特許第6261061号(P6261061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6261061照明光学系の冷却構造、及び投写型表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261061
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】照明光学系の冷却構造、及び投写型表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/16 20060101AFI20180104BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20180104BHJP
   F21V 29/502 20150101ALI20180104BHJP
   F21V 29/67 20150101ALI20180104BHJP
   F21V 29/76 20150101ALI20180104BHJP
   F21K 9/00 20160101ALI20180104BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20180104BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20180104BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20180104BHJP
【FI】
   G03B21/16
   G03B21/00 D
   F21V29/502 100
   F21V29/67 100
   F21V29/76
   F21K9/00 100
   F21S2/00 377
   H05K7/20 G
   H05K7/20 H
   F21Y115:30
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-515797(P2016-515797)
(86)(22)【出願日】2014年4月30日
(86)【国際出願番号】JP2014061955
(87)【国際公開番号】WO2015166553
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2016年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】300016765
【氏名又は名称】NECディスプレイソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】増田 直樹
【審査官】 村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−181309(JP,A)
【文献】 特開2004−053692(JP,A)
【文献】 特開2012−078707(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/116444(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/087406(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/16
F21K 9/00
F21S 2/00
F21V 29/502
F21V 29/67
F21V 29/76
G03B 21/00
H05K 7/20
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射された励起光によって蛍光を発する蛍光体層を有する蛍光体部材と、
前記蛍光体部材に冷却風を送るファンと、
前記蛍光体部材が配置された内部空間と外部空間とを仕切り、前記ファンから送られた冷却風を前記蛍光体部材に導くダクトと、
を備え
前記ダクト内に配置され、前記蛍光体層から発せられた蛍光を集光するレンズと、前記蛍光体部材に隣接して配置され、前記レンズを保持するレンズホルダと、をさらに備え、
前記レンズホルダと、前記蛍光体部材との間には、前記ファンから送られた冷却風を通す第1の通気路が設けられており、
前記レンズホルダは、前記レンズの外周部を保持する保持部を有し、
前記保持部に、前記ファンから送られた冷却風を通す第2の通気路が設けられている、照明光学系の冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載の照明光学系の冷却構造であって、
前記ダクトの、前記蛍光体部材の下流側に、冷却風を冷却する冷却部材が設けられている、照明光学系の冷却構造。
【請求項3】
請求項に記載の照明光学系の冷却構造であって、
前記ダクトの外部に配置された放熱部材を備え、
前記冷却部材は、前記ダクトの内部に配置された受熱部と、前記受熱部に連結されて前記ダクトの外部に配置された冷却部と、を有し、
前記ダクトの外部に、前記放熱部材及び前記冷却部に冷却風を送る放熱用のファンが設けられている、照明光学系の冷却構造。
【請求項4】
光源から照射された励起光によって蛍光を発する蛍光体層を有する蛍光体部材と、
前記蛍光体部材に冷却風を送るファンと、
前記蛍光体部材が配置された内部空間と外部空間とを仕切り、前記ファンから送られた冷却風を前記蛍光体部材に導くダクトと、
前記ダクトの、前記蛍光体部材の下流側に設けられた、冷却風を冷却する冷却部材と、
前記ダクトの外部に配置された放熱部材と、
を備え、
前記冷却部材は、前記ダクトの内部に配置された受熱部と、前記受熱部に連結されて前記ダクトの外部に配置された冷却部と、を有し、
前記ダクトの外部に、前記放熱部材及び前記冷却部に冷却風を送る放熱用のファンが設けられている、照明光学系の冷却構造。
【請求項5】
請求項4に記載の照明光学系の冷却構造であって、
前記ダクト内に配置され、前記蛍光体層から発せられた蛍光を集光するレンズと、前記蛍光体部材に隣接して配置され、前記レンズを保持するレンズホルダと、を備え、
前記レンズホルダと、前記蛍光体部材との間には、前記ファンから送られた冷却風を通す第1の通気路が設けられている、照明光学系の冷却構造。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の照明光学系の冷却構造であって、
前記蛍光体部材は、前記蛍光体層が形成された基板からなり、
前記基板は、回転可能に構成されている、照明光学系の冷却構造。
【請求項7】
請求項に記載の照明光学系の冷却構造であって、
前記ダクト内の、前記ファンと前記蛍光体部材との間には、前記内部空間を、前記基板の一方の面を含む第1の空間と、前記基板の他方の面を含む第2の空間とに分割する分割壁が設けられている、照明光学系の冷却構造。
【請求項8】
請求項に記載の照明光学系の冷却構造であって、
前記ファンは、前記第1の空間に冷却風を送る第1のファンと、前記第2の空間に冷却風を送る第2のファンと、を含む、照明光学系の冷却構造。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の照明光学系の冷却構造であって、
前記ダクトの外部に配置された放熱部材を備える、照明光学系の冷却構造。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の照明光学系の冷却構造を含む照明光学系と、
前記照明光学系から出射された光を画像信号に合わせて変調する画像素子を含む画像生成光学系と、を備える投写型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を用いた照明光学系の冷却構造、及び投写型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、励起光の照射によって蛍光を発する蛍光体を備える照明光学系が提案されている。この種の照明光学系は、例えば投写型表示装置に利用されている。図1に、本発明に関連する照明光学系を備える投写型表示装置の斜視図を示す。図2に、本発明に関連する照明光学系の斜視図を示す。図3に、本発明に関連する照明光学系の平面図を示す。
【0003】
図1に示すように、本発明に関連する投写型表示装置101は、照明光学系103と、照明光学系103から光が入射する画像生成光学系104と、を備えている。図2及び図3に示すように、照明光学系103は、レーザ光源107と、レーザ光源107から発せられたレーザ光が照射される蛍光体層が設けられた蛍光体ホイール112と、を備えている。
【0004】
このような蛍光体ホイールを備える照明光学系としては、特許文献1に開示されるものがある。特許文献1には、蛍光体ホイールと、蛍光体ホイールを回転させるモータとを有する蛍光体ユニットを備える照明光学系が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示される蛍光体ホイールは、一面に直交する回転軸まわりに回転自在に設けられた基板を有している。基板の一面には、蛍光体領域と反射領域とが形成されている。蛍光体領域は、レーザ光の照射によって所定の波長の蛍光を発する蛍光体層を有する。反射領域は、レーザ光を反射する領域である。蛍光体ホイールの照射されたレーザ光は、回転する蛍光体ホイールの蛍光体領域と反射領域とに繰り返し照射される。これにより、蛍光体から発せられた蛍光と、反射領域で反射されたレーザ光とが、順番に蛍光体ホイールから出射される。
【0006】
このような照明光学系から発せられる光の照度は、蛍光体から生じる蛍光の光量に依存している。蛍光体は、レーザ光の照射に伴って発熱し、発熱によって発光効率が低下する特性を有している。したがって、照明光学系から発せられる光の照度が低下することを防ぐためには、蛍光体の発熱を抑制することが必要になっている。
【0007】
特許文献2には、蛍光体層に凹部が形成された蛍光体ホイールと、蛍光体ホイールの凹部に向かって冷却風を吹き付けるファンと、を有する構成が開示されている。特許文献2に開示される構成では、蛍光体ホイールの凹部に冷却風を吹き付けることによって乱流を生じさせ、熱が拡散する効果を用いて蛍光体の冷却効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2012/127554号パンフレット
【特許文献2】特開2012−78707号公報
【特許文献3】特開2013−25249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1に記載の照明光学系では、蛍光体ホイールが回転したときに蛍光体ホイール自身が受ける、蛍光体ホイールの周囲の空気の流れによって蛍光体が冷却されている。このため、特許文献1に記載の照明光学系は、蛍光体を冷却する冷却効果が乏しい。
【0010】
特許文献2に開示される構成では、蛍光体ホイールの蛍光体層におけるレーザ光の照射部分に向けて局所的に冷却風が吹き付けられている。このような、特許文献2に記載の構成では、依然として蛍光体の冷却効果が不十分であり、冷却効率を更に高めることが望まれている。
【0011】
また、特許文献3には、蛍光体ホイールの、蛍光体層が形成された一方の面側へ冷却風を送るファンを、蛍光体ホイールの近傍に配置した構成が開示されている。しかし、蛍光体ホイールを用いる照明光学系では、蛍光体層から発せられた蛍光を集光するための集光レンズが、蛍光体層に隣接して配置されている。このため、冷却風が、集光レンズを保持するレンズホルダに吹き付けられることで流れが妨げられ、蛍光体ホイールの一方の面に冷却風を十分に流すことが困難であった。このように、特許文献3に記載の構成では、蛍光体ホイールの一方の面側のみに冷却風が送られ、冷却風の流れがレンズホルダによって妨げられるので、蛍光体の冷却効率が低いという問題がある。
【0012】
加えて、一般に、レーザ光源を用いた照明光学系は、図2及び図3に示すように、照明光学系103から光が出射するレンズ111以外から、レーザ光が照明光学系103の外部に洩れないようにカバー110によって覆われている。したがって、照明光学系103は、外部から閉じられた構造になっている。このため、レーザ光源107を用いた照明光学系103は、カバー110の内部の雰囲気温度が上昇しやすく、カバー110の内部の空気が、レーザ光源107で生じる熱によって暖められて高温になりやすい。そのため、カバー110の内部に配置された蛍光体ホイール112自身が受ける周囲の空気も高温状態になるので、蛍光体の冷却効率が低いという問題がある。
【0013】
したがって、上述した本発明に関連する照明光学系は、蛍光体の冷却効率が低いので、蛍光体の温度が上昇しやすく、照明光学系から出射される光の照度が低下してしまう。その結果、照明光学系の連続使用時間に伴って、照度の維持率が低下する問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、蛍光体の冷却効率を高め、照明光学系から出射される光の照度の低下を防ぐことができる照明光学系の冷却構造及び投写型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成するため、本発明に係る照明光学系の冷却構造は、光源から照射された励起光によって蛍光を発する蛍光体層を有する蛍光体部材と、蛍光体部材に冷却風を送るファンと、蛍光体部材が配置された内部空間と外部空間とを仕切り、ファンから送られた冷却風を蛍光体部材に導くダクトと、を備え、ダクト内に配置され、蛍光体層から発せられた蛍光を集光するレンズと、蛍光体部材に隣接して配置され、レンズを保持するレンズホルダと、をさらに備え、レンズホルダと、蛍光体部材との間には、ファンから送られた冷却風を通す第1の通気路が設けられており、レンズホルダは、レンズの外周部を保持する保持部を有し、保持部に、ファンから送られた冷却風を通す第2の通気路が設けられている。
本発明に係るもう1つの照明光学系の冷却構造は、光源から照射された励起光によって蛍光を発する蛍光体層を有する蛍光体部材と、蛍光体部材に冷却風を送るファンと、蛍光体部材が配置された内部空間と外部空間とを仕切り、ファンから送られた冷却風を蛍光体部材に導くダクトと、ダクトの、蛍光体部材の下流側に設けられた、冷却風を冷却する冷却部材と、ダクトの外部に配置された放熱部材と、を備え、冷却部材は、ダクトの内部に配置された受熱部と、受熱部に連結されてダクトの外部に配置された冷却部と、を有し、ダクトの外部に、放熱部材及び冷却部に冷却風を送る放熱用のファンが設けられている。
【0016】
また、本発明に係る投写型表示装置は、上記照明光学系の冷却構造を含む照明光学系と、照明光学系から出射された光を画像信号に合わせて変調する画像素子を含む画像生成光学系と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蛍光体の冷却効率を高め、照明光学系から出射される光の照度の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に関連する照明光学系を備える投写型表示装置を示す斜視図である。
図2】本発明に関連する照明光学系を示す斜視図である。
図3】本発明に関連する照明光学系を示す平面図である。
図4】第1の実施形態の投写型表示装置を透視して示す斜視図である。
図5】第1の実施形態の投写型表示装置が備える照明光学系を示す斜視図である。
図6】第1の実施形態の照明光学系の冷却構造を説明するために示す斜視図である。
図7】第1の実施形態の照明光学系の冷却構造を示す平面図である。
図8】第1の実施形態の照明光学系の冷却構造を拡大して示す平面図である。
図9】第1の実施形態の照明光学系の冷却構造が有するダクト及びレンズホルダを拡大して示す斜視図である。
図10】第2の実施形態の照明光学系の冷却構造を説明するために示す斜視図である。
図11】第2の実施形態の照明光学系の冷却構造を示す平面図である。
図12】第2の実施形態の照明光学系の冷却構造を拡大して示す平面図である。
図13】第2の実施形態の照明光学系の冷却構造が有するダクト及びレンズホルダを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図4に、第1の実施形態の投写型表示装置を透視した斜視図を示す。図5に、第1の実施形態の投写型表示装置が備える照明光学系の斜視図を示す。図6に、第1の実施形態の照明光学系の冷却構造を説明するための斜視図を示す。図7に、第1の実施形態の照明光学系の冷却構造の平面図を示す。
【0021】
図4及び図5に示すように、第1の実施形態の投写型表示装置1は、蛍光体を用いた照明光学系3と、照明光学系3から光が入射し、投写面上に投写する画像を生成する画像生成光学系4と、を備えている。
【0022】
図6及び図7に示すように、照明光学系3は、レーザ光を発する第1のレーザ光源6及び第2のレーザ光源7と、第1のレーザ光源6から出射されたレーザ光の第1光路を構成する第1の光学部品群と、第2のレーザ光源7から出射されたレーザ光の第2光路を構成する第2の光学部品群と、を備えている。また、照明光学系3は、第1光路の全体を覆うと共に、第2のレーザ光源7から蛍光体ホイール12までの光路を含む第2光路の全体を覆うカバー10を備えている。
【0023】
第1及び第2のレーザ光源6、7は、図6に示すように、青色の波長を有する青色レーザ光を出射する複数のレーザダイオード8を有しており、平面上に複数のレーザダイオード8が配列されている。第1及び第2のレーザ光源6、7は、青色レーザ光を出射するものに限定されるものではない。第1及び第2のレーザ光源6、7としては、紫外光等の他の波長の光を出射するものが用いられてもよい。第1及び第2の光学部品群については後述する。カバー10は、一組の上カバー10aと下カバー10bを組み合わせて構成されている。
【0024】
図6に示すように、第2光路は、第2のレーザ光源7から出射されたレーザ光の照射によって蛍光を発する蛍光体ホイール12と、蛍光体ホイール12から発せられた蛍光を集光するための複数の集光レンズ13a、13b、13cと、を含んでいる。そして、照明光学系3は、蛍光体ホイール12を冷却するための冷却構造11を備えている。
【0025】
図8に、第1の実施形態の照明光学系の冷却構造11を拡大した平面図を示す。図9に、第1の実施形態の照明光学系の冷却構造11が有するダクト及びレンズホルダを拡大した斜視図を示す。
【0026】
図7及び図8に示すように、第1の実施形態の照明光学系の冷却構造11は、第2のレーザ光源7から照射された励起光としてのレーザ光によって蛍光を発する蛍光体層12bを有する蛍光体部材としての蛍光体ホイール12と、蛍光体ホイール12に冷却風を送るファン15と、蛍光体ホイール12が配置された内部空間と外部空間とを仕切り、ファン15から送られた冷却風を蛍光体ホイール12に導くダクト16と、を有する。
【0027】
蛍光体ホイール12は、図8に示すように、蛍光体層12bが形成された基板12aからなる。基板12aは、ホイールモータ17の回転軸17aに取り付けられており、基板12aの主面に直交する方向と平行な回転軸17aを中心として回転可能に構成されている。ホイールモータ17は、下カバー10bの底板上に取り付けられている。蛍光体層12bは、円形状の基板12a上に蛍光体が塗布されることによって形成されている。蛍光体は、緑色の波長から赤色の波長にわたる波長帯を持つ黄色の蛍光を発する。
【0028】
なお、本実施形態の蛍光体ホイール12は、黄色光のみを発するように構成されたが、これに限定されるものではない。蛍光体ホイール12としては、蛍光体層におけるレーザ光の照射位置に応じて、異なる色の蛍光を発するように蛍光体層が分割されてもよい。
【0029】
蛍光体ホイール12を用いることによって、蛍光体ホイール12の回転に伴ってレーザ光の照射位置が変わるので、蛍光体層12bの各部において蛍光体の温度の偏りが生じることを抑えられる。このため、蛍光体層12bの一部で蛍光への変換効率が低下することが抑えられ、蛍光を安定して得やすくすることができる。
【0030】
ファン15はカバー10の内部に配置されている。ファン15としては、シロッコファンが用いられており、冷却風を送る送風口を有している。
【0031】
図6及び図7に示すように、ダクト16は、カバー10の内部に配置されており、ファン15から送られた冷却風を、ホイールモータ17の回転軸17aに直交する方向に向かって送るように延ばされた隔壁19を有している。隔壁19は、下カバー10bの底板上に、下カバー10bの側板に沿って形成されている。ダクト16は、隔壁19と、上カバー10aの天板、下カバー10bの底板及び側板とによって構成されており、カバー10の内部に設けられている。このようにダクト16は、隔壁19と、上カバー10aの天板、下カバー10bの底板及び側板とによって閉じられた内部空間を有しており、内部空間が、ファン15から送られた冷却風の流路として構成されている。
【0032】
図9に示すように、ダクト16の一端には、ファン15の送風口に連結される開口16aが設けられている。また、図7に示すように、ダクト16の、蛍光体ホイール12に対する下流側である他端に、冷却風を冷却する冷却部材としての熱交換器21が設けられている。熱交換器21によって、蛍光体ホイール12を通過した後の冷却風が冷却される。また、ダクト16の他端は、図7に示すように、流路の断面積が拡げられている。ダクト16の他端部における流路の断面積を拡げることによって、熱交換器21に吹き当てる冷却風の量が増やされている。
【0033】
熱交換器21は、図6及び図7に示すように、ダクト16の他端部の内部に配置された受熱部21aと、ダクト16の外部に配置された冷却部21bと、受熱部21aから冷却部21bに熱を伝える伝熱部21cと、を有している。熱交換器21は、蛍光体ホイール12を冷却することで暖まった風から熱を奪って冷却する。このようにダクト16に熱交換器21が配置されたことで、熱交換器21で冷やされた冷却風をファン15へ循環させることが可能になり、ファン15から送られる冷却風を用いた蛍光体の冷却効率が高められている。なお、熱交換器としては、液体を循環させて冷却を行う液冷方式の冷却機構が用いられてもよい。
【0034】
図8に示すように、ダクト16の内部には、蛍光体ホイール12及びホイールモータ17が配置されている。また、ダクト16の内部には、複数の集光レンズ13a、13b、13cと、複数の集光レンズ13a、13b、13cを保持するレンズホルダ22が、蛍光体ホイール12の、蛍光体層12bが形成された面に隣接して設けられている。
【0035】
図8及び図9に示すように、レンズホルダ22は、各集光レンズ13a、13b、13cの外周部を保持する保持部22aと、保持部22aを支持する基部22bと、を有している。
【0036】
レンズホルダ22の基部22bは、断面L字をなす板状に形成されており、下カバー10bの底板上に固定されている。基部22bは、立ち上がり壁22cを有している。保持部22aは、立ち上がり壁22cの、下カバー10bの底板から離れた位置に設けられている。また、立ち上がり壁22cは、ダクト16の隔壁19に揃えて連結されており、隔壁19の一部として構成されている。
【0037】
以上のようにレンズホルダ22が構成されることで、保持部22aと、下カバー10bの底板との間には、冷却風が流れる第1の通気路23aが確保されており、冷却風の通気性が高められている。これによって、ファン15から送られた冷却風がレンズホルダ22によって妨げられることを防ぎ、冷却風をダクト16の隔壁19に沿ってスムーズに流すことが可能になっている。
【0038】
レンズホルダ22の保持部22aは、各集光レンズ13a、13b、13cの外周部を保持している。保持部22aには、各集光レンズ13a、13b、13cの間に、ファン15から送られた冷却風を通す複数の第2の通気路23bを有している。保持部22aは、第2の通気路23bを有することによって、ファン15から送られた冷却風の流れを妨げることなく、蛍光体層12bを効率的に冷却することが可能にされている。
【0039】
また、図7及び図8に示すように、ダクト16の外部には、回転軸17aから伝わった熱をダクト16の外部に放熱するための放熱部材としてのヒートシンク24が設けられている。
【0040】
ホイールモータ17が有する、回転軸17aの軸受け部17bには、ヒートシンク24が連結されている。図8に示すように、軸受け部17bとヒートシンク24との間には、熱伝導シート25が挟まれており、軸受け部17bから熱伝導シート25を介してヒートシンク24に熱が伝わり、ヒートシンク24から熱が放出される。このように、ヒートシンク24を用いることで、蛍光体ホイール12の蛍光体の冷却効果が高められている。変形例として、熱伝導シート25が軸受け部17bに接する構造の代わりに、熱伝導シート25が、回転軸17aに直に接する構造にされてもよい。
【0041】
また、図6及び図7に示すように、ダクト16の外部であるカバー10の外部には、ヒートシンク24及び熱交換器21の冷却部21bに冷却風を送る別のファン27が設けられている。ダクト16の外部には、ヒートシンク24と冷却部21cが、対向する位置に配置されている。
【0042】
ファン27としては、プロペラファンが用いられている。本実施形態の投写型表示装置1は、図4に示すように、照明光学系3が内部に設けられる筐体9を備えており、筐体9の内部の、冷却部21bに対向する位置に、ファン27が配置されている。
【0043】
ファン27から送られた冷却風は、冷却部21bを冷やした後、冷却部21bを通過してヒートシンク24に吹き付けられる。これにより、1つのファン27から送られる冷却風を用いて、冷却部21b及びヒートシンク24を効率的に冷却することが可能になり、冷却構造11が簡素化されている。
【0044】
本実施形態では、熱交換器21の冷却部21bを通過した冷却風を、ヒートシンク24に吹き付けるように構成されたが、この構成に限定されるものではない。変形例として、ヒートシンク24を通過した冷却風を、冷却部21bに吹き付けるような構成や、ヒートシンク24と冷却部21bとの間に冷却風を流すように構成にされてもよいことは勿論である。
【0045】
照明光学系3の第1光路において、図6及び図7に示すように、第1のレーザ光源6のレーザダイオード8から出射されたレーザ光は、集光レンズ31によって集光される。集光レンズ31によって集光された光は、集光レンズ32によって拡散板33に向かって集光される。拡散板33に入射したレーザ光は、拡散されて集光レンズ34に入射する。集光レンズ34に入射した光は、ダイクロイックミラー35に入射する。ダイクロイックミラー35は、青色の波長を有する光を透過し、かつ緑色の波長よりも長い波長の光を反射する。したがって、ダイクロイックミラー35は、第1のレーザ光源6から発せられた青色レーザ光を透過し、上述の蛍光体ホイール12の蛍光体層12bから発せられた黄色光を反射する。ダイクロイックミラー35で反射された黄色光、及びダイクロイックミラー35を透過した青色レーザ光は、集光レンズ36に入射し、照明光学系3から出射される。照明光学系3から出射された光は、画像生成光学系4に入射する。
【0046】
照明光学系3の第2光路において、図6及び図7に示すように、第2のレーザ光源7のレーザダイオード8から出射されたレーザ光は、集光レンズ41によって集光される。集光レンズ41によって集光された光は、集光レンズ42によって拡散板43に向かって集光される。拡散板43に入射した光は、拡散されてライトトンネル44に入射する。ライトトンネル44は、中空の光学素子であり、内部の上下左右の各内面が反射ミラーとして構成されている。ライトトンネル44に入射した光は、ライトトンネル44の内面で複数回反射する。これによって、ライトトンネル44の出射部における光の照度分布が均一化される。変形例として、ライトトンネル44の代わりにロッドレンズ(ロッドインテグレータ)が用いられてもよい。
【0047】
ライトトンネル44から出射された光は、集光レンズ45によって集光される。集光レンズ45によって集光された光は、ダイクロイックミラー46に入射する。ダイクロイックミラー46は、青色の波長を有する光を反射し、緑色の波長よりも長い波長の光を透過する。ダイクロイックミラー46で反射された青色レーザ光は、集光レンズ13a、13b、13cを透過し、蛍光体ホイール12の蛍光体層12bに照射される。蛍光体は、青色レーザ光によって励起され、黄色の蛍光を放射する。
【0048】
蛍光体から放射された黄色光は、集光レンズ13a、13b、13cによって集光され、ダイクロイックミラー46に入射する。ダイクロイックミラー46に入射した黄色光は、ダイクロイックミラー46を透過し、集光レンズ47に入射する。集光レンズ47に入射した黄色光は、ダイクロイックミラー35に入射する。ダイクロイックミラー35に入射した黄色光は、ダイクロイックミラー35で反射され、集光レンズ36に入射する。
【0049】
投写型表示装置1が備える画像生成光学系4において、図4に示すように、照明光学系3の集光レンズ36から出射された光は、ライトトンネル51に入射する。ライトトンネル51に入射した光は、ライトトンネル51の内面で複数回反射する。これによって、ライトトンネル51の出射部における光の照度分布が均一化される。ライトトンネル51から出射された光は、黄色光と青色光との合成光である白色光になっている。白色光は、集光レンズ52、53を透過し、ミラー54で反射する。ミラー54で反射した白色光は、集光レンズ55を透過し、TIR(内部全反射)プリズム56に入射する。TIRプリズム56に入射した光は、内部で全反射し、カラープリズム57に入射する。カラープリズム57は、白色光を、緑色光と赤色光と青色光とに分光する。
【0050】
カラープリズム57で分光された光は、この光を画像信号に合わせて変調する画像素子としてのDMD(digital mirror device)に入射する。カラープリズム57で分光された緑色光は、緑色光用のDMD58へ入射する。同様に、カラープリズム57で分光された赤色光は、赤色光用のDMD(不図示)に入射し、カラープリズム57で分光された青色光は、青色光用のDMD(不図示)に入射する。なお、変形例として、画像素子としてのDMDの代わりに、液晶パネル(LCD)が用いられてもよい。
【0051】
DMD58は、マトリックス状に配列された多数の微小ミラーを有しており、各微小ミラーが、投影される画像の画素に対応している。各微小ミラーの角度は調整可能に構成されている。ある角度をもった微小ミラーに入射した光は、投写レンズ59に向かって反射される。したがって、各DMDで反射された緑色光、赤色光及び青色光は、カラープリズム57に入射し、カラープリズム57で合成される。カラープリズム57で合成された光は、TIRプリズム56及び投写レンズ59を通って、スクリーン等の投写面上に投写される。
【0052】
以上のように構成された照明光学系の冷却構造11について、ファン15及びダクト16によって蛍光体ホイール12が冷却される動作を説明する。
【0053】
ファン15から送られた冷却風は、ダクト16内を隔壁19に沿って流れ、蛍光体ホイール12の基板12aの両面に吹き付けられる。蛍光体ホイール12の、蛍光体層12b側の面に吹き付けられた冷却風は、レンズホルダ22の通気路23、レンズホルダ22の保持部22aの外周側の空間を通り抜けて、蛍光体層12b側の面に沿ってスムーズに流れる。このように、ファン15から送られた冷却風は、ダクト16に沿って案内されて、蛍光体ホイール12全体を効果的に冷却する。
【0054】
また、蛍光体ホイール12の蛍光体層12bを冷却した冷却風は、隔壁19に沿って流れ、熱交換器21によって冷却される。熱交換器21によって冷やされた空気は、ダクト16から排出され、照明光学系3の内部を通って図7中に矢印で示すようにファン15へ循環する。したがって、ファン15は、熱交換器21によって冷却された冷却風を蛍光体ホイール12に送ることができ、蛍光体の冷却効率が高められている。
【0055】
また、熱交換器21の冷却部21bは、ファン27から送られた冷却風によって冷却される。ヒートシンク24は、冷却部21bを冷やした冷却風によって冷却される。ヒートシンク24が冷却されることで、蛍光体ホイール12の蛍光体層12bが冷却される。
【0056】
本実施形態は、投写型表示装置の筐体内の、蛍光体ホイールの近傍にファンを単に配置する構成に比べて、ダクト16に沿って案内された冷却風によって、蛍光体ホイール12の周囲の空気を冷却することができる。これにより、蛍光体を効率的に冷却することができる。
【0057】
加えて、ダクト16内に配置されたレンズホルダ22は、通気路23を有することによって、ファン15から送られた冷却風の流れを妨げることを防いでいる。このような冷却風の通気性を高めるための各構成の相乗効果により、蛍光体の冷却効率が高められている。
【0058】
上述したように、第1の実施形態の照明光学系の冷却構造11は、ファン15から送られた冷却風を蛍光体ホイール12に導くダクト16を備える。これによって、ダクト16に沿って案内された冷却風によって、蛍光体ホイール12の周囲の空気の温度が下げられ、蛍光体を効率的に冷却することができる。その結果、冷却構造11は、蛍光体の冷却効率を高め、照明光学系3から出射される光の照度の低下を防ぐことができる。
【0059】
また、レンズホルダ22は、保持部22aと下カバー10bの底板との間に空間を有することによって、ファン15から送られた冷却風の流れを妨げることを防ぎ、蛍光体ホイール12の、蛍光体層12b側の面に冷却風を十分に流すことが可能になる。さらに、レンズホルダ22は、保持部22aが通気路23を有することによって、ファン15から送られた冷却風の流れを妨げることを防ぎ、蛍光体ホイール12の、蛍光体層12b側の面に冷却風をスムーズに流すことが可能になる。その結果、蛍光体の冷却効果を高めることができる。
【0060】
また、冷却構造11は、熱交換器21を備えることによって、ファン15が送る冷却風の温度が上昇することを防ぎ、蛍光体ホイール12を更に効率的に冷却することができる。また、冷却構造11は、ヒートシンク24を備えることによって、蛍光体ホイール12の熱をダクト16の外部に放出することができる。
【0061】
(第2の実施形態)
つぎに、第2の照明光学系の冷却構造について説明する。第2の実施形態の冷却構造を備える照明光学系において、説明の便宜上、第1の実施形態の照明光学系と同一の構成部材には第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
図10に、第2の実施形態の照明光学系の冷却構造を説明するための斜視図を示す。図11に、第2の実施形態の照明光学系の冷却構造の平面図を示す。図12に、第2の実施形態の照明光学系の冷却構造を拡大した平面図を示す。図13に、第2の実施形態の照明光学系の冷却構造が有するダクト及びレンズホルダの斜視図を示す。
【0063】
図10及び図11に示すように、第2の実施形態の照明光学系の冷却構造61は、内部空間を分割する分割壁69を有するダクト66と、分割壁69で分割されたダクト66内の各空間に冷却風をそれぞれ送る第1のファン67a及び第2のファン67bと、を備えている。
【0064】
図12及び図13に示すように、ダクト66の内部の、第1及び第2のファン67a、67bと蛍光体ホイール12との間には、ダクト66の内部空間を、基板12aの一方の面を含む第1の空間と、基板12bの他方の面を含む第2の空間とに分割する分割壁69が設けられている。分割壁69は、ダクト66の一端から蛍光体ホイール12に隣接する位置まで、隔壁19に沿って延ばされて設けられている。図13に示すように、ダクト66の一端には、第1のファン67aの送風口に連結される開口66aと、第2のファン67bの送風口に連結される開口66bとが形成されている。
【0065】
以上のように構成された第2の実施形態の照明光学系の冷却構造61において、第1のファン67aから送られた冷却風は、ダクト66の内部空間の、分割壁69によって仕切られた一方の空間を流れ、蛍光体ホイール12の、蛍光体層12bが形成された一方の面側に導かれる。これと同様に、第2のファン67bから送られた冷却風は、ダクト66の内部空間の、分割壁69によって仕切られた他方の空間を流れ、蛍光体ホイール12の他方の面側に導かれる。このように、本実施形態では、蛍光体ホイール12の両面側に冷却風がそれぞれスムーズに導かれる。
【0066】
第2の実施形態の照明光学系の冷却構造61によれば、分割壁69と、第1及び第2のファン67a、67bとを備えることによって、蛍光体ホイール12の両面側にそれぞれ冷却風をスムーズに導くことが可能になり、蛍光体の冷却効率を更に高めることができる。
【0067】
なお、本発明に係る照明光学系の冷却構造は、蛍光体ホイールを備える照明光学系に用いられたが、必要に応じて、他の照明光学系に用いられてもよい。本発明は、例えば、光源からの光が入射するカラーフィルタを有するカラーホイールを用いた照明光学系や、固定構造の蛍光体を用いた他の照明光学系に用いられてもよい。
【0068】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細は、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 投写型表示装置
3 照明光学系
7 第2のレーザ光源
11 冷却構造
12 蛍光体ホイール
12a 基板
12b 蛍光体層
15 ファン
16 ダクト
17a 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13