーシングの両側面に向かって掻き寄せられることによって、十分に乾燥した粉粒体のみを側面排出口から排出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態の乾燥装置1、及びこの乾燥装置1を備えている乾燥システム50について図面に基づき説明する。
本実施形態の乾燥装置1は、下水汚泥、工場排水汚泥、食品廃棄物・厨芥、し尿汚泥、家畜糞尿、植物搾汁粕など各種バイオマスや廃棄物、などの高粘性の含水物(以下、汚泥と呼ぶ。)を攪拌および搬送しながら加熱乾燥(含水率を低減)して粉粒体にして排出する装置である。汚泥は、例えば100(Pa・s)以上の粘度を有し、かつ、30(%)以上の灰分含有率を有している。
なお汚泥の測定方法としては、例えば灰分含有率であれば、投入汚泥固形物中の無機分含有率として、JIS M8812に準拠して求めることができ、さらに、粘度の測定方法はJIS K7199:1999(ISO 11443:1995、キャピラリーレオメータ使用)に準拠して求めることができる。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の乾燥システム50は、乾燥装置1と、乾燥装置1に蒸気を供給する蒸気供給装置51(蒸気ボイラ)と、汚泥Pが加熱されて含有する水分が蒸発することにより発生した蒸気ドレンを排出する蒸気ドレン排出ライン52と、乾燥装置1に汚泥Pを供給する汚泥供給装置53と、乾燥装置1の内部からガスを吸引して負圧にするガス吸引装置54と、を備えている。
【0027】
乾燥装置1は、汚泥Pが投入される投入口7と、主に乾燥が不十分な汚泥P1が排出される底面排出口8と、主に十分に乾燥された粉粒体P2が排出される一対の側面排出口9(
図1には片側のみを示す。)を有している。
乾燥システム50は、乾燥装置1の底面排出口8から排出された汚泥P1を汚泥供給装置53を介して投入口7に投入するリターンライン55と、リターンライン55上に設けられ、リターンライン55によって搬送される汚泥P1の含水率を測定する含水率計56または流量計73と、含水率計56によって測定される汚泥P1の含水率または流量計73によって測定される汚泥P1の流量に基づいて汚泥供給装置53を制御する制御装置60と、を有している。
【0028】
ガス吸引装置54は、ケーシング3内部のガスを吸引することにより、ケーシング3の内部で発生する蒸気を含むガスを機外へ排出し、汚泥の蒸発を促進する装置である。ガス吸引装置54は、ケーシング3上部に設けられている排ガス口75に接続された第一排出ライン57と、第一排出ライン57を介してガスが導入されるスクラバー58と、スクラバー58から排出されるガスが導入される第二排出ライン59と、を有している。第二排出ライン59上には、排ガスファン64が設けられている。第二排出ライン59の下流側には、脱臭装置65が設けられている。
【0029】
スクラバー58は、排ガスに含まれる埃等の飛散物を除去するためのものである。スクラバー58の上部には処理水供給装置61によって処理水が供給される。スクラバー58に供給された処理水は、スクラバー58の内部に噴射される。スクラバー58からは、排水ライン62を介して排水が排出される。スクラバー58で使用された処理水は、その一部がポンプ63によって再度スクラバー58の上部に供給されてもよい。
ガス吸引装置54により吸引されたガスは、スクラバー58により洗浄された後、脱臭装置65により脱臭されて、排出される。
【0030】
図2、
図3、及び
図4に示すように、本実施形態の乾燥装置1は、ケーシング3と、ケーシング3(ひいては汚泥P)を加熱するジャケット4と、軸線Aをケーシング3の前部Fから後部Bへ配する2本の回転軸5a,5bを備えた第一回転軸組21と、前部F側から見て第一回転軸組21の右側に配置された2本の回転軸5c,5dを備えた第二回転軸組22と、各々の回転軸5に間隔を開けて配置され、汚泥Pに対して間接加熱を行う複数のディスク6(撹拌翼)と、を備えている。即ち、本実施形態の乾燥装置1は、4本の回転軸5を備えている。
また、乾燥装置1は、底面排出口8に対応する位置からケーシング3内に空気を吸引する空気吸引装置74(
図7参照)を有している。
【0031】
4本の回転軸5のうち、前部F側から(搬送方向Tの上流側)見て乾燥装置1の幅方向Wの左側の2本の回転軸5a,5bは、駆動部72により前部F側から見て共に右回り(時計回り)に回転している。換言すれば、2本の回転軸5a,5bは、その上部がケーシング3の幅方向Wの中央側に向かって移動する方向に回転している。
4本の回転軸5のうち、前部F側から見て乾燥装置1の幅方向Wの右側、即ち、第一回転軸組21の右側の2本の回転軸5c,5dは、駆動部72により前部F側から見て共に左回り(反時計回り)に回転している。換言すれば、2本の回転軸5c,5dは、その上部がケーシング3の幅方向Wの中央側に向かって移動する方向に回転している。
【0032】
4本の回転軸5のうち、幅方向Wの一方側の2本の回転軸5a,5bと、幅方向Wの他方側の2本の回転軸5c,5dとは、逆方向に回転する。幅方向Wの一方側の2本の回転軸5a,5bと、幅方向Wの他方側の2本の回転軸5c,5dとは、その上部が互いに近づく方向に回転する。
【0033】
各々のディスク6の内周端は、回転軸5に接続され、回転軸5の径方向に突出するとともに周方向に延びて略扇形に形成されている。
ケーシング3は、前部Fを後部Bよりも上方に傾けて配置されている。すなわちケーシング3は、回転軸5とともに所定の傾斜角度で傾斜している。
【0034】
ケーシング3の底面3aは、4本の回転軸5の形状に沿った略U字形状が連なる形状である。ケーシング3の底面3aは、4つの円筒面24を有しており、隣り合う円筒面24同士は、軸線Aに沿って延在する稜線25を介して接続されている。各々の円筒面24は、略扇形のディスク6の外周側端部に沿うように形成されている。
【0035】
ケーシング3の前部Fの上面には、汚泥Pが投入される投入口7が形成されている。ケーシング3の後部Bには、底面排出口8と、一対の側面排出口9と、が設けられている。
【0036】
底面排出口8は、搬送方向Tの最も下流側(ケーシング3の後部B)の底面3aに形成されている。底面排出口8は、乾燥装置1の幅方向Wの中央に形成されている。
底面排出口8は、第一回転軸組21のうち第二回転軸組22に最も近い回転軸5bと、第二回転軸組22のうち第一回転軸組21に最も近い回転軸5cの軸間に配置されている。底面排出口8の周囲には、汚泥Pの流入を制限する堰が形成されていない。さらに、複数の円筒面24から形成されている底面3aには、各円筒面24上の汚泥Pの流れを阻害する突起が形成されていない。
【0037】
底面排出口8は、軸線A方向に沿う2辺8aと、幅方向Wに沿う2辺8bとからなる矩形状に形成されている。軸線A方向に沿う2辺8aは、略U字形状をなす円筒面24の下端に沿って延在している。換言すれば、底面排出口8は、回転軸5に対応する円筒面24の最も低い部位を含むように形成されていることが好ましい。
幅方向Wに沿う2辺8bのうち、搬送方向Tの下流側の辺は、ケーシング3の壁面3bの際に配置されている。換言すれば、幅方向Wに沿う2辺8bのうち、搬送方向Tの下流側の辺は、ケーシング3の壁面3bに可能な限り近い位置に配置されている。
【0038】
側面排出口9は、搬送方向Tの最も下流側(ケーシング3の後部B)の側面に形成されている。側面排出口9には、昇降装置(図示せず)によって昇降自在、すなわち高さ調節可能な排出ゲート26が設けられている。排出ゲート26は、堰板として機能し、後述の粉粒体P2が越流して排出される。
側面排出口9の下辺9aは、円筒面24の下端よりも十分に高い位置に配置されている。なお、排出ゲート26に変えて高さ調節可能な堰板を配置してもよい。
【0039】
次に、第一回転軸組21の詳細構造について説明する。なお、第二回転軸組22の詳細構造は、第一回転軸組21と同様であるため、説明を省略する。
図2、
図3、
図4、及び
図5に示すように、ディスク6は、各々の回転軸5の軸線A方向の同位置に、軸線Aの周方向に所定の隙間をあけて2つずつ設けられている。ディスク6は、軸線A方向の同位置に配された2つのディスク6を一つの段とし、前部から後部まで、軸線A方向に所定の間隔をあけ、複数段設けられている。このとき、各段における2つのディスク6に形成された所定の隙間は、汚泥Pをケーシング3の前部から後部に流通させるための流路開口Cとされている。回転軸5とディスク6とは、中空状に形成され、内部に蒸気を流通させ、接触する汚泥Pを加熱可能とされている。なお、加熱媒体は蒸気に限ることはなく、熱媒油、温水などでもよい。
【0040】
第一回転軸組21の2本の回転軸5a,5bのうち、一方の回転軸5aに設けられたディスク6aと、他方の回転軸5bに設けられたディスク6bとは、軸線A方向で所定の隙間をあけて交互に配置されている。
一方の回転軸5aに設けられたディスク6aと、他方の回転軸5bに設けられたディスク6bとは、回転軸5がそれぞれ回転しているときに軸線A方向から見て径方向で重なるように配されている。即ち、一方の回転軸5aに設けられたディスク6aは、他方の回転軸5bに設けられた各段のディスク6b間を通過可能とされ、他方の回転軸5bに設けられたディスク6bも、一方の回転軸5aに設けられた各段のディスク6a間を通過可能とされている。
【0041】
回転軸5に設けられたディスク6は、径方向外側から見て、回転方向前方に向かうにつれて幅が狭くなるくさび型となっている。
【0042】
さらに、軸線A方向に隣り合うディスク6同士は、くさび型を形成する傾斜面とされる側面18に、軸線A方向で互いに対向する対向部10を有している。さらに、軸線A方向で隣り合うディスク6同士は、回転軸5の周方向で互いの位相がずれるように配されている。
【0043】
ディスク6は、軸線A方向の両側に突出するパドル部11(掻き揚げ羽根)を備えている。パドル部11は、それぞれ回転方向で異なる位置に配される第一パドル部13と第二パドル部15とを備えている。
【0044】
第一パドル部13及び第二パドル部15は、それぞれ軸線A方向の両側に突出形成された部分に、回転方向前方を向く面16,17を備えている。第一パドル部13及び第二パドル部15は、回転方向前方を向く面16,17によって、軸線A方向で隣り合うディスク6間に存在する汚泥Pをひっかけることが可能となっている。
【0045】
図6は、軸線A方向で回転軸5およびディスク6を部分的に平面展開した図である。
図6においては、紙面左右方向が回転軸5の周方向であり、紙面上下方向が回転軸5の軸線A方向である。また、回転軸5の回転方向を
図6中の矢印で示している。
【0046】
図6に示すように、複数のディスク6は、それぞれ周方向に延びるように形成され、回転方向の前方および後方に、軸線A方向で隣り合うディスク6と対向する対向部10を備えている。複数のディスク6は、対向部10の後端にそれぞれパドル部11を備えている。より具体的には、ディスク6の回転方向の後端部12に第一パドル部13を備え、第一パドル部13よりも回転方向前方の中間部14に第二パドル部15を備えている。第二パドル部15は、隣り合うディスク6の第一パドル部13の配置に対応して配される。
【0047】
第一パドル部13、および、第二パドル部15は、軸線A方向で隣り合うディスク6の対向部10に向かって張り出すように形成されている。第二パドル部15は、軸線A方向で隣り合うディスク6の第一パドル部13に対して互いの端部同士が対向するように、同位相で配置されている。
【0048】
次に、隣り合う回転軸5同士の軸間距離について説明する。
第一回転軸組21の回転軸5aに設けられたディスク6aと、回転軸5bに設けられたディスク6bとは、回転軸5がそれぞれ回転しているときに軸線A方向から見て径方向で重なるように配されている。
同様に、第二回転軸組22の回転軸5cに設けられたディスク6cと、回転軸5dに設けられたディスク6dとは、回転軸5がそれぞれ回転しているときに軸線A方向から見て径方向で重なるように配されている。
【0049】
一方、4本の回転軸5のうち、幅方向Wの中央寄りの2本の回転軸5b,5cに設けられたディスク6b,6cは、回転軸5b,5cがそれぞれ回転しているときに軸線A方向から見て径方向で重ならないように配されている。即ち、ディスク6bの回転軌跡とディスク6cの回転軌跡との間には、所定の間隔Gが設けられている。
つまり、第一回転軸組21の一対の回転軸5a,5bのうち、第二回転軸組22と隣り合う回転軸5bに設けられたディスク6bと、第二回転軸組22の一対の回転軸5c,5dのうち第一回転軸組21と隣り合う回転軸5cに設けられたディスク6cとは、軸線A方向から見てディスク6の回転軌跡が重なっていない。換言すれば、ディスク6bは、回転軸5cに設けられた各段のディスク6c間を通過せず、ディスク6cも、回転軸5bに設けられた各段のディスク6b間を通過しない。
【0050】
次に、底面排出口8の詳細構造について説明する。
図7に示すように、空気吸引装置74は、底面排出口8に連続する内部シュート28と、内部シュート28の外側に配置され、複数の通気孔30が形成されている外部シュート29と、を有している。外部シュート29の下方には、フレキシブルシュート77を介してリターンライン55であるコンベヤが配置されている。空気吸引装置74によって吸引される空気の流れを符号FLで示す。
底面排出口8から排出される汚泥Pは、内部シュート28内を滑りながら、リターンライン55に導入される。
【0051】
図8に示すように、底面排出口8には、乾燥装置1の始動時に底面排出口8を閉じ、定常運転時には底面排出口8を全開する扉31が設けられている。扉31としては、例えば、スライドゲートを採用することができる。
【0052】
次に、本実施形態の乾燥装置1に投入された汚泥Pの挙動について説明する。
含水率が約70%以上の状態では、ケーシング3内に充填されている汚泥Pの性状は液体状(流動体)である。例えば、液体状の汚泥Pは、
図4のR1で示す範囲にある。
図9(a)に示すように、含水率が約70%以上の汚泥Pの水面は、略水平である。
本実施形態の乾燥装置1の回転軸5は上部が幅方向Wの中央側に向かって移動する方向に回転し、ディスク6の回転により汚泥Pが撹拌され、ディスク6の両側面のパドル部11が汚泥Pを掻き揚げる度に、幅方向Wの両端側の水面が一時的にその水面が盛り上がる状態を繰り返す。
【0053】
含水率が約40%〜70%の状態では、ケーシング3内に充填された汚泥Pの性状は、粘土・塊状、粘性体(特に含水率50%〜60%付近では極めて高粘度)である。例えば、粘土・塊状、粘性体の汚泥Pは、
図4のR2で示す範囲にある。
図9(b)に示すように、含水率が約40%〜70%の汚泥Pは、粒径が大きく塊状となっているため、ディスク6のパドルへの引っ掛かりが良い。このため、搬送用の軸である中央の2軸(回転軸5b,5c)が粒径が大きな塊状の汚泥Pを搬送方向Tの下流側へ搬送する。
【0054】
また、第一回転軸組21を構成する回転軸5a,5bが同一方向に回転しているため、ケーシング3内の汚泥Pが、回転軸5aの軸方向において隣り合うディスク6a、及びディスク6aの各パドル部11aによって回転方向上側に掻きあげられる。すると、汚泥Pは、大きな塊の状態で、隣り合うディスク6a間に留まる。
【0055】
一方で、ディスク6bは、回転軸5bの回転により、隣り合うディスク6a間を下から上に向かって通過する。そのため、ディスク6b、及びディスク6bの各パドル部11bが、隣り合うディスク6a間に留まっている汚泥Pに切り込みながら衝突する。すると、隣り合うディスク6a間に留まっている汚泥Pが、ディスク6b及びパドル部11bによって上方に掻きあげられる。これにより、汚泥Pは、回転軸5aの周回から離脱して、回転軸5b周りに移動する。この際、掻きあげられた汚泥Pは、ケーシング3の傾斜によって、ディスク6bと、その搬送方向Tの下流側で隣り合うディスク6bとの間に落とし込まれ入り込む。
【0056】
これら隣り合うディスク6b間に落とし込まれた汚泥Pは、ディスク6bの側面に十分接触しながら各ディスク6bに対して、回転方向の後方に相対移動する。すると、汚泥Pは、回転方向後側に配されたディスク6bのパドル部11bによって、軸線A方向両側から押圧されて、回転軸5b周りを回転軸5bの回転に伴い移動する。
この際、汚泥Pは、回転軸5bとケーシング3との間に溜まっている汚泥Pと一体にされる。パドル部11bは、さらに回転軸5bとケーシング3との間に溜まっている汚泥Pの中を通過して、汚泥Pを回転軸5a側へと移動させる。
【0057】
そして、回転軸5aのディスク6aは、回転軸5aの回転により、回転軸5bの隣り合うディスク6b間を上から下に通過するため、パドル部11bによって回転軸5a側に移動された汚泥Pは、回転軸5aのディスク6aによって攪拌される。この際、汚泥Pは、ケーシング3の傾斜により、汚泥Pを押圧したディスク6aの下流側に移動して、隣り合うディスク6a間に入り込むこととなる。そして、隣り合うディスク6a間に入り込んだ汚泥Pは、上述した移動を繰り返して、ケーシング3や回転軸5a,5bなどにより加熱されながら、徐々に下流側へと搬送されていくこととなる。
つまり、汚泥Pは、回転軸5a周りと回転軸5b周りとを交互に周回し、その軸線A方向から見た搬送軌跡が、
図9(b)及び
図9(c)中の矢印で示すような「8の字状」となる。「8の字状」に撹拌された汚泥Pは、
図9(c)に示すように、底面3aの幅方向Wの中央部に集約される。
【0058】
図9(d)に示すように、含水率が約40%未満の状態では、ケーシング3内の汚泥Pは粉粒体P2となっている。例えば、粉粒体の汚泥Pは、
図4のR3で示す範囲にある。含水率が約40%未満の汚泥Pの粒径は小さいため、ケーシング3の底面3aではディスク6のパドル部11によりケーシング3の幅方向Wの中央部の汚泥Pが外側へ運ばれる一方、ケーシング3の幅方向Wの両側面のパドル部11により粉粒体P2が滑り落ちるため、粉粒体P2を持ち上げる(中央側へ汚泥Pを搬送する)ことはできない。このため、底面3aの中央部に粉粒体P2は存在せず、外側へ粉粒体P2が集中する。
【0059】
ここで、季節変動・時間変動等による汚泥性状不安定、或いは補機の不具合等による汚泥供給不安定などにより乾燥不十分となった場合、含水率が概ね40%〜60%の高含水率で、粘土・塊状の汚泥Pが乾燥装置1の後部Bまで搬送される。
【0060】
次に、本実施形態の乾燥システム50の制御方法について説明する。
図1に示すように、本実施形態の乾燥システム50の制御装置60は、含水率計56によって測定される汚泥P1の含水率に基づいて汚泥供給装置53を制御する。具体的には、制御装置60は、汚泥Pの含水率が例えば、60%〜70%であった場合、汚泥Pの投入量が少なくなるように、汚泥供給装置53を制御する。また、汚泥Pの含水率が40%〜50%であった場合、汚泥Pの投入量が多くなるように、汚泥供給装置53を制御する。
このように汚泥供給装置53を制御することによって、より効率的に汚泥Pを乾燥することができる。
【0061】
なお、本実施形態の乾燥システム50では、リターンライン55で搬送される汚泥P1の含水率に基づいて汚泥Pの投入量を制御する構成としたがこれに限ることはない。例えば、リターンライン55に汚泥P1の流量を計測する流量計73を設けて、汚泥P1の流量に基づいて汚泥Pの投入量を制御してもよい。
【0062】
また、制御装置60は、乾燥装置1のメンテナンス時に各々の回転軸5を逆回転させる逆回転部を有している。制御装置60の逆回転部は、回転軸5を回転駆動する駆動部72を制御することにより、各々の回転軸5を逆回転させて汚泥Pを排出する機能を有している。
【0063】
上記実施形態によれば、塊状の汚泥P(含水率40%〜70%)は
図9(a)及び
図9(b)に示すように、ディスク6のパドル部11への引っ掛かりが良いため、「8の字状」に汚泥Pを撹拌し、ケーシング3の幅方向wの中央部へ汚泥Pが集約されるため(
図9(c)参照)、ケーシング3の後部両側面に設けられた側面排出口9から汚泥Pが排出されることは少なく、底面3a中央に設けられた底面排出口8より多く排出される。底面排出口8から排出された乾燥が不十分な汚泥P1は、リターンライン55を介して汚泥供給装置53に返送されため、粘性の高い粘土・塊状の汚泥P1がケーシング3内に滞留することなく、機内閉塞によるトラブルを抑制できる。
【0064】
また、十分に乾燥した(概ね含水率40%未満)汚泥Pは、粉粒体P2であり汚泥粒径が小さいため、ケーシング3の底面3aではディスク6のパドル部11によりケーシング3の中央部の汚泥Pを外側へ掻き寄せることはできるが、ケーシング3の両側面ではパドル部11により粉粒体P2が滑り落ちるため、粉粒体P2となった汚泥Pを持ち上げる(中央側へ汚泥Pを搬送する)ことはできない。このため、ケーシング3の中央部に存在する粉粒体P2はほとんどなく、両側面側へ粉粒体P2が集中する。(
図9(d)参照)このため、十分に乾燥している場合は、ケーシング3の後部中央に設けられた底面排出口8から粉粒体P2が排出されることはほとんどなく、両側面に設けられた側面排出口9より粉粒体P2が多く排出されるため、常に十分に乾燥した乾燥汚泥のみが両方の側面排出口9より排出される。
【0065】
即ち、乾燥が不十分な場合は、ケーシング3の底面3aの中央部へ汚泥Pが集約されるため、排出口の設置高さが高い側面排出口9から汚泥Pが排出されることは少なく、設置高の低い場所にある底面排出口8より多く排出される。ここから排出された乾燥が不十分な汚泥P1のみを汚泥供給装置53へ返送(ドライリターン)することができるため、両側面に設けられた側面排出口9からは常に十分に乾燥した汚泥P(粉粒体P2)のみを排出することができる。
特に、100(Pa・s)以上の粘度を有し、かつ、30(%)以上の灰分含有率を有している汚泥の場合は、汚泥が乾燥不十分である場合には底面排出口のみから排出され、これを入り口に戻す。底面排出口のみから排出されるときは側面排出口からは排出されないという格別な作用効果を有する。
【0066】
また、制御装置60が乾燥装置1のメンテナンス時に、第一回転軸組21及び第二回転軸組22の回転軸5を各々逆回転させる逆回転部を有することによって、底面3aに溜まった汚泥Pがケーシング3の中央に集められるため、容易にケーシング3内の汚泥Pを全量排出することができる。これにより、側面排出口から機内の汚泥を排出するために行う人力作業による堰の取り外しやハンドル操作が不要となる。
【0067】
また、底面排出口8に対応する位置、すなわち底面排出口8である開口(穴)の近辺かつ下方の位置には、粉粒体P2がほとんど存在しない。ガス吸引装置54に設置された排ガスファン64がケーシング内部のガスを吸引し、この位置から空気吸引装置74が空気を吸引することにより、排ガス中へのダストの巻き込みを抑制することができる。これにより、スクラバー58から排出される排水のSS(Suspended Solids)成分(懸濁物質または浮遊物質)を低減することができる。
また、空気を底面排出口8を介して吸引することによって、ケーシング3に空気吸引用の孔を別途形成することなく、空気を吸引することができる。また、通気孔30が形成されている外部シュート29の内側に内部シュート28を設けることによって、外部シュート29の通気孔30から汚泥を流出することを抑制することができる。
【0068】
また、乾燥装置1の始動時に扉を使用して底面排出口8を閉じ、定常運転時に底面排出口8を全開することにより、ケーシング3内に何も投入されていない始動時に液体状の汚泥Pが、ケーシング3の後部まで流れて、底面排出口8から排出されるのを防止することができる。
【0069】
〔第二実施形態〕
以下、本発明の第二実施形態の乾燥システムについて図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図10に示すように、本実施形態の乾燥システム50Bは、第一実施形態の乾燥装置1と、乾燥装置1と同種または異種の第二乾燥装置67と、を備えている。
【0070】
乾燥システム50Bは、第一汚泥貯留タンク68に貯留されている汚泥Pを乾燥装置1に供給する第一汚泥供給装置53と、第二汚泥貯留タンク69に貯留されている汚泥Pを第二乾燥装置67に供給する第二汚泥供給装置70と、乾燥装置1の底面排出口8から排出される乾燥不十分の汚泥Pを第二汚泥貯留タンク69に搬送する搬送ライン71と、を有している。
本実施形態の乾燥システム50Bでは、乾燥装置1の底面排出口8から排出される乾燥不十分の汚泥P1は、再度乾燥装置1に戻されることなく、他の乾燥装置である第二乾燥装置67で乾燥される。
このような構成によれば、一台の乾燥装置1では、処理が追いつかない場合に、第二乾燥装置67を用いることができる。
【0071】
〔第三実施形態〕
以下、本発明の第三実施形態の乾燥システムについて説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
本実施形態の乾燥システム50の制御装置60は、汚泥Pの含水率に基づいて、駆動部72を制御し、第一回転軸組21及び第二回転軸組22の回転数を制御する。
具体的には、制御装置60は、汚泥Pの含水率が例えば、60%〜70%であった場合、回転軸組21,22の回転数を下げるように、回転軸組21,22を制御する。また、汚泥Pの含水率が40%〜50%であった場合、回転軸組21,22の回転数を上げるように回転軸組を制御する。
このように回転軸組21,22の回転数を制御することによって、乾燥中の汚泥性状を計測して素早く運転を調整できる可能性が上がるため、より効率的に汚泥Pを乾燥することができる。
本実施形態の乾燥システム50では、リターンライン55で搬送される汚泥P1の含水率に基づいて回転軸組21,22の回転数を制御する構成としたがこれに限ることはない。例えば、リターンライン55に汚泥P1の流量を計測する流量計73を設けて、汚泥P1の流量に基づいて回転軸組21,22の回転数を制御してもよい。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態の乾燥装置1においては、回転軸組21,22が2本の回転軸5を備える場合を一例にして説明したが、回転軸5の本数は2本に限られず、3本以上であっても良い。
【解決手段】含水物が投入される投入口と、後部の両側面に形成された一対の側面排出口9と、を有するケーシング3と、前部側から見て右回りに回転する複数の回転軸を備えた第一回転軸組21と、前部側から見て第一回転軸組21の右側に配置され且つ左回りに回転する複数の回転軸を備えた第二回転軸組22と、複数のディスク6と、ケーシング3の後部の底面に形成され、堰が周囲に形成されていない底面排出口8と、を備え、前記軸間で回転するディスク6は、回転軌跡が重ならないよう配置され、含水物が粉粒体まで乾燥された場合は一対の側面排出口9から粉粒体が排出され、含水物が粉粒体まで乾燥されない場合は底面排出口8から粉粒体まで乾燥されない含水物が排出され、底面排出口8から排出された含水物を投入口に投入する乾燥装置1を提供する。