(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<レーザ加工装置の概略>
図1は、本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置10の概略構成を模式的に示す図である。レーザ加工装置10は、レーザ光源1と、ミラー機構2と、レンズ機構3と、XYステージ4と、冷却機構5と、を主に備える。本実施の形態に係るレーザ加工装置10は、ガラス基板等の脆性材料基板(以下、単に基板)Wを対象とする、後述する態様での溶融アブレーション加工を、好適に実行可能なものとして構成されてなる。
【0016】
レーザ光源1は、内部に備わる発振器からパルスレーザ光LBを出射する。本実施の形態では、波長が355nmのUVレーザ光をパルスレーザ光LBとして出射するレーザ光源1を用いる。
【0017】
ミラー機構2は、基板Wに対するパルスパルスレーザ光LBの照射方向(照射角度)を調整・変更する部位である。
図1においては図示の簡単のため、パルスレーザ光LBを反射する一の鏡面のみがミラー機構2を構成し、これによって水平姿勢の基板Wに対し鉛直方向からパルスレーザ光LBが照射される場合を例示しているが、実際には、複数の鏡面によってミラー機構2が構成されていてもよいし、プリズムや回折格子等がミラー機構2の構成要素に含まれる態様であってもよい。
【0018】
レンズ機構3はパルスレーザ光LBを集光する部位である。
図1においては図示の簡単のため、レンズ機構3が一のレンズのみによって構成される場合を例示しているが、実際には、複数のレンズによってレンズ機構3が構成されていてもよい。レンズ機構3は、パルスレーザ光LBの集光位置の上下方向の位置を調整可能に設けられる。
【0019】
なお、本実施の形態において、集光位置とは、パルスレーザ光LBの照射方向に垂直な断面におけるビーム径が最小となる位置である。これは、一般的にいうパルスレーザ光LBの焦点位置に相当するが、パルスレーザ光LBが焦点位置においても有限のビーム径を有することを考慮し、本実施の形態では、ビーム径が最小となる位置との意を込めて、焦点位置という文言に代えて集光位置なる文言を用いている。
【0020】
係る集光位置の調整は、レンズ機構3を構成するレンズを交換することによって実現されてもよいし、レンズ機構3を構成するレンズの位置を図示しないアクチュエータ等の位置調整手段によって変更することによって実現される態様であってもよい。
【0021】
XYステージ4は、基板Wを載置するテーブルであり、水平面内において互いに直交する2つの方向(これらをX方向およびY方向とする)に移動可能である。XYステージ4の上面に基板Wを載置固定した状態で、XYステージ4をX方向またはY方向に移動させつつ、レーザ光源1からパルスレーザ光LBを出射させることにより、パルスレーザ光LBによる基板Wの走査が実現される。例えば、基板Wの表面にあらかじめ設定されてなる加工予定線に沿ってパルスレーザ光LBを移動させることにより、該加工予定線に沿った基板Wの加工が実現される。
【0022】
冷却機構5は、基板Wの表面に冷却媒体CMを供給する。冷媒CMは、水、アルコール、炭酸ガス、窒素ガスなどの液体もしくは気体、または液体と気体の混合物である。例えば、
図1においてXYステージ4を紙面左方向に移動させつつ、パルスレーザ光LBを基板Wの表面に照射すると同時に、冷却機構5から基板Wの表面に冷媒CMを供給することにより、パルスレーザ光LBによって加工された基板Wの表面を冷却する。
【0023】
<溶融アブレーション加工>
次に、本実施の形態において行う、パルスレーザ光LBによる溶融アブレーション加工について説明する。本実施の形態においては、基板Wをその表面にあらかじめ設定されてなる直線状の加工予定線(分断予定線)に沿って分断する際に起点となる部位を形成する目的で、溶融アブレーション加工を行うものとする。すなわち、本実施の形態に係る溶融アブレーション加工は、直線状の加工予定線に沿って溶融アブレーションを生じさせるものである。
【0024】
図2は、パルスレーザ光LBがレンズ機構3によって集光されて基板Wに照射される様子を示す、基板Wの厚み方向に垂直な断面図である。
図3は、本実施の形態における溶融アブレーション加工とその後の冷却のメカニズムを説明するための、基板Wの厚み方向と加工予定線の延在方向との双方に垂直な断面図である。いずれの場合も、図面に垂直な方向がパルスレーザ光LBの走査方向ということになる。
【0025】
係る態様にて本実施の形態に係る溶融アブレーション加工を行うにあたっては、
図2に示すように、パルスレーザ光LBを、基板Wの上面Wa(XYステージ4に載置されていない側の表面)を集光位置Fとする態様にて、基板Wに照射する。係る態様にてパルスレーザ光LBが照射されると、集光位置Fの近傍において基板Wが加熱される。パルスレーザ光LBの照射条件を適宜に設定した場合、集光位置Fの直下の領域RE1は、基板Wの沸点を超える温度にまで加熱される。それゆえ、係る領域RE1からは、
図3(a)に矢印AR1にて示すような基板Wの構成物質の蒸発・飛散、いわゆるアブレーションが生じる。一方、該領域RE1の周辺の領域RE2は、沸点よりは低いものの基板Wの融点を超える温度にまで加熱される。係る領域RE2では、基板Wの溶融が生じる。パルスレーザ光LBが通過した後、放熱により温度が低下すると、領域RE2に存在している物質は再固化する。なお、溶融アブレーション加工とは、アブレーションが生じる領域RE1の周囲に、このような溶融・再固化が生じる領域RE2を積極的に形成することを意図した手法である点であり、このような領域の積極的な形成を意図しない単なるアブレーション加工とは異なるものである。
【0026】
上述のような、領域RE1における蒸発・飛散と、その周辺の領域RE2における溶融・再固化とが生じた結果として、基板Wには、
図3(b)に示すように、走査方向に垂直な断面視において基板Wの上面Waから下方へと(基板Wの厚み方向へと)延在する溝部Gが、加工予定線に沿って形成される。溝部Gは、基板Wを構成する物質が溶融・再固化することによりその表面形状が形成されてなり、かつ、基板Wの厚み方向に対して略対称な形状を有するが、局所的な形状的特徴の相違により、基板Wの上面側から順に、上端部G1、中間部G2、および底部G3という3つの部位が連続してなるものということができる。
【0027】
上端部G1は、溝部Gの対向する1対のエッジをなす部分であり、それぞれのエッジ部分は、基板Wの上面Waから連続する曲面からなる。それぞれのエッジ部分が、基板Wを溝部Gのところで分断することで得られる個々の個片のエッジとなる。より詳細には、上端部G1は、パルスレーザ光LBの走査方向(溝部Gの延在方向)に垂直な断面との交線が適宜の曲率半径を有する滑らかな曲線となるように形成されてなる。その結果として、該分断後の個片は、大きな端面強度を有するものとなっている。これは、上述のような状態にて曲面状に形成されてなる上端部G1においては、マイクロクラックが発生しにくくなっているからであると考えられる。
【0028】
中間部G2は、それぞれが上端部G1から連続する、基板の厚み方向に沿った一対の面が、対向してなる部位である。換言すると、中間部G2は、溝部Gの基板Wの厚み方向における延在部分に相当する部位であるともいえる。なお、中間部G2は、例えばパルスレーザ光LBの走査方向(溝部Gの延在方向)に垂直な断面との交線が厚み方向に沿った直線となるような、略平坦な面が対向することで形成されていてもよいし、上端部G1の近傍よりも底部G3の近傍の方が間隔が広くなるような平坦面あるいは曲面として形成されていてもよい。
【0029】
底部G3は、中間部G2をなす一対の面のそれぞれと連続してなる曲面である。より詳細には、底部G3は、溝部Gの延在方向に垂直な断面との交線が適宜の曲率半径を有する曲線となるように、形成されてなる。
【0030】
また、パルスレーザ光LBの集光位置Fの近傍であって、領域RE2よりも外側の領域では、融点にまでは達しないものの、パルスレーザ光LBによる加熱は生じている。係る領域においては熱膨張が生じ、集光位置Fから外側に向けて引張応力S1が作用する。その一方、パルスレーザ光LBによる加熱の影響を受けない基板Wの内部においては、上述の熱膨張を打ち消すべく、パルスレーザ光LBの照射位置の下方に向けて圧縮応力S2が作用する。
【0031】
このとき、パルスレーザ光LBの走査速度が遅いなどの理由で、入熱量が一定量よりも大きい場合、圧縮応力S2が作用した結果として、パルスレーザ光LBが通過した直後から始まる放熱時に、パルスレーザ光LBの照射によって形成された溝部Gの底部G3の最下端部から下方に向けて、亀裂(垂直クラック)CRが伸展する。
【0032】
すなわち、本実施の形態においては、基板Wに対し溶融アブレーション加工を行った結果として、溝部Gの形成と、その直下からの亀裂CRの伸展との双方が、実現されるものとなっている。
【0033】
そして、
図3(b)に示すように、上端部G1、中間部G2、および底部G3のそれぞれの深さをD1、D2、D3とすると、D1、D2、D3の総和が溝部Gの深さDとなり、さらに亀裂CRの長さをLとすると、溝部Gの深さDと亀裂CRの長さの和D+Lが、本実施の形態に係る溶融アブレーション加工における加工深さということになる。
【0034】
なお、上述のような態様での溝部Gと亀裂CRの同時形成が実現される、本実施の形態における溶融アブレーション加工は、上述のように、波長が355nmのUVレーザ光をパルスレーザ光LBとし、基板Wの上面Waを集光位置とするほか、以下のような加工条件をみたすことで実現される。
【0035】
レーザ出力:4W〜20W;
レーザ強度:1.56×10
10W/cm
2〜7.81×10
10W/cm
2;
パルス繰り返し周波数:0.2MHz〜1.0MHz;
パルス幅:0.5ns〜100ns;
走査速度:100mm/s〜400mm/s;
オーバーラップ率:93.5%〜98.25%;
集光位置における集光径:6μm〜10μm
【0036】
ここで、走査速度とは、一般的にはパルスレーザ光LBを基板Wに対して相対移動させる際の速度であるが、レーザ加工装置10においては、パルスレーザ光LBに対して基板Wを載置したXYステージ4を移動させる速度がこれに該当する。
【0037】
また、オーバーラップ率とは、パルスレーザ光LBの個々のパルス光(単パルス光)の被照射領域の重なりの程度を示す値であり、パルス繰り返し周波数と走査速度とで定まる単パルス光のピッチに対する集光径の比として求められる。ピッチの値が集光径よりも大きければ、オーバーラップ率は0%となり、ピッチの値が集光径の1/2であれば、オーバーラップ率は50%となる。
【0038】
なお、上述の加工条件のうち、レーザ強度は、一の被照射領域に対し単パルス光が一度照射されるのみでは、つまりは、オーバーラップ率が0%の場合にはアブレーションが生じることのない範囲の値として設定されてなる。より詳細には、上述の範囲のオーバーラップ率がみたされる場合にのみ、溶融アブレーションが生じるように設定されてなる。なお、仮に、レーザ強度が上述の範囲に設定され、かつ、オーバーラップ率が0より大きいものの上述の範囲より小さい値に設定された場合には、集光位置Fにおいて、物質の蒸発・飛散のない溶融・再固化のみか、あるいは、クラックの発生・伸展のみが生じることが、本発明の発明者によってあらかじめ確認されている。
【0039】
また、上述の加工条件を適宜に調整することで、溝部Gの深さDは10μm〜15μmとすることができ、亀裂CRの長さLは2μm〜3μmとすることが可能である。ただし、実際の値は、個々の基板Wの材質によっても異なる。
【0040】
<冷却処理>
以上のような態様にて溶融アブレーション加工がなされた基板Wは、当該加工後の状態のままでも、亀裂CRの最下端部を起点とした分断を行い得るものではあるが、本実施の形態においては、上述した態様にて形成された亀裂CRをより伸展させるべく、
図3(c)に示すように、溶融アブレーション加工がなされた直後の基板Wの上面Waに対し、矢印AR2に示すような態様にて冷媒を接触させることで、基板Wを上面Waの側から冷却する。
【0041】
係る態様にて冷却を行うと、基板Wの上面Waの近傍では、一時的に、溝部Gから外側に向けて引張応力S3が作用する。一方、直接に冷媒と接触しない基板Wの内部においては、係る引張応力S3が作用したことに伴って、亀裂CRに向けて圧縮応力S4が作用する。別の見方をすれば、基板Wの内部においては、上面Waとの間に温度差が生じることに伴って、圧縮応力S4が作用する。係る圧縮応力S4が作用した結果として、
図3(d)に示すように、亀裂CRが基板の厚み方向へとさらに伸展する。係る冷却時の亀裂CRの伸展長さをΔLとすると、LL=L+ΔLが最終的な亀裂CRの長さとなる。なお、冷却による亀裂CRの伸展長さΔLは、4μm程度である。
【0042】
係る冷却後の基板Wにおいては、後工程において分断する際の起点が、基板Wの上面Waから距離D+LLの深さにある亀裂CRの最下端部となる。基板Wの種類や溶融アブレーションの条件にもよるが、冷却を行うことで、冷却後の加工深さD+LLは、冷却前の加工深さD+Lに対して数十%程度大きくなる。溶融アブレーション加工後に冷却を行うことにより、溝Gのみが形成され、溝Gの最下端部が分断の起点となる場合に比して、あるいは、溶融アブレーション加工のみを行った場合に比して、より容易かつ確実な分断が実現される。
【0043】
冷却手法としては、種々の態様が適用可能である。例えば、冷媒には、純水などの液体を用いてもよいし、低温の炭酸ガスなどの気体を用いてもよい。また、冷媒の供給態様としては、溶融アブレーション加工が終了した後の基板Wの上面Wa全体に冷媒を供給する態様であってもよいし、パルスレーザ光LBの照射の進行中に(つまりは溝部Gおよび亀裂CRの形成途中に)、すでに溝部Gおよび亀裂CRが形成されている箇所に対しピンポイントに冷媒を供給する態様であってもよい。
【0044】
図4は、本実施の形態に係る溶融アブレーション加工およびその後の冷却を行った後の基板Wの様子と、他の手法による加工を行った後の基板Wの様子とを対比して示す図である。
図4(a)は、
図3(d)に示した冷却後の様子を再掲したものである。
【0045】
これに対して、
図4(b)に示すのは、溶融を積極的に生じさせない単なるアブレーションのみが生じる条件で加工を行った場合(以下、従来手法1と称する)の、基板Wの厚み方向と加工予定線の延在方向との双方に垂直な断面図である。係る加工は、上述の範囲よりもレーザ強度を大きくすることで実現される。
【0046】
図4(b)に示すように、従来手法1の場合も、本実施の形態に係る溶融アブレーションを行った場合と同様、溝部Gαが形成される。ただし、溝部Gαの深さDαは溝部Gの深さDと同程度となるものの、溝部Gαの底部からは亀裂(垂直クラック)はほとんど伸展しない。これは、仮に引き続き基板Wを冷却したとしても同様である。
【0047】
すなわち、本実施の形態に係る溶融アブレーションと冷却との組合せの方が、
図4(b)に例示する、従来手法1よりも(あるいはさらに冷却を行った場合よりも)、分断の起点をより深い位置に形成することができるので、容易かつ確実な分断が実現可能となる。
【0048】
また、溝部GαのエッジEは、角張っている。それゆえ、分断後に得られる個片の端面強度は、エッジ部分が曲面となる本実施の形態の場合に比して弱くなる。本実施の形態に係る態様にて溶融アブレーションを行った場合、分断後の個片の端面強度は、従来手法1の場合の概ね4倍から5倍程度となる。それゆえ、従来手法1にて加工を行った場合よりも分断後の個片の端面強度をより高めることができる、という効果も得られる。
【0049】
また、
図4(c)に示すのは、特許文献2に例示された態様と同様、パルスレーザ光として波長が266nmのUVレーザを用い、かつ、基板Wの下面Wbよりも下方に集光位置を設定して溶融アブレーション加工を行った場合(以下、従来手法2と称する)の、基板Wの厚み方向と加工予定線の延在方向との双方に垂直な断面図である。
【0050】
図4(c)に示すように、従来手法2の場合も、本実施の形態に係る溶融アブレーションを行った場合と同様、溝部Gβが形成される。ただし、溝部Gβの深さDβは溝部Gの深さDに比して小さい範囲に留まる。具体的には、せいぜい6μm〜8μm程度である。溝部Gβは、概略、本実施の形態において形成される溝部Gの中間部G2に相当する部分を有さず、上端部G1と底部G3に相当する部分のみを有するように形成される。また、溝部Gβの底部からも亀裂(垂直クラック)はほとんど伸展しない。
【0051】
それゆえ、本実施の形態に係る溶融アブレーションと冷却との組合せの方が、
図4(c)に例示する従来手法2よりも、分断の起点をより深い位置にまで形成することができるので、容易かつ確実な分断が実現可能である。
【0052】
また、従来手法2の場合においても分断後の個片のエッジは曲面となるが、本実施の形態に係る溶融アブレーション加工の方が、分断後に得られる個片の端面強度が大きくなることが、実験的に確認されている。
【0053】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、脆性材料基板をあらかじめ定められた分断予定線に沿って分断するにあたって、波長が355nmのUVレーザ光を、基板の上面に集光位置を保った状態で、溶融アブレーションが生じる条件で分断予定線に沿って走査しつつ照射し、その後冷却を行うことで、従来よりも基板厚み方向のより深い位置に分断のための起点を形成出来るとともに、分断後に得られる個片の端面強度を高めることができる。
【実施例】
【0054】
実施例として、厚さ0.3mmのガラス基板(日本電気硝子社製OA−10G、熱膨張係数38×10
−7/℃)に対し、直線状に定めた加工予定線に沿って、以下の4通りに条件を違えて溝部Gおよび亀裂CRの形成を試みた。
【0055】
具体的には、2つの基板Wに対して以下の条件1に従った溶融アブレーションを行い、そのうちの一方の基板Wのみに、純水による冷却を行った。
【0056】
<条件1>
レーザ波長:355nm;
レーザ出力:12.0W;
レーザ強度:4.69×10
10W/cm
2;
パルス繰り返し周波数:1MHz;
パルス幅:1ns;
走査速度:350mm/s;
オーバーラップ率:93.9%;
集光位置:基板表面;
集光位置における集光径:6μm。
【0057】
冷却処理は、パルスレーザ光LBの走査方向においてパルスレーザ光LBの集光位置より15mm後方の位置に対し、基板Wの上面Waより5mm上方の位置から純水を供給することにより行った。供給流量は1ml/min.とした。
【0058】
また、別の2つの基板Wに対して以下の条件2に従った溶融アブレーションを行い、そのうちの一方の基板Wのみに、炭酸ガスによる冷却を行った。
【0059】
<条件2>
レーザ波長:355nm;
レーザ出力:4.0W;
レーザ強度:1.56×10
10W/cm
2;
パルス繰り返し周波数:1MHz;
パルス幅:1ns;
走査速度:100mm/s;
オーバーラップ率:98.3%;
集光位置:基板表面;
集光位置における集光径:6μm。
【0060】
冷却処理は、パルスレーザ光LBの走査方向においてパルスレーザ光LBの集光位置より15mm後方の位置に対し、基板Wの上面Waより5mm上方の位置から低温(約−20℃)の炭酸ガスを供給することにより行った。供給流量は1ml/min.とした。
【0061】
図5および
図6はそれぞれ、条件1および条件2に従って溶融アブレーション加工を行った2つの基板Wについての断面SEM像である。
図5(a)および
図6(a)が冷却を行わなかった基板Wについての像であり、
図5(b)および
図6(b)が冷却を行わなかった基板Wについての像である。
【0062】
図5および
図6のいずれにおいても、冷却を行った場合の加工深さ(D+LL)が、冷却を行わなかった場合の加工深さ(D+L)よりも大きくなっている。
【0063】
係る結果は、溶融アブレーション加工と冷却処理とを組み合わせることが、分断の起点をより深い位置に形成するうえにおいて有効であることを意味している。