【実施例】
【0049】
以下、実施例に沿って本発明を更に詳細に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、本発明において使用する試薬や装置、材料は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。また、本明細書において、略号で表示する場合、各表示は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものである。
〔参考例〕 2'-O-カルバモイルウリジンホスホロアミダイトユニットの合成
(1)2'-O-フェノキシカルボニル-3',5'-O-(1,1,3,3,-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)ウリジンの合成
【0050】
【化6】
【0051】
アルゴン雰囲気下、3',5'-O-1,1,3,3,-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)ウリジン (6.1 g, 13 mmol)を脱水トルエン(126mL)に溶解させ、ピリジン(1.2 mL, 13 mmol)加えた。クロロギ酸フェニルをゆっくり滴加し、室温にて3時間撹拌した。反応終了後、精製水(10 mL)加えた後、酢酸エチル (200 mL)にて希釈、飽和食塩水で3回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し濾過したのち、減圧下留去した。つづいてシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-ヘキサン、6:4-4:6, v/v)にて精製し、減圧乾燥させて表題の化合物(6.1g、79%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 0.97-1.12 (28H, m), 4.03 (1H, dd, J = 2.6 Hz, 11.0 Hz), 4.11 (1H, dd, J = 1.3 Hz, 8.1 Hz), 4.26 (1H, d, J=3.4Hz), 4.47 (1H, dd, J=4.4Hz, 4.9Hz), 5.31 (1H, d, J=4.6Hz), 5.71 (1H, d, J = 8.0 Hz), 5.93 (1H, s), 7.17 (2H, m), 7.26 (1H, m), 7.38 (2H, m), 7.73 (1H, d, J = 8.0 Hz), 8.28 (1H, s);
13C NMR (500 MHz, CDCl
3) δ13.1, 17.4, 59.6, 68.1, 79.7, 82.2, 88.6, 102.5, 121.1, 126.5, 129.8, 139.5, 149.7, 151.3, 152.4, 162.8.
MS m/z calculated for C
28H
43N
2O
9Si
2+ [M+H]
+: 607.2502, found: 607.2596.
【0052】
(2)2'-O-カルバモイル-3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)ウリジンの合成
【0053】
【化7】
【0054】
2'-O-フェノキシカルボニル-3',5'-O-(1,1,3,3,-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)ウリジン(1.8 g, 3.0 mmol)を無水ピリジン(30 mL)に溶解し、2 M アンモニア-エタノール (8.9 mL, 17.8 mmol)を加え、室温にて16時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチル (100 mL)にて希釈し、飽和食塩水にて3回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に濾過し、溶媒を減圧下留去した。つづいてN-Hシリカゲルを用いてシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール, 100:0-100:2, v/v)にて精製し、減圧乾燥させて表題の化合物 (1.4g, 89%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 0.93-1.11 (28H, m), 4.00 (2H, m), 4.20 (1H, d, J = 3.5 Hz), 4.39 (1H, dd, J = 3.9 Hz, 5.2 Hz), 4.90 (2H, s), 5.27 (1H, d, J = 5.1 Hz), 5.69 (1H, dd, J = 8.3 Hz), 5.83 (1H, s), 7.64 (1H, d, J = 8.3 Hz), 8.76 (1H, s);
13C NMR (CDCl
3) δ 13.2, 17.3, 60.0, 68.1, 76.3, 82.4, 89.0, 102.5, 139.7, 149.9, 155.2, 163.1,
MS m/z calculated for C
22H
40N
3O
8Si
2+ [M+H]
+: 530.2348, found: 530.2370.
【0055】
(3)2'-O-カルバモイル-5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)ウリジンの合成
【0056】
【化8】
【0057】
2'-O-カルバモイル-3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)ウリジン(6.0 g、11 mmol)を無水THF(57 mL)に溶解させ、トリエチルアミン(2.7 mL, 20 mmol)および三フッ化水素トリエチルアミン(6.3 mL, 38 mmol)を加えた後、室温にて2時間撹拌した。溶媒を減圧下留去し、トルエンおよびピリジンにて共沸を3回行った。無水ピリジン(17 mL)に溶解させ、ジメトキトリチルクロライド(5.7g, 17 mmol)、トリエチルアミン(2.4 mL, 17 mmol)、ジクロロ酢酸(1.4 mL, 17 mmol)を加え室温下23時間撹拌した。メタノール(5 mL)加え反応を停止した後、酢酸エチル(200 mL)にて希釈し、飽和食塩水にて三回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥させた後に濾過し、溶媒を減圧下留去した。つづいてシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール-トリエチルアミン, 100:0:0.5-100:2:0.5, v/v/v)にて精製し、表題の化合物(5.5g, 84%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 3.44 (2H, m), 3.73 (6H, s), 3.96 (1H, m), 4.16 (1H, d, J = 3.9 Hz), 4.57 (1H, d, J = 4.2 Hz), 5.26 (1H, m), 5.34 (1H, d, J = 8.1 Hz), 5.65 (2H, s), 6.14 (1H, d, J = 5.1 Hz), 6.80 (4H, m) 7.15-7.37 (9H, m), 7.76 (1H, d, J = 8.1 Hz), 9.71 (1H, s);
13C NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 55.5, 62.8, 70.4, 84.1, 86.8, 87.4, 103.1, 113.6, 127.4, 128.3, 128.4, 130.4, 135.3, 135.5, 140.3, 144.4, 151.2, 156.5, 158.9, 163.6.
MS m/z calculated for C
31H
31N
3NaO
9+ [M+Na]
+: 612.1925, found: 612.2367.
【0058】
(4)2'-O-カルバモイル-5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)ウリジン 3'-(2-シアノエチル N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト)の合成
【0059】
【化9】
【0060】
2'-O-カルバモイル-5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)ウリジン(1.3g, 2.2 mmol)を無水ピリジン、無水トルエンで共沸した後、無水ジクロロメタン(22 mL)へ溶解した。ジイソプロピルアミン(155 μL, 1.1 mmol)、1H-テトラゾール(77 mg, 1.1 mol)および2-シアノエチル N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(839 μL, 2.6 mmol)を加え室温下2時間撹拌した。反応終了後、水 (1mL)加え、酢酸エチル(50 mL)にて希釈した。有機層を5%炭酸ナトリウム水溶液で5回洗浄した後に、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過、減圧下溶媒を留去した。シリカゲルシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール-トリエチルアミン、100:2:0.5-100:4:0.5, v/v/v)にて精製し、表題の化合物(0.89g, 51%)を得た。
1H NMR (CDCl
3) δ 1.06-1.27 (14H, m), 2.42 (1H, m), 2.69 (1H, m), 3.42-3.53 (2H, m), 3.57-3.70 (2H, m), 3.79 (6H, d, J = 2.9 Hz), 4.12 (1H, m), 4.21- 4.31 (1H, m), 4.67 (1H, m), 4.69 (2H, d, J = 3.2 Hz), 5.30-5.43 (2H, m), 6.22 (1H, m), 6.84 (4H, m), 7.24-7.40 (9H, m), 7.70 (1H m), 8.11 (1H, m);
13C NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 14.5, 20.4, 24.8, 43.5, 55.5, 58.2, 60.6, 63.1, 71.3, 75.5, 84.5, 86.2, 87.5, 103.1, 113.6, 127.5, 128.5, 130.5, 135.2, 140.3, 144.3, 150.7, 155.5, 159.0, 162.8;
31P NMR (CDCl
3) δ 151.2, 151.5.
MS m/z calculated for C
40H
49N
5O
10P
+ [M+H]
+: 790.2312, found: 790.3297.
【0061】
〔実施例1〕 2'-O-カルバモイルウリジン三リン酸の合成
(1)2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)ウリジンの合成
【0062】
【化10】
【0063】
2'-O-カルバモイル-5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)ウリジン (2.12 g, 3.60 mmol) を脱水ピリジン(1 ml, ×3), 脱水トルエン (1 ml, ×3), 脱水アセトニトリル (1 ml, ×3) で共沸し、脱水DMF (7.2 ml)に溶解させた。イミダゾール(0.74 g, 10.8 mmol) を加えたのち、tert-ブチルジメチルクロロシラン(0.81 g, 5.40 mmol) を加え、室温で14時間、アルゴン存在下で反応させた。反応終了後、反応系に、酢酸エチル (30 ml) を加え、水、飽和炭酸水素ナトリウム水、水の順で、抽出操作を3回行った。有機層を回収し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ溶媒を減圧下留去した。4% トリフルオロ酢酸-ジクロロメタン溶液 (36 ml) を加え、室温で30分反応させたのち、氷冷下、反応溶液をピリジン:メタノール (1 : 1, v/v) 混合溶媒 (100 ml) に滴加し1時間撹拌した。そののち、溶媒を減圧下で留去し、得られた残渣をジクロロメタン (1 ml) で溶解し、ヘキサン (10 ml) を加えた。そうして析出した沈殿物をろ過により精製し、表題の化合物 (0.91 g, 63%) を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 11.39 (s, 1H), 7.89 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.81 (s, 1H), 6.62 (s, 1H), 5.95 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 5.69 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 5.26 (t, J = 4.9 Hz, 1H), 5.04 (dd, J = 6.3, 5.1 Hz, 1H), 4.38 (dd, J = 5.1, 3.3 Hz, 1H), 3.87 (q, J = 3.3 Hz, 1H), 3.65 (dt, J = 12.0, 4.1 Hz, 1H), 3.54 (dt, J = 12.0, 4.1 Hz, 1H), 0.88 (s, 9H), 0.08 (s, 6H).
MS m/z calculated for C
16H
27N
3NaO
7Si
+ [M+H]
+: 424.1510, found: 424.1511.
【0064】
(2)2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)ウリジン 5'-トリホスフェートの合成
【0065】
【化11】
【0066】
2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)ウリジン(181mg, 0.45 mmol)を脱水ピリジン (1ml) により5回共沸した。アルゴン存在下で脱水ピリジン : 脱水1,4-ジオキサン(2 : 3, v/v, 1 ml)に溶かし、1, 4-ジオキサン(600 μl) に溶かした2-クロロ-4H-1,3,2-ベンゾジオキサホスホリン-4-オン (100 mg, 0.50 mmol) を加えた。10分間反応させたのち、トリブチルアミン(400 μl) とDMF (1.3 ml) に溶かしたピロホスフェートトリブチルアンモニウム塩 (372 mg, 0.50 mmol) を加え、10分間反応させた。つづいて 1% ヨウ素 ピリジン/水 溶液 (98 : 2, v/v, 8ml)を加え、15分間反応させた。水 (10 ml) 加え、5% 亜硫酸水素ナトリウム水溶液 (300μl) を加え、30分間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧下で留去し、残渣を逆相カラムクロマトグラフィ(0.1 M酢酸トリエチルアミン緩衝液 : アセトニトリル, 70 : 30 → 50 : 50) を行い精製したのち、溶媒を凍結乾燥し、留去した。そうして得た残渣をメタノール (1 ml) で溶かし、そこに0.6 M 過塩素酸ナトリウム アセトン溶液 (10 ml) を加えた。この反応系を遠心分離 (7000 rpm, 4分) し、上澄みをデキャンタで取り除いた。さらに、アセトン (10 ml)を加え、遠心分離 (7000 rpm, 4分) をし、上澄みを取り除く作業を3回行った。こうして得た残渣を凍結乾燥することにより、表題の化合物(182 mg, 61%) を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 11.36 (br s, 1H), 7.86 (br s, 1H), 6.78 (br s, 1H), 6.70-6.41 (br s, 1H), 5.94 (br s, 1H), 5.67 (br s, 1H), 5.23 (br s, 1H), 5.02 (br s, 1H), 4.37 (br s, 1H), 3.86 (br s, 1H), 3.58-3.70 (m, 1H), 3.48-3.60 (m, 1H), 0.86 (s, 9H), 0.25-0.08 (br s, 6H).
MS m/z calculated for C
16H
29N
3O
16P
3Si
- [M-H]
-: 640.0535, found: 640.527.
【0067】
(3)2'-O-カルバモイルウリジン 5'-トリホスフェートの合成
【0068】
【化12】
【0069】
2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)ウリジン 5'-トリホスフェート (182 mg, 0.28 mmol) に8%酢酸水溶液 (5 ml)を加え、37 ℃で、20時間反応させた。反応終了後、反応溶媒を凍結乾燥により、留去した。そうして得た残渣をメタノール (1 ml) で溶かし、そこに0.6 M過塩素酸ナトリウム アセトン溶液 (10 ml) を加えた。この反応系を遠心分離 (7000 rpm, 4分) し、上澄みをデキャンタで取り除いた。さらに、アセトン (10 ml)を加え、遠心分離 (7000 rpm, 4分) をし、上澄みを取り除く作業を3回行った。そうして得た残渣を凍結乾燥することにより、表題の化合物 (139 mg, 92%) を得た。
1H NMR (500 MHz, D
2O) δ 7.94 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.09 (d, J = 4.1 Hz, 1H), 5.99 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.23 (t, J = 4.9 Hz, 1H), 4.60 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 4.24-4.39 (m, 3H).
31P NMR (D
2O) δ -8.26, -10.00, -21.00.
MS m/z calculated for C
10H
13N
3Na
2O
16P
3- [M-Na]
-: 569.9310, found: 570.1221.
【0070】
〔実施例2〕 2'-O-カルバモイルアデノシン三リン酸の合成
(1) 2'-O-カルバモイル-3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)-6-N-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシンの合成
【0071】
【化13】
【0072】
3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)-6-N-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシン (6.19 g, 7.60 mmol) を脱水ピリジン(2 ml, ×3)で共沸し、脱水ピリジン(76 ml)に溶解させた。クロロギ酸フェニル (1.15 ml, 9.12 mmol) を加え、室温で4時間、アルゴン存在下で反応させた。反応終了後、反応系に、酢酸エチル (20 ml) を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で、抽出操作を3回行った。有機層を回収し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ溶媒を減圧下で留去し、残渣を得た。そうして得られた残渣を、精製作業を行わずに次の反応に使用した。得られた残渣に2 M NH
3/ EtOH(25 ml)を加え、室温で1時間反応させた。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で、抽出操作を3回行った。有機層を回収し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ溶媒を減圧下で留去し、残渣を得た。そうして得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200、ジクロロメタン:メタノール=100:1)によって精製し、表題の化合物(4.74 g, 72%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.00 (s, 1H), 7.84 (s, 1H), 7.38-7.13 (m, 9H), 6.85 (s, 1H), 6.79 (d, J = 8.6 Hz, 4H), 5.96 (s, 1H), 5.66 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 5.20 (dd, J = 8.6, 5.5 Hz, 1H), 4.74 (s, 2H), 4.13 (dd, J = 12.8, 3.1 Hz, 1H), 4.08-3.95 (m, 2H), 3.78 (s, 6 H), 1.25-0.81 (m, 28H).
【0073】
(2)2'-O-カルバモイル-6-N-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシンの合成
【0074】
【化14】
【0075】
2'-O-カルバモイル-3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピイルジシロキサン-1,3,-ジイル)-6-N-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシン(4.27 g, 5.00 mmol) をテトラヒドロフラン(50 ml)に溶解させた。トリエチルアミン (1.25 ml, 9.00 mmol) を加えたのち、トリエチルアミン3フッ化水素(2.85 ml, 17.5 ml)を加え、室温で3時間、反応させた。反応終了後、反応系に、2-(トリメチルシリル)エタノール (5.98 ml, 40 mmol) を加え、室温で8時間、反応させた。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で、抽出操作を3回行った。有機層を回収し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ溶媒を減圧下で留去し、残渣を得た。そうして得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200, ジクロロメタン:メタノール=100:5)によって精製し、表題の化合物(3.13 g, quant)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.00 (s, 1H), 7.78 (s, 1H), 7.37-7.13 (m, 9H), 7.06 (s, 1H), 6.86 -6.74 (m, 4H), 5.93 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 5.60 (dd, J = 7.2, 4.9 Hz, 1H), 5.00 (s, 2H), 4.76 (d, J = 4.9, 1H), 4.24 (s, 1H), 3.90 (d, J = 12.3 Hz, 1H), 3.77 (s, 6H), 3.71 (d, J = 12.3 Hz, 1H).
【0076】
(3)2'-O-カルバモイル-5'-O-6-N-ビス-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシンの合成
【0077】
【化15】
【0078】
2'-O-カルバモイル-6-N-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシン(3.00 g, 4.90 mmol) を脱水ピリジン(2 ml, ×3)で共沸し、脱水ピリジン (49 ml)に溶解させた。DMTrCl(2.00 g, 5.90 mmol) を加え、室温で6時間、アルゴン存在下で反応させた。反応終了後、反応系に、メタノール(20 ml) を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で、抽出操作を3回行った。有機層を回収し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ溶媒を減圧下で留去し、残渣を得た。そうして得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200, ジクロロメタン:メタノール=100:2)によって精製し、表題の化合物(4.17 g, 93%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.01 (s, 1H), 7.94 (s, 1H), 7.50-7.13 (m, 18H), 6.90 (s, 1H), 6.87-6.72 (m, 8H), 6.21 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 5.66 (t, J = 4.9 Hz, 1H), 4.77 (q, J = 4.9 Hz, 1H), 4.19 (q, J = 4.1 Hz, 1H), 3.77 (s, 6H), 3.76 (s, 6H). 3.47 (dd, J = 10.6, 3.3 Hz, 1H), 3.39 (dd, J = 10.6, 4.2 Hz, 1H), 2.95 (d, J = 4.9 Hz, 1H).
【0079】
(4)2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-5'-O-6-N-ビス-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシンの合成
【0080】
【化16】
【0081】
2'-O-カルバモイル-5'-O-6-N-ビス-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシン(4.39 g, 4.80 mmol) を脱水ピリジン(2 ml, ×3), 脱水トルエン (2 ml, ×3), 脱水アセトニトリル (2 ml, ×3) で共沸し、脱水DMF (12 ml)に溶解させた。imidazole (0.980 g, 14.4 mmol) を加えたのち、tert-ブチルジメチルクロロシラン(0.868 g, 5.76 mmol) を加え、室温で16時間、アルゴン存在下で反応させた。反応終了後、反応系に、酢酸エチル (30 ml) を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で、抽出操作を3回行った。有機層を回収し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ溶媒を減圧下で留去し、残渣を得た。そうして得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200, ジクロロメタン:メタノール=100:1)によって精製し、表題の化合物(4.48 g, 90%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.04 (s, 1H), 7.94 (s, 1H), 7.51-7.10 (m, 18H), 6.85 (s, 1H), 6.82-6.74 (m, 8H), 6.18 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 5.70 (t, J = 5.4 Hz, 1H), 4.92 - 4.70 (m, 3H), 4.15 (q, J = 4.0 Hz, 1H), 3.76 (s, 12H), 3.46 (dd, J = 10.6, 3.5 Hz, 1H), 3.26 (dd, J = 10.6, 4.2 Hz, 1H), 0.83 (s, 9H), 0.04 (s, 3H), -0.03 (s, 3H).
【0082】
(5)2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)アデノシンの合成
【0083】
【化17】
【0084】
2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-5'-O-6-N-ビス-(4,4'-ジメトキシトリチル)アデノシン (0.515 g, 0.500 mmol) を3% トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン (6ml)を加え、室温で20分間反応させた。その後、反応系にピリジン:メタノール=1:1(10 ml) を加え、室温で20分間反応させた。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で、抽出操作を3回行った。有機層を回収し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ溶媒を減圧下で留去し、残渣を得た。そうして得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C-200, ジクロロメタン:メタノール=100:8)によって精製し、表題の化合物 (0.195 mg, 92%)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 8.39 (s, 1H), 8.14 (s, 1H), 7.37 (s, 2H), 6.80 (s, 1H), 6.60 (s, 1H), 6.10 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 5.58 (dd, J = 6.7, 4.9 Hz, 1H), 5.42 (s, 1H), 4.63 (dd, J = 4.9, 2.7 Hz, 1H), 3.98 (d, J = 3.4 Hz, 1H), 3.70 (d, J = 11.9 Hz, 1H), 3.55 (d, J = 11.9 Hz, 1H), 0.91 (s, 9H), 0.11 (s, 3H), 0.10 (s, 3H).
【0085】
(6)2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)アデノシン 5'-トリホスフェートの合成
【0086】
【化18】
【0087】
2'-O-カルバモイル-3'-O-(tert-ブチルジメチルシリル)アデノシン(127 mg, 0.300 mmol)を脱水ピリジン (1ml) により5回共沸した。アルゴン存在下で脱水ピリジン : 脱水1,4-ジオキサン(1 : 3, v/v, 1 ml)に溶かし、1, 4-ジオキサン(360μl) に溶かした2-クロロ-4H-1,3,2-ベンゾジオキサホスホリン-4-オン (67 mg, 0.330 mmol) を加えた。10分間反応させたのち、トリブチルアミン(300 μl) とDMF (0.900 ml) に溶かしたトリブチルアンモニウムピロホスフェート(250 mg, 0.330 mmol) を加え、10分間反応させた。 1% ヨウ素 ピリジン/水 溶液 (98 : 2, v/v, 6ml)を加え、15分間反応させた。水 (10 ml) 加え、5% 亜硫酸水素ナトリウム水溶液 (450μl) を加え、30分間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧下で留去し、残渣を逆相カラムクロマトグラフィ(0.1 M酢酸トリエチルアミン緩衝液 : アセトニトリル, 100 : 0 → 70 : 30) を行い精製したのち、溶媒を凍結乾燥し、留去し表題の化合物を得た。
1H NMR (500 MHz, D
2O) δ 8.63 (s, 1H), 8.42 (s, 1H), 6.55-6.40 (m, 1H), 5.61 (s, 1H), 4.55-4.45 (m, 1H), 4.45-4.30 (m, 1H), 1.09 (s, 9H), 0.36 (s, 3H), 0.34 (s, 3H).
【0088】
〔実施例3〕 2'-O-カルバモイルウリジン-5'-三リン酸を用いた転写実験
各テンプレート-DNA (2 μl, 5 μM), 10×T7 RNA Polymerase Buffer (2 μl, 400 mM Tris-HCl (pH 8.0), 80 mM MgCl
2, 20 mM スペルミジン), ATP (2 μL, 4 mM), GTP (2 μl, 4 mM)、U
cmTP (2 μL, 4 mM), CTP (2 μl, 3.2 mM), FAM-CTP (2 μl, 0.8 mM), 50 mM DTT (2 μl), T7 RNA Polymerase または T7 RNA Polymerase TM(100 Unit)の順にチューブに入れ、37℃で1 時間転写反応を行った。75 ℃で5分間チューブを加熱し、酵素を失活させたのち、氷浴で1分間冷やし、反応停止剤 (20 μl, 95% formamide, 0.05% BPB)を加えた。95 ℃で3分加熱したのち、7 M 尿素 20%ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動 (チャージ量10 μl, 160 min, 300 V, 30 mA)を行った。フルオロイメージアナライザー (FUJIFILM FLA-7000)を用いて、FAMの蛍光を検出した。Lane 1 のマーカーは標品のRNA (20 μl, 2 μM, 5'-FAM, 30mer)に、反応停止剤 (20 μl, 95% formamide, 0.05% BPB)を加えたものを用いた。
【0089】
電気移動の結果を
図1に示す。また、実験に用いた鋳型DNA及び生成するRNAの配列も
図1に示す。この図に示すように、2'-O-カルバモイルウリジン-5'-三リン酸(U
cmTP)を用いた場合も、ウリジン-5'-三リン酸(UTP)を用いた場合と同様に、全長転写産物が検出できた。このことから、U
cmTPは、T7 RNA Polymeraseの基質として認識されることが確認された。
【0090】
また、全長転写産物を示すバンドの蛍光強度を数値化したところ、U
cmTPはUTPの74%の値を示した(
図2)。
【0091】
〔実施例4〕 オリゴヌクレオチドを用いた一塩基伸張逆転写実験
テンプレート RNA (2 μl, 1 μM)、cDNA primer (2 μl, 1 μM)、5×RT Buffer (2 μl)、dNTP (ATP, GTP, CTP) (それぞれ1 μl, 10 mM)、0.1M DTT (0.5 μl)、 SuperScriptIII (0.5 μl, 300 Unit)を42 ℃で30 分間反応させた。そののち、チューブを75 ℃で10分加熱した。氷冷したのち、RNase (0.5U)を加え、37℃で15分間反応させた。そののち、75 ℃で5分間加熱し、氷冷した。反応停止剤 (10 μl, 95% formamide, 0.05% BPB) を加え、95 ℃で3分間加熱し、氷冷し、7 M Urea 20%ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動 (チャージ量5 μl, 180 min, 300 V, 30 mA)を行った。フルオロイメージアナライザー (FUJIFILM FLA-7000)を用いて、FAMの蛍光を検出した。
【0092】
電気移動の結果を
図3に示す。この図に示すように、鋳型とするRNAが2'-O-カルバモイルウリジンを含む場合(X=U
cm)も、ウリジンを含む場合(X=U)と同様に、一塩基鎖伸長バンドは、dGTPを加えたときは検出されず、dATPを加えたときにのみ検出された。このことから、dGTPは取り込まれず、dATPのみが特異的にcDNAに取り込まれることが確認された。
【0093】
〔実施例5〕 オリゴヌクレオチドを用いた完全長逆転写実験
テンプレート RNA (2 μl, 1 μM)、cDNA primer (2 μl, 1 μM)、5×RT Buffer (2 μl)、dNTPs (1 μl, 10 mM)、滅菌水 (2 μl)、0.1M DTT (0.5 μl)、SuperScriptIII (0.5 μl, 300 Unit)を45 ℃でそれぞれ上記の時間反応させた。そののち、チューブを75 ℃で10分加熱した。氷冷したのち、RNase (0.5U)を加え、37℃で15分間反応させた。そののち、75 ℃で5分間加熱し、氷冷した。反応停止剤 (20 μl, 95% formamide, 0.05% BPB)を加え、95 ℃で3分間加熱し、氷冷し、7 M Urea 20%ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動 (チャージ量5 μl, 180 min, 300 V, 30 mA)を行った。フルオロイメージアナライザー (FUJIFILM FLA-7000)を用いて、FAMの蛍光を検出した。
【0094】
電気移動の結果を
図4に示す。この図に示すように、鋳型とするRNAが2'-O-カルバモイルウリジンを含む場合(X=U
cm)も、ウリジンを含む場合(X=U)と同様に、完全鎖伸長バンドが検出された。このことから、U
cmを含む鋳型鎖は逆転写酵素により精度よく逆転写されることが確認された。
【0095】
〔実施例6〕 酵素耐性試験
蛇毒ホスホジエステラーゼ (SVPDE) (40 μU) を、オリゴヌクレオチド (8 nmol) を溶かした50 mMトリス-塩酸緩衝液 (72 mM塩化ナトリウム、14 mM塩化マグネシウム、pH 7.0) に対し加えた。加水分解反応は37 ℃で行った。それぞれの時間において反応系から20 μL混合液を取り出し、100 ℃で3分間加熱して反応を停止させた後、CENTRICUTを用いて限外ろ過した。ろ液を逆相HPLCにより解析し、得られたピークの面積比から原料であるオリゴヌクレオチドの存在比を算出した。
【0096】
この結果を
図5に示す。この図に示すように、2'-O-カルバモイル修飾オリゴヌクレオチド(5'-U
cmU
cm-T)は、2'-O-メチル修飾オリゴヌクレオチド(5'-U
OMeU
OMe-T)と同等の蛇毒ホスホジエステラーゼ耐性を有していた。