(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261018
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 73/06 20060101AFI20180104BHJP
H01H 83/04 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
H01H73/06 B
H01H83/04
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-102880(P2016-102880)
(22)【出願日】2016年5月23日
(62)【分割の表示】特願2012-120354(P2012-120354)の分割
【原出願日】2012年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-149377(P2016-149377A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】毎熊 健造
【審査官】
澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−340091(JP,A)
【文献】
特開2005−339909(JP,A)
【文献】
特開2004−327731(JP,A)
【文献】
特開2008−195145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 71/02
H01H 73/06 − 73/10
H01H 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせて器体の外郭を構成するケースと、
器体内部の主回路導電部を他の極の導体電部と絶縁する極間絶縁壁とを備えた回路遮断器であって、
前記ケースの重ね合わせ面に器体の内外を貫通して器体の外部から回路遮断器の動作を確認するテストボタンの貫通部を形成する一方、
前記極間絶縁壁に前記テストボタンに代えて前記貫通部に係合する係合部を形成し、
前記ケースを重ね合わせたときに、前記係合部が貫通部に挟み込まれることを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
前記係合部に、前記貫通部を器体の前面側から覆う覆い部を設けて構成したことを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記係合部は、極間絶縁壁本体と弾性部を介して設けられ、前記貫通部に係合部が係合した状態において、前記弾性部により極間絶縁壁本体が所定の方向に付勢されるよう構成したことを特徴とする請求項2記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路遮断器の構造に係り、特に、器体の外郭を構成するケースを、配線用遮断器と漏電遮断器とにおいて共用し得る回路遮断器の内部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器には、電路に流れる過電流や短絡電流を検出し、該過電流や短絡電流の大きさが予め定められた所定の大きさに達した場合には電路を遮断し配線を保護する役割を果たす配線用遮断器と、該配線用遮断器の機能に加えて、電路に発生する漏電電流を検出し、漏電電流の大きさが予め定めされた所定の大きさに達した場合に電路を遮断する漏電遮断機能を備えた漏電遮断器が一般に存在する。
【0003】
漏電遮断機能を回路遮断器の器体内部に設けた漏電遮断器においては、器体の前面側に設けられた操作ハンドルの近辺に、漏電遮断機能が正常に動作するか否かを確認するためのテストボタン、漏電遮断動作が行われたことが外部から視認するための漏電表示ボタンが設けられる。
【0004】
テストボタン、漏電表示ボタンは、器体の内部から外部に貫通突出されて設けられるため、通常、漏電遮断器の外郭を構成する器体前面側には、これらのボタンを配置するための配置部が構成される。特許文献1は住宅用分電盤の分岐回路遮断器のひとつとして用いられる漏電遮断器の内部構造図を示したものであり、特許文献1の
図1には、テストボタンを配置した器体の分解図が開示されている。器体の長手方向左右に分割形成された器体の操作ハンドル近辺には、前面側に突出形成されたボタンの配置部が夫々形成されている。
【0005】
また、特許文献2には、特許文献1の漏電遮断器と同様、住宅用分電盤の分岐回路遮断器として用いられ、外郭の大きさを前記漏電遮断器と略同一とした配線用遮断器の内部構造図が示されている。(特許文献2の
図2)この場合においては、器体にはテストボタンは配置されず、長手方向において分割された左右の器体前面側は面一に構成されている。
【0006】
このように、配線用遮断器の外郭を構成する器体と、漏電遮断器の外郭を構成する器体は、別種の構成部品にて設けられるため、部品の種類が増加することになるが、これらの器体を共用することは従来行われていなかった。仮に漏電遮断器の器体を配線用遮断器に用いて共用化を図る場合には、前記テストボタンが配線用遮断器においては不要であるため、前面側からは視認できないように、テストボタンの配置部をシールなどを貼り付けて隠すことが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−272509号公報(
図1)
【特許文献2】特開2002−56763号公報(
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
回路遮断器の器体の前面側にシールなどを貼り付ける場合には、シールそのものの部品が増加することに加え、貼付作業工程において貼付位置や、貼付角度の確認・修正作業が生じ、組立て工数が増加することが懸念される。また、組立て後において、シールに破れが生じた場合、器体の外部から内部に不用な異物が侵入する原因となり、回路遮断器の使用に当たり信頼性が低下するおそれがあった。
【0009】
また、配線用遮断器の器体を用いて共用化を図る場合には、前記テストボタンの配置部を後から形成する必要が生じ、共用化するメリット(部品点数削減などによる効果)が相殺されてしまうことが想定される。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、漏電遮断器の外郭を構成する器体を配線用遮断器と共用する場合において、漏電遮断器に設けられるテストボタン穴や漏電表示ボタン穴をシールを用いることなく塞ぐことができ、なおかつ組立てに際しては細かな位置決めや角度調整が不要な器体共用化構造を備えた回路遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る回路遮断器は、上述の課題を解決すべく構成されたもので、請求項1記載の回路遮断器は、重ね合わせて器体の外郭を構成するケースと、器体内部の主回路導電部を他の極の導体電部と絶縁する極間絶縁壁とを備えた回路遮断器であって、前記ケースの重ね合わせ面に器体の内外を貫通して器体の外部から回路遮断器の動作を確認するテストボタンの貫通部を形成する一方、前記極間絶縁壁に前記テストボタンに代えて前記貫通部に係合する係合部を形成し、前記ケースを重ね合わせたときに、前記係合部が貫通部に挟み込まれることを特徴として構成したものである。
【0012】
かかる構成によれば、器体内部に配置される極間絶縁壁に設けられた係合部が貫通部に係合するから、前記テストボタンに代えて該貫通部を塞ぐ役割を果たし、貫通部を使用しない場合にシールを用いることなく塞ぐことができる。また、ケースを重ね合わせることにより、係合部が挟み込まれて貫通部に係合するから、組立てに際しては細かな位置決めや角度調整が不要である回路遮断器を提供できる。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、前記係合部に、前記貫通部を器体の前面側から覆う覆い部を設けて構成したものである。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、覆い部によって、貫通部が前面側に露出せず、組立て後において貫通部からゴミや埃などの不用な異物が器体の内部に侵入することがない。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、前記係合部は
、極間絶縁壁本体と弾性部を介して設けられ、前記貫通部に係合部が係合した状態において、前記弾性部により極間絶縁壁本体が所定の方向に付勢されるよう構成したものである。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、前記貫通部に係合部を係合させるとともに極間絶縁壁を所定位置に配置した場合に、前記弾性部に応力が印加され係合部と極間絶縁壁本体が互いに引き合うような配置としているため、極間絶縁壁が所定の方向に付勢されて、器体内での位置が一定の位置に保持される。このため、極間絶縁壁を一定の位置に保持する機能と、貫通部の前面側を覆い隠す機能を同居させつつ、前面側から不用意な力が加えられたとしても、係合部の前面側からの力は、貫通部が形成された器体に受け止められ内部には及ばない信頼性の高い回路遮断器を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、漏電遮断器の外郭を構成する器体を配線用遮断器と共用する場合において、漏電遮断器に設けられるテストボタン穴や漏電表示ボタン穴をシールを用いることなく塞ぐことができ、なおかつ組立てに際しては細かな位置決めや角度調整が不要な器体共用化構造を備えた回路遮断器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態を示す回路遮断器の負荷端子側からの斜視図を示す。
【
図2】同実施形態に係る回路遮断器の電源端子側からの斜視図を示す。
【
図3】同実施形態に係る器体の第2のケースを取り外した状態の斜視図を示す。
【
図4】同実施形態に係る器体のケースのみを重ね合わせる状態の斜視図を示す。
【
図5】同実施形態に係る器体及び極間絶縁壁を重ね合わせる状態の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明に係る回路遮断器の実施形態を
図1乃至
図7を用いて詳細に説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
(回路遮断器の外観構成)
本発明の回路遮断器1は、分電盤の分岐回路遮断器として用いられる2極回路遮断器である。該回路遮断器1は、単相三線式の回路又は単相二線式の回路に介在して電源を負荷側に供給する。
【0021】
回路遮断器1の電源側と負荷側を結ぶ方向を長手方向とした場合に、該長手方向に分割された第一のケース101と第二のケース102とを幅方向両側から重ね合わせて、その外郭、即ち器体が構成される。回路遮断器1を構成する各部品は、これらの分割された第一のケース101及び第二のケース102に挟み込まれるように収納される。
【0022】
以降、長手方向において、図中105及び106で示された電線挿入孔が設けられた側を負荷側とし、長手方向において電線挿入孔105、106の反対側を電源側とし、回路遮断器1を操作する操作ハンドル103が設けられた側を前面側とし、回路遮断器を取付固定する取付板に取り付けられる側を底面側とし、左右の電線挿入孔105、106を結ぶ方向を幅方向として説明を行う。
【0023】
(回路遮断器の内部構成)
図1乃至
図3に示した回路遮断器1は、漏電遮断器の形態を示している。該回路遮断器1の器体内部には、電源側に設けられた各極の電源側端子(105a,105b)、負荷側に設けられた各極の負荷側端子104(他極の負荷側端子は図示しない)、これら端子と接続される各極の主回路導電部113、該主回路導電部113に介在し主回路導電部113に設けられた接点を接触/離反させる接点開閉機構部112、主回路導電部113に過電流などの異常電流が流れたときには前記接点開閉機構に作用して回路を切動作させる自動遮断機構(図示しない)、前記各極の主回路導電部113が貫装される零相変流器(ZCT)110,該ZCTからの出力信号を受けて回路に流れる漏電電流の大きさを検出する検知回路114、漏電電流の大きさが所定の大きさになった場合に前記検知回路114から動作信号を受けて前記接点開閉機構に作用して回路を切動作させる漏電遮断機構(トリップコイル)111等が設けられる。各極の間には、極間絶縁壁A(109A)が配置されており、夫々の極の絶縁が保たれている。
【0024】
また、接点開閉機構部112は、リンク機構によって操作ハンドル103と連結されており、自動遮断機構による動作のほか操作ハンドル103によって器体の外部から手動で入切操作することができる。
【0025】
(テストボタン)
器体の前面側には、前記検知回路114及びトリップコイル111の動作を器体外部から手動で確認するためのテストボタン107が設けられている。該テストボタン107は、一部が器体外部に突出しており、器体外部から指などで押圧操作できる。テストボタン107の底面側には検知回路114に接続された接点回路が設けられており、テストボタン107を押圧下場合に接点回路が閉じることにより、前記検知回路114が駆動する構成となっている。
【0026】
(極間絶縁壁A)
回路遮断器1の内部においては、前記極間絶縁壁A(109A)によって互いの極間が絶縁されている。該極間絶縁壁A(109A)は、電源側端子側105から負荷側端子104側に亘って回路遮断器の長手方向に略平面状に器体内に配置されて極間を絶縁している。また、極間絶縁壁A(109A)の側面には、前記検知回路114を構成するプリント基板が配設され、前面側には、前記テストボタンを保持するテストボタン保持部109A1及びテストボタン107の底面側に設けられた検知回路114に接続される接点回路配置部が形成されている。
【0027】
(ケースの構成)
第一のケース101と第二のケース102とは、
図4に示したように、重ね合わされる構成となっている。前記テストボタン107を器体の外部に一部が突出するように配置することができるよう、器体の重ね合わせ面には、器体の前面側の一部において、前面側から底面側に貫通する貫通部108が形成される。貫通部108の周囲には、テストボタン107を囲繞するようにテストボタン配置部(108A,108B)が形成される。第一のケース101と第二のケース102とを重ね合わせたときには、テストボタン107は器体の前面側と底面側と結ぶ方向に移動が可能なように、前記テストボタン配置部に挟み込まれる形で配置される。
【0028】
(回路遮断器の形態変化)
さて、漏電遮断器の形態をとる回路遮断器1を、配線用遮断器の形態に変化させる場合について説明を行う。第一のケース101と第二のケース102を利用しつつ、配線用遮断器を形成する場合には、漏電遮断器で設けていた前記ZCT110、トリップコイル111、検知回路114、テストボタン107は使用しない。また、前記極間絶縁壁A(109A)に代えて、配線用遮断器用の極間絶縁壁B(109B)を用いて配線用遮断器を構成する。
【0029】
(極間絶縁壁B)
極間絶縁壁B(109B)は、互いの極間が絶縁し、電源側端子側105から負荷側端子104側に亘って回路遮断器の長手方向に略平面状に器体内に配置されて極間を絶縁している点は、極間絶縁壁A(109A)と同様である。
【0030】
一方、前記極間絶縁壁Aにおいて検知回路114を構成するプリント基板が配置される側面部分のスペースは、極間絶縁壁Bにおいては、プリント基板が配設されぬよう、前面側から底面側に亘って突条形成されたリブが設けられる。漏電遮断器と配線用遮断器で組立て誤りが発生しないようにするためである。
【0031】
また、極間絶縁壁Aにおける前記テストボタン保持部109A1のスペースは、極間絶縁壁Bにおいては、前記ケース1及びケース2に設けられた貫通部108に係合する係合部109B1が形成されている。該係合部102B1は、貫通部108に嵌まり込む嵌まり込み部109B3と、器体の前面側におけるテストボタン配置部A、Bを覆う覆い部109B2から構成されている。
【0032】
該係合部102B1の嵌まり込み部109B3を貫通部108に嵌めこみ、前記ケース1及びケース2を重ね合わせたときには、前記係合部109B1は該ケース1及びケース2に挟み込まれ、同時に、テストボタン配置部A、Bは、覆い部109B2によって、その前面側が覆われて、前面側から貫通穴が隠蔽される。
【0033】
(弾性部)
また、係合部109B1は、極間絶縁壁B(109B)の一部を、電源側−負荷側の方向に延出して形成した弾性部109B4の一端に形成しており、前面側−底面側の方向に弾性的に変位が可能である。
【0034】
極間絶縁壁B(109B)の本体部分109B5の器体内部での配置関係は、器体内部に設けられた所定のリブによって定められ、位置が固定される。本実施形態においては、正規に配置された前記本体部分109B5の底面側から、器体に形成された前記テストボタン配置部108A,Bの前面側の距離は、極間絶縁壁109Bの部品単体における本体部分109B5の底面側から覆い部109B2の底面側の距離よりも大きくなるよう構成されている。
【0035】
器体内に極間絶縁壁109Bを配置するときは、前記弾性部109B4を前面側に広げるように配置する。即ち、正規に配置された極間絶縁壁109Bは、弾性部109B4によって、係合部109B1と極間絶縁壁本体109B5とが互いに引き合うように配置され、該係合部109B1がテストボタン配置部の前面側に係合されることにより、極間絶縁壁の本体部分109B5が所定の方向、前面側に常に付勢される。このため、共通接地導体109Bの器体内での位置が一定の位置にがたつくことなく保持される。
【0036】
また、覆い部109B2を器体外部から誤って押圧された場合などにおいては、前記テストボタン配置部A、Bと係合部109B1の底面側が係合しているから、押圧力は極間絶縁壁109Bの本体部分109B5には伝わらわない。また、係合部が押圧されるだけでなく、引っ張られる場合においても、弾性部109B4が器体に係合することにより、引っ張られる力が抑制され極間絶縁壁109Bの本体部分109B5には引っ張られる力が伝わらわない。
【0037】
このように、回路遮断器1のケースを漏電遮断器と配線用遮断器において共用することが可能となる回路遮断器を提供することができる。また、従来配線用遮断器において必要としていたシールに代えて、前記覆い部109B2の部分にレーザ印字を施し、銘板に記載する内容などを記載することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 回路遮断器
101 第一のケース
102 第二のケース
103 操作ハンドル
104 負荷側端子
105 電源側端子
106 電線挿入孔
107 テストボタン
108 テストボタン配置部
109A 極間絶縁壁A
109A1 テストボタン保持部
109B 極間絶縁壁B
109B1 係合部
109B2 覆い部
109B3 嵌まり込み部
109B4 弾性部
109B5 極間絶縁壁本体部分