(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記動的システムはガスタービンエンジンであって、前記センサが検出する観測値は、ガスタービンエンジンにおける回転数、温度及び圧力を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の推定装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、動的システムの推定装置及び推定方法の実施の形態として、ガスタービンエンジン推定装置について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、ガスタービンエンジン推定装置の概略的な構成を示す図である。このガスタービンエンジン推定装置において、図中の上側にはガスタービンエンジンの実機モデルが配置されている。この実機モデルは、後述するように、ガスタービンエンジンの構成を簡易化して動作を模擬するように、ガスタービンエンジンから高圧圧縮機、燃焼器を含む構成を取り出してモデル化したものである。また、燃焼器の後段には高圧タービンの一部の構成も含まれている。図中では、高圧圧縮機を単に圧縮機と記載している。
【0015】
ガスタービンエンジン推定装置において、図中の下側にはカルマンフィルタが配置されている。このカルマンフィルタは、ガスタービンエンジンの実機モデルのダイナミクスを再現する動的モデルとして実機モデルと同様の構成を含んでいる。なお、図中において、カルマンフィルタによる推定値にはハットをつけて実機モデルの変数と区別することにする。
【0016】
このカルマンフィルタの圧縮機においては、実機モデルに性能パラメータ(流量変化特性係数)qwciを導入する乗算器に対応する部分には、この性能パラメータqwciを推定するための一次遅れ要素が含まれている。本実施の形態では、この一次遅れ要素を導入することによって性能パラメータを状態変数に変換し、センサの数より多い性能パラメータについても時間変化を推定することができるようにしている。このような一次遅れ要素についてはさらに後述する。
【0017】
図2は、
図1に示したガスタービンエンジン推定装置における実機モデルの構成を示す図である。この実機モデルは、実際のガスタービンエンジンの動作を模擬するように簡略化して構成したものである。図中の圧縮機と燃焼器のブロックは、それぞれガスタービンエンジンの高圧圧縮機及び燃焼器に対応している。また、燃焼器のブロックの右側の部分は高圧タービンの一部に相当している。
【0018】
図3は、積分要素の構成を示す図である。本実施の形態では、離散時間でシミュレーションを行うため、離散時間の増分dtを掛けてから積分を行っている。ペナント(三角旗)型のブロックは、入力値を定数倍するゲイン要素を意味している。なお、カルマンフィルタにおけるゲイン要素については、対応する符号に“´”を服することで実機モデルのゲイン要素との対応関係を示すことにする。
【0019】
図4は、ガスタービンエンジンのファン・圧縮機要素のモデル化について説明する図である。このファン・圧縮機要素は、
図2に示した実機モデルにおける圧縮器に相当している。また、燃焼室の後段の高圧タービンの一部に対応する部分にも相当している。
【0020】
図4(a)に示すように、ファン・圧縮機要素は、断熱効率η、ロータ機械の回転数Nであり、要素入口空気圧力Pci、要素入口空気流量Wci、要素出口空気圧力Po、要素出口空気流量Wo、抽気流量Wbである。
【0021】
図4(b)は、これらの変数について、ファン・圧縮機要素の要素性能と要素間容積における関係を示している。要素間容積は、ファン・圧縮機要素の出口容積に相当している。
【0022】
要素性能は、要素出口空気圧力Poの要素入口空気圧力Pciに対する比Po/Pciと回転数Nに応じて要素入口空気流量Wciと断熱効率ηが決まる静特性となっている。要素間容積は、容積出口空気流量Woと容積入口空気流量Wiの差Wo−Wiに応じて容積の圧力Poと質量Mが決まる動特性となっている。ここで、要素入口空気流量Wiは要素入口空気流量Wciから抽気流量Wbを差し引いたWci−Wbである。
【0023】
図5は、
図4(b)で示したファン・圧縮機要素と要素間容積における関係を説明する図である。ファン・圧縮機要素には、要素入口圧力Pci、回転数N、要素入口比エンタルピhciが入力されている。また、後段の要素間要素から容積出口圧力P0が入力されている。
【0024】
ファン・圧縮機要素は、空気流量Wcizと容積出口圧力P0の容積入口圧力Pciに対する圧力比Π=P0/Pciとの関係を示す特性曲線のマップに従い、当該圧力比Πに対応する空気流量Wci mapを決める。この値に性能パラメータ(流量特性変化係数)qwciを乗じた値を要素入口空気流量Wciとして出力する。
【0025】
また、ファン・圧縮機要素は、空気流量Wciと断熱効率ηの関係を示す特性曲線のマップに従い、要素入口空気流Wciに対応する断熱効率ηを決める。そして、要素入口比エンタルピhci、圧力比Π、断熱効率ηに基づいて計算した容積入口比エンタルピhiを出力する。
【0026】
前記の空気流量Wciと前記圧力比Πの関係を示すマップと空気流量Wciと断熱効率ηの関係を示すマップにおいては、複数の特性曲線が描かれている。これらの特性曲線は、例えばファン・圧縮機要素の効率によって選択される。図中では90%の効率に相当する特性曲線が選択されている。
【0027】
要素間容積には、ファン・圧縮機要素からの要素入口空気流量Wciから抽気流量Wbを差し引いた要素入口空気流量Wiが入力され、ファン・圧縮機要素から容積入口比エンタルピhiが入力されている。また、後段の要素から容積出口空気流量Woが入力されている。
【0028】
要素間容積においては、容積入口空気流量Wiから容積出口容器流量Woを差引いた空気流量が質量の時間微分となっている。要素間容積は、この質量の時間微分を積分した質量Mを出力している。また、容積入口空気流量Wi、容積出口空気流量Wo、質量M等に基づいて容積出口エンタルピho、容積出口圧力poを計算して出力している。
【0029】
図2に示した実機モデルは、このようなファン・圧縮器要素と要素間容積の関係に基づいて次のように構成されている。
【0030】
圧縮機における空気流量W25mapは、高圧圧縮機の特性曲線のマップにより定められる空気流量を模擬している。このため、W25mapは、第1ゲイン要素11によりロータ機械の回転数NGに比例する値と、第2ゲイン要素12により圧縮機の出口圧力P3に比例する値の和とされている。
【0031】
圧縮器では、
図5のファン・圧縮機要素に示したように、空気流量W25mapに性能パラメータ(流量特性変化係数)qwciを乗算して要素入口空気流量W25としている。要素間容積においては、流入空気流量となるW25から流出空気流量となるW3を差し引いたものが質量の時間微分となることから、W25−W3を積分することによりM3を得ている。また、要素間容積における圧力P3は、第3ゲイン要素13により質量M3に比例するものとしている。
【0032】
要素間容積の出口空気流量W3は、このW3の時間微分が入口圧より出口圧を差し引いた値に比例することから、入口圧となるP3から出口圧となるP4を差し引いたP3−P4を積分した値としている。
【0033】
燃焼器では、要素間容積において、質量M4の時間微分は、高圧圧縮機の出口空気流量W3に燃料流量WFを加えた流入ガス流量から流出ガス流量となるW4を差し引いた値となっている。したがって、質量M4はこれらの値を積分することにより求められる。また、燃焼器のガス圧力P4は、第6ゲイン要素16により質量M4に比例するものとされる。
【0034】
燃焼器の後段の高圧タービンに相当する部分においては、高圧タービンにおける特性曲線のマップにより定められるガス流量を模擬している。このため、高圧タービンの出口ガス流量W4は、第9ゲイン要素21によりロータ機械の回転数NGに比例するようにされた値と、第8ゲイン要素20により燃焼器のガス圧力P4に比例するようにされた値の和とれている。
【0035】
ロータ機械の回転数NGの時間微分は、高圧タービンのトルクから高圧圧縮機のトルクを差し引いた値に比例する。したがって、ロータ機械の回転数NGはこの値を積分することにより求められる。高圧タービンのトルクと高圧圧縮機のトルクは、第5ゲイン要素15により燃焼器のガス圧力P4に比例するようにされた値と、第7ゲイン要素19により高圧圧縮機のガス圧力P3に比例するようにされた値とされている。
【0036】
図6は、
図1に示したガスタービンエンジン推定装置におけるカルマンフィルタの構成を示す図である。本実施の形態のカルマンフィルタは、
図2で示した実機モデルと対比すると、実機モデルにおいて性能パラメータ(流量特性変化係数)qwciを乗算した乗算器が一次遅れ要素に置き換わっている点において相違している。
【0037】
図7は、一次遅れ要素の構成を示す図である。一次遅れ要素は、積分要素の構成を含み、所定の時定数τを有している。本実施の形態では、離散時間でシミュレーションするために離散時間の増分dtを含んでいる。
【0038】
カルマンフィルタは、状態x、性能パラメータq、センサパラメータy、入力uについて、次のような式によって表すことができる。tは離散時間であり、離散時間の増分はΔtである。xはn行、qはp行、yはm行、uはl行の列ベクトルである。
【数1】
【0039】
一般に、状態xはロータ機械の回転数、各要素の内部エネルギー、エンタルピなど動的システムにおける状態を記述する。性能パラメータは、流量・効率等の動的システムを構成する要素の性能を規定する特性変化係数である。センサパラメータは、ロータ機械の回転数、温度、圧力等の動的システムの外部からセンサにて検出された観測値である。
【0040】
具体的に、
図6に示したカルマンフィルタは、状態xとして次のようなパラメータを含んでいる。
【表1】
【0041】
性能パラメータqとして次のようなパラメータを含んでいる。
【表2】
【0042】
センサyとして次のようなパラメータを含んでいる。
【表3】
【0043】
入力uとして次のようなパラメータを含んでいる。
【表4】
【0044】
式(1)は、次のように線形化することができる。
【数2】
【0045】
式(2)を行列表示すると、次のようになる。この式(3)に基づいて定常カルマンフィルタを設計する。
【数3】
【0046】
ただし、次の(n+p)行の列ベクトルを規定した。
【数4】
【0047】
さらに、離散形の式(1)を連続形で記述すると、式(5)のようになる。ここで、1行目と2行目の式を式(4)で規定されるベクトルを用いて一つの式とすることができる。
【数5】
【0048】
カルマンフィルタは次のようになる。
【数6】
【0049】
線形化すると次のようになる。
【数7】
【0050】
ここで、性能パラメータを含む状態x
qを推定するためには(A、C)が可観測である必要があることから、次のような制約がある。すなわち、下記の式(8)のように、推定することができる性能パラメータの数は、センサの数以下でなければならない。この式(8)は、本明細書の末尾の付録1において導出する。例として示した
図6のシステムでは、表2と表3のとおり、(8)式の両辺はそれぞれ1であり、成立している。
(性能パラメータqの数)≦(センサyの数) ・・・(8)
【0051】
ただし、状態xについては、センサ数の制約はなく、単に(A、C)が可観測であればよい(このことについても付録1において示す)。このことから、推定したい生の性能パラメータqのうち一部を状態xとして含ませることにより、式(7)を成立させることができる。換言すると、推定する性能パラメータの数をセンサの数より多くすることが可能になる。性能パラメータqのうち一部を状態xとすることにより、(7)式の第1式で明らかなように状態xは動特性をもつこととなる。
【0052】
本実施の形態では、状態xにできるのは、動特性を持った積分要素の出力値であることを利用している。換言すると、積分値が状態xとなるので、性能パラメータqに該当する要素を積分要素に置き換えることにより、性能パラメータqを単なる係数から状態xの一部とすることができる。このことは、例えば性能パラメータqを導入する乗算器を一次遅れ要素に置き換えることにより実現することができる。
【0053】
図8は、一次遅れ要素を説明する図である。
図8(a)に示すように、所定の時定数τについて、一次遅れ要素への入力値Wは1/τ倍され、−1/τ倍された出力W´が加えられる。これらの和は積分されて出力値W´となる。
【0054】
図8(b)において、図中の実線で示すようなステップ関数Wが一次遅れ要素に入力されると、図中の破線に示すようにステップ入力に次第に追随するような形状の出力W´が得られる。
【0055】
この出力W´は積分計算が必要であるので、状態xの一部とすることができる。一次遅れ要素の出力W´はカルマンフィルタにより調整され、一次遅れ要素への入力と差異が生じることになる。性能パラメータqに相当する性能の経時的な変化は、一次遅れの出力値の入力値に対する比W´/Wにより求めることができる。
【0056】
図9は、
図5の構成において性能パラメータ(流量特性変化係数)qwciを導入した乗算器を一次遅れ要素に置き換えたものである。このような一次遅れ要素により容積入口空気流量Wciは積分値となり、状態xの一部とすることができる。
【0057】
この一次遅れ要素においては、ファン・圧縮機要素からの要素入口空気流量Wci mapを1/τ倍したものにこの一次遅れ要素の出力である容積流入空気質量Wciを(−1/τ)倍したものを加え、さらに要素入口流量Wciの変化量ΔWciを加えている。そして、これらの和を積分して出力となる容積流入空気質量Wciを得ている。
【0058】
図9の構成において性能パラメータ(流量特性変化係数)qwciは使用されていないが、これに相当する値は要素入口空気流量Wci mapの容積流入空気質量Wciに対する比として与えられる。換言すると、一次遅れ要素を導入することによって、本来は定数であった性能パラメータqwciの経時的な変化を得ることができた。
【0059】
次に、このような構成を有するガスタービンエンジン推定装置においてシミュレーションを実施した。このシミュレーションは、離散時間で行った。このため、所定時間τの一次遅れ要素
【数8】
について、次のように離散化して適用した。この式の導出については、本明細書の末尾に付録2として記載した。
【数9】
【実施例1】
【0060】
ガスタービンエンジン推定装置の実施例1として、離散時間dtと1次遅れの時間τをともに0.0025とし、性能パラメータ(流量特性変化係数)のqwciにおけるシステム雑音の大きさ(分散)を1×10
−5としてシミュレーションを行った。
【0061】
このガスタービンエンジン推定装置の各ゲイン要素のゲインについては、次のように設定した。
【表5】
【0062】
図10は、シミュレーションにより得られた容積入口空気流量W25の時間変化を示している。図中において、実線は実機モデルで得られた真の値であり、破線はカルマンフィルタの一次遅れ要素により得られた推定値である。以下でも同様である。
【0063】
図中において、時間の経過により真の値と推定値の間に偏差が生じているが、この偏差の値は小さい。したがって、この実施例1において、カルマンフィルタはタービン実機の動作を良好に推定しているということができる。性能パラメータ(特性変化変数)を推定することなく、1次遅れを介して得られた状態w25ハットが推定できていることがいえる。
【実施例2】
【0064】
実施例2では、実施例1に対して性能パラメータ(流量特性変化係数)のqwciにおけるシステム雑音大きさ(分散)を実施例1(10
−5)に対して1×10
10と大きくしてシミュレーションを行った。他の構成は実施例1と同様である。
図11は、実施例2の容積入口空気流量W25の時間変化を示している。時間の経過により真の値と推定値の間に偏差が生じているが、この偏差の値は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0065】
実施例3では、実施例1に対して一次遅れの時間τを0.025と離散時間の10倍に大きくしてシミュレーションを行った。他の構成は実施例1と同様である。
図12は、実施例3の容積入口空気流量W25の時間変化を示している。時間の経過による真の値と推定値の間の偏差は実施例1と同様である。
【実施例4】
【0066】
実施例4では、実施例1に対して一次遅れの時間τを0.025と離散時間の10倍に大きくし、さらに性能パラメータ(流量特性変化係数)のqwciにおけるシステム雑音の大きさ(分散)を1×10
10と大きくしてシミュレーションを行った。
図13は、実施例4による容積入口空気流量W25の時間変化を示している。真の値と推定値の偏差は、この実施例1〜4の中では最も小さくなった。
【0067】
図14は、比較のために従来のカルマンフィルタを含むガスタービンエンジン推定装置の構成を示す図である。このガスタービンエンジン推定装置においては、本実施の形態とは異なり容積入口空気流量W25の推定のために一次遅れ要素が設けられていない点において相違している。
【0068】
このような従来のカルマンフィルタでは、推定することができる性能パラメータの数は、センサの数以下でなければならなかった。なお、カルマンフィルタにおける推定値にはハットを付した。
【0069】
図15は、
図5に示したファン・圧縮要素と要素間容積の構成においてカルマンフィルタによる補正を施した図である。実機モデルの断熱効率ηは、カルマンフィルタによる補正により特性曲線のマップから求めた断熱効率ηmapにさらに性能パラメータ(断熱効率特性変化係数)qηを乗じたηmap×qηとして与えられている。性能パラメータ(流量特性変化係数)qwciは、変化量Δqwciを積分要素で積分して与えられている。
【0070】
要素間容積の質量Mの時間微分にはその変化量
【数10】
が加えられる。質量Mの時間微分は次の式で与えられ、性能パラメータqwciによる補正を質量Mの時間微分の変化量によって代替するようにしている。
【数11】
【0071】
なお、本実施の形態においては、動的システムをガスタービンエンジンに適用したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、各種エンジン、プラント等において、センサの数より多い性能パラメータを推定するために適用することができる。
【0072】
(付録1)
式(3)を参照すると、本実施の形態の可観測行列は、
【数12】
によって与えられる。この可観測行列がフルランクであれば可観測になる。
【0073】
ここで、
【数13】
【数14】
【数15】
である。
【0074】
行列F´、B´、H´は、行方向及び列方向にそれぞれ
【数16】
の要素を含んでいる。
【0075】
可観測行列は、次のように分解することができる。
【数17】
【0076】
ここで、行列M
O,D、I
(D)、T、S
Dは、行方向及び列方向にそれぞれ
【数18】
の要素を含んでいる。
【0077】
ここで、一般に行列のランクについて、次の関係式が成立する。
【数19】
この関係式を可観測行列が分解された式に適用すると、次のような関係式が得られる。
【数20】
【0078】
可観測行列のランク
【数21】
でフルランクとなるには、各分解要素のI
(D)、T、S
Dのランクがn+p以上となる必要がある。行列S
Dは、(n+m)×(n+p)行列であるため、n+p≦n+mすなわちp≦mでないと、ランクがn+p以上になり得ない。
【0079】
したがって、ランクがn+pとなるには、「性能パラメータqの数pがセンサyの数m以下とならなくてはいけない」という制約があることになる。この結果を式(7)に適用すると、(A、C)が可観測という必要から、性能パラメータの数がセンサの数以下でなければならないという式(8)が得られることになる。
【0080】
次に、行列Tには、性能パラメータを含まないエンジンモデルのシステム(F,H)の可観測行列M
(x)0が含まれている。
【数22】
【0081】
(F,H)が可観測のとき、M
(x)0はフルランクで
【数23】
となる。
【0082】
このとき、行列Tの構成から、明らかに
【数24】
となり、行列Tもフルランクとなる。したがって、性能パラメータを含まない状態xにセンサ数の制約はない。この結果を式(7)に適用すると、単に(A、C)が可観測であればよいことになる。
【0083】
(付録2)
離散時間でシミュレーションするために1次遅れ要素を離散時間で記述する。1次遅れ要素は、次のように表される。
【数25】
この式は、次のように変形することができる。
【数26】
【0084】
この式の両辺に
【数27】
を掛けると次のようになる。
【数28】
さらに、次のようにまとめることができる。
【数29】
両辺を積分する。
【数30】
【0085】
ここで、t−Δtからtの間にわたってX=Xn(サンプルホールド)とすると、
【数31】
となり、さらに
【数32】
から次の式が得られる。なお、式中の斜線は両辺で相殺する数を示す。
【数33】
ここで、
【数34】
とすると、離散形の一次遅れの式は
【数35】
となる。