特許第6260719号(P6260719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6260719
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/26 20060101AFI20180104BHJP
   G01N 30/08 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   G01N30/26 M
   G01N30/08 L
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-564481(P2016-564481)
(86)(22)【出願日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】JP2014083178
(87)【国際公開番号】WO2016098169
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2016年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 泰郎
(72)【発明者】
【氏名】ルヴィ ミカエル
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−014717(JP,A)
【文献】 特開2001−141709(JP,A)
【文献】 米国特許第5462660(US,A)
【文献】 特開2014−006241(JP,A)
【文献】 特開2012−127804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 − 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 液体試料中の目的成分を捕捉するための濃縮カラムと、
b) 前記目的成分を他の成分から分離するための分析カラムと、
c) 液体試料を含む試料導入用移動相を前記濃縮カラムに送給する流路を形成する状態と、前記濃縮カラムに捕捉された目的成分を溶出させる溶出液を該濃縮カラムに送給する流路を形成する状態と、を切り替える第1流路切替部と、
d) 前記目的成分を含む溶出液を貯留するための第1貯留部と、
e) 分析用移動相を前記分析カラムに送給する流路及び前記濃縮カラムからの溶出液を前記第1貯留部に送給する流路を形成する状態と、分析用移動相を前記第1貯留部を経由して前記分析カラムに送給する流路を形成する状態と、を切り替える第2流路切替部と
を備えることを特徴とする液体クロマトグラフ。
【請求項2】
f) 溶出液を貯留するための第2貯留部と、
g) 溶出液を前記第2貯留部に送給する流路を形成する状態と、試料導入用移動相を前記第2貯留部に送給し該第2貯留部に貯留された溶出液を前記濃縮カラムに送出する流路を形成する状態と、を切り替える第3流路切替部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項3】
前記第1貯留部の容量が前記第2貯留部の容量よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項4】
前記濃縮カラムを経由せずに液体試料を含む分析用移動相を前記分析カラムに導入可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料液に含まれる目的成分の濃縮等の前処理に用いられる濃縮抽出カラムと、目的成分を他の成分から分離するための分析カラムを有する液体クロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
分析対象である目的成分以外に様々な不要成分を含む液体試料について、そうした各種成分を分離して所望の目的成分の定性分析、定量分析を行うために、高速液体クロマトグラフ(HPLC)やHPLCの検出器として質量分析計を用いた液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)が広く使用されている。こうした分析装置で目的成分の分析精度や感度を高めるために分析カラムでの分離条件を適切に設定することが重要なのはもちろんであるが、試料を分析カラムに導入する前の段階で、目的成分の分析を妨害する成分や分析に不要な成分を除去したり、或いは、目的成分を濃縮したりするといったことが益々重要になってきている。こうした目的のために、従来より自動試料前処理装置が使用されている。
【0003】
液体クロマトグラフ用の試料前処理装置は、高圧流路切替バルブや試料中の目的成分を捕捉して濃縮するための濃縮カラムを用いたカラムスイッチングによるものが一般的である(例えば特許文献1〜3)。図1は、従来用いられている、試料前処理装置を備えたLC/MSの要部の構成の一例を示す概略図である。
【0004】
試料前処理装置110において、6ポート2ポジション型の高圧切替バルブ111のaポートには分析用ポンプ102が設けられた移動相供給流路103が接続され、分析用ポンプ102の動作により移動相容器101から吸引された移動相が移動相供給流路103に供給される。この高圧切替バルブ111のfポートには、分析カラム105及び質量分析計(MS)106が設けられた分析流路104が接続されている。7ポート6ポジション型の低圧切替バルブ115のポートb〜gには試料を満たした試料容器116に至る流路が接続され(但し、ここではポートd〜gに接続される流路は記載を省略している)、共通ポートaには、途中に注入用ポンプ114が設けられた前処理流路113が接続され、該流路113の他端は高圧切替バルブ111のポートdに接続されている。高圧切替バルブ111のポートb、ポートe間には、内部に捕集剤を充填した濃縮カラム112が接続され、さらにポートcには排液口に至る排液流路117が接続されている。
【0005】
上記LC/MSにおいて、試料の前処理時には、高圧切替バルブ111を点線で示す接続状態、低圧切替バルブ115を実線で示す接続状態にして、注入用ポンプ114を作動させる。すると、分析対象である液体試料(例えば生体由来の試料や土壌から採取した試料)が濃縮カラム112に流され、該試料中の目的成分が濃縮カラム112内の捕集剤に捕捉される。所定時間、液体試料を濃縮カラム112に流して目的成分を十分に捕捉した後に、高圧切替バルブ111を実線で示す接続状態に切り替え、濃縮カラム112と分析流路104とを接続し、分析用ポンプ102により移動相を移動相供給流路103から濃縮カラム112に供給する。すると、濃縮カラム112内の捕集剤から目的成分が溶出し移動相の流れに乗って分析カラム105に導入され、分析カラム105を通過する間に時間方向に成分分離される。質量分析計106は分析カラム105から溶出した成分を含む移動相を順次検出し、それぞれの成分に対応した検出信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−31012号公報
【特許文献2】特開2007−292620号公報
【特許文献3】特開2010−139448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
濃縮カラムには、捕集剤をポリマーに担持したカラムが適している。これは、ポリマーを用いたカラムが広範囲のpHの溶液に耐性を有し、溶出液として多様な溶液を用いることができるためである。後述する、ケイ酸塩を用いたカラムではpHが7以上の溶液を用いることができないのに対し、ポリマーを用いたカラムでは、例えば、上述した生体由来の試料や土壌から採取した試料に含まれるアンモニウム基を有する目的成分を溶出させるためにpHが高い水酸化アンモニウム溶液や炭酸アンモニウム溶液を用いることができる。
【0008】
一方、分析カラムには固定相をケイ酸塩に担持したカラムが適している。これは、ケイ酸塩を用いたカラムが、ポリマーを用いたカラムに比べて高い成分分離性能を有するためである。
【0009】
図1の液体クロマトグラフでは、試料前処理装置の濃縮カラム112で前処理された試料を移動相に溶出させ、そのまま分析カラム105に導入して成分分離する。この構成において成分分離性能が高いケイ酸塩のカラムを分析カラム105として用いると、溶出液(兼移動相)としてpHが7以下の溶液を用いなければならない。
一方、溶出液(兼移動相)としてpHが7以上の溶液を用いるためには、分析カラム105として成分分離特性が劣るポリマーのカラムを用いなければならない。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、試料中の目的成分を捕捉して濃縮等の前処理を行うための濃縮カラム及び目的成分を分離するための分析カラムを有する液体クロマトグラフであって、目的成分の前処理と分離にそれぞれ適したカラム、溶出液及び移動液を使用することができる液体クロマトグラフを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係る液体クロマトグラフは、
a) 液体試料中の目的成分を捕捉するための濃縮カラムと、
b) 前記目的成分を他の成分から分離するための分析カラムと、
c) 液体試料を含む試料導入用移動相を前記濃縮カラムに送給する流路を形成する状態と、前記濃縮カラムに捕捉された目的成分を溶出させる溶出液を該濃縮カラムに送給する流路を形成する状態と、を切り替える第1流路切替部と、
d) 前記目的成分を含む溶出液を貯留するための第1貯留部と、
e) 分析用移動相を前記分析カラムに送給する流路及び前記濃縮カラムからの溶出液を前記第1貯留部に送給する流路を形成する状態と、分析用移動相を前記第1貯留部を経由して前記分析カラムに送給する流路を形成する状態と、を切り替える第2流路切替部と
を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る液体クロマトグラフでは、以下のように目的成分を前処理して成分分離する。
まず、液体試料を含む試料導入用移動相を濃縮カラムに送給し、その内部に目的成分を捕捉する。そして、第1流路切替部を用いて濃縮カラムに溶出液を送給し、目的成分を溶出させて第1貯留部に貯留する。この間、分析カラムには分析用移動相を送給しておく。続いて、第2流路切替部を切り替え、第1貯留部に貯留された目的成分を含む溶出液を分析用移動相の流れに乗せて分析カラムに導入する。
【0013】
本発明に係る液体クロマトグラフでは、第1流路切替部により溶出液を濃縮カラムに送給する流路が、第2流路切替部により分析用移動相を分析カラムに送給する流路が、それぞれ独立した流路として形成される。また、目的成分を含む溶出液を一旦貯留する第1貯留部が設けられている。そのため、これらの流路にそれぞれ異なる溶液を送給することができる。また、分析用移動相が濃縮カラムに送給されることがなく、溶出液が大量に分析カラムに導入されることもない。従って、目的成分の前処理と分析にそれぞれ適した濃縮カラムと溶出液、分析カラムと移動相を用いることができる。
【0014】
本発明に係る液体クロマトグラフは、さらに、
f) 溶出液を貯留するための第2貯留部と、
g) 溶出液を前記第2貯留部に送給する流路を形成する状態と、試料導入用移動相を前記第2貯留部に送給し該第2貯留部に貯留された溶出液を前記濃縮カラムに送出する流路を形成する状態と、を切り替える第3流路切替部と
を備えることが好ましい。
【0015】
第2貯留部及び第3流路切替部を備える態様の液体クロマトグラフでは、まず、目的成分を溶出させるために必要な最小限の量の溶出液を第2貯留部に貯留する。そして、液体試料を含む試料導入用移動相を濃縮カラムに送給し、その内部に目的成分を捕捉させる。続いて、第2流路切替部により流路を切り替え、第2貯留部に貯留された溶出液を試料導入用移動相(液体試料を含まない)で送り出して濃縮カラムに送給し目的成分を溶出させて第1貯留部に貯留する。この態様の液体クロマトグラフでは、必要最小限の量の溶出液に目的成分を溶出させるため、高濃度の目的成分を含む溶液を分析することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る液体クロマトグラフを用いることにより、目的成分の前処理と分析にそれぞれ適した濃縮カラムと溶出液、分析カラムと移動相を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来の液体クロマトグラフの流路構成図。
図2】本発明に係る液体クロマトグラフの一実施例の流路構成図。
図3】本実施例の液体クロマトグラフにおける溶出液収容ステップにおいて使用する流路を説明する図。
図4】本実施例の液体クロマトグラフにおける試料注入ステップにおいて使用する流路を説明する図。
図5】本実施例の液体クロマトグラフにおける目的成分溶出ステップにおいて使用する流路を説明する図。
図6】本実施例の液体クロマトグラフにおける分析ステップにおいて使用する流路を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る液体クロマトグラフの一実施例について、以下、図面を参照して説明する。本実施例の液体クロマトグラフは、液体試料に含まれる目的成分に対して濃縮及び洗浄の前処理を施した後、該目的成分を他の成分から分離して分析するために用いられる。
【0019】
図2は、本実施例の液体クロマトグラフの流路構成図である。本実施例の液体クロマトグラフの流路には、10方バルブ1(後述するポンプ4及び6と協働して本発明の第1流路切替部を構成)、第1の6方バルブ11(本発明の第3流路切替部に相当)、及び第2の6方バルブ13(本発明の第2流路切替部に相当)の3つの流路切替バルブが配置されている。試料の導入及び前処理に用いられる第1の6方バルブ11は低圧バルブであり、分析用移動相の送給に用いられる第2の6方バルブ13は高圧バルブである。
【0020】
10方バルブ1には、ポートAとポートF、ポートBとポートHをそれぞれ常時接続する流路が形成されている。また、10方バルブ1のポートCは分析カラム部40に、ポートEは試料注入部2を介してポートJに、ポートDは分析用移動相供給流路27に、ポートGは前処理用水系溶媒供給流路22に、ポートKは前処理用溶媒供給流路24に、それぞれ接続されている。
【0021】
第1の6方バルブ11のポートaは第2の6方バルブ13のポートmに、ポートbは濃縮カラム部30を介してポートfに、ポートcは前処理用溶媒供給流路24に、それぞれ接続されている。また、第1の6方バルブ11のポートdとポートeを結ぶ流路には容量50μlの第2貯留部12が設けられている。
【0022】
第2の6方バルブ13のポートgとポートjを結ぶ流路には容量100μlの第1貯留部14が設けられている。また、第2の6方バルブ13のポートhは分析用水系溶媒供給流路25に、ポートiは分析用移動相供給流路27に、ポートkは廃液流路28に、それぞれ接続されている。
【0023】
前処理用水系溶媒供給流路22には、前処理用水系溶媒が収容された容器3と、該容器3内の水系溶媒を10方バルブ1のポートGに送給するためのポンプ4が配置されている。
前処理用有機系溶媒供給流路23には、前処理用有機系溶媒が収容された容器5と、該容器5内の有機系溶媒を前処理用溶媒供給流路24上に配置された前処理用ミキサー9に送給するためのポンプ6が配置されている。
分析用水系溶媒供給流路25には、分析用水系溶媒が収容された容器15と、該容器15内の水系溶媒を第2の6方バルブ13のポートhに送給するためのポンプ16が配置されている。
分析用有機系溶媒供給流路26には、分析用有機系溶媒が収容された容器7と、該容器7内の有機系溶媒を分析用移動相供給流路27上に配置された分析用ミキサー10に送給するためのポンプ8が配置されている。
【0024】
濃縮カラム部30は、並列に配置された6種類の濃縮カラム32と、これらの濃縮カラム32につながる流路を切り替えるための2つの流路切替部31、33を備えている。6種類の濃縮カラム32はいずれも捕集剤をポリマーに担持したカラムであり、カラムの径や長さ、捕集剤の種類がそれぞれ異なる。
分析カラム部40も同様に、並列に配置された6種類の分析カラム42と、これらの分析カラム42につながる流路を切り替えるための2つの流路切替部41、43を備えている。6種類の分析カラム42はいずれも固定相をケイ酸塩に担持したカラムであり、カラムの径や長さ、固定相の種類がそれぞれ異なる。
また、分析カラム部40の出口側には検出器50が配置され、分析カラム42において分離された成分(及び分析用移動相)が順次検出される。
【0025】
以下、本実施例の液体クロマトグラフを用いた試料の前処理及び分析に関する動作について、図3図6を参照して説明する。各ステップにおいて参照する図では各種溶媒が送給される流路を実線で示す。本実施例では、試料導入用移動相として前処理用水系溶媒を、溶出液として前処理用有機系溶媒を、洗浄液として前処理用水系溶媒と前処理用有機系溶媒の混合液を用いる。また、分析用移動相として、分析用水系溶媒と分析用有機系溶媒の混合液を用いる。
【0026】
[溶出液収容ステップ]
溶出液収容ステップでは、図3に実線で示す流路を使用して第2貯留部12に溶出液を貯留する。
具体的には、ポンプ6を動作させて、前処理用有機系溶媒供給流路23及び前処理用溶媒供給流路24を通じて、前処理用有機系溶媒を第1の6方バルブ11のポートcに送給し、ポートdとポートeの間に配置された第2貯留部12に50μlの前処理用有機系溶媒(溶出液)を貯留する。
【0027】
また、ポンプ16を動作させ、分析用水系溶媒を分析用水系溶媒供給流路25及び第2の6方バルブ13のポートh、ポートg、第1貯留部14、ポートj、及びポートiを通じて分析用ミキサー10に送給するとともに、ポンプ8を動作させて分析用有機系溶媒を分析用ミキサー10に送給する。そして、分析用ミキサー10でこれらを混合して分析用移動相を作成し、分析用移動相供給流路27及び10方バルブ1のポートD、ポートCを通じて分析カラム部40内の分析カラム42に送給する。なお、後述する洗浄ステップまでの間、分析カラム42にはこの流路により分析用移動相が送給される。
【0028】
[試料注入ステップ]
溶出液収容ステップでは、図4に実線で示す流路を使用して液体試料中の目的成分を濃縮カラム32内に捕捉する。
まず、第1の6方バルブ11の流路を切り替える。そして、ポンプ4を動作させ、前処理用水系溶媒供給流路22を通じて前処理用水系溶媒(試料導入用移動相)を10方バルブ1のポートGに送給する。また、試料注入部2から試料導入用移動相に液体試料を注入する。これにより、液体試料は試料導入用移動相の流れに乗って前処理用溶媒供給流路24及び第1の6方バルブ11のポートc、ポートbを通じて濃縮カラム32に導入され、液体試料に含まれる目的成分が濃縮カラム32内に捕捉される。
【0029】
[洗浄ステップ]
洗浄ステップでは、図4に実線で示す流路に加えて前処理用有機系溶媒流路23を使用して濃縮カラム32内に捕捉した目的成分を洗浄する。
このステップでは、試料注入部2を停止するとともに、ポンプ6を動作させて前処理用有機系溶媒を前処理用ミキサー9に送給する。前処理用ミキサー9では前処理用水系溶媒と前処理用有機系溶媒が混合され、その混合液(洗浄溶媒)が上記同様の流路で濃縮カラム32に送給される。この洗浄溶媒により、濃縮カラム32の内部に捕捉された目的成分以外の不要な成分が除去され、不要成分を含む洗浄液が第1の6方バルブ11及び第2の6方バルブ13を通って廃液流路に排出される。
【0030】
[目的成分溶出ステップ]
目的成分溶出ステップでは、図5に実線で示す流路を使用して濃縮カラム32内に捕捉された目的成分を溶出させて第1貯留部14に貯留する。
このステップでは、まず第1の6方バルブ11及び第2の6方バルブ13の両方の流路を切り替える。第1の6方バルブ11の流路を切り替えたことにより、前処理用水系溶媒と前処理用有機系溶媒の混合液は第2貯留部12に送給される。第2貯留部12内に貯留された50μlの前処理用有機系溶媒(溶出液)はこの混合液により送り出されて濃縮カラム32に導入される。濃縮カラム32内に捕捉された目的成分は、この溶出液に溶出し、第1の6方バルブ11のポートb、ポートa、第2の6方バルブ13のポートm、ポートgを通じて第1貯留部14に送られる。先のステップで第1貯留部14に導入されていた分析用水系溶媒は目的成分を含む溶出液により送り出され、廃液流路28に排出される。
【0031】
目的成分溶出ステップでは、分析用水系溶媒供給流路25から送給される分析用水系溶媒は、第2の6方バルブ13のポートh、ポートiを通って分析用ミキサー10に送給され、ここで分析用有機系溶媒と混合されて分析カラム42に送給される。即ち、洗浄ステップまでとは異なる流路により分析用移動相が分析カラム42に送給される。
【0032】
[分析ステップ]
分析ステップでは、図6に実線で示す流路を使用して、第1貯留部14に貯留された目的成分を含む溶出液を分析カラム42に導入する。
このステップでは、第2の6方バルブ13の流路を切り替え、分析用水系溶媒供給流路25から供給される分析用水系溶媒を第1貯留部14に送給する。第1貯留部14内に貯留された目的成分を含む溶出液はこの水系溶媒により送出され、分析用ミキサー10に送られる。また、ここで分析用水系溶媒と分析用有機系溶媒とが混合される。そして、目的成分は分析用移動相の流れに乗って、10方バルブ1のポートD及びポートCを通って分析カラム42に導入され、成分分離された後、検出器50で検出される。
【0033】
また、上記のように目的成分を分離・検出する間に第1の6方バルブ11の流路を切り替え、ポンプ4を動作させて前処理用水系溶媒(試料導入用移動相)を濃縮カラム32に送給して流路内の溶媒を前処理用水系溶媒に置換し、次の分析のための準備を行う。
【0034】
以上説明したように、本実施例の液体クロマトグラフでは、濃縮カラム32に溶出液(前処理用有機系溶媒)を送給する流路と、分析カラム42に分析用移動相を送給する流路が独立した流路として形成されており、濃縮カラム32に分析用移動相が高圧で送給されたり、分析カラム42に大量の溶出液が送給されることがない。また、濃縮カラム32から溶出させた目的成分を含む溶出液が第1貯留部14に一旦貯留される。そのため、目的成分の濃縮や洗浄等の前処理と、目的成分の分離・分析にそれぞれ適したカラムを用いることができ、また、それぞれの目的に最適な溶液を用いることができる。
【0035】
また、上記実施例の液体クロマトグラフでは、目的成分の前処理を行うことなく(即ち濃縮カラム32内に目的成分を捕捉することなく)分析カラム42に導入することもできる。具体的には、10方バルブ1により流路を切り替えるとともに、試料注入部2から液体試料を注入することで、液体試料を分析用ミキサー10から送給される分析用移動相の流れに乗せて分析カラム42に導入することができる。このように、本実施例の液体クロマトグラフでは、目的成分の濃縮や洗浄といった前処理を要する分析と前処理を必要としない分析の両方に適した流路を形成することができる。
【0036】
上記実施例は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜に変更することができる。
上記実施例では、試料導入用移動相として前処理用水系溶媒を、溶出液として前処理用有機系溶媒を、洗浄液としてそれらの混合液を用い、分析用移動相として分析用水系溶媒と分析用有機系溶媒の混合液を用いたが、これらは目的成分に応じて適宜に変更することができる。
また、上記実施例では、10方バルブ1のポートKと第1の6方バルブ11のポートcの間に前処理用ミキサー9を配置し、第2の6方バルブ13のポートiと10方バルブDの間に分析用ミキサー10を配置したが、所要の混合液を作製可能な位置であればこれら以外の場所にミキサーを配置してもよい。ただし、溶媒の混合比を正確に制御することを考慮すると、上記実施例のように目的のカラムにできるだけ近い位置にミキサーを配置することが好ましい。
さらに、上記実施例では、第1貯留部14の容量を100μl、第2貯留部12の容量を50μlとしたが、これらの容量は目的成分の量等に応じて適宜に変更すればよい。ただし、目的成分が溶出した溶出液を確実に分析に供するためには、第1貯留部14の容量を第2貯留部12の容量よりも多くする(例えば上記実施例のように2倍の容量とする)ことが好ましい。
【符号の説明】
【0037】
1…10方バルブ
2…試料注入部
9…前処理用ミキサー
10…分析用ミキサー
11、13…6方バルブ
12…第2貯留部
14…第1貯留部
22…前処理用水系溶媒供給流路
23…前処理用有機系溶媒供給流路
24…前処理用溶媒供給流路
25…分析用水系溶媒供給流路
26…分析用有機系溶媒供給流路
27…分析用移動相供給流路
28…廃液流路
30…濃縮カラム部
31…流路切替バルブ
32…濃縮カラム
40…分析カラム部
41…流路切替バルブ
42…分析カラム
50…検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6