(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロッドレンズアレイは、屈折率がその中心軸から外周に向けて連続的に低下する屈折率分布を有する複数の柱状のロッドレンズを、それらの中心軸を平行にして少なくとも1列に配列したものであって、
前記各ロッドレンズが、それぞれ光軸方向に沿って入射側端部領域の中心屈折率と出射側端部領域の中心屈折率とが等しく、かつ前記入射側端部領域と前記出射側端部領域との間の中間領域の中心屈折率が前記入射側端部領域と前記出射側端部領域の中心屈折率より高くなる屈折率の分布特性を有する、請求項1に記載のイメージセンサーユニット。
【背景技術】
【0002】
従来より、ファクシミリ、複写機、イメージスキャナー、プリンター等の画像読取装置や他の様々な光学デバイスには、原稿の画像を光学的に読み取って電気信号に変換するために、等倍結像光学系の密着型イメージセンサー(CIS)が広く使用されている。CISは、2枚の基板の間に多数の円柱状のロッドレンズを、それらの中心軸を互いに平行にして1列又は2列以上に配列したロッドレンズアレイを備える(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ロッドレンズは、その中心軸から外周に向けて屈折率が連続的に低くなる屈折率分布を持つように設計される。ロッドレンズは当初、ロッド状のガラス材料を紡糸成形し、イオン交換処理又は陽イオンの熱相互交換により屈折率分布を付与して製造されるガラス製レンズが主流であった(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
現在は、比較的低コストで、屈折率分布を精密に制御できるプラスチック製ロッドレンズが多く採用されている(例えば、特許文献3を参照)。
【0005】
等倍光学系のロッドレンズは、縮小光学系のレンズに比べて、焦点深度が小さいという特徴がある。そのため、写真フィルムのような透明原稿をガイド手段等でプラテンガラス上面から僅かに浮かせて設置したとき、焦点がぼやけてしまう虞があった。そこで、通常の印刷物のような反射原稿用と透明原稿用に、焦点位置が異なる2列のレンズアレイ及びそれらに対応した2列の画像読み取り素子アレイを備えた画像読取ユニットが提案されている(例えば、特許文献4を参照)。
【0006】
更に、原稿面の凹凸や浮き等による原稿面上の照射光量の変動を抑制するために、ロッドレンズアレイの両側に2つの照明装置を対向配置したイメージセンサーユニットが知られている(例えば、特許文献4を参照)。このイメージセンサーユニットは、レンズアレイの原稿側焦点を挟んで、一方の照明装置の光軸とレンズアレイの光軸との交点を遠い側に、他方の照明装置の光軸とレンズアレイの光軸との交点を近い側に、それぞれレンズアレイの有効被写界深度aに対してa/2以下の距離に配置し、レンズアレイの光軸に沿って有効被写界深度aの範囲内で各照明装置の光量変動を10%以内に設定して、高い照射光量と読取り光量の変動抑制とを図っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
基本的に、上記光学デバイスには小型化の強い要求があり、同様にCISも、原稿等の被写体と像との距離即ち結像距離を短くして小型化を図ることが要求されている。他方、CISは、原稿の浮き等によって原稿面とロッドレンズとの距離が多少変動しても鮮明な画像を読み取れるように、ロッドレンズの焦点深度をできるだけ深く設定することが必要である。
【0009】
特許文献4記載の画像読取ユニットのように、焦点位置が異なる各2列のレンズアレイと画像読み取り素子アレイとを組み込むと、第一に装置全体が大型化複雑化し、部品点数が増加し、かつ高価格になる。しかも、いずれの列のレンズアレイも焦点深度は小さいままで何ら変わらないから、原稿の折れ等による原稿面の浮き量の変動に対応することはできない。
【0010】
図7は、正立等倍結像系における従来のロッドレンズの結像を模式的に示している。同図において、ロッドレンズ1は、半径r
0一定、レンズ長Z
0の円柱状レンズで、その入射端及び出射端に平坦に研磨された入射面2及び出射面3を有する。ロッドレンズ1は、その屈折率が中心軸における屈折率N1から半径方向に向けて連続的に低下している。原稿面4上の点像P0から出た光は、ロッドレンズ1の入射面2から入射して、該ロッドレンズ内を光軸方向に一定の周期で蛇行して進み、出射面3から出射して、受光素子の受光面5上に点像I0を結像する。ここで、点像P0と入射面2との距離即ち作動距離L0は、点像I0と出射面3との距離に等しい。
【0011】
ロッドレンズ1の焦点深度は、開口数に反比例し、開口数は、中心の屈折率N1、屈折率分布定数、及びレンズ半径r
0に比例する。従って、中心の屈折率N1及び屈折率分布定数が一定の場合、焦点深度を深くするためには、レンズ半径r
0を小さくしなければならない。しかし、レンズ半径r
0を小さくすると、ロッドレンズアレイの作製上取り扱いや加工が難しくなるだけでなく、ロッドレンズ1の明るさが開口数の2乗に比例して急激に低下するため、画像の読み取り性能が低下する虞がある。
【0012】
また、ロッドレンズ1の作動距離L0は、レンズ長Z
0に対し正接に変化し、中心の屈折率N1及び屈折率分布定数の平方に反比例する。そのため、中心の屈折率N1及びレンズ半径r
0を一定にして、屈折率分布定数を小さくすると、レンズ長Z
0が一定の場合、作動距離L0が長くなる。その結果、ロッドレンズ1の共役長(物像間距離=Z
0+2L0)が長くなり、光学系全体の長さが長くなるので、ロッドレンズアレイ及びこれを備えたイメージセンサーの小型化を図ることはできない。そこで、レンズ長Z
0を短くして、作動距離L0を長くしないようにすると、ロッドレンズ1の視野半径が小さくなる。そのため、周期的な光量むらを発生させる虞があるので、好ましくない。
【0013】
そこで、本願発明者らは、屈折率がその中心軸から外周に向けて連続的に低下する屈折率分布を有する複数の柱状のロッドレンズを、それらの中心軸を平行にして少なくとも1列に配列し、各ロッドレンズが、それぞれ光軸方向に沿って入射側端部領域の中心屈折率と出射側端部領域の中心屈折率とが等しく、かつ中間領域の中心屈折率が両端部領域の中心屈折率より高くなる屈折率の分布特性を有するロッドレンズアレイを案出した。このような屈折率分布を付与することによって、ロッドレンズの中間領域では、光が両端部領域よりも短い周期で蛇行して進むので、光路長が実質的に長くなる。従って、ロッドレンズの光軸方向のレンズ長が同じであっても、従来のロッドレンズに比して焦点深度を深く設定することができる。
【0014】
このように焦点深度の深いロッドレンズアレイを使用すると、原稿の浮き等により原稿面とロッドレンズとの距離が従来より大きく変動しても、鮮明な画像が読み取り可能になる。その反面、原稿面における照明光の照度が変動すると、原稿面からの反射光の光量が変動するので、出力画像に濃度変動を発生させ易くなる虞がある。この濃度変動を抑制又は解消するためには、原稿面における照明光の照度が常に安定して十分な大きさでなければならない。
【0015】
一般に拡散光の照度は、光源からの距離が長くなるほど低下するから、照明光は、できる限り原稿面に近い位置から照射することが好ましい。しかしながら、等倍結像光学系のCISは、ロッドレンズアレイの上方に照明系の光学部品を配置するスペースが無い。他方、照明光をロッドレンズアレイの側方から原稿面に対して斜めに浅い角度で照射した場合、照明光の光軸から周辺に離れるほどより大きな割合で照度が低下するので、高出力の光源が必要になる。高出力の光源は、その出射光が直接に又は原稿面以外に反射されてロッドレンズアレイに入射したり、大きな発熱等の不都合を生じる虞がある。
【0016】
特許文献5記載のイメージセンサーユニットは、焦点深度の深いロッドレンズアレイを使用した場合、2つの照明装置の光軸とレンズアレイの光軸との交点が、レンズアレイの光軸に沿ってレンズアレイの原稿側焦点から遠近両側に互いにより大きく離隔する。そのために、両照明装置の合成光量分布が各照明装置の光軸位置において先鋭になり、合成光量が焦点深度内で大きく変動する虞がある。
【0017】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされてもので、その目的は、ロッドレンズアレイを用いて原稿画像を受光センサーに鮮明に結像させるために、ロッドレンズアレイの焦点深度の範囲に亘って原稿面を常に安定して十分な照度で照明することができるイメージセンサーユニット及び画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、原稿面を照明する照明装置と、受光センサーと、原稿面からの反射光を
前記受光センサーに結像させるロッドレンズアレイと
、を備え、照明装置からの照明光の光軸が、ロッドレンズアレイの光軸に沿って原稿側の焦点深度の範囲で、ロッドレンズアレイに最も近い
前記原稿面の位置Aと、ロッドレンズアレイから最も遠い原稿面の位置Bとの間を通過し、
前記位置Aから
前記位置Bまでの全範囲で
前記照明光の照度が、照明光の光軸と
前記ロッドレンズアレイの光軸との交点位置Cにおける照明光の照度に対し
て所定の範囲内にあ
り、照明光の光軸よりもロッドレンズ側に出射される照明光の部分が、隣接するロッドレンズアレイによって部分的に遮光され、かつ、照明光の照射範囲が、照明光の照射方向から前記位置Aを超えないように照明光が配向される、ことを特徴とするイメージセンサーユニットが提供される。
【0019】
このように照明光を配向することによって、焦点深度が深いロッドレンズを用いたイメージセンサーユニットにおいても、焦点深度の全範囲に亘って、鮮明かつ良好な画像を読み取りかつ出力するのに必要かつ十分な照度を常に安定して確保することができる。尚、照明光の光軸がロッドレンズアレイの光軸に沿って最も近い原稿面の位置Aと最も遠い原稿面の位置Bとの間を通過するとは、該照明光の光軸が原稿面の位置A又は位置Bを通過する場合を含まないものとする。
【0020】
本発明に係るイメージセンサーユニットは、これにより、照明光の光軸を原稿面に対してより大きい角度で立たせることができるので、照明光を原稿面に向けてより高い角度から照射でき、照明光の出射範囲をより狭く絞ることができる。その結果、照明装置の出力を抑制しつつ、原稿面を焦点深度の全範囲で要求される十分な照度で照明することができる。
【0021】
また、本発明によれば、原稿を載せるためのプラテンガラスと、上述した本発明のイメージセンサーユニットとを備え、該イメージセンサーユニットにおける原稿面の位置Aがプラテンガラスの原稿載置面により画定される画像読取装置が提供される。これにより、原稿画像を常に安定して鮮明に読み取りかつ出力することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施態様について詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明による好適な本実施態様のイメージセンサーユニットを搭載したイメージスキャナーの概略斜視図である。本実施例のイメージスキャナー10は、フラットベッド方式の画像読取装置であり、概ね矩形箱型の本体部11と、前記本体部にその一端で図示しないヒンジにより開閉自在に取り付けられたプラテンカバー12とを備える。
【0025】
本体部11は、その上面に固定された大型矩形の透明ガラス板からなるプラテンガラス13と、本発明による密着型イメージセンサーユニット14とを備える。プラテンガラス13の上面には、読み取り対象の原稿がその原稿面を下向きにして載置される。プラテンカバー12を閉じると、その内面に設けた押圧部材12aによって、前記原稿面はプラテンガラス上面に密接する。
【0026】
イメージセンサーユニット14は、プラテンガラス13の直ぐ下側に配置され、その上面を前記プラテンガラスの下面に密接させて、保持部材15によって保持されている。前記原稿の読み取り時、前記イメージセンサーユニットは、駆動モーター16によりワイヤー17等を介して駆動され、スライドシャフト18に沿って原稿の読取方向即ち副走査方向に移動する。
【0027】
図2は、本実施態様のイメージセンサーユニット14の基本的な構成を模式的に示している。イメージセンサーユニット14は、照明装置19と、ロッドレンズアレイ20と、受光センサー21とを備える。更にイメージセンサーユニット14は、前記照明装置、ロッドレンズアレイ及び受光センサーを所定位置に装着保持するハウジング(図示しない)を有する。
【0028】
受光センサー21は、センサー基板22上にライン状に実装された多数の光電変換素子23を有する。光電変換素子23には、例えばCMOSイメージセンサーやCCDイメージセンサー等の固体撮像素子が使用される。ロッドレンズアレイ20は、その下端の出射面を前記光電変換素子に整合させるように配置される。ロッドレンズアレイ20は、受光センサー21に一体に装着することもできる。照明装置19から照射された照明光は、原稿24の原稿面で反射されてロッドレンズアレイ20上端の入射面に入射し、前記出射面から出射されて光電変換素子23に結像する。
【0029】
照明装置19は、
図3(A)、(B)に示すように、導光体ロッド25と、前記導光体ロッドを保持するフレーム26と、発光素子27とを有する。導光体ロッド25は、イメージセンサーユニット14の読取ライン幅に対応した長さを有し、例えばガラス、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の高い透光性を有する透明材料で、全長に亘って一様な断面形状に形成されている。本実施態様の導光体ロッド25は、
図3(B)に示す概ね扇形断面を有し、上面に出射面25aを、それに対向する断面逆台形の短い底辺にあたる底面に光散乱面25bを有する。出射面25aは、凸状湾曲面からなるレンズ面に表面加工されている。光散乱面25bは、前記導光体ロッド内に導入された光を乱反射させるように、凹凸に加工されている。
【0030】
フレーム26は、導光体ロッド25の前記断面逆台形の部分に概ね対応する断面形状の溝を有するホルダー部26aを有し、両端部26b、26cには、それぞれ導光体ロッド25の端部を保持するために凹所が対向位置に設けられている。一方の端部26bには、他方の端部26cに向けて発光素子27が装着され、他方の端部26cの前記凹所内には、反射面28が設けられている。導光体ロッド25は、その前記断面逆台形部分をホルダー部26aの前記溝内に収容して、出射面25aを露出させるようにフレーム26に装着される。導光体ロッド25の各端部は、一方の端面25cをフレーム端部26cの前記凹所内の反射面28に当接させ、他方の端面25dをフレーム端部26b内の発光素子27の出射面に近接させて配置する。
【0031】
発光素子27には、例えばLEDを用いられる。イメージスキャナー10が白黒画像のみを出力する場合には、白色LEDが使用され、カラー画像を出力する場合には、RGB3原色に対応して赤色、緑色及び青色のLEDが使用される。これら3色のLEDに代えて、白色LEDと赤色、緑色及び青色の光学カラーフィルターとを組み合わせて、カラー画像を読み取ることもできる。
【0032】
図3には、発光素子27として唯1個のLEDが描かれている。別の実施例では、フレーム26の端部26bに複数のLEDを配置することができる。また、前記フレームの反対側の端部26cにも、反射面28に代えて、LEDを配置することができる。当然ながら、発光素子27には、LED以外に、有機又は無機EL(エレクトリックルミネッセンス)やLD(レーザダイオード)等の様々な公知の発光素子を採用することができる。
【0033】
図3の照明装置19において、発光素子27から発した光は、導光体ロッド25内に端面25dから導入され、その内面で反射しながら長手方向に導光される。反対側の端面25cに至った光は、反射面28で反射され、同様に導光体ロッド25内を長手方向逆向きに導光される。フレーム26を白色にすると、ホルダー部26aの前記溝内や両端部26b、26cにおいて導光体ロッド25から外部に漏れる光を反射して、前記導光体ロッド内部に戻すことができ、光の損失が低減する。
【0034】
光散乱面25bで反射された光は、出射面25aへの入射角が所定の臨界角より小さいと、該出射面から外部に出射する。出射面25aへの入射角が前記所定の臨界角以上の場合、光は該出射面に反射されて導光体ロッド25内に戻る。光散乱面25bの前記凹凸を適当なピッチで形成することによって、導光体ロッド25の全長に亘って一様な光量の照明光が出射面25aから照射される。
【0035】
図4は、イメージセンサーユニット14に使用する線走査用のロッドレンズアレイ20の構成を模式的に示している。ロッドレンズアレイ20は、多数のロッドレンズ30を2枚の基板31,32とスペーサー33,34との間に、前記各ロッドレンズの中心軸が互いに平行となるように、イメージセンサーユニット14の主走査方向に沿って配列した1つのロッドレンズ列を備える。ロッドレンズ30と基板31,32及びスペーサー33,34との隙間は、例えば熱硬化性の黒色シリコン樹脂35が充填され、それにより前記ロッドレンズを接着固定している。
【0036】
本実施態様において、隣接するロッドレンズ同士30は互いに密接するように配置されているが、別の実施例では、一定の隙間を空けて配置することもできる。また、前記ロッドレンズ列は、2列又はそれ以上の複数列に配列することもできる。
【0037】
更に、2枚の基板31,32は、ロッドレンズ30の軸線方向に沿ってその出射側に所定の長さ延長させることができる。この基板31,32の延長部分31a,32aの長さは、例えばロッドレンズ30の作動距離に合わせて設定する。これにより、
図2においてロッドレンズアレイ20を受光センサー21に対して位置決めする際に、前記基板の延長部分31a,32aの下端をセンサー基板22の上面に当接させることによって、より高精度に光電変換素子23に整合させることができる。また、センサー基板22の上面に凹所を設け、該凹所に延長部分31a,32aの下端を挿入することによって、高さ方向だけでなく、平面方向にも位置決め精度を高めることができる。
【0038】
ロッドレンズ30は、中心軸即ち光軸に沿って半径r1の一様な円形断面を有し、前記光軸に直交する両端面を平坦に研磨した円柱状レンズである。各ロッドレンズ30は、その屈折率が中心軸から外周に向けて連続的に低下する屈折率分布を有する。更に、本実施態様のロッドレンズ30は、その屈折率が光軸方向に沿って連続的に変化する屈折率の分布特性を有する。
【0039】
また、ロッドレンズ30は、その円形断面の大きさや形状を軸線方向に沿って変化させることができる。更に、ロッドレンズ30の断面形状は、例えば多角形や十字形など、円形以外の様々な形状にすることができる。
【0040】
図5に示すように、ロッドレンズ30は、光軸方向に沿って入射側の端部領域X1と出射側の端部領域X2とが、中心軸の屈折率即ち中心屈折率が互いにN1で等しい同じ屈折率分布Q1を有する。これに対し、それらの間の中間領域X3は、中心屈折率N2がN1より大きく、入射側及び出射側端部領域X1、X2とは異なる屈折率分布Q2を有するように設計されている。これにより、原稿面24a上の点像P1から反射された光は、ロッドレンズ30の入射面30aから入射側端部領域X1を屈折率分布Q1に従って蛇行して進み、中間領域X3に入ると、光は屈折率分布Q2に従って蛇行して進む。更に、出射側端部領域X2を最初の屈折率分布Q1に従って蛇行して進み、出射面30bから出射して光電変換素子23の受光面23aに点像I1を結像する。
【0041】
光軸方向の屈折率分布は、入射側及び出射側端部領域X1、X2と中間領域X3との間で屈折率が漸次変化するように設定することができる。別の実施例では、屈折率が入射側及び出射側端部領域X1、X2と中間領域X3との間で急峻に変化するように設定することができる。また、中間領域X3において、屈折率が光軸方向に沿って連続的に変化するように設定することができる。その場合、最大となる中心屈折率N2が、必ずしもロッドレンズ30の光軸方向中央位置でなくてもよい。
【0042】
上述したように光軸方向の屈折率分布を付与することによって、入射側端部領域X1及び出射側端部領域X2を光軸方向に蛇行する光の周期は等しい。これに対し、中間領域X3を光軸方向に蛇行する光の周期は、入射側及び出射側端部領域X1、X2よりも短くなる。ここで、点像P1と入射面30aとの距離即ち作動距離L1は、点像I1と出射面25bとの距離に等しい。
【0043】
これを
図7の従来のロッドレンズ1と比較する。両ロッドレンズ1,30は、そのレンズ半径r0、r1が同一で、焦点深度が同じである、即ち作動距離L0、L1が等しいと仮定する。本実施態様のロッドレンズ30は、中間領域X3の長さが、従来のロッドレンズ1の対応する中間領域よりも短くなるので、その分、レンズ長Z1が従来のロッドレンズ1のレンズ長Z0よりも短くなる。その結果、ロッドレンズ30は、同じ焦点深度を維持しつつ、その共役長(=Z
1+2L1)が従来のロッドレンズ1よりも短くなるので、ロッドレンズアレイ20及びイメージセンサー14の小型化を図ることができる。また、レンズ半径が同一であるから、画像の読み取り性能が低下する虞は無い。
【0044】
ロッドレンズ30は、従来技術を利用して製造することができる。例えば、ゲルマニウムドープ石英ガラス材料で製造する場合、屈折率分布を付与するために照射する紫外光の強度を光軸方向に沿って変化させることによって、光軸方向に異なる屈折率分布を付与しえることが知られている。また、プラスチック材料の場合、高分子材料に照射するレーザ光の集光領域を調節することによって、光軸方向に屈折率を変化させ得ることが知られている。
【0045】
図6は、イメージセンサーユニット14における照明装置19の配置及び原稿面24aに照射する照明光の配向状態を示している。ロッドレンズアレイ20は、ロッドレンズ30の光軸30cをプラテンガラス13の上面と直交させ、かつ焦点位置をプラテンガラス13上面より僅か上方に設定して配置される。
【0046】
図5のロッドレンズ30からなるロッドレンズアレイ20を用いることによって、従来より大きい焦点深度ΔLをプラテンガラス13上面の上方に設定することができる。原稿24は、ロッドレンズ30の光軸30cに沿って、該光軸とプラテンガラス13上面とが交差する位置Aと、プラテンガラス13上面から焦点深度ΔLの最深点の位置Bとの間で読み取ることによって、鮮明な出力画像を得ることが可能である。
【0047】
更に前記ロッドレンズアレイは、前記ロッドレンズの光軸30cを受光センサー21のセンサー基板22の上面と直交させかつ光電変換素子23に整合させて、その出射面20bが前記光電変換素子から作動距離L1の高さとなるように配置される。ロッドレンズ30の作動距離L1は従来よりも長いので、センサー基板22の上方には、従来よりも大きい空間が確保される。
【0048】
本実施態様において、照明装置19は、前記副走査方向にロッドレンズアレイ20の片側(図中右側)に、導光体ロッド25の出射面25aをプラテンガラス13上面の位置Aに向けて配置される。センサー基板22の上方に確保された前記大きい空間を利用することによって、照明装置19は、出射面25aから照射される照明光36の光軸即ち照明軸37をプラテンガラス13に対してより大きい角度で立たせることが可能になる。また、照明装置19をセンサー基板22上に設けることも可能である。
【0049】
照明光36は、照明軸37が前記ロッドレンズの光軸30cと、位置Aと位置Bとの間の位置Cで交差するように配向される。ここで、位置Aと位置Bとの間の位置Cとは、位置Cが位置A又は位置Bと一致する場合を含まないことを意味している。そして、照明光36が常に位置A及び位置Bを照射範囲に含むように、かつ位置Aから位置Bまでの焦点深度ΔLの全範囲で所望の十分な照度が得られるように、照明装置19の設定条件を決定する。この設計条件には、例えば発光素子27の出力や特性、導光体ロッド25及び出射面25aの光学性能、照明装置19の構造や各構成要素の配置等が含まれる。
【0050】
ロッドレンズ30の光軸30cに沿って、照度分布が焦点深度ΔLの範囲で急激に変化すると、原稿の濃度(反射率)が一様であっても、原稿24がプラテンガラス13上面に十分に密着していなければ、受光センサー21で得られる出力が変化し、出力画像は副走査方向にムラがあるものになる。これは、焦点深度ΔLの全範囲で照度の変化量を一定の範囲に収めることによって、解消することができる。
【0051】
照明光36は拡散光であり、その照度は一般に照明軸37上をピークとして、該照明軸から外縁に向けて離れるに連れて減衰する。そのため、照明軸37をプラテンガラス13上面の位置Aではなく、上述したように位置Aと位置Bとの間の位置Cに合わせて照明光36を配向することによって、実際に焦点深度ΔLの範囲全体として照度分布の変動をより少なくすることができる。本実施態様では、位置Aと位置Bとの間における照度分布の変動幅を、照明軸37上の位置Cにおける照度を100%として、±5%に設定することが好ましい。
【0052】
通常、画像読取装置のシェーディング補正は、基準となる白基準板をプラテンガラス上面に配置して行う。実際に大量生産可能な製品として使用されている白基準板は、反射率が90%〜95%であるから、この白基準をフルレンジとしてシェーディング補正を行うと、それより反射率の高い原稿は、読取データの出力が全て白側に飽和してしまう。また、前記白基準をフルレンジとしてシェーディング補正を行った後に、照明光の光源の周辺温度が変化して照度が高くなると、白基準と同じ反射率の原稿は、同様に、読取データの出力が全て白側に飽和してしまう。これらの不都合を回避するために、通常は、白基準から得られる読取データの出力に対して、フルレンジの90%程度を目標に、255×0.9≒230階調の出力が得られるようにシェーディング補正を行う。
【0053】
本実施態様では、上述したように、シェーディング補正を行う白基準が配置されるプラテンガラス13上面の位置Aの照度は、照明軸37上の照度に対して±5%の範囲内である。位置Aの照度が最小値の95%であったとすると、プラテンガラス13上面で得られる読取データの出力は、照明軸37上の位置Cにおける出力の95%である。ここで、プラテンガラス13上面で白基準から得られるデータに対して、フルレンジの90%を目標にシェーディング補正を行い、プラテンガラス13上面の位置Aで実際の原稿を読み取った後、原稿が照明軸37の位置Cまで浮き上がったと仮定する。このとき、位置Cから読み取られるデータの出力は、位置Aで読み取ったデータとの間に+5%の差が生じる。この差は、230×0.05≒12階調である。位置Cで読み取られる原稿がプラテンガラス13上面の前記白基準と同じ反射率を有する場合、その出力は、230+12=242階調であり、白側に飽和することはない。また、基準となる出力に対して、12諧調の出力差は、一般的なスキャナ−に要求される出力バラツキの許容範囲内である。
【0054】
更に、位置Aの照度を位置Cにおける照度の95%とし、かつ位置Bの照度が最大値の105%である場合を考える。同様にプラテンガラス13上面の位置Aで実際の原稿を読み取った後、原稿が焦点深度の最深点の位置Bまで浮き上がったと仮定する。このとき、位置Bから読み取られるデータの出力は、位置Aで読み取ったデータとの間に+10%の差が生じる。この差は、230×0.10=23階調である。位置Bで読み取られる原稿がプラテンガラス13上面の前記白基準と同じ反射率を有する場合、その出力は、230+23=253階調であるから、この場合にも、白側に飽和することはない。
【0055】
本実施態様では、位置Aと位置B間における照度分布の変動幅を照明軸37上の位置Cにおける照度の±5%に設定したが、本発明は、これに限定されるものではない。位置Aと位置B間における照度分布は、例えばイメージスキャナー10の設計仕様、使用条件、イメージセンサーユニット14を構成するロッドレンズアレイ20、受光センサー21の性能や特性等に応じて、例えば照明軸37上の照度の90%、85%又は±10%など、適当な範囲に設定することができる。
【0056】
一般に拡散光は、照度が照明軸上をピークとして、外縁側に離れるに連れて減衰し、外縁部分で大きく低下する。上述したように、本実施態様の照明光36も拡散光であるから、出射面25aからの出射範囲を絞り過ぎると、位置A及び/又は位置Bで所望の照度を確保することが難しくなる虞がある。従って、照明光36の出射面25aからの出射範囲は、位置A及び位置Bよりも幾分外側の領域を含むように設定することが好ましい。
【0057】
このとき、
図6に示すように、照明光36の照明軸37よりもロッドレンズアレイ20側の部分36bが、隣接するロッドレンズアレイ20の側壁で部分的に遮光され、かつその照射範囲がプラテンガラス13上面で位置Aを図中左側に、即ち前記照明光の照射方向と反対向きに超えないように配向する。これにより、照明軸37をプラテンガラス13に対してより大きい角度で立たせるように配置することができる。その結果、照明光36を原稿面24aに向けてより高い角度から照射できるから、照明光36の出射範囲をより狭く絞ることが可能になる。それにより、照明装置19は、光源である発光素子27の出力を抑制しつつ、原稿面を焦点深度の全範囲で常に安定して要求される十分な照度で照明することができる。
【0058】
別の実施態様では、イメージセンサーユニット14は、同じ構成を有する2つの照明装置19を備えることができる。この場合、ロッドレンズアレイ20を挟んで副走査方向の両側にそれぞれ1つの照明装置19を対称に配置する。これにより、各照明装置19を低出力で小型のものにしつつ、焦点深度の全範囲で鮮明な画像の読み取り及び出力に必要かつ十分な照度を確保することができる。
【0059】
また、上記実施態様のイメージスキャナーは、ロッドレンズ及び光電変換素子を1列に配置して原稿を1次元の画像として読み取るラインセンサーであるが、これに限定されるものではない。本発明は、光電変換素子を複数列配置して、原稿を2次元の画像として読み取る面センサーにも、同様に適用することができる。
【0060】
以上、本発明を好適な実施態様に関連して説明したが、本発明は上記実施態様に限定されるものでなく、その技術的範囲において、様々な変更又は変形を加えて実施し得ることは言うまでもない。例えば、前記照明装置及び導光体ロッドは、従来から様々な構造のものが提案されており、原稿の読取幅に沿って一様な光量の照明光を照射し得るものであれば良い。