特許第6260169号(P6260169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6260169-セラミック電子部品 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6260169
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/232 20060101AFI20180104BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20180104BHJP
   H01C 7/10 20060101ALI20180104BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   H01G4/12 361
   H01G4/30 301B
   H01C7/10
   H01F15/10 C
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-198759(P2013-198759)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-65331(P2015-65331A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北上 雅敬
(72)【発明者】
【氏名】柳田 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】阿部 寿之
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−047585(JP,A)
【文献】 特開平03−094409(JP,A)
【文献】 特開2001−118424(JP,A)
【文献】 特開平02−248022(JP,A)
【文献】 特開2012−004189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/232
H01C 7/10
H01F 27/29
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極をスルーホール導体で電気的に接続し、且つ、内部電極とセラミック層とを交互に積層させてセラミック素体を形成すると共に、その内部電極とスルーホール導体で電気的に接続する端子電極をセラミック素体に設けるセラミック素体の表面に設けられるセラミック電子部品であって、前記端子電極がCuとZnとを含み、Cu含有量を100原子%とした時、Zn含有量が20〜40原子%の範囲にあり、さらにNiを含み、該Ni含有量が20〜40原子%含まれることを特徴とする端子電極を有するセラミック電子部品。
【請求項2】
前記端子電極において、Znの含有量がNiの含有量よりも多いことを特徴とする請求項に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記端子電極が15体積%以下のガラス成分を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子電極を備えるセラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスはその高性能化に伴って、より多くのセラミック電子部品が回路基板に実装されている。セラミック電子部品を基板に実装するため、セラミック電子部品にはそれぞれ、回路との接続のために例えば銅(Cu)端子電極を有している。この端子電極は、例えば銅(Cu)の金属粉末およびガラスフリット等を混合した外部電極ペーストを焼き付けて形成する。
【0003】
そして、セラミック電子部品の基板への実装には、はんだによりその端子電極を接合している。このはんだによる接合には、はんだの溶融に伴ってセラミック電子部品の端子電極の一部がはんだの錫(Sn)に溶解するいわゆるはんだ食われが生じ、セラミック電子部品と基板との接合強度が低下してしまうことがあった。
【0004】
このため、セラミック電子部品を回路基板等に実装する際のはんだ食われを抑えることを目的として、端子電極の外表面にニッケル(Ni)の金属層をめっきにより形成する手段が、特許文献1に提案されている。
【0005】
さらに、めっき液に素体の成分が溶出し特性が劣化を生じるバリスタでは、めっきにより金属層を形成する場合には、素体の表面にガラス等を表面に塗布する手段が特許文献2に提案されている。
【0006】
このように、はんだ接合によりセラミック電子部品を回路基板等に実装する場合には、セラミック電子部品の端子電極の外表面にNiの金属層を形成することが必要であり、特に、めっき液に対する耐性が低い素体を用いる場合には、さらに、その素体の保護も必要であり、工程を煩雑にしなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−298018号公報
【特許文献2】特開2001−143910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、セラミック電子部品には、端子電極表面にNiめっきのような金属層がなくても、はんだ耐熱性(耐はんだ食われ性)を有し、はんだによる基板との接合の強度が高い端子電極が求められている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、セラミック電子部品の端子電極と基板とのはんだによる接合において、高い接合強度を有する端子電極を備えるセラミック電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明のセラミック電子部品は、セラミック素体の表面に端子電極を備えたセラミック電子部品であって、端子電極が銅(Cu)と亜鉛(Zn)とを含み、Cu含有量を100原子%とした時、Zn含有量が20〜40原子%の範囲にあることを特徴とする端子電極を有する。
【0011】
これによって、セラミック電子部品の端子電極と基板とのはんだによる接合において、高い接合強度を有する端子電極を備えるセラミック電子部品を得ることができる。
【0012】
さらに、前記セラミック電子部品の端子電極にニッケル(Ni)を含み、Cu含有量を100原子%とした時、Ni含有量が0を含まずに40原子%以下の範囲にあることが好ましい。
【0013】
さらに、前記セラミック電子部品の端子電極において、Znの含有量がNiの含有量よりも多いことが好ましい。
【0014】
さらに、セラミック電子部品は、前記端子電極が15体積%以下のガラス成分を含むことが好ましい。これによって、さらにセラミック素体と良好な接着性を有する端子電極を備えるセラミック電子部品を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、セラミック電子部品の端子電極と基板とのはんだ接合において、高い接合強度を有する端子電極を備えるセラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態のセラミック電子部品の好適な一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一または同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。また、特に断らない限り、上下左右等の位置関係は、図面の位置関係に基づくものとする。
【0018】
本発明に係る実施形態のセラミック電子部品は、特に限定されないが、コンデンサ、圧電素子、インダクタ、バリスタ、サーミスタ、抵抗、トランジスタ、ダイオード、水晶発振素子およびこれらの複合素子、その他のセラミック電子部品が例示される。
【0019】
本実施形態では、図1に端子電極10を備えるセラミック電子部品100を例示して説明する。図1に示すように、本実施形態のセラミック電子部品100は、セラミック素体20(以下、素体20)と、素体20の主面20aの上に設けられた端子電極10とを有する。素体20は、セラミック層21,22,23がこの順で積層された積層構造を有している。各セラミック層21,22,23に設けられたスルーホールには、スルーホール電極31が形成されている。素体20の実装面となる主面20a側に配置されたセラミック層21に設けられたスルーホール電極31は、端子電極10と電気的に接触している。そして、端子電極10は、セラミック層21,22,23の間に埋設された内部電極32を介して、セラミック層21,22,23のスルーホール電極31と電気的に接続されている。
【0020】
セラミック電子部品100の端子電極10は、基板のパッド等とはんだにより接合することができる。なお、接合に用いるはんだは特に限定されないが、例えば鉛系のSn−Pb(鉛)系はんだやSn−Ag(銀)系やSn−Cu(銅)系の鉛フリーはんだ等を用いることができる。鉛フリーはんだで接合する際には、その接合のための溶融温度が、鉛系のはんだに比べ高く、はんだ食われを抑制する観点で、本発明の端子電極10の効果がより得られる。
【0021】
本実施形態の端子電極10は、CuとZnとを含み、Cu含有量を100原子%とした時、Zn含有量が20〜40原子%の範囲である。これによってセラミック電子部品の端子電極10と基板とのはんだによる接合において、高い接合強度を得ることができる。これは、端子電極10がZnを含有すると、はんだによる接合の際に、Znとはんだとの反応が進みにくく、その結果端子電極10のCuとの反応を抑制することができる。このため、はんだ食われを抑制する効果を得ることが出来ると発明者らは考えている。
【0022】
換言すると従来の端子電極を有するセラミック電子部品を基板にはんだで実装する際には、端子電極の外表面にはんだでの接合時の耐熱性を向上させる目的の金属層(例えばNiめっき層)がないと、はんだの溶融に伴ってセラミック電子部品の端子電極が溶解してしまういわゆるはんだ食われが生じ、セラミック電子部品と基板との接合強度が低下してしまっていた。これは、従来の端子電極に含まれるAgやCuが、はんだ溶融に伴うはんだへの溶解が進みやすい元素であるためである。それに対して、本実施形態の端子電極10の電極として機能する元素が、CuとZnのうち、Znがはんだ成分のSn、Pb、AgおよびCuよりもイオン化傾向が大きいため、結果、端子電極10のCuとはんだの反応を抑制する効果を得られると考えている。このため、本実施形態に係るセラミック電子部品100は、めっきによる端子電極10の表面にNiめっき層のような金属層がなくても、はんだ耐熱性(耐はんだ喰われ性)を有し、はんだによる基板との接合の強度が高い端子電極10を有することができる。
【0023】
さらに、端子電極10に、Niを含み、Cu含有量を100原子%とした時、Ni含有量が0を含まずに40原子%以下の範囲にあることが好ましい。これは、端子電極10がNiを含むことにより、セラミック電子部品の端子電極10と基板とのはんだによる接合においてより高い接合強度が得られる観点で好ましい。端子電極10のNiは、はんだによる接合の際に端子電極10のCuやZnの溶融したはんだへの拡散のスピードを抑制する。このため、はんだ食われの抑制にさらに効果を発揮すると発明者らは考えている。
【0024】
さらに、端子電極10のZnの含有量は、Niの含有量よりも多いことが好ましい。これは、Znの方がNiよりイオン化傾向が大きいためはんだと反応しやすい。このため、端子電極10へのはんだの濡れ広がりの観点で好ましい。さらに端子電極10のCuとNiとZnの3つの元素の組成比率は、Cuが一番多く、次いでZn、Niの順に多い比率であると、セラミック電子部品100をはんだにより基板上のパッドとの接合したときの接合性の観点からより好ましい。
【0025】
さらに、端子電極10のCuとZnとNiの3つの元素量を調整することで、端子電極10の表面にめっき等の金属層などがなくとも端子電極10の耐酸化性も有し、高い導電性を維持することができる。
【0026】
端子電極10の組成において、Cu含有量を100原子%とした時Znの比率は、はんだにより基板上のパッドと接合した場合に、より高い接合性を有する端子電極10を形成する観点から、好ましくは20〜40原子%である。さらに、端子電極10が耐酸化性を有し高い導電性を維持することができる観点から、20〜35原子%の範囲がより好ましい範囲である。
【0027】
端子電極10の組成において、Cu含有量を100原子%とした時Niの比率は、はんだにより基板上のパッドと接合した場合に、より高い接合性を有する端子電極10を形成する観点から、好ましくは0を含まない40原子%以下である。さらに、溶融温度が高い鉛フリーのはんだを用いた場合でも高い接合性を得ることができる観点から、10〜25原子%の範囲がより好ましい範囲である。
【0028】
本実施形態に係るセラミック電子部品100の素体20の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常外形はほぼ直方体形状とし、寸法は縦(0.2〜5.6mm)×横(0.1〜5.0mm)×高さ(0.1〜1.9mm)程度とすることができる。
【0029】
本実施形態に係る端子電極10の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、1〜50μm程度であることが好ましい。
【0030】
なお、図示したセラミック電子部品100は、2つの端子電極10を同一面上に備える多端子型のものであるが、この発明は二端子型のセラミック電子部品にも適用することができる。
【0031】
次に、図1に示したセラミック電子部品100の製造方法は、手順により、素体20を作製し、素体20の主面20aの上に端子電極10を形成し、実施形態のセラミック電子部品100となる。
【0032】
セラミック電子部品100は、
複数のセラミックグリーンシート(セラミック層21,22,23)と、隣接するセラミックグリーンシートの間に埋設された電極層(内部電極層32)と、を有するグリーン積層体を形成、スルーホールを形成しそこに電極を注入しスルーホール電極31を形成し、焼成し、素体20を形成する第1工程と、
得られた素体20の実装面となる主面20aに端子電極10を形成する第2工程とを有する。以下、各工程の詳細を説明する。
【0033】
第1工程は、素体20の準備工程である。ここでの素体20には、特に限定されないが、バリスタ特性を得るために、例えば、酸化亜鉛を主成分として用いることができる。
【0034】
次に、所望の内部電極層32となる各種電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを所定の順序で重ねる。また、電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシートを適宜挿入して重ねてもよい。そして、その過程で、スルーホールを形成しそこに電極を注入しスルーホール電極31を形成する。このようにして、複数のセラミックグリーンシートと、隣接するセラミックグリーンシートの間に埋設された電極層と、スルーホール電極31を有するグリーン積層体を得ることができる。このときの電極には、特に限定されず、内部電極層32とスルーホール電極31で同じものを用いてもよく、違うものでもよい。
【0035】
次に得られたグリーン積層体を、180〜400℃で0.5〜24時間加熱して、脱バインダを行う。その後、850〜1400℃で0.5〜8時間焼成することによって、素体20が得られる。
【0036】
第2工程は、素体20の主面20aに端子電極10を形成する工程である。端子電極10の形成方法は特に限定されず、塗布電極形成法、スパッタリング法、蒸着法およびこれらを組み合わせても形成することができる。
【0037】
このとき、例えば、塗布電極焼付により端子電極10の形成を行う場合は、組成範囲に入るよう各元素の金属粉末を秤量した後、混合して外部電極用ペーストを作製する。このとき各元素の金属粉末を用いる代わりに合金粉末を用いても良い。作製した外部電極用ペーストを印刷または浸漬により、素体20の主面20aに塗布し焼成し、端子電極10を形成する。外部電極の焼成条件は、例えば、600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。
【0038】
他に、例えばスパッタリング法や蒸着法で端子電極10を形成する場合は、Cu、ZnおよびNiの各ターゲットおよび、それぞれの元素からなる合金ターゲットを用いることができる。
【0039】
さらに、端子電極10を塗布電極形成する際に用いる外部電極用ペーストにSiOやBを含有するガラス成分を含んでもよい。端子電極10に対するガラス成分の割合は、素体と端子電極10との接着性の観点から、好ましくは15体積%以下である。さらに、端子電極10のはんだで接合する表面でのガラス浮きがなくさらに良好な接合が得られるという観点から、5〜10体積%の範囲がより好ましい範囲である。
【0040】
さらに、端子電極10がガラス成分を有する構造である場合は、ガラス成分にCuやZnおよびNiが含まれていても良い。この場合、ガラス成分に含まれるCuやZnおよびNiは、導電性を有しておらず端子電極10のCuとZnとNiとは区別され、端子電極10におけるCuとZnとNiのそれぞれの含有量には含まれない。換言すると、端子電極10のCuとZnとNiはいずれも金属あり、ガラス成分とは区別される。ガラス成分のCu、Zn及びNiと、端子電極10のCu、Zn及びNiを区別する方法としては、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)で端子電極10の断面を観察し、元素の分布を判断する方法が例示される。この場合、SiOあるいはBが共析していればガラス成分、CuとZnとNiの各成分およびそれらの混合物であれば端子電極10として判断し区別することができる。
【0041】
ちなみに、ここでいう成分とは単体および酸化物であり、例えばCu成分とは、Cu元素を含む、Cu、CuO、およびCuOなどのことを示す。Zn成分とは、Zn元素を含むZnおよびZnOなどのことを示す。Ni成分とは、Ni元素を含む、NiおよびNiOなどのことを示す。ガラス成分とは、SiOとあるいはBを主成分とする酸化物のことを示す。
【0042】
このようにして製造された本発明の実施形態のセラミック電子部品は、はんだ等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施形態を実施例に基づき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0044】
(実施例1)
バリスタ素体形成用のスラリーを次の手順で調整した。酸化亜鉛の粉末と、有機バインダ、有機溶剤、および添加剤を配合し、ボールミルを用いて24時間混合して、バリスタ素体用のスラリーを得た。
【0045】
外部電極を形成するための導電性ペーストを以下の手順で調整した。導電粉末として、Cu粉とZn粉末を準備した。これらの粉末を表1に示す元素割合になるように混ぜその合計の粉末80質量部に対し、アクリル樹脂、ターピネオールを合計で20質量部配合し、3本ロールミルを用いて混合して、端子電極10用の導電性ペーストを調整した。
【0046】
上述の導電性ペーストには、さらに端子電極10と素体との接着性を向上させるため、導電粉末に対して10体積%のガラスフリットを添加した。
【0047】
バリスタ素体用のスラリーおよび導電性ペーストを用いて、図1に示すセラミック電子部品と同じ構造のバリスタ(セラミック電子部品)を作製した。具体的には、まずバリスタ素体用のスラリーを、ドクターブレード法により、ポリエチレンフタレートからなるフィルム上に塗布した後、乾燥して厚さ30μmの膜のグリーンシートを形成した。
【0048】
次に、グリーンシートに、内部電極32およびスルーホール電極31に対応する電極パターンを形成した。電極パターンはパラジウム粉末を含む導電性ペーストをスクリーン印刷法によって塗布またはスルーホールに充填し、乾燥させることにより形成した。次に、電極パターンが形成されたグリーンシートを積み重ねてシート積層体を形成した。こうして得られたシート積層体に、加熱処理を施して脱バインダを行なった後、焼成して素体20を得た。
【0049】
スルーホール電極31の端面が露出した素体20の主面上20a上に、スルーホール電極31の端面を覆うようにして導電性ペーストをスクリーン印刷法によって塗布した。塗布した導電性ペーストを、熱風乾燥した後、焼付けを行い、端子電極10を作製し実施例1のバリスタを得た。
【0050】
(実施例2〜9、比較例1〜8)
導電性ペーストを導電粉末としてCu粉末とZn粉末さらにNi粉末を用い表1に示す割合に混ぜたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2〜9、および比較例1〜8に示すサンプルを作製した。元素同士の元素比で示すために、Cuを100とした時の、ZnとNiの含有量を表1に示した。
【0051】
<端子電極の成分評価>
得られたバリスタを図1に示すような端子電極10と素体20両方の断面が観察できるように研磨し、EPMAにより端子電極10の断面全体の金属元素の分布の確認と元素の定量を行ない、その定量の結果を平均した評価結果を表1に示す。また、端子電極10の表面領域、端子電極の中央領域、素体との界面付近に分けて元素の定量を行ったが、いずれも元素量は同等であり、端子電極10の断面全体で組成が均一に分布していることを確認した。ガラスの主成分であるSiOあるいはBが共析している部分をガラス相と区別し、金属元素とは独立してガラス相が存在していることを確認した。
【0052】
<接合強度評価>
作製したバリスタの端子電極10を、基板のパッド(電極)に鉛フリーはんだ(96.5Sn/3.0Ag0.5Cu)で230℃および260℃のリフローにより接合し強度評価用サンプルを作製した。はんだとの接合強度の評価するため、このサンプルのバリスタに25Nおよび50Nのせん断力を加え、はんだとの接合部を目視で観察した。その結果接合部のはんだ部やバリスタの端子電極10に割れや変形が無かったものを十分な接合強度を有するとして「A」とし、25Nのせん断力では接合部のはんだ部やバリスタの端子電極10に割れや変形がなかったが、50Nのせん断力で接合部のはんだ部やバリスタの端子電極10に割れや変形があったものを「B」とし、25Nのせん断力で接合部のはんだ部やバリスタの端子電極10に割れや変形があったものを「C」とし、その結果を表1、2に示した。
【0053】
<端子電極の導電性評価>
<耐酸化性評価>
表1、2の「耐酸化性」では、作製したバリスタをAir雰囲気150℃の恒温槽に24h熱処理し、熱処理前後の端子電極10の導電性評価を行い、比抵抗の変化率から耐酸化性評価を行った。バリスタの端子電極10の両端部の間の抵抗値を、デジタルマルチメーターを用いて測定し、得られた抵抗値と測定間距離から比抵抗を算出した。比抵抗の変化率が10%未満のものを耐酸化性が良好で「良」とし、比抵抗の変化率が10%以上のものを耐酸化性が「不良」と評価した。
【0054】
<判定>
表1、2の「判定」では、端子電極10のはんだとの230℃および260℃における接合強度評価が「A」または「B」であり、端子電極10の耐酸化性評価で「良」であったサンプルを最終的に「良」とした。また、接合強度評価で「C」、または耐酸化性評価で「不良」となったサンプルは、最終的に「不良」判定とした。
【0055】
【表1】
【0056】
CuとZnを含む場合、Cu含有量を100原子%としたとき、Zn含有量が20〜40原子%の範囲にある組成範囲では、鉛フリーはんだを用い230℃で基板上のパッドと接合した場合、良好な接合性が得られる。CuとZnおよびNiを含む場合、Cu含有量を100原子%としたとき、Ni含有量が0を含まずに40原子%以下の範囲にある組成範囲では、より高温の260℃で鉛フリーはんだを用い基板上のパッドと接合した場合、良好な接合性が得られる。さらに、CuとZnおよびNiを含む場合、Zn含有量がNi含有量より多い組成範囲では、260℃接合においてより一層強い接合性が得られ、良好な端子電極としての特性を示すことが確認された。
【0057】
(実施例10〜18、比較例9〜16)
スパッタリング法で端子電極10を作製した以外は実施例1と同様にバリスタのサンプルを作製し実施例10〜18および比較例9〜16とした。スパッタリングには、表2に示すCu、ZnおよびNiの成分の元素比の割合となる合金のターゲットを使用した。チャンバ内を高真空にしてArガスを導入し、バリスタ表面に端子電極10を形成した。使用したターゲットの元素比を表2に示す。
【0058】
実施例1と同様に端子電極10の表面領域、中央領域、素体との界面付近に分けて元素の定量を行い、端子電極10の成分評価を行なった。その定量の結果を平均した評価結果を表2に示す。いずれのサンプルも端子電極10の組成が使用したターゲットと同じ組成であることを確認した。また、端子電極10のはんだとの230℃および260℃における接合強度および端子電極10の導電性の評価を行なった結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
スパッタリング法で作製した端子電極10は、塗布電極形成法で作製した端子電極10と同様に、CuとZnを含む場合、Cu含有量を100原子%としたとき、Zn含有量が20〜40原子%の範囲にある組成範囲では、鉛フリーはんだを用い230℃で基板上のパッドと接合した場合、良好な接合性が得られる。CuとZnおよびNiを含む場合、Cu含有量を100原子%としたとき、Ni含有量が0を含まずに40原子%以下の範囲にある組成範囲では、より高温の260℃で鉛フリーはんだを用い基板上のパッドと接合した場合、良好な接合性が得られる。さらに、CuとZnおよびNiを含む場合、Zn含有量がNi含有量より多い組成範囲では、260℃接合においてより一層強い接合性が得られ、良好な端子電極としての特性を示すことが確認された。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0062】
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るセラミック電子部品として積層バリスタを例示したが、本発明に係るセラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサ、コンデンサ、圧電素子、インダクタ、サーミスタ、抵抗、トランジスタ、ダイオード、水晶発振素子およびこれらの複合素子、その他の表面実装型電子部品が例示される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、外表面に端子電極が形成される任意のセラミック電子部品に適用が可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 端子電極
20 素体(セラミック素体)
20a 主面
21,22,23 セラミック層
31 スルーホール電極
32 内部電極
100 セラミック電子部品
図1