【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0016】
図1はエンジン作業機の一例であるチェンソー1のファン側(左側)側面図である。チェンソー1は、エンジンカバー2内部に小型のエンジン(後述)が収容される。本実施例のエンジン作業機では、発熱するエンジン本体や、回転機構部分、マフラー部分を全体的に金属又は合成樹脂製のカバーによって大部分が覆うように構成する。図示しないエンジンは、合成樹脂製のエンジンカバー2に固定される。エンジンカバー2には、チェンソー1の前方(図の右方)に向かって突出するソーチェンを案内する平板状のガイドバー10が取付けられ、作業者が把持するフロントハンドル3と、エンジンの出力を調整するトリガ6を備えたリヤハンドル(トップハンドル)4が設けられる。また、チェンソー1のフロントハンドル3の前側には上方(図の上方)に向かって延びるようにハンドガード13が取り付けられる。エンジンカバー2の左側側面には、エンジンのクランク軸24(
図2で後述)に設けられる冷却ファン25を覆うためのファンカバー9が設けられる。ファンカバー9には上面、側面後方、下面及び前面に複数の風窓9a、9b、9cが設けられる。ファンカバー9の内部にはリコイル式のスタータ(図示せず)が設けられ、スタータハンドル17がその上方に配置される。エンジンカバー2の前方側には、ガソリンと潤滑油の混合燃料をいれるための燃料タンク(
図2で後述)が設けられ、その開口部を塞ぐタンクキャップ18aが設けられる。タンクキャップ18aの下側には、ソーチェンに供給されるチェン油を貯蔵するオイルタンク(図示せず)用の開口を塞ぐオイルキャップ19aが設けられる。エンジンの後方側には図示しないエアクリーナ室が設けられ、エアクリーナ室はエアクリーナカバー8によって塞がれる。
【0017】
図2は
図1のA−A断面図である。エンジンは、エンジン本体部20と気化器(後述)やマフラー40等の補機類と、エンジンカバー2、エアクリーナカバー8(
図1参照)、ファンカバー9、マフラーカバー33等の各種カバー類を含んで構成される。エンジン本体部20に対してカバー類を全部設けるか又は一部だけ設けるかは、製造者は使用する作業機器の特性によって選択することができる。エンジン本体部20は2サイクルの空冷エンジンであって、クランク軸24が左右方向に延びるように配置され、ピストン22の往復移動方向(シリンダの円筒面の軸線)が前後方向となる。円筒形のシリンダ21の外周部には複数の放熱フィン21aが形成され、放熱フィン21aが冷却風CAに晒されることによりシリンダ21が冷却される。ここではシリンダ21はアルミニウム合金の一体成形にて製造され、点火プラグ27が配置されるヘッド部分からクランク軸方向に6枚の冷却フィンが、シリンダ21の軸線と垂直方向に延びるように略板状に形成される。シリンダ21の円筒部の側面(ここでは上側)には燃焼室から排気ガスを排出するための排気口21bが設けられ、排気口21bに隣接するようにマフラー40がボルト53により取り付けられる。ここでは、エンジン本体部20とマフラー40は、接続管路を介することなく、シリンダ21の排気口21bの開口とマフラー40の流入側の開口が直接接合される形態である。但し、シリンダ21とマフラー40の間にはマフラーガスケット49が介され、密着性を高めている。
【0018】
ピストン22のシリンダ軸方向(前後方向)の往復運動は、クランクによってクランク軸24の回転運動に変換される。クランク軸24の一端側(右側)には遠心クラッチ31が接続され、遠心クラッチ31によってクラッチケース32と連動して回転するスプロケット12へ動力を伝達する。スプロケット12とガイドバー10の外周側にはソーチェン(図示せず)が配設され、スプロケット12の回転によってソーチェンは回転駆動される。スプロケット12と遠心クラッチ31の周囲は、サイドカバー5によって覆われる。クランク軸24の他端側(左側)にはシリンダ21を冷却するための冷却風を生成する冷却ファン25が設けられる。冷却ファン25は、マグネトロータと一体的に構成されるもので、例えばアルミニウム合金にて製造され、外周側の一部にイグニッションコイル26に電力を発生させるためのマグネット(図示せず)が配置される。また冷却ファン25はリコイルスタータ29からクランク軸24を駆動させるための起動爪の取り付け基台も兼ねている。
【0019】
クランクケース23の反ピストン側(前方側)には燃料タンク18が設けられる。燃料タンク18から燃料が供給され、図示しない気化器によって空気と燃料の混合気が生成され、混合気が図示しない吸気口からシリンダ21の内部(燃焼室)に供給される。供給された混合気は点火プラグ27により所定の時期に点火される。燃焼後にピストン22が下死点側に移動して排気口21bが開口されると排気ガスEX1は排気口21bから排出され、点線にて示すようにマフラー40の内部に流入する。一方、クランク軸24の回転によって冷却ファン25が高速に回転するため、冷却ファン25はファンカバー9の風窓9a、9b(
図1参照)を介して矢印INに示すように外気を吸引して、導風カバー28の内壁に沿って冷却風CAを送風する。冷却風CAはボリュート形状に形成される導風カバー28による風路を経てシリンダ21の方向に導かれ、シリンダ21の円筒部分の周囲に延びる放熱フィン21aの間を通ってマフラー40の方向に流れる。ここでは放熱フィン21aはシリンダ21の円筒部から径方向に延在するものが軸方向に複数積層されるため、冷却風CAの矢印の先端部分のように前後方向に放熱フィン21aによって挾まれる空間内に流入する。
図2の矢印では、放熱フィン21aのうち点火プラグに一番近い放熱フィン(1番フィン)と、その次の放熱フィン(2番フィン)の間に流入している状態を示しているが、冷却風CAはシリンダの3番〜6番フィンの間にも流れるし、1番フィンよりも後方のシリンダヘッド部分のフィンにも流れる。1番〜4番フィンの間に流入した冷却風は、シリンダ21の円筒部分によって上下に分けられて、マフラー40のシリンダ側の壁面(ここではマフラーガスケット49が介在)に衝突する。マフラーガスケット49はマフラー40とシリンダ21の間に配置され遮熱板及び導風板としての機能も兼ねるもので、冷却風はマフラー40の上側と下側部分においてマフラー室の内部に流入する。
【0020】
エンジン本体部20においては、図示しない気化器とマフラー40は、エンジンの軸線まわりに略90°程度離れるように配置される。シリンダの軸線方向からみると、一方側(左側)に冷却ファン25が配置され、対向する側(右側)にマフラー40が配置され、冷却ファン25、シリンダ21、マフラー40がクランク軸の軸線方向に直線状に配置される。この配置の結果、シリンダ21を冷却した後の冷却風CAの風下側にマフラー40が位置するため、マフラー40の冷却を効率よく行うことができる。
【0021】
図3は、
図1のB−B断面図である。マフラー40の排気ガスEX1は点線のように流れて、排気ガス出口51aからマフラー40の第1の壁面(反エンジン側の壁面)に沿って下方に排出される。ここでは排気ガス出口51aから排出された排気ガスEX1が、リブ34に挟まれる開口35(詳細は後述)付近から主に下方向に向けて外部に排出される。気化器30はシリンダ21の上側に配置され、マフラー40と気化器30は、シリンダ21の軸線方向からみて約90度隔てるように配置される。
【0022】
図2で示した冷却風CAは、放熱フィン21aに沿って流れながら上側と下側に分離し、下側の冷却風CA1はマフラー40の下側の第2の壁面に沿って、マフラーカバー33の開口35付近に向かって流れる。よって、冷却ファンCA1は排気ガスEX1と直交するように衝突して交わることにより排気ガスEX1と合流する。この冷却風CA1は、冷却ファン25の下側部分からシリンダ21に向かい、マフラー40の底面から開口35に至るように直線的に流れるために、冷却風CA1の風路は曲がりがなくてスムーズに形成でき、風路抵抗が少ないので、十分な風量を確保することができる。
【0023】
上側の冷却風CA2は、冷却ファン25から積層された放熱フィン21aの間の空間に到達したら、シリンダ21の筒部分の上側を通ってマフラーガスケット49によってマフラー室の上側空間に導かれ、マフラー40の上側の壁面(第3の壁面)を通って右方向に流れ、その後、マフラーカバー33の内壁面に沿って流れ方向が右方向から下方向に曲げられ、排気ガスEX1とマフラーカバー33の間の空間を通って開口35付近に向かって流れる。この際、冷却風CA2は排気ガスEX1と同方向にマフラー40の外側の壁面(第1の壁面)に沿って流れながら排気ガスEX1と徐々に混合される。この混合によって排気ガスEX1の温度が低下する。このようにマフラーカバー33とマフラー40の間に、排気ガス流出方向上流側から略平行に排気ガスと合流させたので、排気ガスとマフラーカバーの間に第2の冷却風による空気流の層が形成されるため、マフラーとマフラーカバーの距離を小さくしてマフラーカバーを小形化した場合でも、排気ガスをマフラーカバーに接触させることなく、第2の冷却風と排気ガスを混合させて排気ガス温度を低減できる。本実施例では更に、マフラー40の下側に流れる冷却風CA1を排気ガスEX1及び冷却風CA2に略直交する方向に衝突させて、排気ガスEX1に更なる冷却風CA1を混合させることにより、マフラーカバー33の開口35から外部に排出される排気ガス温度を十分に低減できる。排気ガスEX1の流速は、冷却風CA1、CA2の流れに対して十分大きい。よって、排気ガスEX1とCA2の混合、排気ガスEX1と冷却風CA1の混合によっても、排気ガスEX1は流れの向きが拡散するものの、大部分は方向を変えずに下方向に流れて、マフラーカバー33の開口35から外部に排出される。
【0024】
図4は、排気ガスEX1と冷却風CA1、CA2との流れる方向の関係を説明するための図である。本実施例では第1の冷却風CA1を排気ガスEX1と交差(衝突)させるように案内するものであって太枠で囲んだ第一の冷却風路37を有し、かつ、排気ガス規制部材50から排気ガス流出方向の上流側から第2の冷却風CA2を排気ガスEX1と略平行に合流させるよう案内する太枠で囲んだ第二の冷却風路38を形成するようにした。排気ガスEX1が排出される排気ガス出口51aの延長領域60は、第一の冷却風路37の延長領域61(下流側の流れる方向)と斜線に示す交差領域63で交差するようにした。ここでは断面図によって2次元で図示しているが、実際には交差空間となる。本実施例では交差領域63を含む交差空間が、マフラーカバー33の外縁輪郭位置(
図3の矢印34a〜34eで示す部分)よりも内側(シリンダ21に近い側)に位置することに特徴がある。このような位置関係とすれば、開口35よりも内側空間において冷却風CA1によって排気ガスEX1の温度が低減されるので、開口35から外気中に排出された排気ガスEX1の温度は大きく低下した状態となる。本実施例では更に冷却風CA2を排気ガスEX1に沿って流して、冷却風CA2の冷却風路の延長領域62において排気ガスEX1と混合することにより、排気ガスEX1の温度を更に低下させることができる。この際、排気ガス出口51aより下流側において冷却風CA2の下方向に向けた流れの作用により外気が、開口36を介してマフラーカバー33の内部に冷却風CA3として導入され、冷却風CA2と排気ガスEX1と合流する。尚、本実施例では冷却風CA1と排気ガスEX1を側面視で略90度の角度で衝突させているが、衝突させる角度は90度だけに限定されず、衝突によって排気ガスEX1と冷却風CA1、CA2が効果的に混ざり合いさえすれば衝突角は30〜150度程度の衝突角度としても良い。
【0025】
図5は本発明の実施例に係るチェンソー1のシリンダ21に対するマフラー40のオフセット配置を説明するための図である。本実施例では、冷却風CA1のための第一の冷却風路37を形成するために、シリンダ21の放熱フィン21aに対してマフラー40を矢印48のように上側にオフセットさせて配置した。つまり、シリンダ21の軸線方向にみて放熱フィン21aの外辺の中心位置に対してマフラー40の上下方向中心位置が法線方向にオフセットするようにマフラー40を片寄せ配置した。また、マフラー40の下端から排気ガス出口51aまでの距離Lは、マフラー40の全体の高さHに対して半分以上となるようにして、排気ガス出口51aから開口35(
図4参照)までの距離を十分確保している。さらに、マフラー40の下端位置をシリンダ21の放熱フィン21aの下端よりも上方にオフセットした結果、排気ガス出口51aから開口35の出口までの距離をさらに長くすることが可能となったので、排気ガスEX1の温度低減のためには好適である。一方、マフラー40の上端位置は、シリンダ21の放熱フィン21aの位置よりも十分上方になる。よって、シリンダ21の放熱フィン21aの外辺の中心線に対してマフラー40の中心線が上側にオフセットした片寄せ配置となっている。このように本実施例では、シリンダ21の軸線方向から見た際に、マフラー40をシリンダ21に対して片寄せ配置をして、そのオフセットにより開いた空間にシリンダ21を冷却した後の排風たる第1の冷却風CA1を流すようにしたので、排気ガスEX1と大きな交差角を持たせて衝突させることができる。
【0026】
次に
図6を用いてシリンダ21にネジ固定されるマフラー40の構造について説明する。
図6は
図3のマフラー40の部分拡大断面図である。マフラー40はシリンダ21に近い側の内側ハウジング41と、シリンダ21から遠い側の外側ハウジング42のそれぞれの開口部を合わせて接合したものであって、外側に形成したリブ41aに対して外側ハウジング42の外縁部42aを折り返すようにしてかしめて略直方体状に形成した。その際、内側ハウジング41と外側ハウジング42は仕切り板43を介して接合することにより、シリンダ21の排気口21bと連通する第一膨張室46と、排気ガスを大気中に排出する排気ガス出口側となる第二膨張室47が画定される。ここでは第一膨張室46の開口(吸入口)が直接シリンダ21に固定される形状であり、2本のボルト53によって固定される。第一膨張室46から第二膨張室47の間には排気ガスを浄化するための触媒44が設けられ、排気ガスEX1(
図3参照)は、仕切り板43の開口部に設けられた触媒44を通過して第一膨張室46から第二膨張室47側に流れるが、ここでは触媒44から排出される高温の排気ガスが外側ハウジング42に直接当たらないようにして外側ハウジング42の温度上昇を抑制するための触媒カバー45が設けられる。仕切り板43及び触媒カバー45は、例えばステンレス板のプレス加工にて製造できる。第二膨張室47にて膨張した排気ガスは、第二膨張室47の開口47aから排気ガス通路51側に流れ、排気ガス通路51の排気ガス出口51aからマフラーカバー33によって覆われる空間内(マフラー室内)に排出される。
【0027】
排気ガス通路51は、外側ハウジング42の外側壁面に取り付けられる排気ガス規制部材50によって形成された排気ガスの排出方向を決定する通路であって、排気ガス通路51による管状の管路が下向きに延びて、その開口たる排気ガス出口51aが下側に形成される。排気ガス規制部材50は外側ハウジング42にネジにて固定される別部材であって、外側ハウジング42の開口47a付近に金網状のスパークアレスタ58を保持して設けられるものである。排気ガス通路51は金属板材をプレス加工によって形成され、排気ガス通路51の形状によって、排気ガスEX1が外側ハウジング42(排気ガス規制部材50)の壁面に沿って下方側(シリンダ21の軸方向と直交方向)に流れる。マフラー室内に排出された排気ガスは、リブ34にてその前後が挟まれる開口35から大気中に排出される。リブ34は排気ガスEX1の排出方向と略平行方向に延びるように形成される。
【0028】
マフラー40の輻射熱を合成樹脂製のマフラーカバー33に伝えにくいように、マフラーカバー33とマフラー40との間は所定の間隔を隔てた空間となっている、マフラー40とシリンダ21との間には、マフラーガスケット49が設けられる。マフラーガスケット49は例えば黒鉛シートであり、マフラー40とシリンダ21の排気口21bとの密着性を良くするために介在されるものである。本実施例ではマフラーガスケット49を、ガスケットとしての機能だけで無く、遮熱板としてマフラー40の熱がシリンダ21側に伝達されることを抑制しながら、冷却風を所定方向に導くための整流板としても用いている。マフラーカバー33の排気ガス出口51aの近傍には風窓たる開口36が設けられる。開口36は排気ガスの出口となる大きな開口35に隣接して設けられるものであって、停止時の放熱性を向上させるとともに、冷却風CA2の流れにより温度の低い外気を吸引させるために設けられる。
【0029】
図7はチェンソー1の右側側面図である。マフラーカバー33の側面には、排気ガスEX1の大気中への出口となる開口35が形成され、排気ガス出口51aから流出された排気ガスEX1は矢印のように下方向に排出される。2枚のリブ34の間に開口35が形成され、2枚のリブ34の上端付近を結んだ仮想線よりも上側に略長方形の開口36が形成される。開口35と開口36の間にはマフラーカバー33の強度を高めるために横方向に延びる梁36aが形成される。尚、開口35においても、斜めに延びる梁35aを設けているが、排気ガスEX1の流れを乱さないならば、梁35aをどの位置にどのように設けるかは任意に設定できる。本実施例で排気ガスEX1はマフラーカバー33の開口35から略下方向に排出されるが、その際に上から下方向に排気ガスEX1に覆い被さるようにして流れる冷却風CA2、CA3(
図3、
図4参照)が交わり、その後、マフラー40の下側を水平方向に左から右方向に流れる冷却風CA1(
図3参照)と交差する。ただし、排気ガスEX1の流速が大きいため、冷却風CA1、CA2、CA3と混合させても排気ガスEX1の流れ方向は基本的に下方向で変わらない。このように本実施例では排気ガスEX1を拡散させると共に、排気ガスEX1に対して十分低い温度の冷却風CA1、CA2、CA3を混合できるので、排気ガスEX1がマフラーカバー33の外側に排出される時点での温度を大幅に低減させることができる。
【0030】
図8はマフラーカバー33を取り外した状態のチェンソー1の右側側面図である。マフラー40の排気ガス通路51は、マフラー40に3本のネジ54にて固定される排気ガス規制部材50に形成される。マフラー40の反エンジン側の壁面(第1の壁面)はその大部分が排気ガス規制部材50により覆われるが、排気ガス規制部材50の大きさだけでなく、その仕様の有無は任意である。排気ガスEX1の排出方向の周囲の黒い太線51bは、排気ガス通路51の壁面の延長線であって、排気ガスEX1はこの太線の間の延長領域内を主に、徐々に拡散しながら放出される。排気ガスEX1の排出方向は、下方向ではあるがやや後方側にほんのわずかに斜めに排出される。そして、マフラーカバー33の開口35の点線で示す輪郭線35bよりも内側領域において排気ガスEX1と冷却風CA1が交差するため、排気ガスEX1がマフラーカバー33の外側に排出される際には排気ガスEX1の温度が大きく低下させることができる。さらに、マフラーカバー33の開口35の上側にさらなる開口36(
図7参照)を設けたので、エンジン本体部20やマフラー40によって加熱されていない常温空気を開口36を介して外部からマフラーカバー33の内部に供給することができる。
【0031】
図9はマフラーカバー33の外観を示す斜視図である。本実施例においてはマフラーカバー33は右側面33a、前側面、上面33c、後側面33d、後面を有する形状であって、2つの開口35、36だけが形成される。このように構成すれば、マフラー室に流入した冷却風CA1、CA2は排気ガスEX1と共に開口35から外部に排出される。特に冷却風CA2は、マフラーカバー33の上面33cの点線で示す部分の内壁部分(遮蔽部39)によって、左から右に向かう水平方向から下方向に向かう流れに変針されるので、排気ガスEX1に対して排気ガス流出方向の上流側から下方側に向けて、排気ガスEX1と略平行に流して排気ガスEX1と合流させることができる。この結果、排気ガスEX1とマフラーカバー33の間に温度の低い空気流の層を形成させることができる。さらに、マフラー40の下側とマフラーカバー33との間に第1の冷却風による空気流の層が形成されるので、マフラー40の高温からマフラーカバー33を効果的に保護できる。本実施例では、マフラー40の冷却効果の向上に加えて、マフラーカバー33への熱の伝達を低減したので、マフラー40とマフラーカバー33の距離を小さくしてマフラーカバー33を小形化することができる。
【0032】
次に
図10を用いて本実施例の変形例を説明する。
図9にて示したマフラーカバー33は、エンジンの運転時には排気ガスの温度低下効果が大きいものの、エンジンの停止時には冷却風CA1、CA2の流れが停止するため加熱したマフラー40の輻射熱によりマフラーカバー33が加熱してしまう。そこで、現在のエンジン作業機で広く使われているマフラーカバーと同様に複数の風窓を形成したのがマフラーカバー83である。マフラーカバー83の上面には、風窓91が形成され、右側面には風窓94が、後側面には風窓95、96が形成される。但し、上面の窪み92は、前後に隣接する風窓91と同形状の窪みとなっているが内部と非貫通として風を通さないようにした。同様にして右側側面の窪み93は前後に隣接する風窓94と同形状となっているが内部と貫通しないようにした。リブ84、開口85、86の形状は第一の実施例のリブ34、開口35、36とほぼ同系状に形成される。このように構成することによって
図9で示す遮蔽部39の機能を維持しつつも放熱性の良いマフラーカバーを実現できた。尚、窪み92、93を風窓91、94と同様に貫通する開口として、93と94に相当する部分(
図9でたとえれば遮蔽部39の部分)の内側に、別部材からなる遮風板、導風板を設けても良い。例えばやや厚めのアルミ箔を遮蔽部39の部分においてマフラーカバー83に貼り付けるようにしても良い。
【0033】
図10のように風窓を多数形成したとしても、シリンダ21の放熱フィン21aの間を通って、マフラー40の上方向に分流した冷却風CA2は、上面の壁部分(矢印97付近)と窪み92、93によって形成される遮蔽部によって
図3〜
図7で説明したように、排気ガスEX1と同じ方向に流れるので、エンジンの運転時の排気ガスEX1の温度低減効果を損なうことがない。本変形例でも、排気ガス規制部材の排気ガス出口と交差領域との距離を長くできるので、第2の冷却風と排気ガスの混合距離を長くすることができ、排気ガス温度を十分低減できる。また、第1の冷却風と混合した後の排気ガスをマフラーカバーの排気出口部に接触させることなくマフラーカバー外部に排出することができる。さらに、冷却ファンからの冷却風の一部を取り出してシリンダとは別の風路形成する必要がないので、安価かつコンパクトな構造にできる。この際、冷却風を一部取り出すことでシリンダを冷却するための風量が減少しシリンダ温度が上昇することもない。
【0034】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例ではエンジン作業機の例としてチェンソーを用いてそのエンジンの構造を説明したが、エンジン作業機はチェンソー用のエンジンだけで無く、刈り払い機、ヘッジトリマ、カッタ等のその他のエンジン作業機や、発電機や小型動力源としてのエンジンにおいても同様に適用することができる。また、エンジン本体部は2サイクルエンジンだけでなく4サイクルエンジンでも同様に適用でき、使用するマフラーの形態も作業機器に合わせた様々な形態のものを用いることが可能である。