特許第6261002号(P6261002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6261002-流体圧回路および作業機械 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261002
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】流体圧回路および作業機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/14 20060101AFI20180104BHJP
   F15B 11/024 20060101ALI20180104BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   F15B21/14 B
   F15B11/024 A
   E02F9/22 M
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-238227(P2014-238227)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-98955(P2016-98955A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2016年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岸田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】豊田 充啓
(72)【発明者】
【氏名】畑 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】金縄 裕也
(72)【発明者】
【氏名】居本 周平
(72)【発明者】
【氏名】的場 信明
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−145387(JP,A)
【文献】 特開2009−275775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 21/14
E02F 9/22
F15B 11/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作体の操作に応じてポンプから加圧供給された作動流体により同一動作を同時作動する複数の流体圧シリンダと、
作動流体により蓄圧されるアキュムレータと、
一の流体圧シリンダのヘッド側とアキュムレータとの連通量を操作体の操作量に応じて変化させる一のバルブを備え、この一のバルブを介して一の流体圧シリンダのヘッド側から押し出された作動流体をアキュムレータに蓄圧させる蓄圧回路と、
蓄圧回路によりアキュムレータに蓄圧させるときに複数の流体圧シリンダのヘッド側間の連通を遮断しつつ複数の流体圧シリンダのうち他の流体圧シリンダのヘッド側と一および他の流体圧シリンダのそれぞれのロッド側との連通量を操作体の操作量に応じて変化させるとともに蓄圧回路によるアキュムレータへの蓄圧を停止させているときに複数の流体圧シリンダのロッド側をタンクと連通させる他のバルブを備え、この他のバルブを介して、他の流体圧シリンダのヘッド側から押し出された作動流体を一および他の流体圧シリンダのロッド側に再生する再生回路と
を具備したことを特徴とする流体圧回路。
【請求項2】
一のバルブは、操作体の操作量およびアキュムレータ圧に応じて一の流体圧シリンダのヘッド側とアキュムレータとの連通量を変化させる
ことを特徴とする請求項1記載の流体圧回路。
【請求項3】
機体と、
機体に搭載された作業装置と、
作業装置を上下動する複数の流体圧シリンダに対して設けられた請求項1または2記載の流体圧回路と
を具備したことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキュムレータを備えた流体圧回路およびその流体圧回路を搭載した作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械において、ブーム下げ時にブーム用油圧シリンダから吐出される圧油をアキュムレータに蓄圧するとともに、旋回の加減速時に旋回用油圧モータからリリーフされる圧油も上記アキュムレータに蓄圧するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−84888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブーム用油圧シリンダから吐出される圧油をアキュムレータに蓄圧している間は、ブーム用油圧シリンダから吐出される圧油をブーム用油圧シリンダに再生することはできないため、必要なポンプ流量を確保できず、ブーム用油圧シリンダの作動速度が遅くなる場合がある。したがって、より簡素な構成で、ブーム用油圧シリンダから吐出される圧油を再生して、必要なポンプ流量を確保することが望まれている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、より簡素な構成で作動流体をアキュムレータに蓄圧させているときも必要なポンプ流量を確保できる流体圧回路および作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された発明は、操作体の操作に応じてポンプから加圧供給された作動流体により同一動作を同時作動する複数の流体圧シリンダと、作動流体により蓄圧されるアキュムレータと、一の流体圧シリンダのヘッド側とアキュムレータとの連通量を操作体の操作量に応じて変化させる一のバルブを備え、この一のバルブを介して一の流体圧シリンダのヘッド側から押し出された作動流体をアキュムレータに蓄圧させる蓄圧回路と、蓄圧回路によりアキュムレータに蓄圧させるときに複数の流体圧シリンダのヘッド側間の連通を遮断しつつ複数の流体圧シリンダのうち他の流体圧シリンダのヘッド側と一および他の流体圧シリンダのそれぞれのロッド側との連通量を操作体の操作量に応じて変化させるとともに蓄圧回路によるアキュムレータへの蓄圧を停止させているときに複数の流体圧シリンダのロッド側をタンクと連通させる他のバルブを備え、この他のバルブを介して、他の流体圧シリンダのヘッド側から押し出された作動流体を一および他の流体圧シリンダのロッド側に再生する再生回路とを具備した流体圧回路である。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の流体圧回路における一のバルブは、操作体の操作量およびアキュムレータ圧に応じて一の流体圧シリンダのヘッド側とアキュムレータとの連通量を変化させる流体圧回路である。
【0008】
請求項3に記載された発明は、機体と、機体に搭載された作業装置と、作業装置を上下動する複数の流体圧シリンダに対して設けられた請求項1または2記載の流体圧回路とを具備した作業機械である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、蓄圧回路と再生回路とを切離して、一の流体圧シリンダのヘッド側から押し出された作動流体を一のバルブによりアキュムレータに蓄圧すると同時に、他の流体圧シリンダのヘッド側から押し出された作動流体を他のバルブにより一および他の流体圧シリンダのロッド側に再生するので、アキュムレータに蓄圧しているときも再生流量分のポンプ流量を節約でき、一および他のバルブを用いる簡素な構成で必要なポンプ流量を容易に確保できるとともにポンプを小型化できる。また、複数の流体圧シリンダの全てではなく、より少ない流体圧シリンダに荷重を集中させることで、その流体圧シリンダから発生する圧力を高めて、アキュムレータの蓄圧エネルギを増すことができ、アキュムレータを小型化できる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、一のバルブが、操作体の操作量およびアキュムレータ圧に応じて一の流体圧シリンダのヘッド側とアキュムレータとの連通量を変化させるので、より適切にアキュムレータに蓄圧できる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、作業機械の作業装置を下降させる際にアキュムレータが蓄圧作用しているときも再生流量分のポンプ流量を節約でき、必要なポンプ流量を容易に確保できるとともにポンプを小型化でき、また、複数の流体圧シリンダの全てではなく、より少ない流体圧シリンダに作業装置の荷重を集中させることで、その流体圧シリンダから発生する圧力を高めて、アキュムレータの蓄圧エネルギを増すことができ、アキュムレータを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る流体圧回路の一実施の形態の切替状態を示す回路図である。
図2】同上回路の他の切替状態を示す回路図である。
図3】(a)は同上回路の一のバルブの制御アルゴリズムを模式的に示す説明図、(b)は同上回路の他のバルブの制御アルゴリズムを模式的に示す説明図である。
図4】本発明に係る作業機械の一実施の形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、図1乃至図4に示された一実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0014】
図4に示されるように、作業機械としての油圧ショベルHEは、機体1が下部走行体2とその上に旋回モータ3mにより旋回可能に設けられた上部旋回体3とにより形成され、この上部旋回体3上にエンジンおよびポンプなどが搭載された機械室4と、オペレータを保護するキャブ5と、作業装置6とが搭載されている。
【0015】
この作業装置6は、2本並列された流体圧シリンダとしてのブームシリンダ7c1,7c2により上下方向に回動されるブーム7の基端が上部旋回体3に軸支され、ブーム7の先端にスティックシリンダ8cにより前後方向に回動されるスティック8が軸支され、このスティック8の先端にバケットシリンダ9cにより回動されるバケット9が軸支されている。2本のブームシリンダ7c1,7c2は、共通のブーム7に対して並設され、同一動作を同時作動する。
【0016】
図1は、作業装置6が有する位置エネルギを、ブームシリンダ7c1を介してアキュムレータに蓄えるとともに上部旋回体3が有する運動エネルギを、旋回モータ3mを介してアキュムレータに蓄えてエンジンパワーのアシストに利用するエンジンパワーアシストシステムを示す。
【0017】
次に、このシステムの回路構成を説明する。
【0018】
機械室4内の搭載エンジン11により駆動されるポンプとしてのメインポンプ12,13のメインポンプシャフト14にアシストモータ15を直結またはギヤなどを介して連結し、メインポンプ12,13およびアシストモータ15は、ポンプ/モータ容量(ピストンストローク)を角度により可変調整することが可能な斜板を備え、その斜板角(傾転角)はレギュレータ16,17,18により制御するとともに斜板角センサ16φ,17φ,18φにより検出し、レギュレータ16,17,18は、電磁弁により制御する。例えば、メインポンプ12,13のレギュレータ16,17は、ネガティブフローコントロール通路19ncで導かれたネガティブフローコントロール圧(いわゆるネガコン圧)によって自動的に制御可能であるとともに、ネガティブフローコントロール弁19の電磁式切替弁19a,19bによってネガコン圧以外の信号でも制御可能である。
【0019】
メインポンプ12,13は、タンク21から吸い上げた作動流体としての作動油を通路22,23に吐出し、それらのポンプ吐出圧は圧力センサ24,25により検出する。メインポンプ12,13に接続した方向制御および流量制御用のパイロット式制御弁のうち、ブームシリンダ7c1,7c2を制御するメインのブーム用制御弁26から引き出した一方の出力通路27およびサブのブーム用制御弁28から引き出した出力通路29を、通路30によって複合弁としてのブームエネルギ・リカバリ弁31に接続する。
【0020】
このブームエネルギ・リカバリ弁31は、図1に示される蓄圧回路Aおよび再生回路Bと、図2に示されるブーム上げ操作時にメインポンプ12,13から加圧供給された作動油を2つのブームシリンダ7c1,7c2のヘッド側に導く回路とを切り替える複数の回路機能を、単一ブロック内に組み込んだ複合弁である。
【0021】
このブームエネルギ・リカバリ弁31に一方のブームシリンダ7c1のヘッド側端から引き出した通路32をドリフト低減弁33を経て通路34により接続し、他方のブームシリンダ7c2のヘッド側端から引き出した通路35をドリフト低減弁36を経て通路37により接続する。メインのブーム用制御弁26から引き出した他方の出力通路38は、ブームエネルギ・リカバリ弁31の再生回路Bに接続する。ブームシリンダ7c1,7c2の各ロッド側は、通路39,40によりブームエネルギ・リカバリ弁31に接続する。ドリフト低減弁33,36は、それぞれ図示しないパイロット弁によりスプリング室内のパイロット圧を制御することで、ポート間の開閉および開度を制御する。
【0022】
メインのブーム用制御弁26から引き出した一方の出力通路27は、電磁式切替弁42および逆止弁43を介して他方の出力通路38に連通可能とする。
【0023】
また、アシストモータ15の吐出側は、吐出通路44を介してタンク21に接続する。さらに、アシストモータ15の吸込側には、複数のアキュムレータである第1のアキュムレータ46を設けたアキュムレータ通路47から、リリーフ弁48および逆止弁49を経てタンク通路50と、電磁式切替弁51を経て吸込側通路52とを接続する。アキュムレータ通路47には、第1のアキュムレータ46に蓄圧された圧力を検出する圧力センサ55を接続する。また、タンク通路50は、タンク通路56からスプリング付き逆止弁57を経て、さらにオイルクーラ58またはスプリング付き逆止弁59を経てタンク21に接続する。そして、これら第1のアキュムレータ46、アキュムレータ通路47、リリーフ弁48、電磁式切替弁51および圧力センサ55は、単一ブロック内に組み込まれてアキュムレータブロック60を構成している。
【0024】
ブームエネルギ・リカバリ弁31は、蓄圧回路Aの一部を構成する一のバルブとしての制御弁61と、再生回路Bの一部を構成する他のバルブとしてのブーム回路切替弁であるメイン制御弁62とを備えている。これら制御弁61およびメイン制御弁62は、例えばキャブ5(図4)内などのオペレータによって操作される図示しない操作体であるレバーの操作により動作される電磁式切替弁によってパイロット圧の給排を制御することで切り替わるパイロット操作式のものが用いられるが、図面上は説明をより明確にするために電磁比例方向制御弁として図示する。
【0025】
制御弁61は、逆止弁67を経て第1のアキュムレータ46(アキュムレータブロック60)に接続する通路68と、通路34との連通および遮断を切り替えることで、ブームシリンダ7c1からの第1のアキュムレータ46の蓄圧を許容する流量制御弁である。この制御弁61は、通常のシリンダ(ブームシリンダ7c1,7c2など)からタンク21へと戻すよりも作動油を大きく流せるバルブであり、第1のアキュムレータ46に圧油を溜めることを優先したものとなっている。
【0026】
メイン制御弁62は、通路71と通路72との関係、通路73と通路74との関係、および、通路75および通路76との関係をそれぞれ切り替えることで、ブームシリンダ7c1とブームシリンダ7c2とを蓄圧用シリンダと自己再生用シリンダとに分離するものである。すなわち、このメイン制御弁62は、制御弁61の切り替えによって第1のアキュムレータ46に蓄圧するときに、ブームシリンダ7c1,7c2のヘッド側間の連通を遮断するとともにブームシリンダ7c2のヘッド側とブームシリンダ7c1,7c2のそれぞれのロッド側とを連通するように構成されている。
【0027】
通路71には、通路30が逆止弁78を経て接続し、通路72は、通路37および通路30から分岐する通路79と接続し、通路73は、通路72から分岐され、通路74は、逆止弁80を経て通路40と接続し、通路75は、出力通路38および通路39と接続し、通路76は、通路40から分岐される。
【0028】
図1に示されるように、蓄圧回路Aは、一方のブームシリンダ7c1のヘッド側端より引き出された通路32からドリフト低減弁33および通路34を経て、ブームエネルギ・リカバリ弁31内の制御弁61、逆止弁67を経て、通路68から第1のアキュムレータ46に至る回路であり、ブームシリンダ7c1のヘッド側から押し出された油を第1のアキュムレータ46に蓄圧させる機能を有する。
【0029】
また、再生回路Bは、他方のブームシリンダ7c2のヘッド側端より引き出された通路35からドリフト低減弁36および通路37を経て、ブームエネルギ・リカバリ弁31内の通路73、メイン制御弁62、通路74、逆止弁80および通路40を経て他方のブームシリンダ7c2のロッド側端に至るとともに、通路35からドリフト低減弁36および通路37を経て、ブームエネルギ・リカバリ弁31内の通路73、メイン制御弁62、通路74、逆止弁80、通路76、メイン制御弁62、通路75および通路39を経て一方のブームシリンダ7c1のロッド側端に至る回路であり、ブームシリンダ7c2のヘッド側から押し出された油をブームシリンダ7c1,7c2のそれぞれのロッド側に再生する機能を有する。
【0030】
また、前記旋回モータ3mの旋回方向および速度を制御する旋回用制御弁91と旋回モータ3mとを接続するモータ駆動回路Cの通路92,93間に、相互に逆向きのリリーフ弁94,95および逆止弁97,98を設け、これらのリリーフ弁94,95間および逆止弁97,98間に、モータ駆動回路Cから排出された油をタンク21に戻すタンク通路機能と、モータ駆動回路Cに作動油を補充することが可能なメイクアップ機能とを有するメイクアップ通路99を接続し、このメイクアップ通路99は、圧油を供給する第2のアキュムレータ100に接続する。そして、このメイクアップ通路99から、スプリング付き逆止弁57のスプリング付勢圧を超えない圧力で、逆止弁97,98を経て通路92,93のバキューム発生のおそれのある側に作動油を補充する。
【0031】
さらに、モータ駆動回路Cの通路92,93を、逆止弁102,103を経て旋回エネルギ回収用の通路104に連通し、この通路104を、出口側の背圧によって入口側の元圧が変化しにくいシーケンス弁105を経て通路106に接続し、この通路106が第1のアキュムレータ46および通路68に接続する。
【0032】
以上のような回路構成において、各々の斜板角センサ16φ,17φ,18φ、圧力センサ24,25,55は、検出した斜板角信号および圧力信号を車載コントローラ(図示せず)に入力し、また、各弁42,51は、車載コントローラ(図示せず)から出力された駆動信号によりオン・オフ動作または駆動信号に応じた比例動作で切り替わる。また、ブーム用制御弁26,28、旋回用制御弁91および図示しない他の油圧アクチュエータ用制御弁(走行モータ用、スティックシリンダ用、バケットシリンダ用など)は、キャブ5(図4)内などのオペレータによりレバー操作またはペダル操作される手動操作弁いわゆるリモコン弁によってパイロット操作され、ドリフト低減弁33,36の図示しないパイロット弁も連動してパイロット操作される。
【0033】
以下に、上記車載コントローラによって制御される内容を機能的に説明する。
【0034】
図1は、ブーム7を下降させるブーム下げ操作時の回路状態を示し、作業装置6の荷重などにより一方のブームシリンダ7c1のヘッド側から押し出された作動油は、通路32およびドリフト低減弁33を経て通路34からブームエネルギ・リカバリ弁31の連通位置に切り替えた制御弁61で逆止弁67を経て通路68と連通され、この通路68から第1のアキュムレータ46に蓄圧させる。このとき、制御弁61は、レバーの操作量、すなわちこの操作量により設定されるパイロット圧と、圧力センサ55により検出した第1のアキュムレータ46のアキュムレータ圧とに応じて一方のブームシリンダ7c1のヘッド側と第1のアキュムレータ46側との連通量を切り替える。具体的に、レバーの操作量により設定されるパイロット圧に対して所定のテーブルにより補正を行うとともに、アキュムレータ圧に対して所定のテーブルにより補正を行い、これらの積算結果を、制御弁61を動作させる出力とする。さらに具体的に、本実施の形態では、図3(a)に示されるように、レバーの操作量により設定されるパイロット圧が相対的に小さいときにはその入力圧の増加量に対して出力圧の増加量が相対的に大きくなり、レバーの操作量により設定されるパイロット圧が所定の閾値TH1を超えた領域では入力圧の増加量に対する出力圧の増加量が閾値TH1以下のときよりも抑制され、さらに所定の閾値TH1より大きい所定の閾値TH2を超えた領域では出力圧が一定に設定される。また、アキュムレータ圧が所定の閾値TH3以下の領域では、アキュムレータ圧の増加量に対してゲインが増加し、アキュムレータ圧が所定の閾値TH3を超えた領域ではゲインが一定(例えば1)に設定される。このとき、逆止弁78により、この作動油がブーム用制御弁26側に戻ることはない。
【0035】
同時に、他方のブームシリンダ7c2のヘッド側から押し出された作動油は、通路35およびドリフト低減弁36を経て通路37からブームエネルギ・リカバリ弁31のメイン制御弁62で通路73から通路74へと方向制御し、さらに逆止弁80および通路40を経て他方のブームシリンダ7c2のロッド側に再生させるとともに、逆止弁80を経て通路76へと分岐した作動油をメイン制御弁62内の逆止弁を経て通路75へと方向制御し、通路39を経て一方のブームシリンダ7c1のロッド側にも再生させる。このとき、メイン制御弁62は、レバーの操作量、すなわちこの操作量により設定されるパイロット圧に応じて動作量が変化する。具体的に、レバーの操作量により設定されるパイロット圧に対して所定のテーブルにより補正を行って、メイン制御弁62を動作させる出力とする。さらに具体的に、本実施の形態では、図3(b)に示されるように、図3(a)のテーブルと同様のテーブルにより、レバーの操作量により設定されるパイロット圧の入力圧と出力圧が設定され、基本的にはブーム下げ操作を検知すると即座に切り替わる。なお、他方のブームシリンダ7c2のヘッド側から押し出された作動油の余剰流量は、通路37から通路79および通路30を経て、ブーム用制御弁26からタンク21へと戻す。また、例えばブームシリンダ7c1,7c2のヘッド圧に基づいて作業装置6(図4)の接地を検知することなどによりブーム下げにより機体1を持ち上げていることを検知した場合には、所定の設定値に応じてブームシリンダ7c1,7c2の蓄圧用シリンダと自己再生用シリンダとの分離を解除する。
【0036】
このように、ブームエネルギ・リカバリ弁31は、制御弁61とメイン制御弁62とにより、ブーム下げ時の第1のアキュムレータ46への蓄圧と、ブームシリンダ7c1,7c2のロッド側への再生とを同時に行なう。
【0037】
図2は、ブーム7を上昇させるブーム上げ操作時の回路状態を示し、このブーム上げ操作時のブームエネルギ・リカバリ弁31は、制御弁61を遮断位置へと切り替えるとともにメイン制御弁62を切替えて、第1のアキュムレータ46への蓄圧と、ブームシリンダ7c1,7c2のロッド側への再生とを停止し、メインポンプ12,13からブーム用制御弁26,28を経て通路30に供給された作動油を、通路79から通路37、ドリフト低減弁36および通路35を経て他方のブームシリンダ7c2のヘッド側に導くとともに、逆止弁78から通路34、ドリフト低減弁33および通路32を経て一方のブームシリンダ7c1のヘッド側に導く。また、ブームシリンダ7c1のロッド側から押し出された作動油は、通路39および出力通路38からブーム用制御弁26を経てタンク21へと戻し、ブームシリンダ7c2のロッド側から押し出された作動油は、通路40および通路76を経てメイン制御弁62で通路75へと方向制御され、出力通路38からブーム用制御弁26を経てタンク21へと戻す。
【0038】
また、上記のブーム下げ操作およびブーム上げ操作時などには、それぞれメインポンプシャフト14に直結またはギヤを介して連結したモータ機能を有するアシストモータ15を、図2に示されるように油圧モータとして機能させてエンジン負荷を低減する、エンジンパワーアシストを行うことができる。例えばブーム下げ操作時には、圧力センサ55により検出した第1のアキュムレータ46のアキュムレータ圧が所定の第1の閾値圧以上である場合にエンジンパワーアシストを行い、ブーム下げ操作時以外、例えばブーム上げ操作時などには、圧力センサ55により検出した第1のアキュムレータ46のアキュムレータ圧が上記の所定の第1の閾値圧と異なる所定の第2の閾値圧以上であるときにエンジンパワーアシストを行う。このエンジンパワーアシストの際には、電磁式切替弁51を連通位置に切り替えて、第1のアキュムレータ46に蓄圧されたエネルギでアシストモータ15を回転させ、メインポンプ12,13の油圧出力をアシストしてエンジン負荷を低減する。なお、機体1を持ち上げている場合には、アシストモータ15によるエンジンパワーアシストをしない。
【0039】
このように、エンジンパワーアシスト機能は、一方のブームシリンダ7c1のヘッド側から第1のアキュムレータ46に蓄圧されたエネルギによってアシストモータ15を回転させることで、このアシストモータ15によりメインポンプシャフト14を介して連結された搭載エンジン11の負荷を低減させる。
【0040】
そして、上記のように、蓄圧回路Aと再生回路Bとを切離して、油圧ショベルHEの作業装置6を下降させる際に、ブームシリンダ7c1のヘッド側から押し出された作動油を制御弁61により第1のアキュムレータ46に蓄圧すると同時に、ブームシリンダ7c2のヘッド側から押し出された作動油をメイン制御弁62によりブームシリンダ7c1,7c2のロッド側に再生するので、第1のアキュムレータ46を蓄圧作用させているときも再生流量分のポンプ流量を節約でき、制御弁61,62を用いる簡素な構成で他の油圧アクチュエータで必要とするメインポンプ流量を含む必要なポンプ流量を容易に確保できるとともにメインポンプ12,13を小型化できる。
【0041】
また、片側のブームシリンダ7c1のヘッド側油を第1のアキュムレータ46への蓄圧に回すことで、すなわち作業装置6の荷重を2本のブームシリンダ7c1,7c2に分散させるのではなく、1本のブームシリンダ7c1に集中させることで、エネルギ密度を増すことができ、ブームシリンダ7c1から発生する圧力を高めて、第1のアキュムレータ46への蓄圧エネルギを増すことができ、言い換えれば、第1のアキュムレータ46やアシストモータ15などのコンポーネントを小型化でき、コストを抑えられ、レイアウトが容易になる。
【0042】
さらに、制御弁61は、レバーの操作量と第1のアキュムレータ46のアキュムレータ圧とに応じてブームシリンダ7c1のヘッド側と第1のアキュムレータ46との連通量を変化させるので、ブーム下げ操作の操作性を犠牲にすることなくより適切に第1のアキュムレータ46に蓄圧でき、操作性とエネルギ蓄圧とを同時に満たすことができる。
【0043】
ブームシリンダ7c1,7c2と他の油圧アクチュエータ(旋回モータ3m、スティックシリンダ8c、バケットシリンダ9cなど)との連動操作時に、片側のブームシリンダ7c2のヘッド側から押し出された作動油をブームシリンダ7c1,7c2のロッド側に再生するので、その再生分の油量をメインポンプ12,13から他の油圧アクチュエータに回すことができ、連動操作時の速度低下を防止でき、連動操作性を向上させることができる。
【0044】
さらに、複数の回路機能を単一ブロックに集約させたブームエネルギ・リカバリ弁31により、レイアウトが容易となり、組立工数の低減によるコスト低減が可能となる。
【0045】
また、一方のブームシリンダ7c1に荷重を集中させることで、第1のアキュムレータ46の蓄圧エネルギを増すことができ、小型のアキュムレータで大きなアシストができるため、コストを抑え、機体レイアウトをコンパクトにまとめることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、流体圧回路または作業機械を製造、販売などする事業者にとって産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0047】
A 蓄圧回路
B 再生回路
HE 作業機械としての油圧ショベル
1 機体
6 作業装置
7c1,7c2 流体圧シリンダとしてのブームシリンダ
12,13 ポンプとしてのメインポンプ
46 アキュムレータである第1のアキュムレータ
61 一のバルブとしての制御弁
62 他のバルブとしてのメイン制御弁
図1
図2
図3
図4