【実施例】
【0009】
本実施形態のキャビテーション検知装置は、発電所内に設置されたポンプ2内におけるキャビテーションの発生を検出するものである。
キャビテーション検知装置は、
図1に示すように、流入圧力計10と、流出圧力計20と、調整手段としての調整機40と、情報蓄積手段としての情報蓄積部50と、モデル構築手段としてのモデル構築部60と、キャビテーション検出手段としてのキャビテーション検出部70と、通知手段としての通知部80とを備えている。
流入圧力計10は、
図1に示すように、液体収容部としてのポンプ2の流入口側に設置され、ポンプ2へ流入する水の水圧を測定する。なお、流入圧力計10は、ポンプ2に設置してもよく、また、ポンプ2の流入口側の配管1に設置してもよい。
流出圧力計20は、
図1に示すように、ポンプ2の流出口側に設置され、ポンプ2から流出する水の水圧を測定する。なお、流出圧力計20は、ポンプ2に設置してもよく、また、ポンプ2の流出口側の配管1に設置してもよい。
調整機40は、配管1内の水の量や圧力等を調整する。本実施形態では、調整機40は、配管1内の水圧を制御する制御弁として構成されている。
ポンプ2と圧力計10、20と調整機40とは、
図1に示すように、配管1で繋がれている。
情報蓄積部50は、CPU、ROM、RAM等で構成され、圧力計10、20によって測定された測定データと測定時刻の時刻データとを、圧力計10、20から受けとって蓄積する。
モデル構築部60は、CPU、ROM、RAM等で構成され、キャビテーションが発生していない正常時の一定時間分の測定データを、情報蓄積部50から受け取り、測定データの相関関係を抽出する。
キャビテーション検出部70は、CPU、ROM、RAM等で構成され、抽出された相関関係をモデル構築部60から受け取るとともに、情報蓄積部50から一定時間分の測定データを受け取り、これらを基にポンプ2内におけるキャビテーションの発生を検知する。
通知部80は、アラーム機やディスプレイ等で構成され、キャビテーション検出部70が検知したキャビテーションの発生をアラーム音やメッセージ等で通知する。なお、情報蓄積部50、モデル構築部60、及びキャビテーション検出部は、単一のコンピュータで構成されても良いし、個別に設けられた複数のコンピュータによって構成されても良い。
次に、
図2を用いて、圧力計10、20および情報蓄積部50の動作を説明する。
まず、圧力計10、20は、ポンプ2の流入口側および流出口側において水圧を常に測定している(ステップ201)。
次に、圧力計10、20によって測定された測定データは、測定時刻の時刻データとともに情報蓄積部50へ通知される(ステップ202)。
情報蓄積部50は、圧力計10、20から受け取ったデータ(測定データおよび時刻データ)を蓄積する(ステップ203)。
上述したステップ201〜203の動作は、常時、繰り返し行われる。
なお、情報蓄積部50による情報蓄積の態様としては、リレーショナルデータベースのような機構を用いてもよいし、単純なテキストファイルで保持してもよい。また、蓄積された情報は、圧力計10、20による測定データと測定時刻の時刻データとから構成され、一般に時系列データと呼ばれている形態となる。
次に、
図3を用いて、モデル構築部60の動作を説明する。
まず、ポンプ2内でキャビテーションが一切発生していない正常動作時において、調整機40を調整して配管1、ポンプ2に流れる水圧を少しずつ変化させる(ステップ301)。なお、この際、水圧を上げる方向、下げる方向が混在しても構わない。
この場合、調整機40の操作により変化する水圧を、圧力計10、20が検知し、その測定データおよび時刻データを情報蓄積部50へ通知し、情報蓄積部50は、受け取った情報を随時蓄積する(ステップ302、
図2のステップ201〜203)。
モデル構築部60は、情報蓄積部50から、調整機40を操作して水圧を変化させた期間の測定データを受け取る(ステップ303)。
続いて、モデル構築部60は、受け取った測定データから、ポンプ2の流入囗側で測定された水圧値とポンプ2の流出口側で測定された水圧値との間に、相関関係があるかどうかを確認する(ステップ304)。
ここでは、情報蓄積部50から入手した2点の一定時間の時系列データから、2点間の相関関係として、B=f(A)のような近似式を生成する。近似式の生成方法としては、例えば、線形回帰と呼ばれている方法や、ほかにも既に様々な方法が提案されているため、ここでは詳細について述べない。さらに、生成した近似式と、生成時に利用した時系列データとから、モデル構築部60は、実際のデータを近似式がどの程度近似できているかどうかの指標であるフィット値を生成する。線形回帰として最小二乗法を用いて近似した場合、フィット値は最小二乗法における決定係数とすることができる。
次に、フィット値と予め定められた閾値を比較し、閾値以上であれば(ステップ305のN)、モデル構築部60は2点間の関係(近似式およびフィット値)をモデルとして記憶して処理を終了する(ステップ306)。また、フィット値が閾値以下の場合(ステップ305のY)、処理を終了する。
なお、以下では、記憶された2点間の関係をモデルと呼ぶ。
次に、
図4を用いて、キャビテーション検出部70の動作を説明する。
なお、キャビテーション検出部70の動作のためには、予め、モデル構築部60によってモデルが構築されている必要がある。さらに、情報蓄積部50には、常に圧力計10、20からの測定データが充分に蓄積されているものとする。
まず、キャビテーション検出部70は、情報蓄積部50から、キャビテーションを検知すべき時間、即ち、ある時刻tから過去一定時間分の測定データを取得する(ステップ401)。ここで、ある時刻tとは、現在時刻より若干の過去の時刻とする。仮に現在時刻の測定データが常に情報蓄積部50に蓄積されている場合は、時刻tは現在時刻でも構わない。
次に、モデル構築部60に記憶されているモデルを取得する(ステップ402)。
続いて、キャビテーション検出部70は、モデルから、流入圧力と流出圧力の関係(近似式B=f(A)およびフィット値)を取得する(ステップ403)。
次に、キャビテーション検出部70は、情報蓄積部50から入手した測定データに含まれる流出圧力の値を近似式B=f(A)へ代入し、結果である流入圧力の予測値を求める(ステップ404)。
更に、キャビテーション検出部70は、求められた流入圧力予測値と情報蓄積部50から入手した流入圧力値の差異Rを算出する(ステップ405)。
キャビテーション検出部70は、差異Rが予め定められた閾値を超えている場合(ステップ406のY)、近似式B=f(A)の関係が成り立っていない状態と判断し、ポンプ2にキャビテーションが発生している可能性があると判断して、通知部80へ通知する(ステップ407)。
次に、ステップ407で通知を行った後、および、差異Rが予め定められた閾値を超えていない場含(ステップ406N)、時刻tを一定時間△t分だけ進めて、キャビテーション検出部70は、ステップ401からの処理を繰り返す。
ここで△tは、キャビテーションを検知したい間隔から設定されるものであるが、圧力計10、20が情報蓄積部50へ測定した結果を通知する間隔よりも大きい必要がある。
このようにして得られた本実施形態のキャビテーション検知装置では、水圧を測定するために設置される既存の圧力計10、20の測定データを利用して、ポンプ2内でキャビテーションが発生したことを検知することが可能であるため、キャビテーション検知に特化した専用のセンサを必要とすることなく、キャビテーションの発生を検知することができる。
また、本実施形態のキャビテーション検知装置は、上記した操作を常時繰り返すことにより、キャビテーション発生の初期段階で検知することができる。
さらに、キャビテーション発生の初期段階で、水圧等を調整することで、ポンプ2内のプロペラ等の部品がキャビテーションによって破損することを防ぐことができる。
なお、上述した実施形態では、液体収容部がポンプであるものとして説明したが、液体収容部の具体的態様は、液体を収容し、その内部でキャビテーションが生じうるものであれば如何なるものでもよい。
また、上述した実施形態では、液体が水であるものとして説明したが、液体の具体的態様は、液体内部でキャビテーションが生じうるものであれば如何なるものでもよい。