特許第6260435号(P6260435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

<>
  • 特許6260435-半導体装置およびその製造方法 図000002
  • 特許6260435-半導体装置およびその製造方法 図000003
  • 特許6260435-半導体装置およびその製造方法 図000004
  • 特許6260435-半導体装置およびその製造方法 図000005
  • 特許6260435-半導体装置およびその製造方法 図000006
  • 特許6260435-半導体装置およびその製造方法 図000007
  • 特許6260435-半導体装置およびその製造方法 図000008
  • 特許6260435-半導体装置およびその製造方法 図000009
  • 特許6260435-半導体装置およびその製造方法 図000010
  • 特許6260435-半導体装置およびその製造方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6260435
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20180104BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20180104BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20180104BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180104BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20180104BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20180104BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20180104BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   H01L29/80 F
   H01L29/80 H
   H01L29/78 617J
   H01L29/78 618E
   H01L29/78 617N
   H01L29/78 301B
   H01L29/78 301G
   H01L29/78 301X
   H01L29/78 371
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-91098(P2014-91098)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2015-211103(P2015-211103A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 和博
(72)【発明者】
【氏名】樽見 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】大澤 青吾
(72)【発明者】
【氏名】成田 哲生
(72)【発明者】
【氏名】冨田 一義
【審査官】 杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−192944(JP,A)
【文献】 特開昭57−157573(JP,A)
【文献】 特開2007−214483(JP,A)
【文献】 特開2008−305819(JP,A)
【文献】 特開昭61−294870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/336
H01L 29/78
H01L 29/788
H01L 29/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体層(3)と、前記第1半導体層とヘテロ接合されることによって前記第1半導体層に2次元電子ガス層(6a)を生成する第2半導体層(4a)と、を有する基板(5)と、
前記基板上に形成された第1絶縁膜(7)と、
前記第1絶縁膜上に形成され、負の電荷を蓄積するフローティングゲート電極(8)と、
前記フローティングゲート電極を覆う第2絶縁膜(9)と、
前記第2絶縁膜を介して前記フローティングゲート電極上に配置されたコントロールゲート電極(10)と、
前記基板上に形成された第1電極(11)と、
前記基板上に形成された第2電極(12)と、を備えるノーマリオフ型の半導体装置において、
前記フローティングゲート電極に前記第1絶縁膜または前記第2絶縁膜を介して負の電荷を注入する電荷注入電極(13)を有し、
前記第1絶縁膜のうちの前記第1電極と前記第2電極との間の電流経路となる前記2次元電子ガス層を生成する前記第2半導体層と前記フローティングゲート電極との間に位置する部分の厚さ(T2)は、前記電荷注入電極から前記第1絶縁膜または前記第2絶縁膜のうちの前記フローティングゲート電極に蓄積させる負の電荷が通過する電荷注入領域(7b、9e)の厚さ(T1、T4)より厚くされており、
前記第2半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間の電流経路となる前記2次元電子ガス層を前記第1半導体層に生成する第1領域(4a)と、当該2次元電子ガス層と分離された2次元電子ガス層(6b)を前記第1半導体層に生成する第2領域(4b)とを有し、
前記第1絶縁膜は、前記第2領域上に位置する部分に凹部(7a)が形成され、前記凹部の底面と前記第2領域との間に位置する部分にて前記電荷注入領域(7b)を構成しており、
前記フローティングゲート電極は、前記凹部を埋め込むように配置されており、
前記電荷注入電極は、前記第2領域と電気的に接続されることにより、前記第2領域にて生成された前記2次元電子ガス層および前記電荷注入領域を介して前記フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2領域にて生成された前記2次元電子ガス層は、ダメージ領域(14)によって分断されていることを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項3】
第1半導体層(3)と、前記第1半導体層とヘテロ接合されることによって前記第1半導体層に2次元電子ガス層(6a)を生成する第2半導体層(4a)と、を有する基板(5)と、
前記基板上に形成された第1絶縁膜(7)と、
前記第1絶縁膜上に形成され、負の電荷を蓄積するフローティングゲート電極(8)と、
前記フローティングゲート電極を覆う第2絶縁膜(9)と、
前記第2絶縁膜を介して前記フローティングゲート電極上に配置されたコントロールゲート電極(10)と、
前記基板上に形成された第1電極(11)と、
前記基板上に形成された第2電極(12)と、を備えるノーマリオフ型の半導体装置において、
前記フローティングゲート電極に前記第1絶縁膜または前記第2絶縁膜を介して負の電荷を注入する電荷注入電極(13)を有し、
前記第1絶縁膜のうちの前記第1電極と前記第2電極との間の電流経路となる前記2次元電子ガス層を生成する前記第2半導体層と前記フローティングゲート電極との間に位置する部分の厚さ(T2)は、前記電荷注入電極から前記第1絶縁膜または前記第2絶縁膜のうちの前記フローティングゲート電極に蓄積させる負の電荷が通過する電荷注入領域(7b、9e)の厚さ(T1、T4)より厚くされており、
前記基板の上方から視たとき、前記フローティングゲート電極は前記コントロールゲート電極から突出しており、
前記第2絶縁膜は、前記フローティングゲート電極のうちの前記コントロールゲート電極から突出する部分を覆う部分に凹部(9d)が形成され、前記凹部の底面と前記フローティングゲート電極との間に位置する部分にて前記電荷注入領域(9e)を構成しており、
前記電荷注入電極は、前記凹部を埋め込むように配置され、前記電荷注入領域を介して前記フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記第2絶縁膜は、前記フローティングゲート電極と前記コントロールゲート電極との間に位置する部分の厚さ(T3)が前記電荷注入領域の厚さより厚くされていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記基板の上方から視たとき、前記電荷注入領域の面積は、前記第1絶縁膜のうちの前記第1電極と前記第2電極との間の電流経路となる前記2次元電子ガス層を生成する前記第2半導体層と前記フローティングゲート電極との間に位置する部分の面積より小さくされていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記基板の上方から視たとき、前記電荷注入領域の面積は、前記第2絶縁膜のうちの前記フローティングゲート電極と前記コントロールゲート電極との間に位置する部分の面積より小さくされていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
第1半導体層(3)と、前記第1半導体層とヘテロ接合されることによって前記第1半導体層に2次元電子ガス層(6a)を生成する第2半導体層(4a)と、を有する基板(5)を用意する工程と、
前記基板上に前記第1絶縁膜(7)を形成する工程と、
前記第1絶縁膜上にフローティングゲート電極(8)を形成する工程と、
前記フローティングゲート電極を覆う第2絶縁膜(9)を形成する工程と、
前記第2絶縁膜上にコントロールゲート電極(10)を形成する工程と、
前記フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる電荷注入電極(13)を形成する工程と、
前記電荷注入電極から前記フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる工程と、を行い、
前記第1絶縁膜を形成する工程および前記第2絶縁膜を形成する工程では、前記第1絶縁膜のうちの前記第1電極と前記第2電極との間の電流経路となる前記2次元電子ガス層を生成する前記第2半導体層と前記フローティングゲート電極との間に位置する部分の厚さ(T2)が前記電荷注入電極から前記第1絶縁膜または前記第2絶縁膜のうちの前記フローティングゲート電極に蓄積させる負の電荷が通過する電荷注入領域(7b、9e)の厚さ(T1、T4)より厚くなるように、前記第1、第2絶縁膜を形成し、
前記基板として、前記第1電極と前記第2電極との間の電流経路となる前記2次元電子ガス層を前記第1半導体層に生成する前記第2半導体層としての第1領域(4a)と、当該2次元電子ガス層と分離された2次元電子ガス層(6b)を前記第1半導体層に生成する第2領域(4b)とを有するものを用意し、
前記第1絶縁膜を形成する工程では、前記第1絶縁膜を形成した後、前記第2領域上に位置する部分に凹部(7a)を形成することにより、前記凹部の底面と前記第2領域との間に位置する部分にて前記電荷注入領域(7b)を構成し、
前記フローティングゲート電極を形成する工程では、前記凹部を埋め込むように前記フローティングゲート電極を形成し、
前記電荷注入電極を形成する工程では、前記第2領域を介して前記第2領域にて生成された前記2次元電子ガス層と電気的に接続されるように前記電荷注入電極を形成し、
前記フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる工程では、前記電荷注入電極から前記第2領域にて生成された前記2次元電子ガス層および前記電荷注入領域を介して前記フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積し、
前記フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる工程の後、前記フローティングゲート電極と前記電荷注入電極とを分離する工程を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記分離する工程では、前記第2領域にて生成された前記2次元電子ガス層が分断されるように、前記第1半導体層にダメージ領域(14)を形成することを特徴とする請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記分離する工程では、前記電荷注入電極を除去することを特徴とする請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
第1半導体層(3)と、前記第1半導体層とヘテロ接合されることによって前記第1半導体層に2次元電子ガス層(6a)を生成する第2半導体層(4a)と、を有する基板(5)を用意する工程と、
前記基板上に前記第1絶縁膜(7)を形成する工程と、
前記第1絶縁膜上にフローティングゲート電極(8)を形成する工程と、
前記フローティングゲート電極を覆う第2絶縁膜(9)を形成する工程と、
前記第2絶縁膜上にコントロールゲート電極(10)を形成する工程と、
前記フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる電荷注入電極(13)を形成する工程と、
前記電荷注入電極から前記フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる工程と、を行い、
前記第1絶縁膜を形成する工程および前記第2絶縁膜を形成する工程では、前記第1絶縁膜のうちの前記第1電極と前記第2電極との間の電流経路となる前記2次元電子ガス層を生成する前記第2半導体層と前記フローティングゲート電極との間に位置する部分の厚さ(T2)が前記電荷注入電極から前記第1絶縁膜または前記第2絶縁膜のうちの前記フローティングゲート電極に蓄積させる負の電荷が通過する電荷注入領域(7b、9e)の厚さ(T1、T4)より厚くなるように、前記第1、第2絶縁膜を形成し、
前記フローティングゲート電極を形成する工程および前記コントロールゲート電極を形成する工程では、前記基板の上方から視たとき、前記フローティングゲート電極が前記コントロールゲート電極から突出するように前記フローティングゲート電極および前記コントロールゲート電極を形成し、
前記第2絶縁膜を形成する工程では、前記第2絶縁膜を形成した後、前記第2絶縁膜のうちの前記フローティングゲート電極における前記コントロールゲート電極から突出する部分を覆う部分に凹部(9d)を形成することにより、前記凹部の底面と前記フローティングゲート電極との間に位置する部分にて前記電荷注入領域(9e)を構成し、
前記電荷注入電極を形成する工程では、前記凹部を埋め込むように前記電荷注入電極を構成し、
前記フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる工程では、前記電荷注入電極から前記電荷注入領域を介して前記フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積し、
前記フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる工程の後、前記電荷注入電極を除去することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)を備えた半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ノーマリオフ型のHEMTを備えた半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、この半導体装置は、電子走行層上に電子供給層がヘテロ接合されて積層された基板を備えている。そして、この基板上には、第1絶縁膜を介して負の電荷(電子)が蓄積されるフローティングゲート電極が形成され、フローティングゲート電極上に第2絶縁膜を介してコントロールゲート電極が形成されている。また、第1、第2絶縁膜には、電子供給層の一部を露出させる開口部が形成されており、当該開口部にソース電極およびドレイン電極が形成されている。
【0004】
このような半導体装置では、ヘテロ接合面に電流経路(チャネル)としての2次元電子ガス層(以下では、2DEG層という)が形成されるが、フローティングゲート電極に蓄積された負の電荷による電界効果作用によって2DEG層が分断される。つまり、上記半導体装置では、コントロールゲート電極に所定の電圧を印加しなくてもソース電極とドレイン電極との間に電流が流れないオフ状態にすることができ、ノーマリオフ特性を得ることができる。
【0005】
なお、フローティングゲート電極に負の電荷(電子)を蓄積させる方法として、次の方法が提案されている。すなわち、ドレイン電極、ソース電極、コントロールゲート電極に所定の電圧を印加し、電子を第1絶縁膜を介してフローティングゲート電極にトンネルさせて注入することにより、当該フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる。つまり、上記半導体装置では、第1絶縁膜を薄く形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−214483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記半導体装置では、電子注入のために第1絶縁膜を薄くしているため、フローティングゲート電極に蓄積された電子が2DEG層に漏れ易い。このため、蓄積された電子が時間と共に少なくなり、コントロールゲート電極によって2DEG層を分断することができなくなる。すなわち、上記半導体装置では、長期間経過した後では、ノーマリオフ特性を得ることができなくなる可能性がある。特に、電力用半導体装置では、ゲート1つあたりの面積がフローティングゲート電極を有するメモリ等に比べて非常に大きいため、比較的短時間でノーマリオフ特性を得ることができなくなる可能性がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、フローティングゲート電極から2DEG層に電荷が抜けることを抑制できる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1および3に記載の発明では、第1半導体層(3)と、第1半導体層とヘテロ接合されることによって第1半導体層に2DEG層(6a)を生成する第2半導体層(4a、4b)と、を有する基板(5)と、基板上に形成された第1絶縁膜(7)と、第1絶縁膜上に形成され、負の電荷を蓄積するフローティングゲート電極(8)と、フローティングゲート電極を覆う第2絶縁膜(9)と、第2絶縁膜を介してフローティングゲート電極上に配置されたコントロールゲート電極(10)と、基板上に形成された第1電極(11)と、基板上に形成された第2電極(12)と、を備えるノーマリオフ型の半導体装置において、以下の点を特徴としている。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明では、フローティングゲート電極に第1絶縁膜または第2絶縁膜を介して負の電荷(電子)を注入する電荷注入電極(13)を有し、第1絶縁膜のうちの第1電極と第2電極との間の電流経路となる2DEG層を生成する第2半導体層とフローティングゲート電極との間に位置する部分の厚さ(T2)は、電荷注入電極から第1絶縁膜または第2絶縁膜のうちのフローティングゲート電極に蓄積させる負の電荷が通過する電荷注入領域(7b、9e)の厚さ(T1、T4)より厚くされており、第2半導体層は、第1電極と第2電極との間の電流経路となる2次元電子ガス層を第1半導体層に生成する第1領域(4a)と、当該2次元電子ガス層と分離された2次元電子ガス層(6b)を第1半導体層に生成する第2領域(4b)とを有し、第1絶縁膜は、第2領域上に位置する部分に凹部(7a)が形成され、凹部の底面と第2領域との間に位置する部分にて電荷注入領域(7b)を構成しており、フローティングゲート電極は、凹部を埋め込むように配置されており、電荷注入電極は、第2領域と電気的に接続されることにより、第2領域にて生成された2次元電子ガス層および電荷注入領域を介してフローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させることを特徴としている。
また、請求項3に記載の発明では、基板の上方から視たとき、フローティングゲート電極はコントロールゲート電極から突出しており、第2絶縁膜は、フローティングゲート電極のうちのコントロールゲート電極から突出する部分を覆う部分に凹部(9d)が形成され、凹部の底面とフローティングゲート電極との間に位置する部分にて電荷注入領域(9e)を構成しており、電荷注入電極は、凹部を埋め込むように配置され、電荷注入領域を介してフローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させることを特徴としている。
【0011】
これによれば、第1絶縁膜のうちの第1電極と第2電極との間の電流経路となる2DEG層を生成する第2半導体層とフローティングゲート電極との間に位置する部分の厚さが電荷注入領域より厚くされている。このため、フローティングゲート電極に蓄積された電荷が第1電極と第2電極との間の電流経路となる2DEG層に抜けることを抑制できる。
【0012】
また、請求項7および10に記載の発明では、第1半導体層(3)と、第1半導体層とヘテロ接合されることによって第1半導体層に2DEG層(6a)を生成する第2半導体層(4a、4b)と、を有する基板(5)を用意する工程と、基板上に第1絶縁膜(7)を形成する工程と、第1絶縁膜上にフローティングゲート電極(8)を形成する工程と、フローティングゲート電極を覆う第2絶縁膜(9)を形成する工程と、第2絶縁膜上にコントロールゲート電極(10)を形成する工程と、フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる電荷注入電極(13)を形成する工程と、電荷注入電極からフローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる工程と、を行い、第1絶縁膜を形成する工程および第2絶縁膜を形成する工程では、第1絶縁膜のうちの第1電極と第2電極との間の電流経路となる2DEG層を生成する第2半導体層とフローティングゲート電極との間に位置する部分の厚さ(T2)が電荷注入電極から第1絶縁膜または第2絶縁膜のうちのフローティングゲート電極に蓄積させる負の電荷が通過する電荷注入領域(7b、9e)の厚さ(T1、T4)より厚くなるように形成することを特徴としている。
さらに、請求項7に記載の発明では、基板として、第1電極と第2電極との間の電流経路となる2次元電子ガス層を第1半導体層に生成する第2半導体層としての第1領域(4a)と、当該2次元電子ガス層と分離された2次元電子ガス層(6b)を第1半導体層に生成する第2領域(4b)とを有するものを用意し、第1絶縁膜を形成する工程では、第1絶縁膜を形成した後、第2領域上に位置する部分に凹部(7a)を形成することにより、凹部の底面と第2領域との間に位置する部分にて電荷注入領域(7b)を構成し、フローティングゲート電極を形成する工程では、凹部を埋め込むようにフローティングゲート電極を形成し、電荷注入電極を形成する工程では、第2領域を介して第2領域にて生成された2次元電子ガス層と電気的に接続されるように電荷注入電極を形成し、フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる工程では、電荷注入電極から第2領域にて生成された2次元電子ガス層および電荷注入領域を介してフローティングゲート電極に負の電荷を蓄積し、フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる工程の後、フローティングゲート電極と電荷注入電極とを分離する工程を行うことを特徴としている。
また、請求項10に記載の発明では、フローティングゲート電極を形成する工程およびコントロールゲート電極を形成する工程では、基板の上方から視たとき、フローティングゲート電極がコントロールゲート電極から突出するようにフローティングゲート電極およびコントロールゲート電極を形成し、第2絶縁膜を形成する工程では、第2絶縁膜を形成した後、第2絶縁膜のうちのフローティングゲート電極におけるコントロールゲート電極から突出する部分を覆う部分に凹部(9d)を形成することにより、凹部の底面とフローティングゲート電極との間に位置する部分にて電荷注入領域(9e)を構成し、電荷注入電極を形成する工程では、凹部を埋め込むように電荷注入電極を構成し、フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる工程では、電荷注入電極から電荷注入領域を介してフローティングゲート電極に負の電荷を蓄積し、フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる工程の後、電荷注入電極を除去することを特徴としている。
【0013】
これによれば、第1絶縁膜のうちの第1電極と第2電極との間の電流経路となる2DEG層を生成する第2半導体層とフローティングゲート電極との間に位置する部分の厚さを電荷注入領域より厚くしている。このため、フローティングゲート電極に負の電荷を蓄積させる工程の後、フローティングゲート電極に蓄積された電荷が第1電極と第2電極との間の電流経路となる2DEG層に抜けることを抑制できる。
【0014】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態におけるHEMTを備えた半導体装置の断面図である。
図2図1に示す半導体装置の別の断面図である。
図3図1に示す半導体装置の平面図である。
図4】半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5図4に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図6】本発明の第2実施形態におけるHEMTを備えた半導体装置の断面図である。
図7図6に示す半導体装置の平面図である。
図8】本発明の第3実施形態における半導体装置の断面図である。
図9図8に示す半導体装置の製造工程を示す平面図である。
図10】本発明の他の実施形態におけるHEMTを備えた半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1および図2に示されるように、本実施形態のHEMTを備えた半導体装置は、支持基板1、バッファ層2、電子走行層3、第1、第2電子供給層4a、4bが順に積層された基板5を備えている。
【0018】
なお、図1図3中のI−I線に沿った断面に相当しており、図2図3中のII−II線に沿った断面に相当している。また、本実施形態では、電子走行層3が本発明の第1半導体層に相当し、第1、第2電子供給層4a、4bが本発明の第2半導体層に相当している。そして、第1電子供給層4aが本発明の第1領域に相当し、第2電子供給層4bが本発明の第2領域に相当している。
【0019】
支持基板1は、Si基板やSiC基板、GaN基板、サファイア基板等が用いられ、バッファ層2は、支持基板1の格子定数と電子走行層3の格子定数とを合わせるための化合物層等が用いられる。なお、バッファ層2は、HEMTの動作に直接関係するものではないため、特に支持基板1がGaN基板のような自立基板やサファイア基板等の場合には備えられていなくてもよい。
【0020】
電子走行層3は、電流経路(チャネル)として機能する電子密度の高い2DEG層6a、6bが生成されるものであり、窒化ガリウム(GaN)等で構成されている。
【0021】
第1、第2電子供給層4a、4bは、電子走行層3よりも大きいバンドキャップを有する窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)等で構成され、電子走行層3とヘテロ接合されている。これにより、電子走行層3には、自発分極およびピエゾ分極により、第1、第2電子供給層4a、4bとの界面近傍に2DEG層6a、6bが生成されている。
【0022】
なお、第1電子供給層4aは、後述するフローティングゲート電極8における一端部側(図2中紙面左側)に形成され、第2電子供給層4bは、当該フローティングゲート電極8における他端部側(図2中紙面右側)に形成されている。そして、これら第1、第2電子供給層4a、4bは、厚さが一定とされている。また、具体的には後述するが、第1電子供給層4aの下方に形成される2DEG層6aにて後述するソース電極11とドレイン電極12との間の電流経路が構成され、第2電子供給層4bの下方に形成される2DEG層6bにてフローティングゲート電極8に電子(負の電荷)を蓄積させる際の経路が構成されている。
【0023】
そして、上記基板5上には第1絶縁膜7が形成され、第1絶縁膜7上には電子を蓄積する複数のフローティングゲート電極8が形成されている。本実施形態では、図3に示されるように、各フローティングゲート電極8は、それぞれ一方向に延設され、延設方向における他端部側(図3中紙面右側)において互いに接続されている。なお、第1絶縁膜7は酸化膜等で構成され、フローティングゲート電極8はポリシリコン等で構成されている。
【0024】
また、図2に示されるように、第1絶縁膜7には、第2電子供給層4b上に位置する部分に凹部7aが形成されることにより、凹部7aの底面と第2電子供給層4bとの間に位置する部分にて電荷注入領域7bが構成されている。そして、フローティングゲート電極8は、当該凹部7bに埋め込まれるように、第1絶縁膜7上に形成されている。
【0025】
電荷注入領域7bは、凹部7aの底面と第2電子供給層4bとの間の長さである厚さT1がトンネル効果によって電子が通過することのできる厚さとされている。また、第1絶縁膜7のうちのフローティングゲート電極8と第1電子供給層4aとの間に位置する部分の厚さT2は、電荷注入領域7bの厚さT1より厚くされている。具体的には、第1絶縁膜7のうちのフローティングゲート電極8と第1電子供給層4aとの間に位置する部分の厚さT2は、トンネル効果によって電子が通過し難い厚さとされている。つまり、フローティングゲート電極8に蓄積された電子が2DEG層6aに抜け難い厚さとされている。
【0026】
さらに、図2および図3に示されるように、基板5の上方から視たとき、第1絶縁膜7のうちの電荷注入領域7bの面積は、第1絶縁膜7のうちのフローティングゲート電極8と第1電子供給層4aとの間に位置する部分の面積より小さくされている。
【0027】
そして、第1絶縁膜7上にはフローティングゲート電極8を覆うように第2絶縁膜9が形成され、第2絶縁膜9上には複数のコントロールゲート電極10が形成されている。各コントロールゲート電極10は、図3に示されるように、フローティングゲート電極8の延設方向に沿って延設され、幅(図3中紙面上下方向の長さ)がフローティングゲート電極8と等しくされている。また、本実施形態では、コントロールゲート電極10の他端部(図2図3中紙面右側の端部)は、フローティングゲート電極8の他端部よりも内側で終端するように形成されている。そして、各コントロールゲート電極10は、他端部において互いに接続されている。なお、第2絶縁膜9は酸化膜等で構成され、コントロールゲート電極10はポリシリコン等で構成されている。
【0028】
ここで、第2絶縁膜9のうちのフローティングゲート電極8とコントロールゲート電極10との間に位置する部分の厚さT3は、第1絶縁膜7のうちのフローティングゲート電極8と第1電子供給層4aとの間に位置する部分の厚さT2と等しくされている。つまり、第2絶縁膜9のうちのフローティングゲート電極8とコントロールゲート電極10との間に位置する部分の厚さT3は、フローティングゲート電極8に蓄積された電子がコントロールゲート電極10に抜け難い厚さとされている。
【0029】
そして、図2および図3に示されるように、基板5の上方から視たとき、第1絶縁膜7のうちの電荷注入領域7bの面積は、第2絶縁膜9のうちのフローティングゲート電極8とコントロールゲート電極10との間に位置する部分の面積より小さくされている。
【0030】
また、図1および図3に示されるように、基板5(第1電子供給層4a)上には、フローティングゲート電極8およびコントロールゲート電極10を挟むようにソース電極11およびドレイン電極12が形成されている。これらソース電極11およびドレイン電極12は、フローティングゲート電極8の延設方向に沿って延設されている。そして、第1電子供給層4aとオーミック接触して当該第1電子供給層4aを介して第1電子供給層4aの下方に形成された2DEG層6aと電気的に接続されるように、第1、第2絶縁膜7、9に形成された開口部7c、7d、9a、9bに配置されている。
【0031】
なお、本実施形態では、ソース電極11が本発明の第1電極に相当し、ドレイン電極12が本発明の第2電極に相当している。そして、ソース電極11およびドレイン電極12は、例えば、Ti/Al層にて形成される。
【0032】
また、図2に示されるように、第1、第2絶縁膜7、9に形成された開口部7e、9cには、第2電子供給層4bとオーミック接触するように配置されることで第2電子供給層4bの下方に形成された2DEG層6bと電気的に接続される電荷注入電極13が形成されている。この電荷注入電極13は、外部回路と接続されることにより、第2電子供給層4bおよび第2電子供給層4bの下方に形成される2DEG層6bを介してフローティングゲート電極8に電子を注入するものである。言い換えると、第2電子供給層4bおよび第2電子供給層4bの下方に形成される2DEG層6bを介してフローティングゲート電極8に電子を蓄積させるものである。このため、電荷注入電極13は、フローティングゲート電極8に電子を注入した後(半導体装置の通常使用時)には、外部回路と接続されず、フローティング状態になっている。なお、電荷注入電極13は、フローティングゲート電極8よりも体積が小さくされていることが好ましい。
【0033】
以上が本実施形態における半導体装置の構成である。なお、図1および図2では特に図示していないが、コントロールゲート電極10を覆うように保護膜等が形成されていてもよい。
【0034】
このような半導体装置では、電荷注入電極13が外部回路と接続されると、電荷注入電極13から第2電子供給層4bの下方に形成された2DEG層6bを介してフローティングゲート電極8に電子が蓄積される。これにより、ソース電極11とドレイン電極12との間に電流を流す際の電流経路となる第1電子供給層4aの下方に形成された2DEG層6aは、フローティングゲート電極8による電界効果作用によって分断される。このため、コントロールゲート電極10に所定の電圧を印加しなくてもソース電極11とドレイン電極12との間に電流が流れないオフ状態にすることができ、ノーマリオフ特性を得ることができる。
【0035】
そして、コントロールゲート電極10に所定の閾値電圧以上の電圧が印加されると、コントロールゲート電極10によって分断された部分に電子が誘起されて電流経路が形成される。これにより、ソース電極11とドレイン電極12との間に電流が流れる。
【0036】
次に、上記半導体装置の製造方法について図4および図5を参照しつつ説明する。なお、図4および図5は、図3中のII−II線に沿った断面に相当している。
【0037】
まず、図4(a)に示されるように、支持基板1、バッファ層2、電子走行層3、第1、第2電子供給層4a、4bを有し、2DEG層6a、6bが生成されている基板5を用意する。
【0038】
そして、図4(b)に示されるように、基板5上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法等によって第1絶縁膜7を形成する。そして、マスクを用いたドライエッチング等により、第1絶縁膜7のうちの第2電子供給層4b上に位置する部分に凹部7aを形成することで電荷注入領域7bを構成する。なお、凹部7aは、上記のように、電荷注入領域7bの厚さT1がトンネル効果によって電子が通過することのできる厚さとなるように形成する。
【0039】
次に、図4(c)に示されるように、CVD法やスパッタ法等により、凹部7aが埋め込まれるように、第1絶縁膜7上にフローティングゲート電極8を形成する。
【0040】
続いて、図5(a)に示されるように、CVD法やALD法等により、フローティングゲート電極8を覆うように、第1絶縁膜7上に第2絶縁膜9を形成する。
【0041】
そして、図5(b)に示されるように、マスクを用いたドライエッチング等により、第1、第2絶縁膜7、9に開口部7e、9cを形成する。その後、CVD法やスパッタ法等で開口部7e、9cに電荷注入電極13を形成する。
【0042】
なお、図5(b)とは別断面において、第1、第2絶縁膜7、9には開口部7c、7d、9a、9bが形成される。そして、開口部7c、9aにソース電極11が形成され、開口部7d、9bにドレイン電極12が形成される。
【0043】
次に、特に図示しないが、電荷注入電極13に外部回路を接続することにより、第2電子供給層4b、2DEG層6b、第2電子供給層4b、電荷注入領域7bを介してフローティングゲート電極8に電子を蓄積する。これにより、ソース電極11とドレイン電極12との間に電流を流す際の電流経路となる2DEG層6aがフローティングゲート電極8によって分断された半導体装置が製造される。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、第1絶縁膜7のうちのフローティングゲート電極8と第1電子供給層4aとの間に位置する部分の厚さT2は、電荷注入領域7bの厚さT1より厚くされている。このため、フローティングゲート電極8に蓄積された電子が第1電子供給層4aの下方に形成される2DEG層6aに抜けることを抑制できる。
【0045】
なお、本実施形態においても、フローティングゲート電極8に蓄積された電子が電荷注入領域7bを介して電荷注入電極13に抜ける可能性がある。しかしながら、第1絶縁膜7のうちの電荷注入領域7bの面積は、第1絶縁膜7のうちのフローティングゲート電極8と第1電子供給層4aとの間に位置する部分の面積より小さくされている。このため、従来の半導体装置と比較して、フローティングゲート電極8から電荷注入領域7bを介して電荷注入電極13に抜ける電子(電荷)を少なくできる。
【0046】
また、電荷注入電極13は、電荷注入時以外は外部回路と接続されておらず、フローティング状態とされている。このため、フローティングゲート電極8に蓄積された電子(電荷)が電荷注入電極13に抜けたとしても当該電子(電荷)は電荷注入電極13に蓄積されて消滅しない。この場合、電荷注入電極13の体積がフローティングゲート電極8の体積より小さくされている場合には、フローティングゲート電極8に蓄積された電子(電荷)が電荷注入電極13に抜ける総量を少なくできる。
【0047】
そして、電荷注入電極13に所定の電子(電荷)が蓄積された場合(フローティングゲート電極8から所定量の電子が抜けた場合)には、フローティングゲート電極8と電荷注入電極13との間で電子(電荷)の移動が発生しなくなる。つまり、フローティングゲート電極8に蓄積された電子(電荷)が全て抜けることを抑制できる。このため、フローティングゲート電極8に蓄積させる電子(電荷)を適宜調整することにより、フローティングゲート電極8に蓄積された電子(電荷)が電荷注入電極13に抜けるとしても、2DEG層6aを分断するのに十分な電子(電荷)を残すことができる。言い換えると、2DEG層6aを分断するのに十分な電位にフローティングゲート電極8を維持することができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、第2絶縁膜9のうちのフローティングゲート電極8とコントロールゲート電極10との間に位置する部分の厚さT3は、電荷注入領域7bより厚くされている。そして、第1絶縁膜7のうちの電荷注入領域7bの面積は、第2絶縁膜9のうちのフローティングゲート電極8とコントロールゲート電極10との間に位置する部分の面積より小さくされている。このため、フローティングゲート電極8からコントロールゲート電極10に電子(電荷)が抜けることも抑制できる。
【0049】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して電荷注入電極13を形成する場所を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0050】
本実施形態では、図6および図7に示されるように、電荷注入電極13は第2絶縁膜9上に形成されている。なお、図6は、図7中のVI−VI線に沿った断面に相当している。
【0051】
具体的には、第2絶縁膜9には、フローティングゲート電極8のうちのコントロールゲート電極10から突出する部分を覆う部分に凹部9dが形成されている。そして、第2絶縁膜9のうちの凹部9dとフローティングゲート電極8との間に位置する部分にて電荷注入領域9eが形成されている。また、電荷注入電極13は、凹部9dに埋め込まれるように、第2絶縁膜9上に形成されている。
【0052】
なお、電荷注入領域9eは、上記第1実施形態と同様に、凹部9dの底面とフローティングゲート電極8との間の長さである厚さT4が電荷注入電極13からの電子がトンネル効果によって通過することのできる厚さとされている。そして、第1絶縁膜7のうちのフローティングゲート電極8と第1電子供給層4aとの間に位置する部分の厚さT2は、電荷注入領域9eの厚さT4より厚くされている。同様に、第2絶縁膜9のうちのフローティングゲート電極8とコントロールゲート電極10との間に位置する部分の厚さT3は、電荷注入領域9eの厚さT4より厚くされている。
【0053】
また、図6および図7に示されるように、基板5の上方から視たとき、第2絶縁膜9のうちの電荷注入領域9eの面積は、第1絶縁膜7のうちのフローティングゲート電極8と第1電子供給層4aとの間に位置する部分の面積より小さくされている。同様に、電荷注入領域9eの面積は、第2絶縁膜7のうちのフローティングゲート電極8とコントロールゲート電極10との間に位置する部分の面積より小さくされている。
【0054】
このように、第2絶縁膜9上に電荷注入電極13を形成し、電荷注入電極13から第2絶縁膜9の電荷注入領域9eを介してフローティングゲート電極8に電子を蓄積するようにしても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、電荷注入電極13から第2絶縁膜9にて構成される電荷注入領域9eを介してフローティングゲート電極8に電子が蓄積されるため、第2電子供給層4bは形成されていない。
【0056】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して第2電子供給層4bの下方に形成される2DEG層6bを分断したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0057】
本実施形態では、図8に示されるように、第2電子供給層4bの下方に形成される2DEG層6bは、ダメージ領域14によって分断されている。そして、基板5(第2電子供給層4b)のうちのダメージ領域14上の部分には、第3絶縁膜15が形成されている。
【0058】
このような半導体装置は、例えば、次のように製造される。すなわち、上記第1実施形態と同様の工程を行った後(フローティングゲート電極8に電子を蓄積した後)、図9に示されるように、マスクを用いたドライエッチング等により、第1、第2絶縁膜7、9に開口部7f、9fを形成して第2電子供給層4bの一部を露出させる。そして、基板5の上方からN、Ar等をイオン注入してダメージ領域14を形成することにより、2DEG層6bを分断する。その後、当該開口部7f、9fにCVD法やALD法等によって第3絶縁膜15を配置することにより、上記半導体装置が製造される。
【0059】
これによれば、フローティングゲート電極8に電子を蓄積した後に2DEG層6bが分断されるため、フローティングゲート電極8から電荷注入電極13に電子が抜け難くなる。このため、さらに、フローティングゲート電極8から電子が抜けることを抑制できる。
【0060】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0061】
例えば、上記各実施形態では、電子走行層3として窒化ガリウム、第1、第2電子供給層4a、4bとして窒化アルミニウムガリウムを例に挙げて説明した。しかしながら、電子走行層3および第1、第2電子供給層4a、4bの組み合わせは、2DEG層6a、6bが生成されるものであれば適宜変更可能であり、窒化インジウムガリウム(InGaN)や窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)、窒化インジウムアルミニウム(InAlN)等を用いてもよい。
【0062】
また、上記各実施形態において、第1、第2電子供給層4a、4bとして窒化アルミニウムガリウムを用いる場合には、第1、第2電子供給層4a、4bをAlとGaの混晶比の異なる複数の窒化アルミニウムガリウム層を複数積層して構成してもよい。
【0063】
そして、上記各実施形態では、各フローティングゲート電極8が延設方向の他端部側で接続されているものを説明したが、各フローティングゲート電極8が分離されていてもよい。この場合、各フローティングゲート電極8と対応するように電荷注入電極13を形成すればよい。
【0064】
さらに、上記各実施形態において、図10に示されるように、第1電子供給層4aに電子走行層3に達するゲートリセス16が形成されていてもよい。このような半導体装置では、ゲートリセス16によって2DEG層6aが分断されてノーマリオフ特性を得ることができるが、上記のようにフローティングゲート電極8を備えることにより、コントロールゲート電極10に印加する閾値電圧を適宜変更できる。
【0065】
そして、上記各実施形態において、第1電子供給層4aは、フローティングゲート電極8と対向する部分の厚さが部分的に薄くされていてもよい。言い換えると、図10において、ゲートリセス16は、電子走行層3に達しないように形成されていてもよい。つまり、フローティングゲート電極8と対向する部分の2DEG層6aの濃度が予め薄くされた半導体装置としてもよい。
【0066】
また、上記第3実施形態の変形例として、フローティングゲート電極8に電子を蓄積させた後、マスクを用いたドライエッチング等により、電荷注入電極13を除去するようにしてもよい。そして、上記第2実施形態においても、フローティングゲート電極8に電子を蓄積させた後に電荷注入電極13を除去するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
3 電子走行層(第1半導体層)
4a、4b 第1、第2電子走行層(第1、第2領域)
5 基板
6a、6b 2DEG層
7 第1絶縁膜
7b 電荷注入領域
8 フローティングゲート電極
9 第2絶縁膜
9e 電荷注入領域
10 コントロールゲート電極
11 ソース電極(第1電極)
12 ドレイン電極(第2電極)
13 電荷注入電極

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10