(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261263
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】ウコンエキス含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20180104BHJP
A23L 2/38 20060101ALI20180104BHJP
A23L 2/54 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
A23L2/00 T
A23L2/00 B
A23L2/38 C
A23L2/54
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-205125(P2013-205125)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-65938(P2015-65938A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(72)【発明者】
【氏名】石田 亮介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 礼子
(72)【発明者】
【氏名】向田 直弘
(72)【発明者】
【氏名】金 倫希
(72)【発明者】
【氏名】田岡 幸一
【審査官】
中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−004852(JP,A)
【文献】
特開2013−179918(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/140972(WO,A1)
【文献】
特開2009−269927(JP,A)
【文献】
リアルウコン,MINTEL GNPD,2012年11月
【文献】
Dong-ll Sun et al.,Bisacurone inhibits adhesion of inflammatory monocytes or cancer cells to endothelial cells through down-regulation of VCAM-1 expression,International Immunopharmacology,2008年 9月,Vol.8,p1272-1281
【文献】
新製品REVIEW,食品工業 第56巻第1号,鎌田 恒男 株式会社光琳,2012年12月15日,第56巻,p100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
FSTA(STN)
A23L2/00−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料中のビサクロン含量が100gあたり0.15mg〜1.05mgである、ウコンエキスを含有する炭酸飲料。
【請求項2】
pHが4.0以下である、請求項1に記載の炭酸飲料。
【請求項3】
ガス圧が0.6kg/cm2以上である、請求項1又は2に記載の炭酸飲料。
【請求項4】
ウコンエキスを含有し、かつビサクロン含量が100gあたり0.15mg〜1.05mgである原料溶液に炭酸ガスを圧入する工程を含む、ウコンエキス含有炭酸飲料の製造方法。
【請求項5】
炭酸ガスを圧入することを含む、ビサクロン含量が100gあたり0.15mg〜1.05mgであるビサクロン含有ウコンエキス溶液の異味低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウコンに由来する不快な呈味/異味が低減されているウコンエキス含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ウコン(ショウガ科ウコン,Curcuma longa LINNE)は東南アジアを中心に、世界中の熱帯・亜熱帯地域で栽培されるショウガ科ウコン属の植物である。独特な香気と風味を有することから香辛料として、また生薬として古くから用いられている。最近では、根茎に含まれるクルクミンに抗炎症、抗腫瘍、肝機能改善、悪酔いの防止等のさまざまな効果があることが報告され、ウコン又はその抽出物であるウコンエキスは、健康食品としても注目されている。
【0003】
しかしながら、ウコン又はウコンエキスは特有の苦味、後味の残り感、薬っぽさ、ウコンの香り等、喫食に不適な不快な呈味/異味を有することから、摂取しづらいという問題があった。
これまでにウコンに起因する不快な呈味を改善するための方法が開発され報告されている。
【0004】
特許文献1には、クルクミン原料をシクロデキストリンの存在下で処理してクルクミン包接体を形成すること特徴とする、苦味が低減されたクルクミン水溶液の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、ウコンに植物性油及びイーストを混合して発酵させることを特徴とするウコンの苦味除去抑制方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、ウコンの苦味成分を有機溶媒にて抽出することによりウコンの苦味成分を減少させる方法が開示されている。
【0007】
特許文献4には、ウコンと卵殻膜を含有することを特徴とする、苦味がマスキングされて摂食し易い飲食品が開示されている。
【0008】
特許文献5には、ウコン抽出物を含む高機能性健康食品と天然物由来の中性リン脂質を混合して高速回転分散処理を行った後に、超音波分散処理又は超高圧ホモジナイザー分散処理を行うことを特徴とする、当該高機能性健康食品の苦味低減化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-111534号公報
【特許文献2】特開平10-084908号公報
【特許文献3】特開2000-228966号公報
【特許文献4】特開2008-118887号公報
【特許文献5】特許第4634886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1〜5にみられるように、従来のウコン又はウコンエキスの不快な呈味/異味を低減する方法は、主に、その原因となる成分を除去するか、あるいは新たな成分を加えることにより不快な呈味/異味をマスキングするかの二通りに分けられると考えられる。しかし、前者は少なくとも製造工程の煩雑化を招く点で好ましくなく、後者はその効果が不十分である等の問題を有していた。
【0011】
ウコンエキスを含有する飲料を製造する上では、ウコンエキスの製造工程を煩雑化することなく、比較的容易かつ特殊な原料を用いない方法により不快な呈味/異味を低減することが製造コスト等の観点から好ましいといえる。本発明は、比較的容易かつ特殊な原料を用いない方法でウコンに由来する不快な呈味/異味が低減されたウコンエキス含有飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは検討の結果、ウコンエキスの不快な呈味/異味が炭酸を加えることによって大きく改善されることを見出し、不快な呈味/異味が低減されたウコンエキス含有飲料を製造することに成功した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0013】
[1] 飲料中のビサクロン含量が100gあたり0.15mg〜1.05mgである、ウコンエキスを含有する炭酸飲料。
[2] pHが4.0以下である、[1]に記載の炭酸飲料。
[3] ガス圧が0.6kg/cm
2以上である、[1]又は[2]に記載の炭酸飲料。
[4] ウコンエキスを含有し、かつビサクロン含量が100gあたり0.15mg〜1.05mgである原料溶液に炭酸ガスを圧入する工程を含む、ウコンエキス含有炭酸飲料の製造方法。
[5] 炭酸ガスを圧入することを含む、ビサクロン含有ウコンエキス溶液の異味低減方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、比較的容易かつ特殊な原料を用いない方法によりウコンに由来する不快な呈味/異味を低減したウコンエキス含有飲料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】比較例1と実施例1の試験飲料の官能評価結果をまとめたグラフである。
【
図2】比較例2と実施例2の試験飲料の官能評価結果をまとめたグラフである。
【
図3】比較例3と実施例3の試験飲料の官能評価結果をまとめたグラフである。
【
図4】比較例4と実施例4の試験飲料の官能評価結果をまとめたグラフである。
【
図5】比較例2と実施例2、5および6の試験飲料の官能評価結果をまとめたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.ウコンエキス
ウコンエキスとはショウガ科ウコン属の植物に由来する植物原料より得られる抽出物である。該植物原料としては、ショウガ科ウコン属の植物であるCurcuma longa(ウコン)、Curcuma aromatica、Curcuma zedoaria、Curcuma phaeocaulis、Curcuma kwangsiensis、Curcuma wenyujin、及び/又は、Curcuma xanthorrhizaの根茎等の適当な部位を原型のまま、あるいは適当な寸法又は形状にカットしたもの、あるいは粉砕物の形態にしたものを使用することができる。これらの植物原料は適宜乾燥されたものであってよい。
【0017】
ウコンエキスの抽出方法は特に限定されるものではないが、本発明ではウコンに由来する不快な呈味/異味(以下、単に「異味」と称する)を生じさせる成分を除去する等の特別な抽出法を用いる必要はなく、例えば水若しくは親水性有機溶媒又はそれらの混合物である溶媒を用いて植物原料の成分を溶出させることにより抽出を行うことができる。植物原料の成分を溶出させる際には、必要に応じて加熱、攪拌などを行ってもよい。ここで、親水性有機溶媒としては、エタノール、メタノール及びイソプロパノールなどのアルコール、プロピレングリコール、アセトン、アセトニトリルなどが挙げられる。ウコンエキスの抽出に用いる溶媒としては、水若しくはアルコール又はそれらの混合物が好ましい。アルコールとしては特にエタノールが好ましい。水とアルコールを混合した溶媒を用いる場合は、その混合比は特に限定されないが、例えば質量比で水:アルコールが10:90〜90:10の範囲、特に20:80〜50:50の範囲となるようにすることが好ましい。得られたウコンエキスは、必要に応じてさらに加熱又は減圧するなどして抽出溶媒を揮発させてもよい。
【0018】
本発明の飲料は、ウコンエキスを含有し、飲料中のビサクロン含量が100gあたり0.15mg〜1.05mgであることを特徴とする。ビサクロンとは、ビサボラン型セスキテルペン類に分類される化合物であり、下記の平面構造式を有する化合物又はその塩を意味する。ビサクロンは平面構造式中*印で示した位置に不斉炭素を有し、そのため数種の光学異性体が存在するが、本明細書におけるビサクロンとはそのいずれの光学異性体も包含する概念である。
【0020】
ビサクロンが含有されるような条件で抽出されたウコンエキス、特にビサクロン含量が0.15質量%以上となるような条件で抽出されたウコンエキスは、ウコンに由来する異味が特に強いことが多い。異味を生じさせる可能性があるウコンに由来する成分としては、ターメロン、ジヒドロターメロン、フェランドレン、シネオール、ジンギベレン、アズレン、カンファー、ビサクロン、クルクミンなどが挙げられる。本発明の飲料で用いるウコンエキスは、そのような異味成分を含有していてもよい。
【0021】
ウコンエキス中のビサクロンの量は、ウコンエキスを酢酸エチルと混合し、遠心分離して得られた上澄み液から酢酸エチルを減圧留去後、アセトニトリルに溶解した液を分析サンプルとして、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供することにより求めることができる。例えば、HPLCは以下の条件で行うことができる。
・カラム:Thermo ODS HYPERSIL(登録商標)250mm×φ4.6mm(サーモサイエンティフィック社製)
・移動相:65%アセトニトリル(20分)⇒80%アセトニトリル(5分)⇒65%アセトニトリル(10分)
・流量:0.7mL/min
・温度:40℃
・検出波長:242nm
【0022】
本発明の飲料におけるウコンエキスの含有量は特に制限されないが、例えば0.1〜0.7質量%の範囲の量とすることが好ましい。飲料中のビサクロン含量が100gあたり0.15mg〜1.05mgとなる量でウコンエキスを含むのであれば、炭酸により異味を十分に低減させた飲料とすることができる。
【0023】
2.炭酸
本発明の飲料は、上述したウコンエキスを含有する炭酸飲料である。本明細書において炭酸飲料とは、原料溶液に炭酸ガスを圧入した飲料、あるいは炭酸ガスを圧入した水(すなわち炭酸水)で原料溶液を希釈して得られる飲料を意味する。炭酸飲料は飲用時に口腔内や喉に炭酸ガスの発泡による刺激を与えることによって新たな風味を作り出すものであるが、それは必ずしも風味を改善するというものではなく、原料溶液に含まれる成分によっては風味を悪化させる場合もあるといえる。しかしながら、本発明の飲料においては、ウコンに由来する異味が強いウコンエキスであっても、炭酸と組み合わせることによりその異味、すなわちウコン独特の香り、苦味、土臭さ、後味、薬っぽさなどが大きく改善され、消費者が飲用する際の抵抗感が著しく軽減される。本発明は別の側面において、ウコンエキスを含有し且つビサクロン含量が100gあたり0.15mg〜1.05mgである原料溶液に炭酸ガスを圧入する工程、またはウコンエキスを含有する原料溶液を炭酸水で希釈してビサクロン含量を100gあたり0.15mg〜1.05mgとする工程を含むウコンエキス含有炭酸飲料の製造方法、及び炭酸ガスを圧入する工程または炭酸水で希釈する工程を含む、ビサクロン含有ウコンエキス溶液の異味低減方法にも関する。
【0024】
本発明の飲料は、通常、耐圧容器に充填密封した形態で提供する。本発明の飲料における炭酸ガスの量は該容器内におけるガス圧で表すことができる。容器内のガス圧の測定方法は当業者に広く知られており、市販の内圧測定器を用いて測定することができる。本発明の飲料におけるガス圧は、0.6kg/cm
2以上、特に0.7kg/cm
2以上、とりわけ 0.8kg/cm
2以上とすると、十分な異味改善効果が得られるため好ましい。ガス圧の上限値は特に限定されないが、飲用時の刺激が過度にならないためには、5.0kg/cm
2以下、特に3.0kg/cm
2以下、とりわけ2.0kg/cm
2以下、さらには1.2kg/cm
2とすることが好ましい。
【0025】
3.pH値
ウコンに由来する異味はpH値が高いほうが強く感じられる傾向にあるため、本発明の飲料のpH値は4.0以下とすることが好ましい。なお、本明細書におけるpH値は室温20℃で測定された値を意味する。pH値が4.0以下と低い場合には、その酸性度の高さゆえに雑菌等が繁殖しづらく、従って殺菌工程における加熱等に伴うエネルギー消費を抑えることができ、また殺菌工程によるウコンエキスへの負荷を小さくすることができるという利点もある。pH値は4.0未満であるとより好ましい。pH値の下限は特に限定されないが、飲用に適したpH値としては、2.3以上、特に2.9以上、とりわけ3.0以上とすることが好ましい。本発明の飲料のpHは、例えばクエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リン酸、又はこれらの塩等の1種又は2種以上を利用して調整することができる。
【0026】
4.他の成分
本発明の飲料は、ウコンエキスと炭酸以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えばウコン色素が挙げられる。ウコン色素は、ウコンの根茎部分を、温時エタノールで、熱時油脂若しくはプロピレングリコールで、又は室温時〜熱時ヘキサン若しくはアセトンで抽出して得られるものであり、このようにして得られたウコン色素は主にクルクミンを含む。本発明の組成物におけるウコン色素の量は一回の経口摂取量当たり、クルクミンが3〜50mg、より好ましくは5〜40mgとなる量のウコン色素が配合されるのが好ましい。
【0027】
また、本発明の飲料には、飲食品、医薬品などの最終的な形態において許容される成分であって、経口摂取可能な成分を含めることができる。そのような成分としては、甘味料、酸味料、増粘剤、酸化防止剤、ビタミン類、ミネラル類、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤などが挙げられる。また、必要により、色素、香料、保存料、防腐剤、防かび剤などを添加してもよい。
【0028】
甘味料としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、パラチノース、トレハロース、キシロース等の単糖や二糖、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、砂糖混合異性化糖等)、糖アルコール(エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、ソルビトール、還元水飴等)、はちみつ、高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、ステビア、アスパルテーム等)などが挙げられる。
【0029】
酸味料としては、たとえば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、フィチン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸等の有機酸、リン酸等の無機酸、又はこれらのナトリウム塩、カルシウム塩若しくはカリウム塩等が挙げられる。
【0030】
ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE、ナイアシン、イノシトール等が挙げられる。
ミネラル類としては、カルシウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などが挙げられる。
【0031】
増粘剤としては、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、アラビアガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、寒天、ゼラチン、ペクチン、大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
【0032】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、植物性ステロール、サポニン等が挙げられる。
【0033】
酸化防止剤としては、ビタミンC、トコフェロール(ビタミンE)、酵素処理ルチン、カテキン等が挙げられる。
【0034】
上記他の成分は、それぞれ当業者が飲料に通常採用する範囲内の量で適宜配合することができる。
【0035】
5.提供形態及び用途
本発明の飲料は液状の組成物であることが好ましいが、粘性を有する液体であっても、あるいはゲル状のゼリー飲料の形態であってもよい。本発明の飲料は炭酸に起因するガス圧に耐えられる程度の耐圧性を有した容器に充填して提供することが好ましい。飲料用容器としてはポリエチレンテレフタレート(PET)製容器、所謂PETボトルや、金属缶容器等が挙げられる。容器の形態は特に限定されない。また、容器の容量は特に限定されないが、例えば50ml〜500ml(典型的には50ml、100ml、150ml、200ml、250ml、300ml、350ml、400ml、450ml又は500ml)、好ましくは100ml〜200mlとすることができる。飲料を容器に収容する手段は任意であるが、例えば調製した原料溶液を65〜100℃に加熱して殺菌処理を行い、次いで冷却後に炭酸ガスを圧入した後に容器に充填して密封することにより、加熱殺菌済みの容器入り飲料を製造することができる。
【0036】
本発明のウコンエキスを含有する飲料は、ウコンに起因する不快な呈味/異味(例えば、苦味、後味の残り感、薬っぽさ、ウコン特有の香り)が低減されたウコンエキス含有組成物である。本発明におけるウコンエキス含有組成物は、例えば、アルコール摂取後の起床時のいわゆる二日酔い症状(特に、頭重感、アルコール残り感、胃の不快症状)の軽減を目的として飲用しても良い。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
I. ウコンエキスの調製
ウコンエキスはウコン(Curcuma longa)の根茎部分を水を用いて抽出し、得られた抽出液を減圧加熱乾燥して水分を除去することにより調製した。得られたウコンエキス中のビサクロンの量は、乾燥質量にしておよそ0.15質量%であった。
【0039】
II. 試験飲料の調製
表1に記載の配合割合に従って比較例1〜4及び実施例1〜6の試験飲料を調製した。比較例1〜4の試験飲料は各原料を混合した後、実施例1〜6の試験飲料は炭酸水以外の原料を混合した後炭酸水を加える前に、65〜100℃で加熱して殺菌処理を施した。調製した各試験飲料は容器に充填密封した。なお、実施例1〜6の飲料においてガス圧は用いた炭酸水に由来するものである。ガス圧の測定には、内圧測定機(キャンプレッシャーテスター:東洋製罐社製)を用いた。
【0040】
【表1】
【0041】
III. 官能評価
20歳以上50歳以下の健常な男女5名をパネラーとして選定し、比較例1〜4及び実施例1〜6の試験飲料の官能評価を行なった。パネラーは各試験飲料を摂取し、「ウコンの香り」、「ウコンの苦味」、「ウコンの土臭さ」、「ウコンの後味」、「薬っぽさ」の各項目について1〜10段階(1:弱い、10:強い)で点数付けを行った。各項目についてパネラーが付けた点数の平均値を算出した。
【0042】
図1は比較例1と実施例1の試験飲料の官能評価結果をまとめたグラフである。実施例1は、水の一部を炭酸水に置き換えたことにより炭酸ガス圧が0.8kg/cm
2となっている以外は比較例1と同一の組成を有し、いずれもウコンエキスを0.1質量%含有し、従ってビサクロンを0.15×10
-3質量%含有する。実施例1の飲料は比較例1の飲料と比較してウコンの苦み、土臭さ、後味及び薬っぽさが改善されていた。
【0043】
図2は比較例2と実施例2の試験飲料の官能評価結果をまとめたグラフである。実施例2は、水の一部を炭酸水に置き換えたことにより炭酸ガス圧が0.8kg/cm
2となっている以外は比較例2と同一の組成を有し、いずれもウコンエキスを0.7質量%含有し、従ってビサクロンを1.05×10
-3質量%含有する。実施例2の飲料は比較例2の飲料と比較してウコンの苦み、土臭さ、後味及び薬っぽさが改善されており、ウコンの香りについてもわずかながら改善されていた。
【0044】
比較例1〜2及び実施例1〜2の結果から、少なくともビサクロン含量が0.15×10
-3〜1.05×10
-3質量%である範囲において炭酸がウコンの異味を改善する効果を有することを確認することができた。
【0045】
図3は比較例3と実施例3の試験飲料の官能評価結果をまとめたグラフである。実施例3は、水の一部を炭酸水に置き換えたことにより炭酸ガス圧が0.8kg/cm
2となっている以外は比較例3と同一の組成を有し、いずれもウコンエキスを0.7質量%含有し、従ってビサクロンを1.05×10
-3質量%含有する。比較例3及び実施例3は、成分を調整することによりpHを約3.5とした点で上記の他の配合例と異なる。実施例3の飲料は比較例3の飲料と比較してウコンの香り、苦味、土臭さ、後味及び薬っぽさが改善されていた。
【0046】
図4は比較例4と実施例4の試験飲料の官能評価結果をまとめたグラフである。実施例4は、水の一部を炭酸水に置き換えたことにより炭酸ガス圧が0.8kg/cm
2となっている以外は比較例4と同一の組成を有し、いずれもウコンエキスを0.7質量%含有し、従ってビサクロンを1.05×10
-3質量%含有する。比較例4及び実施例4は、成分を調製することによりpHを約3.0とした点で上記の他の配合例と異なる。実施例4の飲料は比較例4の飲料と比較してウコンの香り、苦味、土臭さ、後味及び薬っぽさが改善されていた。
【0047】
比較例2〜4及び実施例2〜4の結果から、少なくとも飲料のpHが4.0以下の範囲において炭酸がウコンの異味を改善する効果を有することを確認することができた。
【0048】
図5は比較例2と実施例2、5および6の試験飲料の官能評価結果をまとめたグラフである。実施例2、5および6は、水の一部を炭酸水に置き換えたことにより炭酸ガス圧がそれぞれ0.8kg/cm
2、1kg/cm
2、1.2kg/cm
2となっている点以外は比較例2と同一の組成を有し、いずれもウコンエキスを0.7質量%含有し、従ってビサクロンを1.05×10
-3質量%含有する。実施例2、5および6の飲料は比較例2の飲料と比較してウコンの香り、苦味、土臭さ、後味及び薬っぽさが改善されていた。これらの結果から、少なくとも飲料のガス圧が0.8 kg/cm
2〜1.2kg/cm
2の範囲において炭酸がウコンの異味を改善する効果を有することを確認することができた。