(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1レンズ部及び第2レンズ部を含み、光源からの光が、前記第1レンズ部の第1入射面から前記第1レンズ部内部に入射して前記第1レンズ部のシェードによって一部遮光された後、前記第1レンズ部の第1出射面から出射し、さらに、前記第2レンズ部の第2入射面から前記第2レンズ部内部に入射して前記第2レンズ部の第2出射面から出射して前方に照射されることにより、上端縁に前記シェードによって規定されるカットオフラインを含む所定配光パターンを形成するように構成されたレンズ体において、
前記第1出射面は、当該第1出射面から出射する前記光源からの光を第1方向に関し集光させる面で、半円柱状の面として構成されており、
前記第2出射面は、当該第2出射面から出射する前記光源からの光を前記第1方向に直交する第2方向に関し集光させる面で、半円柱状の面として構成されているレンズ体。
光源、第1レンズ部及び第2レンズ部を含み、前記光源からの光が、前記第1レンズ部の第1入射面から前記第1レンズ部内部に入射して前記第1レンズ部のシェードによって一部遮光された後、前記第1レンズ部の第1出射面から出射し、さらに、前記第2レンズ部の第2入射面から前記第2レンズ部内部に入射して前記第2レンズ部の第2出射面から出射して前方に照射されることにより、上端縁に前記シェードによって規定されるカットオフラインを含む所定配光パターンを形成するように構成されたレンズ体を備えた車両用灯具において、
前記第1出射面は、当該第1出射面から出射する前記光源からの光を第1方向に関し集光させる面で、半円柱状の面として構成されており、
前記第2出射面は、当該第2出射面から出射する前記光源からの光を前記第1方向に直交する第2方向に関し集光させる面で、半円柱状の面として構成されている車両用灯具。
光源、シェード、第1レンズ部及び第2レンズ部を含み、前記光源からの光が、前記シェードによって一部遮光された後、前記第1レンズ部の第1入射面から前記第1レンズ部内部に入射して前記第1レンズ部の第1出射面から出射し、さらに、前記第2レンズ部の第2入射面から前記第2レンズ部内部に入射して前記第2レンズ部の第2出射面から出射して前方に照射されることにより、上端縁に前記シェードによって規定されるカットオフラインを含む所定配光パターンを形成するように構成されたレンズ体を備えた車両用灯具において、
前記第1出射面は、当該第1出射面から出射する前記光源からの光を第1方向に関し集光させる面で、半円柱状の面として構成されており、
前記第2出射面は、当該第2出射面から出射する前記光源からの光を前記第1方向に直交する第2方向に関し集光させる面で、半円柱状の面として構成されている車両用灯具。
光源、第1レンズ部及び第2レンズ部を含み、前記光源からの光が、前記第1レンズ部の第1入射面から前記第1レンズ部内部に入射して前記第1レンズ部の第1出射面から出射し、さらに、前記第2レンズ部の第2入射面から前記第2レンズ部内部に入射して前記第2レンズ部の第2出射面から出射して前方に照射されることにより、所定配光パターンを形成するように構成されたレンズ体を備えた車両用灯具において、
前記第1出射面は、当該第1出射面から出射する前記光源からの光を第1方向に関し集光させる面で、半円柱状の面として構成されており、
前記第2出射面は、当該第2出射面から出射する前記光源からの光を前記第1方向に直交する第2方向に関し集光させる面で、半円柱状の面として構成されている車両用灯具。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の第1実施形態である車両用灯具について、図面を参照しながら説明する。
【0045】
図1は、本発明の第1実施形態である車両用灯具10の縦断面図である。
【0046】
図1に示すように、本実施形態の車両用灯具10は、レンズ体12、レンズ体12の入射面12a近傍に配置された光源14等を備え、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に、
図11(a)等に示す上端縁にカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンP1等を形成する車両用前照灯として構成されている。
【0047】
図2(a)は前方から見たレンズ体12の斜視図、
図2(b)は後方から見たレンズ体12の斜視図、
図3(a)はレンズ体12の上面図、
図3(b)は下面図、
図3(c)は側面図である。
【0048】
図1に示すように、レンズ体12は、水平方向に延びる第1基準軸AX1に沿って延びた形状のレンズ体で、入射面12a、反射面12b、シェード12c、出射面12d及び入射面12a近傍に配置された光学設計上の基準点Fを含んでいる。入射面12a、反射面12b、シェード12c及び出射面12dは、第1基準軸AX1に沿ってこの順に配置されている。レンズ体12の材質は、ポリカーボネイトであってもよいし、それ以外のアクリル等の透明樹脂であってもよいし、ガラスであってもよい。
【0049】
図1中の先端に矢印が付いた点線は、レンズ体12内部に入射した光源14(正確には、基準点F)からの光の光路を表している。
【0050】
レンズ体12の主な機能は、第1に、光源14からの光をレンズ体12内部に取り込むこと、第2に、レンズ体12内部に取り込まれた光のうち出射面12dに向かって進行する直射光RayA及び反射面12bで内面反射された反射光RayBにより、出射面12d(レンズ部)の焦点F
12d近傍に形成される光度分布(光源像)を反転投影して、上端縁にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成することである。
【0051】
図4(a)は光源14(正確には、基準点F)からの光が入射面12aに入射する様子を表す図、
図4(b)はレンズ体12内部に入射した光源14からの光(直射光RayA)が集光する様子を表す図である。
【0052】
入射面12aは、レンズ体12の後端部に形成され、当該入射面12a近傍に配置される光源14(正確には、光学設計上の基準点F)からの光(
図4(a)参照)が屈折してレンズ体12内部に入射する面(例えば、光源14に向かって凸の自由曲面)で、レンズ体12内部に入射した光源14からの光(直射光RayA)が、少なくとも鉛直方向に関し、シェード12cに向かって第2基準軸AX2寄りに集光するように(
図4(b)参照)、その面形状が構成されている。第2基準軸AX2は、光源14の中心(正確には、基準点F)とシェード12c近傍の点とを通過し、第1基準軸AX1に対して前方斜め下方に向かって傾斜している(
図1参照)。
【0053】
光源14は、例えば、金属製の基板(図示せず)、当該基板の表面に実装された白色LED光源(又は白色LD光源)等の半導体発光素子(図示せず)を備えている。半導体発光素子の個数は、1以上であればよい。なお、光源14は、白色LED光源(又は白色LD光源)等の半導体発光素子以外の光源であってもよい。光源14は、その発光面(図示せず)を前方斜め下方に向けた姿勢、すなわち、当該光源14の光軸AX
14が第2基準軸AX2に一致した姿勢でレンズ体12の入射面12a近傍(基準点F近傍)に配置されている。なお、光源14は、当該光源14の光軸AX
14が第2基準軸AX2に一致していない姿勢(例えば、光源14の光軸AX
14が水平方向に配置された姿勢)でレンズ体12の入射面12a近傍(基準点F近傍)に配置されていてもよい。
【0054】
光源14が半導体発光素子(例えば白色LED光源)である場合、当該光源14(発光面)から放出される光の指向特性はランバーシアンで、I(θ)=I0×cosθで表すことができる。これは、光源14が放出する光の広がりを表している。但し、I(θ)は光源14の光軸AX
14から角度θ傾いた方向の光度を表し、I0は光軸AX
14上の光度を表している。光源14では、光軸AX
14上(θ=0)の光度が最大となる。
【0055】
図5は入射面12aの一例(横断面図)、
図6は入射面12aの他の一例(横断面図)である。
【0056】
図5に示すように、入射面12aは、水平方向に関し、レンズ体12内部に入射した光源14からの光(直射光RayA)が、シェード12cに向かって第1基準軸AX1寄りに集光するように、その面形状が構成されている。なお、入射面12aは、
図6に示すように、水平方向に関し、レンズ体12内部に入射した光源14からの光(直射光RayA)が、基準軸AX1に対して平行な光となるように、その面形状が構成されていてもよい。
【0057】
ロービーム用配光パターンの水平方向の拡散の程度は、入射面12aの面形状(例えば、入射面12aの水平方向の曲率)を調整することで自在に調整することができる。
【0058】
図7(a)及び
図7(b)は、入射面12aと光源14との間の距離について説明するための図である。
【0059】
入射面12aと光源14との間の距離を短くすることで(
図7(b)参照)、入射面12aと光源14との間の距離を長くした場合(
図7(a)参照)と比べ、光源像が小さくなる。その結果、出射面12d(レンズ部)の焦点F
12d近傍に形成される光度分布(及びロービーム用配光パターン)の最大光度をより高くすることができる。
【0060】
また、入射面12aと光源14との間の距離を短くすることで(
図7(b)参照)、入射面12aと光源14との間の距離を長くした場合(
図7(a)参照)と比べ、レンズ体12内部に取り込まれる光源14からの光が増加する(β>α)。その結果、高効率なレンズ体となる。
【0061】
反射面12bは、入射面12aの下端縁から前方に向かって水平方向に延びた平面形状の反射面である。反射面12bは、レンズ体12内部に入射した光源14からの光のうち当該反射面12bに入射した光を全反射する反射面で、金属蒸着は用いていない。レンズ体12内部に入射した光源14からの光のうち反射面12bに入射した光は、当該反射面12bで内面反射されて出射面12dに向かい、出射面12dで屈折して路面方向に向かう。すなわち、反射面12bで内面反射された反射光RayBがカットオフラインを境に折り返されてカットオフライン以下の配光パターンに重畳される形となる。これにより、ロービーム用配光パターンの上端縁にカットオフラインが形成される。
【0062】
なお、反射面12bは、入射面12aの下端縁から第1基準軸AX1に対して前方斜め下方に向かって傾斜した平面形状の反射面であってもよい(
図14(b)参照)。このように反射面12bを第1基準軸AX1に対して傾けて配置することの利点については後述する。
【0063】
反射面12bの先端部には、左右方向に延びるシェード12cが形成されている。
【0064】
図8は、シェード12cの役割を説明するための図である。
【0065】
図8に示すように、シェード12cの主な役割は、レンズ体12内部に入射した光源14からの光の一部を遮光し、出射面12d(レンズ部)の焦点F
12d近傍に、下端縁にシェード12cによって規定されるカットオフラインに対応する辺を含む光度分布(光源像)を形成することである。
【0066】
図9(a)は光源14位置から見たシェード12cの概略図、
図9(b)は
図2(a)に示した反射面12b(シェード12cを含む)を拡大した拡大斜視図、
図9(c)は
図2(a)に示した反射面12b(シェード12cを含む)の上面図である。
【0067】
図2(a)、
図9(a)〜
図9(c)に示すように、シェード12cは、左水平カットオフラインに対応する辺e1、右水平カットオフラインに対応する辺e2、及び、左水平カットオフラインと右水平カットオフラインとを接続する斜めカットオフラインに対応する辺e3を含んでいる。
【0068】
反射面12bは、入射面12aの下端縁と左水平カットオフラインに対応する辺e1との間の第1反射領域12b1、入射面12aの下端縁と右水平カットオフラインに対応する辺e2との間の第2反射領域12b2、及び、第1反射領域12b1と第2反射領域12b2との間の第3反射領域12b3を含んでいる。
【0069】
第1反射領域12b1は、入射面12aの下端縁から左水平カットオフラインに対応する辺e1に近づくに従って徐々に上方に湾曲しており、一方、第2反射領域12b2は、入射面12aの下端縁から前方に向かって水平方向に延びている。
【0070】
その結果、左水平カットオフラインに対応する辺e1は、鉛直方向に関し、右水平カットオフラインに対応する辺e2より一段高い位置に配置されている(右側通行の場合)。もちろん、左水平カットオフラインに対応する辺e1は、鉛直方向に関し、右水平カットオフラインに対応する辺e2より一段低い位置に配置されていてもよい(左側通行の場合)。
【0071】
なお、シェード12cは、反射面12bの先端部に、左水平カットオフラインに対応する溝部、右水平カットオフラインに対応する溝部、及び、左水平カットオフラインと右水平カットオフラインとを接続する斜めカットオフラインに対応する溝部を含む溝部を形成することで形成することもできる。
【0072】
図10(a)〜
図10(c)には、シェード12cの変形例(側面図)が示されている。シェード12cは、側面視において、反射面12bの先端部から上方に向かって延びていてもよいし(
図10(a)参照)、前方斜め上方に向かって延びていてもよいし(
図10(b)参照)、前方斜め上方に向かって湾曲して延びていてもよい(
図10(c)参照)。シェード12cは、これらに限らず、レンズ体12内部に入射する光源14からの光の一部を、出射面12dに向かって進行しないように遮光する形状であれば如何なる形状であってもよい。なお、遮光された光は、他の配光や導光に用いてもよい。
【0073】
出射面12dは、
図1に示すように、レンズ体12内部に入射した光源14からの光のうち出射面12dに向かって進行する直射光RayA及び反射面12bで内面反射された後、出射面12dに向かって進行する反射光RayBが出射する面(例えば、前方に向かって凸の凸面)で、シェード12c近傍(例えば、シェード12cの左右方向の中心近傍)に焦点F
12dが設定されたレンズ部として構成されている。出射面12dは、当該出射面12dに向かって進行する直射光RayA及び反射光RayBにより、出射面12d(レンズ部)の焦点F
12d近傍に形成される光度分布(光源像)を反転投影して、上端縁にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成する。
【0074】
なお、シェード12cと出射面12dとの間の距離(焦点距離)を長くすることで、シェード12cと出射面12dとの間の距離(焦点距離)を短くした場合と比べ、光源像が小さくなる。その結果、出射面12d(レンズ部)の焦点F
12d近傍に形成される光度分布(及びロービーム用配光パターン)の最大光度をより高くすることができる。
【0075】
また、出射面12dと光源14(又はシェード12c)との間の距離を短くすることで、出射面12dと光源14(又はシェード12c)との間の距離を長くした場合と比べ、出射面12dに取り込まれる直射光RayA及び反射光Bが増加する。その結果、効率が増加する。
【0076】
なお、ロービーム用配光パターンの水平方向・鉛直方向の拡散の程度は、出射面12dの面形状を調整することで自在に調整することができる。
【0077】
反射面12bの先端縁と出射面12dの下端縁とを接続する面は、反射面12bの先端縁から前方斜め下方に向けて延びた傾斜面とされている。なお、反射面12bの先端縁と出射面12dの下端縁とを接続する面は、これに限らず、出射面12dに向かって進行する直射光RayA及び反射光RayBを遮らない面であれば如何なる面であってもよい。同様に、入射面12aの上端縁と出射面12dの上端縁とを接続する面は、入射面12aの上端縁と出射面12dの上端縁との間で水平方向に延びた平面形状の面とされている。なお、入射面12aの上端縁と出射面12dの上端縁とを接続する面は、これに限らず、出射面12dに向かって進行する直射光RayA及び反射光RayBを遮らない面であれば如何なる面であってもよい。
【0078】
上記構成のレンズ体12においては、入射面12aからレンズ体12内部に入射した光は、
図1に示すように、鉛直方向に関し、シェード12cに向かって第2基準軸AX2寄りに集光する(例えば、シェード12cの中心に集光する)。そして、入射面12aの面形状が
図5に示すように構成されている場合、入射面12aからレンズ体内部に入射した光は、
図5に示すように、水平方向に関し、シェード12cに向かって第1基準軸AX1寄りに集光する(例えば、シェード12cの中心に集光する)。
【0079】
以上のように鉛直方向及び水平方向に関し集光する直射光RayA及び反射面12bで内面反射された反射光RayBは、出射面12dに向かって進行し、出射面12dから出射する。その際、出射面12dに向かって進行する直射光RayA及び反射光RayBにより、出射面12d(レンズ部)の焦点F
12d近傍に、下端縁にシェード12cによって規定されるカットオフラインに対応する辺を含む光度分布(光源像)が形成される。そして、出射面12dは、この光度分布を反転投影して、仮想鉛直スクリーン上に、
図11(a)に示す上端縁にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンP1を形成する。
【0080】
このロービーム用配光パターンP1は、中心光度が相対的に高く、遠方視認性に優れたものとなる。これは、光源14が、当該光源14の光軸AX
14が第2基準軸AX2に一致した姿勢でレンズ体12の入射面12a近傍(基準点F近傍)に配置されていること、そして、相対強度(光度)が高い光軸AX
14上の光(直射光)が、シェード12cに向かって第2基準軸AX2寄りに集光する(例えば、シェード12cの中心に集光する)ことによるものである。
【0081】
なお、入射面12a及び/又は出射面12dの面形状(例えば、曲率)を調整することで、
図11(b)に示すように、水平方向に拡散したロービーム用配光パターンP2を形成することもできる。
【0082】
また、第1基準軸AX1に対する第2基準軸AX2の傾き(
図1に示す角度θ参照)を大きくすることで、ロービーム用配光パターンP1、P2の下端縁を下方に延ばすことができる。
【0083】
一方、入射面12aの面形状が
図6に示すように構成されている場合、入射面12aからレンズ体12内部に入射した光は、
図6に示すように、水平方向に関し、第1基準軸AX1に対して平行な光となる。
【0084】
以上のように鉛直方向に関し集光し、水平方向に関し平行となった直射光RayA及び反射面12bで内面反射された反射光RayBは、出射面12dに向かって進行し、出射面12dから出射する。その際、出射面12dに向かって進行する直射光RayA及び反射光RayBにより、出射面12d(レンズ部)の焦点F
12d近傍に、下端縁にシェード12cによって規定されるカットオフラインCL1〜CL3に対応する辺を含む光度分布(光源像)が形成される。そして、出射面12dは、この光度分布を反転投影して、仮想鉛直スクリーン上に、
図11(c)に示す上端縁にカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンP3を形成する。
図11(c)に示すロービーム用配光パターンP3は、水平方向に関し集光されない分、
図11(a)に示すロービーム用配光パターンP1より水平方向に関し拡散されたものとなる。
【0085】
次に、レンズ体12内部に入射した光源14からの光による光源像とロービーム用配光パターンとの関係について説明する。
【0086】
図12は、各断面Cs1〜Cs3における光源14からの光による光源像を説明するための図である。
【0087】
図12に示すように、断面Cs1、Cs2における光源像I
Cs1、I
Cs2の外形形状は、光源の外形形状と同様(光源14の外形形状と相似型で光源像として大きい)のものとなる。
【0088】
一方、反射面12bやシェード12cを通過した後の断面Cs3における光源像I
Cs3の外形形状は、下端縁にシェード12cによって規定されるカットオフラインCL1〜CL3に対応する辺e1、e2、e3を含むものとなる。この光源像I
Cs3は、出射面12d(レンズ部)の作用により反転して、上端縁にシェード12cによって規定されるカットオフラインCL1〜CL3に対応する辺e1、e2、e3を含むものとなる。
【0089】
図11(a)〜
図11(c)に示すロービーム用配光パターンP1〜P3は、この上端縁にシェード12cによって規定されるカットオフラインCL1〜CL3に対応する辺e1、e2、e3を含む光源像に基づいて形成されるため、上端縁に明瞭なカットオフラインCL1、CL2、CL3を含むものとなる。
【0090】
次に、反射面12bを第1基準軸AX1に対して傾けて配置することの利点について、反射面12bを水平方向に配置する場合と対比して説明する。
【0091】
第1の利点は、反射面12bを水平方向に配置する場合と比べ、迷光の減少・高効率化を達成することができる点である。
【0092】
すなわち、
図13(a)に示すように、反射面12bを水平方向に配置した場合、反射面12bで内面反射された反射光RayB´は、出射面12dに入射しない方向に進行する迷光RayB´となる。その結果、効率が低下する。
【0093】
これに対して、
図13(b)に示すように、反射面12bを第1基準軸AX1に対して傾けて配置した場合、反射面12bで内面反射され、出射面12dに向かって進行する反射光RayBが増加し、出射面12dが取り込む光(反射面12bで内面反射された反射光)が増加する。その結果、反射面12bを水平方向に配置する場合と比べ、迷光の減少・高効率化を達成することができる。
【0094】
本出願の発明者らが行ったシミュレーションでは、反射面12bを第1基準軸AX1に対して5°傾けて配置した場合、効率が33.8%増加し、10°傾けて配置した場合、効率が60%増加した。
【0095】
第2の利点は、反射面12bを水平方向に配置する場合と比べ、レンズ体12の小型化を達成することができる点である。
【0096】
すなわち、
図13(a)に示すように、反射面12bを水平方向に配置した場合、反射面12bで内面反射された反射光RayB´は、出射面12dに入射しない方向に進行する迷光RayB´となる。出射面12dは、これを
図14(a)に示すように上方に延ばすことで迷光RayB´を取り込むことができるが、上方に延ばす分、出射面12dが大型化する。
【0097】
これに対して、
図14(b)に示すように、反射面12bを第1基準軸AX1に対して傾けて配置した場合、出射面12dは、これを上方に延ばすことなくより多くの光(反射面12bで内面反射された反射光RayB)を取り込むことができる。その結果、反射面12bを水平方向に配置する場合と比べ、出射面12d(ひいてはレンズ体12)の小型化を達成することができる。
【0098】
本出願の発明者らが行ったシミュレーションでは、反射面12bを第1基準軸AX1に対して5°傾けて配置した場合、
図14(b)に示す高さA(出射面12dから出射する光の鉛直方向の高さ)が、
図14(a)に示す場合と比べ8%減少し、10°傾けて配置した場合、
図14(b)に示す高さAが、
図14(a)に示す場合と比べ18.1%減少した。
【0099】
次に、第2基準軸AX2を第1基準軸AX1に対して傾けて配置し、レンズ体12内部に入射した光源14からの光を、少なくとも鉛直方向に関し、シェード12cに向かって第2基準軸AX2寄りに集光させることの利点について、第2基準軸AX2を水平方向に配置し、レンズ体12内部に入射した光源14からの光を、少なくとも鉛直方向に関し、シェード12cに向かって第2基準軸AX2寄りに集光させる場合と対比して説明する。
【0100】
この利点は、第2基準軸AX2を水平方向に配置し、レンズ体12内部に入射した光源14からの光を、少なくとも鉛直方向に関し、シェード12cに向かって第2基準軸AX2寄りに集光させる場合と比べ、迷光の減少・高効率化を達成することができる点である。
【0101】
すなわち、
図15(a)に示すように、第2基準軸AX2を水平方向に配置し、レンズ体12内部に入射した光源14からの光を、少なくとも鉛直方向に関し、シェード12cに向かって第2基準軸AX2寄りに集光させた場合、レンズ体12内部に入射した光源14からの光の多くがシェード12cで遮光される。その結果、効率が大幅に低下する。また、
図15(a)において、反射面12bに相当する反射面を追加したとしてもと、当該反射面で内面反射された反射光が、出射面12dに入射しない方向に進行する迷光となる。
【0102】
これに対して、
図15(b)に示すように、第2基準軸AX2を第1基準軸AX1に対して傾けて配置し、レンズ体12内部に入射した光源14からの光を、少なくとも鉛直方向に関し、シェード12cに向かって第2基準軸AX2寄りに集光させた場合、出射面12dが取り込む光(反射面12bで内面反射された反射光RayB)が増加する。その結果、第2基準軸AX2を水平方向に配置し、レンズ体12内部に入射した光源14からの光を、少なくとも鉛直方向に関し、シェード12cに向かって第2基準軸AX2寄りに集光させる場合と比べ、迷光の減少・高効率化を達成することができる。
【0103】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1に、コストアップの要因となる金属蒸着による反射面を省略したレンズ体12及びこれを用いた車両用灯具10を提供することができる。第2に、光源14で発生した熱に起因して、レンズ体12が融解したり、光源14出力が低下するのを抑制することができるレンズ体12及びこれを用いた車両用灯具10を提供することができる。
【0104】
コストアップの要因となる金属蒸着による反射面を省略することができるのは、光源14からの光が、金属蒸着による反射面ではなく、入射面12aでの屈折及び反射面12bでの内面反射により制御されることによるものである。
【0105】
光源14で発生した熱に起因して、レンズ体12が融解したり、光源14出力が低下するのを抑制することができるのは、入射面12aがレンズ体12の後端部に形成されており、かつ、光源14がレンズ体12の外部(すなわち、レンズ体12の入射面12aから離間した位置)に配置されることによるものである。
【0106】
次に、本発明の第2実施形態である車両用灯具について、図面を参照しながら説明する。
【0107】
図16は本発明の第2実施形態である車両用灯具10Aの斜視図、
図17(a)は縦断面図、
図17(b)は光源14からの光がレンズ体12A内部を進行する様子を表す図である。
【0108】
本実施形態の車両用灯具10Aと上記第1実施形態の車両用灯具10とを対比すると、両者は主に次の点で相違する。
【0109】
第1に、上記第1実施形態の車両用灯具10においては、水平方向の集光及び鉛直方向の集光を主にレンズ体12の最終的な出射面である出射面12dが担当していたのに対して、本実施形態の車両用灯具10Aにおいては、水平方向の集光を主に第1レンズ部12A1の第1出射面12A1aが担当し、鉛直方向の集光を主にレンズ体12Aの最終的な出射面である第2レンズ部12A2の第2出射面12A2bが担当している点。すなわち、本実施形態の車両用灯具10Aにおいては、「集光機能を分解する」という考え方を採っている点。
【0110】
第2に、上記第1実施形態の車両用灯具10においては、水平方向の集光及び鉛直方向の集光を担当するため、レンズ体12の最終的な出射面である出射面12dを半球状の面(半球状の屈折面)として構成していた(
図2(a)参照)のに対して、本実施形態の車両用灯具10Aにおいては、水平方向の集光を担当するため、第1レンズ部12A1の第1出射面12A1aを鉛直方向に延びる半円柱状の面(半円柱状の屈折面)として構成し(
図23参照)、かつ、鉛直方向の集光を担当するため、レンズ体12Aの最終的な出射面である第2レンズ部12A2の第2出射面12A2bを水平方向に延びる半円柱状の面(半円柱状の屈折面)として構成した(
図23参照)点。
【0111】
第3に、上記第1実施形態の車両用灯具10においては、レンズ体12の最終的な出射面である出射面12dが半球状の面(半円柱状の屈折面)として構成されている結果、複数の車両用灯具10(複数のレンズ体12)を一列に配置(
図18参照)しても、点が連続する外観となり、所定方向にライン状に延びる一体感のある見栄えの車両用灯具(レンズ結合体)を構成することができないのに対して、本実施形態の車両用灯具10Aにおいては、レンズ体12Aの最終的な出射面である第2出射面12A2bが水平方向に延びる半円柱状の面(半円柱状の屈折面)として構成されている結果、複数の車両用灯具10A(複数のレンズ体12A)を一列に配置(
図19(a)及び
図19(b)参照)することで、水平方向にライン状に延びる一体感のある見栄えの車両用灯具(レンズ結合体16)を構成することができる点。なお、
図18は、複数の第1実施形態の車両用灯具10(複数のレンズ体12)を一列に配置した様子を表す上面図である。
【0112】
それ以外、上記第1実施形態の車両用灯具10と同様の構成である。以下、上記第1実施形態の車両用灯具10との相違点を中心に説明し、上記第1実施形態の車両用灯具10と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0113】
図16、
図17(b)に示すように、本実施形態の車両用灯具10Aは、光源14、第1レンズ部12A1及び第2レンズ部12A2を含み、光源14からの光が、第1レンズ部12A1の第1入射面12aから第1レンズ部12A1内部に入射して第1レンズ部12A1のシェード12cによって一部遮光された後、第1レンズ部12A1の第1出射面12A1aから出射し、さらに、第2レンズ部12A2の第2入射面12A2aから第2レンズ部12A2内部に入射して第2レンズ部12A2の第2出射面12A2bから出射して前方に照射されることにより、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に、
図20(a)等に示す上端縁にシェード12cによって規定されるカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンP1a等(本発明の所定配光パターンに相当)を形成するように構成されたレンズ体12Aを備えた車両用前照灯として構成されている。
【0114】
図21(a)は第2実施形態のレンズ体12Aの上面図、
図21(b)は側面図、
図21(c)は下面図である。
図22は第1入射面12aの一例(横断面図)、
図23は第2実施形態のレンズ体12A(第1出射面12A1a、第2入射面12A2a及び第2出射面12A2b)について説明するための斜視図である。
【0115】
図17(a)、
図21(a)〜
図21(c)に示すように、レンズ体12Aは、水平方向に延びる第1基準軸AXに沿って延びた形状のレンズ体で、第1レンズ部12A1、第2レンズ部12A2、及び、第1レンズ部12A1と第2レンズ部12A2とを連結した連結部12A3を含んでいる。
【0116】
第1レンズ部12A1は、第1入射面12a、反射面12b、シェード12c、第1出射面12A1a及び第1入射面12a近傍に配置された光学設計上の基準点Fを含んでいる。第2レンズ部12A2は、第2入射面12A2a及び第2出射面12A2bを含んでいる。第1入射面12a、反射面12b、シェード12c、第1出射面12A1a、第2入射面12A2a及び第2出射面12A2bは、第1基準軸AX1に沿ってこの順に配置されている。
【0117】
第1レンズ部12A1と第2レンズ部12A2とは、連結部12A3によって連結されている。
【0118】
連結部12A3は、第1レンズ部12A1と第2レンズ部12A2とを、それぞれの上部において、第1出射面12A1a、第2入射面12A2a及び連結部12A3で囲まれ(それ以外が開放され)た空間Sが形成された状態で連結している。
【0119】
レンズ体12Aは、金型に、ポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂を注入し、冷却、固化させることにより(射出成形により)一体的に成形されている。
【0120】
空間Sは、抜き方向が連結部12A3とは反対方向(
図17(a)中、矢印参照)の金型により形成される。この金型をスムーズに抜くため、第1出射面12A1a及び第2入射面12A2aには、それぞれ、抜き角α、β(抜き勾配とも称される。2°以上が望ましい)が設定されている。これにより、成形時に上下抜きでの型抜きが可能となり、レンズ体12(及び後述のレンズ結合体16)を、一度の型抜きで(スライドを使用することなく)安価に製造することができる。なお、レンズ体12Aの材料は、ポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂以外のガラスであってもよい。
【0121】
第1入射面12aは、第1レンズ部12A1の後端部に形成され、当該第1入射面12a近傍に配置される光源14(正確には、光学設計上の基準点F)からの光が屈折して第1レンズ部12A1内部に入射する面(例えば、光源14に向かって凸の自由曲面)で、第1レンズ部12A1内部に入射した光源14からの光が、鉛直方向に関し、シェード12cに向かって第2基準軸AX2寄りに集光し(
図17(b)参照)、かつ、水平方向に関し、シェード12cに向かって第1基準軸AX1寄りに集光する(
図22参照)ように、その面形状が構成されている。第1基準軸AXは、シェード12c近傍の点(例えば、焦点F
12A4)を通過し、車両前後方向に延びている。第2基準軸AX2は、光源14の中心(正確には、基準点F)とシェード12c近傍の点(例えば、焦点F
12A4)とを通過し、かつ、第1基準軸AX1に対して前方斜め下方に向かって傾斜している。なお、第1入射面12aは、第1レンズ部12A1内部に入射した光源14からの光が、水平方向に関し、基準軸AX1に対して平行な光となる(
図6参照)ように、その面形状が構成されていてもよい。
【0122】
第1出射面12A1aは、当該第1出射面12A1aから出射する光源14からの光、すなわち、第1レンズ部12A1内部に入射した光源14からの光のうち第1出射面12A1aに向かって進行する直射光及び反射面12bで内面反射された後、第1出射面12A1aに向かって進行する反射光を水平方向(本発明の第1方向に相当)に関し集光させる面である。具体的には、
図23に示すように、その円柱軸が鉛直方向に延びた半円柱状の面として構成されている。第1出射面12A1aの焦線は、シェード12c近傍において鉛直方向に延びている。
【0123】
第2入射面12A2aは、第2レンズ部12A2の後端部に形成され、第1出射面12A1aから出射した光源14からの光が第2レンズ部12A2内部に入射する面で、例えば、平面形状の面として構成されている。もちろん、これに限らず、第2入射面12A2aは、曲面形状の面として構成されていてもよい。
【0124】
第2出射面12A2bは、当該第2出射面12A2bから出射する光源14からの光を鉛直方向(本発明の第2方向に相当)に関し集光させる面である。具体的には、
図23に示すように、その円柱軸が水平方向に延びた半円柱状の面として構成されている。第2出射面12A2bの焦線は、シェード12c近傍において水平方向に延びている。
【0125】
上記構成の第1出射面12A1a及び第2レンズ部12A2(第2入射面12A2a及び第2出射面12A2b)からなるレンズ12A4の焦点F
12A4は、上記第1実施形態の出射面12dの焦点F
12dと同様、シェード12c近傍(例えば、シェード12cの左右方向の中心近傍)に設定されている。このレンズ12A4は、上記第1実施形態の出射面12dと同様、第1レンズ部12A1内部に入射した光源14からの光、すなわち、第1レンズ部12A1内部に入射した光源14からの光のうち第1出射面12A1aに向かって進行する直射光及び反射面12bで内面反射された後、第1出射面12A1aに向かって進行する反射光により、当該レンズ12A4の焦点F
12A4近傍に形成される光度分布(光源像)を反転投影して、仮想鉛直スクリーン上に、
図20(a)等に示す上端縁にカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンP1a等を形成する。
【0126】
第2出射面12A2bの基本的な面形状は、上記のとおりであるが、第1出射面12A1a及び第2入射面12A2aに抜き角α、βが設定されているため、実際には、次のように調整されている。
【0127】
図24は、第1出射面12A1a、第2入射面12A2a及び第2出射面12A2bそれぞれの法線を説明するための図である。
【0128】
すなわち、第1出射面12A1a及び第2入射面12A2aに抜き角α、βが設定されている場合、
図24に示すように、第1出射面12A1a及び第2入射面12A2aそれぞれの中心を通る法線N
12A1a、N
12A2aは、水平に対して傾く。この場合、第2出射面12A2bの中心を通る法線N
12A2bが水平方向に延びていると、第2出射面12A2bから出射する光源14からの光は、水平に対して斜め上向きに進行する光となり、グレアの原因となる恐れがある。
【0129】
これを抑制するため、第2出射面12A2bは、当該第2出射面12A2bから出射する光源14からの光が、第1基準軸AX1に対して平行な光となるようにその面形状が調整されている。例えば、第2出射面12A2bは、当該第2出射面12A2bから出射する光源14からの光が、第1基準軸AX1に対して平行な光となるように、その法線N
12A2bが前方斜め上方に向かって傾斜した面形状に調整されている。この調整は、最終的に、第1出射面12A1a及び第2レンズ部12A2(第2入射面12A2a及び第2出射面12A2b)からなるレンズ12A4の焦点F
12A4をシェード12c位置付近に合わせるための調整である。
図24中の先端に矢印が付いた線は、レンズ体12A内部に入射した光源14(正確には、基準点F)からの光の光路を表している。
【0130】
反射面12bの先端縁と第1出射面12A1aの下端縁とを接続する面は、反射面12bの先端縁から前方斜め下方に向けて延びた傾斜面とされているが、これに限らず、第2出射面12A2bに向かって進行する光源14からの光を遮らない面であれば如何なる面であってもよい。同様に、レンズ体12Aの上面、すなわち、第1入射面12aの上端縁と第2出射面12A2bの上端縁とを接続する面は、略水平方向に延びた面とされているが、これに限らず、第2出射面12A2bに向かって進行する光源14からの光を遮らない面であれば如何なる面であってもよい。同様に、レンズ体12Aの両側面、すなわち、第1入射面12aの左右端縁と第2出射面12A2bの左右端縁とを接続する面は、第1入射面12aに向かうに従ってテーパー状に狭まる傾斜面とされている(
図21(a)参照)が、これに限らず、第2出射面12A2bに向かって進行する光源14からの光を遮らない面であれば如何なる面であってもよい。
【0131】
上記構成の車両用灯具10A(レンズ体12A)においては、光源14からの光は、
図17(b)に示すように、第1レンズ部12A1の第1入射面12aから第1レンズ部12A1内部に入射して第1レンズ部12A1のシェード12cによって一部遮光された後、第1レンズ部12A1の第1出射面12A1aから出射する。その際、第1出射面12A1aから出射する光源14からの光は、第1出射面12A1aの作用により、水平方向に関し集光される(
図22参照。鉛直方向に関し集光されない又はほとんど集光されない)。そして、第1出射面12A1aから出射した光源14からの光は、空間Sを通過して、さらに、第2レンズ部12A2の第2入射面12A2aから第2レンズ部12A2内部に入射して第2レンズ部12A2の第2出射面12A2bから出射して前方に照射される。その際、第2出射面12A2bから出射する光源14からの光は、第2出射面12A2bの作用により、鉛直方向に関し集光される(
図17(b)参照。水平方向に関し集光されない又はほとんど集光されない)。以上により、仮想鉛直スクリーン上に、
図20(a)等に示す上端縁にシェード12cによって規定されるカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンP1a等(本発明の所定配光パターンに相当)が形成される。
【0132】
このロービーム用配光パターンP1a等は、中心光度が相対的に高く、遠方視認性に優れたものとなる。これは、光源14が、当該光源14の光軸AX
14が第2基準軸AX2に一致した姿勢でレンズ体12Aの入射面12a近傍(基準点F近傍)に配置されていること、そして、相対強度(光度)が高い光軸AX
14上の光(直射光)が、シェード12cに向かって第2基準軸AX2寄りに集光する(例えば、シェード12cの中心に集光する)ことによるものである。
【0133】
ロービーム用配光パターンの水平方向及び/又は鉛直方向の拡散の程度は、第1出射面12A1a及び/又は第2出射面12A2bの面形状(例えば、曲率)を調整することで、
図20(a)〜
図20(c)に示すように、自在に調整することができる。例えば、ロービーム用配光パターンの水平方向の拡散の程度は、第1出射面12A1aの面形状(例えば、曲率)を調整することで自在に調整することができる。同様に、ロービーム用配光パターンの鉛直方向の拡散の程度は、第2出射面12A2bの面形状(例えば、曲率)を調整することで自在に調整することができる。
【0134】
図19(a)は複数の第2実施形態の車両用灯具10A(複数のレンズ体12A)を水平方向に一列に配置した様子を表す正面図、
図19(b)は上面図である。
【0135】
図19(a)、
図19(b)に示すように、レンズ結合体16は、レンズ体12Aを複数含んでいる。レンズ結合体16(複数のレンズ体12A)は、金型に、ポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂を注入し、冷却、固化させることにより一体的に成形(射出成形)されている。複数のレンズ体12Aそれぞれの第2出射面12A2bは、互いに隣接した状態で水平方向に一列に配置されて、水平方向にライン状に延びる一体感のある見栄えの半円柱状の出射面群を構成している。
【0136】
上記構成のレンズ結合体16を用いることで、水平方向にライン状に延びる一体感のある見栄えの車両用灯具を構成することができる。なお、レンズ結合体16は、複数のレンズ体12を物理的に分離した状態で成形し、レンズホルダ等の保持部材(図示せず)によって連結(保持)することで構成してもよい。
【0137】
以上説明したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の効果に加え、さらに、次の効果を奏することができる。
【0138】
すなわち、第1に、水平方向にライン状に延びる一体感のある見栄えのレンズ体12A(レンズ結合体16)及びこれを用いた車両用灯具10Aを提供することができる。第2に、最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面(水平方向に延びた半円柱状の屈折面)であるにもかかわらず、水平方向及び鉛直方向に集光したロービーム用配光パターンP1a等を形成することができるレンズ体12A(レンズ結合体16)及びこれを用いた車両用灯具10A)を提供することができる。
【0139】
水平方向にライン状に延びる一体感のある見栄えとすることができるのは、最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面(水平方向に延びた半円柱状の屈折面)として構成されていることによるものである。
【0140】
最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面(水平方向に延びた半円柱状の屈折面)であるにもかかわらず、水平方向及び鉛直方向に集光したロービーム用配光パターンP1a等を形成することができるのは、水平方向の集光を主に第1レンズ部12A1の第1出射面12A1a(鉛直方向に延びた半円柱状の屈折面)が担当し、鉛直方向の集光を主にレンズ体12Aの最終的な出射面である第2レンズ部12A2の第2出射面12A2b(水平方向に延びた半円柱状の屈折面)が担当することによるものである。すなわち、集光機能を分解したことによるものである。
【0141】
また、本実施形態によれば、第1出射面12A1a及び第2入射面12A2aに抜き角α、βが設定されているにもかかわらず、最終的な出射面である第2出射面12A2bから出射する光源14からの光が、第1基準軸AX1に対して平行な光となる、車両用灯具に適したレンズ体12A(レンズ結合体16)及びこれを用いた車両用灯具10Aを提供することができる。
【0143】
図25は、上記第2実施形態のレンズ体12Aの第1変形例であるレンズ体12Bについて説明する図である。
【0144】
本変形例のレンズ体12Bは、
図25に示すように、第1レンズ部12A1と第2レンズ部12A2とを物理的に分離した状態で成形し、レンズホルダ等の保持部材18によって両者を連結(保持)することで構成されている。第1出射面12A1a及び第2入射面12A2aは、抜き角α、βが設定されておらず、それぞれ、基準軸AX1に直交する平面形状(又は曲面形状)の面とされている。
【0145】
本変形例によれば、抜き角α、βが不要となる結果、第2出射面12A2bの調整を省略することができる。
【0146】
図26は、上記第2実施形態のレンズ体12Aの第2変形例であるレンズ体12C(第1出射面12A1a、第2入射面12A2a及び第2出射面12A2b)について説明するための斜視図である。
【0147】
本変形例のレンズ体12Cは、上記第2実施形態の第1出射面12A1aと第2出射面12A2b)とを入れ替えたものに相当する。
【0148】
すなわち、本変形例のレンズ体12Cの第1出射面12A1aは、当該第1出射面12A1aから出射する光源14からの光を鉛直方向(本発明の第1方向に相当)に関し集光させる面である。具体的には、
図26に示すように、その円柱軸が水平方向に延びた半円柱状の面として構成されている。この場合、第1出射面12A1aの焦線は、シェード12c近傍において水平方向に延びている。また、本変形例のレンズ体12Cの第2出射面12A2bは、当該第2出射面12A2bから出射する光源14からの光を水平方向(本発明の第2方向に相当)に関し集光させる面である。具体的には、
図26に示すように、その円柱軸が鉛直方向に延びた半円柱状の面として構成されている。この場合、第2出射面12A2bの焦線は、シェード12c近傍において鉛直方向に延びている。
【0149】
本変形例のレンズ体12Cの第1出射面12A1a及び第2レンズ部12A2(第2入射面12A2a及び第2出射面12A2b)からなるレンズ12A4の焦点F
12A4は、上記第2実施形態と同様、シェード12c近傍(例えば、シェード12cの左右方向の中心近傍)に設定されている。
【0150】
図27は、複数の車両用灯具10C(複数のレンズ体12C)を鉛直方向に一列に配置した様子を表す正面図である。
【0151】
図27に示すように、レンズ結合体16Cは、レンズ体12Cを複数含んでいる。レンズ結合体16C(複数のレンズ体12C)は、金型に、ポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂を注入し、冷却、固化させることにより一体的に成形(射出成形)されている。複数のレンズ体12Cそれぞれの第2出射面12A2bは、互いに隣接した状態で鉛直方向に一列に配置されて、鉛直方向にライン状に延びる一体感のある見栄えの半円柱状の出射面群を構成している。
【0152】
上記構成のレンズ結合体16Cを用いることで、鉛直方向にライン状に延びる一体感のある見栄えの車両用灯具10Cを構成することができる。なお、レンズ結合体16Cは、複数のレンズ体12Cを物理的に分離した状態で成形し、レンズホルダ等の保持部材(図示せず)によって連結(保持)することで構成してもよい。
【0153】
本変形例によれば、第1に、鉛直方向にライン状に延びる一体感のある見栄えのレンズ体12C(レンズ結合体16C)及びこれを用いた車両用灯具10Cを提供することができる。第2に、最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面(鉛直方向に延びた半円柱状の屈折面)であるにもかかわらず、水平方向及び鉛直方向に集光したロービーム用配光パターンP1a等を形成することができるレンズ体12C(レンズ結合体16C)及びこれを用いた車両用灯具10Cを提供することができる。
【0154】
鉛直方向にライン状に延びる一体感のある見栄えとすることができるのは、最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面(鉛直方向に延びた半円柱状の屈折面)として構成されていることによるものである。
【0155】
最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面(鉛直方向に延びた半円柱状の屈折面)であるにもかかわらず、水平方向及び鉛直方向に集光したロービーム用配光パターンP1a等を形成することができるのは、鉛直方向の集光を主に第1レンズ部12A1の第1出射面12A1a(水平方向に延びた半円柱状の屈折面)が担当し、水平方向の集光を主にレンズ体12Aの最終的な出射面である第2レンズ部12A2の第2出射面12A2b(鉛直方向に延びた半円柱状の屈折面)が担当することによるものである。すなわち、集光機能を分解したことによるものである。
【0156】
上記第2実施形態で説明した「集光機能を分解する」という考え方は、上記第1実施形態の車両用灯具10に限らず、最終的な出射面が半球状の面(半球状の屈折面)である、あらゆる車両用灯具(例えば、背景技術で説明した特開2005−228502号公報に記載の車両用灯具)に適用することができる。以下、この点を、第3実施形態、第4実施形態を用いて説明する。
【0157】
次に、第3実施形態として、上記第2実施形態で説明した「集光機能を分解する」という考え方を適用したダイレクトプロジェクション型の車両用灯具20について説明する。以下、上記第2実施形態の車両用灯具10Aと同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0158】
図28は、上記「集光機能を分解する」という考え方を適用したダイレクトプロジェクション型の車両用灯具20の概略図である。
【0159】
図28に示すように、本実施形態のダイレクトプロジェクション型の車両用灯具20は、光源14、シェード22、第1レンズ部12A1及び第2レンズ部12A2を含み、光源14からの光が、シェード22によって一部遮光された後、第1レンズ部12A1の第1入射面12A1bから第1レンズ部12A1内部に入射して第1レンズ部12A1の第1出射面12A1aから出射し、さらに、第2レンズ部12A2の第2入射面12A2aから第2レンズ部12A2内部に入射して第2レンズ部12A2の第2出射面12A2bから出射して前方に照射されることにより、仮想鉛直スクリーン上に、
図20(a)等に示す上端縁にシェード22によって規定されるカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンP1a等(本発明の所定配光パターンに相当)を形成するように構成されたレンズ体を備えた車両用前照灯として構成されている。
【0160】
すなわち、本実施形態のダイレクトプロジェクション型の車両用灯具20は、一般的なダイレクトプロジェクション型の車両用灯具において用いられる凸レンズ(最終的な出射面が半球状の面である凸レンズ)を、第1レンズ部12A1及び第2レンズ部12A2で置き換えたものに相当する。第1レンズ部12A1及び第2レンズ部12A2からなるレンズ12A5の焦点F
12A5は、光源14の前方に当該光源14(発光面)の一部を覆った状態で配置されたシェード22の上端縁近傍に設定されている。なお、第1入射面12A1bは、上記第2実施形態とは異なり、基準軸AX1に直交する平面形状(又は曲面形状)の面とされている。
【0161】
上記構成の車両用灯具20においては、光源14からの光は、シェード22によって一部遮光された後、第1レンズ部12A1の第1入射面12A1bから第1レンズ部12A1内部に入射して第1レンズ部12A1の第1出射面12A1aから出射する。その際、第1出射面12A1aから出射する光源14からの光は、第1出射面12A1aの作用により、水平方向に関し集光される(鉛直方向に関し集光されない又はほとんど集光されない)。そして、第1出射面12A1aから出射した光源14からの光は、空間Sを通過して、さらに、第2レンズ部12A2の第2入射面12A2aから第2レンズ部12A2内部に入射して第2レンズ部12A2の第2出射面12A2bから出射して前方に照射される。その際、第2出射面12A2bから出射する光源14からの光は、第2出射面12A2bの作用により、鉛直方向に関し集光される(水平方向に関し集光されない又はほとんど集光されない)。以上により、仮想鉛直スクリーン上に、
図20(a)等に示す上端縁にシェード22によって規定されるカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンP1a等(本発明の所定配光パターンに相当)が形成される。
【0162】
なお、
図28に示す構成からシェード22を省略し、各面12A1a、12A1b、12A2a、12A2bを調整することで、仮想鉛直スクリーン上に、
図29に示すハイビーム用配光パターンP
Hiを形成する車両用灯具を構成することができる。この場合、光源14からの光は、第1レンズ部12A1の第1入射面12A1bから第1レンズ部12A1内部に入射して第1レンズ部12A1の第1出射面12A1aから出射する。その際、第1出射面12A1aから出射した光源14からの光は、第1出射面12A1aの作用により、水平方向に関し集光される(鉛直方向に関し集光されない又はほとんど集光されない)。そして、第1出射面12A1aから出射した光源14からの光は、空間Sを通過して、さらに、第2レンズ部12A2の第2入射面12A2aから第2レンズ部12A2内部に入射して第2レンズ部12A2の第2出射面12A2bから出射して前方に照射される。その際、第2出射面12A2bから出射した光源14からの光は、第2出射面12A2bの作用により、鉛直方向に関し集光される(水平方向に関し集光されない又はほとんど集光されない)。以上により、仮想鉛直スクリーン上に、
図29に例示するハイビーム用配光パターンP
Hiが形成される。
図29は、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成されるハイビーム用配光パターンP
Hiの例である。
【0163】
次に、第4実施形態として、上記第2実施形態で説明した「集光機能を分解する」という考え方を適用したプロジェクタ型の車両用灯具30について説明する。以下、上記第2実施形態の車両用灯具10Aと同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0164】
図30は、上記「集光機能を分解する」という考え方を適用したプロジェクタ型の車両用灯具30の概略図である。
【0165】
図30に示すように、本実施形態のプロジェクタ型の車両用灯具30は、光源14、リフレクタ32(楕円系反射面)、シェード34、第1レンズ部12A1及び第2レンズ部12A2を含み、光源14からの光が、リフレクタ32で反射され、シェード34によって一部遮光された後、第1レンズ部12A1の第1入射面12A1bから第1レンズ部12A1内部に入射して第1レンズ部12A1の第1出射面12A1aから出射し、さらに、第2レンズ部12A2の第2入射面12A2aから第2レンズ部12A2内部に入射して第2レンズ部12A2の第2出射面12A2bから出射して前方に照射されることにより、仮想鉛直スクリーン上に、上端縁にシェード34によって規定されるカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンP1a等(本発明の所定配光パターンに相当)を形成するように構成されたレンズ体を備えた車両用前照灯として構成されている。
【0166】
すなわち、本実施形態のプロジェクタ型の車両用灯具30は、一般的なプロジェクタ型の車両用灯具において用いられる凸レンズ(最終的な出射面が半球状の面である凸レンズ)を、第1レンズ部12A1及び第2レンズ部12A2で置き換えたものに相当する。シェード32は、第1レンズ部12A1及び第2レンズ部12A2からなるレンズ12A5の焦点F
12A5近傍から後方に向かって略水平に延びたミラー面として構成されている。第1レンズ部12A1及び第2レンズ部12A2からなるレンズ12A5の焦点F
12A5は、シェード34の先端縁近傍に設定されている。また、リフレクタ32(楕円系反射面)の第1焦点F1は光源14近傍に設定され、かつ、第2焦点F2は第1レンズ部12A1及び第2レンズ部12A2からなるレンズ12A5の焦点F
12A5と略一致している。なお、第1入射面12A1bは、上記第2実施形態とは異なり、基準軸AX1に直交する平面形状(又は曲面形状)の面とされている。
【0167】
上記構成の車両用灯具30においては、光源14からの光は、リフレクタ32で反射され、シェード34によって一部遮光された後、第1レンズ部12A1の第1入射面12A1bから第1レンズ部12A1内部に入射して第1レンズ部12A1の第1出射面12A1aから出射する。その際、第1出射面12A1aから出射する光源14からの光は、第1出射面12A1aの作用により、水平方向に関し集光される(鉛直方向に関し集光されない又はほとんど集光されない)。そして、第1出射面12A1aから出射した光源14からの光は、空間Sを通過して、さらに、第2レンズ部12A2の第2入射面12A2aから第2レンズ部12A2内部に入射して第2レンズ部12A2の第2出射面12A2bから出射して前方に照射される。その際、第2出射面12A2bから出射する光源14からの光は、第2出射面12A2bの作用により、鉛直方向に関し集光される(水平方向に関し集光されない又はほとんど集光されない)。以上により、仮想鉛直スクリーン上に、
図20(a)等に示す上端縁にシェード34によって規定されるカットオフラインCL1〜CL3を含むロービーム用配光パターンP1a等(本発明の所定配光パターンに相当)が形成される。
【0168】
なお、
図30に示す構成からシェード34を省略し、リフレクタ32(楕円系反射面)等を調整することで、仮想鉛直スクリーン上に、
図29に示すハイビーム用配光パターンP
Hiを形成する車両用前照灯を構成することができる。この場合、光源14からの光は、リフレクタ32で反射され、第1レンズ部12A1の第1入射面12A1bから第1レンズ部12A1内部に入射して第1レンズ部12A1の第1出射面12A1aから出射する。その際、第1出射面12A1aから出射する光源14からの光は、第1出射面12A1aの作用により、水平方向に関し集光される(鉛直方向に関し集光されない又はほとんど集光されない)。そして、第1出射面12A1aから出射した光源14からの光は、空間Sを通過して、さらに、第2レンズ部12A2の第2入射面12A2aから第2レンズ部12A2内部に入射して第2レンズ部12A2の第2出射面12A2bから出射して前方に照射される。その際、第2出射面12A2bから出射した光源14からの光は、第2出射面12A2bの作用により、鉛直方向に関し集光される(水平方向に関し集光されない又はほとんど集光されない)。以上により、仮想鉛直スクリーン上に、
図29に例示するハイビーム用配光パターンP
Hiが形成される。
【0169】
次に、第5実施形態として、キャンバー角が付与された車両用灯具10Dについて、図面を参照しながら説明する。
【0170】
図31(a)はキャンバー角が付与された車両用灯具10Dの側面図(主要光学面のみ)、
図31(b)は上面図(主要光学面のみ)、
図31(c)は車両用灯具10Dにより形成されるロービーム用配光パターンの例である。
図31(d)〜
図31(f)は比較例で、
図31(d)はキャンバー角が付与されていない第2実施形態の車両用灯具10Aの側面図(主要光学面のみ)、
図31(e)は上面図(主要光学面のみ)、
図31(f)は第2実施形態の車両用灯具10Aにより形成されるロービーム用配光パターンの例である。
図32は、キャンバー角を付与した場合の問題点を説明するための上面図(主要光学面のみ)である。
【0171】
本実施形態の車両用灯具10Dは、
図31(b)に示すように、上記第2実施形態の車両用灯具10Aの第2レンズ部12A2を、上面視で、第1基準軸AX1に対して傾けたもの、すなわち、上記第2実施形態の車両用灯具10Aの第2出射面12A2bを、上面視で、第1基準軸AX1に対して所定角度傾斜した方向に延びた半円柱状の面として構成したもの(すなわち、キャンバー角θ1(例えば、θ1=30°)を付与したもの)に相当する。
【0172】
本発明者らがシミュレーションで確認したところ、キャンバー角θ1を付与しただけでは、
図32に示すように、第1出射面12A1aと第2入射面12A2aとの間の間隔が、第1基準軸AX1の両側(
図32中矢印B及びC参照)で異なることとなり、第1出射面12A1aのB位置から出射する光の焦点位置F
BとC位置から出射する光の焦点位置F
Cが大幅にずれる結果、
図33に示すように、仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンのうち、第1出射面12A1aと第2入射面12A2aとの間の間隔が広くなる側(
図33中右側)が集光せずにボケることが判明した。
【0173】
このボケが発生する原因は、図を用いて説明すると、次のとおりである。
【0174】
図34(a)は
図32に示すB位置における断面図(主要光学面のみ)で、
図34(a)中の先端に矢印が付いた線は、第1出射面12A1a(B位置)に対してある入射角で入射する光Ray1
Bが辿る光路を表している。
図34(b)は
図32に示すC位置における断面図(主要光学面のみ)で、
図34(b)中の先端に矢印が付いた線は、第1出射面12A1a(C位置)に対して
図34(a)に示したのと同一の入射角で入射する光Ray1
Cが辿る光路を表している。なお、説明の便宜のため、
図34(a)、
図34(b)では、抜き角が設定されていない状態で第1出射面12A1a及び第2入射面12A2aを描いてあるが、抜き角が設定されている場合も同様である。
【0175】
図34(b)に示すように、位置Cでは、位置B(
図34(a)参照)と比べ、第1出射面12A1aと第2入射面12A2aとの間の間隔が広い。そのため、光Ray1
Cの第2入射面12A2aに対する入射位置が
図34(a)に示す光Ray1
Bの第2入射面12A2aに対する入射位置より下方となり、この下方の入射位置から入射する光Ray1
Cが、
図34(b)に示すように、水平に対して上向きに向かう。その結果、上記ボケが発生する。
【0176】
本発明者らは、このボケを改善するため、鋭意検討した結果、第1出射面12A1aの面形状を調整することで上記ボケが改善されて、ロービーム用配光パターンが全体的に集光する(
図31(c)参照)ことを見出した。
【0177】
この知見に基づき、本実施形態の第1出射面12A1aは、鉛直方向に延びた半円柱状の面であって、ロービーム用配光パターンが全体的に集光する(
図31(c)参照)ようにその面形状が調整されている。この調整は、ずれた焦点位置F
B、F
C等をシェード12c位置付近に合わせるための調整で、所定のシミュレーションソフトウエアを用いて行われる。
図35(a)は第5実施形態の車両用灯具10Dの斜視図(主要光学面のみ)、
図35(b)は比較例で、第2実施形態の車両用灯具10Aの斜視図(主要光学面のみ)である。
図35(a)を参照すると、上記のように調整された本実施形態の第1出射面12A1aは、基準軸AX1に対して左右非対称の形状となることが分かる。
【0178】
本実施形態の車両用灯具10Dは、以上の点以外、上記第2実施形態の車両用灯具10Aと同様の構成である。
【0179】
本実施形態によれば、上記第2実施形態の効果に加え、さらに、次の効果を奏することができる。
【0180】
すなわち、第1に、キャンバー角が付与された新規見栄えのレンズ体(レンズ結合体)及びこれを用いた車両用灯具を提供することができる。すなわち、上面視で、第1基準軸AX1に対して所定角度傾斜した方向にライン状に延びる一体感のある見栄えのレンズ体(レンズ結合体)及びこれを用いた車両用灯具を提供することができる。第2に、最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面(半円柱状の屈折面)であるにもかかわらず、水平方向及び鉛直方向に集光したロービーム用配光パターンを形成することができるレンズ体(レンズ結合体)及びこれを用いた車両用灯具を提供することができる。第3に、キャンバー角が付与されているにもかかわらず、ロービーム用配光パターンが全体的に集光するレンズ体(レンズ結合体)及びこれを用いた車両用灯具を提供することができる。
【0181】
第1基準軸AX1に対して所定角度傾斜した方向にライン状に延びる一体感のある見栄えとすることができるのは、最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面(半円柱状の屈折面)として構成されており、かつ、この第2出射面12A2bが、上面視で、第1基準軸AX1に対して傾斜した方向に延びていることによるものである。
【0182】
最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面(半円柱状の屈折面)であるにもかかわらず、水平方向及び鉛直方向に集光したロービーム用配光パターンを形成することができるのは、水平方向の集光を主に第1レンズ部12A1の第1出射面12A1a(半円柱状の屈折面)が担当し、鉛直方向の集光を主にレンズ体12Aの最終的な出射面である第2レンズ部12A2の第2出射面12A2b(半円柱状の屈折面)が担当することによるものである。すなわち、集光機能を分解したことによるものである。
【0183】
キャンバー角が付与されているにもかかわらず、ロービーム用配光パターンが全体的に集光するのは、第1出射面12A1aが、鉛直方向に延びた半円柱状の面であって、ロービーム用配光パターンが全体的に集光するようにその面形状が調整されていることによるものである。
【0184】
なお、本実施形態で説明した「キャンバー角を付与する」という考え方、及び、このキャンバー角の付与に伴い発生する上記ボケを上記のようにして改善するという考え方は、第2実施形態の車両用灯具10A(レンズ体12A)に限らず、その各変形例、第3、第4実施形態の車両用灯具(レンズ体)等に適用することもできる。同様に、後述の第10実施形態の車両用灯具10J(レンズ体12J)に適用することもできる。
【0185】
次に、第6実施形態として、スラント角が付与された車両用灯具10Eについて、図面を参照しながら説明する。
【0186】
図36は、スラント角が付与された車両用灯具10Eの正面図である。
【0187】
本実施形態の車両用灯具10Eは、
図36に示すように、上記第2実施形態の車両用灯具10Aの第2レンズ部12A2を、正面視で、水平に対して傾けたもの、すなわち、上記第2実施形態の車両用灯具10Aの第2出射面12A2bを、正面視で、水平に対して所定角度θ2傾斜した方向に延びた半円柱状の面として構成したもの(すなわち、スラント角θ2(例えば、θ2=12°)を付与したもの)に相当する。具体的には、本実施形態の第2レンズ部12A2(第2出射面12A2b)は、上記第2実施形態の第2レンズ部12A2(第2出射面12A2b)を、第1基準軸AX1を中心として所定角度θ2回転させたものに相当する。
【0188】
本発明者らがシミュレーションで確認したところ、スラント角θ2を付与しただけでは、第2レンズ部12A2の焦線がシェード12cに対して傾く結果、
図37(a)、
図37(b)に示すように、仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンが回転した状態(又は、ボケた状態ともいえる)となることが判明した。
図37(a)はスラント角を付与した場合、ロービーム用配光パターンに現れる問題点を説明するための図、
図37(b)は
図37(a)を模式的に表した図である。
【0189】
本発明者らは、この回転(又は、ボケた状態)を抑制するため、鋭意検討した結果、
図36に示すように、第1出射面12A1aを、正面視で、鉛直に対して所定角度θ2傾斜した方向に延びた半円柱状の面として構成し、かつ、反射面12b及びシェード12cを、正面視で、水平に対して第2出射面12A2b及び第1出射面12A1aと逆方向に所定角度θ2傾斜した姿勢で配置することで上記回転が抑制される(
図38(a)、
図38(b)参照)ことを見出した。
図38(a)はロービーム用配光パターンに現れる問題点(回転)が抑制されたことを説明するための図、
図38(b)は
図38(a)を模式的に表した図である。
【0190】
上記回転(又は、ぼけた状態)が抑制される理由は、図を用いて説明すると、次のとおりである。
【0191】
図52(a)は本実施形態の車両用灯具10E(レンズ体12A)の側面図(第1出射面12A1aを省略した主要光学面のみ)、
図52(b)は上面図(第1出射面12A1aを省略した主要光学面のみ)で、いずれも、第2出射面12A2bからレンズ体12A内部に入射した平行光線RayAAが辿る光路(すなわち、逆光線追跡の結果)を表している。
【0192】
図52(d)は本実施形態の車両用灯具10E(レンズ体12A)の側面図(第1出射面12A1aを省略した主要光学面のみ)、
図52(e)は上面図(第1出射面12A1aを省略した主要光学面のみ)で、いずれも、第2出射面12A2bからレンズ体12A内部に入射した平行光線RayBBが辿る光路(すなわち、逆光線追跡の結果)を表している。
【0193】
なお、
図52(a)〜
図52(d)中、第2レンズ部12A2にはスラント角θ2(=10°)が付与されており、第2レンズ部12A2の焦線も水平に対してスラント角θ2分、傾斜している。その結果、
図52(c)中の焦点F
BBは、
図52(a)中の焦点F
AAより高くに位置している。
【0194】
次に、第1出射面12A1aを配置した場合の平行光線RayAA、RayBBが辿る光路を検討すると、この光路は、
図53(a)、
図53(b)に示すとおりのものとなる。
【0195】
図53(a)は
図52(b)に第1出射面12A1aを追加した上面図で、第2出射面12A2bからレンズ体12A内部に入射した平行光線RayAAが辿る光路(すなわち、逆光線追跡の結果)を表している。
図53(b)は
図52(d)に第1出射面12A1aを追加した上面図で、第2出射面12A2bからレンズ体12A内部に入射した平行光線RayBBが辿る光路(すなわち、逆光線追跡の結果)を表している。
【0196】
第1出射面12A1aにスラント角θ2(=10°)が付与されている場合(すなわち、第1出射面12A1aが鉛直に対して所定角度θ2傾斜した方向に延びた半円柱状の面として構成されている場合)、低い焦点F
AAを持つ成分(すなわち、RayAA)は、
図53(a)に示すように、第1出射面12A1aの作用により屈折して逆側へ進行し、焦点を結ぶ。一方、高い焦点F
BBを持つ成分(すなわち、RayBB)は、
図53(b)に示すように、第1出射面12A1aの作用により屈折して逆側へ進行し、焦点を結ぶ。その結果、焦線がスラント方向とは逆に傾いた状態となる。
【0197】
そこで、このスラント方向とは逆に傾いた焦線にシェード12cを一致(略一致)させるため、反射面12b及びシェード12cを、正面視で、水平に対して第2出射面12A2b及び第1出射面12A1aと逆方向に所定角度θ2傾斜した姿勢で配置する。これにより、シェード12cがスラント方向とは逆に傾いた焦線に一致(略一致)し、上記回転(又は、ぼけた状態)が抑制される。
【0198】
以上の知見に基づき、本実施形態の第1出射面12A1aは、正面視で、鉛直に対して所定角度θ2傾斜した方向に延びた半円柱状の面として構成されている。具体的には、本実施形態の第1出射面12A1aは、第2実施形態の第1出射面12A1aを、第1基準軸AX1を中心として第2出射面12A2bと同一方向に所定角度θ2回転させたものに相当する。
【0199】
また、反射面12b及びシェード12cは、正面視で、水平に対して第2出射面12A2b及び第1出射面12A1aと逆方向に所定角度θ2傾斜した姿勢で配置されている。具体的には、本実施形態の反射面12b及びシェード12cは、第2実施形態の反射面12b及びシェード12cを、第1基準軸AX1を中心として第2出射面12A2b及び第1出射面12A1aと逆方向に所定角度θ2回転させたものに相当する。
【0200】
本実施形態の車両用灯具10Eは、以上の点以外、上記第2実施形態の車両用灯具10Aと同様の構成である。
【0201】
本実施形態によれば、上記第2実施形態の効果に加え、さらに、次の効果を奏することができる。
【0202】
すなわち、第1に、スラント角が付与された新規見栄えのレンズ体(レンズ結合体)及びこれを用いた車両用灯具を提供することができる。すなわち、正面視で、水平に対して所定角度傾斜した方向にライン状に延びる一体感のある見栄えのレンズ体(レンズ結合体)及びこれを用いた車両用灯具を提供することができる。第2に、最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面(半円柱状の屈折面)であるにもかかわらず、水平方向及び鉛直方向に集光したロービーム用配光パターンを形成することができるレンズ体(レンズ結合体)及びこれを用いた車両用灯具を提供することができる。第3に、スラント角が付与されているにもかかわらず、ロービーム用配光パターンの回転が抑制されるレンズ体(レンズ結合体)及びこれを用いた車両用灯具を提供することができる。
【0203】
水平に対して所定角度傾斜した方向にライン状に延びる一体感のある見栄えとすることができるのは、最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面(半円柱状の屈折面)として構成されており、かつ、この第2出射面12A2bが、正面視で、水平に対して傾斜した方向に延びていることによるものである。
【0204】
最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面(半円柱状の屈折面)であるにもかかわらず、水平方向及び鉛直方向に集光したロービーム用配光パターンを形成することができるのは、水平方向の集光を主に第1レンズ部12A1の第1出射面12A1a(半円柱状の屈折面)が担当し、鉛直方向の集光を主にレンズ体12Aの最終的な出射面である第2レンズ部12A2の第2出射面12A2b(半円柱状の屈折面)が担当することによるものである。すなわち、集光機能を分解したことによるものである。
【0205】
スラント角が付与されているにもかかわらず、ロービーム用配光パターンの回転が抑制されるのは、第1出射面12A1aが、正面視で、鉛直に対して所定角度傾斜した方向に延びた半円柱状の面とされ、かつ、シェード12c(及び反射面12b)が、正面視で、水平に対して第2出射面12A2b及び第1出射面12A1aと逆方向に所定角度傾斜した姿勢で配置されていることによるものである。
【0206】
なお、本実施形態で説明した「スラント角を付与する」という考え方、及び、このスラント角の付与に伴い発生する上記回転を上記のようにして抑制するという考え方は、第2実施形態の車両用灯具10A(レンズ体12A)に限らず、その各変形例、第3、第4実施形態の車両用灯具(レンズ体)等に適用することもできる。同様に、後述の第10実施形態の車両用灯具10J(レンズ体12J)に適用することもできる。
【0207】
次に、第7実施形態として、キャンバー角及びスラント角が付与された車両用灯具10Fについて、図面を参照しながら説明する。
【0208】
図39(a)はキャンバー角及びスラント角が付与された車両用灯具10Fの側面図(主要光学面のみ)、
図39(b)は上面図(主要光学面のみ)、
図39(c)は車両用灯具10Fにより形成されるロービーム用配光パターンの例である。
【0209】
本実施形態の車両用灯具10Fは、
図39(a)及び
図39(b)に示すように、上記第2実施形態の車両用灯具10Aの第2レンズ部12A2を、上面視で、第1基準軸AX1に対して傾け(すなわち、キャンバー角θ1を付与し)、かつ、正面視で、水平に対して傾けた(すなわち、スラント角θ2を付与した)もの、すなわち、上記第5実施形態と上記第6実施形態とを組み合わせたものに相当する。
【0210】
すなわち、本実施形態の第2出射面12A2bは、上記第5実施形態と同様、上面視で、第1基準軸AX1に対して所定角度傾斜した方向に延び、かつ、上記第6実施形態と同様、正面視で、水平に対して所定角度θ2傾斜した方向に延びた半円柱状の面として構成されている。
【0211】
そして、本実施形態の第1出射面12A1aは、正面視で、鉛直に対して所定角度θ2傾斜した方向に延びた半円柱状の面であって(
図36参照)、ロービーム用配光パターンが全体的に集光したものとなるようにその面形状が調整されている。
【0212】
さらに、本実施形態の反射面12b及びシェード12cは、上記第6実施形態と同様、正面視で、水平に対して第2出射面12A2b及び第1出射面12A1aと逆方向に所定角度θ2傾斜した姿勢で配置されている。
【0213】
本実施形態によれば、キャンバー角及びスラント角が付与された新規見栄えのレンズ体(レンズ結合体)及びこれを用いた車両用灯具を提供することができる他、上記第5実施形態及び第6実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0214】
なお、本実施形態で説明した「キャンバー角及びスラント角を付与する」という考え方、及び、このキャンバー角及びスラント角の付与に伴い発生する上記ボケ及び回転を、上記のようにして改善及び抑制するという考え方は、第2実施形態の車両用灯具10A(レンズ体12A)に限らず、その各変形例、第3、第4実施形態の車両用灯具(レンズ体)等に適用することもできる。同様に、後述の第10実施形態の車両用灯具10J(レンズ体12J)に適用することもできる。
【0215】
次に、第1比較例の車両用灯具10Gについて、図面を参照しながら説明する。
【0216】
図40(a)は第1比較例の車両用灯具10Gの側面図(主要光学面のみ)、
図40(b)は上面図(主要光学面のみ)、
図40(c)は車両用灯具10Gにより形成される配光パターンの例である。
【0217】
本比較例の車両用灯具10Gは、
図40(a)、
図40(b)に示すように、上記第5実施形態の車両用灯具10Dの第2レンズ部12A2を、正面視で、水平に対して傾けた(すなわち、スラント角θ2を付与した)ものに相当する。
【0218】
すなわち、本比較例の第1出射面12A1aは、第5実施形態と同様、正面視で、鉛直方向に延びた半円柱状の面として構成されている。つまり、本比較例の第1出射面12A1aは、第6実施形態とは異なり、正面視で、鉛直に対して所定角度θ2傾斜した方向に延びた半円柱状の面として構成されていない。
【0219】
また、本比較例の反射面12b及びシェード12cは、第5実施形態と同様、正面視で、水平となる姿勢で配置されている。つまり、本比較例の第1出射面12A1aは、第6実施形態とは異なり、正面視で、水平に対して第2出射面12A2b及び第1出射面12A1aと逆方向に所定角度θ2傾斜した姿勢で配置されていない。
【0220】
本比較例の車両用灯具10Gにより形成される配光パターンは、
図40(c)に示すように、水平線から上に大きくはみ出たものとなり、ロービーム用配光パターンとして適さないことが分かる。
【0221】
次に、第2比較例の車両用灯具10Hについて、図面を参照しながら説明する。
【0222】
図41(a)は第2比較例の車両用灯具10Hの側面図(主要光学面のみ)、
図41(b)は上面図(主要光学面のみ)、
図41(c)は車両用灯具10Hにより形成される配光パターンの例である。
【0223】
本比較例の車両用灯具10Hは、
図41(a)、
図41(b)に示すように、上記第1比較例の車両用灯具10Gの第1出射面12A1aを、第6実施形態と同様、正面視で、鉛直に対して所定角度θ2傾斜した方向に延びた半円柱状の面として構成したものに相当する。
【0224】
すなわち、本比較例の第1出射面12A1aは、第6実施形態と同様、正面視で、鉛直に対して所定角度θ2傾斜した方向に延びた半円柱状の面として構成されている。
【0225】
また、本比較例の反射面12b及びシェード12cは、第5実施形態と同様、正面視で、水平となる姿勢で配置されている。つまり、本比較例の第1出射面12A1aは、第6実施形態とは異なり、正面視で、水平に対して第2出射面12A2b及び第1出射面12A1aと逆方向に所定角度θ2傾斜した姿勢で配置されていない。
【0226】
本比較例の車両用灯具10Hにより形成される配光パターンは、
図41(c)に示すように、水平線から上に大きくはみ出たものとなり、ロービーム用配光パターンとして適さないことが分かる。
【0227】
次に、第8実施形態として、キャンバー角θ1を大きくした場合の問題点及びこれを解決するための手法について説明する。
【0228】
図42(a)は、キャンバー角θ1が30°の場合に、第5実施形態の車両用灯具10D(第7実施形態の車両用灯具10Fも同様)により形成されるロービーム用配光パターンの例、
図42(b)は、キャンバー角θ1が45°の場合に、第5実施形態の車両用灯具10D(第7実施形態の車両用灯具10Fも同様)により形成されるロービーム用配光パターンの例である。
図42(b)中のハッチング領域は、当該領域が
図42(a)中の同様の領域と比べて明るいことを表している。
【0229】
本発明者らがシミュレーションで確認したところ、第5実施形態の車両用灯具10D(第7実施形態の車両用灯具10Fも同様)においてキャンバー角θ1を大きくすると(例えば、θ1=45°)、
図42(b)に示すように、カットオフラインより上が明るくなることが判明した。
【0230】
この原因は、図を用いて説明すると、次のとおりである。
【0231】
図43は第5実施形態の車両用灯具10Dの断面図(主要光学面のみ)である。
図43中の先端に矢印が付いた線は、第1出射面12A1aに対してある入射角で入射する光源14からの光Ray2が辿る光路を表している。
【0232】
第5実施形態の車両用灯具10D(第7実施形態の車両用灯具10Fも同様)においてキャンバー角θ1を大きくすると(例えば、θ1=45°)、キャンバー角θ1が小さい(例えば、θ1=30°)場合と比べ、
図43に示すように、第1出射面12A1aと第2入射面12A2aとの間の間隔が広くなる。そのため、光Ray2の第2入射面12A2aに対する入射位置が、キャンバー角θ1が小さい(例えば、θ1=30°)場合より下方となり、この下方の入射位置から入射する光Ray2が、
図43に示すように、水平に対して斜め上向きに進行する光となる。その結果、グレアが発生したり、カットオフラインが不明瞭なものとなる。
【0233】
なお、第1出射面12A1a及び第2入射面12A2aに設定する抜き角α、βを大きくしても、上記と同様の原因で、光Ray2が、水平に対して斜め上向きに進行する光となることが判明している。
【0234】
次に、上記問題点を解決するための手法について説明する。
【0235】
本発明者らは、上記問題点を改善するため、鋭意検討した結果、上記水平に対して上向きに向かう光Ray2は、第2出射面12A2bのうち下方の一部領域から出射することを見出し、この一部領域を物理的にカットするか、又は、当該一部領域から出射する光Ray2が第1基準軸AXに対して平行又は下向きの光となるようにその一部領域の面形状(例えば、曲率)を調整することで、上記問題点を改善することができるとの着想を得た。
【0236】
図44(a)は、上記知見に基づき、第2出射面12A2bのうち下方の一部領域12A2b2を物理的にカットし、上方の領域12A2b1を残した例である。このように、本来水平に対して斜め上向きに向かう光が出射する一部領域をカットすることで、斜め上向きに進行する光を抑制することができる。その結果、グレアの発生を抑え、かつ、カットオフラインを明瞭なものとすることができる。
【0237】
図44(b)は、上記知見に基づき、第2出射面12A2bのうち下方の一部領域12A2b2から出射する光Ray2が第1基準軸AXに対して平行又は下向きの光となるようにその一部領域12A2b2の面形状(例えば、曲率)を調整し、第2出射面12A2bを、上領域12A2b1と下領域12A2b2とに分割した例である。このように、本来水平に対して上向きに向かう光が出射する一部領域を上記のとおりに調整することでも、斜め上向きに進行する光を抑制することができる。その結果、グレアの発生を抑え、かつ、カットオフラインを明瞭なものとすることができる。
【0238】
本発明者らは、上記いずれの手法でも、上記問題点、すなわち、カットオフラインより上が明るくなるのを抑制することができることをシミュレーションで確認した。
【0239】
次に、第9実施形態として、第2基準軸AX2が、上面視で、第1基準軸AX1に対して傾斜している車両用灯具10Iについて、図面を参照しながら説明する。
【0240】
図45は、第2基準軸AX2が、上面視で、第1基準軸AX1に対して傾斜している車両用灯具10Iの上面図(主要光学面のみ)である。
【0241】
本実施形態の車両用灯具10Iは、
図45に示すように、上記第5実施形態の車両用灯具10D(又は、上記第7実施形態の車両用灯具10F)の第2基準軸AX2を、シェード12cの左右方向の略中心を回転中心として所定角度回転させて、上面視で、第1基準軸AX1に対して傾けたものに相当する。
【0242】
本実施形態によれば、上記第5実施形態の効果に加え、さらに、フレネル反射損失(特に、
図45に示すように、キャンバー角が付与された第2出射面12A2bに対するフレネル反射損失)が抑制される結果、光利用効率が向上するという効果を奏することができる。
【0243】
なお、本実施形態で説明した「第2基準軸AX2を、上面視で、第1基準軸AX1に対して傾斜させる」という考え方は、第5実施形態の車両用灯具10A(レンズ体12A)に限らず、その各変形例、第1〜第4、第6〜第8実施形態の車両用灯具(レンズ体)等に適用することもできる。同様に、後述の第10実施形態の車両用灯具10J(レンズ体12J)に適用することもできる。
【0244】
次に、第10実施形態の車両用灯具10J(レンズ体12J)について、図面を参照しながら説明する。
【0245】
本実施形態の車両用灯具10J(レンズ体12J)は、次のように構成されている。
【0246】
図46は車両用灯具10J(レンズ体12J)の斜視図、
図47(a)は上面図、
図47(b)は正面図、
図47(c)は側面図である。
図48(a)は車両用灯具10J(レンズ体12J)により形成されるロービーム用配光パターンP
LO(合成配光パターン)の例で、
図48(b)〜
図48(d)に示す各部分配光パターンP
SPOT、P
MID、P
WIDEが重畳されることで形成される。
【0247】
本実施形態のレンズ体12Jは、スポット用配光パターンP
SPOT(
図48(b)参照)を形成する、第2実施形態のレンズ体12Aと同様の第1光学系(
図49(a)参照)に加えて、さらに、スポット用配光パターンP
SPOTより拡散したミッド用配光パターンP
MID(
図48(c)参照)を形成する第2光学系(
図49(b)参照)、及び、ミッド用配光パターンP
MIDより拡散したワイド用配光パターンP
WIDE(
図48d(d)参照)を形成する第3光学系(
図49(c)参照)を備えている。
【0248】
以下、上記第2実施形態の車両用灯具10A(レンズ体12A)との相違点を中心に説明し、上記第2実施形態の車両用灯具10A(レンズ体12A)と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0249】
図46、
図47に示すように、本実施形態のレンズ体12Jは、第2実施形態のレンズ体12Aと同様の構成で、第1後端部12A1aa、前端部12A1bb、第1後端部12A1aaと第1前端部12A1bbとの間に配置された左右一対の側面44a、44b、及び、第1後端部12A1aaと第1前端部12A1bbとの間に配置された下反射面12bを含む第1レンズ部12A1と、第1レンズ部12A1の前方に配置され、第2後端部12A2aa、第2前端部12A2bbを含む第2レンズ部12A2と、第1レンズ部12A1と第2レンズ部12A2とを連結した連結部12A3を含み、さらに、第1レンズ部12A1の第1後端部12A1aaと第1前端部12A1bbとの間に配置された上面44cを含むレンズ体として構成されている。
【0250】
本実施形態のレンズ体12Jは、上記各実施形態と同様、ポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂を注入し、冷却、固化させることにより(射出成形により)一体的に成形されている。
【0251】
図50(a)は第1レンズ部12A1の第1後端部12A1aaの正面図、
図50(b)は
図50(a)のA−A断面図(模式図)、
図50(c)は
図50(a)のB−B断面図(模式図)である。
【0252】
図50(a)、
図50(b)に示すように、第1レンズ部12A1の第1後端部12A1aaは、第1入射面12a、及び、第1入射面12aの左右両側に、第1入射面12a近傍に配置される光源14と第1入射面12aとの間の空間を左右両側から取り囲むように配置された左右一対の入射面42a、42bを含んでいる。第1後端部12A1aaは、
図50(a)、
図50(c)に示すように、さらに、第1入射面12aの上側に、光源14と第1入射面12aとの間の空間を上側から取り囲むように配置された上入射面42cを含んでいる。
【0253】
下反射面12bの先端部は、シェード12cを含んでいる。
【0254】
第1レンズ部12A1の第1前端部12A1bbは、
図46に示すように、鉛直方向に延びる半円柱状の第1出射面12A1a、及び、第1出射面12A1aの左右両側に配置された左右一対の出射面46a、46bを含んでいる。
【0255】
第2レンズ部12A2の第2後端部12A2aaは、第2入射面12A2aを含んでおり、第2レンズ部12A2の第2前端部12A2bbは、第2出射面12A2bを含んでいる。
【0256】
第2出射面12A2bは、水平方向に延びる半円柱状の領域12A2b3と、当該半円柱状の領域12A2b3の上縁から上方斜め後方に延長された延長領域12A2b4と、を含んでいる。
【0257】
連結部12A3は、第1レンズ部12A1と第2レンズ部12A2とを、それぞれの上部において、第1レンズ部12A1の第1前端部12A1bb、第2レンズ部12A2の第2後端部12A2aa及び連結部12A3で囲まれた空間Sが形成された状態で連結している。
【0258】
図49(a)は、第1光学系の側面図(主要光学面のみ)である。
【0259】
図49(a)に示すように、第1入射面12a、下反射面12b(及びシェード12c)、第1出射面12A1a、第2入射面12A2a、及び、第2出射面12A2b(半円柱状の領域12A2b3)は、第1入射面12aから第1レンズ部12A1内部に入射した光源14からの光Ray
SPOTのうちシェード12cによって一部遮光された光、及び、下反射面12bで内面反射された光が、第1出射面12A1aから出射し、さらに、第2入射面12A2aから第2レンズ部12A2内部に入射して第2出射面12A2b(半円柱状の領域12A2b3)のうち一部領域A1(
図47(b)参照)から出射して前方に照射されることにより、
図48(b)に示すように、上端縁にシェード12cによって規定されるカットオフラインを含むスポット用配光パターンP
SPOT(本発明の第1配光パターンに相当)を形成する第1光学系を構成している。
【0260】
図49(b)は、第2光学系の上面図(主要光学面のみ)である。
【0261】
図49(b)に示すように、左右一対の入射面42a、42b、左右一対の側面44a、44b、左右一対の出射面46a、46b、第2入射面12A2a、及び、第2出射面12A2b(半円柱状の領域12A2b3)は、左右一対の入射面42a、42bから第1レンズ部12A1内部に入射して左右一対の側面44a、44bで内面反射された光源14からの光Ray
MIDが、左右一対の出射面46a、46bから出射し、さらに、第2入射面12A2aから第2レンズ部12A2内部に入射して主に第2出射面12A2b(半円柱状の領域12A2b3)のうち一部領域A1の左右両側の領域A2、A3(
図47(b)参照)から出射して前方に照射されることにより、
図48(c)に示すように、スポット用配光パターンP
SPOTに重畳される、スポット用配光パターンP
SPOTより拡散したミッド用配光パターンP
MIDを形成する第2光学系を構成している。
【0262】
左右一対の入射面42a、42bは、光源14からの光のうち第1入射面12aに入射しない光(主に、左右方向に広がる光Ray
MID。
図50(b)参照)が屈折して第1レンズ部12A1内部に入射する面で、
図50(b)に示すように、光源14に向かって凸の曲面形状の面(例えば、自由曲面)として構成されている。
【0263】
左右一対の側面44a、44bは、
図47(a)に示すように、上面視で、第1レンズ部12A1の第1前端部12A1bb側から第1後端部12A1aa側に向かうに従って左右一対の側面44a、44b間の間隔がテーパー状に狭まる外側に向かって凸の曲面形状の面(例えば、自由曲面)として構成されている。また、左右一対の側面44a、44bは、
図47(c)に示すように、側面視で、第1レンズ部12A1の第1前端部12A1bb側から第1後端部12A1aa側に向かうに従ってその上縁及び下縁がテーパー状に狭まる形状の面として構成されている。
【0264】
なお、左右一対の側面44a、44bは、左右一対の入射面42a、42bから第1レンズ部12A1内部に入射した光源14からの光Ray
MIDを左右一対の出射面46a、46bに向けて内面反射(全反射)する反射面で、金属蒸着は用いていない。
【0265】
左右一対の出射面46a、46bは、平面形状の面として構成されている。もちろん、これに限らず、曲面形状の面として構成されていてもよい。
【0266】
上記構成の第2光学系により、仮想鉛直スクリーン上に、
図48(c)に示すミッド用配光パターンP
MIDが形成される。
【0267】
ミッド用配光パターンP
MIDの鉛直方向寸法は、
図48(c)では約10度であるが、これに限らず、例えば、左右一対の入射面42a、42bの面形状(例えば、鉛直方向の曲率)を調整することで自在に調整することができる。
【0268】
また、ミッド用配光パターンP
MIDの上端縁の位置は、
図48(c)では水平線の若干下であるが、これに限らず、左右一対の入射面42a、42bの面形状(例えば、左右一対の入射面42a、42bの傾き)を調整することで自在に調整することができる。
【0269】
また、ミッド用配光パターンP
MIDの右端及び左端は、
図48(c)では右約30度及び左約30度まで延びているが、これに限らず、例えば、左右一対の入射面42a、42b及び/又は左右一対の側面44a、44b(例えば、それぞれの水平方向の曲率)を調整することで自在に調整することができる。
【0270】
図49(c)は、第3光学系の側面図(主要光学面のみ)である。
【0271】
図49(c)に示すように、上入射面42c、上面44c、連結部12A3、及び、第2出射面12A2b(延長領域12A2b4)は、上入射面42cから第1レンズ部12A1内部に入射して上面44cで内面反射され、連結部12A3内部を進行した光源14からの光Ray
WIDEが、第2出射面12A2b(各領域A1〜A3の上方の領域A4。すなわち、延長領域12A2b4)から出射して前方に照射されることにより、
図48(d)に示すように、スポット用配光パターンP
SPOT及びミッド用配光パターンP
MIDに重畳される、ミッド用配光パターンP
MIDより拡散したワイド用配光パターンP
WIDEを形成する第3光学系を構成している。
【0272】
上入射面42cは、光源14からの光のうち第1入射面12aに入射しない光(主に、上方向に広がる光Ray
WIDE。
図50(c)参照)が屈折して第1レンズ部12A1内部に入射する面で、
図50(c)に示すように、光源14に向かって凸の曲面形状の面(例えば、自由曲面)として構成されている。
【0273】
上面44cは、
図46、
図49(c)に示すように、側面視で、第1レンズ部12A1の第1前端部12A1bb側から第1後端部12A1aa側に向かって斜め下方に傾いた外側に向かって凸の曲面形状の面として構成されている。また、上面44cは、
図47(a)に示すように、上面視で、第1レンズ部12A1の第1前端部12A1bb側から第1後端部12A1aa側に向かうに従ってその左縁及び右縁がテーパー状に狭まる形状の面として構成されている。具体的には、上面44cは、上入射面42cから第1レンズ部12A1内部に入射した光源14(正確には、基準点F)からの光Ray
WIDEが、鉛直方向に関し、平行光となるようにその面形状が構成されている。また、上面44cは、水平方向に関し、
図49(c)中、紙面に直交する方向に延びている。
【0274】
なお、上面44cは、上入射面42cから第1レンズ部12A1内部に入射した光源14からの光Ray
WIDEを第2出射面12A2b(延長領域12A2b4)に向けて内面反射(全反射)する反射面で、金属蒸着は用いていない。
【0275】
延長領域12A2b4は、第2出射面12A2b(半円柱状の領域12A2b3)の上縁から上方斜め後方に延長された平面形状の面として構成されている。もちろん、これに限らず、曲面形状の面として構成されていてもよい。なお、半円柱状の領域12A2b3と延長領域12A2b4とは、段差無く滑らかに接続されている。
【0276】
上面44cは、
図49(c)に示すように、カットオフライン上方の道路標識等を照射するオーバーヘッドサイン用配光パターンP
OHを形成するためのオーバーヘッドサイン用反射面44c1を含んでいる。オーバーヘッドサイン用反射面44c1は、上入射面42cから第1レンズ部12A1内部に入射し、オーバーヘッドサイン用反射面44c1で反射され、連結部12A3内部を進行した光源14からの光Ray
OHが、第2出射面12A2b(延長領域12A2b4)から出射して前方斜め上方に照射されることにより、
図48(d)に示すように、カットオフライン上方にオーバーヘッドサイン用配光パターンP
OHを形成するようにその面形状が構成されている。なお、オーバーヘッドサイン用反射面44c1は適宜省略することができる。
【0277】
なお、第3光学系としては、上記に代えて、上入射面42c、連結部12A3、及び、第2出射面12A2b(延長領域12A2b4)を含み、上入射面42cから第1レンズ部12A1内部に入射した光源14からの光Ray
WIDEが内面反射されることなく連結部12A3内部を進行し、第2出射面12A2b(延長領域12A2b4)から直接出射して前方に照射されることにより、
図48(d)に示すように、ワイド用配光パターンP
WIDEを形成する光学系を用いてもよい。
【0278】
上記構成の第3光学系により、仮想鉛直スクリーン上に、
図48(d)に示すワイド用配光パターンP
WIDE及びオーバーヘッドサイン用配光パターンP
OHが形成される。
【0279】
ワイド用配光パターンP
WIDEの鉛直方向寸法は、
図48(d)では約15度であるが、これに限らず、例えば、上入射面42cの面形状(例えば、鉛直方向の曲率)を調整することで自在に調整することができる。
【0280】
また、ワイド用配光パターンP
WIDEの上端縁の位置は、
図48(d)では水平線に沿っているが、これに限らず、上面44cの傾きを調整することで自在に調整することができる。
【0281】
本実施形態では、上面44cは、
図46に示すように、基準軸AX1を含む鉛直面により左右に区画された左上面44c2及び右上面44c3を含んでおり、左上面44c2及び右上面44c3それぞれの傾きは、相互に異なっている。具体的には、左上面44c2を右上面44c3より下に傾けている。これにより、
図48(d)に示すように、ワイド用配光パターンP
WIDEを、上端縁に、鉛直線に対して左側の上端縁が右側の上端縁より低い左右段違いのカットオフラインを含むものとすることができる(右側通行の場合)。もちろん、これとは逆に、左上面44c2を右上面44c3より上に傾けてもよい。これにより、ワイド用配光パターンP
WIDEを、鉛直線に対して左側の上端縁が右側の上端縁より高い左右段違いのカットオフラインを含むものとすることができる(左側通行の場合)。
【0282】
また、ワイド用配光パターンP
WIDEの右端及び左端は、
図48(d)では右約65度及び左約65度まで延びているが、これに限らず、例えば、上入射面42c(例えば、そ水平方向の曲率)を調整することで自在に調整することができる。
【0283】
本実施形態によれば、上記第2実施形態の効果に加え、さらに、次の効果を奏することができる。
【0284】
すなわち、第1に、視点位置が変わってもライン状の発光見栄えを維持することができるレンズ体12J及びこれを備えた車両用灯具10Jを提供することができる。第2に、均一発光(又は略均一発光)の見栄えを実現することができるレンズ体12J及びこれを備えた車両用灯具10Jを提供することができる。第3に、光源14からの光をレンズ体12J内部に取り込む効率が飛躍的に向上する。第4に、所定方向にライン状に延びる一体感のある見栄えのレンズ体12J及びこれを備えた車両用灯具10Jを提供することができる。第5に、最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面12A2b3(半円柱状の屈折面)であるにもかかわらず、水平方向及び鉛直方向に集光したスポット用配光パターンP
SPOTを形成することができるレンズ体12J及びこれを備えた車両用灯具10Jを提供することができる。
【0285】
視点位置が変わってもライン状の発光見栄えを維持することができるのは、1つのレンズ体12Jが、拡散の程度が異なる複数の配光パターン、すなわち、スポット用配光パターンP
SPOT(本発明の第1配光パターンに相当)、ミッド用配光パターンP
MID(本発明の第2配光パターンに相当)及びワイド用配光パターンP
WIDE(本発明の第3配光パターンに相当)を形成する複数の光学系、すなわち、第1光学系(
図49(a)参照)、第2光学系(
図49(b)参照)及び第3光学系(
図49(c)参照)を備えていることによるものである。なお、この効果を奏するには、最低限、第1光学系(
図49(a)参照)及び第2光学系(
図49(b)参照)を備えていればよく、第3光学系(
図49(c)参照)は適宜省略することができる。
【0286】
均一発光(又は略均一発光)の見栄えを実現することができるのは、各々の入射面、すなわち、第1入射面12a、左右一対の入射面42a、42b及び上入射面42cから第1レンズ部12A1内部に入射した光源14からの光が各々の反射面、すなわち、下反射面12b、左右一対の側面44a、44b及び上面44cで反射される結果、レンズ体12J内部で多点発光する(
図51参照)ことに加え、各々の反射面、すなわち、下反射面12b、左右一対の側面44a、44b及び上面44cからの反射光が、最終的な出射面である第2出射面12A2bのほぼ全域から一様に出射すること、すなわち、下反射面12bからの反射光が最終的な出射面である第2出射面12A2b(半円柱状の領域12A2b3)のうち一部領域A1(
図47(b)参照)から出射し、左右一対の側面44a、44bからの反射光が、主に最終的な出射面である第2出射面12A2b(半円柱状の領域12A2b3)のうち一部領域A1の左右両側の領域A2、A3(
図47(b)参照)から出射し、上面44cからの反射光が、主に最終的な出射面である第2出射面12A2b(各領域A1〜A3の上方の領域A4。すなわち、延長領域12A2b4)から出射することによるものである。なお、この効果を奏するには、最低限、第1光学系(
図49(a)参照)及び第2光学系(
図49(b)参照)を備えていればよく、第3光学系(
図49(c)参照)は適宜省略することができる。
【0287】
光源14からの光をレンズ体12J内部に取り込む効率が飛躍的に向上するのは、各々の入射面、すなわち、第1入射面12a、左右一対の入射面42a、42b及び上入射面42cが光源14を取り囲むように配置されている(
図50(a)〜
図50(c)参照)ことによるものである。なお、この効果を奏するには、最低限、第1入射面12a及び左右一対の入射面42a、42bを備えていればよく、上入射面42cは適宜省略することができる。
【0288】
本実施形態の車両用灯具10J(レンズ体12J)は、以上の考え方を、第1出射面12A1a及び第2出射面12A2bを含む第2実施形態の車両用灯具10Aに適用したものに相当するが、これに限らない。すなわち、以上の考え方は、第1出射面12A1a及び第2出射面12A2bを含む第2実施形態の車両用灯具10A以外の、例えば、1つの出射面を含む第1実施形態の車両用灯具10に適用することもできる。
【0289】
所定方向にライン状に延びる一体感のある見栄えとすることができるのは、最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面12A2b3(半円柱状の屈折面)として構成されていることによるものである。
【0290】
最終的な出射面である第2出射面12A2bが半円柱状の面12A2b3(半円柱状の屈折面)であるにもかかわらず、水平方向及び鉛直方向に集光したスポット用配光パターンP
SPOTを形成することができるのは、水平方向の集光を主に第1レンズ部12A1の第1出射面12A1a(半円柱状の屈折面)が担当し、鉛直方向の集光を主にレンズ体12Jの最終的な出射面である第2レンズ部12A2の第2出射面12A2b(半円柱状の屈折面)が担当することによるものである。すなわち、集光機能を分解したことによるものである。
【0291】
なお、上記第1〜第9実施形態及びその各変形例で説明した各考え方、例えば、第5実施形態で説明した「キャンバー角を付与する」という考え方、及び、このキャンバー角の付与に伴い発生する上記ボケを上記のようにして改善するという考え方、第6実施形態で説明した「スラント角を付与する」という考え方、及び、このスラント角の付与に伴い発生する上記回転を上記のようにして抑制するという考え方、第7実施形態で説明した「キャンバー角及びスラント角を付与する」という考え方、及び、このキャンバー角及びスラント角の付与に伴い発生する上記ボケ及び回転を、上記のようにして改善及び抑制するという考え方を、本実施形態の車両用灯具10J(レンズ体12J)に適用できるのは無論である。
【0292】
また、上記第10実施形態では、第2光学系(
図49(b)参照)がミッド用配光パターンP
MIDを形成するように構成され、第3光学系(
図49(c)参照)がワイド用配光パターンP
WIDEを形成するよう構成されている例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0293】
例えば、これとは逆に、第2光学系(
図49(b)参照)がワイド用配光パターンP
WIDEを形成するように構成され、第3光学系(
図49(c)参照)がミッド用配光パターンP
MIDを形成するように構成されていてもよい。
【0294】
例えば、第2光学系を構成する左右一対の入射面42a、42b及び/又は左右一対の側面44a、44bの面形状(例えば、水平方向の曲率)を
図54(a)に示すように調整することで、配光パターンを(例えば、水平方向に)拡げることができ、
図54(b)に示すように調整することで、配光パターンを(例えば、水平方向に)狭くすることができる。したがって、第2光学系を構成する左右一対の入射面42a、42b及び/又は左右一対の側面44a、44bの面形状(例えば、水平方向の曲率)を調整することで、ミッド用配光パターンに限らず、ワイド用配光パターンを形成することもできる。
【0295】
同様に、第3光学系を構成する上入射面42cの面形状(例えば、水平方向の曲率)を
図55(a)に示すように調整することで、配光パターンを(例えば、水平方向に)拡げることができ、
図55(b)に示すように調整することで、配光パターンを(例えば、水平方向に)狭くすることができる。したがって、第3光学系を構成する上入射面42bの面形状(例えば、水平方向の曲率)を調整することで、ワイド用配光パターンに限らず、ミッド用配光パターンを形成することもできる。
【0296】
もちろん、第2光学系(
図49(b)参照)及び第3光学系(
図49(c)参照)が、いずれもワイド用配光パターンP
WIDEを形成するように構成されていてもよい。逆に、第2光学系(
図49(b)参照)及び第3光学系(
図49(c)参照)が、いずれもミッド用配光パターンP
MIDを形成するように構成されていてもよい。
【0297】
上記実施形態及び各変形例で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができる。
【0298】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。