特許第6261276号(P6261276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261276
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/00 20180101AFI20180104BHJP
   F21S 43/00 20180101ALI20180104BHJP
   F21S 45/00 20180101ALI20180104BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20180104BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20180104BHJP
   F21W 105/00 20180101ALN20180104BHJP
   F21W 107/17 20180101ALN20180104BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20180104BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180104BHJP
【FI】
   F21S8/10 150
   F21S8/10 180
   F21S8/10 142
   F21S8/12 263
   F21W101:027
   F21W101:10
   F21Y115:10
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-213634(P2013-213634)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2015-76364(P2015-76364A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐野 琢万
(72)【発明者】
【氏名】梶山 和希
【審査官】 津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102008005488(DE,A1)
【文献】 特開2007−335301(JP,A)
【文献】 特開2013−134970(JP,A)
【文献】 特開2010−282939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
F21S 8/12
F21V 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子とこの発光素子の前方側に配置されたレンズとを備え、上記発光素子からの直射光を上記レンズで偏向制御することにより所要の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記発光素子と上記レンズとの間に、上記発光素子からの直射光が上記レンズに入射するのを許容する一方、太陽光が上記レンズを介して上記発光素子および/または該発光素子を支持する光源支持部材に到達するのを制限する太陽光制限部材が配置されており、
上記所要の配光パターンとして、上端部にカットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成されており、
上記太陽光制限部材に、上記発光素子からの直射光の一部を上向きに反射させて上記レンズから上記カットオフラインよりも上方へ向かう光として出射させる反射面が形成されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記太陽光制限部材が透明部材として構成されており、
上記太陽光制限部材の表面に複数の拡散レンズ素子が形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記太陽光制限部材における前面の上記反射面以外の領域に黒色塗装が施されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記太陽光制限部材が、金属板に曲げ加工を施すことにより構成されており、
上記反射面が、上記太陽光制限部材の前面の一部に鏡面処理を施すことにより構成されている、ことを特徴とする請求項1または3記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記太陽光制限部材において太陽光を制限するための太陽光制限要素が、灯具正面視において上記発光素子を囲むように環状に配置されている、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の車両用灯具。
【請求項6】
上記発光素子が、透光カバーとランプボディとで形成される灯室内に配置されており、
上記レンズが、上記透光カバーの一部として構成されている、ことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の車両用灯具。
【請求項7】
発光素子とこの発光素子の前方側に配置されたレンズとを備え、上記発光素子からの直射光を上記レンズで偏向制御することにより所要の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記発光素子と上記レンズとの間に、上記発光素子からの直射光が上記レンズに入射するのを許容する一方、太陽光が上記レンズを介して上記発光素子および/または該発光素子を支持する光源支持部材に到達するのを制限する太陽光制限部材が配置されており、
上記車両用灯具が、並列に配置された第1および第2灯具ユニットを備えてなる二輪車用前照灯として構成されており、
上記各灯具ユニットが、上記発光素子、上記レンズおよび上記太陽光制限部材を備えており、
上記第1灯具ユニットが、上記発光素子からの直射光を上記レンズで偏向制御することによりハイビーム用配光パターンを形成するように構成されており、
上記第2灯具ユニットが、上記発光素子からの直射光を上記レンズで偏向制御することによりロービーム用配光パターンを形成するように構成されており、
上記第2灯具ユニットの太陽光制限部材における前面の一部領域に鏡面処理が施されており、
上記一部領域が、上記発光素子からの直射光の一部を上向きに反射させて上記レンズから上記ロービーム用配光パターンのカットオフラインよりも上方へ向かう光として出射させる反射面として構成されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、発光素子からの直射光を、その前方側に配置されたレンズで偏向制御するように構成された車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば「特許文献1」〜「特許文献3」に記載されているように、発光素子からの直射光を、その前方側に配置されたレンズで偏向制御することにより、所要の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具が知られている。
【0003】
これらの車両用灯具においては、そのレンズが、所要の配光パターンを形成するために凸レンズ状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−044683号公報
【特許文献2】特開2007−335301号公報
【特許文献3】特開2007−184239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような車両用灯具に対して、日中の強烈な太陽光が照射されると、そのレンズの集光作用によって発光素子やこれを支持する光源支持部材が高温になってしまい、その機能が損なわれてしまうおそれがある、という問題がある。
【0006】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、発光素子からの直射光を、その前方側に配置されたレンズで偏向制御するように構成された車両用灯具において、太陽光によって発光素子や光源支持部材が不用意に高温になってしまうのを未然に防止することができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、発光素子と上記レンズとの間に所定の太陽光制限部材が配置された構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0008】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
発光素子とこの発光素子の前方側に配置されたレンズとを備え、上記発光素子からの直射光を上記レンズで偏向制御することにより所要の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記発光素子と上記レンズとの間に、上記発光素子からの直射光が上記レンズに入射するのを許容する一方、太陽光が上記レンズを介して上記発光素子および/または該発光素子を支持する光源支持部材に到達するのを制限する太陽光制限部材が配置されており、その上で、
本願第1の発明は、
上記所要の配光パターンとして、上端部にカットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成されており、
上記太陽光制限部材に、上記発光素子からの直射光の一部を上向きに反射させて上記レンズから上記カットオフラインよりも上方へ向かう光として出射させる反射面が形成されている、ことを特徴とするものであり、
本願第2の発明は
記車両用灯具が、並列に配置された第1および第2灯具ユニットを備えてなる二輪車用前照灯として構成されており、
上記各灯具ユニットが、上記発光素子、上記レンズおよび上記太陽光制限部材を備えており、
上記第1灯具ユニットが、上記発光素子からの直射光を上記レンズで偏向制御することによりハイビーム用配光パターンを形成するように構成されており、
上記第2灯具ユニットが、上記発光素子からの直射光を上記レンズで偏向制御することによりロービーム用配光パターンを形成するように構成されており、
上記第2灯具ユニットの太陽光制限部材における前面の一部領域に鏡面処理が施されており、
上記一部領域が、上記発光素子からの直射光の一部を上向きに反射させて上記レンズから上記ロービーム用配光パターンのカットオフラインよりも上方へ向かう光として出射させる反射面として構成されている、ことを特徴とするものである。
【0009】
上記「発光素子」の種類は特に限定されるものではなく、例えば発光ダイオード等が採用可能である。
【0010】
上記「レンズ」は、発光素子からの直射光をレンズで偏向制御することにより所要の配光パターンを形成するように構成されていれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0011】
上記「所要の配光パターン」の種類は特に限定されるものではなく、例えば、ロービーム用配光パターン、ハイビーム用配光パターン、フォグランプ用配光パターン等が採用可能である。
【0012】
上記「太陽光制限部材」は、発光素子からの直射光がレンズに入射するのを許容する一方、太陽光がレンズを介して発光素子および/または光源支持部材に到達するのを制限するように構成されていれば、その具体的な形状や材質あるいは発光素子とレンズとの間において配置される具体的な位置等は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用灯具は、発光素子からの直射光を、その前方側に配置されたレンズで偏向制御することにより、所要の配光パターンを形成するように構成されているが、発光素子とレンズとの間には、発光素子からの直射光がレンズに入射するのを許容する一方、太陽光がレンズを介して発光素子および/または光源支持部材に到達するのを制限する太陽光制限部材が配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0014】
すなわち、太陽光制限部材の存在により、太陽光がレンズを介して発光素子や光源支持部材に到達するのが制限されるので、レンズに日中の強烈な太陽光が照射されるようなことがあっても、そのレンズの集光作用によって発光素子や光源支持部材が高温になってしまうのを未然に防止することができる。
【0015】
その際、日中の強烈な太陽光はレンズに対して斜め上方から照射されるので、太陽光がレンズを介して発光素子や光源支持部材に到達するのを制限するように太陽光制限部材を配置しても、発光素子からの直射光がレンズに入射するのを許容することが十分可能である。
【0016】
このように本願発明によれば、発光素子からの直射光を、その前方側に配置されたレンズで偏向制御するように構成された車両用灯具において、太陽光によって発光素子や光源支持部材が不用意に高温になってしまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより、発光素子や光源支持部材の機能が損なわれてしまうのを未然に防止することができる。
【0017】
上記構成において、太陽光制限部材の構成として、太陽光を制限するための太陽光制限要素が、灯具正面視において発光素子を囲むように環状に配置された構成とすれば、太陽光がレンズを介して発光素子や光源支持部材に到達するのを、より効果的に制限することができる。また、このような構成を採用することにより、太陽光制限部材の剛性を十分に確保することができる。
【0018】
上記構成において、所要の配光パターンとして、上端部にカットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成した上で、太陽光制限部材に、発光素子からの直射光の一部を上向きに反射させてレンズからカットオフラインよりも上方へ向かう光として出射させる反射面が形成された構成とすれば、この反射面からの反射光によって、車両前方路面の上方に設置された頭上標識を照射することができる。
【0019】
その際、太陽光制限部材を金属板に加工を施すことにより構成した上で、その前面の一部に鏡面処理を施すことにより上記反射面を構成すれば、安価な構成で頭上標識の照射を効率的に行うことができる。
【0020】
上記構成において、発光素子が透光カバーとランプボディとで形成される灯室内に配置された構成とした上で、レンズが透光カバーの一部として構成されたものとすれば、コンパクトな灯具構成を実現することができる。また、このような構成を採用した場合には、レンズによって集光した太陽光が発光素子や光源支持部材に到達しやすくなるので、本願発明の構成を採用することが特に効果的である。
【0021】
上記構成において、車両用灯具が、並列に配置された第1および第2灯具ユニットを備えてなる二輪車用前照灯として構成されたものとすることも可能である。
【0022】
その際、これら各灯具ユニットを、発光素子、レンズおよび太陽光制限部材を備えた構成とした上で、第1灯具ユニットとして、発光素子からの直射光をレンズで偏向制御することによりハイビーム用配光パターンを形成する構成とするとともに、第2灯具ユニットとして、発光素子からの直射光をレンズで偏向制御することによりロービーム用配光パターンを形成する構成とすることが可能である。
【0023】
その上で、第1灯具ユニットについては、その太陽光制限部材における前面の全領域に黒色塗装が施された構成とし、一方、第2灯具ユニットについては、その太陽光制限部材における前面の一部領域に鏡面処理が施されるとともに該一部領域以外の領域に黒色塗装が施された構成とした上で、その一部領域を、発光素子からの直射光の一部を上向きに反射させてレンズからロービーム用配光パターンのカットオフラインよりも上方へ向かう光として出射させる反射面として構成すれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0024】
すなわち、第1灯具ユニットと第2灯具ユニットとが、その光学的な機能に基づいて互いに異なる構成を有しているにもかかわらず、外観上の差異を最小限に抑えることができ、これにより灯具全体としての意匠上の統一性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す正面図
図2】上記車両用灯具の第2灯具ユニットを示す正面図
図3図2のIII−III線断面図
図4図2のIV−IV線断面図
図5】上記車両用灯具における第1および第2灯具ユニットの太陽光制限部材を単品で示す斜視図
図6】上記車両用灯具から前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンを透視的に示す図
図7】上記第2灯具ユニットの太陽光制限部材の変形例を示す、図5(b)と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図である。
【0028】
同図に示すように、この車両用灯具10は、二輪車用前照灯であって、左右方向に並列に配置された第1および第2灯具ユニット20、40と、これらを囲むように配置されたパネル部材12とを備えた構成となっている。
【0029】
第1灯具ユニット20は、発光素子22と、この発光素子22の前方側に配置されたレンズ24とを備えた構成となっており、その発光素子22からの直射光をレンズ24で偏向制御することによりハイビーム用配光パターンを形成するように構成されている。
【0030】
第2灯具ユニット40は、発光素子42と、この発光素子42の前方側に配置されたレンズ44とを備えた構成となっており、その発光素子42からの直射光をレンズ44で偏向制御することによりロービーム用配光パターンを形成するように構成されている。
【0031】
まず、第2灯具ユニット40の構成について説明する。
【0032】
図2は、第2灯具ユニット40を示す正面図である。また、図3は、図2のIII−III線断面図であり、図4は、図2のIV−IV線断面図である。
【0033】
これらの図に示すように、この第2灯具ユニット40においては、その発光素子42が、透光カバー52とランプボディ54とで形成される灯室内に配置されている。
【0034】
上記レンズ44は、透光カバー52の一部として構成されており、凸レンズ状に形成されている。その際、このレンズ44の前面44aは、パネル部材12の表面形状に沿った第1の自由曲面で構成されており、その後面44bは、この第1の自由曲面に応じて設定された第2の自由曲面で構成されている。
【0035】
透光カバー52は、レンズ44の外周縁部から後方へ向けて延びる環状の脚部52aを備えている。そして、この透光カバー52は、その脚部52aの後端面においてランプボディ54に固定されている。
【0036】
発光素子42は、白色発光ダイオードであって、その発光チップ42aは横長矩形状(例えば、縦1mm×横4mm程度の矩形)の発光面を有している。この発光素子42は、その発光チップ42aを灯具正面方向へ向けるようにして配置されている。そして、この発光素子42は、樹脂製の光源支持部材48に位置決めされた状態でヒートシンク46に固定されている。光源支持部材48は、灯具正面視において横長矩形状の外形形状を有している。
【0037】
ヒートシンク46は、発光チップ42aの発光中心を通るようにして灯具前後方向に延びる軸線Axと直交する平面に沿って延びる金属板(例えばアルミニウム板)の後面に複数の冷却フィン46aが形成された構成となっている。そして、このヒートシンク46は、その外周縁部においてランプボディ54に固定されている。
【0038】
発光素子42と透光カバー52との間には、発光素子42からの直射光がレンズ44に入射するのを許容する一方、太陽光がレンズ44を介して発光素子42や光源支持部材48に到達するのを制限する太陽光制限部材50が配置されている。
【0039】
この太陽光制限部材50は、光源支持部材48の前方近傍において軸線Axと直交する平面に沿って延びるように配置されており、灯具正面視において発光素子42を囲むように環状に形成されている。
【0040】
図5(b)は、太陽光制限部材50を単品で示す斜視図である。
【0041】
同図にも示すように、この太陽光制限部材50は、金属板に曲げ加工を施すことにより構成されている。その際、この太陽光制限部材50は、灯具正面視において横長矩形状の外形形状を有しており、その大きさは光源支持部材48の外形形状と略同じ大きさに設定されている。また、この太陽光制限部材50は、軸線Axを中心とする横長矩形状の領域が開口部50aとして構成されている。
【0042】
そして、この太陽光制限部材50は、図3において実線で示すように、その開口部50aにおいて発光素子42からの直射光がレンズ44に入射するのを許容する一方、図3において2点鎖線で示すように、その開口部50aの周囲の環状部分において、太陽光がレンズ44を介して発光素子42や光源支持部材48に到達するのを阻止するようになっている。すなわち、本実施形態においては、太陽光制限部材50において太陽光を制限するための太陽光制限要素が、金属製の太陽光制限部材50自体を灯具正面視において発光素子42を囲むように環状に形成することにより構成されている。
【0043】
この太陽光制限部材50には、その上端縁の右側端部(灯具正面視では左側端部)と下端縁の右側端部と左側端縁の上端部との3箇所に、後方へ向けて延びる取付ブラケット50bが延長形成されている。そして、この太陽光制限部材50は、各取付ブラケット50bの後端部においてネジ56を介してヒートシンク46に固定されている。
【0044】
さらに、この太陽光制限部材50には、その下端縁における左右方向の中央部分に、前方へ向けて帯状に延びる突起片50cが延長形成されている。この突起片50cは、太陽光制限部材50の下端縁から前方へ向けて水平に延びるとともに、その先端部が斜め下前方へ向けて延びるように形成されている。
【0045】
この太陽光制限部材50の前面は、突起片50cの先端部に位置する部分が、アルミ蒸着等の鏡面処理が施された反射面50dとして構成されており、それ以外の部分は黒色塗装が施された非反射面50eとして構成されている。
【0046】
反射面50dは、発光素子42からの直射光の一部を上向きに反射させてレンズ44からやや上向きの光として出射させるようになっている。
【0047】
次に、第1灯具ユニット20の構成について説明する。
【0048】
図1に示すように、この第1灯具ユニット20は、基本的に第2灯具ユニット40に対して左右対称の構成を有しているが、そのレンズ24および太陽光制限部材60の構成が第2灯具ユニット40の場合と一部異なっている。
【0049】
すなわち、第1灯具ユニット20のレンズ24は、発光素子22からの直射光を偏向制御してハイビーム用配光パターンを形成するため、その後面を構成する第2の自由曲面の形状が第2灯具ユニット40のレンズ44の場合と異なっている。
【0050】
図5(a)は、第1灯具ユニット20の太陽光制限部材60を単品で示す斜視図である。
【0051】
同図にも示すように、この太陽光制限部材60は、第2灯具ユニット40の太陽光制限部材50に対して左右対称の形状を有しており、太陽光制限部材50と同様の開口部60aと3つの取付ブラケット60bとを備えている。ただし、この太陽光制限部材60は、太陽光制限部材50のような突起片50cは備えておらず、その前面の全領域が黒色塗装が施された非反射面60eとして構成されている。
【0052】
図6は、第2灯具ユニット40から前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPLを透視的に示す図である。
【0053】
このロービーム用配光パターンPLは、基本配光パターンP0と付加配光パターンPAとの合成配光パターンとして形成されている。
【0054】
基本配光パターンP0は、灯具正面方向の消点であるH−Vを通る鉛直線であるV−V線を中心にして左右両側に大きく拡がる横長の配光パターンであって、その上端部には略水平方向に延びるカットオフラインCLが形成されている。その際、カットオフラインCLは、H−Vを通る水平線であるH−H線の僅かに下方に位置するように形成されている。
【0055】
この基本配光パターンP0は、発光素子42からの直射光をレンズ44で偏向制御することにより形成される配光パターンである。
【0056】
これを実現するため、レンズ44においては、第1の自由曲面で構成された前面44aの各位置において目標出射角を設定した上で、発光素子42からレンズ44に到達した光が上記目標出射角に対応する光路でレンズ44に入射するよう、その後面44bを構成する第2の自由曲面の形状が設定されている。
【0057】
一方、付加配光パターンPAは、車両走行路前方の頭上標識OHSを照射するための配光パターンであって、H−H線のやや上方においてV−V線を中心にして左右両側に拡がる横長の配光パターンとして形成されている。
【0058】
この付加配光パターンPAは、発光素子42から出射して太陽光制限部材50の反射面50dで上向きに反射した光によって形成される配光パターンである。
【0059】
その際、この付加配光パターンPAの上下方向の形成位置は、反射面50dの傾斜角度によって調整可能であり、また、この付加配光パターンPAの左右方向の拡がりは、反射面50dの左右幅によって調整可能である。
【0060】
一方、同図において2点鎖線で示す配光パターンは、第1灯具ユニット20からの照射光によって形成されるハイビーム用配光パターンP1である。
【0061】
このハイビーム用配光パターンP1は、H−Vを中心にして左右両側に比較的大きく拡がる横長の配光パターンとして形成されている。
【0062】
そして、このハイビーム用配光パターンP1とロービーム用配光パターンPLとの合成配光パターンとして、ハイビームとしての全体の配光パターンが形成されるようになっている。
【0063】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0064】
本実施形態に係る車両用灯具10は、その第2灯具ユニット40が、発光素子42からの直射光を、その前方側に配置されたレンズ44で偏向制御することにより、ロービーム用配光パターンPLの基本配光パターンP0を形成するように構成されており、その発光素子42は透光カバー52とランプボディ54とで形成される灯室内に配置されているが、そのレンズ44は透光カバー52の一部として構成されているので、第2灯具ユニット40をコンパクトに構成することができる。
【0065】
その上で、この第2灯具ユニット40においては、発光素子42と透光カバー52との間に、発光素子42からの直射光がレンズ44に入射するのを許容する一方、太陽光がレンズ44を介して発光素子42や光源支持部材48に到達するのを制限する太陽光制限部材50が配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0066】
すなわち、太陽光制限部材50の存在により、太陽光がレンズ44を介して発光素子42や光源支持部材48に到達するのが制限されるので、透光カバー52に日中の強烈な太陽光が照射されるようなことがあっても、そのレンズ44の集光作用によって発光素子42や光源支持部材48が高温になってしまうのを未然に防止することができる。
【0067】
その際、日中の強烈な太陽光は、図3において2点鎖線で示すように、透光カバー52に対して斜め上方から照射されるので、太陽光がレンズ44を介して発光素子42や光源支持部材48に到達するのを制限するように太陽光制限部材50を配置しても、発光素子42からの直射光がレンズ44に入射するのを許容することが十分可能である。
【0068】
このように本実施形態によれば、発光素子42からの直射光を、その前方側に配置されたレンズ44で偏向制御するように構成された第2灯具ユニット40において、太陽光によって発光素子42や光源支持部材48が不用意に高温になってしまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより、発光素子42や光源支持部材48の機能が損なわれてしまうのを未然に防止することができる。
【0069】
特に本実施形態においては、レンズ44が透光カバー52の一部として構成されており、このレンズ44によって集光した太陽光が発光素子42や光源支持部材48に到達しやすくなるので、本実施形態の構成を採用することが特に効果的である。
【0070】
また本実施形態においては、太陽光制限部材50において太陽光を制限するための太陽光制限要素が、金属製の太陽光制限部材50自体を灯具正面視において発光素子42を囲むように環状に形成することにより構成されているので、太陽光がレンズ44を介して発光素子42や光源支持部材48に到達するのを、より効果的に制限することができる。また、このような構成を採用することにより、太陽光制限部材50の剛性を十分に確保することができる。
【0071】
以上の点に関しては、第1灯具ユニット20においても同様の作用効果を得ることができる。
【0072】
本実施形態においては、第2灯具ユニット40からの照射光により上端部にカットオフラインCLを有するロービーム用配光パターンPLを形成するようになっているが、その太陽光制限部材50には、発光素子42からの直射光の一部を上向きに反射させてレンズ44からカットオフラインCLよりも上方へ向かう光として出射させる反射面50dが形成されているので、この反射面50dからの反射光によって形成される付加配光パターンPAにより、車両前方路面の上方に設置された頭上標識OHSを照射することができる。
【0073】
その際、太陽光制限部材50は、金属板に加工を施すことにより構成されており、その前面の一部に鏡面処理を施すことにより反射面50dが構成されているので、安価な構成で頭上標識OHSの照射を効率的に行うことができる。
【0074】
本実施形態に係る車両用灯具10は、ハイビーム用の第1灯具ユニット20とロービーム用の第2灯具ユニット40とが並列に配置されてなる二輪車用前照灯として構成されているが、第1灯具ユニット20の太陽光制限部材60は、その前面の全領域に黒色塗装が施されており、一方、第2灯具ユニット40の太陽光制限部材50は、その前面の一部領域に鏡面処理が施されるとともにそれ以外の領域に黒色塗装が施された構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0075】
すなわち、第1灯具ユニット20と第2灯具ユニット40とが、その光学的な機能に基づいて互いに異なる構成を有しているにもかかわらず、外観上の差異を最小限に抑えることができ、これにより灯具全体としての意匠上の統一性を高めることができる。
【0076】
上記実施形態においては、第2灯具ユニット40のレンズ44が透光カバー52の一部として構成されているものとして説明したが、レンズ44が透光カバー52とは別体で灯室内に配置されている場合であっても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0077】
上記実施形態においては、太陽光制限部材50として、その開口部50aの周囲の環状部分が、太陽光を制限するための太陽光制限要素として構成されているものとして説明したが、開口部50aの周囲の一部のみ(例えば開口部50aの下側に位置する部分のみ)が太陽光制限要素として構成されたものとすることも可能である。
【0078】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0079】
図7は、上記実施形態の第2灯具ユニット40における太陽光制限部材50の変形例に係る太陽光制限部材150を示す、図5(b)と同様の図である。
【0080】
同図に示すように、この太陽光制限部材150は、無色透明の樹脂成形品として構成されている。
【0081】
この太陽光制限部材150は、上記実施形態の太陽光制限部材50と同様、灯具正面視において横長矩形状の外形形状を有しており、その大きさは太陽光制限部材50の外形形状と同じ大きさに設定されている。また、この太陽光制限部材150は、軸線Axを中心とする横長矩形状の領域が素通し部150fとして構成されており、その周囲の環状部分の前面には複数の拡散レンズ素子150sが縦縞状に形成されている。その際、これら各拡散レンズ素子150sは、凸曲線状の水平断面形状を有する凸状シリンドリカルレンズで構成されている。
【0082】
そして、この太陽光制限部材150は、その素通し部150fにおいて発光素子42からの直射光がレンズ44に入射するのを許容する一方、その開口部50aの周囲に形成された複数の拡散レンズ素子150sにおいて太陽光を左右方向に拡散させることにより、レンズ44を介して発光素子42や光源支持部材48に到達する太陽光の光量を大幅に低減するようになっている。すなわち、本変形例においては、太陽光制限部材150において太陽光を制限するための太陽光制限要素が、太陽光制限部材150の前面に形成された複数の拡散レンズ素子150sによって構成されている。
【0083】
この太陽光制限部材150には、上記実施形態の太陽光制限部材50の場合と同様、その上端縁の右側端部と下端縁の右側端部と左側端縁の上端部との3箇所に、後方へ向けて延びる取付ブラケット150bが延長形成されており、これら各取付ブラケット150bの後端部においてネジ56を介してヒートシンク46に固定されるようになっている。
【0084】
また、この太陽光制限部材150には、その下端縁の左右中央部分に、前方へ向けて帯状に延びる突起片150cが延長形成されている。この突起片150cは、太陽光制限部材150の下端縁から前方へ向けて水平に延びるとともに、その先端部が斜め下前方へ向けて延びるように形成されている。
【0085】
この太陽光制限部材150の前面は、突起片150cの先端部に位置する部分が、アルミ蒸着等の鏡面処理が施された反射面150dとして構成されている。
【0086】
この反射面150dは、発光素子42からの直射光の一部を上向きに反射させてレンズ44からやや上向きの光として出射させるようになっている。
【0087】
本変形例を採用した場合においても、太陽光制限部材150の存在により、太陽光がレンズ44を介して発光素子42や光源支持部材48に到達するのが制限されるので、透光カバー52に日中の強烈な太陽光が照射されるようなことがあっても、そのレンズ44の集光作用によって発光素子42や光源支持部材48が高温になってしまうのを未然に防止することができる。
【0088】
また、本変形例を採用した場合においても、太陽光制限部材50の素通し部150fを介して発光素子42からの直射光がレンズ44に入射するのを許容することができる。
【0089】
したがって本変形例によれば、太陽光によって発光素子42や光源支持部材48が不用意に高温になってしまうのを未然に防止することができ、これにより発光素子42や光源支持部材48の機能が損なわれてしまうのを未然に防止することができる。
【0090】
また本変形例においては、太陽光制限部材150の前面の一部が反射面150eとして構成されているので、安価な構成で頭上標識OHSの照射を効率的に行うことができる。
【0091】
上記変形例においては、太陽光制限部材150における素通し部150fの周囲の環状部分の前面に、複数の拡散レンズ素子150sが縦縞状に形成されているものとして説明したが、これら複数の拡散レンズ素子150sが縦縞状以外(例えば横縞状や格子状等)の配置で形成された構成とすることも可能である。
【0092】
また、上記変形例においては、太陽光制限要素を構成する各拡散レンズ素子150sが凸状シリンドリカルレンズで構成されているものとして説明したが、これ以外にも、凹シリンドリカルレンズや魚眼レンズあるいはシボ加工などを適宜採用することにより、太陽光が発光素子42や光源支持部材48に局所的に集中して到達してしまうのを防止するようにすることも可能である。
【0093】
さらに、上記変形例において複数の拡散レンズ素子150sが形成されている領域に、これら複数の拡散レンズ素子150sの代わりに、赤外線を反射する誘電体多層膜を成膜したり、赤外線を吸収するフィルムを設けたり、アルミ蒸着膜などの光反射膜を形成することによっても、上記変形例と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0094】
また、上記変形例においては、太陽光制限部材150における素通し部150fの周囲の環状部分に形成された複数の拡散レンズ素子150sによって太陽光制限要素が構成されているものとして説明したが、素通し部150fの周囲の一部のみ(例えば素通し部150fの下側に位置する部分のみ)に複数の拡散レンズ素子150sが形成されることにより、太陽光制限要素が構成されたものとすることも可能である。
【0095】
さらに、上記変形例においては、太陽光制限部材150における軸線Axを中心とする横長矩形状の領域が素通し部150fとして構成されているものとして説明したが、この素通し部150fが位置する領域に開口部が形成された構成とすることも可能である。
【0096】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0097】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0098】
10 車両用灯具
12 パネル部材
20 第1灯具ユニット
22、42 発光素子
24、44 レンズ
40 第2灯具ユニット
42a 発光チップ
44a 前面
44b 後面
46 ヒートシンク
46a 冷却フィン
48 光源支持部材
50、60、150 太陽光制限部材
50a、60a 開口部
50b、60b、150b 取付ブラケット
50c、150c 突起片
50d、150d 反射面
50e、60e 非反射面
52 透光カバー
52a 脚部
54 ランプボディ
56 ネジ
150f 素通し部
150s 拡散レンズ素子
Ax 軸線
CL カットオフライン
OHS 頭上標識
PA 付加配光パターン
PL ロービーム用配光パターン
P0 基本配光パターン
P1 ハイビーム用配光パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7