(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ツースプレートやツースブロックが支持ブラケットの車体側摩擦板の外側に配置されるので、横方向(左右方向)に関してステアリング装置が大型化するという問題がある。
そこで、本発明の目的は、強固なテレスコロックを達成しつつ横方向に小型化することができるステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、一端に操舵部材(2)が連結されたステアリングシャフト(4)と、ロアー側のインナーチューブ(12)と前記インナーチューブに軸方向(X)に移動可能に嵌合されたアッパー側のアウターチューブ(11)とを含み、前記ステアリングシャフトを回転可能に支持するステアリングコラム(8)と、一対の支持側板(22)を含み車体(14)に支持される支持ブラケット(18)と、前記一対の支持側板の内側面に沿う一対の可動側板(24)を含み前記アウターチューブに固定された可動ブラケット(17)と、前記支持側板の第1挿通孔(23)および前記可動側板の第2挿通孔(25)を挿通した締付軸(21)と、前記締付軸と一体回転する操作レバー(20)と、前記操作レバーのロック方向への回転に伴って前記アウターチューブの位置をロックするロック機構(19)と、を備え、前記ロック機構は、前記締付軸の軸力によって前記支持側板を前記可動側板に締め付ける締付機構(30)と、前記締付軸と一体回転可能であり、ロック時に前記アウターチューブの開口(41)を通して前記インナーチューブを押圧して前記インナーチューブを前記アウターチューブの内周に摩擦係合させる摩擦係合用カム(42;42P)と、前記アウターチューブに固定された固定歯列(51,52)と、前記締付軸によって支持された可動歯列(53,54)と、前記締付軸と一体回転可能であり、ロック時に前記可動歯列を押圧して前記可動歯列を前記固定歯列に噛合させる噛合用カム(56,57;56P,57P)と、
前記可動歯列を前記固定歯列に噛合する進出位置と前記進出位置から退避する後退位置とに案内する案内部(72,73)を有し前記締付軸により支持された案内部材(55)と、前記可動歯列を前記後退位置に付勢する付勢部材(58)と、を含む噛合機構(50)と、を備え、前記摩擦係合用カムおよび前記噛合機構が、前記一対の可動側板間に配置されているステアリング装置(1)を提供する。
【0006】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
また、請求項2のように、前記噛合用カムによって、前記可動歯列が、その歯すじ方向に駆動されて前記固定歯列と噛み合わされるように構成されていていてもよい。
【0007】
また、請求項
3のように、前記噛合用カムとして、前記締付軸の軸方向に関して前記摩擦係合用カムの両側に配置された第1噛合用カム(56;56P)および第2噛合用カム(57;57P)が設けられ、前記可動歯列として、前記第1噛合用カムにより駆動される第1可動歯列(53)と、前記第2噛合用カムにより駆動される第2可動歯列(54)とが設けられ、前記固定歯列として、前記第1可動歯列と噛み合う第1固定歯列(51)と、前記第2可動歯列と噛み合う第2固定歯列(52)とが設けられていてもよい。
【0008】
また、請求項
4のように、前記案内部材として、前記第1可動歯列および前記第2可動歯列を案内する唯一の案内部材(55)が設けられていてもよい。
また、請求項
5のように、前記第1可動歯列を形成した第1ブロック(64)と、前記第2可動歯列を形成した第2ブロック(65)と、を備え、前記第1ブロックと前記第2ブロックのそれぞれは、互いに対向し前記噛合用カムの両側に配置された第1被案内板(66)および第2被案内板(67)と、前記第1被案内板および前記第2被案内板の一端同士を連結し、前記固定歯列側の第1面(69)と前記第1面とは反対側の面であって前記噛合用カムにより押圧される第2面(70)とを有する連結板(68)と、前記連結板の前記第1面に突出形成され、対応する可動歯列を形成した可動歯列形成板(71)とを含み、前記案内部材の案内部は、前記第1被案内板および前記第2被案内板をそれぞれ案内する第1案内板(72)および第2案内板(73)を含んでいてもよい。
【0009】
また、請求項
6のように、前記開口の内周に嵌合固定された外周(63)と、前記第1固定歯列および第2固定歯列を互いに対向するように形成した内周(62)とを有する環状の固定歯列形成部材(59)を備え、前記摩擦係合用カムは、各可動歯列が対応する固定歯列に噛み合うときに、前記第1ブロックおよび前記第2ブロックの可動歯列形成板の可動歯列の背面(53R,54R)をそれぞれ受ける一対の端面(82,83)を含んでいてもよい。
【0010】
また、請求項
7のように、前記第1ブロックおよび前記第2ブロックのそれぞれの連結板の第1面と前記固定歯列を形成した固定歯列形成部材との間に介在し、ロック解除時に対応するブロックの可動歯列をそれぞれ後退位置に戻す前記付勢部材としての一対の戻しばね(58)を備えていてもよい。
また、請求項
8のように、前記摩擦係合用カム(42)と前記噛合用カム(56,57)とが単一の材料で一体に形成されていてもよい。
【0011】
また、請求項
9のように、前記固定歯列および前記可動歯列の各歯は、前記可動歯列が進退する方向であって前記アウターチューブの軸方向とは交差する方向に延びる歯すじを有し、前記固定歯列および前記可動歯列の少なくとも一方の歯の歯すじ方向の噛み合い側の端部に、歯すじ方向の噛み合いを案内する面取り(51a,52a;53a,54a)が形成されていてもよい。
【0012】
また、請求項1
0のように、前記締付軸によって支持されて前記締付軸の回転を許容し、前記第1挿通孔によって前記締付軸の中心軸線回りの回転を規制され、前記締付軸の中心軸線(C1)回りの、前記案内部材の回転を規制する回転規制部材(32,35)を備えていてもよい。
また、請求項1
1のように、前記締付機構は、前記操作レバーの回転力を前記締付軸の軸力に変換して前記締付軸を介して前記支持側板を前記可動側板に締め付ける力変換機構(FC)を含み、前記力変換機構は、前記操作レバーと一体回転する回転カム(31)と、前記回転カムと係合し前記第1挿通孔によって回転規制された前記回転規制部材としての固定カム(32)と、を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、ロック時に、摩擦係合用カムがインナーチューブをアウターチューブの内周側へ押圧して両チューブを摩擦係合させるとともに、噛合機構の噛合用カムが、可動歯列を押圧して固定歯列と噛み合わせる。これにより強固なテレスコロックを達成することができる。しかも、固定歯列、可動歯列および噛合用カムを含む噛合機構が、摩擦係合用カムとともに一対の可動側板間にレイアウトされるので、締付軸の軸方向に関してステアリング装置を小型化を達成することができる。
また、ロック時に、案内部材によって可動歯列を進出位置に案内して確実に固定歯列に噛合させることができる。また、ロック解除時に、付勢部材によって可動歯列を後退位置に駆動して、確実に噛合を解除することができる。
【0014】
また、
請求項2の発明によれば、可動歯列を歯すじ方向に駆動して固定歯列と噛み合せるので、締付軸の軸方向に関して、固定歯列および可動歯列を小型化することが可能となる
。
【0015】
また、請求項
3の発明によれば、2つの可動歯列を対応する固定歯列と噛み合わせることで、より強固なテレスコロックを達成することができる。
また、請求項
4の発明によれば、締付軸により支持された単一の案内部材によって、2つの可動歯列を案内するので、構造を簡素化することができる。
また、請求項
5の発明によれば、各ブロックが、案内部材の第1案内板および第2案内板によって案内される第1被案内板および第2被案内板の両端間を連結した連結板を備え、その連結板の第1面に可動歯列形成板を突出形成し、第1面の反対側の面である第2面を噛合用カムによって押圧するので、可動歯列をよりスムーズに進退移動させることができる。
【0016】
また、請求項
6の発明によれば、ロック時に、相対向する第1固定歯列および第2固定歯列にそれぞれ噛み合う第1可動歯列および第2可動歯列の背面を摩擦係合用カムの一対の端面によって受けることで、強固な噛み合いを達成することができる。
また、請求項
7の発明によれば、ロック解除時に、付勢部材としての一対の戻しばねによって、各可動歯列を後退位置に戻して、確実な噛合解除を達成することができる。
【0017】
また、請求項
8の発明によれば、摩擦係合用カムと噛合用カムとを単一の材料で一体に形成することで、構造を簡素化することができる。
また、請求項
9の発明によれば、面取りによって両歯列の噛み合いを案内して両歯列をスムーズに噛み合わせることができる。
また、請求項1
0の発明によれば、回転規制部材によって、締付軸の中心軸線回りの、案内部材の回転を規制することができ、進退移動する可動歯列を案内部材によって安定して支持することができる。
【0018】
また、請求項1
1のように、締付機構の力変換機構の固定カムが、回転規制部材を兼用するので、構造を簡素化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態のステアリング装置の概略構成の模式的側面図である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2と、操舵部材2の操舵に連動して転舵輪(図示せず)を転舵するステアリング機構3とを備えている。ステアリング機構3としては、例えばラックアンドピニオン機構が用いられている。
【0021】
操舵部材2とステアリング機構3とは、ステアリングシャフト4およびインターミディエイトシャフト5等を介して機械的に連結されている。操舵部材2の回転は、ステアリングシャフト4およびインターミディエイトシャフト5等を介してステアリング機構3に伝達されるようになっている。また、ステアリング機構3に伝達された回転は、図示しないラック軸の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪が転舵される。
【0022】
ステアリングシャフト4は、例えばスプライン嵌合やセレーション嵌合によって相対摺動可能に嵌合された筒状のアッパーシャフト6とロアーシャフト7とを有している。操舵部材2は、アッパーシャフト6の一端に連結されている。また、ステアリングシャフト4は、その軸方向に伸縮可能である。ステアリングシャフト4は、筒状のステアリングコラム8内に挿通されており、複数の軸受9,10を介してステアリングコラム8によって回転可能に支持されている。
【0023】
ステアリングコラム8は、相対摺動可能に嵌合されたアッパー側のアウターチューブ11とロアー側のインナーチューブ12とを有している。ステアリングコラム8は、軸方向X(テレスコ方向に相当)に伸縮可能である。アウターチューブ11は、軸受9を介してアッパーシャフト6を回転可能に支持している。また、アウターチューブ11は、軸受9を介して、ステアリングシャフト4の軸方向に同行移動可能にアッパーシャフト6に連結されている。
【0024】
インナーチューブ12の外周12aに固定されたロアー側のコラムブラケット13が、車体14に固定されたロアー側の支持ブラケット15に、チルト中心軸16を介して回動可能に支持されている。これにより、ステアリングコラム8およびステアリングシャフト4は、チルト中心軸16を支点にして回動可能(チルト可能)となっている。
チルト中心軸16を支点にしてステアリングシャフト4およびステアリングコラム8を回動(チルト)させることで、操舵部材2の位置を調整できるようになっている(いわゆるチルト調整)。また、ステアリングシャフト4のアッパーシャフト6およびステアリングコラム8のアウターチューブ11を軸方向Xに移動させることで、操舵部材2の位置を調整できるようになっている(いわゆるテレスコ調整)。
【0025】
アウターチューブ11には、アウターチューブ11と一体移動可能なアッパー側のコラムブラケット17(可動ブラケット)が固定されている。また、車体14に固定された固定ブラケット90には、二次衝突時にコラム移動方向(軸方向Xとは平行な方向)に移動可能にアッパ側の支持ブラケット18が保持されている。
ステアリング装置1は、位置調整(チルト調整ないしテレスコ調整)後の操舵部材2の位置、具体的には、位置調整後のコラムブラケット17およびアウターチューブ11の位置を車体に対して固定するロック機構19を備えている。ロック機構19は、固定ブラケット90に吊り下げ機構Tを介して吊り下げ支持された支持ブラケット18に対して、コラムブラケット17をロックする機能を有している。
【0026】
ロック機構19は、運転者が回転操作する操作レバー20と、操作レバー20と一体回転可能であって両ブラケット17,18を挿通する締付軸21とを備えている。締付軸21の中心軸線C1が、操作レバー20の回転中心に相当する。
具体的には、締付軸21は、支持ブラケット18の支持側板22に設けられチルト方向Yに延びる第1挿通孔としてのチルト用長孔23と、コラムブラケット17のコラム側板24に設けられテレスコ方向(軸方向Xに相当)に延びる第2挿通孔としてのテレスコ用長孔25とを挿通している。
【0027】
図1および固定ブラケット90は、
図1のII−II線に沿う断面図である
図2を参照して、二次衝突時のコラム移動方向(軸方向Xとは平行な方向)に延びる長孔91が形成された主板92を備えている。
固定ブラケット90の主板92に対向する、支持ブラケット18の天板93には、ボルト挿通孔94が形成されている。吊り下げ機構Tは、長孔91およびボルト挿通孔94を挿通する吊り下げボルト95と、吊り下げボルト95に結合されたナット96とを備えている。固定ブラケット90によって支持された吊り下げボルト95と、吊り下げボルト95に結合されたナット96とによって、支持ブラケット18が吊り下げられている。
【0028】
図2に示すように、支持ブラケット18は、前記天板93と、天板93の両端からチルト方向Yの下方に延びる一対の支持側板22とを備えている。コラムブラケット17は、支持ブラケット18の一対の支持側板22にそれぞれ対向する一対のコラム側板24と、一対のコラム側板24のチルト方向Yの下端間を連結する連結板27とを備えた溝形をなしている。
【0029】
締付軸21は、支持ブラケット18の両支持側板22のチルト用長孔23およびコラムブラケット17の両コラム側板24のテレスコ用長孔25を貫通するボルトからなる。締付軸21の一端の頭部28は、操作レバー20と一体回転可能に固定されている。締付軸21の他端に設けられたねじ部にナット29が螺合している。
ステアリング装置1は、操作レバー20の回転操作に伴って、チルトロックおよびテレスコロックを達成する締付機構30を備えている。締付機構30は、締付軸21の一端に固定された操作レバー20と支持ブラケット18の一方の支持側板22との間に介在する力変換機構FCを備えている。力変換機構FCは、締付軸21の外周に嵌合されて支持された回転カム31と固定カム32とを含む。回転カム31と固定カム32との対向面には、互いに係合するカム突起(図示せず)が形成されている。力変換機構FCは、操作レバー20の回転力を締付軸21の軸力に変換して締付軸21を介して各支持側板22を対応するコラム側板24(可動側板)に締め付ける機能を果たすカム機構である。
【0030】
また、締付機構30は、締付軸21の外周に嵌合されて支持された第1介在部材35および第2介在部材36を備えている。第1介在部材35の一部(環状板37)が、締付軸21の他端に固定されたナット29と支持ブラケット18の他方の支持側板22との間に介在している。
回転カム31は、操作レバー20と一体回転可能に連結され、締付軸21に対する軸方向移動が規制されている。固定カム32は、回転カム31と支持ブラケット18の他方の支持側板22との間に介在する締付部としての環状板33と、環状板33から延びるボス34とを備えている。固定カム32のボス34が、支持ブラケット18の一方の支持側板22のチルト用長孔23に挿入されることにより、固定カム32の回転が規制されている。固定カム32は、締付軸21の軸方向Zに移動可能に支持されている。
【0031】
第1介在部材35は、第2介在部材36と支持ブラケット18の他方の支持側板22との間に介在する締付部としての環状板37と、環状板37から延びるボス38とを備えている。第1介在部材35のボス38が、支持ブラケット18の他方の支持側板22のチルト用長孔23に挿通されることより、第1介在部材35の回転が規制されている。
第2介在部材36は、ナット29と第1介在部材35との間に介在するワッシャ39と、ワッシャ39と第1介在部材35との間に介在する針状ころ軸受40とを備えている。
【0032】
締付機構30は、ロック時に、固定カム32の環状板33と第1介在部材35の環状板37との間で、一対の支持側板22を締め付けることにより、一対の支持側板22を対応するコラム側板24に締め付けて、チルトロックおよびテレスコロックを達成する。
ロック機構19は、締付軸21の軸部と一体回転可能に連結された摩擦係合用カム42を備えている。摩擦係合用カム42の外周に設けられるカム面42aは、締付軸21の中心軸線C1に対して偏心した中心を有する円弧状に形成されたカムプロフィールを有している。
【0033】
摩擦係合用カム42は、操作レバー20のロック方向への回転操作に伴って回転して、アウターチューブ11の開口41を通してインナーチューブ12を押し上げて、インナーチューブ12をアウターチューブ11の内周11aに摩擦係合させることにより、アウターチューブ11の軸方向移動を抑制してテレスコロックを達成する。
また、ロック機構19は、操作レバー20のロック方向への回転操作に伴って、歯同士を噛み合わせてテレスコロックを達成する噛合機構50を備えている。
【0034】
図2〜
図4に示すように、噛合機構50は、アウターチューブ11に固定された第1固定歯列51および第2固定歯列52と、第1固定歯列51および第2固定歯列52にそれぞれ噛み合う第1可動歯列53および第2可動歯列54と、締付軸21により支持され、両可動歯列53,54を対応する固定歯列51,52に噛合する進出位置(
図5参照)と前記進出位置から退避する後退位置(
図4参照)とに案内する案内部材55とを備えている。
【0035】
また、噛合機構50は、締付軸21と一体回転可能に設けられた第1噛合用カム56および第2噛合用カム57と、各可動歯列53,54をそれぞれ後退位置に付勢する付勢部材としての一対の戻しばね58とを備えている。
図4を参照して、第1噛合用カム56および第2噛合用カム57は、摩擦係合用カム42と単一の材料で一体に設けられている。
【0036】
図3に示すように、第1固定歯列51および第2固定歯列52は、環状の固定歯列形成部材59に設けられている。固定歯列形成部材59は、環状の本体60と、本体60の一端から外方に延びる環状のフランジ61とを備えている。 第1固定歯列51および第2固定歯列52は、固定歯列形成部材59の本体60の内周62に互いに対向するように形成されている。固定歯列形成部材59の本体60の外周63は、アウターチューブ11の開口41の内周41a(
図4参照)に嵌合されて固定されている。
【0037】
図3に示すように、固定歯列51,52および可動歯列53,54の各歯は、可動歯列53,54が進退する方向であってアウターチューブ11の軸方向Xとは交差する方向(例えばチルト方向Y)に延びる歯すじを有している。
図4を参照して、固定歯列51,52および可動歯列53,54の少なくとも一方(本実施形態では、固定歯列51,52および可動歯列53,54の双方)の歯の歯すじ方向(例えばチルト方向Y)の噛み合い側の端部に、歯すじ方向の噛み合いを案内する面取り51a,52a;53a,54aが形成されている。
【0038】
図3および
図4に示すように、第1可動歯列53は、第1ブロック64に設けられ、第2可動歯列54は、第2ブロック65に設けられている。第1ブロック64と第2ブロック65とは、対称な形状をなしており、共通の仕様が用いられているので、第1ブロック64に則して説明する。
第1ブロック64は、互いに対向し対応する噛合用カム(第1噛合用カム56)の両側に配置された第1被案内板66および第2被案内板67と、両被案内板66,67の一端同士を連結した連結板68とを備えている。連結板68は、対応する固定歯列(第1固定歯列51)側の第1面69と、第1面69とは反対側の面であって対応する噛合用カム(第1噛合用カム56)により押圧される第2面70とを有している。また、第1ブロック64は、連結板68の第1面69に突出形成された可動歯列形成板71を備えている。可動歯列形成板71に、対応する可動歯列(第1可動歯列53)が形成されている。
【0039】
案内部材55は、第1可動歯列53を設けた第1ブロック64の第1被案内板66および第2被案内板67をそれぞれ案内し、第2可動歯列54を設けた第2ブロック65の第1被案内板66および第2被案内板67をそれぞれ案内する第1案内板72および第2案内板73を備えている。第1案内板72および第2案内板73の内面が、対応する被案内板66,67の外面を案内する。
【0040】
唯一の案内部材55が、第1可動歯列53(を設けた第1ブロック64)と第2可動歯列54(を設けた第2ブロック65)とを一括して案内する。唯一の案内部材55の両案内板72,73(案内部)が、両ブロック64,65の対応する被案内板66,67を案内する。
また、案内部材55は、第1案内板72および第2案内板73の両端間をそれぞれ連結する第1端板74および第2端板75を備えている。両案内板72,73と両端板74,75とで、
図3に示すように、ボックス形状をなしている。
【0041】
各端板74,75には、それぞれ締付軸21の軸部を挿通させる挿通孔76,77が設けられている。また、
図3および
図4に示すように、第1端板74の外側面78には、締付機構30の固定カム32の例えば断面平行四辺形のボス34に嵌合して案内部材55の回転を規制する凹部80が形成されている。
図4に示すように、第2端板75の外側面79には、第1介在部材35の例えば断面平行四辺形のボス38に嵌合して案内部材55の回転を規制する凹部81が形成されている。
【0042】
すなわち、締付軸21によって支持されて締付軸21の回転を許容し、チルト用長孔23(第1挿通孔)によって締付軸21の中心軸線C1回りの回転を規制された固定カム32および第1介在部材35が、締付軸21の中心軸線C1回りの、案内部材55の回転を規制する回転規制部材として機能する。
図4に示すように、噛合機構50の一対の戻しばね58は、第1ブロック64および第2ブロック65の対応する連結板68の第1面69と、固定歯列51,52を形成した固定歯列形成部材5
9の環状のフランジ61の下面との間に介在しており、ロック解除時に対応するブロック64,65の可動歯列53,54をそれぞれ後退位置に戻す付勢部材として機能する。
【0043】
摩擦係合用カム42は、締付軸21の軸方向Zに対向する一対の端面82,83を有している。各端面82,83は、対応するブロック64,65の可動歯列形成板71の可動歯列53,54の背面53R,54Rを摺動可能に接している。摩擦係合用カム42の各端面82,83は、
図5に示すように、ロック時に、各可動歯列53,54が対応する固定歯列51,52に噛み合うときに、対応するブロック64,65の可動歯列形成板71の可動歯列53,54の背面53R,54Rをそれぞれ受ける。
【0044】
本実施形態によれば、操作レバー20のロック方向への回転に伴って、締付機構30の回転カム31が固定カム32に対して回転することにより、固定カム32が締付軸21の軸方向Zに移動して、固定カム32の環状板33と第1介在部材35の環状板37との間で、支持ブラケット18の両支持側板22が挟持されて締め付けられる。これにより、支持ブラケット18の各支持側板22が、コラムブラケット17の対応するコラム側板24に圧接されて、チルトロックおよびテレスコロックが達成される。
【0045】
また、
図5に示すように、ロック時に、締付軸21と一体回転した摩擦係合用カム42がインナーチューブ12をアウターチューブ11の内周11a側へ押圧して両チューブ11,12を摩擦係合させるとともに、締付軸21と一体回転した、噛合機構50の噛合用カム(第1噛合用カム56、第2噛合用カム57)が、可動歯列(第1可動歯列53、第2可動歯列54)を押圧して固定歯列(第1固定歯列51、第2固定歯列52)と噛み合わせる。これにより強固なテレスコロックを達成することができる。しかも、固定歯列51,52、可動歯列53,54および噛合用カム56,57を含む噛合機構50が、摩擦係合用カム42とともに一対のコラム側板24(可動側板)間にレイアウトされるので、締付軸21の軸方向Zに関して小型化を達成することができる。
【0046】
また、従来のようにコラムチューブに固定されたコラムブラケットのコラム側板に固定歯列を設ける場合には、可動歯列がコラムブラケットを介してコラムチューブをロックすることになる。これに対して、本実施形態では、固定歯列51,52がアウターチューブ11に固定されているので、可動歯列53,54がより直接的にアウタチューブ11をロックすることができる。したがって、ロック強度や支持剛性を高くすることができる。
【0047】
特に、固定歯列を締付軸21の軸方向Xに関して、アウターチューブ11の中央位置の近傍に固定歯列51,52を配置することができるので、ロック強度が支持剛性をより高くすることができる。
また、噛合用カム56,57が可動歯列53,54を歯すじ方向に駆動して固定歯列51,52と噛み合せるので、締付軸21の軸方向に関して、固定歯列51,52および可動歯列53,54を小型化することが可能となる。
【0048】
また、ロック時に、案内部材55によって可動歯列53,54を進出位置に案内して確実に固定歯列51,52に噛合させることができる。また、ロック解除時に、付勢部材(戻しばね58)によって可動歯列53,54を後退位置に駆動して、確実に両歯列51,52;53,54の噛合を解除することができる。
また、2つの可動歯列(第1可動歯列53、第2可動歯列54)を対応する固定歯列(第1固定歯列51、第2固定歯列52)と噛み合わせることで、より強固なテレスコロックを達成することができる。
【0049】
また、締付軸21により支持された単一の案内部材55によって、2つの可動歯列(第1可動歯列53、第2可動歯列54)を案内するので、構造を簡素化することができる。 また、可動歯列53,54を形成した各ブロック6
4,6
5が、案内部材55の第1案内板72および第2案内板73によって案内される第1被案内板66および第2被案内板67の両端間を連結した連結板68を備え、その連結板68の第1面69に可動歯列形成板71を突出形成し、第1面69の反対側の面である第2面70を噛合用カム56,57によって押圧するので、可動歯列53,54をよりスムーズに進退移動させることができる。
【0050】
また、ロック時に、相対向する第1固定歯列51および第2固定歯列52にそれぞれ噛み合う第1可動歯列53および第2可動歯列54の背面53R,54Rを摩擦係合用カム42の一対の端面82,83によって受けることで、強固な噛み合いを達成することができる。
また、ロック解除時に、付勢部材としての一対の戻しばね58によって、各可動歯列53,54を後退位置(
図4参照)に戻して、確実な噛合解除を達成することができる。
【0051】
また、摩擦係合用カム42と噛合用カム56,57とを単一の材料で一体に形成することで、構造を簡素化することができる。
また、固定歯列51,52および可動歯列53,54の少なくとも一方(本実施形態では、固定歯列51,52および可動歯列53,54の双方)の歯の歯すじ方向の噛み合い側の端部に設けられた面取り51a,52a;53a,54aによって、両歯列51,52;53,54の噛み合いを案内して両歯列51,52;53,54をスムーズに噛み合わせることができる。
【0052】
また、回転規制部材(固定カム32、第1介在部材35)によって、締付軸21の中心軸線C1回りの、案内部材55の回転を規制することができるので、進退移動する可動歯列53,54(ブロック6
4,6
5)を案内部材55によって安定して支持することができる。
また、締付機構30の力変換機構FCの固定カム32が、前記回転規制部材を兼用するので、構造を簡素化することができる。
【0053】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、
図6の第2実施形態に示すように、摩擦係合用カム42Pとは別部材である各噛合用カム56P,57Pが、摩擦係合用カム42Pに一体に固定されていてもよい。その場合、締付軸21の回転方向に関して、摩擦係合用カム42Pに対する各噛合用カム56P,57Pの取付位置(回転位相に相当)を変更できるようにして取り付けてもよい。例えば、摩擦係合用カム42Pの一対の端面82P,83Pに設けられた断面円形の嵌合凹部84,85に、各噛合用カム56P,57Pの本体560,570から突出する断面円形のボス561,571を周方向に位置調節しつつ圧入固定するようにしてもよい。
【0054】
また、図示していないが、固定ブラケット90を廃止し、支持ブラケット18を、公知のカプセル機構等を介して二次衝突時に車体から離脱可能に車体に取り付けてもよい。その他、本発明は、請求項記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。