(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピロリン酸ナトリウム・10水和物に対する前記水に溶解すると吸熱する性質を持つ材料の割合が、0.01〜30重量%である請求項1〜2のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
前記蓄熱装置が、熱源機、蓄熱槽、熱輸送媒体、蓄熱モードで熱輸送媒体が流れる配管および放熱モードで熱輸送媒体が流れる配管を有する蓄熱および放熱が可能な請求項5または請求項6のいずれか1項に記載の蓄熱装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピロリン酸ナトリウム・10水和物は、相変化温度が80℃であるが、家庭用コージェネレーションシステム、温泉熱、太陽熱、地熱等の回収排熱は50℃〜80℃程度であり、これらの蓄熱にピロリン酸ナトリウム・10水和物をそのまま適用することができない。
化石燃料の資源減少、これを使用することによる大気汚染や自然破壊、地球温暖化などの問題から、比較的低い温度の排熱などのエネルギーが大量に放出されてしまうのを防止し、回収してエネルギー源として利用することは、極めて有用であり、要望されている。
本発明の目的は、ピロリン酸ナトリウム・10水和物を主成分とする蓄熱材組成物において、相変化温度を80℃(ピロリン酸ナトリウム・10水和物の相変化温度)より低い温度、より好ましくは60℃より低い温度に調整し、家庭用コージェネレーションシステムの排熱等の蓄熱用途に適用できる蓄熱材組成物、それを用いた蓄熱体及び蓄熱槽中に用いる蓄熱材として蓄熱材組成物を備えた蓄熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)前記課題を解決するため、本発明の蓄熱材組成物は、ピロリン酸ナトリウム・10水和物を主成分とする蓄熱材組成物であって、水に溶解すると吸熱する性質を持つ材料を前記ピロリン酸ナトリウム・10水和物とともに含んでなる組成物である。
【0006】
(2)前記(1)項に記載の蓄熱材組成物においては、前記水に溶解すると吸熱する性質を持つ材料が、その溶解熱がΔH
sol=0.05kJ/g以上のものを含んでなる蓄熱材組成物が好ましい。
【0007】
(3)前記(1)〜(2)項のいずれかに記載の蓄熱材組成物においては、 前記ピロリン酸ナトリウム・10水和物に対する前記水に溶解すると吸熱する性質を持つ材料の割合が、0.01~30重量%であることが好ましい。
【0008】
(4)また、本発明の蓄熱体は、前記(1)〜(3)項のいずれかに記載の畜熱材組成物が容器に充填されてなる蓄熱体である。
【0009】
(5)また、本発明の蓄熱装置は、蓄熱槽中に備えられる蓄熱材組成物が前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の蓄熱材組成物であることを特徴とする。
【0010】
(6)また、本発明の蓄熱装置は、蓄熱槽中に備えられる蓄熱材組成物が、蓄熱体の態様で蓄熱槽中に充填されており、前記蓄熱体が前記(4)項に記載の蓄熱体であることを特徴とする。
【0011】
(7) 前記(5)または(6)項のいずれかに記載の前記蓄熱装置が、熱源機、蓄熱槽、熱輸送媒体、蓄熱モードで熱輸送媒体が流れる配管および放熱モードで熱輸送媒体が流れる配管を有する蓄熱および放熱が可能な蓄熱装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蓄熱材組成物、これを含有する蓄熱体、これらを用いた蓄熱装置は、蓄熱材組成物として、蓄熱量が大きいピロリン酸ナトリウム・10水和物を用い、その相変化温度である80℃をより低い温度にすることができ、その結果、80℃より低い温度の熱(排熱なども含む)を回収し、熱供給源とすることができるので、家庭用コージェネレーションシステムの排熱等の比較的低い温度の熱源からの熱の蓄熱にも適用できる蓄熱材組成物、蓄熱体ないし蓄熱装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、ピロリン酸ナトリウム・10水和物と混合して蓄熱材組成物とする水に溶解すると吸熱する性質を持つ材料としては、例えば、下記表1に示されるような化合物が例示される。
【0016】
上記表1において、「クロロ酢酸(α)」はα型結晶のクロロ酢酸を意味し、また化合物名の後ろに記載の(液)は、この化合物が液体状態で水に溶解させた時の吸熱(溶解熱)の値であることを意味している。
【0017】
水に溶解すると吸熱する性質を持つ材料としては、その溶解熱がΔH
sol=0.05kJ/g以上のものが好ましく、ΔH
sol=0.1 kJ/g以上のものがより好ましく、ΔH
sol=0.15 kJ/g以上のものがさらにより好ましい。
なお、溶解熱ΔH
sol(kJ/g)は、101.325kPa、298.15Kにおいて、純物質1gを水に溶解させ、無限希釈させた場合の熱量であり、この値は、化学便覧基礎編改訂5版II-261ページ(編者:日本化学会、発行元:丸善出版(株)、発行年月:2004年2月)に記載のある化合物は、当該記載により、記載がない化合物は熱量計による測定値による。
【0018】
これらの材料のうち、尿素、硫酸アンモニウム、エリスリトールなどが好ましく、コストが安く、溶解度が高く、高い重量比まで混合してもピロリン酸ナトリウム・10水和物の相変化温度を降下させることができる観点から、尿素と硫酸アンモニウムがより好ましく、特に相変化温度の低下効果の点で尿素が最も好ましい。
【0019】
水に溶解すると吸熱する性質を持つ材料の添加量については、ピロリン酸ナトリウム・10水和物の重量に対し0.01〜30重量%が好ましく、0.1〜30重量%がより好ましく、10〜25重量%がさらにより好ましい。0.01重量%より少ない場合には、ピロリン酸ナトリウム・10水和物の相変化温度の降下の効果が小さくなる傾向になり、30重量%より多い場合には、相変化温度の降下の効果が飽和する傾向にあるので、経済的観点から30重量%以下が好ましい。
【0020】
本発明で用いる蓄熱材組成物を調整する方法は、特に限定されるものではないが、ピロリン酸ナトリウム・10水和物及び水に溶解すると吸熱する性質を持つ材料、並びに必要に応じて添加される相分離防止剤、蒸気圧調整剤、伝熱促進剤、腐食防止剤、過冷却防止剤などの添加剤がなるべく均一に分散するよう混合して調整することが好ましく、より好ましくは、ピロリン酸ナトリウム・10水和物の融点以上に加熱して、撹拌しながら水に溶解すると吸熱する性質を持つ材料、並びに必要に応じて添加される上述のような添加剤を添加して混合して調整することが好ましい。
【0021】
必要に応じて添加される添加剤のうち、相分離防止剤としては、例えば、シリカ、キサンタンガム、イソステアリン酸塩、イソステアリルアルコール、アタパルジャイト粘土、スターチ類、アセトンなどが挙げられる。また、蒸気圧調整剤としては、例えば、エチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。伝熱促進剤としては、例えば、膨張化グラファイトなどが挙げられる。腐食防止剤としては、例えば、フェノール類、アミン類、ヒドロキシアミン類などが挙げられる。過冷却防止剤としては、例えば、硫酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸銀、硫酸銀、塩化銀、ヨウ化銀などの無機塩、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸カルシウム、などの長鎖脂肪酸の有機塩などが挙げられる。
【0022】
本発明の蓄熱材組成物は、蓄熱装置においては蓄熱槽中に配置されて用いられるが、その場合、通常、蓄熱材組成物をカプセルその他の適宜の密閉可能な容器に充填した蓄熱体の形にして用いられる。
【0023】
蓄熱体の形状、大きさは、蓄熱材組成物を充填する容器の形状や大きさに依存するが、比較的小型の蓄熱体のカプセルの場合、球形、楕円球形、直方体、立方体、角柱形、円柱形、多面体などで、特に限定するものではないが、好ましくは最短部分の径が1cm以上、最長部分の径が10cm以下の範囲の大きさが目安となる。形状や大きさが異なるカプセル使用の蓄熱体を2種以上併用して用いてもよい。
【0024】
比較的小型のカプセルでなく、長い棒状とか長い板状の外形をした容器に蓄熱材組成物を充填して用いてもよい。この場合、長さは、蓄熱装置において用いる蓄熱槽の大きさに応じて適宜の長さとすればよく、長い棒状の場合の太さ、長い板状の厚さは、特に限定するものではないが1cm以上10cm以下の範囲が目安となる。
【0025】
そのほか、蓄熱材組成物を充填する容器に関しては、特開2006−219557号公報、特開平10−153392号公報、特開平9−152286号公報、特開平8−94269号公報、特開昭59−27192号公報、実開昭58−176号公報などに開示された蓄熱容器などが挙げられる。
【0026】
蓄熱材組成物を充填する容器の素材も、使用環境下で熱輸送媒体に溶解して消失したりせず、使用環境温度に耐え得る程度の耐熱性を有する素材など、使用温度範囲で蓄熱材組成物を封入した状態を保持できる材質で断熱性が特に大きくないものであれば特に制限はなく、通常、金属やプラスチックが用いられ、金属としては、ステンレススチール、銅、鉄、アルミニウムなど、プラスチックとしては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂、フェノール樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本件特許発明の蓄熱体は、蓄熱槽に充填して使用するが、例えば、
図4に示す蓄熱槽のように、カプセルタイプの蓄熱体を多数収容した蓄熱槽、
図5や、特開2004−108761号などに示された長い棒状や板状の蓄熱体複数本を配置収容した蓄熱槽などに収容されて使用される。
【0028】
次に、本発明の蓄熱装置は、蓄熱槽中に備えられる蓄熱材組成物が本発明の蓄熱材組成物であることを特徴とする蓄熱装置であれば、各種の公知の蓄熱装置の態様が採用でき、本発明の目的が達成できない場合を除いて特に制限はない。
【0029】
また、本発明の蓄熱装置は、蓄熱槽中に備えられる蓄熱材組成物が、蓄熱体の態様にして蓄熱槽中に充填されており、前記蓄熱体が前記に記載の本発明の蓄熱体であることを特徴とする蓄熱装置であれば、各種の公知の蓄熱装置の態様が採用でき、本発明の目的が達成できない場合を除いて特に制限はない。
【0030】
また、本発明の蓄熱装置は、より詳細には、熱源機、蓄熱槽、熱輸送媒体、蓄熱モードで熱輸送媒体が流れる配管および放熱モードで熱輸送媒体が流れる配管を有する蓄熱および放熱が可能な蓄熱装置において、蓄熱槽中に備えられる蓄熱体に充填された蓄熱材組成物が前記本発明の蓄熱材組成物からなる。
【0031】
以下に、本発明の蓄熱装置の一例を、
図4を用いて説明する。
図4は本発明の蓄熱装置と、更に熱交換器、熱利用手段(熱負荷)部分までを含めた一態様を説明するための構成概念図である。
【0032】
本発明の蓄熱槽1には、熱輸送媒体が通過し得る支持板9の上部に蓄熱材組成物が充填された球形のカプセル型の蓄熱体2が充填されており、蓄熱モードで熱輸送媒体が流れる配管6(6a、6b)は、蓄熱槽1から熱源機3を介して蓄熱槽1に戻るよう配置されている。蓄熱槽1から熱源機3に熱輸送媒体が流れる配管が6a、熱輸送媒体が熱源機3から蓄熱槽1に戻るよう流れる配管が6bである。
【0033】
一方、放熱モードで熱輸送媒体が流れる配管8(8a、8b)は、蓄熱槽1から熱交換器4を介して蓄熱槽1に戻るよう配置されている。蓄熱槽1から熱交換器4に熱輸送媒体が流れる配管が8a、熱交換器4で放熱された熱輸送媒体が蓄熱槽1に戻るよう配置されている配管が8bであり、7aと7bは、蓄熱モードで熱輸送媒体を蓄熱槽1から熱源機3を介して蓄熱槽1に戻るように蓄熱モードで熱輸送媒体を流す場合と、放熱モードで蓄熱槽1から熱交換器4を介して蓄熱槽1に戻るように、蓄熱モードの場合とは熱輸送媒体が蓄熱槽1を逆方向に流す場合とを切り替えるための三方コックである。
【0034】
蓄熱モードの場合、熱源機3で熱輸送媒体に蓄熱し、蓄熱された熱輸送媒体は、配管6bを通り、蓄熱槽1に入り、蓄熱槽1に充填されている蓄熱体2中の本発明の蓄熱材組成物に放熱することにより蓄熱体2中の本発明の蓄熱材組成物に蓄熱する。かくして、放熱された熱輸送媒体は、配管6aから熱源機3に戻り、蓄熱槽1中の蓄熱材組成物が必要な程度に蓄熱される(通常、蓄熱材組成物の固液相変化を進行させる)まで同じ経路を循環する。蓄熱槽1中の蓄熱材組成物が必要な程度に蓄熱された場合、三方コック7aと7bを切り替えて放熱モードにする。放熱モードでは、配管8bから蓄熱槽1に流れた熱輸送媒体が蓄熱モードで蓄熱された蓄熱槽1中の蓄熱材組成物が充填されている蓄熱体からの熱移動により加熱され、配管8aを通り本発明の蓄熱装置外部の熱交換器4で熱移動され暖房や、給湯、その他の熱負荷(熱利用手段5)に利用される。11aと11bは、熱交換器4から熱利用手段5への熱媒体を循環するための配管である。尚、蓄熱槽1において10は蓄熱体の充填されていない部分である。この部分は必要に応じて設ければよく、支持板9なしにして、この部分まで蓄熱体が充填されている態様としてもよい。また、熱輸送媒体や、熱交換器4から熱利用手段5への熱媒体の循環に必要なポンプは、図示していないが、これらの媒体の必要な流れを達成できればよく、ポンプを設ける必要がある配管の適宜の位置に設置すればよい。
【0035】
なお、図示していないが、
図4において、熱交換器4を設けずに、放熱モードで熱輸送媒体が流れる配管8(8a、8b)を、直接、熱利用手段5に接続した態様、あるいは、例えば特開2006−292206号公報に示される如く、放熱モードの熱輸送媒体を直接給湯などとして利用する態様としてもよいことはもちろんである。
【0036】
また、配管については、
図4に示した蓄熱装置については、三方コック7aと7bと蓄熱槽1をつなぐ部分の配管を蓄熱モードでも放熱モードでも配管を共通にし、蓄熱モードや放熱モードに応じて三方コック7aと7bを、切り替える態様の装置を図示しているが、熱輸送媒体が流れる配管を蓄熱モード専用の配管と放熱モード専用の配管をそれぞれ蓄熱槽1に別々に接続するような、別々の配管としてもよい。この場合には、二方コックを、それぞれの配管の蓄熱槽1との接続近傍、すなわち
図4の蓄熱槽1の上下方向を基準に説明すると、蓄熱モード専用の配管や放熱モード専用の配管の蓄熱槽1との上側の接続近傍と下側の接続近傍それぞれに設ければよい。すなわち、蓄熱モード専用の配管の蓄熱槽1の上側に接続する配管に1つ、下側に接続する配管に1つ、放熱モード専用の配管の蓄熱槽1の上側に接続する配管に1つ、下側に接続する配管に1つの少なくとも計4つのコックを設けて、蓄熱モードでの運転の際は蓄熱モード専用の配管に設けられた上記2つの二方コックを開き、放熱モード専用の配管に設けられた上記2つの二方コックを閉じ、また、放熱モードでの運転の際は蓄熱モード専用の配管に設けられた上記2つの二方コックを閉じ、放熱モード専用の配管に設けられた上記2つの二方コックを開くことになる。
【0037】
本発明の蓄熱装置については、配管は、上述したような機能を達成する蓄熱モードで熱輸送媒体が流れる配管および放熱モードで熱輸送媒体が流れる配管を有していれば、本発明の目的を達成できる限り、必要に応じて、特開2006−292206号に示されるような、バイパス管や、熱源側補助タンク、熱負荷(熱利用手段)側補助タンクなどを設けてもよい。
【0038】
次に、
図5に上記
図4に示した蓄熱槽1とは異なる態様の蓄熱槽の態様を示す概略断面概念図を示した。すなわち
図5では、蓄熱槽1中に充填されている蓄熱体の形状が、球形でなく、板状、ないし、棒状の外形の容器中に本発明の蓄熱材組成物が充填された態様の蓄熱槽である。
【0039】
蓄熱槽1に設置される蓄熱体22が板状、ないし、棒状の外形の容器中に本発明の蓄熱材組成物が充填されており、蓄熱体位置固定具23で各蓄熱体22同士の間に熱輸送媒体が流通する通路を確保するよう蓄熱体22を保持し、蓄熱体22の下部には、熱輸送媒体が通過し得る支持板9を設けている。配管や熱源機、熱交換器、熱利用手段は、
図4と同様であり、蓄熱槽1に設置される蓄熱体22の形状が異なる以外、
図4を用いて説明したと同様の蓄熱装置とすることができ、同様に、蓄熱モードと放熱モードを切り替えて運転し、熱利用手段に熱を供給することができる。
【0040】
以上、図示した態様以外に、本発明の蓄熱装置は、蓄熱槽中に備えられる蓄熱体に充填された蓄熱材組成物が前記本発明の蓄熱材組成物からなる蓄熱槽を有する蓄熱装置であれば、上記具体的に示した態様に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限り、各種の別態様としてもよい。
【0041】
なお、熱源機に供給される熱の熱源としては、特に限定するものではないが、家庭用コージェネレーションシステム(“エコウィル”、“エネファーム”、それらで使用される燃料電池など)の排熱、ヒートポンプからの排熱、その他の比較的低い温度のものを熱源とすることが可能である。支障がない限り、より高温の熱源を使用してもよいことはもちろんである。
【0042】
蓄熱材組成物が凝固するときに発せられる熱の利用手段としては、即ち温熱負荷としては、特に限定されるものではないが、暖房、給湯その他各種の熱を利用する装置などに適用できる。
【0043】
熱輸送媒体としては、蓄熱装置に使用される熱輸送媒体であれば特に限定されるものではないが、代表例としては、水、エチレングリコール水溶液あるいはプロピレングリコール水溶液などの不凍液などが挙げられる。尚、必要に応じて、支障をきたさない範囲で、蓄熱モードで使用される熱輸送媒体と放熱モードで使用される熱輸送媒体を異なる種類のものとすることも可能である。
【実施例】
【0044】
本発明の蓄熱材組成物として、
図1〜
図3に各種添加剤の添加量に対するピロリン酸ナトリウム・10水和物の相変化温度を示す。これらより、水に溶解すると吸熱する性質を持つ材料である尿素(ΔH
sol=0.26kJ/g;ΔH
sol=0.15kJ/g以上の物質例)、エリスリトール(ΔH
sol=0.18kJ/g;ΔH
sol=0.15kJ/g以上の物質例)、硫酸アンモニウム(ΔH
sol=0.05kJ/g;ΔH
sol=0.05kJ/g以上の物質例)をそれぞれピロリン酸ナトリウム・10水和物に添加したところ、添加物が水和水に溶解する際に吸熱するため、添加量に応じて相変化を降下させることが可能となった。
【0045】
図1〜
図3において、各添加物の添加量がピロリン酸ナトリウム・10水和物の重量に対し10重量%の時の相変化温度を抜粋したものを表2にまとめた。
【0046】
尚、ピロリン酸ナトリウム・10水和物と添加物との混合は、ピロリン酸ナトリウム・10水和物を90℃〜100℃に加熱して溶融した状態で、撹拌しながら、添加物粉末を所定量添加し、均一に添加物をピロリン酸ナトリウム・10水和物に分散させたのち、常温にまで冷却して本発明の蓄熱材組成物を作成した。
【0047】
【表2】
【0048】
これより、添加剤の溶解熱に応じて、ピロリン酸ナトリウム・10水和物の相変化温度を下げる効果が発揮されることが分かる。しかるに添加剤の溶解熱(ΔH
sol )が0.05 kJ/g以上が好ましく、0.1 kJ/gがより好ましく、0.15 kJ/gがさらにより好ましい。
【0049】
また、
図1〜3に示すとおり、添加剤の添加量が増加するにつれ、相変化温度を下げる効果も増していく傾向にあるが、30重量%より多く加えた場合、その効果は飽和する傾向にあるので30重量%より多く添加しても経済的観点等から無駄である。しかして、添加剤の添加量については、0.01~30重量%が好ましく、0.1~30重量%がより好ましく、10〜25重量%がさらにより好ましい。
【0050】
これにより、コージェネレーションシステム等の排熱など比較的低い温度の熱の蓄熱用途に適用できる蓄熱材組成物を提供することができた。