特許第6260102号(P6260102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6260102
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】ブロー成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/04 20060101AFI20180104BHJP
   B29C 49/78 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   B29C49/04
   B29C49/78
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-82011(P2013-82011)
(22)【出願日】2013年4月10日
(65)【公開番号】特開2014-201055(P2014-201055A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年4月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 健司
(72)【発明者】
【氏名】松場 明彦
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−160719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/04
B29C 49/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑化された樹脂を貯留部に一定量貯留し、前記貯留部に貯留した一定量の樹脂を環状の隙間からプランジャーにより下方に一気に押し出して筒状のパリソンを得る押出機と、前記パリソンを複数の分割型で挟むと共に前記パリソンに加圧空気を吹き込んで中空成形体を得る成形金型と、を有するブロー成形装置であって、
前記パリソンの長さを調整するための長さ調整手段と、
前記環状の隙間から押し出される前記パリソンの長さを検出する長さ検出手段と、
前記長さ調整手段の動作を制御するパリソン制御手段と、
前記成形金型の動作を制御する金型制御手段と、を有し、
前記長さ検出手段は、
前記パリソンの長さ方向に沿って配置される複数のセンサによって構成されるとともに、前記押出機による前記一定量の樹脂の押し出しが完了した時点で前記パリソンの長さを検出するものであり、
前記パリソン制御手段は、
前記長さ検出手段により検出された前記パリソンの長さが、予め定められた適正長さよりも短いときは、前記長さ調整手段によって、次回の前記パリソンの長さが長くなるように調整する一方、
前記長さ検出手段により検出された前記パリソンの長さが、前記適正長さよりも長いときは、前記長さ調整手段によって、次回の前記パリソンの長さが短くなるように調整
前記金型制御手段は、
前記長さ検出手段により検出された前記パリソンの長さが、予め定められた成形用適正長さよりも長いとき、または、前記成形用適正長さよりも短いときは、ブロー成形を行わないように前記成形金型を制御する
ことを特徴とするブロー成形装置。
【請求項2】
前記長さ調整手段は、前記環状の隙間を調整可能な隙間調整手段であって、
前記パリソン制御手段は、
前記長さ検出手段により検出された前記パリソンの長さが、予め定められた適正長さよりも短いときは、前記隙間調整手段によって、次回の前記パリソンの押し出し時における前記環状の隙間を狭める一方、
前記長さ検出手段により検出された前記パリソンの長さが、前記適正長さよりも長いときは、前記隙間調整手段によって、次回の前記パリソンの押し出し時における前記環状の隙間を広げる、
ことを特徴とする請求項1に記載のブロー成形装置。
【請求項3】
前記適正長さは、下限値および上限値で定められる範囲である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブロー成形装置。
【請求項4】
前記成形用適正長さは、下限値および上限値で定められる範囲であって前記適正長さを含む、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のブロー成形装置。
【請求項5】
前記貯留部は、環状の貯留部であり、
前記プランジャーは、リングプランジャーである、
ことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のブロー成形装置。
【請求項6】
前記中空成形体は、前記パリソンの長さ方向に沿って長い長尺物である、
ことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のブロー成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形装置に関し、より詳細には、中空成形体の量産製造において、パリソンの肉厚を安定的に保つ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブロー成形において、パリソンの寸法を制御する各種の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、パリソンの押し出し方向に配列された複数個の光電センサを用いて、パリソンの長さを制御する中空成形機が開示される。この中空成形機によれば、成形品の形状が変化した場合などにおいて、光電センサの位置を調整する必要がなくなると共に、パリソンの長さを一定に制御するための制御定数などの設定を自動的に行うことができる。したがって、テスト成形工程における成形条件の設定が容易になると共に、その設定に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0004】
ところで、中空成形体の品質向上が求められる中、量産製造される中空成形体の肉厚の安定化が求められている。中空成形体の肉厚を安定化するには、パリソンの肉厚を安定的に保つ技術が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3158143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、パリソンの長さを一定に制御する技術であり、パリソンの肉厚を制御することまでは考慮していない。このため、ブロー成形を用いた中空成形体の量産製造において、パリソンの肉厚を安定的に保つことができる技術が望まれる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、中空成形体の量産製造において、パリソンの肉厚を適正な厚みに安定的に保つことができ、中空成形体の肉厚の安定化が実現できるブロー成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するため、本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明は、可塑化された樹脂を一定量貯留し、この貯留した一定量の樹脂を環状の隙間から下方に押し出して筒状のパリソンを得る押出機と、前記パリソンを複数の分割型で挟むと共に前記パリソンに加圧空気を吹き込んで中空成形体を得る成形金型と、を有するブロー成形装置であって、前記パリソンの長さを調整するための長さ調整手段と、前記環状の隙間から押し出される前記パリソンの長さを検出する長さ検出手段と、前記長さ調整手段の動作を制御するパリソン制御手段と、を有し、前記パリソン制御手段は、前記長さ検出手段により検出された前記パリソンの長さが、予め定められた適正長さよりも短いときは、前記長さ調整手段によって、次回の前記パリソンの長さが長くなるように調整する一方、前記長さ検出手段により検出された前記パリソンの長さが、前記適正長さよりも長いときは、前記長さ調整手段によって、次回の前記パリソンの長さが短くなるように調整する、ことを特徴とする。
【0009】
この構成よれば、押出機より押し出されるパリソンの長さを調整することによって、パリソンの長さの変動を抑制し、パリソンの長さを適正長さ付近に保つことができる。したがって、パリソンの適正な肉厚に対応させて適正長さを定めておくことにより、パリソンの肉厚を適正な厚みに安定的に保つことができる。
【0010】
(2)本発明では、(1)の構成において、前記長さ調整手段は、前記環状の隙間を調整可能な隙間調整手段であって、前記パリソン制御手段は、前記長さ検出手段により検出された前記パリソンの長さが、予め定められた適正長さよりも短いときは、前記隙間調整手段によって、次回の前記パリソンの押し出し時における前記環状の隙間を狭める一方、前記長さ検出手段により検出された前記パリソンの長さが、前記適正長さよりも長いときは、前記隙間調整手段によって、次回の前記パリソンの押し出し時における前記環状の隙間を広げる、ことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、予め定められた適正長さに対し、検出されたパリソンの長さが短いときは、次回のパリソンの押し出し時における環状の隙間を狭めることにより、次回のパリソンを長く押し出すことができる。一方、検出されたパリソンの長さが適正長さよりも長いときは、次回のパリソンの押し出し時における環状の隙間を広げることにより、次回のパリソンを短く押し出すことができる。
【0012】
(3)本発明では、(1)または(2)の構成において、前記適正長さは、下限値および上限値で定められる範囲であることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、適正長さを下限値および上限値で定められる範囲としたので、パリソン制御手段は、パリソンの寸法のばらつきを考慮した上で、パリソンの肉厚を適正な厚みに安定的に保つことができる。
【0014】
(4)本発明は、(1)〜(3)のいずれかの構成において、前記成形金型の動作を制御する金型制御手段を有し、前記長さ検出手段は、前記押出機による前記一定量の樹脂の押し出しが完了した時点で前記パリソンの長さを検出するものであり、前記金型制御手段は、前記長さ検出手段により検出された前記パリソンの長さが、予め定められた成形用適正長さよりも長いとき、または、前記成形用適正長さよりも短いときは、ブロー成形を行わないように前記成形金型を制御することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、例えば、中空成形体において一定の成形品質を確保するための限界値として成形用適正長さを定めることにより、パリソンの長さが成形用適正長さよりも長いとき、または、成形用適正長さよりも短いときは、ブロー成形を行わず中空成形体を成形しないように、成形金型を制御する。その結果、一定の成形品質が確保されない中空成形体が生産ライン上に流れることを防ぐことができる。
【0016】
(5)本発明では、(4)の構成において、前記成形用適正長さは、下限値および上限値で定められる範囲であって前記適正長さを含むことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、金型制御手段は、パリソンの寸法のばらつきを考慮した上で、ブロー成形を行うか否かを判断することができる。また、成形用適正長さが、適正長さを含む範囲であるため、中空成形体に一定の品質が確保される場合であっても、パリソンの長さが適正長さから外れるときは、次回のパリソンの長さを適正長さ側に寄せる制御を行うことができる。これにより、一定の品質が確保されない中空成形体をより低減し、量産品質をより高めることができる。
【0018】
(6)本発明では、(1)〜(5)のいずれかの構成において、前記押出機は、前記可塑化された樹脂を一定量貯留する環状の貯留部を有することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、パリソンの形態が安定し易い環状の貯留部を採用することで、パリソンの肉厚をより安定的に適正な厚みに保つことができる。
【0020】
(7)本発明では、(1)〜(6)のいずれかの構成において、前記中空成形体は、前記パリソンの長さ方向に沿って長い長尺物であることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、中空成形体が、いわゆるドローダウン(パリソンが自重によって引き伸ばされる現象)の影響によって肉厚調整が難しい長尺物であっても、パリソンの肉厚を適正な厚みに安定的に保つことができ、中空成形体の肉厚の安定化を実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、中空成形体の量産製造において、パリソンの肉厚を適正な厚みに安定的に保つことができ、中空成形体の肉厚の安定化が実現できるブロー成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る実施形態のブロー成形装置の断面図である。
図2図1に示される成形金型の型締工程における断面図である。
図3図1に示される成形金型の成形工程における断面図である。
図4】ブロー成形装置の長さ検出手段の構成を説明する図である。
図5】ブロー成形装置の制御手段を示すブロック図である。
図6】制御手段における判定および制御内容を説明する表である。
図7】制御手段による作用を模式的に示す図である。
図8】ブロー成形装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態)
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について詳細に説明する。実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0025】
(ブロー成形装置10の全体構成)
実施形態のブロー成形装置10の全体構成を図1に基づいて説明する。
図1に示すように、ブロー成形装置10は、可塑化された樹脂を下方に押し出して円筒状のパリソン11を得る押出機20と、押し出されたパリソン11を挟むと共にパリソン11に加圧空気を吹き込んで中空成形体12(図3参照)を得る成形金型40とを有する。また、ブロー成形装置10は、パリソン11の長さLを検出する長さ検出手段13(図4参照)と、パリソン11の長さLを制御するパリソン制御手段15(図5参照)と、成形金型40の動作を制御する金型制御手段16(図5参照)とを有する。
【0026】
(押出機20の構成)
押出機20は、可塑化ユニツト17に接続される押出機本体21と、この押出機本体21の上部に設けられるリングプランジャー22と、押出機本体21の下部に設けられる成形ダイス23と、押出機本体21の内部を上下方向に沿って延びるギャップ調整ロッド25(本発明にいう「長さ調整手段(隙間調整手段)」に相当)と、このギャップ調整ロッド25を上下に移動させるロッド動作手段26とを有する。
【0027】
押出機本体21は、マンドレル21aとリングダイス21bによって構成される。成形ダイス23は、コア23aとダイス23bからなり、リングダイス21bの下部に着脱可能に取り付けられる。そして、押出機本体21の内部には、可塑化ユニツト17で可塑化された樹脂を貯留する環状の貯留部27が設けられ、成形ダイス23の内部には、環状の流路28が設けられる。
【0028】
環状の貯留部27は、主にマンドレル21a、リングプランジャー22、リングダイス21bによって囲われる空間であり、可塑化された樹脂を一定量貯留する。
【0029】
環状の流路28は、コア23aとダイス23bとの間に形成される空間であり、その下端部は、円環状のダイギャップ31(本発明にいう「環状の隙間」に相当)を形成する。ダイギャップ31の隙間寸法Cは、ロッド動作手段26によってギャップ調整ロッド25を昇降させることで調整される。
【0030】
なお、ロッド動作手段26は、任意の駆動手段によって構成可能であり、空圧または油圧式のシリンダユニット、モータ、各種動力伝達手段、または、これらの組み合わせなどで構成可能である。また、パリソン11に用いる樹脂は、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を含む各種の熱可塑性樹脂から選択可能である。
【0031】
(成形金型40の構成)
成形金型40は、互いに合わさる複数(この例では、2個)の第1分割型41および第2分割型42で構成される。これら第1分割型41および第2分割型42は、パリソン11を挟んで両側に配置され、それぞれ、第1成形面41aおよび第2成形面42aを有する。第1成形面41aの外周部には、第1ピンチオフ部41bが突出して設けられ、第2成形面42aの外周部には、第1ピンチオフ部41bに突き合わさる第2ピンチオフ部42bが突出して設けられる。
【0032】
また、成形金型40の所定位置(ここでは、第2分割型42)には、ブローピン43が設けられる。このブローピン43は、ピン動作手段45により第2成形面42aに対して出没可能であり、第2成形面42aから突出してパリソン11に突き刺さり、パリソン11の内側に加圧空気を吹き込む。この例では、ブローピン43を第2分割型42に設けたが、ブローピン43は、第1分割型41、あるいは、第1分割型41と第2分割型42の分割位置(いわゆるパーティングライン上)に設けてもよい。
【0033】
さらに、成形金型40の成形面の任意の位置(ここでは、第2分割型42の第2成形面42a)には、インサート部品18が装着される。インサート部品18は、樹脂など任意の材料からなる部品であり、ブロー成形時に中空成形体12(図3参照)と一体化される。この例では、インサート部品18を第2成形面42aに装着したが、第1成形面41aにインサート部品18を装着してもよい。
【0034】
(ブロー成形装置10の成形サイクル)
ここで、ブロー成形装置10を用いた成形例を図1図3に基づいて説明する。成形する中空成形体12の形態は、各種の形態から選択可能であるが、この例では、パリソン11の長さ方向(押し出し方向)に沿って長い長尺物である中空成形体12をブロー成形する。
【0035】
図1に示すように、可塑化ユニツト17で溶融混練された樹脂をスクリュー(図示省略)で環状の貯留部27に圧入すると共に、リングプランジャー22を上昇させ、環状の貯留部27に一定量の樹脂を貯留する。そして、リングプランジャー22を下降させることにより、環状の貯留部27に貯留された一定量の樹脂を、流路28を介してダイギャップ31から一気に押し出す。このようにして押し出された樹脂により、円筒状のパリソン11が下方に向けて成形される。
【0036】
次に、図2に示すように、押し出されたパリソン11を第1分割型41および第2分割型42の間に垂下させた後、第1分割型41および第2分割型42を型締めし、第1分割型41および第2分割型42でパリソン11を挟んで第1ピンチオフ部41bおよび第2ピンチオフ部42bを突き合わせる。そして、ブローピン43をパリソン11に突き刺し、ブローピン43を通じてパリソン11の内側に加圧空気を吹き込む。
【0037】
これにより、図3に示すように、第1分割型41および第2分割型42によって閉じられた空間(いわゆるキャビティ)で、パリソン11を膨らませて第1成形面41aおよび第2成形面42aに押し付け、第1成形面41aおよび第2成形面42aに沿って、長尺物である中空成形体12をブロー成形する。
【0038】
次に、第1分割型41および第2分割型42を型開きし、成形金型40から中空成形体12を取り出す。このような成形サイクルを繰り返し行うことで、中空成形体12を連続的に生産することができる。
【0039】
(適正範囲A,Bおよび長さ検出手段13の構成)
続いて、適正範囲A,Bおよび長さ検出手段13の構成を図4に基づいて説明する。
【0040】
ブロー成形装置10においては、貯留した一定量の樹脂を押し出す押出機20を採用したので、押し出されるパリソン11は、ダイギャップ31の隙間寸法Cが狭い(パリソン11の肉厚が薄い)ほど、長さLが長くなり、ダイギャップ31の隙間寸法Cが広い(パリソン11の肉厚が厚い)ほど、長さLが短くなる。本実施形態では、このようなパリソン11の長さLとパリソン11の肉厚との相関関係に基づいて、長さL1〜L4の限界値を設け、これら長さL1〜L4によって2つの適正範囲A,Bを予め定めている。
【0041】
図4に示すように、適正範囲A(本発明にいう「適正長さ」に相当)は、下限値を長さL2とし、上限値をL3とした範囲である。ここでは、長さL2をパリソン11の長さLの規格下限値とし、長さL3をパリソン11の長さLの規格上限値として定める。そして、適正範囲Aは、パリソン11の長さLが適正範囲Aに収まっていれば、パリソン11の肉厚も規格範囲に収まるように、パリソン11の長さLとパリソン11の肉厚との相関関係に基づいて設定されている。
【0042】
一方、適正範囲B(本発明にいう「成形用適正長さ」に相当)は、下限値を長さL1とし、上限値を長さL4とした範囲であり、適正範囲Aを含む。ここでは、中空成形体12において一定の成形品質を確保するためのパリソン11の長さLの下限値を長さL1とし、上限値を長さL4として定める。すなわち、適正範囲Bは、パリソン11の長さLが適正範囲Bに収まっていれば、パリソン11の肉厚も成形品質上、問題の無い範囲に収まるように、パリソン11の長さLとパリソン11の肉厚との相関関係に基づいて設定されている。
【0043】
長さ検出手段13は、パリソン11の下部を挟んで両側に配置される複数組(この例では、4組)の光センサ13a〜13dによって構成される。複数組の光センサ13a〜13dは、パリソン11の長さ方向(押し出し方向)に沿って等間隔に配置され、それぞれ、発光部13a1〜13d1と、この発光部13a1〜13d1からの光を受光可能な受光部13a2〜13d2とからなる。各光センサ13a〜13dは、高さ方向において、長さL1〜L4に相当するパリソン11のそれぞれの下端位置に配置されており、各受光部13a2〜13d2における受光の有無によって、パリソン11の長さLが適正範囲Aの範囲内であるか、適正範囲Aの範囲外であるかを検出可能であり、また、パリソン11の長さLが適正範囲Bの範囲内であるか、適正範囲Bの範囲外であるかを検出可能である。
【0044】
このような複数組の光センサ13a〜13dは、例えば、成形金型40(図1参照)の開閉方向に対して直交する方向に配置することができる。なお、この例では、長さ検出手段13を光センサ13a〜13dで構成した例を示したが、長さ検出手段13は、この他、画像センサなどで構成してもよい。
【0045】
(パリソン制御手段15、金型制御手段16の構成)
続いて、パリソン制御手段15、金型制御手段16の構成を図5図7に基づいて説明する。
【0046】
図5に示すように、パリソン制御手段15は、長さ検出手段13およびロッド動作手段26に接続されており、各光センサ13a〜13dからの情報に基づいて、ロッド動作手段26の動作を制御する。一方、金型制御手段16は、長さ検出手段13およびピン動作手段45に接続されており、各光センサ13a〜13dからの情報に基づいて、ピン動作手段45の動作を制御する。
【0047】
図6に示すように、金型制御手段16は、各光センサ13a〜13dからの情報に基づいて、パリソン11の長さLが適正範囲Bの範囲内であるか、適正範囲Bの範囲外であるかを判定し、この判定結果に基づいて、ピン動作手段45(図1参照)の動作を制御する。より具体的には、L1≦L≦L4の場合、適正範囲Bの範囲内(○)であると判定し、通常通り、ブローピン43(図1参照)から加圧空気を噴射させるようにピン動作手段45(図1参照)を制御して、ブロー成形を行う。一方、パリソン11の長さLがL1よりも短いとき、および、パリソン11の長さLがL4よりも長いときは、適正範囲Bの範囲外(×)であると判定し、ブローピン43(図1参照)を駆動しない、または、ブローピン43(図1参照)から加圧空気を噴射させないようにピン動作手段45(図1参照)を制御して、今回のブロー成形を行わない。
【0048】
パリソン制御手段15は、各光センサ13a〜13dからの情報に基づいて、パリソン11の長さLが適正範囲Aの範囲内であるか、適正範囲Aの範囲外であるかを判定し、この判定結果に基づいて、ロッド動作手段26(図1参照)の動作を制御する。より具体的には、L2≦L≦L3の場合、適正範囲Aの範囲内(○)であると判定し、ロッド動作手段26(図1参照)を動作させず、ダイギャップ31の隙間寸法C(図1参照)をそのまま維持する。
【0049】
一方、パリソン11の長さLがL2よりも短いときは、適正範囲Aの範囲外(×)であると判定し、ロッド動作手段26(図1参照)でギャップ調整ロッド25(図1参照)を上昇させ、次回のパリソン11の押し出し時におけるダイギャップ31の隙間寸法C(図1参照)を狭める。例えば、L<L1であるときは、ダイギャップ31の隙間寸法C(図1参照)を所定の割合で(例えば、0.5%)狭め、L1≦L<L2であるときは、ダイギャップ31の隙間寸法C(図1参照)を所定の割合で(例えば、0.2%)狭める。
【0050】
また、パリソン11の長さLがL3よりも長いときは、適正範囲Aの範囲外(×)であると判定し、ロッド動作手段26(図1参照)でギャップ調整ロッド25(図1参照)を下降させ、次回のパリソン11の押し出し時におけるダイギャップ31の隙間寸法C(図1参照)を広げる。例えば、L>L4であるときは、ダイギャップ31の隙間寸法C(図1参照)を所定の割合で(例えば、0.5%)広げ、L3<L≦L4であるときは、ダイギャップ31の隙間寸法C(図1参照)を所定の割合で(例えば、0.2%)広げる。
【0051】
以上のパリソン制御手段15および金型制御手段16により、本実施形態では、図7に示すように、例えば、パリソン11a,11eの場合は、適正範囲Bに収まるように、パリソン11b,11dの場合は、適正範囲A(長さL2〜L3)に収まるように、パリソン11の長さを制御する。より好適には、規格中心値に近い長さのパリソン11cが常時押し出されるように制御する。
【0052】
(ブロー成形装置10の動作例)
次に、パリソン制御手段15および金型制御手段16により制御されるブロー成形装置10の動作例を図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0053】
図8に示すように、スタートしたら、ステップS1で、押出機20からパリソン11を押し出す。次に、ステップS2で、一定量の樹脂の押し出しが完了した時点(リングプランジャー22を最も下降させた時点)で、パリソン11の長さLを長さ検出手段13によって検出する。
【0054】
ステップS3では、パリソン11の長さLが適正範囲Bの範囲内であるか否かを判断する。パリソン11の長さLが適正範囲Bの範囲内であるときは、ステップS4に進む。ステップS4では、成形金型40でパリソン11を挟み、ブローピン43を通じてパリソン11の内側に加圧空気を供給し、ブロー成形を行い、ステップ5に進む。
【0055】
一方、ステップS3において、パリソン11の長さLが適正範囲Bの範囲外であるときは、ステップS6に進む。ステップS6では、ロッド動作手段26(図1参照)でギャップ調整ロッド25を昇降させ、次回のパリソン11の押し出し時におけるダイギャップ31の隙間寸法Cを調整し、ステップ7に進む。
【0056】
ステップS5では、パリソン11の長さLが適正範囲Aの範囲内であるか否かを判断する。パリソン11の長さLが適正範囲Aの範囲内であるときは、ステップS7に進む。
【0057】
一方、ステップS5において、パリソン11の長さLが適正範囲Aの範囲外であるときは、ステップS6に進み、次回のパリソン11の押し出し時におけるダイギャップ31の隙間寸法Cを調整し、ステップ7に進む。
【0058】
ステップ7では、ブロー成形装置10の運転が停止されたか否かを判断し、ブロー成形装置10が停止されないときは、ステップS1に戻り、ステップS1〜S7を繰り返す。ブロー成形装置10が停止されたときは、制御を終了する。
【0059】
(実施形態の効果)
以上、説明したブロー成形装置10の効果について述べる。
ブロー成形装置10では、予め定められた適正範囲Aに対し、検出されたパリソン11の長さLが短いときは、次回のパリソン11の押し出し時におけるダイギャップ31の隙間寸法Cを狭めることにより、次回のパリソン11を長く押し出すことができる。一方、検出されたパリソン11の長さLが適正範囲Aよりも長いときは、次回のパリソン11の押し出し時におけるダイギャップ31の隙間寸法Cを広げることにより、次回のパリソン11を短く押し出すことができる。このようにして、本実施形態では、押出機20より押し出されるパリソン11の長さLの変動を抑制し、パリソン11の長さLを適正範囲Aに保つことができる。そして、押し出されるパリソン11において、パリソン11の長さLとパリソン11の肉厚は相関関係にあることから、パリソン11の適正な肉厚に合わせて適正範囲Aを定めておくことにより、結果的に、パリソン11の肉厚を適正な厚みに安定的に保つことができる。
【0060】
また、適正範囲Aを下限値および上限値で定められる範囲としたので、パリソン11の寸法のばらつきを考慮した上で、パリソン11の肉厚を適正な厚みに安定的に保つことができる。
【0061】
また、中空成形体12において一定の成形品質を確保するための限界値として別の適正範囲Bを定めることにより、パリソン11の長さLが適正範囲Bよりも長いとき、または、適正範囲Bよりも短いときは、ブロー成形を行わず中空成形体12を成形しないように、成形金型40を制御することができる。その結果、一定の成形品質が確保されない中空成形体12が生産ライン上に流れることを防ぐことができる。これに加え、インサート部品18を用いてブロー成形を行う場合、ブロー成形されずに残ったパリソン11とインサート部品18との溶着を防ぐことができるため、ブロー成形されずに残ったパリソン11を容易に再利用することができ、インサート部品18も再利用することができる。
【0062】
また、適正範囲Bを下限値および上限値で定められる範囲としたので、パリソン11の寸法のばらつきを考慮した上で、ブロー成形を行うか否かを判断することができる。また、適正範囲Bが適正範囲Aを含む範囲であるため、中空成形体12に一定の品質が確保される場合であっても、パリソン11の長さLが適正範囲Aの範囲から外れるときは、次回のパリソン11の長さLを適正範囲A付近に寄せる制御を行うことができる。これにより、一定の品質が確保されない中空成形体12をより低減し、量産品質をより高めることができる。
【0063】
さらに、押し出されるパリソン11の形態が安定し易い環状の貯留部27を採用することで、パリソン11の肉厚をより安定的に適正な厚みに保つことができる。
【0064】
加えて、中空成形体12が、いわゆるドローダウンの影響によって肉厚調整が難しい長尺物であっても、パリソン11の肉厚を適正な厚みに安定的に保つことができ、中空成形体12の肉厚の安定化を実現することができる。
【0065】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0066】
例えば、長さ調整手段は、隙間調整手段に限らず、樹脂温度調整手段でもよい。すなわち、樹脂温度調整手段は、押出時の樹脂温度をヒーターなどの加熱手段で調整するものである。つまり、押出時の樹脂温度は高い方が、ドローダウンにより押し出された樹脂が伸びやすく、パリソン長さが長くなる(肉厚は薄くなる)性質を利用する。具体的には、パリソン長さが短い場合は、次回の押出時において押し出される樹脂の温度が高くなるようにヒーターの出力を上げる。また、パリソン長さが長い場合は、次回の押出時において、押出時の樹脂温度が低くなるようにヒーターの出力を下げる。
【符号の説明】
【0067】
10 ブロー成形装置
11 パリソン
12 中空成形体
13 長さ検出手段
15 パリソン制御手段
16 金型制御手段
20 押出機
25 ギャップ調整ロッド(長さ調整手段)
27 環状の貯留部
31 ダイギャップ(環状の隙間)
40 成形金型
41 第1分割型(分割型)
42 第2分割型(分割型)
A 適正範囲(適正長さ)
B 適正範囲(成形用適正長さ)
L パリソンの長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8