特許第6261027号(P6261027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62610272’−O−カルバモイル修飾ヌクレオシド三リン酸
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261027
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】2’−O−カルバモイル修飾ヌクレオシド三リン酸
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/10 20060101AFI20180104BHJP
   C07H 21/02 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20180104BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180104BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20180104BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20180104BHJP
   C07H 19/20 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C07H19/10CSP
   C07H21/02ZNA
   A61K31/7088
   A61P43/00 105
   C12N15/00 H
   C12N15/00 A
   C07H19/20
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-152578(P2013-152578)
(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公開番号】特開2015-20994(P2015-20994A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(72)【発明者】
【氏名】関根 光雄
(72)【発明者】
【氏名】清尾 康志
(72)【発明者】
【氏名】大窪 章寛
(72)【発明者】
【氏名】角田 浩佑
(72)【発明者】
【氏名】正木 慶昭
(72)【発明者】
【氏名】金森 功吏
(72)【発明者】
【氏名】山田 希
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 比祐吾
【審査官】 新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−526877(JP,A)
【文献】 特開2002−322192(JP,A)
【文献】 米国特許第05643889(US,A)
【文献】 Dissertation Abstracts International B,1989年,Vol.50, No.4,p.1211
【文献】 Nucleic Acids Research,1999年,Vol.27, No.6,pp.1561-1563
【文献】 Biochemistry,1992年,Vol.31,pp.9636-9641
【文献】 CSJ Current Review,2011年,No.6,pp.78-85
【文献】 日本化学会講演予稿集,2006年,Vol.86th, No.2,p.860, 2 G3-36
【文献】 日本化学会講演予稿集,2008年,Vol.88th, No.2,p.1531, 3 PA-053
【文献】 日本化学会講演予稿集,2005年,Vol.85th, No.2,p.1393, 1 G7-11
【文献】 Bioorganic & Medicinal Chemistry,2009年,Vol.17,pp.7275-7280
【文献】 社団法人日本化学会編,化学便覧 応用化学編 第6版,丸善株式会社,2003年, ,pp.1543-1545
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
〔式中、R及びR水素原子を表し、Xは酸素原子を表し、Bはチミン-1-イル、ウラシル-1-イル、ウラシル-5-イル、又は2-チオウラシル-1-イルを表す。〕
で表されるヌクレオシド三リン酸誘導体。
【請求項2】
一般式(II):
【化2】
〔式中、R及びR水素原子を表し、Rはシリル系保護基を表し、Xは酸素原子を表し、Bはチミン-1-イル、ウラシル-1-イル、ウラシル-5-イル、又は2-チオウラシル-1-イルを表す。〕
で表されるヌクレオシド三リン酸誘導体から弱酸性条件下でRを脱離させる工程を含む請求項1に記載のヌクレオシド三リン酸誘導体の製造方法。
【請求項3】
弱酸性がpH 2〜6である請求項2に記載のヌクレオシド三リン酸誘導体の製造方法。
【請求項4】
の脱離を酢酸の存在下で行う請求項2又は3に記載のヌクレオシド三リン酸誘導体の製造方法。
【請求項5】
シリル系保護基がtert-ブチルジメチルシリル基である請求項2乃至4のいずれか一項に記載のヌクレオシド三リン酸誘導体の製造方法。
【請求項6】
以下の工程を有することを特徴とするRNA誘導体の製造方法、
(1)逆転写酵素をRNAの集団又はRNA誘導体の集団(このRNA誘導体の集団は、工程(4)で選択されたRNA誘導体の集団であってもよい。)に作用させ、DNAの集団を合成する工程、
(2)工程(1)で合成されたDNAの集団を、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅させる工程、
(3)請求項1に記載のヌクレオシド三リン酸誘導体の存在下で、工程(2)で増幅されたDNAの集団にDNA依存RNAポリメラーゼを作用させ、前記ヌクレオシド三リン酸誘導体を残基として含むRNA誘導体の集団を合成する工程、
(4)工程(3)で合成したRNA誘導体の集団を標的物質と接触させ、標的物質に親和性を示すRNA誘導体の集団を選択する工程。
【請求項7】
請求項1に記載のヌクレオシド三リン酸誘導体の存在下で、鋳型とするDNAにDNA依存RNAポリメラーゼを作用させ、前記ヌクレオシド三リン酸誘導体を残基として含むRNA誘導体を製造するRNA誘導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なヌクレオシド三リン酸誘導体及びその製造方法に関する。また、本発明は、この誘導体を利用したアプタマー、アプタマーの製造方法、RNA誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アプタマーは、標的物質と特異的に結合する核酸分子であり、近年、抗体に代わる生体物質として注目され、医療への応用に向け、研究開発が進められている。アプタマーは、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)法と呼ばれる方法により作製され、例えば、RNAアプタマーは、RNAの集団(RNAライブラリー)の逆転写、cDNAの集団(cDNAライブラリー)の増幅、増幅したDNA集団からRNA集団の合成、標的物質と結合するRNAの選択(選択されたRNAに対して再度前述した逆転写が行われる)、といった操作を複数回繰り返すことにより得られる。
【0003】
未修飾の核酸分子は生体内で分解され易いため、アプタマーには分解酵素に耐性を持つ修飾核酸分子が用いられる。このような修飾核酸分子をSELEX法に適用するためには、その核酸分子を鋳型として逆転写酵素によりcDNAが合成されること、及び修飾基を持つヌクレオシド三リン酸がポリメラーゼの基質となり得る範囲の大きさであること(修飾基が大きすぎると取込まれない。)が必要である。
【0004】
上記の制約から、これまでにアプタマーに使われている2'-修飾核酸分子としては、2'-O-メチル基で修飾された核酸分子(非特許文献1)及び2'-フルオロ基で修飾された核酸分子(非特許文献2)など比較的小さな修飾基が知られている。これらの修飾核酸分子は、上記の必須条件に対しては問題ないが、修飾基自身の物理化学的性質から、標的物質との結合力がやや不十分であるという問題があった。
【0005】
最近、本発明者らは、2'位をカルバモイル基で修飾したウリジン(2'-O-carbamoyluridine、以下「Ucm」という。)を合成し、この修飾ヌクレオシドを導入した二重鎖核酸は、二重鎖の安定性が低下すること、及びUcmの2'-O-カルバモイル基によってUcmとグアノシンとのミスマッチ塩基対が安定化することを報告している(非特許文献3)。非特許文献3には、Ucmのほか、Ucmを含む核酸分子、及びそれを合成するためのホスホロアミダイトユニットが記載されているが、2'位がカルバモイル基で修飾されたウリジン三リン酸は記載されておらず、また、Ucmを含む核酸分子をアプタマーとして用いることも記載されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Padilla, R.; Sousa, R. Nucleic Acids Res. 1999, 27, 1561.
【非特許文献2】Aurup, H.; Williams, D. M.; Eckstein, F. Biochemistry. 1992, 31, 9636.
【非特許文献3】Seio, K.; Tawarada, R.; Sasami, T.; Serizawa, M.; Ise, M.; Ohkubo, A.; Sekine, M. Bioorg. Med. Chem. 2009, 17, 7275-7280.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにアプタマーに使われている修飾核酸分子の種類は非常に少ない。本発明は、このような技術的背景の下、アプタマーに利用可能な新規な修飾核酸分子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、2'-O-カルバモイル基がUcmとグアノシンとのミスマッチ塩基対を安定化することから、2'-O-カルバモイル基で修飾された核酸分子が多様な高次構造を取り、アプタマーとして有用であるという発想を得た。しかし、ミスマッチ塩基対の安定化によって、Ucmを含むRNAを鋳型とした逆転写において、多くのミスマッチを含むDNAが生成すると予想された。SELEX法によりRNAアプタマーを作製する際、逆転写を行うことが必要であるが、このようなミスマッチを含むDNAの生成は効率的なアプタマーの作製の大きな障害になる。そこで、実際に、本発明者は、Ucmを含むRNAを鋳型とした逆転写を行ってみたところ、前記予想に反し、ミスマッチは起きず、Ucmはアデノシンと正確に塩基対を形成することを見出した。
【0009】
また、2'-O-カルバモイル基で修飾されたアプタマーをSELEX法で作製する際、RNA合成の基質として2'-O-カルバモイルヌクレオシド三リン酸が必要であるが、この物質を従来の方法で合成するのは困難であった。通常、ヌクレオシド三リン酸を合成する際、3'位のヒドロキシ基をアセチル基で保護し、アンモニア水で脱保護するが、アンモニア水が2'-O-カルバモイル基を分解してしまうからである。本発明者は、2'-O-カルバモイルヌクレオシド三リン酸の合成法について検討した結果、3'位のヒドロキシ基をtert-ブチルジメチルシリル(TBS)基などで保護し、酢酸のような弱酸で脱保護することにより、2'-O-カルバモイルヌクレオシド三リン酸を合成できることを見出した。TBS基の脱保護は、通常、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)などで行われており、酢酸で脱保護できるということは全く予想外のことであった。
【0010】
本発明は、以上の知見に基づき完成されたものである。
【0011】
即ち、本発明は、以下の〔1〕〜〔11〕を提供するものである。
〔1〕一般式(I):
【0012】
【化1】
【0013】
〔式中、R及びRは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Bは核酸塩基の残基を表す。〕
で表されるヌクレオシド三リン酸誘導体。
〔2〕一般式(I)においてR及びRが水素原子である〔1〕に記載のヌクレオシド三リン酸誘導体。
〔3〕一般式(I)においてR及びRの一方がメチル基であり、他方が水素原子である〔1〕に記載のヌクレオシド三リン酸誘導体。
〔4〕一般式(I)においてBがチミン-1-イル、シトシン-1-イル、5-メチルシトシン-1-イル、ウラシル-1-イル、ウラシル-5-イル、アデニン-9-イル、又はグアニン-9-イルである〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載のヌクレオシド三リン酸誘導体。
〔5〕一般式(II):
【0014】
【化2】
【0015】
〔式中、R及びRは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rはシリル系保護基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Bは核酸塩基の残基を表す。〕
で表されるヌクレオシド三リン酸誘導体から弱酸性条件下でRを脱離させる工程を含む〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載のヌクレオシド三リン酸誘導体の製造方法。
〔6〕弱酸性がpH 2〜6である〔5〕に記載のヌクレオシド三リン酸誘導体の製造方法。
〔7〕Rの脱離を酢酸の存在下で行う〔5〕又は〔6〕に記載のヌクレオシド三リン酸誘導体の製造方法。
〔8〕シリル系保護基がtert-ブチルジメチルシリル基である〔5〕乃至〔7〕のいずれかに記載のヌクレオシド三リン酸誘導体の製造方法。
〔9〕一般式(V):
【0016】
【化3】
【0017】
〔式中、B、B及びBは同一又は異なって核酸塩基の残基を表し、Bはnの繰り返しにおいて異なっていてもよく、Y、Y及びYは同一又は異なってヒドロキシ基、メトキシ基、フッ素原子、又は一般式(VI)
【0018】
【化4】
【0019】
(式中、R及びRは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
で示される基を表し、Yはnの繰り返しにおいて異なっていてもよく、nは1以上の整数を表す。但し、Y、Y、及びYの少なくとも一つは一般式(VI)で示される基を表す。〕
で表されるRNAアプタマー。
〔10〕以下の工程を有することを特徴とするRNA誘導体の製造方法、
(1)逆転写酵素をRNAの集団又はRNA誘導体の集団(このRNA誘導体の集団は、工程(4)で選択されたRNA誘導体の集団であってもよい。)に作用させ、DNAの集団を合成する工程、
(2)工程(1)で合成されたDNAの集団を、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅させる工程、
(3)〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載のヌクレオシド三リン酸誘導体の存在下で、工程(2)で増幅されたDNAの集団にDNA依存RNAポリメラーゼを作用させ、前記ヌクレオシド三リン酸誘導体を残基として含むRNA誘導体の集団を合成する工程、
(4)工程(3)で合成したRNA誘導体の集団を標的物質と接触させ、標的物質に親和性を示すRNA誘導体の集団を選択する工程。
〔11〕〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載のヌクレオシド三リン酸誘導体の存在下で、鋳型とするDNAにDNA依存RNAポリメラーゼを作用させ、前記ヌクレオシド三リン酸誘導体を残基として含むRNA誘導体を製造するRNA誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明のヌクレオシド三リン酸誘導体により、標的物質との結合性の優れるアプタマーが製造できるようになる。
【0021】
また、本発明のヌクレオシド三リン酸誘導体の製造方法は、弱酸性条件下で脱保護を行うので、副生成物の生成を抑制し、この誘導体の生成を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】2'-O-カルバモイルウリジン-5'-三リン酸を基質とした転写実験の結果を示す図。右図は、鋳型としたDNAと生成するRNAの塩基配列を示す。図中のXの位置にウリジン三リン酸(UTP)又は2'-O-カルバモイルウリジン三リン酸(UcmTP)が取り込まれる。左図は、転写反応産物の電気泳動の結果を示す。各レーンには、左から順に、標品のRNAに反応停止剤を加えたもの、UTPを加えた場合の転写反応産物、UcmTPを加えた場合の転写反応産物、UTPもUcmTPも加えなかった場合の転写反応産物をそれぞれ添加した。
図2】全長転写産物を示すバンドの蛍光強度の相対値を示す図。
図3】オリゴヌクレオチドを用いた一塩基伸張逆転写実験の結果を示す図。上図は、cDNAプライマーと鋳型としたRNAの塩基配列を示す。図中のXの位置のヌクレオシドは、ウリジン(U)又は2'-O-カルバモイルウリジン(Ucm)である。下図は、逆転写反応産物の電気泳動の結果を示す。各レーン上の記載は、加えたdNTPの種類を意味し、controlはいずれのdNTPを加えなかったことを意味する。また、「X=U」及び「X= Ucm」という記載は、それぞれウリジンを含むRNAを鋳型としたこと及び2'-O-カルバモイルウリジンを含むRNAを鋳型としたことを示す。
図4】オリゴヌクレオチドを用いた完全長逆転写実験の結果を示す図。上図は、cDNAプライマーと鋳型としたRNAの塩基配列を示す。図中のXの位置のヌクレオシドは、ウリジン(U)又は2'-O-カルバモイルウリジン(Ucm)である。下図は、逆転写反応産物の電気泳動の結果を示す。また、レーン上の「X=U」及び「X= Ucm」という記載は、それぞれウリジンを含むRNAを鋳型としたこと及び2'-O-カルバモイルウリジンを含むRNAを鋳型としたことを示す。
図5】2'-O-カルバモイル修飾オリゴヌクレオチド(5'-UcmUcm-T)及び2'-O-メチル修飾オリゴヌクレオチド(5'-UOMeUOMe-T)の蛇毒ホスホジエステラーゼ耐性評価実験の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
〔ヌクレオシド三リン酸誘導体〕
本発明のヌクレオシド三リン酸誘導体は、一般式(I)で表される。
【0024】
一般式(I)におけるR及びRは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで、「炭素数1〜5のアルキル基」とは、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基n-ブチル基、n-ペンチル基などの直鎖アルキル基やイソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、tert-ペンチルなどの分岐鎖アルキルキを意味する。R及びRは同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。R及びRは少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、両方が水素原子であること、又は一方が水素原子で他方がメチル基であることが更に好ましい。
【0025】
一般式(I)におけるXは酸素原子又は硫黄原子を表す。Xは酸素原子であることが好ましい。
【0026】
一般式(I)におけるBは核酸塩基の残基を表す。核酸塩基は、天然型の核酸塩基、非天然型の核酸塩基のいずれであってもよい。ここで、「非天然型の核酸塩基」とは、天然型の核酸塩基の環外酸素原子や環外窒素原子や環内窒素原子や環内炭素原子に置換基を有するなどの化学修飾、もしくは環外酸素原子や環内窒素原子や環内炭素原子が他の原子に置換されるなどの化学修飾、又はこれらの化学修飾をともに有する核酸塩基の誘導体を意味する。天然型の核酸塩基の残基としては、例えば、チミン-1-イル、シトシン-1-イル、5-メチルシトシン-1-イル、ウラシル-1-イル、ウラシル-5-イル、アデニン-9-イル、グアニン-9-イルなどを挙げることができる。非天然型の核酸塩基の残基としては、2-チオチミン-1-イル、2-チオウラシル-1-イル、N2-アシル-3-デアザグアニン-9-イル、N2-カルバモイルグアニン-9-イル、N4-アシルシトシン-1-イル、N6-アシル-7-デアザアデニン-9-イル、N6-アシル-7-デアザ-8‐アザアデニン-9-イルなどを挙げることができる。これらの核酸塩基の残基の中で好ましい核酸塩基の残基としては、チミン-1-イル、シトシン-1-イル、5-メチルシトシン-1-イル、ウラシル-1-イル、ウラシル-5-イル、アデニン-9-イル、グアニン-9-イルを挙げることができる。
【0027】
一般式(I)で表されるヌクレオシド三リン酸誘導体の具体例としては、2'-O-カルバモイルウリジン三リン酸、2'-O-カルバモイルアデノシン三リン酸、2'-O-カルバモイルチミジン三リン酸、2'-O-カルバモイルグアノシン三リン酸、2'-O-カルバモイルシチジン三リン酸、2'-O-カルバモイル-5-メチルシチジン三リン酸、2'-O-チオカルバモイルウリジン三リン酸、2'-O-チオカルバモイルアデノシン三リン酸、2'-O-チオカルバモイルチミジン三リン酸、2'-O-チオカルバモイルグアノシン三リン酸、2'-O-チオカルバモイルシチジン三リン酸、2'-O-チオカルバモイル-5-メチルシチジン三リン酸、2'-O-N-メチルカルバモイルウリジン三リン酸、2'-O-N-メチルカルバモイルアデノシン三リン酸、2'-O-N-メチルカルバモイルチミジン三リン酸、2'-O-N-メチルカルバモイルグアノシン三リン酸、2'-O-N-メチルカルバモイルシチジン三リン酸、2'-O-N-メチルカルバモイル-5-メチルシチジン三リン酸、2'-O-N-メチルチオカルバモイルウリジン三リン酸、2'-O-N-メチルチオカルバモイルアデノシン三リン酸、2'-O-N-メチルチオカルバモイルチミジン三リン酸、2'-O-N-メチルチオカルバモイルグアノシン三リン酸、2'-O-N-メチルチオカルバモイルシチジン三リン酸、2'-O-N-メチルチオカルバモイル-5-メチルシチジン三リン酸などを挙げることができる。
【0028】
〔ヌクレオシド三リン酸誘導体の製造方法〕
本発明のヌクレオシド三リン酸誘導体の製造方法は、上記のヌクレオシド三リン酸誘導体を製造する方法であって、一般式(II)で表されるヌクレオシド三リン酸誘導体から弱酸性条件下でRを脱離させる工程を含むものである。
【0029】
一般式(II)におけるR、R、X、及びBは上記と同じ意味である。
【0030】
一般式(II)におけるRはシリル系保護基を表す。ここで「シリル系保護基」とは、ヒドロキシ基(特にリボースの3'ヒドロキシ基)を保護し、ケイ素を含む基であり、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている任意のシリル系保護基である。具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)基、tert-ブチルジフェニルシリル基などを挙げることができる。
【0031】
弱酸性条件は、Rを脱離させることができる条件であればよい。具体的なpHは2〜6とするのが好ましく、4〜5とするのが更に好ましい。
【0032】
このような弱酸性条件は、反応系に酸性物質を加えることで達成できる。酸性物質としては、酢酸、プロピオン酸、ピリジニウムp-トルエンスルホン酸などの有機酸、希塩酸、硫酸水素カリウムなどの無機酸などを例示できる。
【0033】
この脱離反応は、反応を阻害しない溶媒中で行う。このような溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンやこれらの混合溶媒などを例示できる。
【0034】
反応温度は特に限定されないが、10〜50℃の範囲内であることが好ましい。
【0035】
反応時間は特に限定されないが、6〜24時間とすることが好ましい。
【0036】
一般式(II)で表されるヌクレオシド三リン酸誘導体は、ヌクレオシド三リン酸の合成においてよく知られた方法に従い、下記の一般式(IV)で表されるヌクレオシド誘導体から一般式(III)で表されるヌクレオシド誘導体を合成し、この化合物から合成することができる。
【0037】
【化5】
【0038】
ここで、Rは、ヒドロキシ基の保護基、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている任意の保護基である。具体的にはジメチルトリチル(DMTr)基、メトキシトリチル基、トリチル基、ジフェニル-tert-ブチルシリル基、ジメチル-tert-ブチルシリル基などを表す。
【0039】
一般式(IV)で表されるヌクレオシド誘導体から一般式(III)で表されるヌクレオシド誘導体の合成(5'位のヒドロキシ基の脱保護と3'位のヒドロキシ基の保護)は、例えば、 Patil, S. V. et al., Syn. Commun., 1994 , 24, 2423やFriedel, M. G.et al.,Chemistry. 2006, 12, 6081.に記載の方法に従って行うことができ、一般式(III)で表されるヌクレオシド誘導体から一般式(II)で表されるヌクレオシド三リン酸誘導体の合成(三リン酸の付加)は、例えば、Ludwig,J.; Eckstein, F. J. Org. Chem., 1989, 54, 631に記載の方法に従って行うことができる。また、一般式(IV)で表されるヌクレオシド誘導体はSeio, K. et al., Bioorg. Med. Chem. 2009, 17, 7275-7280(非特許文献3)に記載の方法に従って合成することができる。
【0040】
〔アプタマー〕
本発明のアプタマーは、上記のヌクレオシド三リン酸誘導体を利用して製造され、一般式(V)で表される。
【0041】
一般式(V)及び(VI)におけるR、R、Xは上記と同じ意味であり、また、B、B及びBは、上記Bと同様の核酸塩基の残基を表す。
【0042】
本発明のアプタマーは、標的物質と特異的に結合する構造、例えば、ヘアピン構造、バルジ構造、シュードノット構造、グアニンカルテット構造などを持つことが好ましい。
【0043】
一般式(V)におけるnは、1以上であれば特に限定されないが、ヌクレオチド数(n+2)がアプタマーとして好適な数になるようにするのが好ましい。具体的には、nは10〜80であることが好ましく、20〜40であることが更に好ましい。
【0044】
〔SELEX法〕
本発明のRNA誘導体の製造方法は、上記のヌクレオシド三リン酸誘導体を用いたSELEX法である。この方法は、(1)逆転写酵素をRNAの集団又はRNA誘導体の集団(このRNA誘導体の集団は、工程(4)で選択されたRNA誘導体の集団であってもよい。)に作用させ、DNAの集団を合成する工程、(2)工程(1)で合成されたDNAの集団を、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅させる工程、(3)上記ヌクレオシド三リン酸誘導体の存在下で、工程(2)で増幅されたDNAの集団にDNA依存RNAポリメラーゼを作用させ、上記ヌクレオシド三リン酸誘導体を残基として含むRNA誘導体の集団を合成する工程、(4)工程(3)で合成したRNA誘導体の集団を標的物質と接触させ、標的物質に親和性を示すRNA誘導体の集団を選択する工程を有する。
【0045】
上記方法は、RNA誘導体の集団を合成する際、基質として上記ヌクレオシド三リン酸誘導体を使用する点を除き、通常のSELEX法と同様に行うことができる。
【0046】
上記の(1)〜(4)の工程は、複数回繰り返して行う。繰り返す回数は特に限定されないが、1〜30回とするのが好ましく、5〜15回とするのが更に好ましい。
【0047】
逆転写酵素としては、通常のSELEX法で使用されているものでよく、市販の逆転写酵素、例えば、SuperScriptIII(Invitrogen)、SuperScriptII(Invitrogen)、ThermoScript(Invitrogen)、ReverTra Ace(東洋紡)などを使用することができる。DNA依存RNAポリメラーゼとしては、通常のSELEX法で使用されているものでよく、T7ファージ由来のRNAポリメラーゼ、T3ファージ由来のRNAポリメラーゼ、SP6 RNA ポリメラーゼなどを使用することができる。逆転写反応、ポリメラーゼ連鎖反応、転写反応(RNA合成反応)は、通常のSELEX法における反応と同様に行うことができる。また、標的物質に親和性を示すRNAの選択も、通常のSELEX法と同様に行うことができる。
【0048】
〔RNA誘導体の製造方法〕
本発明のRNA誘導体の製造方法は、上記ヌクレオシド三リン酸誘導体の存在下で、鋳型とするDNAにDNA依存RNAポリメラーゼを作用させ、上記ヌクレオシド三リン酸誘導体を残基として含むRNA誘導体を製造するものである。この方法は、基質として上記ヌクレオシド三リン酸誘導体を使用する点を除き、通常のDNA依存RNAポリメラーゼを用いたRNAの製造方法と同様に行うことができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例に沿って本発明を更に詳細に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、本発明において使用する試薬や装置、材料は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。また、本明細書において、略号で表示する場合、各表示は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものである。
〔参考例〕 2'-O-カルバモイルウリジンホスホロアミダイトユニットの合成
(1)2'-O-フェノキシカルボニル-3',5'-O-(1,1,3,3,-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)ウリジンの合成
【0050】
【化6】
【0051】
アルゴン雰囲気下、3',5'-O-1,1,3,3,-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)ウリジン (6.1 g, 13 mmol)を脱水トルエン(126mL)に溶解させ、ピリジン(1.2 mL, 13 mmol)加えた。クロロギ酸フェニルをゆっくり滴加し、室温にて3時間撹拌した。反応終了後、精製水(10 mL)加えた後、酢酸エチル (200 mL)にて希釈、飽和食塩水で3回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し濾過したのち、減圧下留去した。つづいてシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-ヘキサン、6:4-4:6, v/v)にて精製し、減圧乾燥させて表題の化合物(6.1g、79%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 0.97-1.12 (28H, m), 4.03 (1H, dd, J = 2.6 Hz, 11.0 Hz), 4.11 (1H, dd, J = 1.3 Hz, 8.1 Hz), 4.26 (1H, d, J=3.4Hz), 4.47 (1H, dd, J=4.4Hz, 4.9Hz), 5.31 (1H, d, J=4.6Hz), 5.71 (1H, d, J = 8.0 Hz), 5.93 (1H, s), 7.17 (2H, m), 7.26 (1H, m), 7.38 (2H, m), 7.73 (1H, d, J = 8.0 Hz), 8.28 (1H, s);
13C NMR (500 MHz, CDCl3) δ13.1, 17.4, 59.6, 68.1, 79.7, 82.2, 88.6, 102.5, 121.1, 126.5, 129.8, 139.5, 149.7, 151.3, 152.4, 162.8.
MS m/z calculated for C28H43N2O9Si2+ [M+H]+: 607.2502, found: 607.2596.
【0052】
(2)2'-O-カルバモイル-3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)ウリジンの合成
【0053】
【化7】
【0054】
2'-O-フェノキシカルボニル-3',5'-O-(1,1,3,3,-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)ウリジン(1.8 g, 3.0 mmol)を無水ピリジン(30 mL)に溶解し、2 M アンモニア-エタノール (8.9 mL, 17.8 mmol)を加え、室温にて16時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチル (100 mL)にて希釈し、飽和食塩水にて3回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に濾過し、溶媒を減圧下留去した。つづいてN-Hシリカゲルを用いてシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール, 100:0-100:2, v/v)にて精製し、減圧乾燥させて表題の化合物 (1.4g, 89%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 0.93-1.11 (28H, m), 4.00 (2H, m), 4.20 (1H, d, J = 3.5 Hz), 4.39 (1H, dd, J = 3.9 Hz, 5.2 Hz), 4.90 (2H, s), 5.27 (1H, d, J = 5.1 Hz), 5.69 (1H, dd, J = 8.3 Hz), 5.83 (1H, s), 7.64 (1H, d, J = 8.3 Hz), 8.76 (1H, s);
13C NMR (CDCl3) δ 13.2, 17.3, 60.0, 68.1, 76.3, 82.4, 89.0, 102.5, 139.7, 149.9, 155.2, 163.1,
MS m/z calculated for C22H40N3O8Si2+ [M+H]+: 530.2348, found: 530.2370.
【0055】
(3)2'-O-カルバモイル-5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)ウリジンの合成
【0056】
【化8】
【0057】
2'-O-カルバモイル-3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)ウリジン(6.0 g、11 mmol)を無水THF(57 mL)に溶解させ、トリエチルアミン(2.7 mL, 20 mmol)および三フッ化水素トリエチルアミン(6.3 mL, 38 mmol)を加えた後、室温にて2時間撹拌した。溶媒を減圧下留去し、トルエンおよびピリジンにて共沸を3回行った。無水ピリジン(17 mL)に溶解させ、ジメトキトリチルクロライド(5.7g, 17 mmol)、トリエチルアミン(2.4 mL, 17 mmol)、ジクロロ酢酸(1.4 mL, 17 mmol)を加え室温下23時間撹拌した。メタノール(5 mL)加え反応を停止した後、酢酸エチル(200 mL)にて希釈し、飽和食塩水にて三回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥させた後に濾過し、溶媒を減圧下留去した。つづいてシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール-トリエチルアミン, 100:0:0.5-100:2:0.5, v/v/v)にて精製し、表題の化合物(5.5g, 84%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 3.44 (2H, m), 3.73 (6H, s), 3.96 (1H, m), 4.16 (1H, d, J = 3.9 Hz), 4.57 (1H, d, J = 4.2 Hz), 5.26 (1H, m), 5.34 (1H, d, J = 8.1 Hz), 5.65 (2H, s), 6.14 (1H, d, J = 5.1 Hz), 6.80 (4H, m) 7.15-7.37 (9H, m), 7.76 (1H, d, J = 8.1 Hz), 9.71 (1H, s);
13C NMR (500 MHz, CDCl3) δ 55.5, 62.8, 70.4, 84.1, 86.8, 87.4, 103.1, 113.6, 127.4, 128.3, 128.4, 130.4, 135.3, 135.5, 140.3, 144.4, 151.2, 156.5, 158.9, 163.6.
MS m/z calculated for C31H31N3NaO9+ [M+Na]+: 612.1925, found: 612.2367.
【0058】
(4)2'-O-カルバモイル-5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)ウリジン 3'-(2-シアノエチル N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト)の合成
【0059】
【化9】
【0060】
2'-O-カルバモイル-5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)ウリジン(1.3g, 2.2 mmol)を無水ピリジン、無水トルエンで共沸した後、無水ジクロロメタン(22 mL)へ溶解した。ジイソプロピルアミン(155 μL, 1.1 mmol)、1H-テトラゾール(77 mg, 1.1 mol)および2-シアノエチル N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(839 μL, 2.6 mmol)を加え室温下2時間撹拌した。反応終了後、水 (1mL)加え、酢酸エチル(50 mL)にて希釈した。有機層を5%炭酸ナトリウム水溶液で5回洗浄した後に、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過、減圧下溶媒を留去した。シリカゲルシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール-トリエチルアミン、100:2:0.5-100:4:0.5, v/v/v)にて精製し、表題の化合物(0.89g, 51%)を得た。
1H NMR (CDCl3) δ 1.06-1.27 (14H, m), 2.42 (1H, m), 2.69 (1H, m), 3.42-3.53 (2H, m), 3.57-3.70 (2H, m), 3.79 (6H, d, J = 2.9 Hz), 4.12 (1H, m), 4.21- 4.31 (1H, m), 4.67 (1H, m), 4.69 (2H, d, J = 3.2 Hz), 5.30-5.43 (2H, m), 6.22 (1H, m), 6.84 (4H, m), 7.24-7.40 (9H, m), 7.70 (1H m), 8.11 (1H, m);
13C NMR (500 MHz, CDCl3) δ 14.5, 20.4, 24.8, 43.5, 55.5, 58.2, 60.6, 63.1, 71.3, 75.5, 84.5, 86.2, 87.5, 103.1, 113.6, 127.5, 128.5, 130.5, 135.2, 140.3, 144.3, 150.7, 155.5, 159.0, 162.8;
31P NMR (CDCl3) δ 151.2, 151.5.
MS m/z calculated for C40H49N5O10P+ [M+H]+: 790.2312, found: 790.3297.
【0061】
〔実施例1〕 2'-O-カルバモイルウリジン三リン酸の合成
(1)2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)ウリジンの合成
【0062】
【化10】
【0063】
2'-O-カルバモイル-5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)ウリジン (2.12 g, 3.60 mmol) を脱水ピリジン(1 ml, ×3), 脱水トルエン (1 ml, ×3), 脱水アセトニトリル (1 ml, ×3) で共沸し、脱水DMF (7.2 ml)に溶解させた。イミダゾール(0.74 g, 10.8 mmol) を加えたのち、tert-ブチルジメチルクロロシラン(0.81 g, 5.40 mmol) を加え、室温で14時間、アルゴン存在下で反応させた。反応終了後、反応系に、酢酸エチル (30 ml) を加え、水、飽和炭酸水素ナトリウム水、水の順で、抽出操作を3回行った。有機層を回収し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ溶媒を減圧下留去した。4% トリフルオロ酢酸-ジクロロメタン溶液 (36 ml) を加え、室温で30分反応させたのち、氷冷下、反応溶液をピリジン:メタノール (1 : 1, v/v) 混合溶媒 (100 ml) に滴加し1時間撹拌した。そののち、溶媒を減圧下で留去し、得られた残渣をジクロロメタン (1 ml) で溶解し、ヘキサン (10 ml) を加えた。そうして析出した沈殿物をろ過により精製し、表題の化合物 (0.91 g, 63%) を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 11.39 (s, 1H), 7.89 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.81 (s, 1H), 6.62 (s, 1H), 5.95 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 5.69 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 5.26 (t, J = 4.9 Hz, 1H), 5.04 (dd, J = 6.3, 5.1 Hz, 1H), 4.38 (dd, J = 5.1, 3.3 Hz, 1H), 3.87 (q, J = 3.3 Hz, 1H), 3.65 (dt, J = 12.0, 4.1 Hz, 1H), 3.54 (dt, J = 12.0, 4.1 Hz, 1H), 0.88 (s, 9H), 0.08 (s, 6H).
MS m/z calculated for C16H27N3NaO7Si+ [M+H]+: 424.1510, found: 424.1511.
【0064】
(2)2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)ウリジン 5'-トリホスフェートの合成
【0065】
【化11】
【0066】
2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)ウリジン(181mg, 0.45 mmol)を脱水ピリジン (1ml) により5回共沸した。アルゴン存在下で脱水ピリジン : 脱水1,4-ジオキサン(2 : 3, v/v, 1 ml)に溶かし、1, 4-ジオキサン(600 μl) に溶かした2-クロロ-4H-1,3,2-ベンゾジオキサホスホリン-4-オン (100 mg, 0.50 mmol) を加えた。10分間反応させたのち、トリブチルアミン(400 μl) とDMF (1.3 ml) に溶かしたピロホスフェートトリブチルアンモニウム塩 (372 mg, 0.50 mmol) を加え、10分間反応させた。つづいて 1% ヨウ素 ピリジン/水 溶液 (98 : 2, v/v, 8ml)を加え、15分間反応させた。水 (10 ml) 加え、5% 亜硫酸水素ナトリウム水溶液 (300μl) を加え、30分間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧下で留去し、残渣を逆相カラムクロマトグラフィ(0.1 M酢酸トリエチルアミン緩衝液 : アセトニトリル, 70 : 30 → 50 : 50) を行い精製したのち、溶媒を凍結乾燥し、留去した。そうして得た残渣をメタノール (1 ml) で溶かし、そこに0.6 M 過塩素酸ナトリウム アセトン溶液 (10 ml) を加えた。この反応系を遠心分離 (7000 rpm, 4分) し、上澄みをデキャンタで取り除いた。さらに、アセトン (10 ml)を加え、遠心分離 (7000 rpm, 4分) をし、上澄みを取り除く作業を3回行った。こうして得た残渣を凍結乾燥することにより、表題の化合物(182 mg, 61%) を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 11.36 (br s, 1H), 7.86 (br s, 1H), 6.78 (br s, 1H), 6.70-6.41 (br s, 1H), 5.94 (br s, 1H), 5.67 (br s, 1H), 5.23 (br s, 1H), 5.02 (br s, 1H), 4.37 (br s, 1H), 3.86 (br s, 1H), 3.58-3.70 (m, 1H), 3.48-3.60 (m, 1H), 0.86 (s, 9H), 0.25-0.08 (br s, 6H).
MS m/z calculated for C16H29N3O16P3Si- [M-H]-: 640.0535, found: 640.527.
【0067】
(3)2'-O-カルバモイルウリジン 5'-トリホスフェートの合成
【0068】
【化12】
【0069】
2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)ウリジン 5'-トリホスフェート (182 mg, 0.28 mmol) に8%酢酸水溶液 (5 ml)を加え、37 ℃で、20時間反応させた。反応終了後、反応溶媒を凍結乾燥により、留去した。そうして得た残渣をメタノール (1 ml) で溶かし、そこに0.6 M過塩素酸ナトリウム アセトン溶液 (10 ml) を加えた。この反応系を遠心分離 (7000 rpm, 4分) し、上澄みをデキャンタで取り除いた。さらに、アセトン (10 ml)を加え、遠心分離 (7000 rpm, 4分) をし、上澄みを取り除く作業を3回行った。そうして得た残渣を凍結乾燥することにより、表題の化合物 (139 mg, 92%) を得た。
1H NMR (500 MHz, D2O) δ 7.94 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.09 (d, J = 4.1 Hz, 1H), 5.99 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.23 (t, J = 4.9 Hz, 1H), 4.60 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 4.24-4.39 (m, 3H).
31P NMR (D2O) δ -8.26, -10.00, -21.00.
MS m/z calculated for C10H13N3Na2O16P3- [M-Na]-: 569.9310, found: 570.1221.
【0070】
〔実施例2〕 2'-O-カルバモイルアデノシン三リン酸の合成
(1) 2'-O-カルバモイル-3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)-6-N-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシンの合成
【0071】
【化13】
【0072】
3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)-6-N-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシン (6.19 g, 7.60 mmol) を脱水ピリジン(2 ml, ×3)で共沸し、脱水ピリジン(76 ml)に溶解させた。クロロギ酸フェニル (1.15 ml, 9.12 mmol) を加え、室温で4時間、アルゴン存在下で反応させた。反応終了後、反応系に、酢酸エチル (20 ml) を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で、抽出操作を3回行った。有機層を回収し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ溶媒を減圧下で留去し、残渣を得た。そうして得られた残渣を、精製作業を行わずに次の反応に使用した。得られた残渣に2 M NH3/ EtOH(25 ml)を加え、室温で1時間反応させた。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で、抽出操作を3回行った。有機層を回収し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ溶媒を減圧下で留去し、残渣を得た。そうして得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200、ジクロロメタン:メタノール=100:1)によって精製し、表題の化合物(4.74 g, 72%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.00 (s, 1H), 7.84 (s, 1H), 7.38-7.13 (m, 9H), 6.85 (s, 1H), 6.79 (d, J = 8.6 Hz, 4H), 5.96 (s, 1H), 5.66 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 5.20 (dd, J = 8.6, 5.5 Hz, 1H), 4.74 (s, 2H), 4.13 (dd, J = 12.8, 3.1 Hz, 1H), 4.08-3.95 (m, 2H), 3.78 (s, 6 H), 1.25-0.81 (m, 28H).
【0073】
(2)2'-O-カルバモイル-6-N-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシンの合成
【0074】
【化14】
【0075】
2'-O-カルバモイル-3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)-6-N-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシン(4.27 g, 5.00 mmol) をテトラヒドロフラン(50 ml)に溶解させた。トリエチルアミン (1.25 ml, 9.00 mmol) を加えたのち、トリエチルアミン3フッ化水素(2.85 ml, 17.5 ml)を加え、室温で3時間、反応させた。反応終了後、反応系に、2-(トリメチルシリル)エタノール (5.98 ml, 40 mmol) を加え、室温で8時間、反応させた。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で、抽出操作を3回行った。有機層を回収し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ溶媒を減圧下で留去し、残渣を得た。そうして得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200, ジクロロメタン:メタノール=100:5)によって精製し、表題の化合物(3.13 g, quant)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.00 (s, 1H), 7.78 (s, 1H), 7.37-7.13 (m, 9H), 7.06 (s, 1H), 6.86 -6.74 (m, 4H), 5.93 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 5.60 (dd, J = 7.2, 4.9 Hz, 1H), 5.00 (s, 2H), 4.76 (d, J = 4.9, 1H), 4.24 (s, 1H), 3.90 (d, J = 12.3 Hz, 1H), 3.77 (s, 6H), 3.71 (d, J = 12.3 Hz, 1H).
【0076】
(3)2'-O-カルバモイル-5'-O-6-N-ビス-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシンの合成
【0077】
【化15】
【0078】
2'-O-カルバモイル-6-N-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシン(3.00 g, 4.90 mmol) を脱水ピリジン(2 ml, ×3)で共沸し、脱水ピリジン (49 ml)に溶解させた。DMTrCl(2.00 g, 5.90 mmol) を加え、室温で6時間、アルゴン存在下で反応させた。反応終了後、反応系に、メタノール(20 ml) を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で、抽出操作を3回行った。有機層を回収し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ溶媒を減圧下で留去し、残渣を得た。そうして得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200, ジクロロメタン:メタノール=100:2)によって精製し、表題の化合物(4.17 g, 93%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.01 (s, 1H), 7.94 (s, 1H), 7.50-7.13 (m, 18H), 6.90 (s, 1H), 6.87-6.72 (m, 8H), 6.21 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 5.66 (t, J = 4.9 Hz, 1H), 4.77 (q, J = 4.9 Hz, 1H), 4.19 (q, J = 4.1 Hz, 1H), 3.77 (s, 6H), 3.76 (s, 6H). 3.47 (dd, J = 10.6, 3.3 Hz, 1H), 3.39 (dd, J = 10.6, 4.2 Hz, 1H), 2.95 (d, J = 4.9 Hz, 1H).
【0079】
(4)2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-5'-O-6-N-ビス-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシンの合成
【0080】
【化16】
【0081】
2'-O-カルバモイル-5'-O-6-N-ビス-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシン(4.39 g, 4.80 mmol) を脱水ピリジン(2 ml, ×3), 脱水トルエン (2 ml, ×3), 脱水アセトニトリル (2 ml, ×3) で共沸し、脱水DMF (12 ml)に溶解させた。imidazole (0.980 g, 14.4 mmol) を加えたのち、tert-ブチルジメチルクロロシラン(0.868 g, 5.76 mmol) を加え、室温で16時間、アルゴン存在下で反応させた。反応終了後、反応系に、酢酸エチル (30 ml) を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で、抽出操作を3回行った。有機層を回収し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ溶媒を減圧下で留去し、残渣を得た。そうして得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200, ジクロロメタン:メタノール=100:1)によって精製し、表題の化合物(4.48 g, 90%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.04 (s, 1H), 7.94 (s, 1H), 7.51-7.10 (m, 18H), 6.85 (s, 1H), 6.82-6.74 (m, 8H), 6.18 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 5.70 (t, J = 5.4 Hz, 1H), 4.92 - 4.70 (m, 3H), 4.15 (q, J = 4.0 Hz, 1H), 3.76 (s, 12H), 3.46 (dd, J = 10.6, 3.5 Hz, 1H), 3.26 (dd, J = 10.6, 4.2 Hz, 1H), 0.83 (s, 9H), 0.04 (s, 3H), -0.03 (s, 3H).
【0082】
(5)2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)アデノシンの合成
【0083】
【化17】
【0084】
2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-5'-O-6-N-ビス-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシン (0.515 g, 0.500 mmol) を3% トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン (6ml)を加え、室温で20分間反応させた。その後、反応系にピリジン:メタノール=1:1(10 ml) を加え、室温で20分間反応させた。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で、抽出操作を3回行った。有機層を回収し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ溶媒を減圧下で留去し、残渣を得た。そうして得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200, ジクロロメタン:メタノール=100:8)によって精製し、表題の化合物 (0.195 mg, 92%)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.39 (s, 1H), 8.14 (s, 1H), 7.37 (s, 2H), 6.80 (s, 1H), 6.60 (s, 1H), 6.10 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 5.58 (dd, J = 6.7, 4.9 Hz, 1H), 5.42 (s, 1H), 4.63 (dd, J = 4.9, 2.7 Hz, 1H), 3.98 (d, J = 3.4 Hz, 1H), 3.70 (d, J = 11.9 Hz, 1H), 3.55 (d, J = 11.9 Hz, 1H), 0.91 (s, 9H), 0.11 (s, 3H), 0.10 (s, 3H).
【0085】
(6)2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)アデノシン 5'-トリホスフェートの合成
【0086】
【化18】
【0087】
2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)アデノシン(127 mg, 0.300 mmol)を脱水ピリジン (1ml) により5回共沸した。アルゴン存在下で脱水ピリジン : 脱水1,4-ジオキサン(1 : 3, v/v, 1 ml)に溶かし、1, 4-ジオキサン(360μl) に溶かした2-クロロ-4H-1,3,2-ベンゾジオキサホスホリン-4-オン (67 mg, 0.330 mmol) を加えた。10分間反応させたのち、トリブチルアミン(300 μl) とDMF (0.900 ml) に溶かしたトリブチルアンモニウムピロホスフェート(250 mg, 0.330 mmol) を加え、10分間反応させた。 1% ヨウ素 ピリジン/水 溶液 (98 : 2, v/v, 6ml)を加え、15分間反応させた。水 (10 ml) 加え、5% 亜硫酸水素ナトリウム水溶液 (450μl) を加え、30分間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧下で留去し、残渣を逆相カラムクロマトグラフィ(0.1 M酢酸トリエチルアミン緩衝液 : アセトニトリル, 100 : 0 → 70 : 30) を行い精製したのち、溶媒を凍結乾燥し、留去し表題の化合物を得た。
1H NMR (500 MHz, D2O) δ 8.63 (s, 1H), 8.42 (s, 1H), 6.55-6.40 (m, 1H), 5.61 (s, 1H), 4.55-4.45 (m, 1H), 4.45-4.30 (m, 1H), 1.09 (s, 9H), 0.36 (s, 3H), 0.34 (s, 3H).
【0088】
〔実施例3〕 2'-O-カルバモイルウリジン-5'-三リン酸を用いた転写実験
各テンプレート-DNA (2 μl, 5 μM), 10×T7 RNA Polymerase Buffer (2 μl, 400 mM Tris-HCl (pH 8.0), 80 mM MgCl2, 20 mM スペルミジン), ATP (2 μL, 4 mM), GTP (2 μl, 4 mM)、UcmTP (2 μL, 4 mM), CTP (2 μl, 3.2 mM), FAM-CTP (2 μl, 0.8 mM), 50 mM DTT (2 μl), T7 RNA Polymerase または T7 RNA Polymerase TM(100 Unit)の順にチューブに入れ、37℃で1 時間転写反応を行った。75 ℃で5分間チューブを加熱し、酵素を失活させたのち、氷浴で1分間冷やし、反応停止剤 (20 μl, 95% formamide, 0.05% BPB)を加えた。95 ℃で3分加熱したのち、7 M 尿素 20%ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動 (チャージ量10 μl, 160 min, 300 V, 30 mA)を行った。フルオロイメージアナライザー (FUJIFILM FLA-7000)を用いて、FAMの蛍光を検出した。Lane 1 のマーカーは標品のRNA (20 μl, 2 μM, 5'-FAM, 30mer)に、反応停止剤 (20 μl, 95% formamide, 0.05% BPB)を加えたものを用いた。
【0089】
電気移動の結果を図1に示す。また、実験に用いた鋳型DNA及び生成するRNAの配列も図1に示す。この図に示すように、2'-O-カルバモイルウリジン-5'-三リン酸(UcmTP)を用いた場合も、ウリジン-5'-三リン酸(UTP)を用いた場合と同様に、全長転写産物が検出できた。このことから、UcmTPは、T7 RNA Polymeraseの基質として認識されることが確認された。
【0090】
また、全長転写産物を示すバンドの蛍光強度を数値化したところ、UcmTPはUTPの74%の値を示した(図2)。
【0091】
〔実施例4〕 オリゴヌクレオチドを用いた一塩基伸張逆転写実験
テンプレート RNA (2 μl, 1 μM)、cDNA primer (2 μl, 1 μM)、5×RT Buffer (2 μl)、dNTP (ATP, GTP, CTP) (それぞれ1 μl, 10 mM)、0.1M DTT (0.5 μl)、 SuperScriptIII (0.5 μl, 300 Unit)を42 ℃で30 分間反応させた。そののち、チューブを75 ℃で10分加熱した。氷冷したのち、RNase (0.5U)を加え、37℃で15分間反応させた。そののち、75 ℃で5分間加熱し、氷冷した。反応停止剤 (10 μl, 95% formamide, 0.05% BPB) を加え、95 ℃で3分間加熱し、氷冷し、7 M Urea 20%ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動 (チャージ量5 μl, 180 min, 300 V, 30 mA)を行った。フルオロイメージアナライザー (FUJIFILM FLA-7000)を用いて、FAMの蛍光を検出した。
【0092】
電気移動の結果を図3に示す。この図に示すように、鋳型とするRNAが2'-O-カルバモイルウリジンを含む場合(X=Ucm)も、ウリジンを含む場合(X=U)と同様に、一塩基鎖伸長バンドは、dGTPを加えたときは検出されず、dATPを加えたときにのみ検出された。このことから、dGTPは取り込まれず、dATPのみが特異的にcDNAに取り込まれることが確認された。
【0093】
〔実施例5〕 オリゴヌクレオチドを用いた完全長逆転写実験
テンプレート RNA (2 μl, 1 μM)、cDNA primer (2 μl, 1 μM)、5×RT Buffer (2 μl)、dNTPs (1 μl, 10 mM)、滅菌水 (2 μl)、0.1M DTT (0.5 μl)、SuperScriptIII (0.5 μl, 300 Unit)を45 ℃でそれぞれ上記の時間反応させた。そののち、チューブを75 ℃で10分加熱した。氷冷したのち、RNase (0.5U)を加え、37℃で15分間反応させた。そののち、75 ℃で5分間加熱し、氷冷した。反応停止剤 (20 μl, 95% formamide, 0.05% BPB)を加え、95 ℃で3分間加熱し、氷冷し、7 M Urea 20%ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動 (チャージ量5 μl, 180 min, 300 V, 30 mA)を行った。フルオロイメージアナライザー (FUJIFILM FLA-7000)を用いて、FAMの蛍光を検出した。
【0094】
電気移動の結果を図4に示す。この図に示すように、鋳型とするRNAが2'-O-カルバモイルウリジンを含む場合(X=Ucm)も、ウリジンを含む場合(X=U)と同様に、完全鎖伸長バンドが検出された。このことから、Ucmを含む鋳型鎖は逆転写酵素により精度よく逆転写されることが確認された。
【0095】
〔実施例6〕 酵素耐性試験
蛇毒ホスホジエステラーゼ (SVPDE) (40 μU) を、オリゴヌクレオチド (8 nmol) を溶かした50 mMトリス-塩酸緩衝液 (72 mM塩化ナトリウム、14 mM塩化マグネシウム、pH 7.0) に対し加えた。加水分解反応は37 ℃で行った。それぞれの時間において反応系から20 μL混合液を取り出し、100 ℃で3分間加熱して反応を停止させた後、CENTRICUTを用いて限外ろ過した。ろ液を逆相HPLCにより解析し、得られたピークの面積比から原料であるオリゴヌクレオチドの存在比を算出した。
【0096】
この結果を図5に示す。この図に示すように、2'-O-カルバモイル修飾オリゴヌクレオチド(5'-UcmUcm-T)は、2'-O-メチル修飾オリゴヌクレオチド(5'-UOMeUOMe-T)と同等の蛇毒ホスホジエステラーゼ耐性を有していた。
図1
図2
図3
図4
図5