(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電塗装ガンには、給電ケーブルだけでなく、塗料を供給するためのホースとエアを供給するためのホースも繋がっている。そのため、静電塗装ガンを取り回す際に、これらのケーブルやホースが邪魔になり、塗装作業時の操作性低下を招く虞がある。この対策としては、静電塗装ガンに電池を取り付け、この電池を電源として高電圧発生器に給電する方法が考えられる。この方法によれば、給電用のケーブルを接続せずに済むので、その分、静電塗装ガンを取り回し易くなる。しかし、塗装ブースは防爆域であるため、消耗した電池を交換する際には、静電塗装ガンを非防爆域まで移動させなければならず、作業性が良くない。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電池等の蓄電部材の消耗対策を防爆域内で行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明である静電塗装ガンは、
塗料を吐出するノズルと、
塗料に静電気を印加する高電圧発生器と、
充電可能であり、前記高電圧発生器に電力を供給する蓄電部材と、
前記蓄電部材に接続された受電器とを備えて構成され、
非防爆域に設けた充電用電源からの電力を無接点で前記受電器に送電する送電器により、前記蓄電部材が充電されるようになっているところに特徴を有する。
【0007】
第2の発明である静電塗装ガンの充電装置は、
静電塗装ガンに設けられて
高電圧発生器に電力を供給する蓄電部材を充電するための充電装置であって、
前記静電塗装ガンに設けられ、前記蓄電部材に接続された受電器と、
非防爆域に設けた充電用電源に接続され、前記受電器に無接点で送電可能な送電器とを備えているところに特徴を有する。
【0008】
第3の発明である静電塗装装置は、
電力を供給されることにより機能する塗装用機器と、
前記塗装用機器に設けられた充電可能な蓄電部材と、
前記塗装用機器に設けられ、前記蓄電部材に接続された受電器と、
非防爆域に設けた充電用電源に接続され、前記受電器に無接点で送電可能な送電器とを備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
第1及び第2の発明では、送電器から静電塗装ガンの受電器への送電が無接点で行われるので、蓄電部材が消耗したときには、蓄電部材を静電塗装ガンに取り付けたまま防爆域内で充電することができる。このように、第1及び第2の発明によれば、蓄電部材の消耗対策を防爆域内で行うことができる。
【0010】
また、第3の発明では、送電器から塗装用機器の受電器への送電が無接点で行われるので、蓄電部材が消耗したときには、蓄電部材を塗装用機器に取り付けたまま防爆域内で充電することができる。このように、第3の発明によれば、蓄電部材の消耗対策を防爆域内で行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)第1の発明の静電塗装ガンは、前端部に前記ノズルが設けられて内部に前記高電圧発生器が収容された銃身部と、前記銃身部の後端部から下方へ延出して作業者により把持されるグリップとを備えており、前記蓄電部材が前記グリップの内部に形成されていてもよい。この構成によれば、比較的重量のある蓄電部材がグリップ内に配置されるので、静電塗装ガンの重心位置がグリップに近くなって重量バランスが良好となり、作業者への負担が軽減される。
【0013】
(2)第1の発明の静電塗装ガンは、前記ノズルにエアを供給するためのエア流路を有しており、前記エア流路が、前記蓄電部材の外面に臨むように形成されていてもよい。この構成によれば、給電中や充電中に温度上昇する蓄電部材を、エア流路を流れるエアによって冷却することができる。
【0014】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1〜
図3を参照して説明する。
【0015】
<静電塗装装置>
本実施例の静電塗装装置の全体構成を説明する。
図1に示すように、静電塗装装置は、二次電池41(請求項に記載の蓄電部材)を内蔵した静電塗装ガン10(請求項に記載の塗装用機器)と、静電塗装ガン10に塗料を供給するための塗料用ポンプ11と、静電塗装ガン10に洗浄液を供給するための洗浄液用ポンプ12と、静電塗装ガン10に加圧エアを供給するためのエア供給源13を備えている。静電塗装ガン10、塗料用ポンプ11、洗浄液用ポンプ12、エア供給源13は、塗装ブース(防爆域A)内に配されている。
【0016】
塗料用ポンプ11から静電塗装ガン10に至る塗料供給路14には、切換弁15が設けられている。切換弁15には手元スイッチ16(請求項に記載の塗装用機器)が接続されている。手元スイッチ16も、静電塗装ガン10等と同様、防爆域A内に配置されている。手元スイッチ16には、二次電池51(請求項に記載の蓄電部材)が取り付けられている。作業者が手元スイッチ16を操作すると、二次電池51から切換弁15のソレノイド(図示省略)に電力が供給され、切換弁15が、静電塗装ガン10に対して塗料を供給する状態と洗浄液を供給する状態とに切り替わるようになっている。
【0017】
塗料供給路14のうち切換弁15よりも上流側には流量計17(請求項に記載の塗装用機器)が設けられている。流量計17も、静電塗装ガン10等と同様、防爆域A内に配置されている。流量計17にも、静電塗装ガン10及び手元スイッチ16と同様に、二次電池61(請求項に記載の蓄電部材)が取り付けられている。この二次電池61の電力により、流量計17が塗料の流量を計測するようになっている。静電塗装ガン10、手元スイッチ16、及び流量計17に取り付けられている二次電池41,51,61は、後述する充電装置40,50,60によって充電されるようになっている。
【0018】
<静電塗装ガン10>
静電塗装ガン10は、作業者が掴んで塗装作業を行うハンドガンである。
図2,3に示すように、静電塗装ガン10は、ガン本体20と、高電圧発生器35と、電源装置30を備えて構成されている。ガン本体20は、電気的絶縁性を有する合成樹脂製の銃身部21と、電気伝導性を有する合成樹脂製のグリップ22とを備えている。グリップ22の上端部は銃身部21の後端部に組み付けられている。作業者はグリップ22を掴むことによって塗装作業を行うようになっている。銃身部21の前端部には、塗料と霧化用エアとパターン用エアを吐出するためのノズル23が取り付けられている。
【0019】
銃身部21の前端部には、ノズル23に塗料を供給するための塗料供給チューブ24の下流端部が接続されている。塗料供給チューブ24の上流端は、グリップ22の下端部に取り付けたブラケット25を介すことにより、塗料供給ホース26の下流端部に接続されている。塗料供給チューブ24と塗料供給ホース26は上記塗料供給路14を構成しており、塗料供給ホース26の上流端は切換弁15に接続されている。また、グリップ22内と銃身部21内には、ノズル23にエアを供給するためのエア流路27が形成されている。エア流路27の上流端は、グリップ22の下端面においてエア供給ホース28に接続されている。エア供給ホース28は、上記エア供給源13に接続されている。
【0020】
銃身部21の前端部には、ノズル23から吐出される塗料に高電圧を印加するための電極29が取り付けられている。銃身部21の内部には、静電塗装に適した高電圧の直流電力を電極29に供給するための高電圧発生器35が収容されている。また、銃身部21の後端部とグリップ22には、高電圧発生器35に交流の電力を供給するための電源装置30が収容されている。銃身部21に取り付けたトリガーを操作すると、バルブ(図示省略)が開弁状態となり、塗料とエアがノズル23に供給されるとともに、電源装置30から高電圧発生器35へ電力供給が行われて電極29が高電圧となる。これにより、高電位に印加された塗料が、エアにより霧化されるとともに所定のパターンに成形された状態で噴出し、被塗物(図示省略)に塗着される。
【0021】
図3に示すように、電源装置30は、発振回路31、直流電源としての二次電池41、及び2つのスイッチング素子32を備えて構成されている。発振回路31は、制御部(図示省略)からの指令信号に基づいてパルス状の駆動信号を生成する。この駆動信号により、スイッチング素子32が二次電池41の出力を正側と負側に切り替えるので、低電圧の交流電圧が発生する。この交流電圧は高電圧発生器35に供給される。
【0022】
高電圧発生器35は、昇圧トランス36、倍電圧整流回路37(コッククロフト・ウォルトン回路)、及び出力抵抗38を備えて構成されている。電源装置30から高電圧発生器35に供給された交流電圧は、昇圧トランス36で昇圧された後、倍電圧整流回路37により昇圧及び整流され、10kV〜60kV程度の高電圧に変換される。そして、倍電圧整流回路37で昇圧・整流された直流の高電圧は、出力抵抗38を介して電極29に供給される。
【0023】
電源装置30を構成する二次電池41の下端部には、静電塗装ガン10用の充電装置40を構成する受電器42が配置されている。二次電池41と受電器42は、一体化されて電池パック70を構成している。電池パック70は、全体として上下方向に長いブロック状をなし、グリップ22内に形成した収容空間71に収容されている。収容空間71の後面側は、グリップ22の外部へ開放され、収容空間71に対して電池パック70を着脱するための開口部72となっている。開口部72はカバー73で塞がれ、カバー73はビス(図示省略)等でグリップ22に固定される。カバー73が固定されることにより、開口部72とカバー73との嵌合部分がシール部材74により気密状に保持される。
【0024】
また、収容空間71内の電池パック70は移動規制状態に保持されている。電池パック70の上面には、二次電池41に形成された一対の出力端子(図示省略)が設けられている。一方、収容空間71の天井面には、昇圧トランス36に接続された弾性撓み可能な一対の入力端子(図示省略)が設けられている。電池パック70を収容空間71に収容すると、一対の入力端子が一対の出力端子に対して弾性的に接触する。
【0025】
エア流路27は、グリップ22内で上下方向に配されているとともに銃身部21内で前後方向に配されている。エア流路27は、グリップ22内において電池パック70の前面に沿うように上下方向に延びた主流路75と、グリップ22内において電池パック70の前後両面及び左右両面を全周に亘って包囲する周回流路76とを備えている。周回流路76は、収容空間71の内周面を全周に亘って浅く凹ませた形態であり、電池パック70の外周面に臨んでいる。また、周回流路76は、その全高さ範囲において主流路75と連通しているので、収容空間71とエア流路27も連通している。エアホースから主流路75の下端部(上流端部)に流入したエアの一部は、電池パック70の外周面に接触しながら周回流路76を通過して主流路75に戻る。周回流路76を流れるエアは、電池パック70から熱を奪う。
【0026】
<充電装置40,50,60>
本実施例の静電塗装装置は、静電塗装ガン10に内蔵されている二次電池41を充電するための充電装置40を備えている。充電装置40は、上記のように二次電池41に接続された状態で静電塗装ガン10に取り付けられている受電器42と、静電塗装ガン10の外部に配された送電器43とを備えて構成されている。送電器43は、静電塗装ガン10と同様、防爆域A内の所定の位置に固定して設けられている。送電器43は、非防爆域Bに配置されている商用交流電源77(請求項に記載の充電用電源)に接続されている。
【0027】
静電塗装装置は、手元スイッチ16に取り付けられている二次電池51を充電するための充電装置50を備えている。この充電装置50は、二次電池51に接続された状態で手元スイッチ16に取り付けられている受電器52と、手元スイッチ16の外部に配された送電器53とを備えて構成されている。送電器53は、手元スイッチ16と同様、防爆域A内の所定の位置に固定して設けられている。手元スイッチ16用の送電器53は、静電塗装ガン10用の送電器43と同じ商用交流電源77(請求項に記載の充電用電源)に接続されている。
【0028】
静電塗装装置は、流量計17に取り付けられている二次電池61を充電するための充電装置60を備えている。充電装置60は、二次電池61に接続された状態で流量計17に取り付けられている受電器62と、流量計17の外部に配された送電器63とを備えて構成されている。送電器63は、可撓性を有する給電ケーブル78を介すことにより、上記の商用交流電源77(請求項に記載の充電用電源)に接続されている。送電器63は、流量計17と同じく防爆域A内に配されていて、給電ケーブル78の長さの範囲内で自在に移動させることができるようになっている。
【0029】
これらの充電装置40,50,60は、受電器42,52,62と送電器43,53,63が接近すると、商用交流電源77からの電力が送電器43,53,63から受電器42,52,62へ送電され、受電器42,52,62に接続されている二次電池41,51,61を充電する。送電器43,53,63から受電器42,52,62への電力伝送は、非接触(無接点)で行われる。非接触電力伝送の方法としては、送電器43,53,63のコイル(図示省略)に電流を流して受電器42,52,62のコイル(図示省略)に起電力を発生させる電磁誘導方式や、送電器43,53,63に流した電流を電磁波に変換しアンテナ(図示省略)を介して受電器42,52,62に送信する電波方式等を用いることができる。したがって、送電器43,53,63と受電器42,52,62を、充電のために接近させたり充電後に遠ざけたりする際に、接点同士が接触・離間することがない。
【0030】
<実施例の作用>
静電塗装ガン10の二次電池41の容量が少なくなった場合には、静電塗装ガン10を防爆域A内における所定の充電位置まで移動させ、グリップ22の受電器42を充電装置40の送電器43に接近させる。手元スイッチ16の二次電池51の容量が少なくなった場合は、手元スイッチ16を防爆域A内における所定の充電位置まで移動させ、手元スイッチ16の受電器52を充電装置50の送電器53に接近させる。また、流量計17の二次電池61の容量が少なくなった場合は、充電装置60の送電器63を、防爆域A内で移動させ、流量計17の受電器62に接近させる。上記のように送電器43,53,63と受電器42,52,62とを接近させると、商用交流電源77から供給された電力が、送電器43,53,63から受電器42,52,62へ非接触(無接点)で伝送され、二次電池41,51,61が充電される。
【0031】
<実施例の効果>
本実施例の静電塗装装置は、電力を供給されることにより機能する塗装用機器(静電塗装ガン10、手元スイッチ16、流量計17)と、塗装用機器に設けられた充電可能な二次電池41,51,61と、塗装用機器に設けられた二次電池41,51,61を充電するための充電装置40,50,60とを備えている。充電装置40,50,60は、二次電池41,51,61に接続された状態で塗装用機器に設けられた受電器42,52,62と、防爆域A内に配置された受電器42,52,62とを備えて構成されている。受電器42,52,62は、非防爆域Aに配置された商用交流電源77に接続され、この商用交流電源77から供給された電力を無接点で受電器42,52,62に送電するようになっている。この充電装置40,50,60により、二次電池41,51,61が充電される。
【0032】
塗装用機器(静電塗装ガン10、手元スイッチ16、流量計17)の二次電池41,51,61を充電する際には、送電器43,53,63から受電器42,52,62への送電が無接点で行われる。したがって、二次電池41,51,61が消耗した場合には、二次電池41,51,61を塗装用機器に取り付けたまま防爆域A内で充電を行うことができる。このように、本実施例の静電塗装装置及び充電装置40,50,60によれば、二次電池41,51,61の消耗対策(充電)を防爆域A内で行うことができる。また、蓄電部材を充電するための電力源である商用交流電源77は、非防爆域Bに配置されている。
【0033】
また、静電塗装ガン10は、前端部にノズル23が設けられて内部に高電圧発生器35が収容された銃身部21と、銃身部21の後端部から下方へ延出して作業者により把持されるグリップ22とを備えており、このグリップ22内に収容空間71が形成されている。この構成によれば、比較的重量のある二次電池41(電池パック70)が、作業者によって把持されるグリップ22内に配置されるので、静電塗装ガン10の重心位置がグリップ22に近くなる。これは、静電塗装ガン10の重量バランスが、グリップ22を掴んでいる作業者にとって良好であることを意味するので、作業者への負担が軽減される。
【0034】
また、静電塗装ガン10は、ノズル23にエアを供給するためのエア流路27を有しており、エア流路27を構成する主流路75と周回流路76が、二次電池41(電池パック70)の外面に臨むように形成されている。この構成によれば、高電圧発生器35への給電中に温度上昇する二次電池41を、エア流路27を流れるエアによって冷却することができる。
【0035】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、静電塗装ガン(二次電池)の蓄電部材をエアによって冷却するようにしたが、エア流路は蓄電部材から離れた位置を通る経路で形成されていてもよい。
(2)上記実施例では、蓄電部材(二次電池)をガン本体(グリップ)内部に収容したが、蓄電部材の一部がガン本体の外部に露出していてもよい。
(3)上記実施例では、静電塗装ガンの蓄電部材(二次電池)をグリップに配置したが、蓄電部材は銃身部に配置してもよい。
(4)上記実施例では、蓄電部材として、電極での化学反応によって電気エネルギーを蓄える二次電池を用いたが、蓄電部材は、イオン分子によって電荷を蓄える電気二重層コンデンサであってもよい。
(5)上記実施例では、充電用電源として商用交流電源を用いたが、充電用電源は、商用交流電源に限らず、発電機等であってもよい。
(6)上記実施例では、静電塗装ガンが作業者に操作されるハンドガンである場合について説明したが、本発明は、静電塗装ガンがロボットやレシプロケータ等によって駆動される自動ガンである場合にも適用できる。
(7)上記実施例では、送電器を防爆域に設置しているが、送電器を非防爆域に設置し、防爆域と非防爆域とを仕切る壁越しに電力伝送を行ってもよい。