(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6261063
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】可変画像表示体、レンチキュラー画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G09F 19/12 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
G09F19/12 F
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-149497(P2017-149497)
(22)【出願日】2017年8月1日
【審査請求日】2017年8月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511102745
【氏名又は名称】グラパックジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135149
【弁理士】
【氏名又は名称】岡沢 理華
(72)【発明者】
【氏名】湯本 好英
(72)【発明者】
【氏名】大森 和志
【審査官】
谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−241699(JP,A)
【文献】
特開2004−104426(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第01019109(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 19/12
G03B 25/02
G03B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリンドリカルレンズが第一の方向に配列されたレンチキュラーシートと、前記シリンドリカルレンズの表面とは反対側の面に配置されたレンチキュラー画像を有する可変画像表示体において、
前記レンチキュラー画像の元画像は、移動体を被写体として連続して撮影した複数の撮影画像であって、かつ、当該複数の撮影画像に現れる前記移動体の像である被写体画像が、少なくとも前記第一の方向へ移動している前記複数の撮影画像であって、
前記レンチキュラー画像は、
前記複数の撮影画像のそれぞれについて、当該複数の撮影画像に現れる前記被写体画像のサイズが同一となるよう拡縮し、
拡縮後の前記複数の撮影画像について、当該拡縮後の複数の撮影画像の前記被写体画像中の基準部位が同位置となるよう位置調整して重ね合わせた際に、前記拡縮後の複数の撮影画像のうち所定数が重なる領域で、かつ、前記被写体画像を含む領域をトリミングし、
トリミングされた各前記撮影画像からそれぞれライン状に抽出され、各前記シリンドリカルレンズのそれぞれ対応する位置に配列された表示用画像列により構成されることを特徴とする可変画像表示体。
【請求項2】
前記複数の撮影画像に含まれる一の撮影画像に現れる被写体画像を基準被写体画像とし、前記複数の撮影画像に含まれる他の撮影画像に現れる被写体画像が、前記基準被写体画像と同一サイズとなるよう、前記他の撮影画像を拡縮することを特徴とする請求項1に記載の可変画像表示体。
【請求項3】
前記複数の撮影画像のうち、前記被写体画像のサイズが最も大きく現れている撮影画像を前記一の撮影画像とすることを特徴とする請求項2に記載の可変画像表示体。
【請求項4】
前記移動体の移動方向のサイズA1と、
前記移動体が撮影地点に最も近付いた際に撮影された撮影画像を前記一の撮影画像とし、かつ、この際の前記移動体と前記撮影地点の直線距離X1と、
前記一の撮影画像を撮影した際の前記移動体と前記撮影地点とを結ぶ直線と、前記他の撮影画像を撮影した際の前記移動体と前記撮影地点とを結ぶ直線とが成す角度θ1と、
に基づいて、拡縮率を算出することを特徴とする請求項2又は3に記載の可変画像表示体。
【請求項5】
前記他の
撮影画像を前記第一の方向に式1で得られる第一の拡縮率で拡縮し、
前記他の
撮影画像を前記第一の方向と直交する第二の方向に式2で得られる第二の拡縮率で拡縮することを特徴とする請求項4に記載の可変画像表示体。
【数1】
【請求項6】
複数のシリンドリカルレンズを第一の方向に配列して成るレンチキュラーシートと作用して可変画像を表示するレンチキュラー画像を形成するレンチキュラー画像形成方法において、
前記レンチキュラー画像の元画像は、移動体を被写体として連続して撮影した複数の撮影画像であって、かつ、当該複数の撮影画像に現れる前記移動体の像である被写体画像が、少なくとも前記第一の方向へ移動している前記複数の撮影画像であって、
前記複数の撮影画像のそれぞれについて、当該複数の撮影画像に現れる前記被写体画像のサイズが同一となるよう拡縮する工程と、
拡縮後の前記複数の撮影画像について、当該拡縮後の複数の撮影画像の前記被写体画像中の基準部位が同位置となるよう位置調整して重ね合わせた際に、前記拡縮後の複数の撮影画像のうち所定数が重なる領域で、かつ、前記被写体画像を含む領域をトリミングする工程と、
トリミングされた各前記撮影画像からそれぞれライン状に抽出され、所定順に配列された画像列を形成する工程と、
を有することを特徴とするレンチキュラー画像形成方法。
【請求項7】
前記複数の撮影画像に含まれる一の撮影画像に現れる被写体画像を基準被写体画像とし、前記複数の撮影画像に含まれる他の撮影画像に現れる被写体画像が、前記基準被写体画像と同一サイズとなるよう、前記他の撮影画像を拡縮することを特徴とする請求項6に記載のレンチキュラー画像形成方法。
【請求項8】
前記複数の撮影画像のうち、前記被写体画像のサイズが最も大きく現れている撮影画像を前記一の撮影画像とすることを特徴とする請求項7に記載のレンチキュラー画像形成方法。
【請求項9】
前記移動体の移動方向のサイズA1と、
前記移動体が撮影地点に最も近付いた際に撮影された撮影画像を前記一の撮影画像とし、かつ、この際の前記移動体と前記撮影地点の直線距離X1と、
前記一の撮影画像を撮影した際の前記移動体と前記撮影地点とを結ぶ直線と、前記他の撮影画像を撮影した際の前記移動体と前記撮影地点とを結ぶ直線とが成す角度θ1と、
に基づいて、拡縮率を算出することを特徴とする請求項7又は8に記載のレンチキュラー画像形成方法。
【請求項10】
前記他の
撮影画像を第一の方向に式1で得られる第一の拡縮率で拡縮し、
前記他の
撮影画像を前記第一の方向と直交する第二の方向に式2で得られる第二の拡縮率で拡縮することを特徴とする請求項9に記載のレンチキュラー画像形成方法。
【数1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のシリンドリカルレンズが第一の方向に配列されたレンチキュラーシートと、シリンドリカルレンズの表面とは反対側の面に配置されたレンチキュラー画像を有する可変画像表示体、及びレンチキュラー画像の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のシリンドリカルレンズが並列配置されたレンチキュラーシートを用いて視認角度によって絵柄を切り替えて表示するチェンジングやムービングなどの可変画像を表示する技術がある。レンチキュラーシートには、シリンドリカルレンズのそれぞれに対応させたライン状の細分化画像を、レンチキュラーシートの各シリンドリカルレンズと反対側の面に配置させる。これにより、ユーザーがシリンドリカルレンズを介して画像を視認すると、視認される画像が見る角度を変えることにより切り替わり動画のように観察することが可能になる。
【0003】
このようなレンチキュラーシートを用いた画像表示に関し、たとえば特許文献1には、レンチキュラーレンズに相当するレンチキュラーシートと複数の画像を用いて合成されたサンプリング画像とからなる立体、アニメーション、或いはチェンジング画像表示方式において、画像配列に画像変化の無い部分を抽出した画像を組み込み配列したことで、観察時のクロストークを軽減し、鮮明なチェンジングを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−98948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、移動している電車や車を連続撮影した画像を用いて、可変画像表示を楽しみたい場合がある。この場合、大きく分けて4つの方法がある。
【0006】
第一の方法は、背景は単独(静止)画像を用いて固定し、当該固定された背景画像上で被写体像を動かす方法である。この場合、被写体像は単独画像を左右に動かしてもよいし、複数の画像を合成してもよい。しかし、この方法では、背景に変化がなく、合成画像であることがわかりやすく臨場感はない。被写体が移動するため、車輪の回転の様子や汽車の煙など被写体の細部の再現が困難だという問題がある。
【0007】
第二の方法は、複数画像を用いて背景を合成して生成し、生成された合成背景画像を固定して、この上で被写体像を動かす方法である。具体的には、背景の移動が無いように位置を合わせて背景の合成画像を生成固定する。そしてこの上で被写体の画像を動かす。被写体像は固定画像(静止画合成)でも複数画像の合成でもよい。この方法では、被写体が左右に移動するため被写体が移動していることは表現できるが、やはり、被写体が移動するため、車輪の回転の様子や汽車の煙など被写体の細部の再現が困難だという問題がある。
【0008】
第三の方法は、単独の被写体画像を固定し、背景のほうを動かす方法である。この方法によれば、被写体をシャープに再現できるが、車輪の回転の様子や汽車の煙など被写体の細部の変化がないため、面白みに欠ける。
【0009】
第四の方法は、複数画像を用いて被写体像を固定して合成する。つまり、被写体像を固定し、背景と被写体共に複数画像を合成する方法である。この方法によれば、被写体をシャープにくっきりと見せながら、動きに伴う車輪の回転の様子や汽車の煙など被写体の細部を再現でき、臨場感を出す事ができるという利点がある。しかし、撮影時におけるカメラと被写体の距離の変化に伴って、被写体の大きさが撮影画像ごとに違って写る。そして、このような撮影画像を使用して、被写体の合成画像を生成し固定し、背景の合成画像だけが動くように画像を設計して可変表示用のレンチキュラー画像を作成すると被写体の大きさの変化が目立つ。例えば、可変画像表示において左から右へ動画のように移動する電車や車が、左から右へと移動する間に、電車や車の大きさが伸びたり縮んだり変化するように見えてしまい、違和感がある。
【0010】
本発明の目的は、上記第四の方法における問題等に鑑みて、可変画像を違和感なく表示できる可変画像表示体及びレンチキュラー画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の可変画像表示体は、複数のシリンドリカルレンズが第一の方向に配列されたレンチキュラーシートと、前記シリンドリカルレンズの表面とは反対側の面に配置されたレンチキュラー画像を有する可変画像表示体において、
前記レンチキュラー画像の元画像は、移動体を被写体として連続して撮影した複数の撮影画像であって、かつ、当該複数の撮影画像に現れる前記移動体の像である被写体画像が、少なくとも前記第一の方向へ移動している前記複数の撮影画像であって、前記レンチキュラー画像は、
前記複数の
撮影画像のそれぞれについて、当該複数の
撮影画像に現れる
前記被写体画像のサイズが同一となるよう拡縮し、拡縮後の前記複数の
撮影画像について、当該拡縮後の複数の
撮影画像の前記被写体画像中の基準部位が同位置となるよう位置調整して重ね合わせた際に、前記拡縮後の複数の
撮影画像のうち所定数が重なる領域で、かつ、前記被写体画像を含む領域をトリミングし、トリミングされた各前記
撮影画像からそれぞれライン状に抽出され、各前記シリンドリカルレンズのそれぞれ対応する位置に配列された表示用画像列により構成されることを特徴とする。
【0012】
前記複数の
撮影画像に含まれる一の
撮影画像に現れる被写体画像を基準被写体画像とし、前記複数の
撮影画像に含まれる他の
撮影画像に現れる被写体画像が、前記基準被写体画像と同一サイズとなるよう、前記他の
撮影画像を拡縮するよう構成してもよい。
【0013】
前記複数の
撮影画像のうち、前記被写体画像のサイズが最も大きく現れている
撮影画像を前記一の
撮影画像とするよう構成してもよい。
【0014】
前記移動体の移動方向のサイズA1と、前記移動体が撮影地点に最も近付いた際に撮影された撮影画像を前記一の
撮影画像とし、かつ、この際の前記移動体と前記撮影地点の直線距離X1と、前記一の
撮影画像を撮影した際の前記移動体と前記撮影地点とを結ぶ直線と、前記他の
撮影画像を撮影した際の前記移動体と前記撮影地点とを結ぶ直線とが成す角度θ1と、に基づいて、拡縮率を算出するよう構成してもよい。
【0015】
前記他の
撮影画像を前記第一の方向に式1で得られる第一の拡縮率で拡縮し、前記他の
撮影画像を前記第一の方向と直交する第二の方向に式2で得られる第二の拡縮率で拡縮するよう構成してもよい。
【数1】
【0016】
本発明のレンチキュラー画像形成方法は、
複数のシリンドリカルレンズを第一の方向に配列して成るレンチキュラーシートと作用して可変画像を表示するレンチキュラー画像を形成するレンチキュラー画像形成方法において、
前記レンチキュラー画像の元画像は、移動体を被写体として連続して撮影した複数の撮影画像であって、かつ、当該複数の撮影画像に現れる前記移動体の像である被写体画像が、少なくとも前記第一の方向へ移動している前記複数の撮影画像であって、前記複数の
撮影画像のそれぞれについて、当該複数の
撮影画像に現れる
前記被写体画像のサイズが同一となるよう拡縮する工程と、拡縮後の前記複数の
撮影画像について、当該拡縮後の複数の
撮影画像の前記被写体画像中の基準部位が同位置となるよう位置調整して重ね合わせた際に、前記拡縮後の複数の
撮影画像のうち所定数が重なる領域で、かつ、前記被写体画像を含む領域をトリミングする工程と、トリミングされた各前記
撮影画像からそれぞれライン状に抽出され、所定順に配列された画像列を形成する工程と、を有することを特徴とするよう構成してもよい。
【0017】
前記複数の
撮影画像に含まれる一の
撮影画像に現れる被写体画像を基準被写体画像とし、前記複数の
撮影画像に含まれる他の
撮影画像に現れる被写体画像が、前記基準被写体画像と同一サイズとなるよう、前記他の
撮影画像を拡縮するよう構成してもよい。
【0018】
前記複数の
撮影画像のうち、前記被写体画像のサイズが最も大きく現れている
撮影画像を前記一の
撮影画像とするよう構成してもよい。
【0019】
前記移動体の移動方向のサイズA1と、前記移動体が撮影地点に最も近付いた際に撮影された撮影画像を前記一の
撮影画像とし、かつ、この際の前記移動体と前記撮影地点の直線距離X1と、前記一の
撮影画像を撮影した際の前記移動体と前記撮影地点とを結ぶ直線と、前記他の
撮影画像を撮影した際の前記移動体と前記撮影地点とを結ぶ直線とが成す角度θ1と、に基づいて、拡縮率を算出するよう構成してもよい。
【0020】
前記他の
撮影画像を第一の方向に式1で得られる第一の拡縮率で拡縮し、前記他の
撮影画像を前記第一の方向と直交する第二の方向に式2で得られる第二の拡縮率で拡縮するよう構成してもよい。
【数1】
【発明の効果】
【0021】
本発明の可変画像表示体によれば、違和感のない可変画像を表示できる。
本発明のレンチキュラー画像形成方法によれば、違和感のない可変画像を表示可能なレンチキュラー画像を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の可変画像表示体の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の可変画像表示体の他の例を示す概略図である。
【
図5】拡縮後の撮影画像の一例を示す説明図である。
【
図6】拡縮後の撮影画像に対するトリミングの説明図である。
【
図7】トリミング後の撮影画像の一例を示す説明図である。
【
図8】トリミング後の撮影画像から作成された表示用画像列とレンチキュラー画像の一例を示す説明図である。
【
図9】表示用画像列に基づいて形成したレンチキュラー画像の一例を示す拡大概略図である。
【
図10】レンチキュラー画像が配置された可変画像表示体の一例を示す説明図である。
【
図11】
図10に示すレンチキュラー画像を示す概略平面図である。
【
図12】撮影パラメータに基づいて算出される拡縮率の算出方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、本発明は、その効果を奏する限りにおいて種々変形(各実施例を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0024】
図1は、本発明の可変画像表示体の一例を示す概略図、
図2は、本発明の可変画像表示体の他の例を示す概略図である。
本発明の可変画像表示体100は、
図1、2に示すように、半円筒形状のシリンドリカルレンズが並列配置されたレンチキュラーシート10と、レンチキュラー画像20により構成される。レンチキュラー画像20は、シリンドリカルレンズの表面とは反対側の面に配置されていればよい。
また、可変画像表示体100は、例えば、
図2に示すような画像形成媒体30にレンチキュラー画像20を形成し、これをレンチキュラーシート10と重ね合わせて構成してもよい。画像形成媒体30は、例えば、紙、木板、フィルム、金属等である。
【0025】
本実施形態では、本発明の画像の一例として、例えば、汽車等の被写体を連続して複数枚撮影した撮影画像を元画像とし、元画像を本発明の画像の一例として説明する。
【0026】
図3は、撮影画像の一例を示す説明図である。
図4は、基準被写体画像の一例を示す説明図である。
図5は、拡縮後の撮影画像の一例を示す説明図である。
図6は、拡縮後の撮影画像に対するトリミングの説明図である。
図7は、トリミング後の撮影画像の一例を示す説明図である。
図8は、トリミング後の撮影画像から作成された表示用画像列とレンチキュラー画像の一例を示す説明図である。
【0027】
本実施形態による可変画像表示体100は、複数のシリンドリカルレンズが第一の方向に配列されたレンチキュラーシート10と、シリンドリカルレンズの表面とは反対側の面に配置されたレンチキュラー画像20を有する可変画像表示体100である。レンチキュラー画像20は、複数の画像の一例である撮影画像20(i)、20(ii)、20(iii)、20(iv)(以下、撮影画像20(i)、20(ii)、20(iii)、20(iv)を、「撮影画像20(i)〜20(iv)」と言う場合がある。)のそれぞれについて、当該複数の撮影画像20(i)〜20(iv)に現れる被写体画像21のサイズが同一となるよう、各複数の撮影画像20(i)〜20(iv)を拡縮し、拡縮後の撮影画像20(i)'、20(ii)'、20(iii)'、20(iv)'(以下、「拡縮後の撮影画像20(i)'、20(ii)'、20(iii)'、20(iv)'」を、「拡縮後の撮影画像20(i)’〜20(iv)’」と言う場合がある。)について、当該拡縮後の複数の撮影画像20(i)’〜20(iv)'の被写体画像中の基準部位21aが同位置となるよう位置調整して重ね合わせた際に、拡縮後の複数の撮影画像20(i)'〜20(iv)'のうち所定数が重なる領域で、かつ、被写体画像を含む領域をトリミングし、トリミングされた各画像からそれぞれライン状に抽出され、各シリンドリカルレンズのそれぞれ対応する位置に配列された表示用画像列20(i)''a、20(i)''b、20(i)''c、20(i)''d、…、20(iv)''f、20(iv)''g、20(iv)''hにより構成される。
【0028】
なお、図において、構成を理解し易くするために撮影画像20(i)〜20(iv)の数、レンチキュラーシートのシリンドリカルレンズの数は省略して図示している。さらに、実際の撮影画像には後述する「被写体画像21」のみならず背景も写っているが、図示を省略している。
【0029】
図3に示すように、移動する汽車を被写体として連続して複数枚撮影した撮影画像20i〜20ivを可変画像の元画像として説明する。撮影画像20i〜20ivに複数の被写体が写っている場合、任意の被写体の画像を被写体画像21とする。ここで、「被写体画像」とは、後述する撮影画像の拡縮処理において基準となる画像である。好ましくは、撮影画像20i〜20iv中、動きを違和感なく鮮明に見せることを所望する被写体の画像を被写体画像21とする。被写体画像21は、元画像である撮影画像20i〜20ivの其々でサイズが異なる。
図3は、撮影画像20i〜20iv中、汽車の画像を被写体画像21とした例である。
【0030】
そして、撮影画像20(i)〜20(iv)に現れる被写体画像21のサイズが同一となるよう、撮影画像20(i)〜20(iv)を拡大又は縮小(拡縮)する。
図5に拡縮後の撮影画像20(i)’〜20(iv)’の例を示す。
図5のように、拡縮後の撮影画像20(i)’〜20(iv)’中に現れる被写体画像21のサイズは同一である。
【0031】
撮影画像20(i)〜20(iv)の拡縮方法は、被写体画像21のサイズが同一となればどのような方法であってもよい。例えば、撮影画像20(i)〜20(iv)のうち、任意の撮影画像(本発明の一の画像の一例)に現れる被写体画像を基準被写体画像とし、任意の撮影画像(一の撮影画像)以外の他の撮影画像(本発明の他の画像の一例)に現れる被写体画像が、上記基準被写体画像と同一サイズとなるよう、他の撮影画像を拡縮するよう構成してもよい。
【0032】
特に、被写体画像のサイズが最も大きく現れている撮影画像を任意の撮影画像(一の撮影画像)とすることが好ましい。
図3の例では、撮影画像20(iv)に現れる被写体画像21が最も大きなサイズで現れているため、撮影画像20(iv)中の被写体画像21を基準被写体画像とし、他の撮影画像20(i)、20(ii)、20(iii)を拡大した(
図5)。
【0033】
具体的には、
図4に示すように、撮影画像20(iv)中の被写体画像21について、レンチキュラーシートに配列されるシリンドリカルレンズの配列方向と同じ方向である第一の方向のサイズX、当該第一の方向と直交する方向である第二の方向のサイズYを測定する。測定結果に基づいて、他の撮影画像20(i)、20(ii)、20(iii)中に現れる被写体画像21の第二の方向のサイズがY、第一の方向のサイズがXとなるよう、他の撮影画像20(i)、20(ii)、20(iii)を拡大する。
【0034】
なお、本実施形態の例では、第一の方向(
図4中、縦方向)が、撮影画像と重ね合される際のレンチキュラーシートのシリンドリカルレンズの配列方向に相当する。
【0035】
次に、拡縮後の撮影画像20(i)'〜20(iv)'について、被写体画像21が重なるよう重ね合わせてトリミングする。
具体的には、被写体画像21中に基準部位21aを定め当該基準部位21aが同位置となるよう位置調整して重ね合わせる。
図5及び
図6の例では、被写体画像である汽車の像のうち、汽車の煙突の先端を基準部位21aとして位置合わせを行った(
図5及び
図6中の星印部分)。
【0036】
位置合わせの後、撮影画像20(i)'〜20(iv)'のうち所定数が重なる領域で、かつ、被写体画像21を含む領域でトリミングする。
図6の例では、撮影画像20(i)'〜20(iv)'の全てが重なる領域をトリミングした。トリミング後の撮影画像20(i)''、20(ii)''、20(iii)''、20(iv)''を
図7に示す。以下、トリミング後の撮影画像20(i)''、20(ii)''、20(iii)''、20(iv)''を、「トリミング後の撮影画像20(i)''〜20(iv)''」と言う場合がある。
【0037】
なお、
図6のように全てが重なる領域をトリミングしてもよく、或いは、完成される可変画像表示に与える影響等を鑑みてトリミング領域を決定すればよい。即ち、全ての撮影画像20(i)'〜20(iv)'が重なっていなくても、完成される可変画像表示に必須と考える所定数の撮影画像が重なっていればよい。
【0038】
トリミング後の撮影画像20(i)''〜20(iv)''から画像列を抽出してレンチキュラー画像20を形成する。なお、撮影画像20(i)''〜20(iv)''から画像列を抽出してレンチキュラー画像20を形成する工程は、従来公知のレンチキュラー画像の形成方法と同様であるためここでは簡単な説明に留める。
【0039】
先ず、
図8に示すように撮影画像20(i)''〜20(iv)''をそれぞれライン状に抽出し、所定順に配列して画像列を形成する。
図8に示す例ではシリンドリカルレンズの対応する位置に表示用画像列として配列される。
具体的には、撮影画像20(i)''から、表示用画像列20(i)''a、20(i)''b、20(i)''c、20(i)''d、20(i)''e、20(i)''f、20(i)''g、20(i)''hを抽出する。
撮影画像20(ii)''から、表示用画像列20(ii)''a、20(ii)''b、20(ii)''c、20(ii)''d、20(ii)''e、20(ii)''f、20(ii)''g、20(ii)''hを抽出する。同様に、撮影画像20(iii)''からも表示用画像列20(iii)''a〜20(iii)''hが抽出され、撮影画像20(iv)''からも表示用画像列20(iv)''a〜20(iv)''hが抽出される。
【0040】
そして、抽出された表示用画像列を各シリンドリカルレンズに対応するよう配列させ、レンチキュラー画像20(20a、20b、20c、20d、20e、20f、20g、20h)(以下、「レンチキュラー画像20(20a、20b、20c、20d、20e、20f、20g、20h)」を、「レンチキュラー画像20(20a〜20h)」と言う場合がある。) を形成する。
【0041】
図9は、表示用画像列に基づいて形成したレンチキュラー画像の一例を示す拡大概略図である。
図10は、レンチキュラー画像20(20a〜20h)が配置された可変画像表示体100の一例を示す説明図である。
図11は、
図10に示すレンチキュラー画像20(20a〜20h)を示す概略平面図である。
【0042】
図9乃至
図11に示すように、n番目のシリンドリカルレンズに対応した位置には、撮影画像20(i)''から抽出された表示用画像列20(i)''aと、撮影画像20(ii)''から抽出された表示用画像列20(ii)''aと、撮影画像20(iii)''から抽出された表示用画像列20(iii)''aと、撮影画像20(iv)''から抽出された表示用画像列20(iv)''aが配置され、レンチキュラー画像20aを形成している。また、(n+1)番目のシリンドリカルレンズに対応した位置には、撮影画像20(i)''から抽出された表示用画像列20(i)''bと、撮影画像20(ii)''から抽出された表示用画像列20(ii)''bと、撮影画像20(iii)''から抽出された表示用画像列20(iii)''bと、撮影画像20(iv)''から抽出された表示用画像列20(iv)''bが配置され、レンチキュラー画像20bを形成している。他のシリンドリカルレンズ下でも同様に画像列が配列されてレンチキュラー画像20形成している。
【0043】
このような画像列群によって形成されたレンチキュラー画像20をレンズ側(
図11中左側)から観察した場合、観察する角度によって、撮影画像20(i)''〜撮影画像20(iv)''の何れかのみが表示され、角度を変えることで見える画像が変わり動画のように見える。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の可変画像表示体によれば、各撮影画像に現れる撮影対象(被写体)の画像である被写体画像のサイズを同一化した後にレンチキュラー画像を形成したので、被写体が電車や車等の移動体であっても、被写体のサイズの変化がなく、違和感のない可変画像を表示できる。撮影画像に現れる被写体画像を使用するので、撮影画像毎に被写体画像に変化がある場合にも、この変化を逃すことなく表現できる。
【0045】
上述した手法では、撮影画像20(i)〜20(iv)中の被写体画像21の第一の方向のサイズ
X、当該第一の方向と直交する方向である第二の方向のサイズ
Yを測定し、この測定結果に基づいて撮影画像20(i)〜20(iv)を拡縮したが、撮影条件から拡縮率を算出してもよい。
【0046】
例えば、撮影画像が、上記実施形態の如く移動体を連続して撮影した撮影画像である場合について説明する。すなわち、移動体Aと撮影地点Cが最も近付いたときの直線距離をX1とし、この際に撮影された撮影画像を上記一の画像とする。そして、上記他の画像が撮影された際の移動体Aと撮影地点Cの直線距離X2と上記直線距離X1とが成す角をθ1とする。そして、移動体Aの移動方向のサイズA1がわかれば、これら直線距離X1、成す角θ1、サイズA1を撮影パラメータとし、当該撮影パラメータに基づいて、上記他の画像の拡縮率を算出することができる。
【0047】
図12は、撮影パラメータに基づいて算出される拡縮率の算出方法の一例を示す説明図である。
移動体Aの移動方向のサイズをA1、移動体Aが撮影地点Cと最も近付いた地点をPointP(1)、地点PointP(1)で移動体Aを撮影した際の移動体Aと撮影地点Cの直線距離をX1、移動体Aが地点PointP(2)で撮影された際の移動体Aと撮影地点Cの直線距離をX2、直線X1と直線X2との成す角をθ1とする。
【0048】
予め移動体AのサイズA1、移動体Aが撮影地点Cと最も近付いた地点PointP(1)の直線X1、直線X1と直線X2との成す角θ1を取得しておく。そして、これら既知の撮影パラメータであるサイズA1、直線X1、角θ1に基づいて、地点PointP(1)で撮影した際の撮影画像を一の撮影画像とし、地点PointP(2)で撮影した際の撮影画像を他の撮影画像として、当該他の画像を拡縮する際の拡縮率を求めることができる。
【0049】
具体的には、地点PointP(2)で撮影した際の撮影画像(他の画像)を第一の方向に下記の式1で得られる第一の拡縮率で拡縮し、かつ、第一の方向と直交する第二の方向に下記の式2で得られる第二の拡縮率で拡縮する。第一の方向は、移動体Aの移動方向に直交する方向であり、第二の方向は、移動体Aの移動方向である。
【数1】
【0050】
なお、本実施形態の例では、第二の方向が移動体の移動方向である(
図12中、横方向)。そして、第二の方向に直交する第一の方向(
図12中、縦方向)が、撮影画像と重ね合される際のレンチキュラーシートのシリンドリカルレンズの配列方向に相当する。
【0051】
以上説明したように、撮影パラメータとして、移動体AのサイズA1、移動体Aが撮影地点Cと最も近付いた地点PointP(1)の直線X1、直線X1と直線X2との成す角θ1をあらかじめ計測して取得しておき、これらの撮影パラメータを用いて他の撮影画像の拡縮率を得ることができる。
【0052】
得られた拡縮率により他の撮影画像を拡縮し、上述した手法により被写体画像(ここでは移動体Aの像)で重ね合わせ、トリミングを行ない、レンチキュラー画像を得る。これにより、各撮影画像に現れる被写体画像のサイズを同一化した後にレンチキュラー画像を形成することができ、被写体が電車や車等の移動体であっても、被写体のサイズの変化がなく、違和感のない可変画像を表示できる。撮影画像に現れる被写体画像を使用するので、撮影画像毎に被写体画像に変化がある場合にも、この変化を逃すことなく表現できる。
【0053】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、被写体が電車や車等の移動体であっても違和感のない可変画像を表示できる可変画像表示体及びレンチキュラー画像形成方法に対し、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
100・・・可変画像表示体
10・・・レンチキュラーシート
20(20a、20b、20c、20d、20e、20f、20g、20h)・・・レンチキュラー画像
21・・・被写体画像
21a・・・基準部位
20(i)、20(ii)、20(iii)、20(iv)・・・撮影画像 (画像)
20(i)'、20(ii)'、20(iii)'、20(iv)'・・・拡縮後の撮影画像
20(i)''、20(ii)''、20(iii)''、20(iv)''・・・トリミング後の撮影画像
【要約】
【課題】 可変画像を違和感なく表示できる可変画像表示体及びレンチキュラー画像形成方法を提供する。
【解決手段】 複数のシリンドリカルレンズが第一の方向に配列されたレンチキュラーシート10と、前記シリンドリカルレンズの表面とは反対側の面に配置されたレンチキュラー画像20を有する可変画像表示体100において、レンチキュラー画像20は、複数の画像のそれぞれについて当該複数の画像に現れる被写体画像のサイズが同一となるよう拡縮する。次いで、拡縮後の複数の画像の被写体画像中の基準部位が同位置となるよう位置調整して重ね合わせた際に所定数が重なる領域かつ被写体画像を含む領域をトリミングしてそれぞれからライン状に抽出し配列された画像列により構成される。
【選択図】
図4