特許第6261010号(P6261010)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261010
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】水素残量センサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/00 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   G01N19/00 H
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-243087(P2015-243087)
(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公開番号】特開2017-110917(P2017-110917A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】時田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】河原崎 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】河合 政征
(72)【発明者】
【氏名】野家 和雄
【審査官】 伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−180682(JP,A)
【文献】 特許第4263747(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主となる水素吸蔵合金により水素の吸放出がなされる空間に配置される水素残量センサであって、センサ用水素吸蔵合金の粉末が60%超の充填率で充填され、前記水素の内外移動が可能とされた容器形状のセンサ本体を備え、該センサ本体は、前記センサ用水素吸蔵合金の水素吸放出に伴って歪みが容易に生じる易歪み部を一部に有し、該易歪み部の歪みを測定するひずみゲージが設けられており、
前記センサ本体は、壁面に軸方向に沿って切り欠き部を持つ円筒型形状を有し、軸方向長さが5mm〜30mmの範囲内、径の大きさと、軸方向長さの比が1:2〜1:4の範囲内であり、パイプ強度として、3.0 N/mm〜25.0N/mmの強度を有していることを特徴とする水素残量センサ。
ただし、充填率は、前記センサ本体の初期体積に対する充填率であり、パイプ強度は2(t/D)σYsから求められる値であり、t:肉厚、D:パイプ径、σYs:耐力である。
【請求項2】
前記センサ本体に、充填材料としてセンサ用水素給蔵合金のみが充填されていることを特徴とする請求項1記載の水素残量センサ。
【請求項3】
前記センサ本体は、前記センサ用水素吸蔵合金が筒断面長方向において、2%〜5%膨張する充填量で充填されていることを特徴とする請求項1または2に記載の水素残量センサ。
【請求項4】
主となる水素吸蔵合金により水素の吸放出がなされる空間に配置される水素残量センサの製造方法であって、
水素の内外移動が可能とされ、水素吸放出に伴って歪みが容易に生じる易歪み部が一部に設けられ、壁面に軸方向に沿った切り欠き部を有し、軸方向長さが5mm〜30mmの範囲内、径の大きさと軸方向長さの比が1:2〜1:4の範囲内であり、パイプ強度が、3.0N/mm〜25.0N/mmである円筒型形状のセンサ本体に、センサ用水素吸蔵合金の粉末を60%超の充填率で、かつ筒断面長方向において、2%〜5%膨張する充填量で充填するとともに、
前記易歪み部の歪みを測定するひずみゲージを設けることを特徴とする水素残量センサの製造方法。
ただし、充填率は、前記センサ本体の初期体積に対する充填率であり、パイプ強度は2(t/D)σYsから求められる値であり、t:肉厚、D:パイプ径、σYs:耐力である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水素吸蔵合金を収容している水素貯蔵容器などの水素の残量を検知する水素残量センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素貯蔵容器のひとつである水素吸蔵合金容器は、その体積貯蔵密度に優れることから普及し始めているが、水素吸蔵合金容器内の水素残量を知る手がかりが得られにくいという課題がある。通常の水素ガスタンクであれば圧力計を取付けることで水素残量を容易に知ることができる。一方、水素吸蔵合金の場合は、PCT曲線で表されるプラトーといわれる平坦な領域があり、ここの圧力差(最小と最大の圧力差)が小さいことに加え、合金の温度が変わればこのプラトーの圧力も変わるため、圧力計だけで容器内の水素残量を正確に知ることは難しい。
大型の水素吸蔵合金容器の水素貯蔵システムでは、間接的な測定方法であるが、高精度の質量流量計を用いてその積算値から水素残量を知ることでできる。しかし、質量流量計の価格は高く、小型化も難しいため比較的小型の水素吸蔵合金容器には不向きといえる。そこで、この水素吸蔵合金容器に向いた直接的に水素残量を知ることのできる水素残量計あるいはセンサが提案されている。
【0003】
特許文献1で提案されている水素残量の計測方法は、タンクの壁に直接ひずみゲージを貼り付ける方法である。
特許文献2で提案されている水素残量の検知方法は、タンク内に水素吸蔵圧の異なる3つの水素吸蔵合金とマイクロヒータを組み合わせた方法である。
特許文献3で提案されている水素残量センサは、小型のセンサ本体に水素吸蔵合金を充填し、センサにひずみセンサを張り付けることで、水素吸蔵合金の水素吸収による膨張を感知し、水素残量を知る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−66787号公報
【特許文献2】特開2005−106617号公報
【特許文献3】特開2008−180682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1による方法は、合金膨張に伴うタンクの膨張変形は場所によって異なるため、ひずみゲージが複数個でなければ精度を欠くと考えられる。
また、特許文献2による方法は、複雑な仕組みであり、低コストで作製することは難しいと考えられる。
さらに、特許文献3における水素残量センサでは、実施例に水素残量と出力の関係を示すグラフが示されているが、水素吸収率が高い領域において出力波形に平坦部を持ち、水素残量と出力との直線性が悪く精度に難があるという問題がある。
【0006】
この発明は、上記事情を背景として水素残量センサの課題を解決するためになされたものであり、水素吸蔵合金の充填率を上昇させることでセンサ出力を増加させ、高精度な水素残量検知を可能にする水素残量センサおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の水素残量センサのうち、第1の形態は、主となる水素吸蔵合金により水素の吸放出がなされる空間に配置される水素残量センサであって、センサ用水素吸蔵合金の粉末が60%超の充填率で充填され、前記水素の内外移動が可能とされた容器形状のセンサ本体を備え、該センサ本体は、前記センサ用水素吸蔵合金の水素吸放出に伴って歪みが容易に生じる易歪み部を一部に有し、該易歪み部の歪みを測定するひずみゲージが設けられており、
前記センサ本体は、壁面に軸方向に沿って切り欠き部を持つ円筒型形状を有し、軸方向長さが5mm〜30mmの範囲内、径の大きさと、軸方向長さの比が1:2〜1:4の範囲内であり、パイプ強度が3.0 N/mm〜25.0N/mmであることを特徴とする水素残量センサ。
ただし、充填率は、前記センサ本体の初期体積に対する充填率であり、パイプ強度は2(t/D)σYsから求められる値であり、t:肉厚、D:パイプ径、σYs:耐力である。
【0008】
第2の形態の水素残留センサは、前記形態の本発明において、前記センサ本体に、充填材料としてセンサ用水素給蔵合金のみが充填されていることを特徴とする。
【0009】
第3の形態の水素残留センサは、前記形態の本発明において、前記センサ本体が筒状の形状を有しており、前記センサ用水素吸蔵合金が筒断面長方向において、2%〜5%膨張する充填量で充填されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の水素残留センサの製造方法のうち、第1の形態は、主となる水素吸蔵合金により水素の吸放出がなされる空間に配置される水素残量センサの製造方法であって、
水素の内外移動が可能とされ、水素吸放出に伴って歪みが容易に生じる易歪み部が一部に設けられ、壁面に軸方向に沿った切り欠き部を有し、軸方向長さが5mm〜30mmの範囲内、径の大きさと軸方向長さの比が1:2〜1:4の範囲内、パイプ強度が3.0 N/mm〜25.0N/mmである円筒型形状のセンサ本体に、センサ用水素吸蔵合金の粉末を60%超の充填率で、かつ筒断面長方向において、2%〜5%膨張する充填量で充填するとともに、
前記易歪み部の歪みを測定するひずみゲージを設けることを特徴とする。
ただし、充填率は、前記センサ本体の初期体積に対する充填率であり、パイプ強度は2(t/D)σYsから求められる値であり、t:肉厚、D:パイプ径、σYs:耐力である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、センサ本体に十分な量の粉末状の水素吸蔵合金を充填することで、水素吸収に伴うセンサ本体における歪み出力を精度よく得ることができ、これにより水素残量を正確に知ることを可能にする。
すなわち、水素吸蔵合金の膨張をセンサ本体に効率よく伝達することが可能となり、これにより、高精度に水素残量を検知、出力できる残量センサを提供することができる。
【0015】
また、充填に際し、センサ本体の筒断面径が元の大きさより2〜5%膨張する程度まで充填すれば、歪み出力を増大させて低水素濃度域においても精度よく合金膨張を検知することが可能となる。
さらに、センサ本体の筒断面長さに対する軸方向長さの最適化を行えば、合金膨張による力が無駄なくセンサ本体に伝達されるようになり、センサ出力の高精度化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の水素残量センサの斜視図である。
図2】同じく、水素残量センサの動作を説明する図である。
図3】本発明の実施例における水素残量と歪みとの関係を示したグラフである。
図4】本発明の実施例におけるセンサ本体合金充填率と、水素残量およびセンサ出力波形の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
まず、センサ本体内に充頃するセンサ用水素吸蔵合金は、残量測定対象の水素貯蔵容器などに収容されている水素吸蔵合金(主となる水素吸蔵合金)と同じものを用いるのが一般的であるが、より残量を正確に検出できる特性が得られるならば、主となる水素吸蔵合金とは異なった水素吸蔵合金を充填しても良い。水素吸蔵合金は、粉末状にして充填に備えられる。水素吸蔵合金粉末の粒径は特に限定されるものではなく、適宜の大きさにすることができる。例えば、粒径100μm〜1000μmの粒径が望ましい。
【0018】
センサ本体1は、軸方向両端を開口した筒形状を有しており、アルミニウム材料製からなる。アルミニウム合金としては、JIS A1070などが挙げられる。但し、本発明としては、センサ本体1にアルミニウム材料を使用する場合でも、この材料に限定されるものではない。センサ本体1の形状は、図1のような円筒型のセンサ本体が好ましい。ただし、本発明としては、センサ本体の形状や材料が特に限定されるものではない。
【0019】
このセンサ本体1は、パイプ強度3.0 N/m〜15.0 N/mのアルミニウム合金パイプを用いて製造することが望ましい。パイプ強度は2(t/D)σYsから求められる値であり、t:肉厚、D:パイプ径、σYs:耐力である。パイプ強度が低すぎると、水素の吸収によるセンサ本体の変形に伴って塑性変形が生じ、水素残量の測定ができなくなる。一方、パイプ強度が高すぎると、水素放出による歪み量が小さくなり、高い精度での水素残量検出が難しくなる。
【0020】
また、センサ本体1が、筒壁に軸方向全長に亘って切り欠き部2を有しており、断面C型形状を有している。センサ本体1の円筒内がセンサ用水素吸蔵合金充填部となっている。この切り欠き部2の対向する筒壁は、各センサ本体が切り欠き部2を開放端として変形する際に応力が集中する易歪み部3となっており、その部分の表面に、図2に示す歪みゲージ4が貼り付けられる。
【0021】
センサ本体1には、水素吸蔵合金粉末5が充填される。充填方法は適宜の方法により行うことができ、本発明としては充填方法が特に限定されるものではない。水素吸蔵合金は、前記センサ本体の内容積の初期体積に対し、60%超の充填率で充填するのが望ましく、さらに65%以上の充填率で充填するのが一層望ましい。また、充填に際し、筒断面長方向において、2%〜5%膨張するように充填するのが望ましい。
【0022】
前記センサ本体は、径の大きさが、5〜12mm、軸方向長さが10mm〜30mmの範囲内とするのが望ましく、径の大きさと、軸方向長さの比が1:2〜1:4の範囲内であるのが一層望ましい。
また、本実施形態では、水素残量センサの本体軸方向長さを適正に設定することで、センサ出力を高精度化している。軸方向長さが短い場合、合金膨張による力が径方向へ伝わらずに軸方向へ逃げやすくなり、軸方向長さが長い場合、合金充填にムラができやすくなり、出力波形が安定しなくなる。同様の理由で軸方向長さは10mm以上であることが望ましく、30mm以下とするのが一層望ましい。
【0023】
また、径の大きさと軸方向長さの比を適正に設定することで、センサ出力の高精度化を確実にする。その比が小さいと、合金の膨張による力の伝達が悪化し、その比が大きいと合金充填ムラを生じやすくする。
【0024】
図2にC型のセンサ本体1におけるセンサ用水素吸蔵合金粉末5が充填された充填部の水素吸放出にともなう変形の模式図を示す。水素を吸収して水素吸蔵合金が膨張すると、センサ本体1は切り欠き部2の開放端を開くように弾性変形するため、開放端の反対側にある易歪み部3に歪みが集中して、歪みゲージ4は圧縮応力を受けることになる。この易歪み部3の歪みが歪みゲージ4によって検出される。
上記形態におけるセンサ本体1への合金充填はセンサ本体径が元の大きさより2〜5%膨張する程度まで充填しており、初期センサ本体の水素吸蔵合金充填空間の容積に対し、水素吸蔵合金の充填率が65%以上になっている。これにより水素吸収率の低い段階でも歪み変化が出やすくなり、残量計の優れた特性が得られる。センサ本体の充填率を65%以上まで充填することで、残量センサ出力を従来技術の約1.5倍に増加させることができ、低水素濃度域においても精度よく合金膨張を検知することが可能となる。
【実施例1】
【0025】
以下に、本発明の一実施例を説明する。
図1と同形状となるよう、肉厚0.25mmのアルミニウム合金のC型管(Dφ5mm、L20mm)を残量センサ用のセンサ本体として用いる。ただし、L:センサ本体長さ、D:センサ本体径、t:センサ本体肉厚であり、パイプ強度は3.40N/mm であった。
センサ本体内部には、AB系の水素吸蔵合金粉末を充填率が約72%まで充填した(水素吸蔵合金質量1.8g)。水素吸蔵合金樹脂混合物の充填後、共和電業製KFG型ひずみゲージを貼り付けた。径方向の膨張は合金充填終了時で5.2mm程度まで膨張していることを計測した。したがって、約4%の膨張が見られた。
【0026】
試験用の水素貯蔵容器に、センサ本体内に充填したものと同じ水素吸蔵合金粉末を90g充填し、水素吸蔵合金充填部の中心付近に差し込んだ。また、センサ本体の周りの空隙部はセラミックウールで充填した。歪みゲージの出力線は継手を通じて外部に引き出され、データ収集装置に繋いで歪みを随時記録できるようにした。また、水素貯蔵容器には水素の導入バルブを取り付けた。
【0027】
水素貯蔵容器を80℃で、10時間ロータリーポンプによって真空引き後、15℃の水槽に浸けて1MPaの水素を導入し、活性化した。活性化後、4回水素吸放出を繰り返して出力を安定させた。次に、20℃で1MPaの水素を満充填した後、20℃のまま最大0.1NL/minの速度で水素を大気圧まで放出きせたときの歪み変化を記録した。水素貯蔵容器の水素残量を横軸に、そのときの歪みを縦軸にプロットしたグラフを図3に示した。
【0028】
水素残量は高精度の質量流量計を用いて計測し、積算値を百分率化したものである。図3に示すように、歪み量は水素放出とともに概ね直線に沿ってひずみが増えていく(圧縮ひずみが解消していく)傾向が見られるため、このセンサの利用により正確な残量表示が可能となった。
図4にセンサ本体合金充填率と水素残量とセンサ出力波形の誤差の最大値の関係図を示す。図4より、充填率に関し、誤差10%以下とするためには充填率は65%以上とすることが好ましい。また、誤差8%以下を要求する場合は充填率が70%以上とすることが望ましい。
【0029】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明の範囲を逸脱しない限りは本実施形態に対する適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 センサ本体
2 切り欠き部
3 易歪み部
4 ひずみゲージ
5 水素吸蔵合金粉末
図1
図2
図3
図4