(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているこの種のパーツフィーダでは、通常、エリアカメラのシャッタータイミングは撮像エリアとワーク位置をレーザセンサにより同期するため、複数のワークを所定の間隔を空けて搬送する必要があり、単位時間あたりのワークの搬送数が少なく、供給先へのワークの排出能力が低いという問題がある。
【0005】
この問題を解決するために、
図8に示すような構成のパーツフィーダ250とすることが考えられる。パーツフィーダ250では、複数のワーク3を搬送方向に沿って密接した状態で搬送するとともに、エリアカメラ202による撮像を連続して行う。そして、エリアカメラ202による撮像で得られた画像データを画像取込手段254aを介して取り込み、取り込んだ画像データに対して前処理手段254bによって2値化等の前処理を行う。その後、姿勢判別手段254cにより前処理後の画像データに基づいてワークの姿勢の判別を行う。また、パーツフィーダ250は、所定の排除位置に向けて圧縮空気を噴射する空気噴射ノズル50を有する排除手段5を備えており、撮像エリアに対するワーク3の位置を検出する位置検出手段254dにより撮像エリア内の所定位置にワーク3があると判断された場合、それから所定時間経過後に空気噴射ノズル50から圧縮空気を噴射するように構成されている。なお、排除対象であるワーク3の隣に存在するワーク3にまで圧縮空気が噴射されないようにするため、空気噴射ノズル50の噴射範囲が狭く絞られているとともに、前記所定時間は設定された搬送速度でワークが搬送されている場合にワーク3側面の搬送方向中央に向けて圧縮空気が噴射されるような時間に設定されている。
【0006】
ところで、上記パーツフィーダ250をはじめとするこの種のパーツフィーダでは、ワークの搬送速度は、パーツフィーダ本体の振幅や振動角、駆動周波数によりおおよそ決まるが、現実は異ワーク、同一ワーク製造プロセスでのばらつき、搬送路10の形状、搬送路10の表面処理等に起因するワーク3と搬送路10との摩擦係数や、湿度、静電気等、様々な要因に依存するものであり、これらの要因に加えて、さらに搬送路10上でワーク3同士が衝突する等の理由によりワーク3の搬送速度が設定値からずれてくることがあり、その場合、ワーク3側面の搬送方向中央ではなく端部に向けて圧縮空気が噴射されて、排除対象であるワーク3が水平回転しながら搬送路10上から排除されるようになる。そのため、排除対象であるワーク3によってそれと隣接するワーク3と干渉して当該隣接するワーク3の姿勢が変わり、不適切な姿勢のワーク3が供給先まで搬送されるおそれがある。これを防止するためにワーク3同士の間隔を空けて搬送し、排除対象であるワーク3が水平回転したとしても隣接するワーク3に回転モーメントが付与されないようにすることが考えられるが、その場合には前述のように単位時間あたりのワーク3の搬送数が減少して、ワークの供給先への排出効率が低下するという問題がある。
【0007】
また、従来のパーツフィーダには不適切な姿勢と判別されたワークを排除せず姿勢の矯正を行うことで不適切な姿勢のワークに対処するものがあり、例えば圧縮空気を下方から噴射してワークを反転させること等により姿勢を矯正する。このようなパーツフィーダでは、ワークの搬送速度が設定値からずれてくると、ワーク上の所望の位置に圧縮空気を噴射することができず、安定して姿勢の矯正を行うことができないおそれがある。
【0008】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、ワークの搬送速度が設定値から変化した場合でも、ワークの搬送方向における所望の位置に対して適切に排除又は姿勢矯正のための力を作用させることが可能なパーツフィーダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以上のような問題点を鑑み、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明に係るパーツフィーダは、
振動によってワークが搬送される搬送路を有するパーツフィーダ本体と、
搬送路に設定されたワーク処理位置を通過する前記ワークに対して、前記ワークを搬送路から排除若しくは搬送路上で姿勢矯正する処理を行うワーク処理手段と、
前記ワーク処理位置の上流側で前記ワークの良否判別処理を行うワークの良否判別手段と、
前記ワークの良否判別手段が所定の外観若しくは姿勢のものでないと判別すると、前記ワーク処理手段に前記処理を行わせるための指令を出力する指令出力手段と、
搬送路上を搬送されている前記ワークの搬送速度を検出する速度検出手段と、
前記速度検出手段の検出結果に基づいて、
前記搬送速度に応じて変化する遅れ要素を考慮して前記指令出力手段が前記指令を出力するタイミングを制御するタイミング制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
ここでワークの良否の判別とは、ワークの外観や姿勢が所定のものか否か判別することを示す。
【0012】
このように構成することで、パーツフィーダ本体の搬送路上を搬送するワークは、ワーク処理手段により所定の外観若しくは姿勢かどうか判別されるとともに速度検出手段により搬送速度が検出される。そして、ワーク処理手段が所定の外観若しくは姿勢のものでないと判別すると、速度検出手段により検出されたワークの搬送速度に基づいてタイミング制御手段によって制御されたタイミングで、指令出力手段より前記処理を行わせる指令が出力される。このように、ワーク処理手段よりも上流側で搬送されているワークの搬送速度に合わせて指令が出力されるタイミングを制御できることから、ワークの搬送速度が設定値からずれていたとしてもワークの所望の位置に対してワーク処理手段からの力を作用させることができる。したがって、複数のワークを密接した状態で搬送している場合でも、排除対象であるワークをその隣にあるワークの姿勢に影響を与えることなく排除や姿勢矯正に関する前記処理を行うことができる。
【0013】
具体的な実施の態様としては、前記ワーク処理手段は、前記ワーク処理位置で前記ワークに向けて付勢力を付与する付勢力付与手段を有し、この付勢力を作用させる目標位置を前記ワーク上に予め設定し、前記ワークの搬送方向に直交して配列された複数の撮像素子を有し、前記搬送路上に設定された撮像位置を通過する前記ワークを所定の間隔で撮像するラインカメラと、当該ラインカメラが前記ワークの前端から後端に亘る領域を間欠的に撮像した画像を即時に取り込む画像取込手段と、をさらに備え、
前記遅れ要素は、前記ワークが前記撮像位置を通過した時点で当該ワークの後端までの取り込みが完了したとみなして、前記画像取込手段による取り込みの完了から前記良否判別手段による前記良否判別処理の完了までに要する画像処理時間と、前記良否判別手段が所定の外観若しくは姿勢のものでないと判別してから指令出力手段が前記指令を出力するまでの待機時間と、前記指令を受けた前記ワーク処理手段が前記処理を通じて当該ワークに付勢力を作用させるまでの機械的な伝達時間とを少なくとも含む遅れ時間
であり、前記遅れ時間を経過する間に前記ワークが前記撮像位置から前記速度検出手段により検出される速度で移動した結果ワーク上に設定した前記目標位置に付勢力が作用するタイミングとなるように、前記タイミング制御手段が前記待機時間を設定する構成が挙げられる。
【0014】
タイミング制御手段に係るより具体的な構成としては、前記画像処理時間をtp(sec)、前記待機時間をtα(sec)、前記伝達時間をtd(sec)、前記速度検出手段により検出されたワークの搬送速度をVw(m/s)、前記撮像位置から前記ワーク処理位置までの距離をL(m)、ワークの後端から前記目標位置までの距離をLw(m)とした場合に、前記タイミング制御手段は下記式
tα={(L−Lw)/Vw}−tp−td
に基づいて前記待機時間tαを設定する構成が挙げられる。
【0015】
速度検出手段がラインカメラを利用して搬送速度の算出を行う構成とするためには、前記ラインカメラが前記ワークの前端側から後端側まで撮像した撮像回数を取得する撮像回数取得手段をさらに備え、前記速度検出手段が、前記ワークの搬送方向長さおよび前記ラインカメラの撮像間隔が与えられ、かつ前記撮像回数取得手段が取得した前記撮像回数が与えられることにより、当該撮像回数と前記ラインカメラの撮像間隔とに基づいて得られる撮像所要時間を当該ワークが撮像位置を通過するに要した時間とみなして、その撮像所要時間と前記ワークの搬送方向長さとに基づいて当該ワークの搬送速度を算出するように構成されることが好ましい。
【0016】
特に、速度検出手段とワークの良否判別手段とで用いるデータを共用して、ラインカメラによる撮像が開始されてから待機時間tαが設定されるまでの時間を短縮するためには、前記画像取込手段が取り込んだ画像データを撮像順につなぎ合わせて、単体のワークの略全体が現れた合成画像データを生成する前処理手段と、をさらに備え、前記撮像回数取得手段は、この合成画像データの画素数と1回の前記撮像により取得される画像データの画素数とに基づいて前記撮像回数を取得し、前記ワークの良否判別手段は、合成画像データに基づいて前記良否判別処理を行う構成とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明した本発明によれば、ワークの搬送速度に合わせて、ワークの排除や姿勢矯正に関する処理を行わせるための指令が出力されるタイミングを制御することができ、ワークの搬送速度が設定値から変化したとしてもワークの所望の位置に排除手段又は姿勢矯正手段からの付勢力を作用させることができるパーツフィーダを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施形態であるパーツフィーダ100は、パーツフィーダ本体1の搬送路10に沿って搬送物である複数のワーク3を図示しない供給先に向けて比較的高速で搬送するものであり、ワーク3は
図1における左から右へ密接した状態で搬送される。
【0021】
パーツフィーダ本体1は、前記搬送路10と駆動手段11とを含んで構成され、駆動手段11によって搬送路10を振動させることで搬送路10上にある複数のワーク3を搬送するものである。ワーク3は、その長手方向又は短手方向がワーク3の搬送方向と平行に搬送される。
【0022】
搬送路10上に設定された撮像位置(撮影点)P1の上方にはラインカメラ2が設けられている。このラインカメラ2は、ワーク3の搬送方向(搬送路10の延在方向)に直交して1列に並ぶ複数の感度の高い撮像素子を有し、搬送路10上を搬送されるワーク3の撮像を行う。ラインカメラ2の撮像範囲(撮像エリア)は、ワーク3の長手方向が搬送方向と平行である場合、ワーク3の搬送方向においてはワーク3の長手方向の一部を撮像する範囲、ワーク3の搬送方向に直交する方向においてはワーク3の短手方向全体を撮像する範囲に設定され、ワーク3の短手方向が搬送方向と平行である場合、ワーク3の搬送方向においてはワーク3の短手方向の一部を撮像する範囲、ワーク3の搬送方向に直交する方向においてはワーク3の長手方向全体を撮像する範囲に設定されている。
【0023】
このようなラインカメラ2を設置する位置は不適正な姿勢のワーク3を排除するタイミングをとる上で重要であり、ラインカメラ2を所望の位置に精度良く設置するために、搬送路10には
図2に示す計測手段(ラインカメラ用メジャー)10aが設けられている。計測手段10aは、ワーク3の搬送方向と直交する方向に延びる第1目盛10abと、一定距離毎の2進数のドット表示である第2目盛10acとが付与されたものであり、第1目盛10abを後述する排除位置(排除作用点)P2にあて、ラインカメラ2により取得された画像データにおいて排除位置P2近傍からラインカメラ2の下方に向かって延びる第2目盛10acを確認することで、排除位置P2から所望の距離に撮像位置P1を設定することができる。
【0024】
図1に示すラインカメラ2により取得される画像データは、撮像素子が網の目状に複数配置されて1つのワーク3全体を撮像範囲とするエリアカメラよりも画素数が少なく、データ量が少なくなっている。ラインカメラ2はワーク3が撮像位置P1に到達する前から一定間隔で連続して撮像を行うように動作するものであり、下流側へ向けて搬送されているワーク3が撮像位置P1を通過する間に複数回撮像を行ない、そのワーク3の前端3a(搬送方向下流側のワーク端部、
図3参照)から後端3b(搬送方向上流側のワーク端部、
図3参照)にわたって当該ワーク3の異なる位置がそれぞれ現れた複数の画像データを取得する。取得された画像データは、1回の撮像が行われるたびに後述する制御装置(コントローラ)4に転送される。
【0025】
なおラインカメラ2は、通常、撮像対象物の搬送速度が一定のものを撮像する場合、若しくは搬送速度が一定でなくてもエンコーダ等を使用して撮像対象物の速度若しくは位置との同期をとり、撮像する場合に使用されるものであり、搬送路10の振動によって搬送されるために撮像対象物であるワーク3の搬送速度が安定しにくいパーツフィーダでは一般的に使用し難いものであるが、本実施形態ではワーク3の前端3aおよび後端3bを捉えることで搬送速度ムラに起因したラインカメラ2の使いづらさを解消している。これについては後述する。
【0026】
図1に示す制御装置4は、図示しないCPUやメモリ、インターフェース等を備えた通常のマイクロコンピュータユニットにより構成されるもので、メモリ内に適宜のプログラムが格納されており、CPUは逐次そのプログラムを読み込み、周辺ハードリソースと協働して画像取込手段40と、前処理手段41と、姿勢判別手段44と、速度算出手段42と、指令出力手段45と、タイミング制御手段46としての役割を担う。
【0027】
画像取込手段40はラインカメラ2が取得した画像データを撮像が行われるたびに即時に制御装置4に取り込むものである。前処理手段41は、2値化処理手段としての2値化処理部41aと端部検出手段としての端部検出部41bと合成画像データ生成手段としての合成画像データ生成部41cとを有し、画像データが画像取込手段40を介して取り込まれると、2値化処理部41aはその画像データ毎に即時に2値化処理等の所定の前処理を行う。また、端部検出部41bは画像データにおいてワーク3の前端3a及び後端3b(
図3参照)を適宜の画像処理を通じて判別する。例えば、画像データではワーク3が現れている部分とワーク3以外のものが現れている部分(具体的には搬送路10)とでは色合い等が異なり、またワーク3を搬送方向に沿って密接に搬送している場合でもワーク3同士の間にはわずかに隙間ができていることから、ワーク3の前端3aまたは後端3bを撮像した画像データには、ワーク3の搬送方向に直交する方向に亘って色の濃さの異なる部分が現れる。端部検出部41bはこのような色の濃さの違い等から、画像データに現れたワーク3の前端3a及び後端3bを検出(画像判別)する。或いは、端部検出部41bが画像データにおいてワーク3の隅にあるR形状を判別することで前端3a及び後端3bを検出するように構成されてもよい。さらに合成画像データ生成部41cは、ワーク3の前端3aが現れた画像データから当該ワーク3の後端3bが現れた画像データまでを撮像順につなぎ合わせて、1つのワーク3の略全体が現れた2次元の画像データとして合成画像データを生成する。
【0028】
ワークの良否判別手段としての姿勢判別手段44は、このような合成画像データに基づいてワーク3の姿勢を判別(画像判別)する良否判別処理としての姿勢判別処理を行う。例えば、前述のメモリに適切な姿勢のワーク3の画像データを予め記憶しておき、合成画像データとメモリに記憶された画像データとをパターンマッチングにより比較することでワーク3の姿勢を判別する。なお、所定の姿勢以外の姿勢としては、例えば表裏が反転していたり、前後方向の向きが逆になっていることが挙げられる。このように画像取込手段40、前処理手段41及び姿勢判別手段44はワーク3の姿勢を判別する本発明のパーツフィーダ用画像処理装置8を構成するものである。本実施形態は、上記のように画像データにおいてワーク3の前端3aと後端3bとを検出する構成であることから、ワーク3の搬送速度が変化したとしてもワーク3の前端3aが現れた画像データから当該ワーク3の後端3bが現れた画像データまでを撮像順につなぎ合わせて1つのワーク3の略全体が現れた合成画像データを得ることができ、前述の理由から従来のパーツフィーダでは一般的に使用されないラインカメラ2を用いてワーク3の姿勢を判別することができる。
【0029】
速度算出手段42は、このように姿勢判別で利用する合成画像データを用いてワーク3の搬送速度を算出する速度算出処理を行うものであり、具体的には、下記式(1)に基づいてワーク3の搬送速度Vw(m/s)を算出する。
Vw=Lw1/S・A・・・(1)
【0030】
ここで、Sはラインカメラ2のスキャンレートすなわちラインカメラ2の撮像間隔(sec)であり、Aはラインカメラ2が単体のワーク3の略全体すなわちワーク3の前端側から後端側までを撮像するのに要する撮像回数(回)であり、Lw1はワーク3の搬送方向長さ(m)である。速度算出手段42は、ラインカメラ2の撮像間隔Sと撮像回数Aとの積である撮像所要時間をワーク3が撮像位置P1を通過するに要した時間とみなし、その撮像所要時間とワーク3の搬送方向長さLw1とに基づいてワーク3の搬送速度を算出している。ワーク3の搬送方向長さLw1は実物のワーク3のものが予め設定されている。なお、ワーク3の搬送方向長さLw1やラインカメラ2の撮像間隔Sは入力手段48を介して入力される。また、速度算出手段42は撮像回数取得手段としての撮像回数取得部42aを有し、撮像回数取得部42aは1回の撮像で得られる画像データの画素数と合成画像データの画素数とから撮像回数Aを算出する。
【0031】
このように画像取込手段40、前処理手段41及び速度算出手段42はワーク3の搬送速度を検出する本発明のパーツフィーダ用速度検出装置7を構成するものである。このパーツフィーダ用速度検出装置7により算出されたワーク3の搬送速度は、次に述べる不正姿勢にあるワーク3を排除するタイミング制御に用いられるほか、
図1に示す表示手段47に表示される。また、このようにして算出されたワーク3の搬送速度を、ワーク3が搬送されているか或いは停止しているかの判断材料として用いてもよい。
【0032】
指令出力手段45は、姿勢判定手段44が不適切な姿勢(不正姿勢)であると判定すると、
図1に示すワーク処理手段としての排除手段5に、搬送路10に設定されたワーク処理位置としての排除位置P2にあるワーク3を搬送路10上から排除する排除処理(排除動作)を行わせるための指令を出力する。排除手段5は、前記撮像位置P1よりもワーク3の搬送方向下流側において設定された排除位置P2に向けて圧縮空気を噴射する付勢力付与手段としての空気噴射ノズル50を有し、この空気噴射ノズル50から噴射された圧縮空気によりワーク3に付勢力を付与してワーク3を搬送路10上から排除する。空気噴射ノズル50は前記指令としての通電指令が入力されることで圧縮空気が噴射される。ワーク3上にはこの付勢力を作用させる目標位置Pw(
図3参照)が予め設定されており、本実施形態では排除手段5と対向するワーク3側面の搬送方向中央が目標位置Pwとして設定されている。この目標位置Pwに付勢力を作用させることで、搬送路10上から排除する際に排除対象であるワーク3が水平回転しながら移動することを抑制できる。なお、本発明における排除処理には、ワーク3を搬送路10上から搬送路10の下方にあるワーク受容部等に落下させる処理や、ワーク3を排除位置P2より枝分かれした何れかの搬送路10等に振り分ける処理等が含まれる。
【0033】
タイミング制御手段46は、速度算出手段42が算出したワーク3の搬送速度に基づいて指令出力手段45が噴射ノズル50に通電指令を出力するタイミングを制御する。具体的には、下記式(2)に基づいて、姿勢判別手段44が不正姿勢であると判別してから指令出力手段45が前記通電指令を出力するまでの待機時間tα(sec)(
図4参照)を算出し、この待機時間tαに基づいて指令出力手段45が空気噴射ノズル50に通電指令を出力するタイミングを制御することで、ワーク3の搬送速度が設定値から変化した場合でも前記目標位置Pwに付勢力を作用させることができるようにしている。
tα={(L−Lw2)/Vw}−tp−td・・・(2)
【0034】
ここで、Vwは搬送路10上を搬送されるワーク3の搬送速度(m/s)(
図3参照)であり、Lは撮像位置P1から排除位置P2までの距離(m)(
図3参照)であり、Lw2はワーク3の後端3bから目標位置Pwまでの距離(m)(
図3参照)であり、tpは前記画像取込手段40による取り込みの完了から前記姿勢判別手段44による姿勢判別の完了までに要する画像処理時間(sec)(
図4参照)である。画像処理時間tpは、前処理、姿勢判別処理及び速度算出処理にかかる時間が常に一定となるように構成されている場合には、固定値又は設定値となる。一方、搬送速度の変化を原因とする合成画像データの画素数の増減に応じて画像処理時間tpが変化するように構成されている場合には制御装置4内で画像処理時間tpのカウントを行う。tdは、前記通電指令を受けた排除手段5が排除処理を通じてワーク3に付勢力を作用させるまでの機械的な伝達時間(sec)(
図4参照)であり、排除手段5毎のパラメータ設定である。上記距離Lや伝達時間td等は入力手段48を介して入力される。なお、本実施形態では前記計測手段を用いて撮像位置P1から排除位置P2までの距離Lを求めているが、現物合わせで求めてもよい。
【0035】
以上のような構成のパーツフィーダ100における動作を、
図4に示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、以下では不適切な姿勢の1つのワーク3がラインカメラ2により撮像されてから排除手段5により排除されるまでの動作を記載している。
【0036】
搬送路10上を搬送されるワーク3を時刻t01で撮像すると、それによって取得された画像データは即時に画像取込手段40を介して取り込まれ(転送され)、その画像データに対して2値化処理部41aが2値化等の前処理を行う。また端部検出部41bがワーク3の前端3a及び後端3bの検出を行い、時刻t01に取得された画像データにおいてはワーク3の前端3aが検出される。時刻t01における撮像後も所定の間隔で順次撮像が行われ、そのたびに画像データの取り込み及び前処理が即時に行われていく。そして、時刻t02の撮像で取得された画像データにおいて端部検出部41bによりワーク3の後端3bが認識されると、時刻t03で合成画像データ生成部41cが合成画像データの生成を開始するとともに、この合成画像データに基づいて姿勢判別手段44による姿勢判別処理及び速度算出手段42による速度算出処理を行う。なお、時刻t03までの処理はハードウエア(例えばFPGA(field-programmable gate array))により行われ、時刻t03以後の処理はメモリに記憶させたプログラムを実行することによりソフト的に行われる。その後、タイミング制御手段46が待機時間tαを算出し、タイミング制御手段46は時刻t04から待機時間tαが経過した時刻t05に通電指令が出力されるように指令出力手段45を制御する。そして、これにより排除手段5の空気噴射ノズル50から圧縮空気が噴射され、時刻t05から伝達時間tdが経過した時刻t06でワーク3に空気による付勢力が実際に作用する。なお、仮に姿勢判別処理が行われたワーク3が適切な姿勢であり、姿勢判別処理により所定の姿勢であると判別された場合には、そのワーク3を搬送路10上から排除するための処理(通電指令の出力及び空気噴射ノズル50からの噴射)は行われない。なお、本解説では分かりやすく1つ分のワーク3で動作を説明したが、実際にはワーク3は密接した状態で連続して搬送されるため、撮像、画像データの取り込み、前処理までは常時連続して行われる一方、時刻t03以降の処理は1つ分のワーク3の画像データ取得後に1回ずつ行われる(間欠動作)。
【0037】
このようにして、姿勢が不適切なワーク3は排除され、適切な姿勢のワーク3のみが供給先に供給されることになる。
【0038】
以上のように本実施形態のパーツフィーダ100は、ワーク3が搬送される搬送路10を有するパーツフィーダ本体1と、搬送路10に設定されたワーク処理位置としての排除位置P2を通過するワーク3に対して、当該ワーク3を搬送路10から排除する排除処理を行うワーク処理手段としての排除手段5と、前記排除位置P2の上流側で良否判別処理としてワーク3の姿勢判別処理を行うワーク3の良否判別手段としての姿勢判別手段44と、前記姿勢判別手段44が所定の姿勢以外の不正姿勢であると判別すると、前記排除手段5に前記排除処理を行わせるための指令としての通電指令を出力する指令出力手段45と、搬送路10上を搬送されているワーク3の搬送速度を検出する速度検出手段としてのパーツフィーダ用速度検出装置7と、パーツフィーダ用速度検出装置7の検出結果に基づいて、前記指令出力手段45が前記通電指令を出力するタイミングを制御するタイミング制御手段46と、を備えるように構成したものである。
【0039】
このように構成することで、パーツフィーダ本体の搬送路10上を搬送するワーク3は、排除手段5により姿勢が判別されるとともにパーツフィーダ用速度検出装置7により搬送速度が算出される。そして、排除手段5が不正姿勢であると判別すると、パーツフィーダ用速度検出装置7により検出されたワーク3の搬送速度に基づいてタイミング制御手段46によって制御されたタイミングで、指令出力手段45より排除処理を行わせる通電指令が出力される。このように、排除手段5よりも上流側で搬送されているワーク3の搬送速度に合わせて通電指令が出力されるタイミングを制御できることから、ワーク3の搬送速度が設定値からずれていたとしてもワーク3の所望の位置に対して排除手段5からの付勢力を作用させることができる。したがって、複数のワーク3を密接した状態で搬送している場合でも、排除対象であるワーク3をその隣にあるワーク3の姿勢に影響を与えることなく排除処理を行うことができる。
【0040】
具体的には、前記排除手段5は、前記排除位置P2でワーク3に向けて付勢力を付与する付勢力付与手段としての空気噴射ノズル50を有し、この付勢力を作用させる目標位置Pwを前記ワーク上に予め設定し、前記ワーク3の搬送方向に直交して配列された複数の撮像素子を有し、前記搬送路10上に設定された撮像位置P1を通過する前記ワーク3を所定の間隔で撮像するラインカメラ2と、当該ラインカメラ2がワーク3の前端3aから後端3bに亘る領域を間欠的に撮像した画像を即時に取り込む画像取込手段40と、をさらに備え、前記ワーク3が前記撮像位置P1を通過した時点で当該ワーク3の後端3bまでの取り込みが完了したとみなして、前記画像取込手段40による取り込みの完了から前記姿勢判別手段44による姿勢判別処理の完了までに要する画像処理時間tp(sec)と、前記姿勢判別手段44が不正姿勢であると判別してから前記指令出力手段45が前記通電指令を出力するまでの待機時間tα(sec)と、前記通電指令を受けた前記排除手段5が前記排除処理を通じて当該ワーク3に付勢力を作用させるまでの機械的な伝達時間td(sec)とを少なくとも含む遅れ時間を経過する間にワーク3が前記撮像位置P1からパーツフィーダ用速度検出装置7により算出される速度で移動した結果ワーク3上に設定した目標位置Pwに付勢力が作用するタイミングとなるように、前記タイミング制御手段46が前記待機時間tαを設定しているので、遅れ要素を考慮した適切な対応が可能となる。
【0041】
より具体的には、パーツフィーダ用速度検出装置7により算出されたワーク3の搬送速度をVw(m/s)、前記撮像位置P1から前記排除位置P2までの距離をL(m)、ワーク3の後端から前記目標位置Pwまでの距離をLw2(m)とした場合に、前記タイミング制御手段46は下記式
tα={(L−Lw2)/Vw}−tp−td
に基づいて前記待機時間tαを設定しているので、簡単な演算を通じて個々のワーク3の搬送速度のバラつきに瞬時に対応することができる。
【0042】
前記ラインカメラ2が前記ワーク3の前端側から後端側まで撮像した撮像回数を取得する撮像回数取得手段としての撮像回数取得部42aをさらに備え、パーツフィーダ用速度検出装置7が、前記ワーク3の搬送方向長さおよび前記ラインカメラ2の撮像間隔が与えられ、かつ前記撮像回数取得部42aが取得した撮像回数が与えられることにより、当該撮像回数と前記ラインカメラ2の撮像間隔とに基づいて得られる撮像所要時間を当該ワーク3が撮像位置P1を通過するに要した時間とみなして、その撮像所要時間と前記ワーク3の搬送方向長さとに基づいて当該ワーク3の搬送速度Vwを算出するように構成したことから、ワーク3の搬送速度を検出するための装置を別途に設ける必要がなく、搬送速度を検出可能な構成としつつそれに伴うコストの上昇を抑制することができる。
【0043】
特に、前記画像取込手段40が取り込んだ画像データを撮像順につなぎ合わせて、単体のワーク3の略全体が現れた合成画像データを生成する前処理手段41と、をさらに備え、前記撮像回数取得部42aは、この合成画像データの画素数と1回の前記撮像により取得される画像データの画素数とに基づいて前記撮像回数を取得し、前記姿勢判別手段44は、合成画像データに基づいて前記ワーク3の姿勢を判別する構成としたことから、パーツフィーダ用速度検出装置7と姿勢判別手段44とで用いるデータを共用して、ラインカメラ2による撮像が開始されてから待機時間tαが設定されるまでの時間を短縮することができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0045】
例えば、本実施形態では、不適切な姿勢であると判別されたワーク3に対して搬送路10上から排除する排除処理を行っているが、
図5に示すようにワーク処理手段として排除手段5の代わりに姿勢矯正手段6を設けて、不適切な姿勢であると判別されたワーク3の姿勢を搬送路10上に設定された矯正位置P3で矯正する構成としてもよい。姿勢矯正手段6は、搬送路10の姿勢矯正位置P3に設けられた図示しない孔を介してワーク3に向けて圧縮空気を噴射する空気噴射ノズル60を備え、空気噴射ノズル60から圧縮空気を噴射して、矯正位置P3にあるワーク3を反転又は回転させることにより姿勢を矯正する。なお、姿勢矯正手段6としてはワークの姿勢を矯正可能なものであればこの構成に限定されない。姿勢矯正手段6は、指令出力手段45から通電指令が出力されると空気噴射ノズル60から圧縮空気を噴射するように構成されており、通電指令が出力されるタイミングはパーツフィーダ用画像処理装置8及びパーツフィーダ用速度検出装置7の検出結果に基づいてタイミング制御手段46により制御される。
【0046】
また本実施形態では、パーツフィーダ用画像処理装置8をワーク3の姿勢を判別するために用いているが、ワーク3の形状や色、ワーク3上のシルク文字等、ワーク3の外観を検査するために用いてもよい。この場合のパーツフィーダ用画像処理装置は、ワーク3の姿勢の判別を行う姿勢判別手段44の代わりに、ワーク3の外観を検査する手段を適宜有する構成となる。
【0047】
また
図6に示すように、制御装置154が、速度算出手段42で算出されたワーク3の搬送速度に基づいて駆動手段11の制御を行う駆動制御手段43を備える構成としてもよい。駆動制御手段43は、算出されたワーク3の搬送速度と設定値とを比較し、駆動手段11の振幅及び周波数を調整することでワーク3の搬送速度をフィードバック制御する。このような構成のパーツフィーダ151であれば、ワーク3の搬送速度が変化したとしても設定値に調整することができ、ワークの搬送速度を安定させることができる。
【0048】
さらに、本実施形態において前記撮像回数取得手段42aは、上記式(1)に適用する撮像回数Aの算出に合成画像データの画素数を用いているが、合成画像データの画素数の代わりに、ワーク3の前端3aが現れた画像データから当該ワーク3の後端3bが現れた画像データまでの複数の画像データにおける画素数の合計値を用いてもよい。また、撮像回数Aを取得するためにラインカメラ2が撮像する回数を直接カウントする構成であってもよい。具体的には、
図7に示すように制御装置161が前記ラインカメラ2による撮像の回数をカウントするカウンタ手段162を備える構成とし、前記撮像回数取得手段142aが前記端部検出手段41aの検出結果に基づいて、前記ワーク3の前端3aが検出された画像データに対応する前記カウンタ手段162のカウント値と、当該ワーク3の後端3bが検出された画像データに対応する前記カウンタ手段162のカウント値とを取得し、これらのカウント値より前記撮像回数Aを取得する構成であってもよい。このような構成のパーツフィーダ160であっても、前述のパーツフィーダ100と同様の効果を発揮することができる。
【0049】
さらに本実施形態では複数のワーク3が密接した状態で搬送路3を搬送される構成となっているが、所定の間隔を空けて搬送される構成であってもよい。また、ラインカメラ2として撮像素子が1列に配列したものを用いているが、本発明の効果が発揮される範囲内において撮像素子が2列以上配列したものを用いてもよい。
【0050】
また本実施形態では、ワーク3を撮像するためにラインカメラ2を用いているがこれの代わりにエリアカメラを用いてもよい。ラインカメラ2を用いる場合、ラインカメラ2でワーク3を撮像することで当該ワーク3の排除位置P2までの距離を把握することが可能であるが、エリアカメラを用いる場合、撮像範囲に対するワーク3の位置を検出する位置検出手段を別途に設けて、この位置検出手段により撮像範囲内でのワーク3の位置を検出することでワーク3の排除位置P2までの距離を把握するように構成することが好適である。そしてこの構成の場合には、位置検出手段により検出されたワーク3の位置とパーツフィーダ用速度検出装置7の検出結果とに基づいて、指令出力手段45が通電指令を出力するタイミングを制御するように構成することが好ましい。
【0051】
またさらに、本実施形態では速度検出手段としてパーツフィーダ用速度検出装置7を用いているが、これの代わりに速度センサ等の従来の速度検出装置を用いてもよい。
【0052】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。